説明

エネルギーを無線で交換するシステムおよび方法

【課題】共振物体のアレイを用いてエネルギーを伝達する。
【解決手段】エネルギーを無線で交換するシステムが、少なくとも3つの物体からなるアレイであって、物体は、類似した共振周波数を有し、各物体は、電磁的(EM)かつ非放射性であり、エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成する、アレイを備える。各物体は、他の物体から電気的に絶縁され、全ての他の物体から或る距離に配置され、それによって、物体は、エネルギーを受信すると、エバネッセント波の共振結合を介して少なくとも1つの他の物体に強結合される。エネルギードライバが、共振周波数におけるエネルギーをアレイ内の少なくとも1つの物体に提供し、それによって、システムの動作中、エバネッセント波の共振結合を介して、エネルギーが少なくとも1つの物体からアレイ内の全ての他の物体に分配されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、エネルギーを無線で伝達することに関し、より詳細には、共振物体のアレイを用いてエネルギーを伝達することに関する。
【背景技術】
【0002】
無線エネルギー伝達
誘導結合は、コードレス電子歯ブラシまたは車両バッテリ等の複数の無線エネルギー伝達システムにおいて用いられる。変換器のような結合インダクターにおいて、ソース、例えば一次コイルは、電磁場としてエネルギーを生成し、シンク、例えば二次コイルは、エネルギーシンク内を流れるエネルギーが最適化される、例えばシンクによって生成されるエネルギーがソースのエネルギーと可能な限り同様となるように配置される。エネルギーを最適化するためには、ソースとシンクとの間の距離は、可能な限り小さくすべきである。なぜなら、大きな距離を介するほど、誘導結合法が非効率になるためである。
【0003】
共振結合システム
図1は、ソース110からシンク120にエネルギーを伝達するための従来の共振結合システム100を示している。共振結合において、2つの共振電磁物体、すなわちソースおよびシンクは、共振条件下で互いに相互作用する。
【0004】
ドライバ140は、エネルギーをソースに入力して電磁場115を形成する。電磁場は、ドライバにおける励起信号周波数、すなわち共振システムのソースおよびシンクの自己共振周波数に対し或る率で減衰する。しかしながら、シンクが、各サイクルの間に損失するエネルギーよりも多くのエネルギーを吸収する場合、エネルギーのほとんどがシンクに伝達される。ソースおよびシンクを同じ共振周波数で動作させることによって、シンクがその周波数においてより低いインピーダンスを有すること、およびエネルギーが最適に吸収されることが保証される。
【0005】
エネルギーは、共振物体間で距離Dを介して伝達され、例えばソースは、長さLを有し、シンクは、長さLを有する。ドライバは、電力提供部をソースに接続する。シンクが電力消費デバイス、例えば抵抗負荷150に接続される。エネルギーが、ドライバによってソースに供給され、シンクに無線でかつ非放射的にエネルギーとして伝達され、負荷によって消費される。無線非放射エネルギー伝達は、場115、例えば共振システムの電磁場または音場を用いて実行される。この説明を簡単にするために、場115は、電磁場とする。共振物体の結合の間、ソースとシンクとの間でエバネッセント波130が伝播される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、共振結合は、ソースからシンクに、距離が長くなると非効率である中距離、例えば共振周波数波長の数倍を介してエネルギーを伝達する。このため、効率的な無線エネルギー伝達の範囲を拡張することが望ましい。
【0007】
共振器アレイ
従来技術では、エネルギー伝達のために共振器アレイが用いられてきた。従来のアレイの背後にある基本原理は、より小さな共振器を製造し組み合わせることによって、より大きな共振器を作製することである。したがって、従来のアレイにおける共振器は、互いに電気的に相互接続されて、より大きな複合共振器を形成する。
【0008】
別のアレイでは、システム内に、4つの調整された回路、すなわち調整された送信アンテナ、送信共振コイル、受信共振コイル、調整された受信アンテナからなるセットが存在する。送信機からエネルギーを受信する2つ以上の受信デバイスが存在することができ、それぞれが調整された受信回路を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態は、強結合された共振物体のアレイを用いて効率的な無線エネルギー伝達の範囲を拡張し、移動受信物体へのエネルギー伝達を容易にする。
【0010】
エネルギーは、強結合された共振物体のアレイの少なくとも1つの物体に提供される場合、アレイ内の全ての物体間で妥当な損失を伴って振動する。エネルギーは、アレイ内の少なくとも1つの物体に提供される場合、その物体からアレイ内の全ての他の物体に分配される。このため、エネルギーシンクは、アレイの任意の物体からエネルギーを無線で受信することができる。したがって、本発明の実施の形態は、エネルギーソースから任意の所望の方向および距離において、エネルギーを後に無線で取り出すためにエネルギーを蓄積および分配する新規な方法を提供する。
【0011】
従来のエネルギー分配システムでは、エネルギーは、利用されなかったエネルギーをエネルギーソースまたは他の特別に設計されたエネルギー蓄積装置に戻す閉ループを介して送信される。これは、問題ではなくエネルギー伝達の実際と考えられていた。本発明の実施の形態は、物体の任意の配置を可能にし、これによってエネルギー分配トポグラフィーの任意の構成を可能にすることによって、この要件を排除する。
【0012】
1つの実施の形態では、送信デバイスと受信デバイスとの間でエネルギーを無線で伝達するように構成されたシステムが提供される。システムは、共振物体のアレイによって形成されてエバネッセント電磁(EM:electromagnetic)波を生成するエネルギーソースを備える。システムは、エネルギーをアレイ内の少なくとも1つの物体に提供し、それによってシステムの動作中、エネルギーが物体からアレイ内の全ての他の物体に、例えば振動により分配されるようにするエネルギードライバを更に備える。
【0013】
この実施の形態の1つの変形形態において、システムは、エバネッセントEM波の結合によりエネルギーソースからエネルギーを無線で受信する、エネルギーソースから或る距離にあるエネルギーシンクを更に備える。シンクは、共振構造とすることもできるし、非共振構造とすることもできる。エネルギー伝達は、エネルギーソースのアレイ内の任意の共振物体から達成することができる。
【0014】
別の実施の形態は、エネルギーを無線で交換するように構成されるシステムであって、物体の第1のアレイを含むエネルギーソースと、物体の第2のアレイを含むエネルギーシンクであって、エネルギーソースおよびエネルギーシンク内の各物体は、共振周波数を有し、電磁的(EM)かつ非放射性であり、エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成するように構成される、エネルギーシンクと、共振周波数におけるエネルギーをエネルギーソース内の少なくとも1つの物体に提供し、それによって、システムの動作中、エネルギーがエネルギーソース内の物体からエネルギーソース内の全ての他の物体に分配されるようにする、エネルギードライバと、エネルギーシンクからエネルギーを受信する負荷とを備え、第1のアレイおよび第2のアレイ内の各物体は、それぞれ第1のアレイおよび第2のアレイ内の全ての他の物体から或る距離に配置され、それによって、第1のアレイおよび第2のアレイ内の物体は、エネルギーを受信するとエバネッセント波の共振結合を介してそれぞれ第1のアレイおよび第2のアレイ内の少なくとも1つの他の物体に強結合され、エネルギーシンクは、第1のアレイ内の1つまたは多数の物体と第2のアレイ内の1つまたは多数の物体との共振結合を介してエネルギーソースからエネルギーを無線で受信するように構成される、システムを開示する。
【0015】
別の実施の形態では、エネルギーソースとエネルギーシンクとの間でエネルギーを無線で伝達する方法が開示される。方法は、共振物体のアレイにおいてエバネッセントEM波を生成することを含む。方法は、共振物体のアレイとエネルギーシンクとの間でエネルギーを無線で伝達することを更に含む。エネルギーシンクは、共振構造とすることもできるし、非共振構造とすることもできる。別の実施の形態では、方法は、共振物体のアレイと共振物体の別のアレイとの間でエネルギーを無線で伝達することを更に含む。
【0016】
他の実施の形態は、アレイの近くに配置されたメタマテリアルおよび反射器を用いる。
【発明の効果】
【0017】
従来技術では、共振器アレイは、通常、互いに電気的に接続されて、より大きな複合共振器を形成する。対照的に、本明細書において記載されるアレイは、電気的に絶縁されている。唯一の結合は、誘導による電磁的なものである。さらに、エネルギーシンクおよび負荷は、共振器が強結合されているので、アレイの任意の部分に誘導結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の共振結合システムのブロック図である。
【図2】効率的な無線エネルギー伝達の範囲を超えたエネルギーシンクを有するシステムのブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態による、エネルギーソースとして共振器アレイを有するシステムのブロック図である。
【図4A】本発明の実施の形態による強結合された共振物体のアレイの概略図である。
【図4B】本発明の実施の形態による強結合された共振物体のアレイの概略図である。
【図4C】本発明の実施の形態による強結合された共振物体のアレイの概略図である。
【図4D】本発明の実施の形態による強結合された共振物体のアレイの概略図である。
【図5】本発明の実施の形態による、移動する物体に対しエネルギーを無線で供給するシステムのブロック図である。
【図6A】エネルギーシンクの異なる実施態様を比較する概略図である。
【図6B】エネルギーシンクの異なる実施態様を比較する概略図である。
【図6C】エネルギーシンクの異なる実施態様を比較する概略図である。
【図7】本発明の実施の形態による、エネルギーソースおよびエネルギーシンクとして共振器アレイを有するシステムのブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態による、移動する物体にエネルギーを無線で供給するシステムのブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態による動作中のスパイラル共振器のアレイの概略図である。
【図10A】本発明の実施の形態による、共振アレイシステム内の周波数の関数としての伝達効率のグラフである。
【図10B】本発明の実施の形態による対応する共振モードを示す図である。
【図10C】本発明の実施の形態による対応する共振モードを示す図である。
【図10D】本発明の実施の形態による対応する共振モードを示す図である。
【図10E】本発明の実施の形態による対応する共振モードを示す図である。
【図11】場の強度分布パターンを示す概略図である。
【図12】本発明の実施の形態による、2次元平面システムに拡張された1次元システムの例の概略図である。
【図13】無線エネルギー伝達の座標系の概略図である。
【図14】距離の関数としてのエネルギーのグラフである。
【図15】距離の関数としてのエネルギーのグラフである。
【図16】共振物体の線形アレイに沿って移動する受信機の概略図である。
【図17】受信機の2つの事例の概略図である。
【図18】周波数の関数としてのエネルギー効率のグラフである。
【図19】エネルギー伝達の2つの事例の側面概略図である。
【図20】移動受信機の側面概略図である。
【図21A】受信機位置の関数としてのエネルギー効率のグラフである。
【図21B】受信機位置の関数としてのエネルギー効率のグラフである。
【図22】アレイに沿って移動している2つの移動受信機の概略図である。
【図23A】受信機位置の関数としてのエネルギー効率のグラフである。
【図23B】受信機位置の関数としてのエネルギー効率のグラフである。
【図24】移動受信機および2つのアレイの概略図である。
【図25】1つのアレイおよび2つのアレイの概略図である。
【図26】1つのアレイおよび2つのアレイの概略図である。
【図27】メタマテリアルアレイおよび移動受信機の概略図である。
【図28】メタマテリアルアレイおよび移動受信機の概略図である。
【図29】アレイからのエネルギー損失の概略図である。
【図30】アレイおよび反射器の概略図である。
【図31】アレイおよび反射器の概略図である。
【図32】周波数の関数としてのエネルギー効率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
エネルギーは、共振周波数において結合された共振物体間で無線により効率的に伝達することができる。共振物体のサイズが共振波長よりはるかに小さい場合、エネルギーのほとんどが共振物体内に保存され、自由空間に放射されない。効率的な無線エネルギー伝達の範囲は、共振物体の物理的なサイズに依拠する。エネルギー伝達は、受信物体が共振物体のサイズと比較して大きな距離にわたって移動するときに非効率である。
【0020】
このため、図1に示す共振エネルギー伝達システムは、距離DがおよそエネルギーソースのサイズLおよびエネルギーシンクのサイズLであるとき、効率的である。DがサイズLまたはLよりはるかに大きいとき、エネルギー伝達は、非効率になる。さらに、ソース110およびシンク120の構造設計に依拠して、システムは、通例、1つの軸に沿った位置合わせを必要とする。
【0021】
図2は、エネルギードライバ230に結合された共振エネルギーソース210および負荷240に結合された共振エネルギーシンク220を用いた無線エネルギー伝達が非効率であるときの例を示している。エネルギーシンク220は、エネルギーソース210から、x方向において距離Dであり、y方向において距離Lであり、ここで距離L250は、LおよびLよりはるかに大きい。さらに、シンク220は、方向線250に沿って移動することができる。このため、効率的な無線エネルギー伝達の範囲を拡張し、エレベーターまたは電気車両等の移動デバイスにエネルギーを無線で提供するシステムを設計することが望ましい。
【0022】
本発明の実施の形態は、強結合された共振物体のアレイを用いて、効率的な無線エネルギー伝達の範囲を拡張し、大きな距離にわたって移動する受信物体への効率的なエネルギー伝達を容易にする。
【0023】
結合共振器アレイ
図3は、本発明の実施の形態によるシステム300を示している。1つの共振物体をエネルギーソースとして用いる代わりに、同様の共振周波数を有する少なくとも3つの共振物体311のアレイがソース310として用いられる。例えば、周波数は、互いの約10%よりも大きくは変動しない。各物体は、電磁的(EM)かつ非放射性であり、エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成するように構成される。アレイ310は、物体311の任意の配置とすることができる。アレイ内の物体311は、互いから或る距離に配置される。物体は、電気的に絶縁される。本明細書において規定されるとき、電気的に絶縁されているとは、いかなる物体間にも配線された導体が存在しないことを意味する。しかしながら、任意の物体によって受信されたエネルギーは、電磁波360の共振結合を介して、アレイ内の少なくとも1つの他の物体に強結合される。
【0024】
図3に示すような共振物体、および様々な実施の形態について説明される全ての他の共振器は、互いに電気的に絶縁されている、すなわち物理的導体によって接続されていないことに留意する。物体は、互いに配線されていないので、アレイ内の物体の配置は、極めて任意にすることができ、様々な用途に役立つように柔軟性を有することができる。
【0025】
アレイ内の共振結合のタイプは、誘導結合、容量性結合、またはその組み合わせとすることができる。エネルギードライバ330を用いて、エネルギーをアレイ310内の1つまたは複数の物体に提供する。共振結合によってエネルギーは、アレイ310内の全ての物体に分配される。アレイ内のエネルギー分配は、共振結合に起因してアレイの物体に沿って伝播するエバネッセント波の励起によって達成される。エバネッセント波は、共振物体の近接場内で局所化され、自由空間には放射されない。1つの実施の形態では、処理中の損失を低減するために、高い品質係数(Q係数、Q>100)を有する共振物体が選択される。
【0026】
Q係数は、共振器がどれだけ過小減衰(under−damped)であるかを示すか、すなわち、共振器の中心周波数に対する共振器の帯域幅を特徴付ける、無次元パラメーターである。Qが高いほど、発振器の蓄積エネルギーに対するエネルギー損失率が低いことを示す。
【0027】
エネルギーシンク320は、アレイから距離Dにある。シンクは、共振物体または非共振物体として構築することができる。エネルギーは、ソースからエバネッセント波370の結合によりシンク320に伝達される。結合は、ソースおよびシンク内の1つまたは複数の物体間で生じる可能性がある。シンクは、ソースからエネルギーを無線で受信し、エネルギーを負荷340に提供する。シンクは、線350に沿った様々なロケーションにあることができる。エネルギーシンクが異なるロケーションにあるとき、ソース310内の異なる物体がシンク320に結合される。
【0028】
本発明の実施の形態は、強結合された共振物体のアレイの少なくとも1つの物体にエネルギーを提供し、エネルギーは、アレイ内の全ての物体の間で妥当な損失を伴って振動する。エネルギーがアレイ内の少なくとも1つの物体に提供される場合、エネルギーは、その物体からアレイ内の全ての他の物体に分配される。このため、エネルギーシンクは、アレイの任意の物体からエネルギーを無線で受信することができる。したがって、本発明の実施の形態は、エネルギードライバから任意の所望の方向および距離において、エネルギーを後に無線で取り出すためにエネルギーを蓄積および分配する方法を提供する。
【0029】
従来のエネルギー分配システムでは、エネルギーは、利用されなかったエネルギーをエネルギーソースまたは、他の特別に設計されたエネルギー蓄積装置に返す閉ループを介して送信される。これは、問題ではなくむしろエネルギー伝達の実際と考えられていた。本発明の実施の形態は、この要件を排除し、物体の任意の配置を可能にし、これによってエネルギー分配トポグラフィーの任意の構成を可能にする。
【0030】
アレイ構成
共振アレイ310内の共振物体311は、用途に依拠して任意の物理形状を取ることができる。例えば、共振物体は、自己共振コイル、スパイラル、および誘電共振器とすることができる。
【0031】
図4Aに示す1つの実施の形態では、共振物体は、平面スパイラル411の形態を有する。共振物体は、異なる形状のアレイを形成する異なる配置を形成することができる。アレイ410は、複数の共振物体を線形に配置することによって形成される。スパイラル物体411は、導線から作製され、共振周波数において自己共振する。シンクは、共振構造または非共振構造で構築された1つまたは複数の物体を含むことができる。1つの実施の形態では、シンクは、スパイラル420によって構築され、アレイ410の物体のうちの1つの上に配置される。別の実施の形態では、シンクは、現在のロケーションと別のロケーション430との間で移動可能である。更に別の実施の形態では、複数のシンク420および430が異なるロケーションにおいて用いられる。
【0032】
図4B〜図4Dは、アレイのより複雑な形状を示している。図4Bは、曲線に沿って配置された共振物体のアレイ440を示している。図4Cに示す別の実施の形態では、共振物体は、円450に沿って配置される。図4Dに示す更に別の実施の形態では、共振物体は、平面460内に2次元で配置することができる。様々な実施の形態において、シンクは、エネルギーを無線で受信するための共振周波数を有する共振物体である。
【0033】
応用形態例
本発明の実施の形態は、エネルギーを無線で移動デバイスに提供するか、または異なるデバイス上の電池に無線で充電するための様々な応用形態に適用することができる。デバイスには、限定ではないが、電気車両と、エレベーターと、ロボットと、携帯電話、ラップトップ等の電子デバイスとが含まれる。
【0034】
図5は、エネルギーをエレベーターかご550に無線で提供するためのシステム500を示している。ソースは、共振物体511のアレイ510によって形成され、昇降路に設置される。ドライバ530を用いてアレイ510内の1つまたは複数の物体にエネルギーを提供する。ドライバ530は、電源に接続される。シンク520は、共振物体であり、エレベーターかごに電力供給するためにエレベーターの負荷540に接続される。アレイから距離Dにあるシンク520は、エネルギーソースからエネルギーを無線で受信し、エネルギーを負荷540に提供する。シンク520および負荷540の双方がエレベーターかご550の外側に位置決めされる。インピーダンス整合ネットワークおよび他の構成要素(図示せず)を用いてエレベーターシステムの性能を制御および最適化することができる。システムを、電気車両の無線充電等の他の用途に適合させることができる。
【0035】
エネルギーシンクとしての共振器アレイ
本発明のいくつかの実施の形態は、共振器のアレイによって形成されたシンクを用いる。図6Aおよび図6Bは、異なる構成を有するシステム610および620の例を示している。双方のシステムにおいて、エネルギーソースは、線形アレイに整列されたスパイラルによって構築される。ドライバにおいてループアンテナを用いて、エネルギーをアレイの一端において共振スパイラルに提供する。システム610において、シンクは、同一のスパイラル共振器であり、アレイの他端において共振スパイラルと同軸に位置合わせされる。シンクは、アレイの平面から0.5m離れている。負荷は、ドライバから0.1m離れている。ループアンテナを用いてエネルギーシンクからエネルギーを抽出する。システム620では、エネルギーシンクは、同一のスパイラルのアレイによって構築される。ループアンテナがアレイの一端においてスパイラルと同軸に位置合わせされる。
【0036】
図6Cは、システム620の周波数の関数としての伝達効率625が、システム610内の伝達効率615よりも良好であることを示している。
【0037】
2つの結合された共振器アレイ
図7は、無線エネルギー伝達のための1対の共振器アレイ、すなわち第1のアレイ710および第2のアレイ720を含むシステム700を示している。共振周波数において振動する場がドライバ730からソース710に提供される。エネルギーは、無線で提供することができる。エネルギーソース710およびシンク720は、共振物体711および721のアレイである。エネルギーソースおよびエネルギーシンク内の共振物体間の相互結合によって、共振アレイ構成に従うシステムにおいて、無線エネルギーが再分配される。通常、それぞれ第1のアレイおよび第2のアレイの物体間の距離は、エネルギーソースとエネルギーシンクとの間の距離未満である。
【0038】
アレイ710とアレイ720との間の相互結合によって、中距離、例えばいくつかの共振物体の寸法サイズにわたる近接場750を通じた無線エネルギー伝達がサポートされる。エネルギーは、エネルギーソース内の1つまたは複数の共振物体と、エネルギーシンク内の1つまたは複数の共振物体との結合によりエネルギーソースからエネルギーシンクに伝達される。相互結合に起因する全体的な場の分布は、単一のシステムの2つの共振器アレイの結合モードを形成する。
【0039】
様々な実施の形態において、共振物体711および721は、異なる形状およびジオメトリである。共振周波数は、エネルギーソースとエネルギーシンクとの間で変動する可能性がある。しかしながら、1つの実施の形態は、最適なエネルギー伝達効率を達成するために、双方の共振物体について同じ共振周波数を維持する。
【0040】
様々な実施の形態において、第1のアレイのサイズは、第2のアレイのサイズよりも小さいか、第2のアレイのサイズよりも大きいか、または第2のアレイのサイズと等しい。第1のアレイおよび第2のアレイは、同じ寸法または異なる寸法とすることができる。第1のアレイおよび第2のアレイは、同じ自由度または異なる自由度を有することができる。1つの実施の形態では、第2のアレイは、少なくとも1自由度を有する。
【0041】
或る実施の形態では、ドライバは、1つの共振物体にまたはいくつかの共振物体に同時にエネルギーを提供することができる。また、1つの実施の形態では、ドライバ給電位置731は、動くことができる。システム共振周波数および共振周波数毎の共振モードは、システム構成後、すなわちエネルギーソースおよびエネルギーシンクの物体が決まった後に固定される。ドライバ730は、エネルギーソース710内の任意の共振器物体711においてシステムにエネルギーを提供することができる。
【0042】
同様に、1つの実施の形態では、負荷エネルギー抽出位置は、動くことができる。エネルギーは、エネルギーシンクの任意の共振物体721から抽出することができる。この実施の形態の変形形態では、負荷740は、エネルギーシンクのアレイ内の2つ以上の物体から、例えば様々な位置741〜744においてエネルギーを抽出することができる。
【0043】
いくつかの実施の形態では、システム700において複数のドライバを用いて様々な位置においてエネルギーソースアレイ710にエネルギーを提供することができる。同様に、複数の負荷740および745を用いて様々な位置においてエネルギーシンク720からエネルギーを抽出することができる。
【0044】
移動デバイス
図8は、エレベーターかご等の移動するデバイスにエネルギーを無線で供給するシステム800を示している。エネルギーソースは、共振物体880のアレイ860である。エネルギーソースは、昇降路に設置され、エネルギードライバ810からエネルギー815を受信する。エネルギードライバは、送電網に接続することができ、エネルギーをエネルギーソースに、例えば誘導的に供給することができる。共振器アレイは、指定された共振周波数において指定された共振モードで電磁エバネッセント波を生成するように構成される。
【0045】
エレベーターかご850、すなわち負荷が共振器アレイ820によって形成されたエネルギーシンクに無線で接続される。エネルギーシンクは、エネルギーソースの共振器アレイより少ないか、多いか、または同じ数の共振物体を有することができる。
【0046】
実施例
図9は、別の実施の形態例を示している。27MHzで共振しているスパイラル共振器910がエネルギーソース920およびエネルギーシンク930の共振器アレイを形成する。例えば、双方の共振器アレイは、6個のスパイラル素子を有する。半径Rを有する2つのループアンテナがエネルギードライバ940および負荷950として用いられる。
【0047】
ドライバ/負荷とソースアレイ/シンクアレイとの間の離隔距離は、D2である。エネルギーソースとシンクアレイとの間の距離は、Dである。
【0048】
例えば、エネルギーが有線ケーブルによりエネルギードライバに提供され、その後、例えば共振周波数における誘導結合によりソースに提供される。指定された共振モードがシステムにおいて励起され、エネルギーが共振モードに従ってシステム全体にわたって再分配される。負荷950がエネルギーシンク930からシステムの外部にエネルギーを無線で抽出する。エネルギーがシステムから抽出されると、システムのエネルギーバランスが乱され、バランスを維持するために更なるエネルギーがドライバから提供される。したがって、ドライバから負荷に伝達されるエネルギーは、システムにおいて共振モードが維持される限り継続する。
【0049】
図10Aに示すように、システムの共振モードが周波数に依拠するので、伝達効率も周波数に依拠する。エネルギー伝達効率1030は、システムにおいて複数のピークを有し、これは、複数共振器構成の結果である。
【0050】
図10B〜図10Eに示すように、電力伝達効率曲線1011〜1014における異なるピークは、異なる対応する共振モード1021〜1024に対応する。システム全体に共通の共振モードが励起されるとき、エネルギーは、放射をほとんど伴わずにシステム内に閉じ込められる。
【0051】
特に、ドライバから負荷への電力伝達効率は、エネルギーがシステム全体にわたって均等に分配される共振モードにおいて最も高くなり、これは、ピーク1014である。
【0052】
図11は、対応するモード1110を示している。ソース920およびシンク930内の各共振器は、この共振モードにおいて励起され、エネルギーは、2つのアレイに沿ってかつこの2つのアレイ間で振動して均等に分配される。
【0053】
2次元共振アレイ
図12は、共振物体のアレイをどのように様々な次元、例えば共振物体の2次元(2D)アレイとすることができるかを示している。2Dアレイは、x方向およびy方向双方に延在し、エネルギーソース1240およびエネルギーシンク1230として用いられる。エネルギードライバ1260は、共振周波数においてソースにエネルギーを提供する(1250)。ソース内の共振物体間の相互結合1270〜1273に起因して、システムにわたって双方向に無線エネルギーが再分配される。ソース内の共振物体と、シンク内の共振物体との相互結合1274によって、結果としてソース1240からシンク1230への無線エネルギー伝達が生じる。システム全体の対応する共振モードが、共振周波数においてエネルギーを提供することを通じて励起される。対応する共振モードにおいて、システム1200内のエネルギーが3方向において再分配される。特に、エネルギーは、z方向において無線で伝達される。
【0054】
金属線の2つのループの結合
電磁(EM)波の結合は、誘導結合および共振結合に基づく無線エネルギー伝達において不可欠である。無線電力伝達システムをより良好に設計するには、EM物体間の結合挙動を理解することが重要である。
【0055】
まず、金属線の2つのループの結合を説明する。図13は、2つの結合金属ループを示している。それらの位置および幾何学的パラメーターは、座標系において規定される。2つの金属ループの相互結合は、
【0056】
【数1】

【0057】
によって記載することができる。ここで、Φは、第1のループ内の電流Iに起因して第2のループを通過する磁束であり、
【0058】
【数2】

【0059】
である。
【0060】
2つのループの自己インダクタンスは、LおよびLである。結合係数は、
【0061】
【数3】

【0062】
として規定される。半径Rを有する金属ループの自己インダクタンスは、
【0063】
【数4】

【0064】
である。
【0065】
次に、同一のサイズの、自己インダクタンスL=Lを有する2つのループの2つの特殊な事例を検討する。これらの2つの事例は、図14および図15に示されている。
【0066】
図14において見て取ることができるように、ループ間の距離dで2つのループが同軸であるとき、式は、以下のように簡単化される。
【0067】
【数5】

【0068】
結合係数は、数値的に計算される(そして図14において距離の関数としてプロットされる)。結合係数は、2つのループが互いに近接しているとき、短い範囲において非常に強い。距離がループの半径に等しいとき、結合係数kは、約0.05に減少する。
【0069】
ループ間の距離dで2つのループが図15に見られるように共平面であるとき、式は、以下のように簡単化される。
【0070】
【数6】

【0071】
結合係数は、数値的に計算され、図15において距離の関数としてプロットされる。2つのループが並んでいるときであっても、結合係数は、既に非常に弱い。距離がループの半径に等しいとき、結合係数は、0.005未満に減少する。
【0072】
上記の解析は、2つの金属ループの結合係数が、同軸の場合よりも共平面の場合にはるかに弱く、双方の場合に距離の増加に伴い急速に減少することを示している。結合係数は、第1のループ内の電流に起因して第2のループを通過することができる磁束の量に比例する。
【0073】
図14および図15に示すように、共平面の場合よりも同軸の場合に、はるかに多くの電磁場の磁束1401が第2のループを通過する。誘導結合または、共振結合を用いた無線電力伝達システムでは、受信機(複数の場合もあり)は、通常、より高い電力伝達効率およびより大きな伝達距離を得るために、送信機と共平面に配置される代わりに送信機と同軸位置に配置される。
【0074】
誘導結合に基づく無線エネルギー伝達の場合、高い効率を達成するために、通常、高い結合係数(k>0.9)が必要とされる。このため、送信機と受信機との間の最適な同軸位置合わせおよび非常に小さな距離が必要とされる。共振結合に基づく無線電力伝達の場合、エネルギーは、送信機と受信機との間の共振エネルギー交換の多数のサイクルを介して受信機に伝達することができる。受信機に結合された電力が、各サイクルにおける結合において失われる電力よりも高い限り、高い結合係数がなくても効率的な電力伝達を達成することができる。
【0075】
共振物体のアレイにおける結合
本発明の実施の形態による共振物体のアレイを用いた無線エネルギー伝達システムでは、電力を受信機に提供するために2つ以上の共振物体が電磁的に密に結合される。これらの物体は、電気的に接続されていない。すなわち、電力は、電磁波の共振結合を介してのみ伝達される。
【0076】
高い伝達効率およびより大きな伝達距離を得るために、受信機は、この受信機の平面の軸が送信物体の平面の軸と平行(同軸、または横方向シフトで同軸)になるように配置されることが好ましい。アレイ内の共振物体は、結合による電力損失を低減するために、密に結合される必要がある。一般に、共振物体のアレイがこのアレイの一端で励起されるとき、近傍物体間の結合係数がより高いほど、アレイの他端により多くのエネルギーが結合される。さらに、共振結合のハイブリッド化に起因して、帯域幅は、より広くなり、より高い結合係数が得られる。
【0077】
図16は、共振物体のアレイ1601およびエネルギー受信機1602の一例を示している。共振物体は、多重巻き共振器である。アレイは、線形アレイに配列された10個のそのような物体を有する。受信機も、アレイと平行に配列された多重巻き共振器であり、アレイによって形成された平面に沿って自由に移動することができる。アレイ内の第1の物体は、外部電源によって励起される。共振結合を介してアレイの全ての物体にエネルギーが分配される。
【0078】
図17に示すように、近傍物体間の2つの異なる間隔をアレイに用いることができ、励起周波数の関数としてのエネルギー伝達効率は、数値シミュレーションによって計算される。事例1において、近傍物体間の間隔は、共振物体の幅の15%である。事例2において、近傍物体間の間隔は、共振物体の幅の僅か3%である。受信機とアレイの平面との間の距離は、共振物体の幅の50%である。
【0079】
励起周波数の関数としてのエネルギー伝達効率は、図18に示されている。アレイが近接した位置に配置されているとき、効率は、全ての励起周波数についてより高く、帯域幅は、はるかに広いことがわかる。
【0080】
異なる位置の受信機
受信物体が異なる位置にあるとき、受信物体とアレイとの間の結合は、異なる。
【0081】
図19に示すように、アレイから受信機への結合は、受信機がアレイ内の1つの物体に位置合わせされているときに、より強力である。それと比較して、受信機が近傍物体の間にあるとき、結合はより弱い。2つの近傍物体からの磁束は、異なる方向を有する場合があり、それによって受信物体を通過する磁束全体が相殺され、結合係数が更に小さくなる。
【0082】
結合係数の変化に起因して、受信物体が異なる位置にあるとき、電力伝達効率は、それに応じて変化する。さらに、受信機のロケーションが変化するとき、アレイおよび受信機のシステムの共振モードおよび共振周波数も変化する。システムの共振周波数で動作することによって、通常、他の周波数で動作するよりも高い電力伝達効率がもたらされる。したがって、受信機が異なる位置に移動すると、ピーク電力伝達効率の周波数も変動する。
【0083】
図20は、共振物体のアレイおよびこのアレイの方向に沿って移動する受信物体の側面図を示している。図28にシステム設計が示されている。受信機とアレイとの間の距離は、アレイ内の共振物体の幅の50%である。アレイは、アレイ内の第1の物体において、外部ソースによって励起される。
【0084】
受信機位置の関数としての電力伝達効率が図21Aおよび図21Bに示されている。受信機位置は、アレイの周期を単位とする。ゼロは、受信機がアレイ内の第1の物体に位置合わせされていることを意味する。数が大きくなるほど、受信機は、第1の物体から離れている。図21Aおよび図21Bは、2つの異なる励起周波数におけるプロットを示している。双方の図は、受信機がアレイに沿って進むときの効率変動を示している。図21Aにおいて、効率は、85%から60%まで変動する。図21Bにおいて、効率は、90%から10%まで変動する。変動は、図21Aよりも図21Bにおいてより大きい。これは、2つの周波数における異なる共振モードに起因する。
【0085】
共振物体のアレイを用いて無線電力伝達の効率変動を低減する方法を提供することが望ましい。
【0086】
共振物体のアレイを用いた無線電力伝達における、複数の受信機を用いた効率変動の低減
1つの共振物体を受信機として用いる代わりに、2つ以上の物体を受信機として用いることができる。これらの物体は、異なる位置に配置され、アレイに沿って同時に移動することができる。次に、これらの受信機において受信されたエネルギーが収集され、電力消費デバイスのために用いられる。複数の受信機を用いる目的は、受信機が異なる位置にあるときに、効率変動を相殺し、平滑な無線エネルギー伝達を達成することである。
【0087】
図22は、共振物体のアレイおよび2つの受信機の一例を示している。第1の受信機は、アレイ内の共振物体のうちの1つと位置合わせされ、第2の受信機は、アレイ内の2つの共振物体の中間に位置合わせされる。受信機とアレイとの間の距離は、アレイ内の共振物体の幅の50%である。アレイは、アレイ内の第1の物体において外部ソースによって励起される。2つの受信機は、この受信機間の相対運動を伴うことなくアレイに沿って同時に移動する。第1の受信機が高い結合係数を有するとき、第2の受信機は、低い結合係数を有し、逆もまた同様である。受信機がアレイに沿って移動しているとき、電力伝達効率は、依然として受信機ごとに変動する。しかしながら、2つの受信機における結合電力と入力電力との比である全体効率は、安定する。
【0088】
図23Aおよび図23Bは、2つの異なる周波数における受信機位置の関数として電力伝達効率を示している。受信機位置は、アレイの周期を単位とする。ゼロは、第1の受信機がアレイ内の第1の物体に位置合わせされていることを意味する。数が大きくなるほど、受信機は、第1の物体から離れている。
【0089】
双方の図において、効率は、2つの受信機について別個に、依然として強い変動を有し、異なる周波数は、異なる変動を有する。しかしながら、全体効率は、2つの受信機を用いることに起因して、非常に安定し、より高くなる。双方の図において、受信機が異なる位置にあるとき、全体効率変動は、10%以内であり、効率は、80%を超える。
【0090】
例から、異なる位置において複数の受信機を用いることにより、効率変動を低減し、異なる位置において高い効率を大幅に維持することができることがわかる。さらに、これは、無線電力伝達に用いることができる周波数帯域幅を広げるのに役立つ。
【0091】
共振物体のアレイを用いた無線電力転送における、複数のアレイを用いた効率変動の低減
共振物体の2つ以上のアレイの組合せを、1つまたは複数の受信機への無線電力伝達に用いることができる。共振器物体の単一のアレイよりも、受信機の経路上のより均一なエネルギー分配を与えるために、異なる複数のアレイが位置のオフセットを有するように配置される。
【0092】
図24は、共振物体の2つのアレイ2401および受信物体2402の一例を示している。2つのアレイは、密に結合されており、このアレイ間の距離は、小さい。アレイ内の共振器は、1つまたは複数のオフセットを有するように配置される。すなわち、上側のアレイは、下側のアレイに対して水平にかつ/または垂直に変位される。
【0093】
図25に示すように、EM場は、通常、アレイ内の各共振物体の近くでより強い。EM場は、2つの共振物体間でより弱い。このため、アレイに沿って移動している受信物体への結合は、異なる位置において異なる。共振物体の2つのアレイが用いられる場合、エネルギーは、密に結合されたアレイ内で再分配される。
【0094】
図25に示すように、受信物体において、より均一な分配パターンが形成される。このため、受信物体がアレイに対して様々な位置にあるときに、受信物体への結合がより均一となる。これによって電力伝達効率の変動が低減する。
【0095】
図26は、共振物体の2つのアレイを用いて1つまたは複数の受信機に電力を無線で送信する別の例を示している。2つのアレイは、物理的に分離しており、互いに結合している場合も結合していない場合もある。2つのアレイは、2つ以上の外部ソースによって別個に励起させることができる。アレイは、単一の外部ソースによって励起させることもでき、共振結合を介してアレイ内のエネルギー分配を有することもできる。2つのアレイ間に受信機2601が配置され、双方のアレイに結合される。受信機は、いずれのアレイからも電力を無線で受信することができる。アレイは、互いに対し横方向の変位を有し、受信機の経路上でより均一なEM場分布を達成することができる。この手法を用いることによって、受信機への電力伝達は、より安定し、経路に沿った効率変動がより少なくなる。
【0096】
共振物体のアレイを用いて結合を高めて電力伝達効率を改善するメタマテリアル
無線電力伝達システムにおいてメタマテリアルを用いることができる。目的のうちの1つは、電力伝達効率を改善することである。メタマテリアルは、近接場分布を変更し、エバネッセントEM波の結合を高めることができる。送信物体(Tx)と受信物体(Rx)との間の結合は、メタマテリアルによって改善することができる。無線電力伝達システムにおける電力伝達効率は、メタマテリアルによって増大することができる。以前の応用例では、メタマテリアルの使用は、送信機として単一の物体(共振または非共振)を用い、受信機として単一の物体(共振または非共振)を用いる無線電力伝達システムにおけるものである。共振物体のアレイを有する無線電力伝達システムにおいても、メタマテリアルを同様に用いることができる。
【0097】
図27において、共振物体のアレイを有する無線電力伝達にメタマテリアル2701を用いる一例が説明されている。メタマテリアルのスラブが、共振物体のアレイおよび受信物体の中間でアレイの近くに配置される。メタマテリアルは、様々なタイプ、すなわち二重負性(負の屈折率のメタマテリアル)または単一負性とすることができ、様々な構成、すなわち等方性または異方性とすることができる。メタマテリアルを用いて、アレイと受信物体との間の結合が高められ、アレイからの受信物体に結合されたEM場が増大する。最終的に、システムの電力伝達効率がメタマテリアルによって増大する。この手法は、受信機がアレイに沿って移動しているときに効果的である。受信機が様々な位置にあるときに、効率を改善することができる。
【0098】
図28において、共振物体のアレイを用いた無線電力伝達のためにメタマテリアルを用いる別の例が説明されている。メタマテリアルのスラブが、共振物体のアレイおよび受信物体の中間で受信物体の近くに配置される。図27におけるシステムと同様に、アレイと受信物体との間の結合がメタマテリアルによって高められ、システムの電力伝達効率がメタマテリアルによって増大する。この手法は、受信機がアレイに沿って移動しているときに効果的である。受信機が様々な位置にあるときに、効率を改善することができる。
【0099】
共振物体のアレイを用いた無線電力伝達システムにおけるEM遮蔽および性能改善のための反射器
共振物体のアレイを用いた無線電力伝達システムにおいて、システムの近くに強力なEM場が存在する。他方で、外部物体への結合によって、システムに対する余分な電力損失が生じる。安全に対する配慮およびシステム性能のために、可能な場合、外部環境に対しEM場を遮蔽した方がよい。また、図29に示すように、特にアレイの終端において、遠距離場への放射に起因してエネルギーの小さな部分2901が失われる。放射損失を低減することによって、無線電力伝達システムの性能を改善することができる。EM遮蔽および放射損失低減の双方を行う、反射器と呼ばれるデバイスを説明する。
【0100】
反射器の目的は、遠距離場への放射損失を低減し、外部環境に対しシステムを遮蔽することである。反射器は、様々な形態を有することができる。反射器は、金属板、構造化された金属板、金属構造および誘電体構造の組合せ、メタマテリアル等とすることができる。反射器3401は、図30に示すようにアレイの終端に配置することができる。図31に示すように、デバイスは、システム構成およびシステム要件に依拠して、他のロケーションに配置することもできる。
【0101】
図32において、反射器を用いたシステム性能について一例が与えられている。ここで、金属ボックス(ファラデーケージ)を用いて、外部環境からシステムを覆い、放射が入ることができないようにする。同じ位置に共振物体のアレイおよび受信機を有するシステムについて、効率性の比較が、反射器を有する場合と有しない場合についてプロットされている。図32から、反射器を有する場合に、広い帯域の高電力伝達効率が得られることがわかる。反射器の存在によってシステムの共振結合挙動が変更され、それによって、反射器を有しないシステムと比較して帯域がシフトされる。
【0102】
発明の効果
従来技術では、共振器アレイは、通常、互いに電気的に接続されて、より大きな複合共振器を形成する。対照的に、本明細書において記載されるアレイは、電気的に絶縁されている。唯一の結合は、誘導による電磁的なものである。さらに、エネルギーシンクおよび負荷は、共振器が強結合されているので、アレイの任意の部分に誘導結合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを無線で交換するシステムであって、
少なくとも3つの物体からなるアレイであって、前記物体は、類似した共振周波数を有し、前記各物体は、電磁的(EM)かつ非放射性であり、前記エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成し、前記各物体は、他の前記物体から電気的に絶縁され、全ての他の物体から或る距離に配置され、それによって、前記物体は、前記エネルギーを受信すると、エバネッセント波の共振結合を介して少なくとも1つの他の物体に強結合される、アレイと、
前記共振周波数における前記エネルギーを前記アレイ内の少なくとも1つの物体に提供し、それによって、前記システムの動作中、前記エバネッセント波の前記共振結合を介して、前記エネルギーが前記少なくとも1つの物体から前記アレイ内の全ての他の物体に分配されるようにする、エネルギードライバと、
を備える、エネルギーを無線で交換するシステム。
【請求項2】
前記結合は、誘導結合、容量性結合、またはその組み合わせである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記物体は、100より大きい品質係数を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記アレイ内の前記物体は、任意に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
負荷に接続されたシンクであって、前記アレイ内の前記エネルギーは、前記エバネッセント波の前記共振結合を介して前記シンクに伝達される、シンクを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記シンクは、前記エネルギーを交換しながら、前記アレイに対して移動する、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
負荷に接続された複数のシンクであって、前記アレイ内の前記エネルギーは、前記エバネッセント波の前記共振結合を介して前記シンクに伝達される、複数のシンクを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
複数のシンクであって、前記シンクは、異なる負荷に接続される、複数のシンクを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記物体は、2次元で配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記物体は、3次元で配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
複数のアレイであって、前記各アレイは、少なくとも3つの物体を有する、複数のアレイを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記アレイは、互いにオフセットされる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記オフセットは、水平、垂直、またはそれらの組合せである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記各アレイは、独立して励磁される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記アレイ内の前記エネルギーは、単一のシンクに伝達される、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記各物体に伝達される前記エネルギーの位相および振幅は、動的に制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記アレイは、メタマテリアルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記アレイは、反復器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記アレイを取り囲むファラデーケージを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
エネルギーを無線で交換するように構成されたシステムであって、
物体の第1のアレイを備えるエネルギーソースと、
物体の第2のアレイを備えるシンクと、なお、前記エネルギーソースおよび前記シンク内の前記物体は、類似した共振周波数を有し、電磁的(EM)かつ非放射性であり、前記エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成し、
エネルギードライバであって、前記共振周波数における前記エネルギーを前記エネルギーソース内の少なくとも1つの物体に提供し、それによって、前記システムの動作中、前記エネルギーが前記エネルギーソース内の前記物体から前記エネルギーソース内の全ての他の物体に分配されるようにする、エネルギードライバと、
前記シンクから前記エネルギーを受信するための負荷とを備え、前記第1のアレイおよび前記第2のアレイは、それぞれ、エバネッセント波の共振結合を介して、前記第1のアレイおよび前記第2のアレイ内の少なくとも1つの他の物体に強結合され、前記シンクは、前記第1のアレイ内の1つまたは多数の物体と、前記第2のアレイ内の1つまたは多数の物体との前記共振結合を介して前記エネルギーソースから前記エネルギーを無線で受信するように構成される、エネルギーを無線で交換するシステム。
【請求項21】
エネルギーを無線で交換する方法であって、
少なくとも3つの物体からなるアレイ内の全ての物体間で前記エネルギーを分配することであって、前記各物体は、共振周波数を有し、電磁的(EM)かつ非放射性であり、前記エネルギーの受信に応じてEM近接場を生成するように構成され、前記アレイ内の前記各物体は、前記アレイ内の全ての他の物体から或る距離に配置され、それによって、前記物体は、前記エネルギーを受信すると、エバネッセント波の共振結合を介して前記アレイ内の少なくとも1つの他の物体に強結合され、それによって前記システムの動作中、前記エネルギーが前記物体から前記アレイ内の全ての他の物体に分配される、分配すること、並びに、
前記エネルギーを、前記アレイから或る距離に配置されたシンクに無線で送信すること、
を含む、エネルギーを無線で交換する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−182981(P2012−182981A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−35339(P2012−35339)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.