説明

エネルギー変換機器選択方法、エネルギー変換機器選択システム、エネルギー変換機器選択プログラム及び記録媒体。

【課題】複雑に関係し合う膨大な量の情報から、最適なエネルギー変換機器の機種及び/又は機種の組合せを選択する。
【解決手段】データベースに、動作仕様データと、導入価格データと、変動要因データとを登録し、動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データを必要に応じて随時更新し、施設の仕様に関する施設仕様データを入力し、施設仕様データと、導入価格データと、変動要因データとに基づいて、各機種のイニシャルコストを算出し、施設仕様データと、動作仕様データと、変動要因データとに基づいて、各機種のランニングコストを算出し、イニシャルコストと、ランニングコストとに基づいて、施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業施設や一般住宅等の施設に導入できる複数のエネルギー変換機器の選択肢から、最新で且つ最適なエネルギー変換機器を選択するためのエネルギー変換機器選択方法及びエネルギー変換機器選択システム、さらには、エネルギー変換機器選択プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設や一般住宅等の建造物内には、空調機器、給湯器、照明等の様々なエネルギー変換機器が配備される。これらの機器は、通常、複数の製造業者から、様々な型番を有する機種として市販されており、各機種の仕様は様々である。特に、近年では、エネルギー効率の高い機種の開発が盛んであり、新しい機種が次々に提案されている。
【0003】
これらの機器は、多くの場合、エネルギーとして電力を使用する。電力は、通常、電力会社から供給されるが、太陽光発電、燃料電池及び蓄電池等、電力源の選択肢も増加している。また、燃料電池の発電時に生じる排熱を熱エネルギー源として利用して、総合的なエネルギー効率を高めるコジェネレーション技術も進化している。
【0004】
更に、地球温暖化対策のために、CO排出量を制限しようとする国際的な協議も行われており、この対策は今後急加速していくものとみられる。したがって、CO排出量の削減は、国家的且つ国際的な課題でもあり、政府が、CO排出量の削減に取り組む企業又は個人に対し、減税、補助金の交付等の優遇政策を実施することもある。
【0005】
また、石油、天然ガス等の化石燃料は、将来的に枯渇することが予測されており、これらの価格は、国際情勢の影響を強く受けるため、不安定である。更に、資源輸入国では、為替相場の変動も燃料価格に影響する。したがって、これらの資源に由来するエネルギーの価格の変動には著しいものがある。
【0006】
新設する施設内に各種のエネルギー変換機器を導入する際、対費用効果の側面から、どの機種を導入することが有利であるかを判定するには、上述した様々な要素を複合的に検討する必要がある。また、既設の施設内の機器に問題が生じた場合には、その機器を修理するか、買い換えるかを決定する必要があり、この場合も、上述した様々な要素を複合的に検討する必要がある。
【0007】
なお、使用エネルギー効率の最適化制御方式に関する発明を開示する文献として、特開2007−287063号公報(特許文献1)や、特開2009−281619号公報(特許文献2)に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−287063号公報
【特許文献2】特開2009−281619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、進化し続ける膨大な数の機種のそれぞれの動作仕様に関する情報を入手し、現在又は将来のエネルギー価格、優遇政策等の要素を考慮に入れながら各機種のイニシャルコスト及びランニングコストを予測し、何れの機種を選択することが有利か、といった判断を下すことは、一個人又は一企業のみでは、困難なほどに複雑になっている。
【0010】
そこで、本発明は、複数のエネルギー変換機器の動作仕様、各機種の導入価格、エネルギー価格や優遇政策、更にエネルギー変換機器が導入される施設の仕様、並びにこれらから算出されるイニシャルコスト及びランニングコスト等、複雑に関係し合う膨大な量の情報から、最新で且つ最適なエネルギー変換機器の機種や各種の機器の機種の組合せを選択できるエネルギー変換機器選択方法及びエネルギー変換機器選択システム、更にコンピュータをエネルギー変換選択システムと機能させるプログラム及びこのプログラムを記録した記録媒体を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述したような技術課題を解決するために、本発明に係るエネルギー変換機器選択方法は、データベースを準備するステップと、データベースに、エネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データを登録するステップと、データベースに、各機種の導入価格に関する導入価格データを登録するステップと、データベースに、エネルギー価格及び/又は優遇政策を含む変動要因データを登録するステップと、データベースに登録されている動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データを必要に応じて随時更新するステップと、エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データを入力するステップと、施設仕様データと、導入価格データと、変動要因データとに基づいて、各機種のイニシャルコストを算出するステップと、施設仕様データと、動作仕様データと、変動要因データとに基づいて、各機種のランニングコストを算出するステップと、イニシャルコストと、ランニングコストとに基づいて、施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定するステップとを有する。
【0012】
施設内に既にエネルギー変換機器が配備されている場合、動作仕様データは、既に配備されているエネルギー変換機器の保守に関する保守コストを示すデータを含み、施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する際、既存のエネルギー変換機器の保守コストも考慮に入れて、既存のエネルギー変換機器の継続使用も選択肢の1つに追加してもよい。
【0013】
エネルギー変換機器選択方法は、決定によって導入されたエネルギー変換機器又は既存のエネルギー変換機器を運転し、又はこの運転をシミュレートして、運転/シミュレート情報を入手し、運転/シミュレート情報に基づいて、動作仕様データを更新するステップを更に有していてもよい。
【0014】
前記データベースは、通信回線を介して外部ネットワークに接続するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明に係るエネルギー変換機器選択システムは、エネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データと、各機種の導入価格に関する導入価格データと、エネルギー価格及び/又は優遇政策を含む変動要因データとが登録されると共に、動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データが必要に応じて随時更新されるデータベースと、エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データを入力する入力手段と、導入価格データと、変動要因データとに基づいて、各機種のイニシャルコストを算出し、及び施設仕様データと、動作仕様データと、変動要因データとに基づいて、各機種のランニングコストを算出する演算手段と、イニシャルコストと、ランニングコストとに基づいて、施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する決定手段とを備える。
【0016】
ここで、データベースは、通信回線を介して外部ネットワークに接続するようにしてもよい。
【0017】
更に本発明は、コンピュータにインストールされることにより、当該コンピュータを、エネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データと、前記各機種の導入価格に関する導入価格データと、エネルギー価格及び/又は優遇政策を含む変動要因データとが登録されると共に、前記動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データが必要に応じて随時更新されるデータベースを格納する格納手段、前記エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データを入力する入力手段、前記導入価格データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のイニシャルコストを算出し、及び前記施設仕様データと、前記動作仕様データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のランニングコストを算出する演算手段、前記イニシャルコストと、前記ランニングコストとに基づいて、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する決定手段として機能させるためのエネルギー変換機器選択プログラムである。
【0018】
更にまた、本発明は、コンピュータにインストールされることにより、当該コンピュータを、エネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データと、前記各機種の導入価格に関する導入価格データと、エネルギー価格及び/又は優遇政策を含む変動要因データとが登録されると共に、前記動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データが必要に応じて随時更新されるデータベースを格納する格納手段、前記エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データを入力する入力手段、前記導入価格データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のイニシャルコストを算出し、及び前記施設仕様データと、前記動作仕様データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のランニングコストを算出する演算手段、前記イニシャルコストと、前記ランニングコストとに基づいて、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する決定手段として機能させるためのエネルギー変換機器選択プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明を採用することにより、施設仕様データと、導入価格データと、変動要因データとに基づいて、各機種のイニシャルコストを算出し、施設仕様データと、動作仕様データと、変動要因データとに基づいて、各機種のランニングコストを算出し、イニシャルコストと、ランニングコストとに基づいて、施設に導入する機種や各種の機種の組合せを決定するので、複雑に関係し合う膨大な情報から、ユーザにとって最も有利なエネルギー変換機器を選択することができる。
【0020】
また、本発明を採用することにより、データベースに登録されている動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データを必要に応じて随時更新し、運転情報及びシミュレート情報、又はいずれか一方の情報に基づいて、エネルギー変換機器の動作仕様データを更新するので、データベースを継続的に進化させることができ、エネルギー変換機器の製造業者及び保守業者にも有益な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用されたエネルギー変換機器選択方法のフローチャートである。
【図2】本発明が適用されたエネルギー変換機器選択システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を適用したエネルギー変換機器選択方法及びエネルギー変換機器選択システムの実施の形態を説明する。
【0023】
なお、本発明において、エネルギー変換機器とは、例えば光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電機器、電気エネルギーを熱エネルギー及びそれを搬送する流体運動に変換する空調機器、電気エネルギーを光エネルギーに変換する照明機器等、さらには、電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)等エネルギーの形態を各種態様のエネルギーに変換する機器の総称である。エネルギー変換機器は、多くの場合、複数の製造業者から競合的に市販されており、各製造業者は、1つのカテゴリに属するエネルギー変換機器について、複数の機種(model)を製造し、市販している場合が多い。
【0024】
これらのエネルギー変換機器は、様々な施設内に配備される。ここで、施設とは、ショッピングモール等の商業施設、病院、学校、劇場、映画館、工場、住宅等、エネルギー変換機器が配備されるあらゆる形態の空間の総称である。特殊なケースでは、施設は野外である場合もあり、施設と野外が空間的に連続している場合もあり、開閉式のドームを備えた球技場等、施設の野外への開放の度合いが変化する場合もある。
【0025】
図1は、本発明を適用したエネルギー変換機器選択方法の一実施の形態のフローチャートである。ステップS1では、データベースを準備する。このデータベースには、以下に説明するような様々な情報を格納するための項目が設けられている。
【0026】
ステップS2では、2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データを登録する。動作仕様データとは、エネルギー変換機器の定格出力、消費電力、耐用年数等、様々なデータを含む。また、動作仕様データには、必要な保守の頻度及び保守に必要なコストも含まれる。これらのデータは、各機器の製造業者から入手するようにしてもよい。
【0027】
動作仕様データには、例えば、エネルギー変換機器が空調機器である場合、外部気温、設定温度、設置空間の容積や気象情報信号等によって、消費電力がどのように変化するか等の詳細なデータも含まれる。このようなデータは、実際の運転又はシミュレーションによって入手することもできる。実際の運転又はシミュレーションによって入手されるデータによって、製造業者からのデータを補強してもよく、製造業者からのデータを更新してもよい。
【0028】
ステップS3では、導入価格データを登録する。導入価格データとは、エネルギー変換機器の各機種の導入価格を示すデータであり、実際の販売価格の他、設置のための工事費等も含まれる。各機種の導入価格は、導入時期や導入地域によっても変化するため、導入価格は、随時更新する必要がある。
【0029】
ステップS4では、変動要因データを登録する。特に、消費エネルギーの削減又はCO排出量の削減に有効なエネルギー変換機器の導入には、政府等の公的機関が補助を行う場合がある。この補助とは、補助金の交付を始め、減価償却を行う際の税制面での優遇等、様々なものがある。変動要因データには、このような補助政策を数値化したデータが含まれる。また、変動要因データには、電気料金やガス料金等、変動する可能性があり、且つエネルギー変換機器のランニングコストに影響する可能性がある外的なあらゆる要因が含まれる。すなわち、この変動要因データは、後述するイニシャルコスト及びランニングコストに影響を与える可能性があるあらゆる情報を数値化したデータである。
【0030】
ステップS5では、上述した各データの更新の必要性を判定する。データの更新が必要であると判定された場合、処理は、ステップS6に進み、データを更新する。ステップS5において更新が不要であると判定された場合、又はステップS6においてデータを更新した後、処理はステップS7に進む。
【0031】
ステップS7では、施設仕様データを入力する。施設仕様データとは、新設される又は既設の施設の設計に関するデータである。このデータには、施設の外形寸法や容積に関するデータの他、建築材料に関するデータを含ませてもよい。また、施設の用途に応じて、空間内に収容される人員の予測数、空間内に配備される昇降機等を含む発熱機器の有無、空間が開閉される頻度等、様々な項目を含ませることができる。
【0032】
ステップS8では、施設仕様データと、導入価格データと、変動要因データとに基づいて、各機種のイニシャルコストを算出する。例えば、ある機種の導入に政府からの補助金が交付される場合、イニシャルコストは、導入価格(導入価格データ)から補助金(変動要因データ)を減じた価格となる。
【0033】
ステップS9では、施設仕様データと、動作仕様データと、変動要因データとに基づいて、各機種のランニングコストを算出する。ランニングコストは、月単位で算出してもよく、3年間使用する場合、10年間使用する場合等、継続して使用する期間別に場合分けして、複数のランニングコストを算出してもよい。ランニングコストは、施設の規模や用途(施設仕様データ)、機種の性能(動作仕様データ)、エネルギー料金(変動要因データ)等の様々なパラメータの影響を受ける。
【0034】
ステップS10では、上述のようにして算出されたイニシャルコストと、ランニングコストとに基づいて、施設に導入するエネルギー変換機器を選択する。多くの場合、イニシャルコストとランニングコストとを考慮して、ユーザにとって最も有利なエネルギー変換機器の組合せが選択される。
【0035】
なお、ここまで説明したステップS1〜ステップS10までの手順は、新設される施設に導入するエネルギー変換機器を決定する際に用いてもよく、既設の施設に配備されているエネルギー変換機器を交換する際に用いてもよい。後者の場合、動作仕様データは、施設内に既に配備されているエネルギー変換機器の保守に関する保守コストを示すデータを含む。ここでいう保守とは、消耗部品の交換、定期点検等を含み、保守コストは、これらに要する部品代、人件費等を含む。この保守コストは、当然、ランニングコストに反映される。
【0036】
また、この場合、エネルギー変換機器を選択するステップS10では、既存のエネルギー変換機器の継続使用も選択肢の1つとなる。すなわち、ステップS10では、既存のエネルギー変換機器を継続使用する場合のコスト(ランニングコスト)と、これを新しいエネルギー変換機器に入れ替える場合のコスト(イニシャルコスト+ランニングコスト)とを比較検討し、ユーザにとって最も有利な選択を行うとよい。
【0037】
ステップS11では、ステップS10で選択されたエネルギー変換機器から構成されるシステムを実際に運転又はシミュレートする。以下では、主に、システムを実際に運転する場合について説明するが、以下の説明は、現実世界における運転のみではなく、コンピュータ上でシステムをモデル化し、その挙動を推論するシミュレーションにも同様にあてはまることは、当業者にとっては明らかである。
【0038】
ステップS12では、この運転又はシミュレートによって得られた運転又はシミュレートデータ、又は双方のデータをデータベースにフィードバックする。このデータとは、例えば、実際の消費電力を示す情報である。近年では、通信機能を有する電力計であるスマートメータも開発されており、このような消費電力に関する情報は、遠隔地においても十分に収集可能である。これ以外にも、エネルギー変換機器が自らの動作に関する情報を蓄積し又は外部に通信する機能を有していれば、様々な動作データをフィードバックデータとして、データベースにフィードバックすることができる。
【0039】
データベース側では、このフィードバックデータに基づいて、主に、動作仕様データを更新する。既に、製造業者から提供されているデータがある場合、このフィードバックデータによって、不足するデータを補強し、又は既存のデータを修正する。このフィードバックデータは、更に、製造業者にフィードバックすることもできる。製造業者は、このようなフィードバックデータに基づいて、自社の動作仕様データを検証し、あるいは検証とともに補強することができる。
【0040】
このように、本発明に基づくデータベースは、フィードバックによって継続的に更新される。更新されたデータベースは、他のユーザへの提案に利用され、他のユーザに提案されたシステムからのフィードバックによって、データベースは、再び更新される。このような繰返しによって、データベースは、常に進化し、コンテンツを充実させ、その利用価値を高めていく。
【0041】
このデータベースは、ユーザに大きな利益をもたらす。すなわち、本発明のエネルギー変換機器選択方法は、複数のエネルギー変換機器の動作仕様、各機種の導入価格、エネルギー価格及び/又は優遇政策、及びエネルギー変換機器が導入される施設の仕様、並びにこれらから算出されるイニシャルコスト及びランニングコスト等、複雑に関係し合う膨大な量の情報から、最適なエネルギー変換機器の機種及び/又は機種の組合せをユーザに提案することができる。これにより、ユーザは、施設の新設又は維持に必要な費用を大幅に削減することができる。
【0042】
また、本発明に基づくデータベースは、エネルギー変換機器の製造業者にとっても有益である。上述のように、データベースには、実際の運転によって取得される動作データがフィードバックされるため、データベースに格納されるデータは、製造業者にとっても興味深いものとなる。製造業者は、様々な運転環境下での運転に基づく動作データによって、自社の製品の動作データの公称値を検証し、補強することができ、或いは、このような動作データを以後の製品開発に活用することができる。
【0043】
ランニングコストの正確な予測は、実証データの蓄積がない限り、困難である。そのため、機器導入の際、イニシャルコストが過度に重視される傾向がある。ランニングコストが安い高性能な機器は、一般的に、イニシャルコストが高い傾向がある。この結果、現実の市場では、長期的な観点からは有利なはずの高性能な機種が、性能の低い安価な機種にシェアを奪われている。本発明に基づくエネルギー変換機器選択方法を実施すれば、イニシャルコストとランニングコストとをバランスよく検討できるため、高度な技術が正当に評価される。これは、産業界全体の健全な発展のためにも望ましい。
【0044】
図2は、本発明に基づくエネルギー変換機器選択システム1の構成を示している。エネルギー変換機器選択システム1の主要な要素は、データベース2である。このデータベース2には、2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データ3と、各機種の導入価格に関する導入価格データ4と、エネルギー価格や各種の優遇政策を含む変動要因データ5とが登録されている。
【0045】
データベース2は、通信回線6を介して、外部ネットワーク7に接続してもよい。外部ネットワーク7は、例えばインターネットであってもよく、エネルギー変換機器の製造業者、販売業者、保守管理業者等の外部業者又は政府関連機関が、外部ネットワーク7及び通信回線6を介して、データベース2にアクセスできるようにする。そして、外部業者101,102に対し、様々なレベルの権限を与え、それぞれの権限に応じて、外部業者101,102がデータベース2内のデータを閲覧し、更にはそのデータを更新できるようにしてもよい。すなわち、上述した動作仕様データ3、導入価格データ4及び変動要因データ5は、外部業者が、この外部ネットワーク7及び通信回線6を介して、データベース2に供給してもよい。
【0046】
また、データベース2には、入力端末8を接続してもよい。入力端末8は、専用の入力装置であってもよく、ディスプレイ、記憶装置、キーボードを備え、必要なソフトウェアがインストールされた、汎用のコンピュータシステムであり、CADシステムであってもよい。上述した動作仕様データ3、導入価格データ4及び変動要因データ5は、この入力端末8を介して、データベース2に入力してもよい。動作仕様データ3、導入価格データ4及び変動要因データ5又はいずれか一方が書き込まれた記憶媒体を入力端末8に挿入又は接続して、必要なデータを一旦入力端末8に読み込ませた後、データベース2に供給するようにしてもよい。
【0047】
また、入力端末8は、エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データ9を入力するためにも使用される。この施設仕様データ9も、上述した各種のデータと同様、入力端末8に直接入力してもよく、通信媒体、記憶媒体等の媒体を介して、間接的に供給してもよい。
【0048】
入力端末8及びデータベース2は、演算エンジン10に接続されている。演算エンジン10は、導入価格データ4と、変動要因データ5とに基づいて、各機種のイニシャルコスト11を算出し、及び施設仕様データ9と、動作仕様データ3と、変動要因データ5とに基づいて、各機種のランニングコスト12を算出する。
【0049】
この演算エンジン10には、決定エンジン13が接続されており、決定エンジン13は、このイニシャルコスト11及びランニングコスト12に基づいて、施設に導入する機種を決定する。
【0050】
また、演算エンジン10及び決定エンジン13は、上述したようなコストの検討及びエネルギー変換機器の選択を行うことに加えて、実際に選択されるエネルギー変換機器を最適に運転するための最適運転プログラム14を作成してもよい。最適運転プログラム14は、選択されたエネルギー変換機器の組合せを最適に制御するためのプログラムである。ここでいう最適な制御とは、例えば、対費用効果を最大化する制御、すなわち、低いコストで高い顧客満足度を実現できる制御である。データベース2に登録されているデータを有効に活用することによって、このような最新で且つ最適な運転プログラム14を事前に作成できることも、本発明の利点の1つである。
【0051】
なお、ここでは、本発明の構成を明瞭にするために、データベース2、入力端末8、演算エンジン10及び決定エンジン13を個別のモジュールとして示しているが、これらの一部又は全部を1つのハードウェア内に組み込んでもよい。例えば、演算エンジン10及び決定エンジン13の機能は、1つのアプリケーションソフトウェアとして実現してもよく、このアプリケーションソフトウェアが実装されたコンピュータシステムが、演算エンジン10及び決定エンジン13の機能を担ってもよい。更に、データベース2、入力端末8、演算エンジン10及び決定エンジン13を1つの統合されたハードウェア上に実現してもよい。
【0052】
図2には、エネルギー変換機器選択システム1によって選択され、施設20に導入することが決定された複数のエネルギー変換機器21〜23も示している。エネルギー変換機器21〜23は、施設20内に配備され、実際に運転される。この運転は、上述のようにして作成された最適運転プログラム14によって制御することができる。
【0053】
エネルギー変換機器21〜23を実際に運転することによって、運転データ24が取得される。運転データ24は、各エネルギー変換機器21〜23の運転時間、消費電力、動作設定、運転結果等の様々な情報を含むことができる。例えば、エネルギー変換機器21〜23が空調機器である場合、動作設定とは、設定温度であり、運転結果とは、実際に達成された温度又は設定温度に達するまでの時間等の情報が含まれる。これらの情報を取得するために、施設20内にセンサを設けてもよい。センサには、温度計、湿度計、照度計等が含まれる。
【0054】
この運転データ24に基づいて、最適運転プログラム14を更新してもよい。すなわち、運転データ24によって、最適運転プログラム14を検証し、より最適な制御が発見された場合、最適運転プログラム14の修正又は差し替えを行ってもよい。
【0055】
上述のように、運転データ24は、エネルギー変換機器選択システム1のデータベース2にフィードバックされる。このフィードバックは、通信回線を用いて行ってもよく、可搬の記録媒体を介して行ってもよい。運転データ24のフィードバックの具体的な手法、並びにフィードバックの効果については、先に図1のフローチャートを用いて説明した通りであり、ここでは繰り返さない。
【0056】
なお、最適運転プログラム14は、エネルギー変換機器の販売業者が保守してもよい。販売業者は、最適運転プログラム14を管理し、例えば、上述のような実際の運転データ24に基づく最適運転プログラム14の修正又は差し替えを監視する。販売業者は、この監視の過程で、エネルギー変換機器21〜23を保守し又は交換する必要性を発見することができる。例えば、エネルギー変換機器21〜23が、最適運転プログラム14による制御によっても、目標とする制御結果を達成できないことを運転データ24が示している場合、エネルギー変換機器21〜23が故障又は老朽化している可能性がある。販売業者は、エネルギー変換機器21〜23を点検し、修理又は部品交換の必要性を発見することができる。この際、販売業者は、上述したエネルギー変換機器選択システム1を利用して、交換に最適な機種を導出することもでき、エネルギー変換機器21〜23の修理、部品交換及び新品への交換を含む様々な選択肢を、それぞれのコストと共にユーザに提示でき、又は対費用効果を根拠として、最適な選択肢をユーザに提案することができる。例えば、既存のエネルギー変換機器を新たなエネルギー変換機器に交換した方が有利な場合、演算エンジン10において、交換によって得られる利益を算出し、金額や比率によってユーザに示すようにしてもよい。
【0057】
このように、本発明に基づくエネルギー変換機器選択方法及びエネルギー変換機器選択システムは、ユーザ及び製造業者にとって有益であるばかりではなく、エネルギー変換機器の販売及び/又は保守を行う業者にとっても利用価値が高いものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上述したように、本発明に係るエネルギー変換機器選択方法及びエネルギー変換機器選択システムは、多様且つ膨大な量の情報に基づいて、最適なエネルギー変換機器を選択できるため、ユーザにとって有益である。また、本発明に係るエネルギー変換機器選択方法及びエネルギー変換機器選択システムは、実際のエネルギー変換機器の運転から得られる情報をデータベースにフィードバックするため、エネルギー変換機器の製造業者及び保守業者にとっても有益である。また、本発明に係るエネルギー変換機器選択方法及びエネルギー変換機器選択システムは、イニシャルコストが安価か否かのみではなく、ランニングコストを正当に評価することができるので、産業界全体の健全な発展にとって有益である。
【符号の説明】
【0059】
1 エネルギー変換機器選択システム、2 データベース、3 動作仕様データ、5 変動要因データ、8 入力端末、9 施設仕様データ、11 イニシャルコスト、12 ランニングコスト、14 最適運転プログラム、20 施設、21〜23 各エネルギー変換機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースを準備するステップと、
前記データベースに、エネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データを登録するステップと、
前記データベースに、前記各機種の導入価格に関する導入価格データを登録するステップと、
前記データベースに、エネルギー価格及び/又は優遇政策を含む変動要因データを登録するステップと、
前記データベースに登録されている動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データを必要に応じて随時更新するステップと、
前記エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データを入力するステップと、
前記施設仕様データと、前記導入価格データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のイニシャルコストを算出するステップと、
前記施設仕様データと、前記動作仕様データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のランニングコストを算出するステップと、
前記イニシャルコストと、前記ランニングコストとに基づいて、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定するステップとを有するエネルギー変換機器選択方法。
【請求項2】
前記施設内に既にエネルギー変換機器が配備されており、前記動作仕様データは、前記既に配備されているエネルギー変換機器の保守に関する保守コストを示すデータを含み、
前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する際、前記既存のエネルギー変換機器の保守コストも考慮に入れて、前記既存のエネルギー変換機器の継続使用も選択肢の1つに追加する請求項1記載のエネルギー変換機器選択方法。
【請求項3】
前記決定によって導入されたエネルギー変換機器又は既存のエネルギー変換機器を運転し、又はこの運転をシミュレートして、運転及びシミュレート情報又はいずれか一方の情報を入手し、前記運転及びシミュレート情報又はいずれか一方の情報に基づいて、前記動作仕様データを更新するステップを更に有する請求項1記載のエネルギー変換機器選択方法。
【請求項4】
前記データベースは、通信回線を介して外部ネットワークに接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のエネルギー変換機器選択方法。
【請求項5】
エネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データと、前記各機種の導入価格に関する導入価格データと、エネルギー価格及び/又は優遇政策を含む変動要因データとが登録されると共に、前記動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データが必要に応じて随時更新されるデータベースと、
前記エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データを入力する入力手段と、
前記導入価格データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のイニシャルコストを算出し、及び前記施設仕様データと、前記動作仕様データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のランニングコストを算出する演算手段と、
前記イニシャルコストと、前記ランニングコストとに基づいて、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する決定手段とを備えるエネルギー変換機器選択システム。
【請求項6】
前記施設内に既にエネルギー変換機器が配備されており、前記動作仕様データは、前記既に配備されているエネルギー変換機器の保守に関する保守コストを示すデータを含み、
前記決定手段は、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する際、前記既存のエネルギー変換機器の保守コストも考慮に入れて、前記既存のエネルギー変換機器の継続使用も選択肢の1つに追加する請求項4記載のエネルギー変換機器選択システム。
【請求項7】
前記決定によって導入されたエネルギー変換機器又は既存のエネルギー変換機器を運転し、又はこの運転をシミュレートして、運転及びシミュレート情報又はいずれか一方の情報を入手し、前記運転及びシミュレート情報又はいずれか一方の情報に基づいて、前記動作仕様データを更新するフィードバック経路を更に備える請求項4記載のエネルギー変換機器選択システム。
【請求項8】
前記データベースは、通信回線を介して外部ネットワークに接続されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1に記載のエネルギー変換機器選択方法。
【請求項9】
コンピュータにインストールされることにより、当該コンピュータを、
エネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データと、前記各機種の導入価格に関する導入価格データと、エネルギー価格及び/又は優遇政策を含む変動要因データとが登録されると共に、前記動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データが必要に応じて随時更新されるデータベースを格納する格納手段、
前記エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データを入力する入力手段、
前記導入価格データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のイニシャルコストを算出し、及び前記施設仕様データと、前記動作仕様データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のランニングコストを算出する演算手段、
前記イニシャルコストと、前記ランニングコストとに基づいて、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する決定手段
として機能させるためのエネルギー変換機器選択プログラム。
【請求項10】
前記施設内に既にエネルギー変換機器が配備されており、前記動作仕様データは、前記既に配備されているエネルギー変換機器の保守に関する保守コストを示すデータを含み、
前記決定手段は、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する際、前記既存のエネルギー変換機器の保守コストも考慮に入れて、前記既存のエネルギー変換機器の継続使用も選択肢の1つに追加する請求項9記載のエネルギー変換機器選択プログラム。
【請求項11】
コンピュータにインストールされることにより、当該コンピュータを、
エネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様に関する動作仕様データと、前記各機種の導入価格に関する導入価格データと、エネルギー価格及び/又は優遇政策を含む変動要因データとが登録されると共に、前記動作仕様データ、導入価格データ及び変動要因データが必要に応じて随時更新されるデータベースを格納する格納手段、
前記エネルギー変換機器が配備される施設の仕様に関する施設仕様データを入力する入力手段、
前記導入価格データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のイニシャルコストを算出し、及び前記施設仕様データと、前記動作仕様データと、前記変動要因データとに基づいて、前記各機種のランニングコストを算出する演算手段、
前記イニシャルコストと、前記ランニングコストとに基づいて、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する決定手段
として機能させるためのエネルギー変換機器選択プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項12】
前記施設内に既にエネルギー変換機器が配備されており、前記動作仕様データは、前記既に配備されているエネルギー変換機器の保守に関する保守コストを示すデータを含み、
前記決定手段は、前記施設に導入する機種及び/又は機種の組合せを決定する際、前記既存のエネルギー変換機器の保守コストも考慮に入れて、前記既存のエネルギー変換機器の継続使用も選択肢の1つに追加する請求項11記載のエネルギー変換機器選択プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−48572(P2012−48572A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191283(P2010−191283)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(309040790)パトックス.ジャパン株式会社 (8)