説明

エポキシ基含有化合物

【課題】低粘度で流動性、保存安定性に優れ、且つ不純物塩素量が極めて少ないエポキシ樹脂組成物、更には接着特性、耐熱性および高温耐湿特性に優れた硬化物を与えることが可能な高純度のエポキシ基含有化合物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】
フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と一般式(1)で示されるグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)との反応により得られることを特徴とするエポキシ基含有化合物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ基含有化合物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にエポキシ樹脂組成物は、機械的性質、耐湿性、電気的性質などに優れるため、電気・電子部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤、レジスト材、コート材などの幅広い分野で利用されているが、電気・電子部品の高性能化に伴いエポキシ樹脂組成物への要求はさらに高まってきている。例えば、電気・電子用途の分野においては半導体パッケージや電子部品等のさらなる小型化、薄型化の要求を満たすため、エポキシ樹脂組成物の低粘度化への要求が一段と高まっている。これは小型化した部品内部の狭い空隙にも十分にエポキシ樹脂組成物を注入あるいは浸透させ欠陥のない硬化物とする必要があるからである。
【0003】
ここで一般にエポキシ樹脂組成物は、エポキシ基含有化合物と硬化剤、反応触媒、充填材およびその他の添加剤で構成されるが、室温で液状のエポキシ樹脂組成物が望まれる場合にはエポキシ基含有化合物としてビスフェノールAのジグリシジルエーテルやビスフェノールFのジグリシジルエーテルが広く用いられている(例えば特許文献1)。これらのエポキシ基含有化合物は室温で液状のものもあるが比較的粘度が高いために、エポキシ樹脂組成物の粘度も高くなる。このためエポキシ樹脂組成物の粘度を下げる目的で、各種希釈剤が用いられるが(例えば特許文献2)、希釈剤として溶剤を用いた場合、硬化時に溶剤が放出され環境衛生上の問題があるばかりでなく揮発した跡が硬化物の欠陥となる可能性がある。一方、アルキルフェノールモノグリシジルエーテルやアルキルモノグリシジルエーテルといった官能基を有する希釈剤を用いる場合には、樹脂組成物に含まれる塩素等の不純物が多くなる傾向にあり、また硬化物の耐熱性が低下する場合もある。さらに、エポキシ樹脂組成物に高い耐湿信頼性が求められる場合には、エポキシ基含有化合物を燐系触媒存在下フェノール系硬化剤で反応させるが、エポキシ基含有化合物のエポキシ基がフェニル基に直接結合したグリシジルエーテル基の場合には室温での反応進行が早く室温での可使時間が短くなるという欠点があり、エポキシ基含有化合物が脂肪族のグリシジルエーテルの場合には塩素等の不純物が多い場合や硬化物の接着特性あるいは耐熱性が不足する場合がある。
【0004】
一方エポキシ樹脂組成物を例えば175℃といった加熱下で注入する場合には、取り扱いの面から室温では固形でありながら注入温度で低粘度であるエポキシ樹脂組成物が望まれている。このようなエポキシ樹脂組成物を得るために、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂その他分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ基含有化合物で軟化点あるいは融点が50℃以上のものが広く利用されている(例えば特許文献3)。これら化合物は反応条件ならびに生成条件等の検討により高純度化が図られてはいるが、数100ppmレベルでの塩素を含有している。
ここで近年の半導体構成部材のトレンドとして半導体素子を電気的に接合するための金属線が従来より使用されてきた金線から銅線へ移行しつつある。金線に比較し銅線は化学的に不安定であることからエポキシ樹脂組成物に含まれる塩素が銅線の酸化の原因となり、半導体製品の耐湿信頼性を著しく低下させる事例が報告されている(例えば特許文献4)。
【0005】
このように低粘度で流動性、保存安定性に優れ、且つ不純物塩素量が極めて少ないエポキシ樹脂組成物、更には接着特性、耐熱性および高温耐湿特性に優れた硬化物を与えることが可能な高純度のエポキシ基含有化合物の開発が待望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−219601号公報
【特許文献2】特表2009−521589号公報
【特許文献3】特開2004−307686号公報
【特許文献4】特開2009−152561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、低粘度で流動性、保存安定性に優れ、且つ不純物塩素量が極めて少ないエポキシ樹脂組成物、更には接着特性、耐熱性および高温耐湿特性に優れた硬化物を与えることが可能な高純度のエポキシ基含有化合物およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエポキシ基含有化合物は、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と一般式(1)で示されるグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)との反応により得られることを特徴とする。
【化1】

【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(2)で示されるエポキシ基含有化合物を提供する。
【化2】

【0010】
本発明に係るエポキシ基含有化合物は、エポキシ当量が100〜1000g/eqのものであるとすることができる。
【0011】
本発明に係るエポキシ基含有化合物は、全塩素が100ppm以下のものであるとすることができる。
【0012】
本発明に係るエポキシ基含有化合物の製造方法は、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と一般式(1)で示されるグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)と反応させる工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低粘度で流動性、保存安定性に優れ、且つ不純物塩素量が極めて少ないエポキシ樹脂組成物、更には接着特性、耐熱性および高温耐湿特性に優れた硬化物を与えることが可能な高純度のエポキシ基含有化合物とその製造方法を提供できる。よって、本発明のエポキシ基含有化合物は高品位な半導体封止材、接着剤、レジスト、コート材等として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明のエポキシ基含有化合物は、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と前記一般式(1)で示されるグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)との反応により得られることを特徴とし、当該エポキシ基含有化合物を使用することにより流動性、保存安定性に優れ、且つ不純物塩素量が極めて少ないエポキシ樹脂組成物、更には接着特性、耐熱性および高温耐湿特性に優れた硬化物を得ることが可能となる。
【0016】
かかるフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)とグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)との反応は、具体的には、化合物(A) のフェノール性水酸基と化合物(B)のビニルエーテル基とのアセタール化反応であり、以下の化学反応式(3)で表されるものである。
【化3】


従って、本発明ではエポキシ基の導入方法として、エピクロルヒドリン等の含塩素化合物を使用しないので、塩素分が極めて少ない高純度のエポキシ基含有化合物を製造することができる。
【0017】
本発明で用いるフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマーであればよく、その分子量、分子構造は特に限定するものではないが、フェノール性水酸基の数は2個以上が好ましい。これは一分子内にフェノール性水酸基の数が1個しかない場合には化合物(B)と反応することで得られるエポキシ基含有化合物の官能基(エポキシ基)が1個になり、樹脂組成物として配合した場合硬化物の架橋密度が上がらず、機械的強度が悪化するからである。
【0018】
以下に好ましい化合物(A)を例示するが、これらに限定されるわけではない。
一般式(4)で示される化合物
【化4】

【0019】
一般式(5)で示される化合物
【化5】

【0020】
一般式(6)で示される化合物
【化6】

【0021】
一般式(7)および(8)で示される化合物
【化7】


【化8】

【0022】
一般式(9)および(10)で示される化合物
【化9】


【化10】

【0023】
また、その他の好ましい化合物(A)としてはフェノールとジシクロペンタジエンとの重付加物でフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、フェノールとテルペン系化合物との重付加物でフェノール性水酸基を2個以上有する化合物等の脂環式構造含有フェノール樹脂等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも室温で液状のエポキシ樹脂組成物が望まれる場合には、前記一般式(4)、一般式(6)、一般式(7)、一般式(8)で示される化合物(A)が好ましく、さらには前記一般式(6)または一般式(7)で表される化合物(A)が特に好ましい。
【0025】
なかでも一般式(6)のlが2あるいは3、Xが炭素数1〜6のハイドロカルビレン基、aが1、cが0〜2、cが1〜2の場合にはRがメチル基あるいはエチル基の化合物が好ましく、一般式(7)のaが1あるいは2、bが1あるいは0、cが0あるいは1、dが0あるいは1、cが1および/またはdが1の場合にはRがメチル基あるいはエチル基の化合物が好ましい。
【0026】
このような化合物としては,ビス(ヒドロキシフェニル)メタンおよびその芳香族環の1個あるいは2個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)エタンおよびその芳香族環の1個あるいは2個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンおよびその芳香族環の1個あるいは2個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)イソプロパンおよびその芳香族環の1個あるいは2個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよびその芳香族環の1個あるいは2個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンおよびその芳香族環の少なくとも1個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、トリス(ヒドロキシフェニル)エタンおよびその芳香族環の少なくとも1個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、トリス(ヒドロキシフェニル)プロパンおよびその芳香族環の少なくとも1個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、トリス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよびその芳香族環の少なくとも1個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、同一芳香族環あるいは異なる芳香族環に水酸基を有するジヒドロキシナフタレンが挙げられる。中でも好ましい化合物はビス(ヒドロキシフェニル)メタンおよびその芳香族環の1個あるいは2個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンおよびその芳香族環の1個あるいは2個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物である。
【0027】
これらフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)がグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)に含まれるビニルエーテル基と反応した残基が一般式(2)のRである。
【0028】
これらフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)とグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)との反応により得られるエポキシ基含有化合物は室温で液状、あるいは室温では固形であるが少量の希釈剤を配合することにより室温で液状となるため、エポキシ樹脂組成物の低粘度化が可能である。このため、エポキシ樹脂組成物の粘度を下げる目的で各種希釈剤を用いる必要がなく、あるいは各種希釈剤を用いる場合でも少量の使用で低粘度化が可能となり、耐熱性および耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることが可能となる。また、これらフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)とグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)との反応により得られるエポキシ基含有化合物は、その製造工程においてエピクロルヒドリン等の含塩素化合物を使用しないため、含有塩素レベルが極めて低いものとなり、エポキシ樹脂組成物として半導体製品に用いた場合、特に優れた耐湿信頼性を示すことが可能となる。
【0029】
一方、室温では固形でありながら175℃といった注入温度で低粘度であるエポキシ樹脂組成物が望まれる場合には、前記一般式(5)、一般式(9)、一般式(10)で示される化合物、フェノールとジシクロペンタジエンとの重付加物でフェノール性水酸基を2個以上有する化合物及びフェノールとテルペン系化合物との重付加物でフェノール性水酸基を2個以上有する化合物等の脂環式構造含有フェノール樹脂が化合物(A)として好ましい。このような化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ビフェノールおよびその芳香族環の1個あるいは2個が1個あるいは2個のメチル基あるいはエチル基で置換された化合物が挙げられる。
【0030】
これらフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)とグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)との反応により得られるエポキシ基含有化合物は、その製造工程においてエピクロルヒドリン等の含塩素化合物を使用しないため、含有塩素レベルが極めて低いものとなり、エポキシ樹脂組成物として半導体製品に用いた場合、特に優れた耐湿信頼性を示すことが可能となる。
【0031】
本発明で用いるグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)は、一般式(1)で示されるものである。
【化1】

【0032】
好ましいRとしては以下のものを挙げることができる。メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘキシルメチレン基、シクロヘキシルエチレン基、シクロヘキシルプロピレン基、シクロヘキシルブチレン基、シクロヘキシルペンチレン基、シクロヘキシルヘキシレン基、シクロヘキシルヘプチレン基、シクロヘキシルオクチレン基、シクロヘキシルノニレン基、シクロヘキシルデシレン基、メチレン(シクロヘキシルメチレン)基、メチレン(シクロヘキシルエチレン)基、メチレン(シクロヘキシルプロピレン)基、メチレン(シクロヘキシルブチレン)基、メチレン(シクロヘキシルペンチレン)基、メチレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、メチレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、メチレン(シクロヘキシルオクチレン)基、メチレン(シクロヘキシルノニレン)基、メチレン(シクロヘキシルデシレン)基、エチレン(シクロヘキシルメチレン)基、エチレン(シクロヘキシルエチレン)基、エチレン(シクロヘキシルプロピレン)基、エチレン(シクロヘキシルブチレン)基、エチレン(シクロヘキシルペンチレン)基、エチレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、エチレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、エチレン(シクロヘキシルオクチレン)基、エチレン(シクロヘキシルノニレン)基、エチレン(シクロヘキシルデシレン)基、プロピレン(シクロヘキシルメチレン)基、プロピレン(シクロヘキシルエチレン)基、プロピレン(シクロヘキシルプロピレン)基、プロピレン(シクロヘキシルブチレン)基、プロピレン(シクロヘキシルペンチレン)基、プロピレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、プロピレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、プロピレン(シクロヘキシルオクチレン)基、プロピレン(シクロヘキシルノニレン)基、プロピレン(シクロヘキシルデシレン)基、ブチレン(シクロヘキシルメチレン)基、ブチレン(シクロヘキシルエチレン)基、ブチレン(シクロヘキシルプロピレン)基、ブチレン(シクロヘキシルブチレン)基、ブチレン(シクロヘキシルペンチレン)基、ブチレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、ブチレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、ブチレン(シクロヘキシルオクチレン)基、ブチレン(シクロヘキシルノニレン)基、ブチレン(シクロヘキシルデシレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルメチレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルエチレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルプロピレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルブチレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルペンチレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルオクチレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルノニレン)基、ペンチレン(シクロヘキシルデシレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルメチレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルエチレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルプロピレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルブチレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルペンチレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルオクチレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルノニレン)基、ヘキシレン(シクロヘキシルデシレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルメチレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルエチレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルプロピレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルブチレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルペンチレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルオクチレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルノニレン)基、ヘプチレン(シクロヘキシルデシレン)基、オクチレン(シクロヘキシルメチレン)基、オクチレン(シクロヘキシルエチレン)基、オクチレン(シクロヘキシルプロピレン)基、オクチレン(シクロヘキシルブチレン)基、オクチレン(シクロヘキシルペンチレン)基、オクチレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、オクチレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、オクチレン(シクロヘキシルオクチレン)基、オクチレン(シクロヘキシルノニレン)基、オクチレン(シクロヘキシルデシレン)基、ノニレン(シクロヘキシルメチレン)基、ノニレン(シクロヘキシルエチレン)基、ノニレン(シクロヘキシルプロピレン)基、ノニレン(シクロヘキシルブチレン)基、ノニレン(シクロヘキシルペンチレン)基、ノニレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、ノニレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、ノニレン(シクロヘキシルオクチレン)基、ノニレン(シクロヘキシルノニレン)基、ノニレン(シクロヘキシルデシレン)基、デシレン(シクロヘキシルメチレン)基、デシレン(シクロヘキシルエチレン)基、デシレン(シクロヘキシルプロピレン)基、デシレン(シクロヘキシルブチレン)基、デシレン(シクロヘキシルペンチレン)基、デシレン(シクロヘキシルヘキシレン)基、デシレン(シクロヘキシルヘプチレン)基、デシレン(シクロヘキシルオクチレン)基、デシレン(シクロヘキシルノニレン)基、デシレン(シクロヘキシルデシレン)基等のシクロアルカン骨格を有する脂肪族炭化水素基、エテニレン基、プロペニレン基、1−メチルプロペニレン基、ブテニレン基、1−メチル−1−ブテニレン基、1−メチル−2−ブテニレン基等のアルケニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、メチルナフチレン基、ジメチルナフチレン基、トリメチルナフチレン基、ビニルナフチレン基、メチルアンスリレン基、エチルアンスリレン基等の芳香族炭化水素基、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、1−メチル−ブチニレン基、3−メチル−1−ブチニレン基等のアルキニレン基、(エチレンオキシ)メチル基、(エチレンオキシ)エチル基、(エチレンオキシ)プロピル基、(エチレンオキシ)ブチル基、ポリ(エチレンオキシ)メチル基、ポリ(エチレンオキシ)エチル基、ポリ(エチレンオキシ)プロピル基、ポリ(エチレンオキシ)ブチル基、ポリ(エチレンオキシ)オクチル基、(プロピレンオキシ)メチル基、(プロピレンオキシ)エチル基、(プロピレンオキシ)プロピル基、(プロピレンオキシ)ブチル基、ポリ(プロピレンオキシ)メチル基、ポリ(プロピレンオキシ)エチル基、ポリ(プロピレンオキシ)プロピル基、ポリ(プロピレンオキシ)ブチル基、ポリ(プロピレンオキシ)オクチル基、(ブチレンオキシ)メチル基、(ブチレンオキシ)エチル基、(ブチレンオキシ)プロピル基、(ブチレンオキシ)ブチル基、ポリ(ブチレンオキシ)メチル基、ポリ(ブチレンオキシ)エチル基、ポリ(ブチレンオキシ)プロピル基、ポリ(ブチレンオキシ)ブチル基、ポリ(ブチレンオキシ)オクチル基等のポリ(アルキレンオキシ)アルキル基等が挙げられる。
【0033】
また、Rは置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。
【0034】
前記Rの中でも、直鎖状又は分岐状アルキレン基、シクロアルカン骨格を有する脂肪族炭化水素基、およびポリ(アルキレンオキシ)アルキル基が好ましく、さらに直鎖状又は分岐状アルキレン基およびシクロアルカン骨格を有する脂肪族炭化水素基が特に好ましい。これらの中でもエポキシ基含有化合物としてエポキシ樹脂組成物に配合した場合に得られる硬化物の接着特性、耐熱性および高温耐湿特性に優れることから、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状アルキレン基または炭素数4〜26のシクロアルカン骨格を有する脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0035】
好ましい化合物(B)としては以下のものが挙げられる。
(ビニルオキシ)メタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)エタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)プロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)オクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)デカノールグリシジルエーテル、
【0036】
(ビニルオキシ)シクロプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルオクタデカノールグリシジルエーテル、
【0037】
(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0038】
(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0039】
(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシプロピル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0040】
(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシブチル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0041】
(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシペンチル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0042】
(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘキシル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0043】
(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシヘプチル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0044】
(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシオクチル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0045】
(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシノニル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0046】
(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルプロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルヘプタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルオクタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルノナノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシデカニル)シクロヘキシルデカノールグリシジルエーテル、
【0047】
これら化合物は前記置換基を有していてもよく、また置換基としてさらにビニルオキシ基および/またはグリシジルオキシ基を有していてもよい。
特に好ましい化合物(B)は、(ビニルオキシ)メタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)エタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)プロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
本発明のエポキシ基含有化合物の製造方法では、通常、無触媒系においても反応は進行するが、反応速度を高めたり、ビニルエーテル基の自己重合を防ぐ低温条件で反応を進めたりするためには、酸性触媒を用いることが可能である。
【0049】
ここで用いる酸性触媒は、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酸性燐酸エステル類、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など有機酸等が挙げられる。前記酸性触媒の添加量としては、原料全質量に対して、0.01〜5質量%の範囲で用いることができる。これらの中でも、良好な反応性を与え、副反応が少ない点等から有機酸類が好ましく、特に酸性燐酸エステル類と蓚酸が好ましい。
【0050】
本発明のエポキシ基含有化合物の製造操作条件としては、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)、グリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)及び酸性触媒を、0〜150℃の温度で0.5〜30時間程度加熱攪拌することによって得ることができる。反応の進行程度は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、GPC等を用いて、原料の残存量を測定することによって追跡可能である。また、必要に応じて、有機溶媒を使用することも可能である。使用可能な有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒等を挙げることができ、用いる原料や反応物の溶解度などの性状や反応条件等を考慮して適宜選択すればよい。有機溶媒の量としては、原料質量に対して、5〜500質量%の範囲で用いることが好ましい。また有機溶媒を使用した場合は、蒸留等により除去し、触媒を使用した場合は、必要により失活剤等で失活させ、さらに水洗や濾過により除去することが可能である。
【0051】
上記反応における化合物(A)、化合物(B)の反応比率は、特に限定されないが、反応速度の観点から、ビニルエーテル基をフェノール性水酸基に対して当量、または当量以上反応させればよい。当量以上で反応させた場合は、反応終了後に残存する過剰の化合物(B)を減圧蒸留により除去することが可能である。
【0052】
また、本発明のエポキシ基含有化合物のエポキシ当量は、100g/eq以上、1000g/eq以下であることが好ましい。この範囲であれば樹脂組成物としたときに流動性に優れ、良好な硬化物特性を示すことが可能となる。より好ましいエポキシ当量は200g/eq以上、600g/eq以下である。
【0053】
また、本発明のエポキシ基含有化合物の全塩素量(JIS規格K−7243−3に準拠。ジエチレングリコールモノブチルエーテルにエポキシ基含有化合物を溶解させ、水酸化カリウムアルコール溶液で加熱還流下けん化し、硝酸銀溶液の電位差滴定により測定)は、エポキシ樹脂組成物として半導体に用いた場合に優れた耐湿信頼性を示すことから100ppm以下が好ましく、さらに好ましくは10ppm以下である。
【実施例】
【0054】
以下本発明のエポキシ基含有化合物について、実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
エポキシ基含有化合物の合成
エポキシ基含有化合物E1
200℃まである温度計、撹拌機を取り付けた1リットルの丸底フラスコに化合物(A)としてビスフェノールF(DIC(株)製、DIC−BPF、前記一般式(6)中lが2、bが1、cが0、Xがメチレン基である化合物)190g(0.95モル)、化合物(B)として4−ビニルオキシブタノールグリシジルエーテル(丸善石油化学(株)製、前記一般式(1)中Rがブチレン基である化合物)158g(1.00モル)を秤量して仕込み、撹拌させながら原料入り丸底フラスコをオイルバス中で120℃まで1時間要して昇温した後、さらに120℃で6時間反応させた。6時間反応後の内容物から33mg秤量して6mlのTHFに溶解させ、HPLC用シリンジフィルター(エキクロディスク13CR)に通した後にGPC測定に供した。GPCシステムは、WATERS社製モジュールW2695、東ソー(株)製TSKGUARDCOLUMN HHR−L(径6.0mm、管長40mm、ガードカラム)、東ソー(株)製TSK−GELGMHHR−L(径7.8mm、管長30mm、ポリスチレンゲルカラム)2本、WATERS社製示差屈折率(RI)検出器W2414を直列に接続したものを用いた。ポンプの流速は1ml/分、カラム及び示差屈折率計内温度を40℃とし、測定溶液を100μlインジェクターより注入して測定を行った。試料の解析にあたっては、単分散ポリスチレン(以下PS)標準試料により作成した検量線を用いる。検量線はPSの分子量の対数値とPSのピーク検出時間(保持時間)をプロットし、3次式に回帰したものを用いる。検量線作成用の標準PS試料としては、昭和電工(株)製ShodexスタンダードSL−105シリーズの品番S−1.0(ピーク分子量1060)、S−1.3(ピーク分子量1310)、S−2.0(ピーク分子量1990)、S−3.0(ピーク分子量2970)、S−4.5(ピーク分子量4490)、S−5.0(ピーク分子量5030)、S−6.9(ピーク分子量6930)、S−11(ピーク分子量10700)、S−20(ピーク分子量19900)を使用した。GPCにおいて本来19〜20分付近に検出されるビスフェノールFのピークが消失していることを確認した後、未反応の4−ビニルオキシブタノールグリシジルエーテルを減圧蒸留により除去することで生成物348gを得た。
得られたエポキシ基含有化合物(以下、化合物E1)は、H−NMR測定でアセタール結合部分のメチル基およびメチン基の生成(1.35〜1.40ppm、5.9〜6.0ppm)、およびビニル基の消失(6.4〜6.5ppm、3.9〜4.0ppm、4.1〜4.2ppm)が確認できたことから前記一般式(2)中Rがブチレン基、Rがジフェニルメタン、n=2で表されるアセタール結合を有する構造であることを確認した。この樹脂のエポキシ当量は258g/eqであり、25℃における粘度(E型粘度計)は2800mPa・sであり、全塩素(JIS規格K−7243−3に準拠。ジエチレングリコールモノブチルエーテルにエポキシ基含有化合物を溶解させ、水酸化カリウムアルコール溶液で加熱還流下けん化し、硝酸銀溶液の電位差滴定により測定)は定量限界以下(定量限界=10ppm)であった。
【0056】
エポキシ基含有化合物E2
化合物(B)として4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテルーテル(丸善石油化学(株)製、前記一般式(1)中Rがメチレン(シクロヘキシルメチレン)基である化合物)212gを用いた以外は、エポキシ基含有化合物E1の合成と同様にして、生成物402gを得た。得られたエポキシ基含有化合物(以下、化合物E2)はエポキシ基含有化合物E1と同様、H−NMR測定でアセタール結合部分のメチル基およびメチン基の生成、およびビニル基の消失が確認できたことから前記一般式(2)中Rがメチレン(シクロヘキシルメチレン)基、Rがジフェニルメタン、n=2で表されるアセタール結合を有する構造であることを確認した。この樹脂のエポキシ当量は312g/eqであり、25℃における粘度(E型粘度計)は3100mPa・sであり、全塩素は定量限界以下(定量限界=10ppm)であった。
【0057】
燐系化合物の合成
撹拌装置付きの1リットルのセパラブルフラスコにビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン50.1g(0.2モル)、メタノール100mlを仕込み、室温で撹拌溶解し、さらに攪拌しながら水酸化ナトリウム4.0g(0.1モル)を予め、50mlのメタノールで溶解した溶液を添加した。次いで、予めテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1モル)を150mlのメタノールに溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mlのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥し、白色結晶の燐系化合物を得た。この合成の収率は97.4%であった。
【0058】
反応性希釈剤の合成
200℃まである温度計、撹拌機を取り付けた1lの丸底フラスコにn−ブタノール70.4g(0.95モル)、4−ビニルオキシブタノールグリシジルエーテル(丸善石油化学(株)製、前記一般式(1)中Rがブチレン基である化合物)158g(1.00モル)、蓚酸1gを秤量して仕込み、撹拌させながら原料入り丸底フラスコをオイルバス中で120℃まで1時間要して昇温した後、さらに120℃で6時間反応させた。6時間反応後の内容物をエポキシ基含有化合物E1の合成と同様にしてGPC測定に供した。GPCにおいて本来20〜30分付近に検出されるn−ブタノールのピークが消失していることを確認した後、未反応の4−ビニルオキシブタノールグリシジルエーテル、蓚酸を減圧蒸留により除去することで生成物228gを得た。
得られた反応性希釈剤(以下、化合物G)は、化合物E1と同様、H−NMR測定でアセタール結合部分のメチル基およびメチン基の生成、およびビニル基の消失が確認できたことからアセタール結合を有するアルキルモノグリシジルエーテルであることを確認した。この樹脂のエポキシ当量は232g/eqであり、25℃における粘度(E型粘度計)は800mPa・sであり、全塩素は定量限界以下(定量限界=10ppm)であった。
【0059】
実施例1
前記エポキシ基含有化合物E1、フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂(明和化成(株)製、MEH−7500、以下硬化剤)、前記化合物G、前記燐系化合物、グリシジル基を有するカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403E、以下化合物C)、シリコーンレジンパウダー(信越化学工業(株)製、KMP−590、以下化合物D)、チキソ性付与剤(Degussa社製、AEROSIL R805、以下化合物H)を表1に示す重量部で配合した上で3本ロールを用いて混練、脱泡してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて下記の項目について評価した。
【0060】
(1)塩素濃度評価
不純物含有量の指標としてエポキシ樹脂組成物の熱水抽出塩素濃度を測定した。熱水抽出塩素濃度は、エポキシ樹脂組成物を200℃60分処理して作製した硬化物の粉砕物2gを40mlの純水とともにプレッシャークッカーにて125℃20時間処理し、得られた抽出水をイオンクロマトグラフにて測定した。得られた結果を表1に示す。
(2)流動性評価
流動性の指標としてエポキシ樹脂組成物の25℃、2.5rpmにおける粘度−1(初期粘度)をE型粘度計(3°コーン)を用いて測定した。得られた結果を表1 に示す。
【0061】
(3)エポキシ樹脂組成物の保存安定性
エポキシ樹脂組成物を25℃で72時間放置した後に(2)流動性評価と同様にして粘度−2を測定した。初期粘度との粘度上昇比(粘度−2/粘度−1)を算出し、以下の基準に従って評価を行った。得られた結果を表1に示す。
○:粘度上昇比が1.2未満。
×:粘度上昇比が1.2以上。
【0062】
(4)硬化物の物性評価
6mm角のシリコンチップ(パッシベーションはSiN)のSiN面に樹脂組成物を塗布し4mm角のシリコンチップ(パッシベーションなし)を樹脂組成物厚みが50μmとなるように搭載し175℃、1時間加熱硬化した。硬化後および吸湿(85℃、85%、72h)処理後の硬化物を用いて200℃でのダイシェア強度を測定することで硬化物の接着特性および耐熱性を評価した。測定には自動接着力測定装置を用い、以下の基準に従って評価を行った。得られた結果を表1に示す。
○:200℃でのダイシェア強度が20N/チップ以上。
△:200℃でのダイシェア強度が15N/チップ以上20N/チップ未満。
×:200℃でのダイシェア強度が15N/チップ未満。
【0063】
(5)硬化物の高温耐湿特性評価
(半導体装置の製造)
樹脂組成物を用いてアルミニウム製電極パッドを備えるTEG(TEST ELEMENT GROUP)チップ(3.5mm×3.5mm)を352ピンBGA(基板は厚さ0.56mm、ビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、パッケージサイズは35mm×35mm、厚さ1.17mm)のダイパッド部に接着(硬化条件は175℃、1時間)した後、TEGチップのアルミニウム製電極パッドと基板の電極パッドとをデイジーチェーン接続となるように銅ワイヤ(タツタ電線(株)製:4N、商品名「TC−E」[性状:銅純度99.99質量%、硫黄元素含有量3.8質量ppm、線径25μm])を用いてワイヤピッチ80μmでワイヤボンディングした。さらにワイヤボンドしたTEG上に樹脂組成物を塗布し4mm角のシリコンチップ(パッシベーションなし)を樹脂組成物がTEGチップの電極部を覆うように搭載し175℃、1時間加熱硬化した。
これを、低圧トランスファー成形機(TOWA製「Yシリーズ」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分の条件でエポキシ樹脂成形材料(住友ベークライト(株)製、EME−G770)により封止成形して、352ピンBGAパッケージを作製した。このパッケージを175℃、4時間の条件で後硬化して半導体装置を得た。
【0064】
(高温耐湿特性)
得られた半導体装置についてIEC68−2−66に準拠してHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)試験を実施した。試験条件は130℃、85%RH、印加電圧20V、96時間処理とした。半導体装置1個当り4つの端子について回路のオープン不良の有無を観察し、5個の半導体装置で合計20回路を観察して不良回路の個数を測定した。不良回路の個数が5個未満の場合を合格とした。得られた結果を表1 に示す。
【0065】
実施例2、ならびに比較例1〜3
実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を作製し評価した。評価結果を表1に示す。
なお実施例2では前記エポキシ基含有化合物E2を、比較例1ではビスフェノールF型エポキシ基含有化合物(東都化成(株)製、YDF−870GS、エポキシ当量:160g/eq、25℃における粘度(E型粘度計):2500mPa・s、JIS規格K−7243−3に準拠し測定した全塩素量:250ppm、以下化合物F1)、比較例2ではビスフェノールF型エポキシ基含有化合物(日本化薬(株)製、RE−403S、エポキシ当量:165g/eq、25℃における粘度(E型粘度計):3000mPa・s、JIS規格K−7243−3に準拠し測定した全塩素量:300ppm、以下化合物F2)、比較例3ではアルキルジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−8000、エポキシ当量:205g/eq、25℃における粘度(E型粘度計):1500mPa・s、JIS規格K−7243−3に準拠し測定した全塩素量::600ppm、以下化合物F3)を用いた。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例及び比較例の結果から、本発明のエポキシ基含有化合物を用いたエポキシ樹脂組成物が、低粘度で流動性、保存安定性に優れており、更に一般的な液状エポキシ基含有化合物を用いたエポキシ樹脂組成物と比較して、実用上の耐湿信頼性においても卓越した信頼性を有することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と一般式(1)で示されるグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)との反応により得られることを特徴とするエポキシ基含有化合物。
【化1】

【請求項2】
前記一般式(1)のRが、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状アルキレン基または炭素数4〜26のシクロアルカン骨格を有する脂肪族炭化水素基である請求項1に記載のエポキシ基含有化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で示される請求項1または2のいずれか1項に記載のエポキシ基含有化合物。
【化2】

【請求項4】
全塩素が100ppm以下のものである請求項1又は2記載のエポキシ基含有化合物。
【請求項5】
フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と一般式(1)で示されるグリシジル基とビニルエーテル基を有する化合物(B)と反応させる工程を有することを特徴とするエポキシ基含有化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−157460(P2011−157460A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19859(P2010−19859)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】