説明

エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法

【課題】書き換え速度に優れ、電圧印加条件に左右されにくく、画像鮮鋭性の向上したエレクトロクロミック表示素子及びフルカラーエレクトロクロミック表示素子並びにそれらの製造方法を提供することである。
【解決手段】少なくとも2枚の電極層を有する基板と、該基板の間に設けられた隔壁により構成されるセル構造を有し、セル内に少なくとも電圧の印加により発色、消色または変色するエレクトロクロミック媒体を含有するエレクトロクロミック表示素子において、前記電極層の少なくとも一方の表面にナノ多孔質膜が形成され、セル内表面に、少なくとも片方の電極(A)の上に設けられたナノ多孔質膜が露出し、反対側には少なくとも他の電極(B)または該電極(B)の上に設けられたナノ多孔質膜が露出していることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書き換え速度に優れ、電圧印加条件に左右されにくく、画像鮮鋭性の向上したエレクトロクロミック表示素子及びフルカラーエレクトロクロミック表示素子並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会がますます増大している。
【0003】
このような電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持のために電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
一方、エレクトロクロミック表示素子(以下、EC表示素子、単に表示素子ともいう)は、3V以下の低電圧で駆動可能であるが、反応速度が遅い、画像濃度が表示素子としては不十分である等の問題点があった。
【0007】
この欠点を解決する方法として、ナノ多孔質電極あるいは電極とナノ多孔質膜とを併せて用いる方法が多く提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1では、導電性ナノ粒子で多孔質フィルムを形成し、PまたはNタイプのクロミック材料を吸着する技術、特許文献2では、電極+ナノ多孔質電極+PまたはNタイプのエレクトロクロミック剤(以下、EC剤ともいう)の技術、特許文献3では、EC剤+ナノポーラスナノ結晶について述べられており、特許文献3〜11等には、半導体ナノ多孔質膜の例が挙げられている。
【0009】
これらの表示素子を用いて、フルカラー表示する方法としては、特許文献12に等に、平地混合による面積階調法または濃度階調法、積層混合による濃度階調法が提案されているが、これらの方法はエレクトロクロミック表示素子以外でも広く用いられている方法であり、また、その具体的な方法については、何ら開示されていない。
【0010】
また、特許文献13には、電気光学的にヒステリシスを持つエレクトロクロミック表示素子によるフルカラーが開示されているが、セル構造については触れられていない。
【0011】
エレクトロクロミック表示素子を基板間に隔壁を有するセル構造とすることで、エレクトロクロミック剤の流動による画像の不鮮明化を改善することができる。
【0012】
特許文献14には改善された電荷析出ディスプレイと新しい作製方法が開示されている。これは、複数のセルを持つ電界析出ディスプレイで、a)周囲を壁に囲まれ、b)エレクトロクロミック液または電解液が中に満たされ、c)重合化シール層が壁と合わせて液を囲む電極がセル内壁面に出ないため、反応が悪い。また、導電性基板を用いるため特別な導電性ポリマーが必要とされ、材料の選択性に欠ける。また、エレクトロクロミック表示素子では、電極上に多孔質膜を形成することが好ましいとされているが、上記特許では、多孔質膜を形成することには触れられていない。
【特許文献1】欧州特許第1,224,505号明細書
【特許文献2】米国特許第6,870,657号明細書
【特許文献3】米国特許第6,861,014号明細書
【特許文献4】特開2004−248242号公報
【特許文献5】特開2003−255400号公報
【特許文献6】特開2003−270670号公報
【特許文献7】特開2003−270671号公報
【特許文献8】特開2003−270672号公報
【特許文献9】特開2003−302659号公報
【特許文献10】特開2003−315839号公報
【特許文献11】国際公開第04/067672号パンフレット
【特許文献12】特開2003−270670号公報
【特許文献13】特開2004−151265号公報
【特許文献14】国際公開第04/025356号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、書き換え速度に優れ、電圧印加条件に左右されにくく、画像鮮鋭性の向上したエレクトロクロミック表示素子及びフルカラーエレクトロクロミック表示素子並びにそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0015】
1.少なくとも2枚の電極層を有する基板と、該基板の間に設けられた隔壁により構成されるセル構造を有し、セル内に少なくとも電圧の印加により発色、消色または変色するエレクトロクロミック媒体を含有するエレクトロクロミック表示素子において、前記電極層の少なくとも一方の表面にナノ多孔質膜が形成され、セル内表面に、少なくとも片方の電極(A)の上に設けられたナノ多孔質膜が露出し、反対側には少なくとも他の電極(B)または該電極(B)の上に設けられたナノ多孔質膜が露出していることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子。
【0016】
2.前記隔壁が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂で形成されていることを特徴とする1に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0017】
3.隣り合ったセル同士に含まれるエレクトロクロミック媒体の発色が異なることを特徴とする1または2に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0018】
4.前記エレクトロクロミック媒体の発色がB、G、RあるいはY、M、Cの3色の組み合わせであることを特徴とする3に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0019】
5.前記エレクトロクロミック媒体が、少なくともエレクトロクロミック色素と電解質を含有することを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0020】
6.前記エレクトロクロミック色素がナノ多孔質膜の一方に吸着されていることを特徴とする5に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0021】
7.前記ナノ多孔質膜が金属酸化物により構成されていることを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0022】
8.前記ナノ多孔質膜が絶縁性物質であることを特徴とする1〜7のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0023】
9.表面に電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせ画素状にナノ多孔質膜を形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜にエレクトロクロミック色素を吸着させ、これに、該画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを位置合わせして接着し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部から電解質液を注入し、これに、表面に電極層を有する基板の電極層が内側になるように貼り合わせることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【0024】
10.表面に電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせ画素状にナノ多孔質膜を形成し、これに、該画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを位置合わせして接着し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部からエレクトロクロミック媒体を注入し、これに、表面に電極層を有する基板の電極層が内側になるように貼り合わせることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【0025】
11.表面に電極層を有する基板のベタ電極層の上に、画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを形成し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部から電解質液を注入し、これに、電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせナノ多孔質膜を画素状に形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜にエレクトロクロミック色素を吸着させた基板を貼り合わせることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【0026】
12.表面に電極層を有する基板のベタ電極層の上に、画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シート形成し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部からエレクトロクロミック媒体を注入し、これに、電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせナノ多孔質膜を画素状に形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜を有する基板を貼り合わせることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、書き換え速度に優れ、電圧印加条件に左右されにくく、画像鮮鋭性の向上したエレクトロクロミック表示素子及びフルカラーエレクトロクロミック表示素子並びにそれらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも2枚の電極層を有する基板と、該基板間に設けられた隔壁により構成されるセル構造を有し、セル内に少なくとも電圧の印加により発色、消色または変色するエレクトロクロミック媒体を含有するエレクトロクロミック表示素子(以下、EC表示素子、単に表示素子ともいう)において、前記電極層の少なくとも一方の表面にナノ多孔質膜が形成され、セル内表面に、少なくとも片方の電極(A)の上に設けられたナノ多孔質膜が露出し、反対側には少なくとも他の電極(B)または該電極(B)の上に設けられたナノ多孔質膜が露出している表示素子により、書き換え速度に優れ、電圧印加条件に左右されにくく、画像鮮鋭性の向上した表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0029】
本発明の表示素子の製造方法は、表面に電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせ画素状にナノ多孔質膜を形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜にエレクトロクロミック色素を吸着させ、これに、該画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを位置合わせして接着し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部から電解質液を注入し、これに、表面に電極層を有する基板の電極層が内側になるように貼り合わせることを特徴とする。
【0030】
この製造方法は、ナノ多孔質膜の基板に硬いもの(例:ガラス)を利用できるので、ナノ多孔質膜の形成時に焼成が可能な利点を有する。
【0031】
本発明のエレクトロクロミック表示素子の他の製造方法は、表面に電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせ画素状にナノ多孔質膜を形成し、これに、該画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを位置合わせして接着し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部からエレクトロクロミック媒体を注入し、これに、表面に電極層を有する基板の電極層が内側になるように貼り合わせることを特徴とする。
【0032】
この製造方法は、ナノ多孔質の基板に硬いもの(例:ガラス)を利用できるので、ナノ多孔質膜の形成時に焼成が可能な利点を有する。
【0033】
本発明のエレクトロクロミック表示素子の第3の製造方法は、表面に電極層を有する基板のベタ電極層の上に、画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを形成し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部から電解質液を注入し、これに、電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせナノ多孔質膜を画素状に形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜にエレクトロクロミック色素を吸着させた基板を貼り合わせることを特徴とする。
【0034】
この製造方法は、ナノ多孔質膜の形成時に焼成が必要ない場合に利用できる。
【0035】
本発明のエレクトロクロミック表示素子の第4の製造方法は、表面に電極層を有する基板のベタ電極層の上に、画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シート形成し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部からエレクトロクロミック媒体を注入し、これに、電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせナノ多孔質膜を画素状に形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜を有する基板を貼り合わせることを特徴とする
この製造方法は、ナノ多孔質膜の形成時に焼成が必要ない場合に利用できる。
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行ってもよい。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0038】
多孔質膜の焼成が必要な場合には、ガラス基板が好ましく用いられる。対向する基板は同じ素材でなくても構わない。
【0039】
〔対向電極〕
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも1種が金属電極であることが好ましい。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。金属電極は、電解質中の銀の酸化還元電位に近い仕事関数を有する金属が好ましく、中でも銀または銀含有率80%以上の銀電極が、銀の還元状態維持のために有利であり、また電極汚れ防止にも優れる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0040】
また、本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0041】
電極間ギャップ(セルの厚みであり、隔壁の高さである)は、用いる色素及び求められる書き換え速度や濃度等により異なるが、数十〜数百μmの範囲で設定することができる。通常は、20〜500μm程度である。
【0042】
〔ナノ多孔質膜〕
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも1方の電極上にナノ多孔質膜を有している。ナノ多孔質膜は、ナノ微粒子の結着により設けることが好ましい。
【0043】
本発明に係るナノ多孔質膜を形成する微粒子としては、ポリメチルメタクリレート、セルロース、ポリカーボネート、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、アルミナ、ゼオライト等の粒子が使用できる。また、微粒子そのもので電極膜を形成しうる導電性微粒子としては、Snドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の導電性微粒子の他、酸化チタン微粒子表面にITO、ATO、FTOをコートした微粒子等を使用することができる。なお、ここでいう導電性とは、10MPaの圧力での粉体抵抗が0.01〜100Ωcm、好ましくは0.01〜10Ωcmを指す。
【0044】
本発明においては、微粒子の平均粒径は5nm〜10μmが好ましく、より好ましくは20nm〜1μmである。また比表面積は簡易BET法で1×10-3〜1×1022/gであることが好ましく、より好ましくは1×10-2〜10m2/gである。なお、微粒子の形状は不定形、針状、球形等任意の形状のものが用いられる。
【0045】
透明導電性膜による微粒子の結着としては、ゾルゲル法を採用することができ、例えば、(1)Journal of the Ceramic Society of Japan,102,2,p200(1994)、(2)窯業協会誌90,4,p157、(3)J.of Non−Cryst.Solids,82,400(1986)等に記載の方法によりITO、ATOの膜形成が可能である。またPMMA球状粒子等の非導電性微粒子を分散したゾル液を用い、ゾルゲル法で透明導電性膜を形成して、これらの微粒子の表面に導電性膜を形成することができる。このようにして、微粒子同士及び電極基板と微粒子によって形成された空孔が前記透明導電性膜を外殻として有する形態にすることにより、電極の実質的表面積を大にすることができる。
【0046】
〔絶縁性多孔質膜〕
本発明においては、少なくとも一方の電極層上に、絶縁性物質による多孔質の膜を形成することも効果的である。絶縁性物質は、過電圧が印加されたり、必要以上の通電時間が経過したために、エレクトロクロミック剤の反応が行き過ぎ、色素が可逆反応を示さなくなることや、多孔質膜の表面形状にかかる部分的な電解集中による色調の劣化を防止する役割を果たす。
【0047】
本発明に係る絶縁性多孔質膜は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する膜であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物のような比誘電率が低い無機材料の多孔質体等が挙げられる。
【0048】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法。高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物または無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物または無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気する等して発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の絶縁性多孔質膜を挙げることができる。
【0049】
多孔質膜は金属酸化物の微粒子からなることが好ましい。本発明で特に好ましく用いられるのは、Al23、SiO2である。これらの膜は、透明性が高く、電解液溶媒への耐性もあるため、特に好ましい。
【0050】
Al23粒子としては、立方晶のものと斜方晶ものが知られているが、本発明ではどちらでも好ましく用いられる。SiO2粒子は、非晶質の粒子が特に好ましい。
【0051】
粒子形状は、真球に近いものが特に好ましい。粒子形状が不揃いであると、その突起に電界集中が起こる可能性が高くなる。
【0052】
各金属酸化物の純度は十分に高いことが好ましく、99%以上であるような純度の高いものが特に好ましい。
【0053】
微粒子の平均粒径は1nm〜5μmが好ましく、より好ましくは10〜50nmである。また比表面積は簡易BET法で1×10-3〜1×1022/gであることが好ましく、より好ましくは1×10-2〜10m2/gである。なお、微粒子の形状は不定形、針状、球形等任意の形状のものが用いられる。
【0054】
多孔質膜の孔サイズは、本発明の目的のためには、多孔質膜内部に十分にエレクトロクロミック色素含有液を保持することが求められる。同時に、膜の機械的強度も求められるため、あまりに大きい孔は好ましくない。
【0055】
多孔質膜の膜厚は目的に応じて特に規定されるものではないが、およそ30μm以下であることが好ましい。下限は0.1μm程度である。
【0056】
〔隔壁〕
本発明に係る隔壁に用いられる熱可塑性樹脂または熱硬化物の前駆体は、多官能性のアクリレートまたはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシド、それらのオリゴマーまたはポリマー等からなる群から選択されうる。多官能性アクリレート及びそのオリゴマーが最も好ましい。多官能性エポキシド及び多官能性アクリレートの組み合わせも非常に有用であり、望ましい物理的機械的性質を達成できる。エンボス加工したマイクロカップの耐屈曲性を向上させるために、可撓性を付与する架橋可能オリゴマー、例えばウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレートを添加してもよい。この組成物はオリゴマー、モノマー、添加剤及び場合によりポリマーも含んでよい。この種の材料のガラス転移温度(Tg)は、通常、約−70〜約150℃、好ましくは約−20〜約50℃の範囲にある。隔壁形成処理は、一般的にTgより高い温度で実施する。加熱した雄型またはこの型を押し付ける加熱したハウジング基材を使用して、処理温度及び圧力を制御し得る。処理条件(処理温度、圧力及び前駆体粘度等)は、必要に応じて最適な値を選択できる。
【0057】
光硬化性樹脂の前駆体は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリオレート等のオリゴマー(低重合体)、反応性希釈剤(モノマー)、及び光重合開始剤(ベンゾイン系、アセトフェノン系等)を混合したものからなる。光加工性樹脂で隔壁を形成する場合、雄型は特に加熱する必要はないが、別途、必要な光照射を行う必要がある。
【0058】
(エレクトロクロミック剤)
本発明に用いられるエレクトロクロミック剤は、電子の供受により色を変化させる化合物である。特に有機化合物が好ましい。特開2002−328401号に記載の各種ビオロゲン化合物、特表2004−537743号に記載の色素、その他知られている色素を用いることができる。ロイコ型色素を用いる場合には、必要に応じて顕色剤あるいは消色剤を併用してかまわない。
【0059】
〔電解質〕
本発明の表示素子においては、電極の間に電解質が用いられる。電解質は、真空注入法、大気注入法、メニスカス法等によってシールされた電極間に設けた間隙に注入したり、スパッタリング法、蒸着法、ゾルゲル法等によって電極上に電解質物質の層を形成した後、対向電極を合わせたり、フィルム状の電解質物質を用いて合わせガラス化したりして用いることができる。
【0060】
この電解質は、エレクトロクロミック層を着色、消色、色変化等をさせることができるものである限り特に限定されないが、通常室温で1×10-7S/cm以上のイオン伝導度を示す物質であるものが好ましい。電解質物質としては、特に限定されなく、微粒子同士及び電極基板と微粒子によって形成された空孔を満たすことができる液系、ゲル化液系を用いることができる。
【0061】
上記液系としては、溶媒に塩類、酸類、アルカリ類等の支持電解質を溶解したもの等を用いることができる。上記溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性をするものが好ましい。具体的には水や、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、トリメチルホスフェイト、ポリエチレングリコール等の有機極性溶媒が挙げられ、好ましくは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、トリメチルホスフェイト、ポリエチレングリコール等の有機極性溶媒が望ましい。これらは、使用に際して単独もしくは混合物として使用できる。
【0062】
支持電解質としての塩類は、特に限定されず、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩や4級アンモニウム塩や環状4級アンモニウム塩等が挙げられ、具体的にはLiClO4、LiSCN、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiPF6、LiI、NaI、NaSCN、NaClO4、NaBF4、NaAsF6、KSCN、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や、(CH34NBF4、(C254NBF4、(n−C494NBF4、(C254NBr、(C254NClO4、(n−C494NClO4等の4級アンモニウム塩及び環状4級アンモニウム塩等、もしくはこれらの混合物が好適なものとして挙げられる。支持電解質としての酸類は、特に限定されず、無機酸、有機酸等が挙げられ、具体的には硫酸、塩酸、リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類等が挙げられる。支持電解質としてのアルカリ類は、特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
【0063】
ゲル化液系電解質としては、上記液系電解質に、さらにポリマーを含有させたり、ゲル化剤を含有させたりして粘稠もしくはゲル状としたもの等を用いることができる。用いるポリマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンオキサイド、ナフィオン等が挙げられる。また、ゲル化剤としては、特に限定されず、オキシエチレンメタクリレート、オキシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアミド、寒天等が挙げられる。
【0064】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を用いることができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0065】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0066】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0067】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0068】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0069】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 48右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤、安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔隔壁の接着〕
隔壁が熱可塑性樹脂で構成される場合、電極層を有する基板との接着時に、接着面を加熱溶融し、接着後冷却することで容易に接着できる。また、エポキシ系接着剤等、よく知られる接着剤を適宜使用することができる。このような接着剤については、「先端接着接合技術」(NGTコーポレーション、2000年発行)等に見ることができる。この接着は、隔壁上に対向基板を張り合わせる場合にも有効である。
【0070】
(雄型の製造)
雄型はダイアモンド・ターン・プロセスによって、またはフォトレジスト・プロセス及びその後のエッチングまたは電鋳のいずれかによって製造できる。別法では、「コンティニュアス・マニュファクチャリング・オブ・シン・カバー・シート・オプティカル・メディア(Continuous manufacturing of thin cover sheet optical media)」、SPIE Proc.第1663巻,第324頁(1992年)に記載されているように無電解ニッケル付着またはニッケルスルファメート電鋳によってニッケルにより形成してよい。また、例えば「リプリケーション・テクニクス・フォー・マイクロ オプティックス(Replication techniques for micro−optics)」、SPIE Proc.第3099巻,第76〜82頁(1997年)に記載されているように、e(電子)−ビーム・ライティング、ドライ・エッチング、ケミカル・エッチング、レーザー・ライティングまたはレーザー・インタフェアランス(laser interference)を含む他のマイクロエンジニアリング技術を用いて形成することもできる。別法では、型はプラスチック、セラミックまたは金属を用いるフォトマシニング(photo machining、光学的加工)によって形成することができる。
【0071】
〔画素部分の除去〕
隔壁構造が形成されたシートを、基板に接着した場合、画素の上部は、シートによりふさがっているため、これを除去する必要がある。熱可塑性樹脂のシートの場合、隔壁構造を形成した雄型と同じものを過熱し、位置合わせして押し当てることでシートを溶融し除去することが可能である。また、樹脂の分解エネルギー以上のレーザー光等を照射して、シートの該当部分を除去することもできる。
【0072】
〔EC剤の吸着、電解質あるいはエレクトロクロミック媒体の注入〕
本発明では、EC剤はセル構造を形成するより前にナノ多孔質膜に吸着させておくことができる。一般的には、EC剤を適切な溶媒に溶解させた溶液に多孔質膜を浸漬した後に乾燥させることで行うことができる。画素間で吸着させるEC剤が異なる場合には、インクジェット法等で、目的とする画素のみにEC剤を吸着させることが可能である。また、EC剤含有液に粘性がある場合には、スクリーン印刷法を用いることもできる。
【0073】
〔スクリーン印刷〕
本発明においては、電極パターン、ナノ多孔質膜等をスクリーン印刷法で形成することもできる。例えば、ナノ多孔質膜をスクリーン印刷で形成する場合、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上にナノ多孔質材料を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、ナノ多孔質材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写されたナノ多孔質材料を焼成する。
【0074】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子においては、エレクトロクロミック化合物を酸化時に着色させ、還元時に透明となるように対向電極の駆動操作を行なうことにより、画像表示する。
【0075】
本発明において、エレクトロクロミック表示装置の駆動方法としては、例えば、「エレクトロクロミックディスプレイ」(1991 産業図書株式会社刊)の77〜102ページに記載の方法を挙げることができる。
【0076】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、諧調やメモリー機能等のメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。本発明においては、上記駆動操作の中でも、アクティブマトリック駆動であることが、本発明の効果を寄り発現できる観点から好ましい。
【0077】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0079】
実施例
〔表示素子1の作製〕
(パターン化電極基板の作製)
厚さ1.5mmのガラス上に厚さ約0.1μmのITO膜を形成した基板をエッチング処理し、ピッチ5mm、幅4mmのITO電極パターンを形成した。
【0080】
(ナノ多孔質膜の形成)
Al23(関東化学社製 ナノテック01176−13)0.41g、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)0.25gを炭酸プロピレン5g中に分散/溶解し、ナノ多孔質膜形成用塗布液を調製した。
【0081】
これをITO電極パターンを形成した電極上にスクリーン印刷法によりパターン状に塗布し、500℃、1時間焼成し、多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の膜厚は13.5μmであった。
【0082】
(エレクトロクロミック剤の吸着)
(a)ビス−(2−ホスホノエチル)−4,4′−ビピリジニウムジブロミドの0.02mol/L水溶液を、上記作製した多孔質膜に対し、所定のパターンで滴下し、乾燥させた。
【0083】
この後に、(b)〔β−(10−フェノチアジル)プロポキシ〕ホスホン酸の0.02mol/Lクロロホルム溶液を、(a)液を滴下しなかった画素に対して滴下し、乾燥させた。
【0084】
(隔壁形状の形成)
離型フィルム上に紫外線硬化性のエポキシ樹脂を厚さ約300nmとなるように塗布し、所望の画素セルの形状を持つエンボス型を押し付けた状態で紫外線照射し、画素パターンに応じた隔壁を形成した。
【0085】
隔壁上部に紫外線硬化性の接着剤を塗布し、これを色素吸着した多孔質層を有する基板に対し、位置合わせして接着させ、離型フィルムを剥離した。
【0086】
さらに、画素部分の蓋となっている部分にレーザーを照射し、エポキシ樹脂を取り除いた。
【0087】
(電解質液の注入)
電解質液として、テトラブチルアンモニウムパークロレートの0.2mol/Lプロピレンカーボネート液を調製し、これを上記隔壁形成基板に全面塗布し、画素セルに電解質液を満たした。
【0088】
(対向電極の貼り合わせ)
ITO電極層付ポリカーボネートフィルムを、電極層が内側になるように貼り合わせ、表示素子1(本発明)を作製した。
【0089】
〔表示素子2の作製〕
(パターン化電極基板の作製)
表示素子1と同様に、パターン化電極基板を作製した。
【0090】
(ナノ多孔質膜の形成)
SiO2(関東化学社製 ナノテック 37848−23)0.26g、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)0.25gを炭酸プロピレン5g中に分散/溶解し、これをパターン化電極基板上にスクリーン印刷法により塗布し、500℃、1時間焼成し、パターン化された多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の膜厚は12.8μmであった。
【0091】
(隔壁形状の形成)
表示素子1と同様にして、ナノ多孔質膜を有する基板に隔壁を設け、画素部分を開口させた。
【0092】
(電解質液の注入と対向電極の貼り合わせ)
0.05mol/Lの過塩素酸リチウム、0.05mol/Lのフェロセンをγ−ブチロラクトンに溶解した。これにエレクトロクロミック剤として色素:ビス−(2−フォスフォノエチル)−4,4−ビピリジニウムジクロライドを0.2mol/L相当量を溶解させ、エレクトロクロミック剤含有の電解質液(a)を調製した。
【0093】
表示素子1の作製で用いた色素を〔β−(10−フェノチアジル)プロポキシ〕ホスホン酸に代えて、同様にエレクトロクロミック剤含有の電解質液(b)を調製した。
【0094】
電解質液(a)と(b)が交互になるように画素セルに充填し、ITO電極層付ポリカーボネートフィルムを、電極層が内側になるように貼り合わせ、表示素子2(本発明)を作製した。
【0095】
〔表示素子3の作製〕
ITO電極層付ポリカーボネートフィルムのITO電極を画素パターンにエッチングし、これに、昭和電工株式会社製の酸化チタン分散液SP−210を画素パターン状に塗布し、120℃で加熱乾燥させ、パターン化した酸化チタンのナノ多孔質膜を得た。
【0096】
これに、表示素子1の作製と同様に、ビス−(2−ホスホノエチル)−4,4′−ビピリジニウムジブロミドと〔β−(10−フェノチアジル)プロポキシ〕ホスホン酸を交互に吸着させた。
【0097】
(隔壁形状の形成)
熱可塑性樹脂であるポリメチルメタクリレート樹脂を用い、隔壁形状が形成されたフィルムを得た。これを全面にITO電極層が形成されたポリカーボネートフィルムの電極層側に接着し、エンボス型を過熱して画素相当部分を過熱溶融して除去し、開口した画素セルを得た。
【0098】
(電解質液の注入)
電解質液として、テトラブチルアンモニウムパークロレートの0.2mol/Lプロピレンカーボネート液を準備し、これを上記隔壁形成基板に全面塗布し、画素セルに電解質液を満たした。
【0099】
これに色素吸着したナノ多孔質膜形成基板を、ナノ多孔質膜が内側になるように貼り合わせ、表示素子3(本発明)を得た。
【0100】
〔表示素子4の作製〕
表示素子3と同様にして隔壁形成基板を得、これに表示素子2と同じエレクトロクロミック色素含有電解質液を交互に充填した。
【0101】
これに、ITO電極層付ポリカーボネートフィルムのITO電極を画素パターンにエッチングし、これに、昭和電工株式会社製の酸化チタン分散液SP−210を画素パターン状に塗布し、120℃で加熱乾燥させ、パターン化した酸化チタンのナノ多孔質膜を、ナノ多孔質膜が内側になるように貼り合わせ、表示素子4(本発明)を得た。
【0102】
〔表示素子5の作製〕
国際公開第04/025356号パンフレットを参考にし、導電性樹脂を用いたセルを形成し、表示素子1と同じエレクトロクロミック媒体を用いて表示素子5(比較例)を得た。
【0103】
〔表示素子の評価〕
作製した表示素子に対し、各画素セルが個別に駆動するような駆動信号を与えたところ、セルに応じた反応を示した。
【0104】
駆動電圧は、本発明の表示素子の方が比較例より0.5Vほど低く、反応速度も速く、色濃度も高かった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係るセル構造を有するエレクトロクロミック表示素子の模式図である。
【図2】本発明に係るセル構造を有する他のエレクトロクロミック表示素子の模式図である。
【図3】本発明に係る隔壁形成工程の模式図である
【図4】本発明に係る隔壁構造を持つシートを電極を有する基板に貼り合わせた状態の模式図である。
【図5】本発明に係る、シートから画素相当部分を除去した状態の模式図である。
【符号の説明】
【0106】
1 基板
2 電極層
3 ナノ多孔質膜
4 隔壁
5 シート
6 雄型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の電極層を有する基板と、該基板の間に設けられた隔壁により構成されるセル構造を有し、セル内に少なくとも電圧の印加により発色、消色または変色するエレクトロクロミック媒体を含有するエレクトロクロミック表示素子において、前記電極層の少なくとも一方の表面にナノ多孔質膜が形成され、セル内表面に、少なくとも片方の電極(A)の上に設けられたナノ多孔質膜が露出し、反対側には少なくとも他の電極(B)または該電極(B)の上に設けられたナノ多孔質膜が露出していることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子。
【請求項2】
前記隔壁が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項3】
隣り合ったセル同士に含まれるエレクトロクロミック媒体の発色が異なることを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項4】
前記エレクトロクロミック媒体の発色がB、G、RあるいはY、M、Cの3色の組み合わせであることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項5】
前記エレクトロクロミック媒体が、少なくともエレクトロクロミック色素と電解質を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項6】
前記エレクトロクロミック色素がナノ多孔質膜の一方に吸着されていることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項7】
前記ナノ多孔質膜が金属酸化物により構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項8】
前記ナノ多孔質膜が絶縁性物質であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項9】
表面に電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせ画素状にナノ多孔質膜を形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜にエレクトロクロミック色素を吸着させ、これに、該画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを位置合わせして接着し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部から電解質液を注入し、これに、表面に電極層を有する基板の電極層が内側になるように貼り合わせることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項10】
表面に電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせ画素状にナノ多孔質膜を形成し、これに、該画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを位置合わせして接着し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部からエレクトロクロミック媒体を注入し、これに、表面に電極層を有する基板の電極層が内側になるように貼り合わせることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項11】
表面に電極層を有する基板のベタ電極層の上に、画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを形成し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部から電解質液を注入し、これに、電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせナノ多孔質膜を画素状に形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜にエレクトロクロミック色素を吸着させた基板を貼り合わせることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項12】
表面に電極層を有する基板のベタ電極層の上に、画素パターンに応じた隔壁形状を有する熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シート形成し、画素部分の蓋となっている部分の熱可塑性樹脂シート、熱硬化性樹脂シートまたは光硬化性樹脂シートを加熱あるいはレーザー照射等により除去し、開口させ、開口部からエレクトロクロミック媒体を注入し、これに、電極層を有する基板の電極層に画素パターンを形成し、その上に該画素パターンに合わせナノ多孔質膜を画素状に形成し、でき上がった該ナノ多孔質膜を有する基板を貼り合わせることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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