説明

エレベータのつり合おもり

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エレベータのつり合おもりに関する。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来のエレベータのつり合おもりやかごが昇降路に懸架された状態を示す説明図である。図4において、ビルの一画に縦に形成された昇降路1の上部には、マシンビーム6が横設され、このマシンビーム6の上面には、マシンベッドを介して巻上機7が設置されている。
【0003】この巻上機7には、電動機7aの出力軸に連結された減速機の出力軸の端部に対して、綱車9Aが取り付けられ、マシンベッドの側面に対して、小径のそらせシーブ9Bが取り付けられている。
【0004】これらの綱車9Aとそらせシーブ9Bには、主索8の上端がシングルラップ方式で巻装されている。このうち、綱車9Aの左側から垂下した主索8の下端には、かご2が懸架され、それせシーブ9Bの右側から垂下した主索8の下端には、図5で詳述するつり合おもり3Bが懸架されている。
【0005】マシンビーム6が設置された機械室5の内部には、巻上機7やかご2のかご戸駆動電動機などを制御する図示しない制御盤が据え付けられている。このため、昇降路1には、制御盤に接続された電線の束(テールコード)が垂下し、このテールコードの下端は、かご2の下部に設けられた接続箱を介して、かごの内部に接続されている。
【0006】かご2の左側には、のりば29が上下に示され、昇降路1の下端のピットには、緩衝器4A,4Bが立設されている。かご2とつり合おもり3Bの紙面直交方向の両側には、図示しない案内レールが縦設されている。かご2とつり合おもり3は、これらの案内レールに対して、ガイドシューによって案内されて、昇降路1の内部を昇降する。
【0007】図5は、図4で示したつり合おもり3Bの拡大詳細図で、図4のB−B矢視拡大図である。なお、図5は、定員が11人以下の規格形エレベータの場合を示す。図5において、つり合おもり3Bは、骨組となるおもり枠10Bと、このおもり枠10Bの内部に下側から積み重ねられた複数枚のおもり15Cと、おもり枠10Bの上端に縦貫された複数本のシングルロッド19B及びこのシングルロッド19Bに遊嵌された圧縮コイルばね20と、おもり枠10Bの上下端の左右に取り付けられたガイドシュー11などで大略構成されている。
【0008】このうち、おもり枠10Bは、C形鋼から製作されC形の開口側を内側とした縦骨10aと、同じくC形鋼から製作され縦骨10aと対称的に対置された縦骨10bと、これらの縦骨10a,10bの上下端の内側に横に対置して設けられ、左右の縦骨10a,10bに両端が溶接された一対の横板17Bと、この横板17Bの上下端と縦骨10a,10bの上下端に対して、紙面直交方向に設けられ、これらの縦骨10a,10bと横板17Bに両端が溶接された端板12と、上側の横板17Bの下面中央部に対して、紙面直交方向に設けられて、横板17Bに溶接されたヒッチプレート18Bで構成されている。
【0009】また、おもり15Cは、軟鋼板の厚板からガス切断などで製作され、おもり枠10Bを構成する左右の縦骨10a,10bの間に上方から積み重ねられる。これらのおもり15Cは、最上端に重ねられた帯板16と、両端が縦骨10a,10bの内側に遊嵌した山形鋼製のおもり押えが2本のボルト23で締め付けられることによって、固定される。
【0010】ヒッチプレート18Bには、シングルロッド9Bの下部が貫通する貫通穴があらかじめ形成されている。シングルロッド19Bの上端には、主索8の下端が挿入された後固定され、シングルロッド19Bの下部には、圧縮コイルばね20が下側から遊嵌され、シングルロッド19Bの下端には、図示しないばね受座とダブルナット21が挿入されている。圧縮コイルばね20は、つり合おもり3Bの重量によって圧縮されている。
【0011】おもり枠10Bの上下端の左右には、端板12が溶接され、この端板12の外面側に対して、山形鋼と補強用リブで構成するガイドシュー支え11aが4本のボルト23で固定されている。
【0012】これらのガイドシュー支え11aの外面側には、図示しない平面図ではコ字状のガイドシュー11が開口側を外向きにしてそれぞれ固定されている。これらのガイドシュー11のコ字状の内側には、一点鎖線で示すガイドレール22の頭部が僅かな間隙で遊嵌している。左右の縦骨10a,10bの中間部の外面側には、座14を介して、L字形の中間ストッパ13が対称的に固定されている。
【0013】次に、このように構成されたつり合おもりの昇降路内での組立と、主索に対する懸架手順について説明する。まず、昇降路のピットに対して、木材の角柱を使って足場を設置する。この足場に対して、おもり枠10Bを載置して仮止めする。このおもり枠10Bに対して、あらかじめガイドシュー支え11aに固定した各ガイドシュー11をボルト23で固定する。
【0014】おもり15Cを所定の枚数だけおもり枠10Bの内部に積み重ねる。これらのおもり15Cの最上部に対して、おもり押えを載置し、ボルト23によって、帯板16に固定する。さらに、左右の中間ストッパ13を固定する。
【0015】シングルロッド19Bをヒッチプレート18Bに上方から貫設し、これらのシングルロッド19Bの下側から圧縮コイルばね20とばね座を遊嵌し、ダブルナットを螺合する。シングルロッド19Bと主索8の間に挿入した錫と鉛との合金のバビッドメタルをトーチランプで溶融することで強固に固定する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような据付手順で組み立てられるエレベータのつり合おもりにおいては、おもり枠10Bと帯板16やおもり押えは、梱包されない状態で搬入されるが、その他のおもり15Cやガイドシュー11及びシングルロッド19Bなどは、段ボール箱や網付箱に収納して搬入されるので、組立開始までには、始発階かどこかの階床の工事にさしつかえない場所に保管される。すると、組立作業の前にこれらの部品をピットの内部に搬入しなければならない。
【0017】また、万一、どれかの部品の数が不足していたり、他の形式・定格のつり合おもりの部品と間違えて収納されていた場合には、組立作業を開始してはじめて、それが判明するので、その時点で所定の部品を再手配すると、このエレベータが設置されるビルの他の工事によって制約されたエレベータの据付期間内には完了しなくなるおそれがある。そこで、本発明の目的は、組立が容易で、工期の予定外の遅延も防ぐことのできるエレベータのつり合おもりを得ることである。
【0018】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明のエレベータのつり合おもりは、おもり枠の下部に固定されるおもりと、おもり枠の上下端の両側にシューを内側にして仮止めされ外側に本止め可能に取り付けられるガイドシューと、おもり枠の中間部にシューを内側にして仮止めされ外側に本止め可能に取り付けられる中間ストッパと、おもり枠のヒッチプレートに貫設され下端がおもり枠のおもり押えに仮止めされ圧縮コイルばねが遊嵌されるシングルロッドを備えたことを特徴とする。
【0019】また、請求項2に記載の発明のエレベータのつり合おもりは、おもりの重量を、かご枠と巻上機による昇降路取付機器の搬送に対応する値としたことを特徴とする。
【0020】また、請求項3に記載の発明のエレベータのつり合おもりは、おもりを、おもり枠の下部横板と兼用したことを特徴とする。
【0021】また、請求項4に記載の発明のエレベータのつり合おもりは、ガイドシューを、片側がおもり枠に固定された蝶番の他側に固定したことを特徴とする。
【0022】さらに、請求項5に記載の発明のエレベータのつり合おもりは、シングルロッドを、主索の下端が固定される上部ロッドと、この上部ロッドの下端と連結される下部ロッドとしたことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明のエレベータのつり合おもりの一実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明のエレベータのつり合おもりの第1の実施形態を示す図で、従来の技術で示した図5に対応する図である。
【0024】図1において、図7と大幅に異なるところは、おもりの一部やガイドシュー及びシングルロッドなどを、製作工場においておもり枠に組み込んで、昇降路に搬入する方法に変えたことである。
【0025】すなわち、図5と同様に左右のC形鋼の縦骨10a,10bと上下端の横板17Aで構成されたおもり枠10Aの下部には、無人状態のかご枠と巻上機によって、他の昇降路のガイドレールなどを取り付ける工事に見合った重量のおもり15Aが挿入され、両側が縦骨10a,10bに溶接で固定されている。
【0026】なお、おもり15Aの上方に二点鎖線で示すおもり15Bは、すべての据付機器が固定された後、かご枠に乗りかごが組み込まれ、更に定員の乗客に見合った荷重で試運転する場合と、実際に商業運転に入る場合に追加するおもりを示す。このおもり15Bは、乗りかごとともに、後で搬入される。おもり枠10Aの上下端の左右には、ガイドシュー11が固定されたガイドシュー支え11aが、ガイドシュー11を内側に向けてボルト23で仮止めされている。
【0027】ヒッチプレート18Aには、図1のA−A矢視拡大図を示す図2に示すように、左右に対して吊上用の穴18aがあらかじめ加工されている。なお、中央の大径の穴18bは、図1及び図3(a)に示すロッド19Aを貫通する穴である。
【0028】また、左右の縦骨10a,10bの中間部の内側にも、中間ストッパ13が、縦骨10a,10bのめねじ穴に螺合されたボルト23によって仮止めされている。ロッド19Aの下端は、帯板16と対置したおもり押えに形成された穴に嵌合し、ロッド19Aの下部に挿入された割ピン26によって、図1に示すように位置決めされている。
【0029】ロッド19Aには、圧縮コイルばね20が上下のばね座とともに遊嵌され、ロッド19Aの下端から螺合されたダブルナット21によって位置決めされている。ロッド19Aの上端には、環状の頭部19aが熱間鍛造によって形成されている。
【0030】次に、このように構成されたエレベータのつり合おもりの据付手順を説明する。工場からの出荷時や昇降路への搬入には、ヒッチプレート18Aの両側に形成された穴18aを利用して行う。また、おもり15Bは別梱包とする。従来の技術で説明した足場におもり枠10Aを立設し、角材に固定した後、割ピン26を抜く。
【0031】図3(a)のロッド19Aの上部に示した上ロッド24を下端に固定した主索8を綱車から下ろし、上ロッド24の下端とロッド19Aの頭部19aに形成されたピン穴に頭付きピンを挿入し、ナットで固定する。
【0032】ガイドシュー11を固定したボルト23を外し、ガイドシュー11を外向きにして締め付ける。同様に、中間ストッパ13を固定したボルト23を外し、中間ストッパ13を外向きにして締め付ける。定格荷重のおもりをかごに載せて試運転するときには、図1の二点鎖線で示したおもり15Bを搭載し、帯板16と図示しないおもり押えで上方から固定する。
【0033】このように構成されたエレベータのつり合おもりにおいては、製造工場からの搬送は、図1に示した仮組状態で梱包なしで行い、据付工事のために設置するときには、上下のガイドシュー11と中間ストッパ13の取付方向を変えるだけで、組み立てることができ、主索とロッドの接続も頭付ピンの挿入だけとなるので、取付部品の不一致のおそれを解消することができ、据付工期を短縮することができ、且つ、決められた期間内に確実に完了することができる。
【0034】なお、上記実施例において、おもり15Aは、図1に示すように上下方向の幅が広い単品としてもよく、また、後で定格積載荷重で試運転するときに追加する上方のおもり15Bと共用形の幅の狭いおもりと共通にしてもよい。
【0035】前者の場合には、左右の縦骨10a,10bと溶接することで、おもり枠10Aの剛性が上がる利点がある。また、後者の場合には、下側の横板7Aと兼用した請求項3に記載の発明として、更に製作を容易にしてもよい。
【0036】次に、図3(b)は、本発明のエレベータのつり合おもりの第2の実施形態を示す部分拡大詳細図で、図1で示した左上端のガイドシュー11の取付状態に対応する図で、請求項4に対応する図である。
【0037】図3(b)においては、端板12の内側の上面に対して、ガイドシュー支え11aの板厚と等しい厚みの座27が溶接で固定されている。この座27の左側の上面に蝶番28の片側が固定され、この蝶番28の他側に対して、逆向きのガイドシュー支え11aの左端が小ねじで連結されている。ガイドシュー支え11aは、ボルト23で座27に逆向きに固定されている。
【0038】このようにガイドシュー支え11aが取り付けられたエレベータのつり合おもりにおいては、据付時においては、ボルト23を外し、蝶番28とともに矢印Cに示すように反時計方向に反転させて、鎖線で示す定位置に位置決めし、ボルトで固定する。
【0039】この場合には、ボルト23を外した後にも、ガイドシュー支え11aは、蝶番28によって支えられているので、作業中に誤って、ガイドシュー11を昇降路のピットに落とすおそれを解消することができる。
【0040】
【発明の効果】以上、請求項1に記載の発明によれば、おもり枠の下部に固定されるおもりと、おもり枠の上下端の両側にシューを内側にして仮止めされ外側に本止め可能に取り付けられるガイドシューと、おもり枠の中間部にシューを内側にして仮止めされ外側に本止め可能に取り付けられる中間ストッパと、おもり枠のヒッチプレートに貫設され下端がおもり枠のおもり押えに仮止めされ圧縮コイルばねが遊嵌されるシングルロッドを備えることで、つり合おもりの組立を、おもりとシングルロッドの搬入及び挿着が不要で、ガイドシューと中間部ストッパの取付方向の反転のみとしたので、組立が容易で、工期の予定外の遅延も防ぐことのできるエレベータのつり合おもりを得ることができる。
【0041】また、請求項2に記載の発明によれば、おもりの重量を、かご枠と巻上機による昇降路取付機器の搬送に対応する値とすることで、昇降路取付機器を据え付けるためのつり合おもりの組立を、おもりとシングルロッドの搬入及び挿着が不要で、ガイドシューと中間部ストッパの取付方向の反転のみとしたので、組立が容易で、工期の予定外の遅延も防ぐことのできるエレベータのつり合おもりを得ることができる。
【0042】また、請求項3に記載の発明によれば、おもり枠の下部横板とおもりを兼用することで、つり合おもりの組立を、おもりとシングルロッドの搬入及び挿着が不要で、ガイドシューと中間部ストッパの取付方向の反転のみとするとともに、おもりでおもり枠の剛性も増やしたので、組立が容易で、工期の予定外の遅延も防ぐことのできるエレベータのつり合おもりを得ることができる。
【0043】また、請求項4に記載の発明によれば、ガイドシューの片側をおもり枠に固定することで、つり合おもりの組立を、おもりとシングルロッドの搬入及び挿着が不要で、蝶番によるガイドシューの反転と中間部ストッパの取付方向の反転のみとしたので、組立が容易で、工期の予定外の遅延も防ぐことのできるエレベータのつり合おもりを得ることができる。
【0044】さらに、請求項5に記載の発明によれば、シングルロッドを、主索の下端が固定される上部ロッドと、この上部ロッドの下端と連結される下部ロッドとすることで、つり合おもりの組立を、おもりとシングルロッドの搬入及び挿着が不要で、ガイドシューと中間部ストッパの取付方向の反転のみとし、主索と上部ロッドとの接続作業も不要としたので、組立が容易で、工期の予定外の遅延も防ぐことのできるエレベータのつり合おもりを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエレベータのつり合おもりの第1の実施形態を示す正面図。
【図2】図1のA−A矢視拡大詳細図。
【図3】(a)は、本発明のエレベータのつり合おもりの第1の実施例の部分拡大詳細図。(b)は、本発明のエレベータのつり合おもりの第2の実施形態を示す部分拡大図。
【図4】従来のエレベータのつり合おもりとかごが懸架された昇降路の一例を示す図。
【図5】従来のエレベータのつり合おもりの一例を示す正面図。
【符号の説明】
1…昇降路、2…かご、3A,3B…つり合おもり、4A,4B…緩衝器、5…機械室、6…マシンビーム、7…巻上機、8…主索、9A…綱車、9B…そらせシーブ、10A…おもり枠、11…ガイドシュー、11a…ガイドシュー支え、12…端板、13…中間ストッパ、14,27…座、15A,15B…おもり、16…帯板、17A…横板、18…ヒッチプレート、19A…ロッド、20…圧縮コイルばね、21…ダブルナット、22…ガイドレール、23…ボルト、24…上ロッド、25…頭付ピン、26…割ピン、28…蝶番。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 おもり枠の下部に固定されるおもりと、前記おもり枠の上下端の両側にシューを内側にして仮止めされ外側に本止め可能に取り付けられるガイドシューと、前記おもり枠の中間部にシューを内側にして仮止めされ外側に本止め可能に取り付けられる中間ストッパと、前記おもり枠のヒッチプレートに貫設され下端が前記おもり枠のおもり押えに仮止めされ圧縮コイルばねが遊嵌されるシングルロッドを備えたエレベータのつり合おもり。
【請求項2】 前記おもりの重量を、かご枠と巻上機による昇降路取付機器の搬送に対応する値としたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータのつり合おもり。
【請求項3】 前記おもりを、前記おもり枠の下部横板と兼用したことを特徴とする請求項2に記載のエレベータのつり合おもり。
【請求項4】 前記ガイドシューを、片側が前記おもり枠に固定された蝶番の他側に固定したことを特徴とする請求項1に記載のエレベータのつり合おもり。
【請求項5】 前記シングルロッドを、主索の下端が固定される上部ロッドと、この上部ロッドの下端と連結される下部ロッドとしたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータのつり合おもり枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3207342号(P3207342)
【登録日】平成13年7月6日(2001.7.6)
【発行日】平成13年9月10日(2001.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−281364
【出願日】平成7年10月30日(1995.10.30)
【公開番号】特開平9−124257
【公開日】平成9年5月13日(1997.5.13)
【審査請求日】平成12年7月7日(2000.7.7)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【参考文献】
【文献】特開 昭56−127578(JP,A)
【文献】特開 平5−294584(JP,A)