説明

エレベータ据付治工具用締結ピン

【課題】締結する部品の厚みや外形に関係なく、瞬時に部品同士の組立と解体を可能とし、作業性や取扱性が良いエレベータ据付治工具用締結ピンを得る。
【解決手段】丸鋼等から構成された所定の軸長を有する締結ピン本体1と、締結ピン本体の一端部にネジ加工を施すことにより形成された蝶ナット用ネジ部2と、締結ピン本体の他端部に軸方向と直交するようにかつ軸長に沿って設けられた多数の外れ止め用ピン穴3と、蝶ナット用ネジ部にネジ込み可能な蝶ナット4と、多数の外れ止め用穴のうちの一つに選択的に挿入することにより、その位置に取付固定される外れ止め用松葉ピン5と、締結ピン本体の一端部と外れ止め用松葉ピンとを連結接続するワイヤロープ8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に組立・解体を頻繁に行うエレベータ仮設資材部品の締結等に用いるエレベータ据付治工具用締結ピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ据付治工具の締結技術においては、一般的なボルトとナットの組み合わせが利用されている。
【0003】
また、エレベータ据付治工具の従来技術としては、例えば、エレベータ保守作業用命綱が知られている (例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−151431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエレベータ据付治工具の締結技術では、長いボルトを使用して厚みの違う部品を締結する場合、部品個数に関係なく締結することも可能であるが、厚みの違う部品毎に全サイズのボルトが必要となり、組立・解体時にボルト、ナット等の紛失、或いはネジ部全域にわたるナットの繰り返し使用により、ネジ部が傷み、結果的にナット締め付け不良が発生していた。
【0006】
また、従来技術は、エレベータ保守作業用命綱に関するものであり、エレベータ据付治工具の締結技術に関するものではない。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、締結する部品の厚みや外形に関係なく、瞬時に部品同士の組立と解体を可能とし、作業性や取扱性が良いエレベータ据付治工具用締結ピンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータ据付治工具用締結ピンにおいては、丸鋼等から構成された所定の軸長を有する締結ピン本体と、締結ピン本体の一端部にネジ加工を施すことにより形成された蝶ナット用ネジ部と、締結ピン本体の他端部に軸方向と直交するようにかつ軸長に沿って設けられた多数の外れ止め用ピン穴と、蝶ナット用ネジ部にネジ込み可能な蝶ナットと、多数の外れ止め用穴のうちの一つに選択的に挿入することにより、その位置に取付固定される外れ止め用松葉ピンと、締結ピン本体の一端部と外れ止め用松葉ピンとを連結接続するワイヤロープとを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、多数の外れ止め用ピン穴により、締結する部品の厚みおよび外形に関係なく、設計することができる。また、外れ止め用松葉ピンと蝶ナットの組み合わせにより、短時間で部品の組立・解体ができる。また、蝶ナットを付加することにより、部品同士を手締めで密着できるので、部品のガタツキが無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ据付治工具用締結ピンの未使用時の全体構成を示す正面図、図2は図1を側面から見た側面図、図3は図1を上方から見た平面図、図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ据付治工具用締結ピンによる締結使用状態の一例を示す正面図、図5は図4の時の外れ止め用松葉ピンの取付位置を示す上方から見た平面図、図6はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ据付治工具用締結ピンによる締結使用状態の他の例を示す正面図、図7は図6の時の外れ止め用松葉ピンの取付位置を示す上方から見た平面図である。
【0011】
図において、1は一般構造用の丸鋼等から構成された所定の軸長を持つエレベータ据付治工具用締結ピン本体、2はエレベータ据付治工具用締結ピン本体1の一端部にネジ加工を施すことにより形成された蝶ネジ用ネジ部、3はエレベータ据付治工具用締結ピン本体1の他端部に軸方向と直交するようにかつ軸長に沿って受けられた多数の外れ止め用ピン穴、4は蝶ネジ用ネジ部2に手締めによりネジ込み可能な蝶ナット、5はヘアピン状に形成されており、多数の外れ止め用ピン穴3のうちの一つに選択的に挿入することにより、その位置に取付固定される外れ止め用松葉ピンで、この松葉ピン5の取付固定位置を変更することにより、蝶ナット4と松葉ピン5との間に締結される部品の厚さや外形に任意に対応することができる。この松葉ピン5の根元部の環状部は弾性を有しており、親指大の直径を持ち、取付時に締結ピン本体1を弾性保持する働きをしている。6はエレベータ据付治工具用締結ピン本体1のネジ部2の先端部を部分的に切断加工することにより施されたDカン取付用穴、7はこのDカン取付用穴6に取り付けられたDカン、8はこのDカン7に一端部が連結接続されたワイヤロープで、その他端部は外れ止め用松葉ピン5の根元部の環状部に連結接続されている。したがって、各部品1〜8は一体となっているので、部品が泣き別れする心配が起きない。また、蝶ナット4はDカン7により外れない構成となっている。
【0012】
図4に示すエレベータ据付治工具用締結ピンによる締結使用状態の一例では、2種類の違う厚みの部品材料を3個締め付けた状態を示すものである。この時、外れ止め用の松葉ピン5の取付位置は最右側のA(図5参照)として、蝶ナット4で締め付けが可能であり、従来のピン結合の問題点であった部品のガタツキを解消することができる。
【0013】
また、図6に示すエレベータ据付治工具用締結ピンによる締結使用状態の他の例では、2種類の違う厚みの部品材料を2個締め付けた状態を示すものである。この時、外れ止め用の松葉ピン5の取付位置を最右側のAから最左側のF(図7参照)に変更することにより、蝶ナット4で締め付けが可能であり、従来のピン結合の問題点であった部品のガタツキを解消し、同じサイズのエレベータ据付治工具用締結ピンを共通に活用することができる。
【0014】
以上のように実施の形態1によれば、多数の外れ止め用ピン穴3により、締結する部品の厚みおよび外形に関係なく、設計することができる。また、外れ止め用松葉ピン5と蝶ナット4の組み合わせにより、短時間で部品の組立・解体ができる。また、蝶ナット4を付加することにより、部品同士を手締めで密着できるので、部品のガタツキが無くなる。また、ネジ部を必要最小限に留めることにより、締結部品の紛失やネジ部全域にわたる繰り返し使用によるネジ部の損傷が無く、また作業性や取扱性が良いエレベータ据付治工具用締結ピンを得ることができる。
【0015】
実施の形態2.
また、図示しないが、蝶ナット4部にバネ座金や平座金を追加して、蝶ナットの緩み止めまたは部品の損傷を防止することもできる。
【0016】
なお、この発明のエレベータ据付治工具用締結ピンは、主に組立・解体を頻繁に行うエレベータ仮設資材部品の締結等に用いると優れた効果を発揮するが、エレベータ据付治工具以外の一般的な部品や資材の締結に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータ据付治工具用締結ピンの未使用時の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1を側面から見た側面図である。
【図3】図1を上方から見た平面図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータ据付治工具用締結ピンによる締結使用状態の一例を示す正面図である。
【図5】図4の時の外れ止め用松葉ピンの取付位置を示す上方から見た平面図である。
【図6】この発明の実施の形態1におけるエレベータ据付治工具用締結ピンによる締結使用状態の他の例を示す正面図である。
【図7】図6の時の外れ止め用松葉ピンの取付位置を示す上方から見た平面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 エレベータ据付治工具用締結ピン本体
2 蝶ネジ用のネジ部
3 外れ止め用ピン穴
4 蝶ナット
5 外れ止め用の松葉ピン
6 Dカン取付用穴
7 Dカン
8 ワイヤロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸鋼等から構成された所定の軸長を有する締結ピン本体と、
前記締結ピン本体の一端部にネジ加工を施すことにより形成された蝶ナット用ネジ部と、
前記締結ピン本体の他端部に軸方向と直交するようにかつ軸長に沿って設けられた多数の外れ止め用ピン穴と、
前記蝶ナット用ネジ部にネジ込み可能な蝶ナットと、
前記多数の外れ止め用穴のうちの一つに選択的に挿入することにより、その位置に取付固定される外れ止め用松葉ピンと、
前記締結ピン本体の一端部と前記外れ止め用松葉ピンとを連結接続するワイヤロープと、
を備えたことを特徴とするエレベータ据付治工具用締結ピン。
【請求項2】
締結ピン本体の一端の先端部にDカン取付用穴を形成し、このDカン取付用穴にDカンを取り付け、このDカンにワイヤロープの一端部を連結したことを特徴とする請求項1記載のエレベータ据付治工具用締結ピン。
【請求項3】
外れ止め用松葉ピンは、根元部に弾性を有し、親指大の直径の環状部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータ据付治工具用締結ピン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−179454(P2008−179454A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14618(P2007−14618)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】