説明

エレベータ自動呼び登録装置

【課題】かご呼び登録および行き先階登録のための操作を必要とせずに身体障害者や高齢者でもエレベータを一人で容易に利用できるようにする。
【解決手段】エレベータ自動呼び登録装置10は、2つの登録階情報を記憶する記憶手段を含む物品52と、各階床の乗場32,34に設置されていて物品52を装着または使用する利用者50が乗場32,34に来たときに記憶手段に記憶されている登録階情報を非接触で読み取る情報読取センサ40a,40bと、登録階情報が読み取られたときにかご呼び登録するかご呼び登録部、および、情報読取センサ40a,40bで読み取った登録階情報のうち情報読取階以外の登録階情報を選択して行き先階登録する行き先階登録部を含むエレベータ制御盤と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ自動呼び登録装置に関し、特に、個人住宅用ホームエレベータに好適に用いられ身体障害者や高齢者のエレベータ利用を容易にするエレベータ自動呼び登録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個人用住宅に設置されるエレベータとしてホームエレベータがある。ホームエレベータにおいても、通常、普通のエレベータの場合と同様に、エレベータ乗場壁にかご呼び登録するための押ボタンが設けられ、かご内側壁には行き先階登録ボタンやかご扉の開閉ボタン等を含むかご操作盤が設けられている。
【0003】
また、階段の昇り降りが困難な高齢者または身体障害者(以下、「特定利用者」という)を家族の一員としてもつために、ホームエレベータを設置している個人用住宅もある。この場合、特定利用者が一人でエレベータを利用しようとする場合でも、乗場での押ボタン操作およびかご内での行き先階登録操作が必要になる。
【0004】
ここで、特許文献1には、身体障害者や高齢者でも操作および利用が簡単になるように、各乗場に1つのかご呼び登録ボタンだけを設けるとともに、かご内には非常時外部連絡用警報ボタンだけを設けて、乗場においてかご呼び登録ボタンを押し操作するだけでかご内での行き先階登録を行わずともエレベータを自動運転されるようにしたエレベータ装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−171410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のエレベータ装置においても、エレベータを利用する際には少なくとも乗場で押ボタンを押してかご呼び登録操作を行う必要がある。そのため、特定利用者が手の動きも不自由である場合には、家族が介助しなければかご呼び登録を行うことができず、他の家族が外出により不在のときには特定利用者がエレベータを利用できないことも想定される。
【0007】
本発明の目的は、かご呼び登録および行き先階登録のための操作を必要とせずに身体障害者や高齢者でもエレベータを一人で容易に利用できるようにするエレベータ自動呼び登録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置は、2つの登録階情報を記憶する記憶手段を含む物品と、各階床の乗場に設置されていて物品を装着または使用する利用者が乗場に来たときに記憶手段から登録階情報を非接触で読み取る情報読取部と、情報読取部によって登録階情報が読み取られたときにかご呼び登録するかご呼び登録部と、情報読取部で読み取った登録階情報のうち情報読取階以外の登録階情報を選択してかご操作盤において行き先階登録する行き先階登録部と、を備える。
【0009】
本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置において、記憶手段を含む物品は、リストバンド、杖、または車椅子であってもよい。
【0010】
また、本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置において、かご扉が開いている階の情報読取部は、かごが行き先階に着床して所定時間扉開した後、扉閉動作開始までは機能無効化されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置において、情報読取部による登録階情報の検知範囲は、乗場側およびかご側の両側に及んでいることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置において、かごが2つの登録階の間を連続して所定回数以上往復移動を繰り返しているとき、エレベータ制御盤から遠隔情報センタへの発報を行うことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置は、個人住宅用ホームエレベータに適用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置によれば、利用者が装着または使用する物品に組み込まれた記憶手段から2つの登録階情報を非接触で読み取ってかご呼び登録および行き先階登録を自動で行うことで、手の動きが不自由な身体障害者や高齢者でも一人で容易にエレベータを利用して所定登録階間を行き来することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0016】
図1は本発明の一実施形態であるエレベータ自動呼び登録装置10を含むホームエレベータ12の概略構成図であり、図2はホームエレベータ全体についての制御を司るエレベータ制御盤60と他の機器類との接続関係を示すブロック図である。ここでは、ホームエレベータ12は2階建て個人住宅に設置されている場合を例示する。
【0017】
ホームエレベータ12は、昇降路13内に配置されるかご14と、かご14の上部に一端が連結されているワイヤ製のロープ16と、綱車18の上側半周に巻き掛けられて下方に垂下するロープの他端に連結されている釣合いおもり20とを含む。かご14は、図示しないモータを含む周知のかご昇降機構17によって綱車18が回転駆動されることで昇降移動するようになっている。
【0018】
かご14は、各階乗場に対向する側面にかご扉22を有している。かご扉22は、かご14の上部に設置されたモータ24と、モータ24により揺動駆動されるレバー26とによって開閉動作するようになっている。上記モータ24およびレバー26とで、扉開閉機構28が構成されている。
【0019】
また、かご扉22の側方に位置するかご14内の側壁には、かご操作盤30が配置されている。かご操作盤30は、行き先階登録ボタン、かご扉開閉ボタン、非常用インターホン等を含んで構成される。ここでの行き先階登録ボタンは、1階用と2階用の2つである。
【0020】
1階乗場32および2階乗場34には、かご扉22に連動して開閉動作する乗場扉36と、乗場扉36の上方に位置する乗場壁38に配置される情報読取センサ(情報読取部)40a,40bと、乗場扉36の側方に位置する乗場壁38に配置される乗場押ボタン42a,42bとが設けられている。
【0021】
情報読取センサ40a,40bは、センサ配置位置を中心に例えば90度の頂角をなす点線44,46で示す検知範囲内に特定周波数の電磁波を送出し、この検知範囲内に後述する記憶手段が入って来たときに記憶手段に記憶されている登録階情報を非接触で読み取ることができる機能を有する。このように情報読取センサ40a,40bによる検知範囲は、乗場側とかご側(または昇降路13側)の両側に広がって形成されている。また、乗場押ボタン42は、利用者が押し操作することによってかご呼び登録するためのものである。
【0022】
利用者50の腕または手首には、記憶手段としてのICチップが内蔵または付着されているリストバンド52が装着されている。リストバンド52は、例えばゴムバンドやベルクロファスナ(登録商標)等を用いることによって容易には脱落または取り外しが不能なようにしっかりと装着されることが望ましい。ICチップには、2つの登録階情報、ここでは1階と2階が予め記憶されており、情報読取センサ40a,40bからの電磁波を受けて誘起される電力を用いて登録階情報を発信するようになっている。
【0023】
なお、本実施形態では、記憶手段が組み込まれている物品がリストバンドであるものとして説明するが、本発明ではこれに限定されるものではなく、ここでの主たる利用者として想定される身体障害者や高齢者が使用または携行するものであれば、ネックレスタイプのもの、杖、車椅子等の他の物品に上記記憶手段が組み込まれてもよい。
【0024】
図2に示すように、エレベータ制御盤60には、リストバンド52から読み取られた登録階情報が情報読取センサ40a,40bから入力されるようになっている。また、エレベータ制御盤60には、かご昇降機構17、扉開閉機構28、かご操作盤30、乗場押ボタン42a,42bがそれぞれ電気的に接続されて、電力供給や信号の送受信を行うようになっている。さらに、エレベータ制御盤60は、エレベータ故障発生時等に電話回線62を介して遠隔情報センタ64に発報する機能も有する。
【0025】
エレベータ制御盤60は、制御プログラムおよび読取データを記憶するメモリと、メモリから制御プログラム等を読み出して実行するCPU(中央処理装置)を含んで構成される。ただし、エレベータ制御盤60において、後述するのと同様の制御機能がハードウェア回路によって実行されてもよい。
【0026】
なお、本実施形態のエレベータ自動呼び登録装置10は、リストバンド52、情報読取センサ40a,40b、およびエレベータ制御盤60で実行される制御プログラム(かご呼び登録部および行き先階登録部を含む)によって構成される。また、エレベータ制御盤60は、昇降路13の最下部であるピット、または、昇降路13とは別に設けられる機械室に配置される。
【0027】
続いて、上記構成からなるエレベータ自動呼び登録装置10の動作について図3に示す制御フローを参照しつつ説明する。
【0028】
身体障害者または高齢者であって腕にリストバンド52を装着した利用者50がエレベータに乗ろうとして1階乗場32に来て1階情報読取センサ40aの検知範囲内に入ると、1階情報読取センサ40aからの電磁波を受けたリストバンド52内のICチップが予め登録されている1階と2階の登録階情報を発信する。この登録階情報を受信した1階情報読取センサ40aは、読み取った登録階情報をエレベータ制御盤60へ出力する。
【0029】
エレベータ制御盤60では、まず、情報読取センサ40a,40bでの登録階情報の読み取りの有無、すなわち情報読取センサ40a,40bからの登録階情報の入力の有無を判定する(ステップS10)。そして、上述したように1階情報読取センサ40aから1階および2階の登録階情報が入力されると(ステップS10でYES)、登録階情報が読み取られた階床でのかご呼び登録を実行すると共に、登録階情報のうち情報読取階以外の登録階情報を選択する(ステップS12)。この場合、1階のかご呼び登録を実行して1階乗場押ボタン42aを点灯させると共に、1階および2階の登録階情報から読取階である1階以外の2階を行き先階として選択する。
【0030】
ついで、かご14が1階に着床したとき(あるいは1階に止まっていたときはそのままで)、扉開閉機構28を作動させて扉開動作を実行すると共に、行き先階登録を実行する(ステップS14)。この場合、上記のように選択された2階が行き先階として登録され、かご操作盤30にある2階用押ボタンを点灯させる。
【0031】
扉開動作完了後、扉開放状態が所定時間だけ継続され、この間に利用者50が1階乗場32からかご14内へ乗り込む。所定時間経過後、扉開閉機構28を作動させて扉閉動作を実行するが、このときかご扉22および乗場扉36が開いている1階の情報読取センサ40aをオフして機能を無効化する処理も実行する(ステップS16)。
【0032】
扉閉動作完了後、通常動作と同じようにかご昇降機構17を作動させてかご14を上昇移動させ、かご14が2階に着床したとき扉開閉機構28を作動させて扉開動作を実行する(ステップS18)。また、このとき2階情報読取センサ40bをオフして機能を無効化する。扉開動作完了後、扉開放状態が所定時間だけ継続されてから、扉閉動作が開始される。このとき、扉閉動作の開始と同期して2階情報読取センサ40bがオンされて機能復帰する(ステップS20)。このように、2階情報読取センサ40bは扉閉動作開始まではオフされていることから、扉開放状態が継続される間に利用者50がかご14から降りて2階乗場34の検知範囲ライン44から離れたところまで進むことができるので、その後に扉閉動作が開始されて2階情報読取センサ40bがオンされて機能復帰しても、2階情報読取センサ40bによって利用者50のリストバンド52から登録階情報が読み取られることはない。すなわち、かご14から利用者50が降りるときに、かご呼び登録および行き先階登録が再び実行されてしまうことがない。
【0033】
一方、リストバンド52を装着した利用者50がエレベータを利用して2階から1階に降りる際も、図3に示す制御フローにしたがって、2階情報読取センサ40bの検知に基づいて2階乗場34でのかご呼び登録および1階への行き先階登録が実行される。
【0034】
上述したように、本実施形態のエレベータ自動呼び登録装置10によれば、利用者50が装着するリストバンド52に組み込まれたICチップから1階および2階の登録階情報を非接触で読み取ってかご呼び登録および行き先階登録を自動で行うことで、手の動きが不自由な身体障害者や高齢者でも一人で容易にホームエレベータ12を利用して1階および2階の登録階間を行き来することができる。
【0035】
ところで、上記実施形態では、扉開放状態のときはかご扉22が開いている階の情報読取センサ40aまたは40bが機能無効化されているため、他の家族がかご14から降りた直後に利用者50がかご14に乗り込んでしまった場合、リストバンド52からの情報読取が行われない。しかし、扉閉動作開始と同時に情報読取センサ40aまたは40bを機能復帰させていることで、かご14の利用者50が装着しているリストバンド52からの登録階情報の読み取りが実行される。これにより、読取階以外の登録階が行き先階として選択されて自動登録され、かご14が移動する。そして、かご14が行き先階に着床すると扉開動作が実行されることになるため、利用者50がかご14内に閉じ込められる事態が発生するのを防止することができる。
【0036】
ただし、この場合において利用者50が扉開放中にかご14から降りないとき、扉閉開始と同時に情報読取センサ40a,40bによるリストバンド52からの登録階情報の読み取りによって行き先階が自動設定されて、かご14が移動することになる。このような事態が続いて、かご14が連続して所定回数、例えば5回以上1階と2階との往復移動を繰り返しているとき、エレベータ制御盤60は遠隔情報センタ64へ異常発報する。この発報を受けた遠隔情報センタの監視員または保守員は、ホームエレベータ12が設置されている住宅に電話連絡を試みて、他の家族がいないようであれば現地に出向いて状況確認することができる。
【0037】
なお、上記ではエレベータ自動呼び登録装置10が2階建て住宅用ホームエレベータに設置されている場合について説明したが、本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置は、3階建て住宅用ホームエレベータにも適用可能である。その場合、記憶手段に記憶される登録階情報は、1階と2階、2階と3階、および、1階と3階の3種類になるため、利用者が行き来する階床に応じて3種類の物品を使い分ければよい。
【0038】
また、上記実施形態ではエレベータ自動呼び登録装置10を2階建て個人住宅用ホームエレベータに適用するものとして説明したが、本発明に係るエレベータ自動呼び登録装置は、2階建て集合住宅用エレベータに適用されてもよいし、あるいは、2つの特定の階床をかごが往復するエレベータシステム、例えばホーム階と改札階とがある駅舎に設置されるエレベータシステムに適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】エレベータ自動呼び登録装置を組み込んだホームエレベータの概略構成図である。
【図2】エレベータ制御盤および他の機器類との接続関係を示すブロック図である。
【図3】エレベータ制御盤で実行される制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
10 エレベータ自動呼び登録装置、12 ホームエレベータ、13 昇降路、14 かご、16 ロープ、17 かご昇降機構、18 綱車、22 かご扉、24 モータ、26 レバー、28 扉開閉機構、30 かご操作盤、32 1階乗場、34 2階乗場、36 乗場扉、38 乗場壁、40a 1階情報読取センサ、40b 2階情報読取センサ、42a 1階乗場押ボタン、42b 2階乗場押ボタン、44,46 点線または検知範囲ライン、50 利用者、52 リストバンド、60 エレベータ制御盤、62 電話回線、64 遠隔情報センタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの登録階情報を記憶する記憶手段を含む物品と、各階床の乗場に設置されていて物品を装着または使用する利用者が乗場に来たときに記憶手段から登録階情報を非接触で読み取る情報読取部と、情報読取部によって登録階情報が読み取られたときにかご呼び登録するかご呼び登録部と、情報読取部で読み取った登録階情報のうち情報読取階以外の登録階情報を選択して行き先階登録する行き先階登録部と、を備えるエレベータ自動呼び登録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ自動呼び登録装置において、
記憶手段を含む物品は、リストバンド、杖、または車椅子であることを特徴とするエレベータ自動呼び登録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベータ自動呼び登録装置において、
かご扉が開いている階の情報読取部は、かごが行き先階に着床して所定時間扉開した後、扉閉動作開始までは機能無効化されていることを特徴とするエレベータ自動呼び登録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のエレベータ自動呼び登録装置において、
情報読取部による登録階情報の検知範囲は、乗場側およびかご側の両側に及んでいることを特徴とするエレベータ自動呼び登録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のエレベータ自動呼び登録装置において、
かごが2つの登録階の間を連続して所定回数以上往復移動を繰り返しているとき、エレベータ制御盤から遠隔情報センタへの発報を行うことを特徴とするエレベータ自動呼び登録装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のエレベータ自動呼び登録装置において、
個人住宅用ホームエレベータに適用されることを特徴とするエレベータ自動呼び登録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−202985(P2009−202985A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45675(P2008−45675)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】