説明

エレベータ

【課題】ガイドレールの不要なエレベータを提供する。
【解決手段】エレベータ1は、昇降壁11で囲まれた内部を昇降可能な昇降台2と、昇降台2を昇降させるための昇降装置である3つのテレスコープシリンダ3とを備えている。テレスコープシリンダ3は、半径の異なる4つの棒状のシリンダ4,5,6,7を備えた複数段のシリンダからなり、各シリンダ4,5,6,7それぞれが入れ子状に構成されて、長手方向に摺動可能になっている。また、3つのテレスコープシリンダ3の同じ半径を有するシリンダ同士を固定してそれぞれの高さを揃えるように規制するキャップ部材15,16,17が設けられている。これにより、3つのテレスコープシリンダ3は、互いに平行な状態を維持すると共に捩じれることなく同調して伸縮可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータが、例えば、特許文献1に記載されている。このエレベータは、人や物等が乗るかごの背面と昇降路の内壁との間にパンタグラフ式の昇降装置及び上下方向に延びるガイドレールを設け、パンタグラフ式の昇降装置が伸縮することによって、かごの背面から張り出すように形成されたフレームを上下させて、かごを上下に昇降させるものである。また、かごの背面にガイドレールに沿って移動可能なガイド手段を設けることにより、かごはガイドレールに沿って昇降するようになっている。これにより、かごは昇降路内で傾いたり回転したりせずに昇降することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−212453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昇降路が設けられていないフロアにかごが上昇してくるエレベータや、昇降路の内部が見えるエレベータでは、ガイドレールを設けることができないため、特許文献1のエレベータを使用するとパンタグラフ式の昇降装置が捩じれてかごが傾いたり回転したりして、かごの扉の位置が昇降路の扉の位置からずれてしまうといった問題点があった。
【0005】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、ガイドレールの不要なエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータは、昇降可能な昇降台と、前記昇降台を昇降させるための少なくとも3つの昇降装置であって、この昇降装置のそれぞれは入れ子状に設けられた半径の異なる複数段のシリンダを備えると共に前記シリンダのそれぞれが長手方向に摺動することにより伸縮可能な昇降装置と、前記3つの昇降装置の同じ段のシリンダ同士を固定してそれぞれの高さを揃えるように規制するキャップ部材とを備える。
前記昇降台はかごを備えてもよい。
前記昇降装置はテレスコープシリンダであってもよい。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、入れ子状に設けられた半径の異なる複数段のシリンダを備えると共にシリンダのそれぞれが長手方向に摺動することにより伸縮可能な少なくとも3つの昇降装置と、3つの昇降装置の同じ段のシリンダ同士を固定してそれぞれの高さを揃えるように規制するキャップ部材とを備えることにより、3つの昇降装置は互いに捩じれることなく同調して伸縮するので、3つの昇降装置は、昇降台を傾かせたり回転させたりせずに昇降させることができる。これにより、ガイドレールを不要にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、エレベータ1は、1階フロア9と、2階フロア12と、最上階フロア14とを行き来可能なエレベータである。1階フロア9から最上階フロア14までを連通する円筒形状の透明な昇降壁11が設けられ、昇降壁11の1階フロア9の部分及び2階フロア12の部分にはそれぞれ、開閉扉10及び13が設けられている。
【0009】
エレベータ1は、昇降壁11で囲まれた昇降路内を昇降可能な円柱形状の昇降台2と、昇降台2を昇降させるための昇降装置である3つのテレスコープシリンダ3とを備えている。昇降台2は、その上に透明な強化ガラスによって形成されたかご20を備えることにより、全体的に円柱形状を有すると共に内部に人や物等を乗せることのできる空間を有している。テレスコープシリンダ3は、半径の異なる4つの棒状のシリンダ4,5,6,7を備えた複数段のシリンダからなり、シリンダ4,5,6,7それぞれが入れ子状に構成されて、長手方向に摺動可能になっている。これにより、テレスコープシリンダ3は、伸縮可能となっている。ここで、シリンダ4,5,6,7それぞれが一つ一つの段を構成する。尚、各テレスコープシリンダ3には、図示しない油圧ユニットが接続されており、この油圧ユニットがシリンダ4,5,6,7内の油圧を調整することにより、テレスコープシリンダ3が等速で伸縮するようになっている。すなわち、テレスコープシリンダ3は、等速テレスコープシリンダである。
【0010】
テレスコープシリンダ3は、シリンダ4の下端がピット8の底部8aに設けられた載置台19に接続されると共に鉛直上向きに延びてシリンダ7の上端が昇降台2に下方から当接するように、設けられている。3つのテレスコープシリンダ3は、上方から見たときに、正三角形を形成するように互いに平行に設けられている。同じ半径を有する3つのシリンダ4は、その上端部分4a(図2参照)において、金属製のキャップ部材15により固定されている。
【0011】
図2に示されるように、3つのシリンダ4は、上端部分4aが他の部分に比べて半径が大きくなっている。これら上端部分4aをキャップ部材に形成された3つの穴15aにそれぞれ挿入し、同心円状の穴を中央に有した円板形状の留め金具25を、その穴にシリンダ5を挿入するようにしてキャップ部材15の上面に配置し、複数のボルト26によって留め金具25と上端部分4aとを締結すると共に複数のボルト27によって留め金具25とキャップ部材15とを締結している。これにより、3つのシリンダ4がそれぞれ互いに平行な状態を維持するようにキャップ部材15に固定されている。
【0012】
図3に示されるように、キャップ部材15を上方(図2における矢印Aの方向)から見たときに、3つのシリンダ4は、正三角形を形成するように配置されている。キャップ部材15は、この状態を維持するように3つのシリンダ4を固定しているので、3つのシリンダ4全体としての剛性が向上する。また、3つのシリンダ4はそれぞれ、先端部分4a(図2参照)をキャップ部材15の穴15aに挿入するようにして、キャップ部材15に固定されているので、キャップ部材15は、3つのシリンダ4の先端の高さを揃えるように規制している。尚、各留め金具25において、複数のボルト26及び27はそれぞれ、シリンダ5のまわりに等間隔で円を描くように配置されている。
【0013】
図1に示されるように、その他のシリンダ5及び6についても同様に、それらの上端部分に金属性のキャップ部材16及び17がそれぞれ設けられ、互いに平行な状態を維持するように固定すると共に上方から見たときに正三角形の形状を維持するようになっている。すなわち、キャップ部材15,16,17はそれぞれ、各テレスコープシリンダ3の同じ段のシリンダ同士を固定している。したがって、キャップ部材16及び17の形状は、それらの大きさ及びキャップ部材15の穴15aに相当する穴の大きさが異なる以外は、図3に示されたキャップ部材15と同じである。これにより、キャップ部材16及び17も、シリンダ5及び6それぞれにおける3つの組み合わせ全体としての剛性を向上させると共に各シリンダにおける3つの先端の高さを揃えるように規制している。尚、3つのシリンダ7については、それぞれの高さを揃えるようにして昇降台2の下方に当接しているので、キャップ部材がなくても、その他のシリンダ4,5,6と同様に、3つの組み合わせ全体としての剛性が向上されると共に3つのシリンダ7の先端の高さが揃うように規制されている。
【0014】
昇降台2には、下方に向かって延びる円筒形状の外カバー21が設けられ、3つのテレスコープシリンダ3が外カバー21の内部に位置するようになっている。また、キャップ部材17には、下方に向かって延びる円筒形状の外カバー22が設けられ、3つのテレスコープシリンダ3が外カバー22の内部に位置するようになっている。外カバー22の下部には、外カバー22に対して上下方向に摺動可能な円筒形状の外カバー23が設けられている。外カバー22は、外カバー21に対して上下方向に摺動するようになっている。
【0015】
次に、この実施の形態に係るエレベータの動作について説明する。
図1に示されるように、各テレスコープシリンダ3が最も縮んだ状態の場合、昇降台2は1階フロア9に位置している。このとき、開閉扉10が開いて、1階フロア9上の人が、かご20の内部の空間に乗り込むことができる。かご20の内部の空間に人が乗り込んだ後、図示しない油圧ユニットがシリンダ4,5,6,7内の油圧を調節することにより、シリンダ5,6,7が順次鉛直上向きに摺動して、各テレスコープシリンダ3が鉛直上向きに伸びる。まず、3つのシリンダ5がそれぞれ鉛直上向きに摺動するが、通常それぞれの間にわずかな誤差が生じる。しかし、キャップ部材16が3つのシリンダ5の先端の高さを揃えるように規制して、その誤差を解消する。これにより、3つのシリンダ5は、キャップ部材16によって、それらの先端の高さを揃えるようにして鉛直上向きに摺動する。次に、3つのシリンダ6も同様に、キャップ部材17により、それらの先端の高さを揃えるようにして鉛直上向きに摺動する。続いて、3つのシリンダ7は、それらの先端が昇降台2に下方から当接しているため、それらの先端の高さを揃えるようにして鉛直上向きに摺動する。その結果、3つのテレスコープシリンダ3が同調して鉛直上向きに伸びるようになる。また、キャップ部材15,16,17により、3つのテレスコープシリンダ3全体としての剛性が向上し、互いに捩じれないようになる。これにより、昇降台2は、傾いたり回転したりせずに昇降路内を上昇する。さらに、シリンダ5,6,7がそれぞれ等速で摺動することにより、テレスコープシリンダ3は等速で伸びるので、昇降台2は等速で昇降路内を上昇する。
【0016】
各テレスコープシリンダ3が最も伸びた状態になると、図3に示されるように、かご20が最上階フロア14から突出する。これにより、エレベータ1の設備として何も設けられていない最上階フロア14に、突然に、透明な強化ガラス製のかご20が出現するようになる。
また、昇降台2よりも下方では、キャップ部材15,16,17それぞれの間隔が大きくなることにより、外カバー21の下端部分と外カバー22の上端部分とがわずかに重なると共に、外カバー23が外カバー22に対して下方に移動した状態になる。これにより、最上階フロア14から1階フロア9にかけて、3つのテレスコープシリンダ3が外カバー21,22,23に覆われた状態になる。この実施の形態では昇降壁11が透明なため、1階フロア9及び2階フロア12から昇降壁11の内部の昇降路が見えてしまうが、外カバー21,22,23によって3つのテレスコープシリンダ3が1階フロア9及び2階フロア12から見えなくなる。また、昇降路内にガイドレールが設けられていないので、昇降台2が1階フロア9に位置する場合(図1)でも、1階フロア9及び2階フロア12からは昇降路内に何の設備もないように見えるので、1階フロア9及び2階フロア12における景観を損ねることがない。
【0017】
このように、入れ子状に設けられた半径の異なる4つのシリンダ4,5,6,7を備えた複数段のシリンダからなると共にシリンダ4,5,6,7のそれぞれが長手方向に摺動することにより伸縮可能な少なくとも3つのテレスコープシリンダ3と、3つのテレスコープシリンダ3の同じ半径を有するシリンダ同士、すなわち同じ段のシリンダ同士を固定してそれぞれのシリンダの先端の高さを揃えるように規制するキャップ部材15,16,17とを備えることにより、3つのテレスコープシリンダ3が互いに平行な状態を維持すると共に捩じれることなく同調して伸縮するので、3つのテレスコープシリンダ3は、昇降台2を傾かせたり回転させたりせずに昇降させることができる。これにより、エレベータ1の設備として、ガイドレールを不要にすることができる。特に、各階から昇降路の内部が見えるようなエレベータの場合には、各階における景観が損なわれるのを防ぐことができる。
【0018】
この実施の形態では、テレスコープシリンダ3を3つ使用したが、3つに限定するものではない。3つ以上であればいくつであってもよい。また、テレスコープシリンダが3つの場合に、各テレスコープシリンダを上から見たときに、正三角形を形成するように配置することに限定するものではなく、どのように配置してもよい。また、テレスコープシリンダ3は、4つのシリンダ4,5,6,7を備えたものであるが、4つに限定するものではない。昇降台2を上昇させる距離に応じ、適当な数のシリンダからなるテレスコープシリンダを使用することができる。また、各テレスコープシリンダが同じものであることに限定するものではない。各テレスコープシリンダの半径が異なるものであっても、段の数及び格段におけるシリンダの長さが同じものであれば、異なる種類のテレスコープシリンダを複数用いてもよい。さらに、シリンダ4,5,6,7内の油圧を調整することによりテレスコープシリンダ3を伸縮するようにしていたが、油圧に限定するものではない。空気圧、水圧、ねじ等を利用してテレスコープシリンダ3を伸縮するようにしてもよい。
【0019】
この実施の形態では、かご20は透明な強化ガラスで形成された円柱形状を有していたが、透明でなくてもよく、さらにどのような形状のかごであってもよい。また、昇降台2はかご20を備えていたが、かご20を備えずに昇降台2だけであってもよい。このような変形例を図4に示す。尚、図4において図1及び3の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。図4は、図3に対してかご20と最上階フロア14がない場合のエレベータ30を示している。エレベータ1と同様に、ガイドレールがなくても、エレベータ30の設備として何も設けられていない2階フロア12に、突然に昇降台2を出現させ、2階フロア12の上方に昇降台2を位置させることができる。これにより、例えば、昇降台2に乗った女性31を2階フロア12の上方に突然出現させる演出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態に係るエレベータの全体図である。
【図2】この実施の形態に係るエレベータに使用されるキャップ部材の側面図である。
【図3】この実施の形態に係るエレベータに使用されるキャップ部材を、図2の矢印Aの方向から見たときの平面図である。
【図4】この実施の形態に係るエレベータの別の状態の全体図である。
【図5】この実施の形態に係るエレベータの変形例の全体図である。
【符号の説明】
【0021】
1,30 エレベータ、2 昇降台、3 テレスコープシリンダ(昇降装置)、4,5,6,7 シリンダ、15,16,17 キャップ部材、20 かご。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能な昇降台と、
前記昇降台を昇降させるための少なくとも3つの昇降装置であって、この昇降装置のそれぞれは入れ子状に設けられた半径の異なる複数段のシリンダを備えると共に前記シリンダのそれぞれが長手方向に摺動することにより伸縮可能な昇降装置と、
前記3つの昇降装置の同じ段のシリンダ同士を固定してそれぞれの高さを揃えるように規制するキャップ部材と
を備えるエレベータ。
【請求項2】
前記昇降台はかごを備える請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記昇降装置はテレスコープシリンダである請求項1または2に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−276918(P2007−276918A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103060(P2006−103060)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(593045488)日本機器鋼業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】