説明

エレベータ

【課題】行き先階が近い利用者等には別の移動手段の利用を促すことで、乗りかごの停止回数を減らして乗りかごの移動速度を向上させることが可能なエレベータを提供することである。
【解決手段】エレベータ10は、予め定めた特定乗場13xについて、操作された乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と逆方向であるときに、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録を禁止する制御装置30を備える。また、制御装置30は、乗場押釦24の操作が予め定められた解除条件を満たす場合に、例えば、判定手段31の禁止指令を取り消して乗場呼び登録の禁止を解除する。制御装置30は、当該機能を実現するために、判定手段31と、登録手段32と、解除手段33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに関し、より詳しくは、乗場押釦の操作による乗場呼び登録に基づいて、乗りかごの昇降運転を制御する制御装置を備えたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの各乗場には、乗場呼び登録を行なうための乗場押釦が設置されている。エレベータの利用者は、行きたい方向の乗場押釦を操作することで乗りかごを乗場に呼ぶことができ、乗りかごは乗場押釦が操作された各乗場に停止する。つまり、乗場押釦が操作された乗場が多いほど、乗りかごの停止回数が多くなって移動速度が遅くなり、乗りかご内の利用者が行き先階に着くまでの時間が長くなる。また、乗りかごの停止回数が多くなるほど、乗場で待つ利用者の待ち時間も長くなり、エスカレータや階段を使用した方が迅速に移動できる場合もある。
【0003】
さらに、乗場押釦が操作されると、その乗場に利用者が存在しない場合であっても、乗りかごは当該乗場に停止することになる。このような状況としては、例えば、利用者が乗場押釦を操作した後、乗りかごの到着を待ちきれずに階段等で移動した場合が例示できる。特に、行き先階が近い利用者ほど、乗りかごの到着が遅くなれば乗場押釦を操作していても階段等で移動する傾向が高くなる。
【0004】
本発明に関連する技術として、特許文献1には、複数階床における乗場押釦の各操作が、階床の昇順又は降順になされると共に、各操作の間隔が予め定められた所定の時間範囲内であるときに、いたずらによる操作であると判定して、当該操作をキャンセルするエレベータが開示されている。また、特許文献2には、乗場押釦とは別の台車専用押釦を乗場に設け、台車専用押釦を操作するとかご内への台車の収納が可能状態のときに、かご呼びを有効とし、かご内への台車の収納が不可能状態のときにかご呼びを無効とするエレベータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010‐254402号公報
【特許文献2】特開2000‐272846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献の技術によれば、いたずらによる操作が行われたとき、台車を乗りかご内に載せるときにおいて、乗りかごの運転効率を向上させることが期待できる。しかしながら、上記特許文献の技術では、乗りかごの到着が遅い場合に、行き先階が近い利用者にはエスカレータや階段の利用を促し、乗りかごの停止回数をできるだけ減らして乗りかごの移動速度を向上させることは困難である。
【0007】
即ち、本発明の目的は、行き先階が近い利用者等には別の移動手段の利用を促すことで、乗りかごの停止回数を減らして乗りかごの移動速度を向上させることが可能なエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータは、乗場押釦の操作による乗場呼び登録に基づいて、乗りかごの昇降運転を制御する制御装置を備えたエレベータにおいて、制御装置は、乗場押釦の操作に基づいて乗場呼び登録を行なう登録手段と、予め定めた特定乗場について、操作された乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であるか否かを判定する判定手段と、を有し、登録手段は、判定手段により特定乗場で操作された乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であると判定されたときには、当該乗場押釦の操作による乗場呼び登録を行わないことを特徴とする。
当該構成によれば、操作される乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であるとき、即ち乗りかごが到着するまでに長時間を要する場合に、当該乗場押釦の操作による乗場呼び登録が行なわれないため、乗場で待つ利用者に別の移動手段の利用を促すことができる。したがって、乗りかごの停止回数を減らして移動速度を向上させることができ、乗場で待つ利用者にとっても別の移動手段で迅速に移動できるため有益である。
【0009】
また、上記構成において、制御装置は、判定手段により特定乗場で操作された乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であると判定されたときに、当該乗場押釦の操作による乗場呼び登録が、乗りかごの進行方向が上方向から下方向に反転したときに最上乗場呼び登録となる場合又は乗りかごの進行方向が下方向から上方向に反転したときに最下乗場呼び登録となる場合、登録手段に当該乗場呼び登録を行なわせる解除手段を有することが好ましい。
また、解除手段は、判定手段により特定乗場で操作された乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であると判定されたときに、最上又は最下乗場呼び登録がなされた乗場から予め定めた範囲内の特定乗場について、乗場呼び登録を行なわせることが好ましい。
当該構成によれば、乗りかごが通る頻度が中間階床に比べて低くなる高層階床又は低層階床(特に高層階床)の特定乗場において、乗場呼び登録が困難になるという状況を防止することができる。
【0010】
また、本発明に係るエレベータは、乗場押釦の操作による乗場呼び登録に基づいて、乗りかごの昇降運転を制御する制御装置を備えたエレベータにおいて、制御装置は、乗場押釦の操作に基づいて乗場呼び登録を行なう登録手段と、乗場押釦が操作された乗場に乗りかごが到着するまでの到着時間を算出して、算出した到着時間が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する算出手段と、を有し、登録手段は、算出手段により到着時間が閾値以上であるであると判定されたときには、当該乗場押釦の操作による乗場呼び登録を行わないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエレベータによれば、行き先階が近い利用者等には別の移動手段の利用を促すことができる。したがって、乗りかごの停止回数を減らして乗りかごの移動速度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態であるエレベータの全体構成を示す図である。
【図2】図1のエレベータにおいて、乗場呼び登録に関する制御手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態であるエレベータの全体構成を示す図である。
【図4】図3のエレベータにおいて、乗場呼び登録に関する制御手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態であるエレベータの乗場操作盤の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を用いて、本発明に係るエレベータの実施形態につき、以下詳細に説明する。実施形態では、上部機械室16を有するロープ式のエレベータ10を例示して説明するが、本発明の適用はこれに限定されず、機械室レスエレベータや油圧式エレベータにも適用することができる。また、本発明は、複数のエレベータが併設されたシステムにも適用することができる。
【0014】
<第1実施形態>
図1および図2を参照し、第1実施形態であるエレベータ10について説明する。
図1に示すように、エレベータ10は、昇降路11内において、乗りかご12が各階床に設置された乗場13の間を昇降する昇降機構部と、その動作を制御する制御装置30とで構成されている。
なお、エレベータ10は、乗りかご12の停止回数を減らして乗りかご12の移動速度を向上させる機能を有し、当該機能を実現するために、乗場呼び登録を制限する特定乗場13を設ける。図1では、20階建ての建造物に設置されたエレベータ10であって、2F〜19Fまでが特定乗場13(以下、特定乗場13xとする)として予め設定されたエレベータ10を例示している。
【0015】
昇降路11は、建造物内等に鉛直方向に貫通して設けられた乗りかご12の昇降通路である。昇降路11の最下部には、緩衝器14が設置されたピット15が設けられ、昇降路11の上部には、上部機械室16が設けられる。上部機械室16には、乗りかご12を昇降させる巻上げ機17や制御装置30が設置されている。巻上げ機17のシーブには、一端が乗りかご12の上部、他端がカウンターウエイト18に連結された主ロープ19がかけられている。ゆえに、巻上げ機17を駆動させることで主ロープ19が巻上げられ又は送り出されて、乗りかご12が昇降路11内を昇降することになる。
【0016】
乗りかご12は、利用者が乗り込むことのできる室内スペースを有し、巻上げ機17の駆動により昇降路11内を昇降する。乗りかご12内の壁面には、制御装置30と接続されたかご内操作盤20が設置されている。かご内操作盤20は、行き先階釦、ドア開閉釦、および乗りかごの移動方向等を表示するかご内インジケータなどを有している。また、乗りかご12には、かごドア21、かごドア21を開閉するかごドア開閉装置などが設置されている。
【0017】
乗場13は、各階床に設けられた乗りかご12の乗降口である。乗場13の壁面は、かごドア21に追従して開閉する乗場ドア22(本明細書において、「ドア」と言うときには、かごドア21および乗場ドア22を意味する)、および制御装置30と接続された乗場操作盤23等が設置されている。乗場操作盤23は、乗場呼び登録を行なうための乗場押釦24と、乗りかご12の位置等を表示する乗場インジケータ25とを有している。
【0018】
乗場押釦24としては、中間階の乗場13については、上向きの三角形状および下向きの三角形状の2つの釦が設けられている。また、最下階の乗場13には、上向き三角形状の釦のみが、最上階の乗場13には、下向き三角形状の釦のみがそれぞれ設けられている。上向き三角形状の釦である上方向の乗場押釦24は、進行方向が上方向である乗りかご12を停止させる釦であって、行き先階が上階側である利用者に操作される。一方、下向き三角形状の釦である下方向の乗場押釦24は、進行方向が下方向である乗りかご12を停止させる釦であって、行き先階が下階側である利用者に操作される。なお、乗場押釦24の形態としては、特に限定されず、例えば、上向き又は下向きの矢印が表示された四角形状の釦であってもよい。
【0019】
乗場押釦24が操作されると、その操作信号が制御装置30に送信され、後述する登録手段32の機能によって当該操作に応じた乗場呼び登録がなされる。つまり、上方向の乗場押釦24が操作されたときには上方向の乗場呼び登録、下方向の乗場押釦24が操作されたときには下方向の乗場呼び登録がなされ、乗場呼び登録に対応する進行方向の乗りかご12が乗場13に停止する。なお、特定乗場13xでの乗場押釦24の操作信号は、後述する判定手段31を介して登録手段32に送信される。
【0020】
制御装置30は、昇降装置を構成する各要素の動作を統一的に制御する装置である。例えば、制御装置30は、かご内操作盤20の操作に基づき、巻上げ機17に指令を与えて乗りかご12の昇降運転を制御する等の機能を有する。さらに、制御装置30は、特定乗場13xで待つ利用者に別の移動手段の利用を促して、乗りかご12の停止回数を減らすための手段として、判定手段31と、登録手段32と、解除手段33とを有する。
【0021】
なお、制御装置30は、CPUと、上記各手段の機能を実行する際に使用される制御パラメータ等の入力に用いられる入力部と、制御パラメータや制御プログラム等を記憶する記録部と、入出力ポートなどを備えるコンピュータである。各機能は、ソフトウェア、例えば、対応する制御プログラムを実行することで実現できる。
【0022】
判定手段31は、予め定めた特定乗場13xにおける乗場押釦24の操作信号を取得して、操作された乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と逆方向であるか否かを判定する。そして、操作された乗場押釦24の方向が、乗りかご12の進行方向と逆方向であると判定したときには、例えば、解除手段33を介して、乗場呼び登録を禁止する禁止指令を登録手段32に出力する。つまり、特定乗場13xにおいては、原則として、操作された乗場押釦24の方向と、乗りかご12の進行方向とが一致しない場合には、禁止指令が出力される。
なお、乗りかご12の待機状態で、最初の乗場押釦24の操作による乗場呼び登録は判定手段31の判定対象とはならない。
【0023】
判定手段31は、例えば、特定乗場13xにおける乗場押釦24の操作信号のみを選択的に取得する。そして、乗場呼び登録を禁止する場合には、操作信号に禁止指令を付して登録手段32に出力し、乗場呼び登録を禁止しない場合には、取得した操作信号をそのまま登録手段32に出力することができる。或いは、禁止指令を出力する代わりに、取得した操作信号を取り消すことで乗場呼び登録を禁止することもできる。以下では、前者の方法を例に挙げて説明する。
【0024】
また、判定手段31は、操作された乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と一致する場合であっても、乗場押釦24の操作がなされたときに乗りかご12が既にその特定乗場13xを通過しているときには、乗場呼び登録の禁止指令を出力することが好ましい。即ち、判定手段31は、乗りかご12の位置と、乗場押釦24の操作がなされた特定乗場13xの位置とを比較して、例えば、乗りかご12の進行方向が下方向であるときに、当該特定乗場13xの位置よりも乗りかご12の位置が下であると判定したときには、乗場呼び登録の禁止指令を登録手段32に出力する。
【0025】
特定乗場13xとしては、図1に例示するように、最下階である1Fおよび最上階である20Fを除く中間階(2F〜19F)を設定できるが、エレベータ10が設置される状況に応じて設定階床を適宜変更することができる。例えば、階段100やエスカレータにより迅速に移動できる低層階のみを特定乗場13xとして設定してもよいし、最上階や最下階を特定乗場13xに含めてもよい。また、高層階に同じ会社のオフィスが複数フロア(例えば、15〜20F)に入居している場合、高層階のみを特定乗場13xとして設定してもよい。
【0026】
また、特定乗場13xでは、予め定めた特定方向の乗場呼び登録のみが制限されてもよい。図1に示す例では、2F,3Fの特定乗場13x(例えば、2〜5Fの低層階の特定乗場13x)については、下方向の乗場呼び登録のみが制限を受ける、即ち下方向の乗場押釦24の操作のみが判定手段31による判定の対象となり、19Fの特定乗場13x(例えば、15〜19Fの高層階の特定乗場13x)については、上方向の乗場呼び登録のみが制限を受ける、即ち上方向の乗場押釦24の操作のみを判定手段31による判定の対象とすることができる。
【0027】
登録手段32は、乗場押釦24の操作に応じて乗場呼び登録を行なう機能を有する。一方、判定手段31から禁止指令を取得したときには、乗場呼び登録を行なわない(乗場呼び登録を中止する)。即ち、エレベータ10では、判定手段31および登録手段32の機能によって、特定乗場13xについて、乗りかご12の進行方向と逆方向の乗場呼び登録が禁止される。換言すると、押された乗場押釦24の方向と、乗りかご12の進行方向とが一致しないときには、乗場呼び登録を中止する。また、操作された乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と一致する場合であっても、乗場押釦24の操作がなされたときに乗りかご12が既にその特定乗場13xを通過しているときには、判定手段31から禁止指令が出力され、登録手段32は、乗場呼び登録を行なわない。なお、登録手段32は、乗場呼び登録を行なわなかったときに、例えば、乗場インジケータ25等に「現在その操作はできません」等の表示を出力することができる。
【0028】
登録手段32は、判定手段31から禁止指令を取得しないときには、上記のように、乗場押釦24の操作に応じた乗場呼び登録を行なう。例えば、登録手段32は、判定手段31から操作信号のみ、又は操作信号と共に禁止指令を取得し、操作信号のみを取得したときに、当該操作信号に応じた乗場呼び登録を行なう。なお、特定乗場13x以外の乗場13(1Fおよび20Fの乗場13)における乗場押釦24の操作信号は、登録手段32が直接取得することができる。
【0029】
解除手段33は、判定手段31の判定対象となる乗場押釦24の操作が予め定められた解除条件を満たす場合に、例えば、判定手段31の禁止指令を取り消すことで、乗場呼び登録の禁止を解除する機能を有する。例えば、解除手段33は、判定手段31から登録手段32に先立って禁止指令を取得し、禁止指令に係る乗場押釦24の操作が乗場呼び登録の禁止の解除条件(中止条件)を満たすものであるか否かを判定し、解除条件を満たすと判定したときに禁止指令を取り消すことができる。或いは、禁止指令を取得した登録手段32に対して、当該禁止指令に係る乗場呼び登録を許可させる許可指令を出力することで、乗場呼び登録の禁止を解除してもよい。以下では、前者の方法を例に挙げて説明する。
【0030】
乗場呼び登録の禁止の解除条件(中止条件)としては、特定乗場13xでの乗場呼び登録が、乗りかご12の進行方向が上方向から下方向に反転したときに最上乗場呼び登録となる場合又は乗りかご12の進行方向が下方向から上方向に反転したときに最下乗場呼び登録となる場合が例示できる。つまり、特定乗場13xで操作された乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と逆方向(乗場呼び登録が禁止される条件)であっても、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録が最上乗場呼び登録又は最下乗場呼び登録となる場合には、当該乗場呼び登録は禁止されず、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録が行なわれる。
【0031】
また、解除手段33は、上記の最上又は最下乗場呼び登録がなされた特定乗場13xから予め定めた範囲内の特定乗場13xについて、乗場呼び登録の禁止を解除することが好ましい。例えば、最上乗場呼び登録がなされた特定乗場13xが15Fである場合、予め定めた範囲が3階床であれば、12〜14Fまでの特定乗場13xの乗場呼び登録も禁止されない。つまり、乗りかご12が上方向に進んでいるときに、15Fで下方向の乗場押釦24が操作され、乗りかご12の進行方向が下方向に反転する前に、12〜14Fで下方向の乗場押釦24が操作された場合、12〜14Fでの乗場呼び登録は禁止されない。
また、最上乗場呼び登録を一端行なった後に、その特定乗場13xよりも上階側の乗場13で下方向の乗場押釦24が操作された場合であっても、一端行なった乗場呼び登録は取り消さないことが好ましい(最下乗場呼び登録についても同様)。
【0032】
ここで、図2のフローチャートを参照して、上記構成を備えたエレベータ10による乗場呼び登録に関する制御を例示する。
【0033】
まず初めに、特定乗場13xにおける乗場押釦24の操作信号を取得する(S10)。この手順は、判定手段31の機能によって実行される。上記のように、特定乗場13xにおける乗場押釦24の操作信号は、判定手段31によって取得され、通常の乗場13における乗場押釦24の操作信号は、登録手段32によって取得されることで、それぞれの操作信号を識別することができる。
【0034】
次に、取得された乗場押釦24の操作信号に基づいて、操作された乗場押釦24の方向が、乗りかご12の進行方向と逆方向であるか否かを判定する(S11)。併せて、操作された乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と一致する場合であっても、乗場押釦24の操作がなされたときに乗りかご12が既にその特定乗場13xを通過しているか否かを判定する。この手順は、判定手段31の機能によって実行される。
そして、操作された乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と逆方向であると判定されたときには、禁止指令が解除手段33に出力される。また、乗場押釦24の操作がなされたときに乗りかご12が既にその特定乗場13xを通過していると判定されたときには、解除判定がなされないため、禁止指令が登録手段32に出力される。つまり、制御手順はS13に進む。
【0035】
解除手段33が禁止指令を取得したとき、即ちS11で乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と逆方向であると判定されたときに、当該禁止指令に係る乗場押釦24の操作が予め定めた解除条件を満たすか否かを判定する(S12)。この手順は、解除手段33の機能によって実行される。解除手段33は、例えば、禁止指令を取得すると、当該禁止指令に係る乗場押釦24の操作が、乗りかご12の進行方向が上方向から下方向に反転したときに最上乗場呼び登録となるか否か、又は乗りかご12の進行方向が下方向から上方向に反転したときに最下乗場呼び登録となるか否かを判定する。
【0036】
S12において、禁止指令に係る乗場押釦24の操作が解除条件を満たさないと判定されたときには、禁止指令が取り消されず解除手段33を介して登録手段32に出力され、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録が禁止される(S13)。この手順は、登録手段32の機能によって実行される。つまり、禁止指令を取得した登録手段32は、乗場呼び登録を中止し(乗場呼び登録を行なわない)、例えば、乗場インジケータ25に乗場呼び登録が禁止されたことを表示する。
【0037】
一方、通常の乗場13で乗場押釦24が操作されたとき、特定乗場13xで乗場呼び登録の制限がされない方向の乗場押釦24が操作されたとき、S11で禁止指令が出力されないとき、およびS12で禁止指令が取り消されたときには、乗場押釦24の操作に応じた乗場呼び登録を行なう(S14)。この手順は、登録手段32の機能によって実行される。
【0038】
以上のように、エレベータ10は、特定乗場13xについて、操作された乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と逆方向であるときに当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録を禁止すると共に、乗場押釦24の操作が解除条件を満たす場合に乗場呼び登録の禁止を解除する制御装置30を備える。
当該制御装置30を備えたエレベータ10によれば、操作される乗場押釦24の方向が乗りかご12の進行方向と逆方向である場合、つまり乗りかご12の到着に長時間を要する場合に、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録を禁止して、特定乗場13xで待つ利用者に階段100等の利用を促し、乗りかご12の停止回数を低減できる。また、エレベータ10によれば、解除条件の設定により、特に高層階床の特定乗場13xで乗場呼び登録が困難になるという状況を防止することができる。
【0039】
<第2実施形態>
図3および図4を参照し、第2実施形態であるエレベータ50について説明する。
なお、エレベータ50において、エレベータ10と同一の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
図3に示すように、エレベータ50の制御装置60は、制御装置30と同様に、乗場13で待つ利用者に別の移動手段の利用を促して、乗りかご12の停止回数を減らすための手段として、算出手段61と、登録手段32とを有する。なお、登録手段32は、算出手段61から禁止指令を取得したときに、乗場呼び登録を禁止する機能を有する。
また、図3に例示する形態では、全ての乗場13で乗場呼び登録が制限され、特定乗場13xが設定されていない。
【0041】
算出手段61は、乗場押釦24が操作された乗場13に乗りかご12が到着するまでの到着時間を算出して、算出した到着時間が予め定めた閾値以上であるときに、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録を禁止させる機能を有する。具体的に、算出手段61は、乗場押釦24が操作された乗場13と乗りかご12との位置関係、乗りかご12の昇降スピード、当該乗場13に到着するまでに乗場呼び登録およびかご内操作盤20による行き先階釦の操作に基づく停止回数等の情報を取得して乗りかご12の到着時間をまず算出する。次に、算出した到着時間と予め定めた閾値とを比較して、どちらが長いかを判定する。そして、算出した到着時間が閾値以上である、つまり到着時間の方が長いと判定したときに、乗場呼び登録の禁止指令を登録手段32に出力する。
なお、上記閾値としては、エレベータ50が設置される状況に応じて適宜設定することができる。
【0042】
ここで、図4のフローチャートを参照して、上記構成を備えたエレベータ50による乗場呼び登録に関する制御を例示する。
【0043】
まず初めに、乗場押釦24が操作された乗場13に乗りかご12が到着するまでの到着時間を算出する(S10)。そして、算出した到着時間が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する(S11)。S10およびS11の手順は、算出手段61の機能によって実行される。なお、算出した到着時間が予め定めた閾値以上であると判定されたときには、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録の禁止指令が登録手段32に出力される。
【0044】
そして、S11において、到着時間が予め定めた閾値以上であると判定されたときには、乗場呼び登録を禁止する(S12)。この手順は、登録手段32の機能によって実行される。つまり、禁止指令を取得した登録手段32は、乗場呼び登録を中止し、例えば、乗場インジケータ25に乗場呼び登録が禁止されたことを表示する。
一方、S11において、到着時間が予め定めた閾値以上ではない、即ち到着時間が閾値未満であると判定されたときには、当該乗場押釦24の操作により乗場呼び登録を行なう(S13)。
【0045】
以上のように、エレベータ50は、乗場押釦24が操作された乗場13に乗りかご12が到着するまでの到着時間を算出して、算出した到着時間が予め定めた閾値以上であるときに、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録を禁止する制御装置60を備える。
当該制御装置60を備えたエレベータ50によれば、乗りかご12の到着に長時間を要する場合に、当該乗場押釦24の操作による乗場呼び登録を禁止して、特定乗場13xで待つ利用者に階段100等の利用を促し、乗りかご12の停止回数を低減できる。
【0046】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で設計変更することができる。
【0047】
例えば、上記では、制御装置30,60は、判定手段31や登録手段32等の複数の手段(モジュール)を有するものとして説明したが、単一モジュールで各手段の機能を実行してもよい。また、制御装置30に制御装置60の算出手段61を組み込んでもよい。
また、上記では、解除手段33を有するものとして説明したが、例えば、解除手段33を有さず、判定手段31は、操作された乗場押釦24の方向が、乗りかご12の進行方向と逆方向であると判定したときには、当該操作信号を取り消すことで、登録手段32に乗場呼び登録を行なわせないこともできる。
【0048】
また、図5に示すように、中間階の特定乗場13xには、一般的な乗場操作盤23に代えて、上方向と下方向の釦が一体となった乗場押釦71と、乗場呼び登録が可能かどうかを表示する登録許可灯72とを有する乗場操作盤70を設置してもよい。なお、利用者は、登録許可灯72の点灯状態を確認してから、乗場押釦71を操作する。
例えば、図5(a)に示すように、上方向の乗場呼び登録が可能であるとき、つまり下階側にいる乗りかご12が上方向に進んでいるときには、上方の登録許可灯72が点灯し、乗場押釦71を押すと上方向のインジケータが点灯する。
一方、図5(b)に示すように、下方向の乗場呼び登録が可能であるとき、つまり上階側にいる乗りかご12が下方向に進んでいるときには、下方の登録許可灯72が点灯し、乗場押釦71を押すと下方向のインジケータが点灯する。
また、乗りかご12が待機状態であれば、両方の登録許可灯72が点灯し、乗場押釦71を押すと両方向のインジケータが点灯する。そして、かご内操作盤20の操作により乗りかご12の進行方向を決定することができる。
【符号の説明】
【0049】
10,50 エレベータ、11 昇降路、12 乗りかご、13 乗場、14 緩衝器、15 ピット、16 上部機械室、17 巻上げ機、18 カウンターウエイト、19 主ロープ、20 かご内操作盤、21 かごドア、22 乗場ドア、23 乗場操作盤、24 乗場押釦、25 乗場インジケータ、30,60 制御装置、31 判定手段、32 登録手段、33 解除手段、61 算出手段、70 乗場操作盤、71 乗場押釦、72 登録許可灯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場押釦の操作による乗場呼び登録に基づいて、乗りかごの昇降運転を制御する制御装置を備えたエレベータにおいて、
制御装置は、
乗場押釦の操作に基づいて乗場呼び登録を行なう登録手段と、
予め定めた特定乗場について、操作された乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であるか否かを判定する判定手段と、
を有し、
登録手段は、判定手段により特定乗場で操作された乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であると判定されたときには、当該乗場押釦の操作による乗場呼び登録を行わないことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータにおいて、
制御装置は、判定手段により特定乗場で操作された乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であると判定されたときに、当該乗場押釦の操作による乗場呼び登録が、乗りかごの進行方向が上方向から下方向に反転したときに最上乗場呼び登録となる場合又は乗りかごの進行方向が下方向から上方向に反転したときに最下乗場呼び登録となる場合、登録手段に当該乗場呼び登録を行なわせる解除手段を有することを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータにおいて、
解除手段は、判定手段により特定乗場で操作された乗場押釦の方向が乗りかごの進行方向と逆方向であると判定されたときに、最上又は最下乗場呼び登録がなされた乗場から予め定めた範囲内の特定乗場について、乗場呼び登録を行なわせることを特徴とするエレベータ。
【請求項4】
乗場押釦の操作による乗場呼び登録に基づいて、乗りかごの昇降運転を制御する制御装置を備えたエレベータにおいて、
制御装置は、
乗場押釦の操作に基づいて乗場呼び登録を行なう登録手段と、
乗場押釦が操作された乗場に乗りかごが到着するまでの到着時間を算出して、算出した到着時間が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する算出手段と、
を有し、
登録手段は、算出手段により到着時間が閾値以上であるであると判定されたときには、当該乗場押釦の操作による乗場呼び登録を行わないことを特徴とするエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131626(P2012−131626A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286404(P2010−286404)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】