説明

エンコーダ

【課題】モータの回転情報を検出するエンコーダにおいて、低速回転時でも精度よく速度検出を行うことができるエンコーダを提供する。
【解決手段】位置検出器で検出した位置検出データが変化した場合に位置検出データを記憶するデータ記憶器と、データ記憶器で記憶した位置検出データと、位置検出器で検出した最新の位置検出データを比較し、位置検出データが変化した場合に位置検出データの変化量と変化するまでの時間をカウンタで計数し、位置検出データの変化量とカウンタで計数したカウンタ計数値を上位装置へ伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転情報を検出するエンコーダにおいて、低速回転時でも精度よく速度検出を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置やロボット、各種工作機械などのFA(Factory Automation)システム装置は高精度の位置決め制御を行うため、サーボモータが広く利用されている。サーボモータの回転位置の検出にはエンコーダが用いられ、モータ軸の回転に合わせて90度位相差の2相パルスを生成し、生成したパルスをカウントして回転位置を検出している。更に、90度位相差の2相パルスと、それらパルスに同期した正弦波と余弦波の信号を内挿分割して高分解能化を実現したものが近年増加している。エンコーダで検出した回転位置の情報を上位装置へ伝える手段として、検出した90度位相差の2相パルスをそれぞれ差動信号に変換してA相信号とB相信号の差動パルス信号と、1回転で1パルス信号を出力するZ相の差動パルス信号とを出力するパラレル出力方式が従来一般的に採用されていた。しかし、パラレル出力方式はエンコーダの高分解能化が進むに従ってパルスの周波数が高くなり、ノイズ等の影響を受けることなく、正確にパルス信号を伝えることが難しくなってきている。そのため近年では、エンコーダで生成した位置情報を、上位装置へシリアル通信方式によって送信する手法が採用されている。
【0003】
一方、FA分野ではサーボモータの高速化や低速域での安定性が要求されている。パラレル出力方式のエンコーダの場合、低速域では速度情報となるパルス数が少ないことから、速度検出が困難となるため、これまで低速時の速度検出方法が各種提案されている。
【0004】
図8はパラレル出力方式のエンコーダによる速度検出方法の構成図であり、図9は低速時の速度検出方法を示す各部の動作を表している。中速から高速域の回転時には、A相とB相のパルス数をアップダウンカウンタで計数し、一定時間毎にカウントした差分値から速度を検出している。低速域ではパルス数が減少し、検出誤差が大きくなるために、A相、B相の各エッジ間の時間をカウンタで計数して速度を検出する構成としている。図9は低速域の速度検出方法を示す例であり、A相信号50の立下りを検出してカウンタ44を起動し、B相パルス信号の立上りを検出してカウンタ44で計数したカウント値59を位置検出信号生成手段41に出力し、位置検出信号生成手段はカウント値59から低速時でも精度の高い速度データ56を得ることができる構成となっている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−262649号公報
【特許文献2】特開2009−85716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の手法では、A相、B相パルスが出力されるパラレル出力方式のエンコーダに対しては有効であるが、内挿分割によって高分解能化を図ったエンコーダの場合、A相、B相のパルスを生成することができない。そのため低速域での速度検出は、中速から高速域と同様に一定時間の回転位置の変化量から求めるため、低速域での速度検出の精度が悪化するという課題がある。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、モータの回転情報を検出するエンコーダにおいて、低速回転時でも精度よく速度検出を行うことができるエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載のエンコーダは、モータ軸と同期して回転し、回転位置を検出して位置検出データを出力する位置検出器と、前記位置検出器で検出した位置検出データを上位装置へ伝達するエンコーダにおいて、前記位置検出器で検出した位置検出データが変化した場合に位置検出データを記憶するデータ記憶器と、前記データ記憶器で記憶した位置検出データと、前記位置検出器で検出した最新の位置検出データを比較し、位置検出データが変化した場合に位置検出データの変化量を演算するデータ判定器と、前記位置検出器で検出した位置検出データが変化したタイミングで計数を開始し、次に位置検出データが変化するまでの時間を計数するカウンタからなり、前記回転位置の変化量と前記カウンタで計数したカウンタ計数値を前記上位装置へ伝達する。
【0009】
また、請求項2に記載のエンコーダは、エンコーダから前記上位装置へ伝達する一定周期間に前記位置検出器で検出した位置検出データの変化がない場合、位置検出データの変化量をゼロとし、前記カウンタで計数を続けている現状のカウンタ計数値を前記上位装置へ伝達する。
【0010】
また、請求項3に記載のエンコーダは、エンコーダから前記上位装置へ伝達する一定周期間に前記位置検出器で検出した位置検出データの変化点から前記上位装置へ伝達するまでの時間を前記カウンタで計数し、カウンタ計数値を前記上位装置へ伝達する。
【0011】
また、請求項4に記載のエンコーダは、位置検出データの変化を判定する前記データ判定器は、n回(nは2以上の整数)変化時の位置検出データの変化量を演算し、前記カウンタはn回変化する時間を計数する。
【0012】
また、請求項5に記載のエンコーダは、位置検出データの変化を判定する前記データ判定器は、位置検出データの有効Lbit(Lは2以上の整数)の上位Mbit(Mは1以上の整数で、L>M)の変化を判定する。
【0013】
また、請求項6に記載のエンコーダは、位置検出データの変化量と前記カウンタで計数したカウンタ計数値を前記上位装置へ、一定周期毎に伝達する。
【0014】
また、請求項7に記載のエンコーダは、位置検出データを前記上位装置へ伝達する手段はシリアル通信である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のエンコーダによれば、モータが低速回転でパルス数が少ない、つまり位置検出データの変化量が少ない場合でも、エンコーダ内部で位置検出データの変化量と、変化するまでの時間をカウンタで正確に計数することができるため、低速回転時の速度検出の精度を高めることができる。
【0016】
また、請求項2に記載のエンコーダによれば、上位装置へ位置検出データを送信する周期間に位置検出データの変化がない場合でも、モータ軸が停止している情報と、モータ軸が停止してからの経過時間を出力するため、モータ軸が停止したという判定を容易に行うことができる。
【0017】
また、請求項3に記載のエンコーダによれば、位置検出データが最後に変化した時点か
ら上位装置へ位置検出データを送信するまでの時間を検出することができるため、検出遅れを精度よく補正することができるため、応答性を高めることができる。
【0018】
また、請求項4に記載のエンコーダによれば、位置検出データの変化を1回のデータではなく、複数回のデータをまとめて処理することで、応答性よく、安定したデータを生成することができる。
【0019】
また、請求項5に記載のエンコーダによれば、位置検出データの精度がよい上位bitを用いて速度検出を行うため、更に精度よく低速回転時の速度検出を行うことができる。
【0020】
また、請求項6に記載のエンコーダによれば、上位装置は一定周期毎に位置検出データの変化量と変化するまでの時間の情報を得ることができるため、位置検出データから速度データへの変換を容易に行うことができる。
【0021】
また、請求項7に記載のエンコーダによれば、差動信号によってシリアル通信で送信することにより、耐ノイズ性の向上と信号線の省線化によるコスト低減を図った低速回転時の速度検出を行うことができる。 従って、内挿分割による高分解能エンコーダにおいて、位置検出データの変化量と変化時間を正確に検出するため、低速回転時でも応答性を損なうことなく、精度よく速度検出を行うことができるエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1におけるエンコーダの速度検出回路のブロック図
【図2】実施例1のデータ判定器のブロック図
【図3】実施例1のエンコーダの速度検出回路の各種動作波形を示す図
【図4】実施例2のエンコーダの速度検出回路の各種動作波形を示す図
【図5】実施例3におけるエンコーダの速度検出回路のブロック図
【図6】実施例3のエンコーダの速度検出回路の各種動作波形を示す図
【図7】実施例4のエンコーダの速度検出回路の各種動作波形を示す図
【図8】従来例におけるエンコーダの速度検出回路のブロック図
【図9】従来例のエンコーダの速度検出回路の各種動作波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の発明は、モータ軸と同期して回転し、回転位置を検出して位置検出データを出力する位置検出器と、前記位置検出器で検出した位置検出データを上位装置へ伝達するエンコーダにおいて、前記位置検出器で検出した位置検出データが変化した場合に位置検出データを記憶するデータ記憶器と、前記データ記憶器で記憶した位置検出データと、前記位置検出器で検出した最新の位置検出データを比較し、位置検出データが変化した場合に位置検出データの変化量を演算するデータ判定器と、前記位置検出器で検出した位置検出データが変化したタイミングで計数を開始し、次に位置検出データが変化するまでの時間を計数するカウンタからなり、前記回転位置の変化量と前記カウンタで計数したカウンタ計数値を前記上位装置へ伝達することにより、モータが低速回転でパルス数が少ない、つまり位置検出データの変化量が少ない場合でも、エンコーダ内部で位置検出データの変化量と、変化するまでの時間をカウンタで正確に計数することができるため、低速回転時の速度検出の精度を高めることができる。
【0024】
第2の発明は、エンコーダから前記上位装置へ伝達する一定周期間に前記位置検出器で検出した位置検出データの変化がない場合、位置検出データの変化量をゼロとし、前記カウンタで計数を続けている現状のカウンタ計数値を前記上位装置へ伝達することにより、上位装置へ位置検出データを送信する周期間に位置検出データの変化がない場合でも、モ
ータ軸が停止している情報と、モータ軸が停止してからの経過時間を出力するため、モータ軸が停止したという判定を容易に行うことができる。
【0025】
第3の発明は、エンコーダから前記上位装置へ伝達する一定周期間に前記位置検出器で検出した位置検出データの変化点から前記上位装置へ伝達するまでの時間を前記カウンタで計数し、カウンタ計数値を前記上位装置へ伝達することにより、位置検出データが最後に変化した時点から上位装置へ位置検出データを送信するまでの時間を検出することができるため、検出遅れを精度よく補正することができるため、応答性を高めることができる。
【0026】
第4の発明は、位置検出データの変化を判定する前記データ判定器は、n回(nは2以上の整数)変化時の位置検出データの変化量を演算し、前記カウンタはn回変化する時間を計数することにより、位置検出データの変化を1回のデータではなく、複数回のデータをまとめて処理することで、応答性よく、安定したデータを生成することができる。
【0027】
第5の発明は、位置検出データの変化を判定する前記データ判定器は、位置検出データの有効Lbit(Lは2以上の整数)の上位Mbit(Mは1以上の整数で、L>M)の変化を判定することにより、位置検出データの精度がよい上位bitを用いて速度検出を行うため、更に精度よく低速回転時の速度検出を行うことができる。
【0028】
第6の発明は、位置検出データの変化量と前記カウンタで計数したカウンタ計数値を前記上位装置へ、一定周期毎に伝達することにより、上位装置は一定周期毎に位置検出データの変化量と変化するまでの時間の情報を得ることができるため、位置検出データから速度データへの変換を容易に行うことができる。
【0029】
第7の発明は、位置検出データを前記上位装置へ伝達する手段はシリアル通信であることにより、差動信号によってシリアル通信で送信することにより、耐ノイズ性の向上と信号線の省線化によるコスト低減を図った低速回転時の速度検出を行うことができる。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
本発明によるエンコーダについて、図1、図2及び図3を用いて説明する。図1は実施例1におけるエンコーダの速度検出回路のブロック構成図、図2はデータ判定器のブロック図、図3は速度検出回路の各種動作波形であり、以下に各動作について説明する。
【0032】
1は位置検出器であり、90度位相差のA相とB相の2つのパルス信号をアップ/ダウンカウントして得られるインクリメンタルデータの上位Mbit(Mは整数)と、これらのパルス信号に同期した90度位相差のある2つの正弦波信号を内挿処理して得られる下位Kbit(Kは整数)を合成してLbit(L=M+K)の位置検出データ21を生成する。上位bitを形成する信号が前述のようなインクリメンタルデータの場合、1回転で1度出力される基準位置(Z相)が必要となり、Z相を検出後にロータの位置が確定する。最近では、起動後直ぐに1回点内の位置が確定するアブソリュートタイプのエンコーダが増えており、上位Mbitと同数のM個のトラックを形成し、1回転で2のn乗に分割したグレーコードパターンとなるように形成している。また、小型化のため、1トラックの周囲上にM個の検出器を配置してMコードのパターンを形成したものも多く採用されている。
【0033】
2はデータ判定器であり、図2に示すように位置検出データ差分器11、データ保持器
12、データ更新タイミング検出器13で構成されている。データ更新タイミング検出器13は速度検出に用いるデータを更新するタイミングを生成するものであり、後述するデータ記憶器3で記憶した記憶位置検出データ27と、前記位置検出器1で検出した位置検出データ21を比較し、差が発生した場合にデータ更新タイミング信号23を出力する。位置検出データ差分器11は位置検出データの移動量を検出するものであり、前記データ更新タイミング検出器13からのデータ更新タイミング信号23を受けると、後述するデータ記憶器3で記憶した記憶位置検出データ27と前記位置検出器1で検出した位置検出データ21の差(位置検出データ21−記憶位置検出データ27)をとり、位置検出差分データ24を出力する。データ保持器12は最新の位置検出データ21を保持するためのものであり、前記データ更新タイミング検出器13から出力されたデータ更新タイミング信号23により、位置検出データ21を保持し、次にデータ更新タイミング信号23が入力されるまで、保持しているデータを更新位置検出データ26として出力する。
【0034】
3はデータ記憶器であり、前記データ判定器2から出力された更新位置検出データを記憶して記憶位置検出データ27として出力し、前記位置検出器1で検出した最新の位置検出データ21と比較することによって、モータ軸の回転を検出する。
【0035】
4はカウンタであり、前記データ判定器2から出力されるデータ更新タイミング信号23の信号を受けると、カウンタで計数した値を保持して、カウンタ計数ラッチデータ32を出力するとともに、カウンタ計数値25をゼロにクリアする。
【0036】
6はタイミング生成回路であり、前記位置検出器1の動作開始信号となる位置検出タイミング信号20と、カウンタ4でカウンタを動作させるカウンタクロック22を生成する。
【0037】
5は送信データ生成回路であり、検出した各データを送信できるように、各データを保持する役割を行い、後述する送受信回路7からの情報送信リクエスト信号31の要求コマンドによって、保持したデータを出力する。
【0038】
7は送受信回路であり、図示しない上位装置からの受信データ30によってデータの要求を受けると、それに対応したデータを送信データ29として上位装置へ返信する。受信データ30の要求は、位置情報や温度情報、エラー情報、速度情報等がある。
【0039】
以上が各ブロックの役割についての説明である。次に図3を用いて低速回転時の動作について説明する。
【0040】
Tcom1、Tcom2、・・・は図示しない上位装置からデータの要求を受けるタイミングであり、Tcomはデータの要求周期を表している。前記タイミング生成回路6から周期的に生成される位置検出タイミング信号20毎に前記位置検出器1は位置検出データ21を生成するが、低速回転時の場合は図3に示すように位置検出データ21が変化しない場合が続く。Tcom1からTcom2までの間では1度位置検出データ21が変化した場合の例である。位置検出データ21が(n+1)から(n+2)へ変化すると、この差分である(n+2)−(n+1)を演算し、位置検出差分データ24(dif2)を生成する。更に同タイミングでデータ更新タイミング信号13が出力され、そのときに前記カウンタ4で計数しているカウンタ計数値25(cc1)はカウンタ計数ラッチデータ32として保持する。また、カウンタ4で係数したカウンタ計数値25は同時にゼロにクリアされ、再び計数を開始する。送信データ生成回路5は上位装置からのデータ要求である情報送信リクエスト信号31を受けると、送信データを生成するため、ウンタ計数ラッチデータ32で保持されたデータ(cc1)からカウンタ計数ラッチ情報28bと、位置検出差分データ24で保持されたデータ(dif2)から位置検出差分データラッチ情報
28aを出力する。ここで生成されたデータは送受信回路7によって送信データ29として上位装置へ送信される。
【0041】
また、Tcom2からTcom3までの間では、位置検出データ21は2度変化した場合の例であり、上述した1度変化の場合と同じ動作をするため、位置検出データ21が変化する毎にカウンタ計数ラッチデータ32と位置検出差分データ24が生成され、上位装置からのデータ要求である情報送信リクエスト信号31を受けた時点のデータをそれぞれカウンタ計数ラッチ情報28bと位置検出差分データラッチ情報28aとして取り込み、出力される。
【0042】
以上のような構成とすることで、モータが低速回転でパルス数が少ない、つまり位置検出データ21の変化量が少ない場合でも、エンコーダ内部で位置検出データの変化量と、変化するまでの時間をカウンタで正確に計数することができるため、低速回転時の速度検出の精度を高めることができる。
【0043】
(実施例2)
図4を用いて本発明の実施例2について説明する。実施例1と異なるのは、上位装置からのデータ要求周期間Tcomで位置検出データ21が変化しなかった場合の送信データ生成回路5の動作である。これについて以下に説明する。
【0044】
図4は実施例2のエンコーダの速度検出回路の各種動作波形である。Tcom1とTcom2間、Tcom3とTcom4間は位置検出データ21の変化がないため、データ更新タイミング信号23の信号は発生せず、位置検出差分データ24は更新されず、カウンタ計数値25もクリアされずに計数を続けている。このような場合に送信データ生成回路5は、Tcom2とTcom4のタイミングで上位装置から情報送信リクエスト信号31を受けると、位置検出差分データラッチ情報28aをゼロにセットし、カウンタ計数ラッチ情報28bは前記カウンタ4で計数中のカウンタ計数値25をセットする。上位装置がこれらの情報を入手すれば、データ要求周期間Tcomで位置検出データ21が変化せずにモータ軸が停止しており、また停止している時間を検出することができる。
【0045】
以上のような構成とすることで、上位装置へ位置検出データを送信する周期間に位置検出データの変化がない場合でも、モータ軸が停止している情報と、モータ軸が停止してからの経過時間を出力するため、モータ軸が停止したという判定を容易に行うことができる。
【0046】
(実施例3)
図5および図6を用いて本発明の実施例3について説明する。実施例1および実施例2と異なるのは、上位装置から情報送信リクエスト信号31を受けて、カウンタ4で計数しているカウンタ計数値25を保持するカウンタ値保持器8を設けた点である。これについて以下に説明する。
【0047】
図5は実施例3におけるエンコーダの速度検出回路のブロック図、図6は実施例3のエンコーダの速度検出回路の各種動作波形である。8はカウンタ値保持器であり、前記カウンタ4からの出力値であるカウンタ計数値25が入力される。上位装置から情報送信江リクエスト信号31を受けると、図6に示すようにカウンタ値保持器8はカウンタ計数値25で計数しているカウンタ値を取り込み、前記送信データ生成回路5へ取り込んだカウント値として、カウンタ計数ラッチ情報28cを出力する。前記送信データ生成回路5は、位置検出差分データラッチ情報28aと、カウンタ計数ラッチ情報28b、28cを上位装置へ送信するためのデータを生成し、前記送信回路7を経由して上位装置へ送信する。カウンタ計数ラッチ情報28cには、前回位置検出データ21が変化した時点から、上位
装置へデータを送信するまでの時間(例えば、Tcom1とTcom2間で位置検出データ21が変化したときのカウント計数値25はcc1であり、この後上位装置へデータを送信するまでの時間はtc2)が含まれるため、上位装置は検出した速度データの遅れ時間を確認することができる。
【0048】
以上のような構成とすることで、位置検出データが最後に変化した時点から上位装置へ位置検出データを送信するまでの時間を検出することができるため、検出遅れを精度よく補正することができるため、応答性を高めることができる。
【0049】
(実施例4)
図7を用いて本発明の実施例4について説明する。実施例1から実施例3と異なるのは、位置検出データ21がn回(nは2以上の整数)以上変化した際にデータ更新タイミング信号23が生成される点である。これについて以下に説明する。
【0050】
実施例4で構成するデータ判定器2は、データ記憶器3で記憶した記憶位置検出データ27と、前記位置検出器1で検出した位置検出データ21を比較し、差が発生した回数をカウントし、設定したカウント数に達した場合にデータ更新タイミング信号23を出力し、カウンタをクリアするように動作する。図7はカウンタ設定値が2の場合の例であり、位置検出データ21が2回変化した場合に、データ更新タイミング信号23が生成される。Tcom1とTcom2間で位置検出データ21はn+1からn+2へ1回変化し、Tcom2で上位装置からデータの要求を受けた際は、位置検出差分データラッチ情報28aはゼロ、カウンタ計数ラッチ情報28bは現状のカウント値cc1を送信する。次にTcom2とTcom3間では、位置検出データ21はn+2からn+3へ変化し、位置検出データ21は2回目の変化が発生したので、Tcom3で上位装置からデータの要求を受けた際は、位置検出差分データラッチ情報28aはn+3とn+1の差分値であるdif3、カウンタ計数ラッチ情報28bは位置検出データ21が2回変化するのにようしたカウント値cc2を送信する。上位装置でn回分のデータをまとめて処理した場合は、サンプリング時間(Tcom)が長すぎるため、応答性が悪化してしまうが、エンコーダで生成する位置検出データのサンプリングはTcomに比べて十分に短いので、応答性を悪化させることがない。
【0051】
以上のような構成とすることで、位置検出データ21の変化を1回のデータではなく、複数回のデータをまとめて処理することで、応答性よく、安定したデータを生成することができる。
【0052】
(実施例5)
本発明の実施例5について説明する。実施例1から実施例4と異なるのは、位置検出データ21の変化を判定する前記データ判定器2で、判定する有効bitに制限を設けた点である。これについて以下に説明する。
【0053】
前記データ判定器2は、前述したように前記位置検出器1で検出した位置検出データ21と、前記データ記憶器3で記憶している記憶位置検出データ27が異なったことを検出しているが、位置検出データ21の全bitを対象としているため、ノイズ等によって位置検出データ21の下位bitが変動する場合がある。そのため、前記データ判定器2で判定する位置検出データ21の有効Lbit(Lは2以上の整数)に対し、上位Mbit(Mは1以上の整数で、L>M)の変化を判定するように構成する。
【0054】
以上のような構成とすることで、位置検出データの精度がよい上位bitを用いて速度検出を行うため、更に精度よく低速回転時の速度検出を行うことができる。
【0055】
(実施例6)
本発明の実施例6について説明する。実施例1から実施例5と異なるのは、位置検出データの変化量と前記カウンタで計数したカウンタ計数値を上位装置へ、一定周期毎に伝達するようにした点である。これについて以下に説明する。
【0056】
上位装置からのデータ要求である情報送信リクエスト信号31が一定周期毎に送られるようにエンコーダを含めたシステムを構成する。エンコーダは実施例1から実施例5の方法によって、カウンタ計数ラッチ情報28b、28cと、位置検出差分データラッチ情報28aを生成し、これらを送信データ29として出力する。
【0057】
以上のような構成とすることで、上位装置は一定周期毎に位置検出データ21の変化量と変化するまでの時間の情報を得ることができるため、位置検出データから速度データへの変換を容易に行うことができる。
【0058】
更に、送信データ29をシリアルデータに変換し、差動信号によってシリアル通信で送信することにより、耐ノイズ性の向上と信号線の省線化によるコスト低減を図った低速回転時の速度検出を行うことができる。
【0059】
また、実施例1から実施例6まで、回転型エンコーダを例に説明したが、リニア型のエンコーダに対しても同じ構成とすることで、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のエンコーダは、低速時の速度検出精度を高めることができるため、低速で動作させる搬送機の駆動用、またはギアを介さずにダイレクトで低速で駆動する産業用ロボットのアーム等に用いられる位置検出装置で特に有効である。
【符号の説明】
【0061】
1 位置検出器
2 データ判定器
3 データ記憶器
4 カウンタ
5 送信データ生成回路
6 タイミング生成回路
7 送受信回路
11 位置検出データ差分器
12 データ保持器
13 データ更新タイミング検出器
20 位置検出タイミング信号
21、54 位置検出データ
22 カウンタクロック
23 データ更新タイミング信号
24 位置検出差分データ
25 カウンタ計数値
26 更新位置検出データ
27 記憶位置検出データ
28a 位置検出差分データラッチ情報
28b、28c カウンタ計数ラッチ情報
29 送信データ
30 受信データ
31 情報送信リクエスト信号
32 カウンタ計数ラッチデータ
40 アップダウンカウンタ
41 位置検出信号生成手段
43 エッジ検出
44 カウンタ
50 A相信号
51 B相信号
52 AB相カウンタ値
53 エッジ検出パルス信号
55 カウンタ計数値
56 速度データ
58 アップ/ダウン切替信号
59 エッジ間カウンタ計数ラッチ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸と同期して回転し、回転位置を検出して位置検出データを出力する位置検出器と、前記位置検出器で検出した位置検出データを上位装置へ伝達するエンコーダにおいて、前記位置検出器で検出した位置検出データが変化した場合に位置検出データを記憶するデータ記憶器と、前記データ記憶器で記憶した位置検出データと、前記位置検出器で検出した最新の位置検出データを比較し、位置検出データが変化した場合に位置検出データの変化量を演算するデータ判定器と、前記位置検出器で検出した位置検出データが変化したタイミングで計数を開始し、次に位置検出データが変化するまでの時間を計数するカウンタからなり、
前記回転位置の変化量と前記カウンタで計数したカウンタ計数値を前記上位装置へ伝達することを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
エンコーダから前記上位装置へ伝達する一定周期間に前記位置検出器で検出した位置検出データの変化がない場合、位置検出データの変化量をゼロとし、前記カウンタで計数を続けている現状のカウンタ計数値を前記上位装置へ伝達することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
エンコーダから前記上位装置へ伝達する一定周期間に前記位置検出器で検出した位置検出データの変化点から前記上位装置へ伝達するまでの時間を前記カウンタで計数し、カウンタ計数値を前記上位装置へ伝達することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
位置検出データの変化を判定する前記データ判定器は、n回(nは2以上の整数)変化時の位置検出データの変化量を演算し、前記カウンタはn回変化する時間を計数することを特徴とする請求項1から請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項5】
位置検出データの変化を判定する前記データ判定器は、位置検出データの有効Lbit(Lは2以上の整数)の上位Mbit(Mは1以上の整数で、L>M)の変化を判定することを特徴とする請求項1から請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
位置検出データの変化量と前記カウンタで計数したカウンタ計数値を前記上位装置へ、一定周期毎に伝達することを特徴とする請求項1から請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
位置検出データを前記上位装置へ伝達する手段はシリアル通信であることを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−42291(P2012−42291A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182691(P2010−182691)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)