説明

エンジンの冷却装置

【課題】エンジンを冷却した冷却水をサージタンク内の補強リブを利用して冷却水が流れる流路を形成し、サージタンク内における冷却水が空気に触れる時間(経路)を長くして、冷却水から気泡を分離させて、冷却水系のキャビテーション発生を抑制し、エンジンの耐久・信頼性の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】エンジン1の冷却水が流れるウォータジャケット1aと、冷却水を冷却するラジエータ2と、ラジエータ2及びウォータジャケット1aに対し上方に位置して、冷却水に混合した気泡を分離するサージタンク3とを備え、サージタンク3の一端側には、冷却水の流入部31bと、ウォータポンプへの排出部31aと、流入部31aから流入する冷却水を略直線状に流す流入路35を形成すると共に、他端側近傍まで延在し、近傍にてサージタンク3内に冷却水が拡散する補強リブ31eとを有したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の冷却水系に配設されたサージタンク方式の冷却水に含まれている気泡を除去するエンジンの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの冷却システムは、エンジンとラジエータ間に冷却水を循環させる冷却水循環系路を設け、エンジンの冷却を図るようにしている。また、冷却水内に発生した気泡は、冷却能力を低下させたり、キャビテーションの発生による金属腐食の原因となる。
そこで、特許2667317号公報(特許文献1)に記載されているように、サージタンクを用いたサージタンク方式が知られている。
【0003】
サージタンク方式のエンジン冷却システムは、エンジンやラジエータにサージタンクを連結し、冷却水内に生じた気泡をサージタンクで分離し、気泡を除去した冷却水をエンジンに戻している。また、サージタンク内は、ラジエータ内の圧力と同等の圧力が保持されており、ウォータポンプで吸引される冷却水の圧力低下を防止できる。
【0004】
特許文献1によると、エンジン内の冷却水位より高い位置にあって補給冷却水を貯えるリザーバタンクをヘッダタンク(サージタンク)の圧力内に連通させて、エンジン始動時の冷却水系の急激な圧力上昇を膨張スペース内の空気が吸収することにより緩かにすることができ、エンジンの冷却水系を構成する各部品の劣化を防止することができる技術開示が成されている。
【0005】
また、特開平8−200063号公報(特許文献2)によると、吸入空気を吸気ポートまで導く枝管と、該枝管の吸気ポート側端部に設けられる枝管取付用のフランジとを備え、シリンダヘッド内に設けられたウォータジャケットに連通し、且つ冷却水の出水部に連通する溝を、フランジのシリンダヘッドに密着する取付面に開口させた技術が開示されている。
【0006】
従って冷却水が出水部に至るまでの通路がフランジの取付面に開口させて設けてあるので、吸入空気が流通する枝管が加熱されることはない。つまり、冷却水はフランジ内を流通するため枝管は直接加熱されるものではなく、また、フランジからの熱伝導は少ないために間接的にも加熱されることは極力少なくなる。
このため、注水時の気泡を効率よく抜くことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2667317号公報(特許文献1)
【特許文献2】特開平8−200063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、エンジン始動時の冷却水系の圧力上昇を緩かにし、エンジン作動中の冷却水系の圧力変動幅を小さくして、且つ、サージタンクに装着してある圧力キャップの開閉頻度を減少させてリザーバタンクへの予備冷却水の補給間隔を延長させるもので、冷却水系からリザーバタンクへ流れてきた冷却水が貯溜される各槽は、該冷却水で満杯状態になっており、空気に触れさせて冷却水に含まれている気泡を積極的に分離させることのできない不具合を有している。
また、特許文献2においては、エンジンのシリンダが傾斜して車両に搭載したエンジンに冷却水を注入した際の空気抜き構造で、サージタンクで冷却水に混入した気泡を分離するものとは技術内容が異なる。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、エンジンを冷却した冷却水をサージタンク内の補強リブを利用して冷却水が流れる流路を形成し、サージタンク内における冷却水が空気に触れる時間(経路)を長くして、冷却水から気泡を分離させて、冷却水系のキャビテーション発生を抑制し、エンジンの耐久・信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明は、エンジン冷却水系に連通し、該エンジンを冷却する冷却水が流れるウォータジャケットと、該ウォータジャケットを流れて昇温した冷却水を冷却するラジエータと、該ラジエータ及び前記ウォータジャケットに対し重力方向上側に位置して、冷却水に含まれている気泡を分離する重力方向平面視が矩形状のサージタンクと、を備えたエンジンの冷却装置であって、前記サージタンクの矩形状の長手方向一端側には、前記冷却水系側からの冷却水が流入する流入部と、前記サージタンク内の冷却水を前記冷却水系へ流出する流出部と、前記流入部から流入する冷却水を略直線状に流す流入路を形成すると共に、前記矩形状の長手方向他端側近傍まで延在し、該近傍にて前記サージタンク内に冷却水が流通する隔壁とを設けたことを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、一端側に配設された流入部からサージタンク内に流れ込んだ冷却水を隔壁によって他端側に流す流入路を形成することで、空気に曝される時間(経路)を長くするようにして、冷却水からの気泡分離が促進され易いと共に、サージタンク内に流れ込んだ冷却水が十分に気泡分離されない状態で流出部から冷却水系に戻るのを隔壁によって防止できる。
従って、冷却水系におけるキャビテーションの発生を抑制することで金属腐蝕を防止して、冷却水系、特にエンジンの信頼・耐久性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記隔壁は、前記サージタンク内部の第1補強リブによって形成されるとよい。
【0013】
このような構造にすることにより、隔壁をサージタンク内の第1補強リブによって形成したので、隔壁用の材料が別途必要にならず、構造が簡素化されコスト、及び重量増加抑制が可能となる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記サージタンク内には、前記流入路から排出された冷却水を前記流出部に略直線状に導く前記サージタンクの第2補強リブによって形成された主流出路と、主流出路より流路幅を狭くし前記サージタンクの第3補強リブによって形成された副流出路とを備えるとよい。
【0015】
このような構造にすることにより、サージタンク内の冷却水流出路を主・副に分離することで、主流路では、直線状に流すことにより冷却水の乱れを防止して気泡の分離を促進させると共に、副流出路の流路幅を狭くして、冷却水の流れを穏やかにして微細な気泡の分離を促進させる。
更に、主・副流路を設けることにより、サージタンク内の冷却水の流動抵抗を小さくすることにより、ウォータポンプがサージタンク内の冷却水を吸込む駆動力が小さくなり、エンジンの出力向上に寄与することができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記副流出路に前記サージングタンク内の冷却水位を検出する冷却水位検出センサを配設するとよい。
【0017】
このような構造にすることにより、副流出路は主流出路より冷却水の流れが穏やかなので、冷却水位の変動量が少なく測定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一端側に配設された流入部からサージタンク内に流れ込んだ冷却水を隔壁によって他端側に流す流入路を形成することで、空気に曝される時間(経路)を長くするようにして、冷却水からの気泡分離が促進され易くすることで、冷却水系におけるキャビテーションの発生を抑制することで金属腐蝕を防止して、冷却水系、特にエンジンの信頼・耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が実施される車両に搭載されたエンジンの冷却水系構成図を示す。
【図2】サージタンクの圧力調整を行うプレッシャキャップの説明図を示す。
【図3】本発明のサージタンクの外観斜視図を示す。
【図4】図3のA−A断面図を示す。
【図5】図3のB−B断面のロアシエル斜視図を示す。
【図6】ロアシエル内の流路説明の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
尚、冷却用媒体としては一般に水又は凍結防止、防錆効果を図った液体を使用しているが、本実施形態ではこれらを総称して、「冷却水」として記載する。
また、上下左右は運転席に着座した状態を基準に上下(重力方向)左右(車幅方向)を記載する。
【0021】
車両に搭載されたエンジンに本発明を適用した全体構成を図1及び図2に基づいて説明する。
図1は車両に搭載されたエンジンの冷却水系構成図を示し、1は車両に搭載されたエンジン、2はエンジン1から吐出された冷却水を冷却するラジエータ、3は本発明のサージタンクで、該サージタンク3は冷却水に混入している気泡を分離するために、エンジン1を冷却する冷却水が流れるウォータジャケット1a及びラジエータ2より重力方向上方に位置させていると共に、冷却水系と同じ圧力を維持するためのプレッシャキャップ10が装着されている。7は冷却水の温度を感知して冷却水の流路を変更するサーモスタット、8はエンジン1の運転と共に駆動され、冷却水系の冷却水を流動させるウォータポンプである。9は、ラジエータ2において冷却水と空気との熱交換によって昇温した空気をラジエータ2の熱交換部から吸引するラジエータファンである。
PCはラジエータ2からパイプP2を介して流れてくる冷却水をパイプP1に合流させるためのパイプコネクタである。
【0022】
エンジン1が始動され、該エンジン1が十分に暖気されていない(冷時)場合、冷却水はエンジン1から配管P4を介してサーモスタッド7に流れ、該サーモスタッド7から配管P6を通ってウォータポンプ8に達し、該ウォータポンプ8によって再度、エンジン1のウォータジャケット1a内に圧送され、エンジン1が十分に暖気されるまで循環が繰返される。
そして、エンジン1の暖気が進み、冷却水の温度が規定以上に上昇すると、サーモスタッド7は、配管4からの冷却水を配管6側に流すのをストップさせて、配管7側に流し、ラジエータ2によって冷却水を冷却し、配管5を介してウォータポンプ8によってエンジン1のウォータジャケット1a内に圧送してエンジン1を冷却する。
【0023】
更に、エンジン1が高回転、高負荷等で運転されると、冷却水は温度が上昇すると共に体積膨張する。膨張した冷却水は配管P1及び、配管P2を介してサージタンク3に流れ込む。
サージタンク3内に流れ込んだ冷却水は、該サージタンク3内で冷却されると共に、冷却水内に混入している気泡を除去して、配管P3を介してウォータポンプ8に吸込まれて、ウォータポンプ8によってウォータジャケット1aに圧送され、キャビテーションの発生が抑制された状態で冷却水系内を循環する。
【0024】
尚、図2(A)及び,(B)に示すように、プレッシャキャップ10はプレッシャバルブとベントバルブとを備え、冷却水系の圧力を常に適切な状態に保っている。
これは、冷却水の沸騰温度を上げて、冷却水の冷却効果を高めるために、大気圧より高く保持されている。
冷却水系の冷却水温度の上昇に伴い圧力も上昇し、サージタンク3内の圧力が規定値以上になると、プレッシャバルブ101がプレッシャーバルブ・スプリング105を押縮め外気と連通して圧力を下げる。
一方、冷却水温が下がると、サージタンク3内及び、ラジエータ2内が負圧となり、ベントバルブ102のベントバルブスプリング106を押縮めて外気を導入し、サージタンク3内の圧力を上昇させて規定値に保つようになっている。
【0025】
図3はサージタンク3の外観斜視図を示す。サージタンク3はB−B線を境に下側をロアシエル31と、上側をアッパシエル32とを別々に製作して、夫々を該Z線の境を溶着することにより、内部を密閉したサージタンク3が形成されている。
本サージタンク3は特に、キャブオーバタイプのトラック、又は小型キャブオーバ型フロントエンジンバス等のエンジン1の上側に運転席の床面(図示省略)が配置され、エンジン1と床面との間のスペースが十分に確保できない構造の車両に適合させるため、高さ方向(重力方向)を小さく、幅方向(車幅方向)を比較的大きく(サージタンクの冷却水容量を必要量確保できる大きさ)した扁平状の平面視が略矩形状に形成されている。
尚サージタンクの方向を示す場合、説明を容易化するため、矩形状の長辺方向を「長手方向」、短辺方向を「幅方向」として記載する。
【0026】
サージタンク3のロアシエル31には、配管3を介してウォータポンプ8にサージタンク3の冷却水を戻す流出口31aと、ラジエータ2及びエンジンン1のウォータジャケット1aからの冷却水が配管P1を介して流入する流入口31bが設けられている。
サージタンク3のアッパシエル32には、冷却水系の圧力を規定値に維持すると共に、冷却水の補給口となるプレッシャキャップ10が装着されるプレッシャキャップ取付部32bとが設けられている。
【0027】
サージタンク3の内部は、図4、図5及び図6に基づいて説明する。図4は図3のA−A線に沿ったサージタンク3の上下方向の断面図を示し、図5は図3のB−B線に沿った断面のロアシエル31の斜視図を示し、図6はロアシエル内の流路説明の概略図を示している。
図4に示すように、アッパシエル32と、ロアシエル31とを図3のA−A線に沿って溶着して内部を密閉したタンク構造にしたものである。
ロアシエル31の一端側は平面視における幅方向が台形状に漸次縮幅した傾斜部31rが形成されている。
台形状の片側の傾斜部31rには、サージタンク3内の冷却水がウォータポンプ8側に流出する流出部31aと、冷却水系からの冷却水が入ってくる流入口31bが設けられている。
流出部31aはロアシエル31の底部側に配設され、流入口31bは流出部31aの上側位置に配設され、それぞれは補強リブ31eによって、流通が遮断されている。
流出部31a及び、流入口31bは夫々の軸線がサージタンク3の長手方向の軸線と略直角に取付けられている。
【0028】
ウォータジャケット1aからの冷却水はロアシエル31の長手方向一端側に設けられた流入口31bから入り、流入路35を通って、ロアシエル31の他端側に流れ、該他端側で補強リブ31fと補強リブ31hとの間を通ってロアシエル31の幅方向中心側へ拡散しながら流れる。
流入路35はロアシエル31の流入部31bが取付けられた側の側壁に沿って、流入部31bに連続して、ロアシエル31の長手方向他端側近傍まで延在した第1補強リブによって形成されている。
【0029】
第1補強リブは一端側の流入部31bが取付けられている壁面31r(サージタンク3の外壁を構成する面)から流路側に突出し且つ、上下方向に連続し、流入路35に沿った方向に断続的に配設された補強リブ31cと、該補強リブ31cと幅方向に間隔を有して、流入部31bが取付けられている壁面から他端側近傍まで延在(連続)した補強リブ31eとで構成されている。
補強リブ31eの他端側は補強リブ31fと一体的に結合した閉断面構造に形成されて、補強リブ31eの他端側部分の剛性を強化してある。
尚、図4及び図6に該閉断面構造の閉断面空間部Sを示す。該閉断面空間部Sはアッパシエル32と、ロアシエル31とに連続して形成されている。
これらの補強リブ31c及び、31eは、図4にその一部を示すように、アッパシエル32に補強リブ31c及び、31eと対向した位置に配設された補強リブと連続するように配設され、アッパシエル32とロアシエル31とがB−B線に沿って接合する際に、同じように接合され、剛性を維持できるようになっている。
【0030】
流入路35からの冷却水は、補強リブ31fと補強リブ31hとの間を通ってロアシエル31の幅方向中心側へ拡散しながら流れ、冷却水の大部分が主流出路36(図4及び図6参照)に、残りが副流出路37に流れ込む。
主流出路36はロアシエル31の幅方向の略中央に他端側から一端側に向け第2補強リブによって形成されている。
第2補強リブは主流出路36の幅方向一側が補強リブ31f、補強リブ31i、補強リブ31gが断続的に略直線状に配列されている。
一方、幅方向他側は、補強リブ31k、補強リブ31m、補強リブ31nによって断続的で略直線状に配列されている。
更に、主流出路36の一端側には、該主流出路36を流れてきた冷却水が流出部31a側に滑らかに流れるようにガイドするガイド部材31qが配設されている。
これらの補強リブ31f、31i・・等は、図4にその一部を示すように、アッパシエル32に補強リブ31f、31i・・等と対向した位置に配設された補強リブと連続するように配設され、アッパシエル32とロアシエル31とがB−B線に沿って接合する際に、同じように接合され、サージタンク3の剛性を維持できるようになっている。
【0031】
また、副流出路37は、流入路35に対し、ロアシエル31の幅方向反対側に他端側から一端側に向け第3補強リブによって形成されている。
副流出路37には、補強リブ31fと補強リブ31h、及び、補強リブ31hとロアシエル31の他端側の外壁を補強する補強リブ31uとの間を通った冷却水の一部が補強リブ31jと補強リブ31uとの間、及び補強リブ31jと補強リブ31kとの間から流入する。
そして、副流出路37の流路は主流出路36に対し、流路面積が小さくなっている。
第3補強リブは副流出路37の幅方向一方側が補強リブ31j、補強リブ31k、補強リブ31m、3個(図6の場合)の補強リブ31nが断続的に略直線状に配設されている。
副流出路37の幅方向他方側は、ロアシエル31の長手方向の外壁を構成する面に、該外壁に沿って断続的に配設された補強リブ31pによって形成されている。
副流出路37の冷却水は、一方側に断続的に複数配置された補強リブ31n間を通り、主流出路36を流れる冷却水に合流して流出部31aからウォータポンプ8側に流出する。
これらの補強リブ31j、31k・・等も主流出路36の補強リブと同じように、アッパシエル32とロアシエル31のリブ同士が連続し、接合される構造となっている。
【0032】
そして、副流出路37の長手方向中間部には冷却水位センサ取付部31tが形成されている。
副流出路37は主流出路36に対し流路面積を小さくしてあり、ウォータポンプ8側からの吸引による影響が小さいので、主流出路36に対し流れが穏やかになり、水位センサ取付部の水位変動が小さく、検知精度を高くすることができる。
【0033】
このような構成にすることにより、一端側に配設された流入部からサージタンク3内に流れ込んだ冷却水を隔壁αによって他端側に流す流入路35、更に、主流出路36及び、副流出路37に流れるようにして、サージタンク3内における空気に曝される流路を長く形成することで、冷却水からの気泡分離が促進され易いと共に、サージタンク3内に流れ込んだ冷却水が十分に気泡が分離されない状態で排出部31aから冷却水系に戻るのを補強リブ31eによって防止できる。
従って、冷却水系におけるキャビテーションの発生を抑制することで金属腐蝕を防止して、冷却水系、特にエンジンの信頼・耐久性の向上を図ることができる。
また、主流出路36と副流出路37を設けることで、流通抵抗を小さくすることができ、ウォータポンプ8の吸引駆動力を下げることにより、エンジン1の出力向上が可能となる。
更に、扁平状のサージタンク3なので、該サージタンク3内の冷却水が減少しても水位変化が小さいので、冷却水の流れによる水位変化の少ない副流出路37に冷却水位センサ31tを配置することにより、冷却水位を高精度で検知でき、冷却水管理が確実にでき、エンジン1に対するメインテナンス性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
内燃機関の冷却水系に配設されたサージタンク方式の冷却水に含まれている気泡を除去して、冷却水系に発生する冷却不足、キャビテーションによる金属腐食等を防止するサージタンク構造に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 エンジン
1a ウォータジャケット
3 サージタンク
8 ウォータポンプ
10 プレッシャキャップ
31 ロアシエル
31a 流出部
31b 流入部
31e 補強リブ(隔壁)
31q ガイド部材
32 アッパシエル
35 流入部
36 主流出部
37 副流出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン冷却水系に連通し、該エンジンを冷却する冷却水が流れるウォータジャケットと、
該ウォータジャケットを流れて昇温した冷却水を冷却するラジエータと、
該ラジエータ及び前記ウォータジャケットに対し重力方向上側に位置して、冷却水に含まれている気泡を分離する重力方向平面視が矩形状のサージタンクと、を備えたエンジンの冷却装置であって、
前記サージタンクの矩形状の長辺方向一端側には、前記冷却水系側からの冷却水が流入する流入部と、
前記サージタンク内の冷却水を前記冷却水系へ流出する排出部と、前記流入部から流入する冷却水を略直線状に流す流入路を形成すると共に、前記矩形状の長手方向他端側近傍まで延在し、該近傍にて前記サージタンク内に冷却水が流通する隔壁とを有したことを特徴とするエンジンの冷却装置。
【請求項2】
前記隔壁は、前記サージタンク内部の第1補強リブによって形成されていることを特徴とする請求項1記載のエンジンの冷却装置。
【請求項3】
前記サージタンク内には、前記流入路から流入した冷却水を前記流出部に略直線状に導く前記サージタンクの第2補強リブによって形成された主流出路と、主流出路より流路幅を狭くし前記サージタンクの第3補強リブによって形成された副流出路とを備えたことを特徴とする請求項1記載のエンジンの冷却装置。
【請求項4】
前記副流出路に前記サージングタンク内の冷却水位を検出する冷却水位検出センサを配設したことを特徴とする請求項3記載のエンジンの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72359(P2013−72359A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212061(P2011−212061)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland