説明

エンジンカバー

【課題】第1重なり部が上方に隆起する反り形状をなしていても、第1分体および第2分体をエンジン側部材に容易に取り付けることができ、かつ、第1分体と第2分体とを安定して一体化できるエンジンカバーを提供すること。
【解決手段】固定状態においては第1分体1の第1重なり部20が第2分体5の第2重なり部60の下方に重ねられ、非固定状態においては第1分体1の少なくとも第1重なり部20が上方に隆起する反り形状をなすエンジンカバーの第1重なり部20に、差し込み端部21を設ける。差し込み端部21は大きく突出しているため、第1重なり部20は第2重なり部60の下方に差し込み易い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジン側部材の上面を覆うエンジンカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンルームにはエンジン側部材が配設されている。エンジン側部材は、エンジンやシリンダヘッドカバーなどの部材が組み付けられ一体化されてなる。エンジン側部材の上面は、一般に、エンジンカバーで覆われる。エンジンカバーは、エンジン側部材を覆ってエンジンルームの意匠性を高めるとともに、エンジンが外界に放出する騒音を遮断したり減衰したりする。エンジンカバーは、エンジン側部材の形状やエンジンルームの形状等に応じて種々の形状に設計される。ところで、例えばエンジンルームにタワーバーを配設する場合などには、エンジンカバーを複数の分体で構成する場合がある(例えば、特許文献1参照)。エンジンカバーをエンジン側部材に容易に脱着できるようにするためである。
【0003】
この種のエンジンカバーにおいては、隣接する分体の端部同士を、突き合わせるかまたは上下方向に重ね合わせるのが一般的である。隣接する分体同士の一体感を向上させ、意匠性に優れたエンジンカバーを得るためには、隣接する分体の端部同士を上下方向に重ね合わせるのが良いと考えられる。以下、下方に重ねられる側の分体を第1分体と呼び、上方に重ねられる側の分体を第2分体と呼ぶ。第1分体のなかで第2分体に重ねられる部分を第1重なり部と呼び、第2分体のなかで第1分体に重ねられる部分を第2重なり部と呼ぶ。
【0004】
ところで、分体の形状によっては、成形時などに一方の分体の一部または全体に反りが生じる場合がある。第1分体に反りが生じた場合、特に、第1重なり部が上方向に隆起する反りが生じた場合には、第2重なり部と第1重なり部とが上下方向に干渉する。この場合には、第1重なり部と第2重なり部とを重ね合わせることができず、第1分体と第2分体とをエンジン側部材に取り付けられない場合や、第1分体と第2分体とをエンジン側部材に取り付ける作業が非常に困難になる場合がある。また、第1分体と第2分体とをエンジン側部材に取り付けたとしても、第1重なり部と第2重なり部の一部または全体を重ね合わせることができず、第1分体と第2分体とを安定して一体化できない場合がある。この場合には、エンジンカバーの意匠性が著しく悪化するとともに、エンジン駆動時や走行時に生じる振動によって第1重なり部と第2重なり部とが互いにばたついて、騒音が生じる可能性もある。したがって、第1重なり部が上方に隆起する反り形状をなしていても、第1分体および第2分体をエンジン側部材に容易に取り付けることができ、かつ、第1分体と第2分体とを安定して一体化できるエンジンカバーが求められている。
【特許文献1】特開2008−144751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、第1重なり部が上方に隆起する反り形状をなしていても、第1分体および第2分体をエンジン側部材に容易に取り付けることができ、かつ、第1分体と第2分体とを安定して一体化できるエンジンカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のエンジンカバーは、
複数の分体からなり、自動車のエンジン側部材の上面を覆うエンジンカバーであって、
該分体の一つである第1分体は、該エンジン側部材に固定される第1固定部を持つ第1カバー本体と、該第1カバー本体の一端部である第1端部に一体化され該第1端部に沿って延びるとともに該第1カバー本体の外周側に向けて突出する第1重なり部と、を持ち、
該分体の他の一つである第2分体は、該エンジン側部材に固定される第2固定部を持つ第2カバー本体と、該第2カバー本体の一端部である第2端部に一体化され該第2端部に沿って延びるとともに該第2カバー本体の外周側に向けて突出する第2重なり部と、を持ち、
該第1分体と該第2分体とが該エンジン側部材に固定された固定状態において、該第1重なり部は該第2重なり部の下方に重ねられ、
該第1分体と該第2分体とが該エンジン側部材に固定されていない非固定状態において、該第1分体の該第1重なり部は、上方に隆起する反り形状をなし、
該第1重なり部は、その延び方向の2端部の間に配置され、該2端部の突出長さよりも突出長さの長い差し込み端部を持つことを特徴とする。
【0007】
本発明のエンジンカバーは、下記の(1)または(2)を備えるのが好ましく、(1)および(2)を備えるのがより好ましい。
【0008】
(1)前記差し込み端部の少なくとも一部は、前記2端部の中央に配置されている。
【0009】
(2)前記第1分体は、前記第1カバー本体の前記第1端部に一体化されている第1係合部を持ち、
前記第2分体は、前記第2カバー本体の前記2端部に一体化されている第2係合部を持ち、
該第1係合部は、前記差し込み端部の先端よりも前記第1カバー本体側に配置され、
該第2係合部は、被覆部と、該被覆部よりも下方に配置され該被覆部よりも前記第2カバー本体の外方に突出している脚部と、を持ち、
前記固定状態において、該第1係合部は該被覆部と該脚部との間に介挿される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエンジンカバーにおける第1分体の少なくとも第1重なり部は、非固定状態(第1分体および第2分体がエンジン側部材に固定されていない状態)において上方に隆起する反り形状(以下、単に反り形状と呼ぶ)をなす。このため、非固定状態においては、第1分体の第1重なり部と第2分体の第2重なり部とは、互いに上下方向に干渉する。しかし、本発明のエンジンカバーにおける第1重なり部は差し込み端部を持つため、第1分体と第2分体とをエンジン側部材に容易に取り付けることができる。これは以下の理由による。
【0011】
第1分体と第2分体とをエンジン側部材に取り付ける際には、先ず、一方の分体をエンジン側部材に固定する。次いで、第1分体の第1重なり部と第2分体の第2重なり部とを重ねつつ、他方の分体をエンジン側部材に固定する。詳しくは、第2重なり部で第1重なり部を上方から押さえつつ、第1分体をエンジン側部材に固定する。第1重なり部は、結果的に第2重なり部の下方に差し込まれる。第1重なり部は、第1重なり部の延び方向の2端部よりも突出長さの長い差し込み端部を持つ。差し込み端部は、第1重なり部の延び方向(以下、単に延び方向と呼ぶ)の2端部の間に配置されている。換言すると、延び方向における差し込み端部の長さは、延び方向における第1重なり部の長さよりも短い。そして差し込み端部は、第1重なり部の端部を避けた位置に配置される。このため、このとき先ず差し込み端部が第2重なり部の下方に差し込まれる。
【0012】
第2重なり部の下方に差し込まれた差し込み端部は、第2重なり部によって下方に押圧され、第2重なり部の下面に沿った形状に変形する。第1重なり部の一般部もまた、差し込み端部の変形に伴って変形する。このため第1重なり部は、第2重なり部の下方に容易に重ねられる。よって、本発明のエンジンカバーは、非固定状態において第1重なり部が上方に隆起する反り形状をなすにも関わらず、第1分体と第2分体とをエンジン側部材に容易に取り付けることができる。
【0013】
なお、第1重なり部は第1カバー本体の第1端部に沿って延びるため、延び方向に長手方向を向けた長尺形状をなす場合が多い。このため、差し込み端部を第1重なり部の2端部の間に配置することで、差し込み端部が第2重なり部から受ける押圧力を第1重なり部全体に容易に伝達させることができる。
【0014】
また、第1重なり部の隆起高さは延び方向の2端部においては比較的短く、中央部においては比較的長くなることが多い。このため、第1重なり部の2端部の間に配置された差し込み端部は、第2重なり部から大きな押圧力(単位面積あたりの押圧力)を受ける。よって、差し込み端部を第1重なり部の延び方向の2端部の間に配置することで、第1重なり部を第2重なり部の下方に差し込む際に、第1重なり部を効率良く変形させることができ、第1分体および第2分体をエンジン側部材に容易に取り付けることができる。
【0015】
さらに、非固定状態において反り形状をなす第1重なり部は、固定状態において第2重なり部に弾接する。換言すると、本発明のエンジンカバーにおける第1分体と第2分体との接合部分は、固定状態において弾接する。このため、本発明のエンジンカバーによると、第1分体と第2分体とを安定して一体化できる。よって、エンジン駆動時や走行時に生じる振動が本発明のエンジンカバーに伝達しても、第1重なり部と第2重なり部とは互いにばたつき難い。よって本発明のエンジンカバーは、意匠性に優れ、かつ、エンジン駆動時や走行時に生じる騒音を抑制できる。
【0016】
なお、本発明のエンジンカバーにおいては、第1重なり部の反り形状は、意図せず生じたものであっても良いし、意図的に形成したものであっても良い。
【0017】
上記(1)を備える本発明のエンジンカバーでは、差し込み端部の少なくとも一部が第1重なり部の延び方向の2端部の中央に配置されている。このため、差し込み端部を第2重なり部の下方に差し込んだ際に差し込み端部が受ける下方への押圧力は、第1重なり部の延び方向全体に伝わる。このため、上記(1)を備える本発明のエンジンカバーによると、固定状態において、第1重なり部を第2重なり部の下面に沿った形状に変形させ易い。よって、第1分体と第2分体とをエンジン側部材にさらに容易に取り付けることができる。
【0018】
上記(2)を備える本発明のエンジンカバーでは、固定状態において、第1重なり部および第2重なり部とが重ね合わされることに加えて、第1係合部と第2係合部とが係合する。詳しくは、第1係合部と第2係合部とは、第2係合部の被覆部と脚部との間に第1係合部が介挿されることで係合する。このため上記(2)を備える本発明のエンジンカバーによると、第1分体と第2分体とをより安定して一体化できる。また、第1係合部は差し込み端部の先端よりも第1カバー本体側に配置され、第2係合部の脚部は被覆部よりも第2カバー本体の外方に突出している。このため、第1係合部は被覆部と脚部との間に挿入し易い。さらに、例えば、第2分体で第1分体をすくい上げつつ第2分体と第1分体とをエンジン側部材に取り付ける場合には、第1係合部を脚部によって支えつつ被覆部と脚部との間に導くことができる。このため、上記(2)を備える本発明のエンジンカバーは、第1分体と第2分体とを容易に組み付けることができ、第1分体と第2分体とをエンジン側部材にさらに容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のエンジンカバーにおいて、第1分体と第2分体とは、それぞれ、エンジンに直接固定されても良いし、エンジン以外のエンジン側部材(例えばシリンダヘッドカバーなど)に固定されても良い。また、本発明のエンジンカバーは、第1分体および第2分体のみからなっても良いし、第1分体および第2分体以外の分体をさらに備えても良い。さらに、第1カバー本体および第2カバー本体は、平板状や湾曲板状等の種々の形状にできる。
【0020】
本発明のエンジンカバーにおいては、第1分体と第2分体とのどちらを先にエンジン側部材に取り付けても良いが、第1分体を先に取り付け、第2分体を後に取り付ける方が、第1分体と第2分体とをより容易にエンジン側部材に取り付けることができる。第2分体をエンジン側部材に取り付ける際に、差し込み端部を第2重なり部で押さえ込むことで、差し込み端部を第2重なり部の下側に容易に差し込むことができるためである。
【実施例】
【0021】
以下、本発明のエンジンカバーを図面を基に説明する。
【0022】
(実施例1)
実施例1のエンジンカバーは上記(1)〜(2)を備える。非固定状態における実施例1のエンジンカバーを模式的に表す上面図を図1に示す。固定状態における実施例1のエンジンカバーを模式的に表す上面図を図2に示す。非固定状態における第1重なり部および第2重なり部を模式的に表す説明図を図3に示す。固定状態における第1重なり部および第2重なり部を図2中A−A位置で切断した様子を模式的に表す要部拡大断面図を図4に示す。固定状態における第1係合部および第2係合部を図2中A−A位置で切断した様子を模式的に表す要部拡大断面図を図5に示す。実施例1のエンジンカバーにおける第1分体および第2分体をエンジン側部材に取り付けている様子を模式的に表す説明図を図6〜図7に示す。以下、実施例1において、前、後、左、右とは図1および図2に示す前、後、左、右を指し、上、下とは図4および図5に示す上、下を指す。
【0023】
図1に示すように、実施例1のエンジンカバーは、第1分体1と第2分体5とからなる。第1分体1は、第1カバー本体10と、第1重なり部20と、2つの第1係合部30とを持つ。第1分体1の第1カバー本体10および第1重なり部20は、上方に隆起する反り形状をなしている。第1カバー本体10および第1重なり部20の隆起高さは、第1重なり部20の延び方向の2端部(第1重なり部20の左右端部)から第1重なり部20の中央部に向けて徐々に高くなっている。
【0024】
第1カバー本体10は略板状をなし、第1固定部を持つ。第1固定部は3つの貫通孔(11、12、13)からなる。第1カバー本体10の前端部は、本発明における第1端部に相当する。
【0025】
第1重なり部20は、第1カバー本体10の前端部(第1端部)に一体化されている。第1重なり部20は、左右方向に延び、前方に突出している。第1重なり部20は、差し込み端部21を持つ。差し込み端部21は、第1重なり部20の左右方向の略中央部分からなる。差し込み端部21の突出長さは、第1重なり部20のなかで差し込み端部21以外の部分(第1重なり部20の一般部22と呼ぶ)の突出長さよりも長い。差し込み端部21の端部の延び方向(左右方向)長さは、第1重なり部20の延び方向長さの70%である。
【0026】
2つの第1係合部30は、第1カバー本体10の前端部における右端部と左端部とに一体化されている。各第1係合部30は前方に突出している。詳しくは、図5に示すように、第1係合部30は第1カバー本体10の前端部から前方に延びる略短冊状をなす。また、第1係合部30は、差し込み端部21の先端よりも第1カバー本体10側に配置されている。図1に示すように、2つの第1係合部30は第1重なり部20と一体化されている。
【0027】
第2分体5は、第2カバー本体50と、第2重なり部60と、2つの第2係合部70とを持つ。第2分体5の第2カバー本体50および第2重なり部60は、略平板状をなしている。
【0028】
第2カバー本体50は略板状をなし、第2固定部を持つ。第2固定部は2つの貫通孔(51、52)からなる。第2カバー本体50の後端部は、本発明における第2端部に相当する。
【0029】
第2重なり部60は、第2カバー本体50の後端部(第2端部)に一体化されている。第2重なり部60は、左右方向に延び、後方に突出している。第2重なり部60の突出長さは略一定である。
【0030】
第2係合部70は、第2カバー本体50の第2端部における右端部と左端部とに一体化されている。図1に示すように、2つの第2係合部70と第2重なり部60ともまた一体化されている。図5に示すように、第2係合部70は、脚部71と、被覆部73と、2つのクッション体77とを持つ。被覆部73は、第2カバー本体50の後端部から後方に延びる略短冊状をなし、第2重なり部60と略面一である。脚部71は第2カバー本体50の後端部から下方に延びるとともに屈曲して後方に延びる略L字の短冊状をなす。脚部71は被覆部73の下方に配置されている。脚部71は、被覆部73よりも第2カバー本体50の外方に突出している。クッション体77は、EPDMからなりスポンジ状をなす。クッション体77は、被覆部73の下面と脚部71の上面とにそれぞれ一体化されている。固定状態において、クッション体77は、第1係合部30に弾接する。換言すると、第1係合部30と第2係合部70とは、被覆部73と第1係合部30との間、および第1係合部30と脚部71との間にそれぞれクッション体77が介在した状態で係合する。
【0031】
エンジン側部材(図略)のなかで、第1分体1の3つの貫通孔(第1固定部)に対応する位置には、エンジン側第1固定部(図略)が形成されている。また、エンジン側部材のなかで、第2分体5の2つの貫通孔(第2固定部)に対応する位置には、エンジン側第2固定部(図略)が形成されている。エンジン側第1固定部は、3つのネジ受孔からなる。エンジン側第2固定部は、2つのネジ受孔からなる。
【0032】
上述したように、第1分体1の第1カバー本体10および第1重なり部20は、上方に隆起する反り形状をなしている。したがって、非固定状態において、第1分体1と第2分体5とを単に突き合わせると、図3に示すように第1重なり部20と第2重なり部60とが上下方向に干渉する。
【0033】
実施例1のエンジンカバーをエンジン側部材に取り付ける方法を以下に説明する。
【0034】
先ず、第1分体1をエンジン側部材に仮固定する。詳しくは、先ず第1分体1をエンジン側部材の上部にあてがう。上述したように、エンジン側部材には第1固定部の3つの貫通孔11、12、13(第1固定部)に対応する位置に、3つのネジ受孔からなるエンジン側第1固定部が形成されている。このため、第1分体1をエンジン側部材の上部にあてがい、第1分体1の3つの貫通孔にそれぞれ図略のボルトを差し込むと、各ボルトの先端が各ネジ受孔に挿入され、第1分体3がエンジン側部材に仮固定される。このとき、第1分体1は、第1重なり部20を前方に向けている。
【0035】
次いで、第2分体5をエンジン側部材に仮固定する。詳しくは、図6に示すように、第2重なり部60を後方に向け第2分体5を傾けつつ、第2重なり部60を第1重なり部20の上方から第1重なり部20に押し付ける。このとき、第1重なり部20は第2重なり部60の下方に差し込まれる。
【0036】
すると、図7に示すように、第2重なり部60によって差し込み端部21が下方に押圧されて変形し、第1重なり部20全体もまた変形する。このため、第1重なり部20が第2重なり部60の下方に重ねられる(図4)。
【0037】
この状態で、図7に示すように、第2分体5と第1分体1とが平行になる方向に、第2分体5を揺動させる。すると、第1係合部30が第2係合部70の脚部71に載る。この状態で、第2分体5をさらに揺動させつつ第2分体5を後方(第1分体1側)に移動させると、第1係合部30は、脚部71によって支えられつつ、被覆部73と脚部71との間に導かれる。第1係合部30は被覆部73と脚部71との間に介挿され、第1係合部30と第2係合部70とが係合する(図5)。
【0038】
次いで、第2固定部の各貫通孔にそれぞれ図略のボルトを差し込み、各ボルトの先端をエンジン側第2固定部の各ネジ受孔に挿入する。ボルトをエンジン側第2固定部のネジ受孔に螺合させると、第2分体5がエンジン側部材に固定される。
【0039】
そして、第1分体1の2つの貫通孔にそれぞれ差し込んでいたボルト(図略)を増し締めし、第1分体1をエンジン側部材に固定(本固定)する。以上の工程によって、実施例1のエンジンカバーにおける第1分体1および第2分体5は、エンジン側部材に取り付けられる(図2)。
【0040】
実施例1のエンジンカバーにおける第1重なり部20は、非固定状態において上方に隆起する反り形状をなしている。しかし実施例1のエンジンカバーにおける第1重なり部20は、差し込み端部21を持つため、第2重なり部60の下方に差し込み易い。詳しくは、差し込み端部21の延び方向長さ(左右方向長さ)は第1重なり部20の延び方向長さよりも短い。また、差し込み端部21の突出長さ(前後方向長さ)は第1重なり部20の一般部22の突出長さ(前後方向長さ)よりも長い。さらに、差し込み端部21は第1重なり部20の延び方向の略中央部に配置されている。このため、差し込み端部21が第2重なり部60から受ける単位面積あたりの押圧力は大きい。よって、差し込み端部21は下方に向けて容易に変形する。このため、差し込み端部21を第2重なり部60の下方に差し込む作業は容易である。また、第1重なり部20の一般部22は、差し込み端部21を起点として下方に向けて変形する。このため、第1重なり部20は全体として略平板状に変形しつつ第2重なり部60の下方に差し込まれる。よって、実施例1のエンジンカバーによると、第1重なり部20を第2重なり部60の下方に容易に差し込むことができ、第1分体1および第2分体5をエンジン側部材に容易に取り付けることができる。
【0041】
また、第1重なり部20は弾性変形した状態で第2重なり部60の下方に重ねられているため、第1重なり部20の上面と第2重なり部60の下面とは弾接する。このため、第1分体1と第2分体5とは容易かつ安定して一体化できる。このため実施例1のエンジンカバーは意匠性に優れる。また第1分体1および第2分体5が安定して一体化することで、実施例1のエンジンカバーは騒音の発生を抑制できる。すなわち、エンジン駆動時や走行時に生じた振動が第1重なり部20および第2重なり部60に伝達しても、第1重なり部20および第2重なり部60は互いにばたつき難い。
【0042】
さらに、予め第1分体1をエンジン側部材に取り付け、次いで第2分体2をエンジン側部材に取り付けることで、第1重なり部20を第2重なり部60で押さえ込みつつ、差し込み端部21を第2重なり部60の下方に差し込むことができる。このことによっても、実施例1のエンジンカバーにおける第1重なり部20は、第2重なり部60の下方に容易に重ねることができる。
【0043】
さらに、実施例1のエンジンカバーは第1重なり部20と第2重なり部60とが弾接して一体化するだけではなく、第1係合部30と第2係合部70とが係合することでも一体化している。このため、実施例1のエンジンカバーにおける第1分体1および第2分体5は、より安定して一体化される。
【0044】
また、実施例1のエンジンカバーにおける第2係合部70はクッション体77を持つ。このため実施例1のエンジンカバーにおける第1係合部30および第2係合部70は、エンジンの駆動時や走行時に振動が生じてもばたつき難い。このことによっても、実施例1のエンジンカバーは騒音の発生をさらに抑制できる。なお、クッション体77は第1係合部30に設けても良いし、第1係合部30と第2係合部70との両方に設けても良い。
【0045】
実施例1のエンジンカバーは先ず第1分体1を仮固定し次いで第2分体5を固定したが、本発明のエンジンカバーは先ず第2分体5を仮固定し次いで第1分体1を固定しても良い。また、実施例1のエンジンカバーは、第1分体1を一旦仮固定してから本固定したが、仮固定工程は省いても良い。すなわち、第1分体1と第2分体5との一方を先ず本固定し、次いで他方を本固定しても良い。
【0046】
実施例1のエンジンカバーにおける第1係合部30と第1重なり部20とは一体化された連続形状をなし、第2係合部70と第2重なり部60ともまた一体化された連続形状をなす。しかし本発明のエンジンカバーにおいては、第1係合部30と第1重なり部20とは別体(非連続形状)であっても良く、第2係合部70と第2重なり部60ともまた別体(非連続形状)であっても良い。
【0047】
差し込み端部21の端部の延び方向(実施例1では左右方向)長さは、第1重なり部20の延び方向長さの70%以下であることが好ましい。差し込み端部21の端部の延び方向長さが第1重なり部20の延び方向の長さの70%以下であれば、第1重なり部20を第2重なり部60の下方に差し込む際に差し込み端部21に作用する単位面積あたりの押圧力を十分に大きくできる。このため、第1重なり部20を第2重なり部60の下方に容易に差し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】非固定状態における実施例1のエンジンカバーを模式的に表す上面図である。
【図2】固定状態における実施例1のエンジンカバーを模式的に表す上面図である。
【図3】非固定状態における実施例1のエンジンカバーの第1重なり部および第2重なり部を模式的に表す説明図である。
【図4】固定状態における実施例1のエンジンカバーの第1重なり部および第2重なり部を図2中A−A位置で切断した様子を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図5】固定状態における実施例1のエンジンカバーの第1係合部および第2係合部を図2中A−A位置で切断した様子を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図6】実施例1のエンジンカバーにおける第1分体および第2分体をエンジン側部材に取り付けている様子を模式的に表す説明図である。
【図7】実施例1のエンジンカバーにおける第1分体および第2分体をエンジン側部材に取り付けている様子を模式的に表す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1:第1分体 5:第2分体 10:第1カバー本体
20:第1重なり部 30:第1係合部 21:差し込み端部
50:第2カバー本体 60:第2重なり部 70:第2係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分体からなり、自動車のエンジン側部材の上面を覆うエンジンカバーであって、
該分体の一つである第1分体は、該エンジン側部材に固定される第1固定部を持つ第1カバー本体と、該第1カバー本体の一端部である第1端部に一体化され該第1端部に沿って延びるとともに該第1カバー本体の外周側に向けて突出する第1重なり部と、を持ち、
該分体の他の一つである第2分体は、該エンジン側部材に固定される第2固定部を持つ第2カバー本体と、該第2カバー本体の一端部である第2端部に一体化され該第2端部に沿って延びるとともに該第2カバー本体の外周側に向けて突出する第2重なり部と、を持ち、
該第1分体と該第2分体とが該エンジン側部材に固定された固定状態において、該第1重なり部は該第2重なり部の下方に重ねられ、
該第1分体と該第2分体とが該エンジン側部材に固定されていない非固定状態において、該第1分体の該第1重なり部は、上方に隆起する反り形状をなし、
該第1重なり部は、その延び方向の2端部の間に配置され、該2端部の突出長さよりも突出長さの長い差し込み端部を持つことを特徴とするエンジンカバー。
【請求項2】
前記差し込み端部の少なくとも一部は、前記2端部の中央に配置されている請求項1に記載のエンジンカバー。
【請求項3】
前記第1分体は、前記第1カバー本体の前記第1端部に一体化されている第1係合部を持ち、
前記第2分体は、前記第2カバー本体の前記2端部に一体化されている第2係合部を持ち、
該第1係合部は、前記差し込み端部の先端よりも前記第1カバー本体側に配置され、
該第2係合部は、被覆部と、該被覆部よりも下方に配置され該被覆部よりも前記第2カバー本体の外方に突出している脚部と、を持ち、
前記固定状態において、該第1係合部は該被覆部と該脚部との間に介挿される請求項1または請求項2に記載のエンジンカバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−84555(P2010−84555A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252214(P2008−252214)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)