説明

エンジンブロツク加工装置

【目的】 本発明は、シリンダヘッド一体型のエンジンブロックでも全てのチャンバー容積を高精度で計測し、この計測結果得た所望の容積値との偏差量に基づいて各チャンバーを所定値に加工することを目的とする。
【構成】 エンジンブロックにおける各チャンバーの開口部を気密にする気密手段と、気密にされた各チャンバーの閉空間内に音圧を印加する音圧発生手段30と、各チャンバー内の音圧を検出する音圧検出手段27a,27bと、その音圧検出信号からヘルムホルツ共鳴周波数を検出するヘルムホルツ共鳴検出手段49,53,54と、検出された共鳴周波数に基づいて各チャンバーの容積を演算し、所望の容積値との偏差量を求める偏差量演算手段50と、求められた偏差量に従って各チャンバーを所要量切削する切削手段3,4とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジンブロックの燃焼室容積(ピストンが上死点時の容積を以下チャンバー容積という)を計測し所望の容積値との偏差量に基づいて修正加工することにより各チャンバー容積を精度よく所定値に加工することが可能なエンジンブロック加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンブロックにおけるチャンバー容積は、圧縮比等エンジンの性能に直接関連する重要な精度管理項目である。従来、このチャンバー容積に関する精度管理は、エンジンブロックをボーリング加工によりシリンダ内径を決定した後、抜取り検査において燃焼室内部に水等の液体を注入し、この注入量の値に基づいて切削機械及びエンジンブロック鋳造型の調整を行っていた。しかし、抜取り検査では部品の個体寸法ばらつきによりチャンバー容積の精度管理が不十分であり、また検査のための時間がかかり全数検査等の検査数を増やすことが困難である。さらに、ボーリング加工精度に依存する各気筒間のチャンバー容積偏差は、ベアリングキャップ取付け面等の位置を調整しても吸収することが困難である。これは、個体偏差は平均値を調整しても低減できないことによる。
【0003】一方、チャンバー容積の計測に関し、ポリゴン型の回転鏡を用いてレーザビームを測定対象物の上に走査し、その反射光を測定部で読取って測定対象物の面形状を三次元的に計測し、その面形状データから演算により測定対象物の容積を求めるようにしたレーザ式容積測定装置が知られている。しかし、このようなレーザ方式のものは、シリンダヘッド一体型のエンジンブロックでは、チャンバーの奥深い個所からの反射光の読取りが難しくなることと、これに加えて計測ヘッドが大型であることからそのチャンバー容積の計測は困難である。計測ヘッドの小型化は計測精度を劣化させることになるので難しい。また、レーザ方式のものは、極めて高価であり、加工装置に全数組込むのは、コストがかかり過ぎることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のボーリング加工後、抜取り検査を行い、その検査結果に基づいて切削機械等の調整を行うようにしたものでは、部品の個体寸法のばらつきによりチャンバー容積の精度管理が不十分であり、また、ボーリング加工精度に依存する各気筒間のチャンバー容積偏差は、ベアリングキャップ取付け面等の位置を調整しても吸収することが困難であるという問題があった。
【0005】また、チャンバー容積の計測に関してレーザ方式のものでは、シリンダヘッド一体型のエンジンブロックにおけるチャンバー容積の計測は困難であるという問題があった。
【0006】そこで、本発明は、シリンダヘッド一体型のエンジンブロックでも全てのチャンバー容積を高い精度で計測することができ、この計測結果得た所望の容積値との偏差量に基づいて各チャンバーを所定値に加工することが可能なエンジンブロック加工装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために、それぞれ開口された少なくとも2つのチャンバーを有するエンジンブロックにおける当該チャンバーの容積を所定値に加工するエンジンブロック加工装置であって、前記各チャンバーの開口部を気密にする気密手段と、該気密手段で気密にされた前記各チャンバーの閉空間内に音圧を印加する音圧発生手段と、該音圧発生手段で印加された前記各チャンバー内の音圧を検出する音圧検出手段と、該音圧検出手段の検出信号からヘルムホルツ共鳴周波数を検出するヘルムホルツ共鳴検出手段と、該ヘルムホルツ共鳴検出手段で検出されたヘルムホルツ共鳴周波数に基づいて前記各チャンバーの容積を演算し、所望の容積値との偏差量を求める偏差量演算手段と、該偏差量演算手段で求められた偏差量に従って前記各チャンバーを所要量切削する切削手段とを有することを要旨とする。
【0008】
【作用】上記構成において、チャンバー容積の計測に、閉空間内に印加した音圧を検出するという手法に基づくヘルムホルツ共鳴法を用いているため、シリンダヘッド一体型のエンジンブロックでも全てのチャンバーの容積計測が可能となり、さらには気密が不完全でも全てのチャンバーの容積を高い精度で計測することが可能となる。そして、この計測結果得た所望の容積値との偏差量に基づいて各チャンバーが所定値に加工される。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0010】この実施例は、シリンダヘッド一体型のエンジンブロックの加工に適用されている。
【0011】図1ないし図21は、本発明の第1実施例を示す図である。
【0012】まず、図1を用いて装置全体のレイアウトから説明する。
【0013】コンベア10によりエンジンブロック9が後述の台車を介して図中D矢印の方向に一定の速度で移動されるようになっている。エンジンブロック9の流れの上流側から順に、作業者B、恒温槽7、切削手段としての第1の加工部3及び第2の加工部4、作業者Aが配置されている。恒温槽7は所定の区間7aを有し、エンジンブロック9をより長時間恒温槽7内にとどめてエンジンブロック9を恒温槽7の温度と同一にする機能を有している。恒温槽7は、温度管理部6によって所定の温度に温度管理されている。また、恒温槽7の内部には、計測部1とバルブ吸引部2がある。上述の計測部1、バルブ吸引部2、第1の加工部3、第2の加工部4、温度管理部6、コンベア10の各部は制御手段5によって制御されている。
【0014】図2、図3及び図4は、図1中の計測部1の構造を示している。図3は計測部1でのエンジンブロック位置決め機構の詳細図、図4は図3の上面図である。
【0015】図2において、計測ヘッド12は、移動台11に固定されており、上下方向駆動部13により上下方向に移動可能になっている。図3に示すように、エンジンブロック9は台車101の上に載置され、この台車101はコンベア10に付いている爪10cによってコンベア10と共にD矢印方向へ移動する。このとき、台車101は、レール10aに沿ってほぼ一定の軌道を動くようにレールガイド101aが付いている。レール10aは、支柱10bで支えられている。エンジンブロック9は、コンベア10の下方に配置されている位置決め機構15のロケートピン15aがエンジンブロック9のロケート穴15bに挿入されて上昇し、上方から押圧し固定するクランプ機構16により計測ヘッド12と所定の相対位置に位置されるようになっている。エンジンブロック9の下方には気筒の数(本実施例では4気筒)に対応して配置されるバルブ103を吸引するためのバルブ吸引ユニット2aが配置されている。バルブ吸引ユニット2a、位置決め機構15及びロケートピン15aは一体的になっており、これら全体でバルブ吸引部2が構成されている。なお、位置決め機構15によるエンジンブロック9の上昇のタイミングは位置決めセンサ100により決定される。図4に示すように、バルブ吸引部2とコンベア10、レール10a及び支柱10bとは、バルブ吸引部2が上昇したとき、互いに干渉しないような配置になっている。
【0016】図5は、図2中の計測ヘッド12の詳細図である。シャフト20を介して移動台11と固定される密閉用治具17の略中心部には、管18が密閉用治具17を貫通して配設され、また密閉用治具17の外周部には気密手段となるゴムチューブによる気密機構19が配設されている。管18の先端部には、周囲の気流による計測精度の悪化を防止するため、防風機構107が形成されている。気密機構19を上部から押え、気密機構19の形状を所定の形状に制限するための押圧治具21には、シャフト20を滑らかにスライドさせるためのガイド22が配設され、また押圧治具21と移動台11との間には、押圧治具21を上下に移動させるための空圧式の押圧治具駆動機構23が配設されている。気密機構19には、エアー供給管24が接続されている。密閉用治具17及び管18にはそれぞれ音圧検出手段となるマイク27a,27bが配設され、管18には音圧発生手段となる後述の音源が配設されている。
【0017】図6は計測ヘッド12がシリンダボア123に挿入された状態を示している。103はバルブ、124はバルブガイド、125はバルブシート、105はスキッシュエリア、106はベアリングキャップ取付部、102は点火プラグ、104はチャンバーである。
【0018】図7及び図8は、図5中の密閉用治具17と管18とから構成されるヘルムホルツ共鳴器の上面図及び側面断面図である。密閉用治具17及び管の所定の位置にはそれぞれマイク取付け穴26が形成され、マイク27a,27bがそれぞれ挿入され固定されている。また管18の側面には、音源取付け穴25が形成され、音源30が挿入され固定されている。音源30としては、イヤホンタイプの小型のものが用いられている。
【0019】図9は、図7及び図8中のマイク取付け部の拡大図である。密閉用治具17のマイク取付け穴26とマイク27aとの間には、シリコンゴムの防振材28aが圧入され、マイク取付け治具29により固定されている。管18のマイク取付け穴26部の構造もこれとほぼ同じである。
【0020】図10は、図7及び図8中の音源取付け部の拡大図である。音源30と音源取付け穴25との間に、シリコンゴムの防振材28bが挿入され、音源取付け治具31により密閉用治具17に固定されている。30aは音源信号線である。
【0021】図11は、図3中のバルブ吸引ユニット2aの詳細図である。コンベア10の下方に、エンジンのバルブ数と同じ、所定数の、バルブ吸引機構32が配設されている。本実施例のエンジンブロック9では1つの気筒あたり4つのバルブがあるためバルブ吸引機構32は、バルブ吸引ユニット2aの1つ当り4つ配置されている。バルブ吸引機構32は、図1において作業者Bが取付けたバルブ103の端部を、空圧により開閉が可能なチャック機構33により挟み、同じく空圧により図中E矢印方向に吸引可能な引張り機構34によりバルブ103を引張るようになっている。なお点火プラグ102は図1中作業者Bによりエンジンブロック6に配置される。
【0022】図12は、図1中の第1の加工部3の構成を示している。図中上方の加工のための手段は、スキッシュエリア105を切削加工するチャンバー加工用カッター35、このチャンバー加工用カッター35を移動するためのボールねじ式のX軸方向駆動部37a、Z軸方向駆動部36及びZ軸方向駆動部36の背面に配設されたY軸方向駆動部37bで構成されている。また図中下方の台車101の上に置かれたエンジンブロック9の位置決めのための手段は、図3、図4に示した計測部1での位置決めのための手段と同様である。ただし、ここでの位置決めのための手段では、バルブ吸引ユニット2aは必要ないので構成には含まれない。
【0023】図13は、図1中の第2の加工部4の構成を示している。図中上方の加工のための手段は、ベアリングキャップ取付面106を切削加工するエンドミル40、エンドミル40を移動するためのボールねじ式のX軸方向駆動部42a、Y軸方向駆動部42b及びZ軸方向駆動部41で構成されている。図中下方の台車101の上に置かれたエンジンブロック9の位置決めのための手段は、図12の場合と同じである。
【0024】図14は、図1中の制御手段5の構成を示している。CPU部49からの出力信号としては、発振部48への発振ON/OFF及び周波数、振幅の信号、計測結果を取込むA/D変換部51へのトリガ信号、チャンバー104の容積を演算し所望の容積値との偏差量を求める偏差量演算手段としての演算部50への演算開始信号、各部を制御する制御部52への指令信号がある。またCPU部49にはさらに、各手段の動作状況を表示するための表示器65エンジン各機種ごとに基準となるチャンバー104の容積値、共鳴周波数から容積を求めるデータ、容積値から切削量及び部位を決定するためのデータ等を蓄えておくデータマップ66、メモリ67、キーボード68が接続されている。制御部52には、計測部1、バルブ吸引部2、第1の加工部3、第2の加工部4、温度管理部6、コンベア10の各部が接続されている。アンプ59は、発振部48の発振信号を増幅して音源30を駆動する駆動用アンプである。アンプ60は、マイク27a,27bの信号を増幅するためのプリアンプである。2つのアンプ60の信号は所定の帯域幅を有する第1のフィルタ53、第2のフィルタ54にそれぞれ入力され、2つの信号を加算する加算器55を経てA/D変換部51に入力されている。
【0025】次に、上述のように構成されたエンジンブロック加工装置の動作を順に説明する。
【0026】(原理)まず、図15を用いて、本実施例におけるチャンバー容積を計測するためのヘルムホルツ共鳴器の動作原理を説明する。
【0027】空洞45に音響管46(図5の管18に相当)が接続されている。空洞45の容積をV、音響管46の長さをl、音響管46の内部断面積をS、音速をcとすると空洞45によるヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数f1 は f1 =(c/2π)・(S/lV)1/2 (1)
で与えられる。
【0028】一方、音響管46によるヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数f2は、 f2 =c/2l 及びその整数倍の周波数 (2)
で与えられる。以下においては、1次の共振周波数f2 を用いるものとして説明する。1 ,f2 はともに音速cに依存するため、温度によって変化するが、(1),(2)式の比をとることによりcを消去すると

但しK=lS/π2 となり、音速cの変化の影響を受けずに、即ち温度の変化に依存しないで空洞45の容積Vを知ることができる。
【0029】ここでエンジンブロック9のチャンバー104の容積をVとすると、2つの共鳴周波数f1 ,f2 を求めれば、(3)式を用いてチャンバー104の容積Vを求めることができる。しかし(3)式は、理想化された条件下で理論的に導き出されたもので、実際にこの式に従って容積を求めた場合、精度で不足する。そこで例えば(3)式に補正項を加えた V=K(f2 /f1 2 +α (4)
のような式を用いて、f1 ,f2 から容積Vを求める。ここで、(4)式の定数K及び補正項αは、既知の容積の物体を用いた校正により実験的に定め、予め図14のデータマップ66へ入力しておく。
【0030】(全体の手順)図16の製造工程フローを用いてエンジンブロック製造ラインにおける製造工程を説明する。
【0031】本実施例のシリンダヘッドとシリンダが一体に形成されるエンジンブロック9はおおむね、図16における、鋳造工程(47a)、機械加工工程(47b)、修正加工工程(47c)、仕上げ加工工程(47d)の4工程を経て、次工程である組立工程へ送られる。
【0032】鋳造工程(47a)はエンジンブロック9を鋳造する工程である。
【0033】機械加工工程(47b)は鋳造工程を終了したエンジンブロック9の上面、下面、シリンダボア、バルブガイド、バルブシートを切削加工し、またバルブガイド、バルブシートを圧入する工程である。
【0034】修正加工工程(47c)は本実施例に示すように、鋳造工程(47a)での鋳造型の精度不十分、機械加工工程(47b)での加工精度不十分等の要因によりチャンバー104の容積が所定の設計誤差範囲におさまらない場合、チャンバー104内部のスキッシュエリア105及びベアリングキャップ取付部106を追加工(修正加工)することによりチャンバー104の容積を所定の設計誤差範囲内におさめるように修正する工程である。
【0035】仕上げ加工工程(47d)は次工程である組立に必要な所定の部材を全てエンジンブロック9に取付けるための仕上げ加工を行う工程である。
【0036】本実施例では以上の4工程のうち修正加工工程(47c)以外は従来のエンジンブロック製造工程と同一であるので説明を省略し、以下、修正加工工程(47c)に関し説明する。
【0037】図16中、修正加工工程(47c)に記載される手順が図1に示した各手段により実現される。以下、図1を用いて本実施例の修正加工工程(47c)の内容を説明する。
【0038】(バルブ、プラグの取付け)機械加工工程(47b)を終えたエンジンブロック9が、前工程からコンベア10により流れて来る。作業者Bは、エンジンブロック9のチャンバー104を密閉するための点火プラグ102及びバルブ103を取付ける作業を行う。本実施例では作業者Bが行っているが、本作業は専用の機械を用いて行ってもよい。また、後の工程でエンジンブロック9を切削するため、これら点火プラグ102及びバルブ103は実物ではなく同様形状の代用品を用いてもよい。
【0039】(燃焼室ボリューム(容積)測定)エンジンブロック9は、温度管理部6により所定の温度に保たれた恒温槽7の内部を、コンベア10によってD矢印の方向へ移動する。所定の区間7aをエンジンブロック9が通過する間に、エンジンブロック9の温度が恒温槽7内の温度と等しくなるよう所定の区間7aの長さを予め設定する。エンジンブロック9が計測部1の位置に流れてきたら、まず後述の位置決め手順(1)により、エンジンブロック9を計測部1の下方に位置決めする。
【0040】次にエンジンブロック9は、計測部1により各気筒のチャンバー104の容積が計測される。この計測部1によるチャンバー104の容積の計測方法を図3R>3を用いて説明する。前述のようにエンジンブロック9を位置決めした後、バルブ吸引ユニット2aによりチャンバー104の下部の穴を密閉する。なお点火プラグ穴は作業者Bにより点火プラグ102で予め密閉されている。
【0041】ここで、図11を用いて、バルブ吸引ユニット2aの動作手順を説明する。空圧駆動のチャック機構33でバルブ103を掴み、空圧駆動の引張り機構34でバルブ103をE矢印方向に引張る。制御手段5の指令により、上下方向駆動部13により計測ヘッド12を所定の移動量だけシリンダボア123内に下降させる。この移動量を制御手段5が知るには、計測ヘッド12とエンジンブロック9との相対位置が予め既知でなければならず、次のように決定される。
【0042】本実施例の計測部1、第1の加工部2、第2の加工部3の原点位置とロケートピン15aとの相対位置は予め装置の設計上既知である。またエンジンブロック9の加工は全てロケート穴15bの最奥面の位置を基準に行われているため、エンジンブロック9の全ての加工部の座標はロケート穴15bからの相対座標で全て既知である。従って計測ヘッド12とエンジンブロック9との相対位置のずれはロケートピン15aとロケート穴15bとの相対位置に依存することになり、通常この相対位置ずれは極微小であるため無視できる。従って、計測ヘッド12の移動量を制御手段5が知ることができる。
【0043】以降の手順を図5、図6を用いて説明する。密閉用治具17の下面が、前述の手順で既知である上死点または基準位置に降下したところで停止させる。ここで全ての(本実施例では4つ)計測ヘッド12においてエアー供給源(図示せず)からエアー供給管24を経て気密機構19にエアーを送り、気密機構19を膨張させる。さらに空圧駆動の押圧治具駆動機構23により押圧治具21を降下させ、気密機構19を上方より押えることにより、チャンバー104を完全に密閉する。このあと、制御手段5により全てのチャンバー104の容積を計算し求める。この手順を、次の容積計測手順(1)により説明する。
【0044】(容積計測手順(1))チャンバー104の容積の計測手順を図14を用いて具体的に説明する。チャンバー104の密閉が完了すると、CPU部49の信号により、発振部48の発振信号がアンプ59を介し音源30に伝達され音源30が振動する。このときの管18内及びチャンバー104の音圧をマイク27a,27bで検出する。ここで、管18に取付けられたマイク27bでは主に管18内の音圧を検出するため、第1のフィルタ53の特性は、予め前記(2)式で求められる音響管の共鳴周波数f2 付近を通過域とするバンドパスフィルタ特性とする。同様に、密閉用治具17に取付けられたマイク27aでは主にチャンバー104の音圧を検出するため、第2のフィルタ54の特性は、予め前記(1)式で求められる共鳴周波数f1 付近を通過域とするバンドパスフィルタ特性とする。また、音源30の周波数特性及びチャンバー104の容積に依存して発振部48から一定の振幅の正弦波を印加したのではマイク27a,27bでの音圧は周波数依存性を有し、共鳴周波数f1 及びf2 の検出精度を悪化させるため、予め本実施例の構成における音源30の周波数特性を計測しておき、この計測値に従い周波数特性を平坦にするためCPU部49は発振部48への振幅信号を周波数に応じて可変させる機能を有する。マイク27bからの音圧信号はアンプ60、第1のフィルタ53を通した後、加算器55に伝達される。同様にマイク27aからの音圧信号はアンプ60、第2のフィルタ54を通した後、加算器55に伝達される。加算器55ではこれら2つの音圧信号を加算したのち、A/D変換部51によりA/D変換を行ない、演算部50に伝達される。
【0045】CPU部49は、チャンバー104の共鳴周波数f1 及び管18の共鳴周波数f2 の近傍を掃引するよう発振部48に指令を出力しながらアンプ59からの信号と加算器55からの信号とをそれぞれ第1入力(in1)及び第2入力(in2)とするFFT演算を行ない、これら2信号間の振幅伝達関数を求める。この振幅伝達関数に関し、低周波数から数えて2つのピーク周波数を求めこれを共鳴周波数f1 ,f2 として求める。チャンバー104の共鳴周波数がf1 、管18の共鳴周波数がf2 となる。即ち、第1、第2のフィルタ53,54及びCPU部49等により、マイク27a,27bの検出信号からヘルムホルツ共鳴周波数f1 ,f2 を検出するヘルムホルツ共鳴検出手段が構成されている。
【0046】2つの共鳴周波数f1 ,f2 から予めデータマップ66に蓄えておいた、データを参照し、チャンバー104の容積Vを求める。図20はデータマップの一例であり、共鳴周波数f1 と共鳴周波数f2 との入力に対するチャンバー104の容積の出力を求めるマップである。このデータは、既知の体積の物体を用いた実験より作成してメモリに記憶させておく。マップは設定温度により複数用意してもよい。
【0047】なお、(4)式における定数K及びαがほぼ定常的に一定でありさらに既知である場合は、2つの共鳴周波数f1 ,f2 及び予めキーボード68より入力しメモリに記憶しておいた定数K及びαから、(4)式によりチャンバー104の容積Vを求めてもよい。
【0048】また、本実施例ではチャンバー104の共鳴周波数f1 及び管18の共鳴周波数f2 を求める手段として発振部48の周波数を掃引することにより求めているが、同様の機能を得る手段として例えば、白色雑音を音源30に印加してFFT演算を行ってもよいし、音源30及びマイク27a,27bにより信号帰還ループを形成しチャンバー104の容積に依存するヘルムホルツ共鳴原理による自励発振を生じせしめ、この発振周波数を検出することによって求めてもよい。またマイク27a,27bを用いずに音源30に信号帰還を施して自励発振を生じせしめてもよい。
【0049】また、本実施例ではチャンバー104の共鳴周波数f1 及び管18の共鳴周波数f2 をより高精度に検出するため、2つのマイク27a,27bを用いているが、それほど高精度を期待しない場合は、マイクは1つでもよい。
【0050】また本実施例では共鳴周波数の検出に振幅の最大値を使用しているが、信号の位相特性を使用して共鳴周波数を求めてもよい。
【0051】図21は、上述の振幅伝達関数の一例を示している。円F内のピーク周波数はチャンバー104の共鳴周波数f1 であり、円G内のピーク周波数は管18の共鳴周波数f2 である。
【0052】これで、容積計測手順(1)が終了する。
【0053】計測が終了したら制御手段5は、全てのチャンバー104において、バルブ吸引ユニット2aを解除し、また押圧治具21を解除して気密機構19を収縮させ、次いで移動台11及び計測ヘッド12を上昇させ、装置原点に戻す。さらに、後述の位置決め手順(2)に従い、エンジンブロック9はコンベア10によって恒温槽7の外へ流れて行く。
【0054】なお、本実施例では、計測ヘッド12を気筒数と同数個用意して1度に計測を行っているが1つの計測ヘッド12で各気筒を順に計測してもよい。
【0055】(チャンバー加工代計算)制御手段5は、計測部1により計測した各気筒のチャンバー104の容積値より所定の演算を行い、各気筒に関するスキッシュエリア105の加工量及びベアリングキャップ取付部106の加工量を決定する。ここでは加工部位及び加工のための手段の移動軌跡等は、各手段の動作時に制御手段5が演算して求めるため行わず、加工量のみを演算する。
【0056】第1の加工部3及び第2の加工部4に対する加工量のデータを演算する手法に関して図17のフローチャートを用いて説明する。
【0057】前述の容積計測手順(1)により求められて制御手段5のメモリにV1,V2,V3,V4の名前で保存されている4つのチャンバー104の容積を読出す(ステップ71)。4つの容積V1〜V4の中から最大容積を計算し、Vmaxの名前でメモリに保存する(ステップ72)。4つの容積V1〜V4とVmaxとの偏差をおのおの計算してX1,X2,X3,X4の名前でメモリに保存する(ステップ73)。制御手段5のデータマップから予め記憶されたチャンバー104の設計容積のデータVrefをCPU部49に読込む(ステップ74)。次にVrefとVmaxとの偏差Y1を計算し、Y1の名前でメモリに保存する(ステップ75)。これでチャンバー加工代の計算を終る。
【0058】(チャンバー加工)図1において、エンジンブロック9は、コンベア10によって第1の加工部3に流れて行き、後述の位置決め手順(1)に従い、第1の加工部3の下方に位置決めされる。ここで制御手段5からの信号に基づき第1の加工部3によりスキッシュエリア105を所定量加工する。
【0059】本加工の手順を図18のフローチャート、図6及び図12を用いて説明する。
【0060】図12中エンジンブロック9は後述の位置決め手順(1)に従って第1の加工部3の下方に固定されたのち、制御手段5のメモリに記憶されている最大容積からの容積偏差量X1を読込む(ステップ76)。次に、制御手段5は、X1の値から図12におけるX軸駆動部37a、Y軸駆動部37b及びZ軸駆動部36の動作軌跡を演算し、チャンバー加工用カッター35を回転させ対象のスキッシュエリア105を所定量切削加工する(ステップ77,78,79)。切削加工する位置及び切削量はエンジンの形式により異なるため、試作を行い予めデータマップ内に記憶させておく。切削が終了したら制御手段5はX軸駆動部37a、Y軸駆動部37b及びZ軸駆動部36を所定の原点位置に復帰させ、チャンバー加工用カッター35の回転を停止させる(ステップ79)。残りの3つのチャンバー104に対しても最大容積からの容積偏差量X2,X3,X4からX軸駆動部37a、Y軸駆動部37b及びZ軸駆動部36の動作軌跡を演算し同様の切削加工を行う(ステップ80,81,82)。これら一連の切削加工により、1つのエンジンブロック9での各気筒間のチャンバー容積値のバラツキを抑え、全ての気筒の容積は前述のVmaxに等しくなる。このあと、位置決め手順(2)に従い、エンジンブロック9は、コンベア10によって第2の加工部4に流れて行く。これでチャンバー加工が終る。
【0061】(ベアリングキャップ取付面加工)図1において、エンジンブロック9は、コンベア10によって第2の加工部4に流れて行き、後述の位置決め手順(1)に従い、第2の加工部4の下方に位置決めされる。ここで制御手段5からの信号に基づき第2の加工部4によりベアリングキャップ取付部106を所定量加工する。
【0062】本加工の手順を図19のフローチャート、図6及び図13を用いて説明する。
【0063】図13中エンジンブロック9は後述の位置決め手順(1)に従って第2の加工部4の下方に固定された後、制御手段5のメモリに記憶されている偏差Y1の値を読込む(ステップ83)。制御手段5は、Y1の値から図13におけるX軸駆動部42a、Y軸駆動部42b及びZ軸駆動部41の動作軌跡を演算しエンドミル40を回転させ切削対象のベアリングキャップ取付部106を切削加工する(ステップ84,85,86)。切削加工する位置はエンジンの形式により異なるが、本実施例では、図6のベアリングキャップ取付部106の位置であり、8箇所から10箇所の加工が必要である。また切削加工する位置及び切削量はエンジンの形式により異なるため、試作を行い予めデータマップ66内に記憶させておく。切削が終了したら制御手段5はX軸駆動部42a、Y軸駆動部42b及びZ軸駆動部41を所定の原点位置に復帰させ、エンドミル40の回転を停止させる(ステップ87,88)。これらの切削加工を行なうことにより、全ての気筒のチャンバー104の容積は、所定の基準値(本実施例ではVref)を中心とした許容範囲内に収まる。このあと、後述の位置決め手順(2)に従い、エンジンブロック9は、コンベア10によって作業者Aに流れて行く。
【0064】本実施例のようにチャンバー104の容積を設計値(Vref)を中心とする許容誤差範囲内に収める手段として切削加工つまり容積を増大する手段のみを用いるためには、前工程までの(図16中47bまで)ベアリングキャップ取付部106に切削のための余裕をもたせておく必要がある。また、本実施例では加工対象がヘッド−シリンダ一体型エンジンブロックであるため、チャンバー加工工程においてVmaxに統一された全気筒の容積値を設計値Vrefに修正するためにベアリングキャップ取付部106を切削するが、周知のシリンダヘッドとシリンダブロックが別に形成される従来のシリンダヘッドの加工に本実施例を適用するには、シリンダヘッドの高さ方向を修正する部位、例えばガスケットが挿入される部位であるシリンダヘッドとシリンダブロックとの接触面を切削加工すればよい。
【0065】(バルブ、プラグの取り外し)再びエンジンブロック9はコンベア10によって流れて行き、作業者Aによってバルブ103及び点火プラグ102が取外され、後工程に流れて行く。この作業を本実施例では作業者Aが行っているが、本作業は専用の機械を用いて行ってもよい。
【0066】また第1の加工部3及び第2の加工部4の各加工が終了した時点で切削粉を落とし、位置決め精度を向上させるために洗浄が行われる。
【0067】次いで、これまで説明を省略していた各部等にエンジンブロック9を位置決めするための位置決め手順(1)及び各部からエンジンブロック9を解放しコンベア10で次の工程に運搬するための位置決め手順(2)に関して説明する。
【0068】(位置決め手順(1))エンジンブロック9の移動及び位置決めの手順に関し図2〜図4を用いて説明するが、図1に示す、計測部1、第1の加工部3及び第2の加工部4に関しても同様の手順である。
【0069】図2〜図4において、コンベア10は一定の速度で図中左の方向(D矢印方向)に移動している。コンベア10及びレールガイド101aを介してレール10aの上には台車101が配置され、台車101はコンベア10上にある爪10cによってコンベア10と一体となって移動する。台車101が位置決めセンサ100の位置に移動してくると、位置決めセンサ100がこれを検知し、検出信号を制御手段5に送る。ここで制御手段5は以下の一連の作業を位置決め機構15に指令する。まず、位置決めセンサ100が台車101を検出すると、コンベア10を停止させる。このとき、台車101は毎回ほぼ一定位置に停止する。エンジンブロック9は台車101の上に載せられ、コンベア10の下方に配置された位置決め機構15によりロケートピン15aがエンジンブロック9のロケート穴15bに挿入されることにより上昇するため、エンジンブロック9はコンベア10及びレール10aから切放される。次に、上方から押圧し固定するクランプ機構16により計測ヘッド12と所定の相対位置関係が決定される。
【0070】(位置決め手順(2))図3において、位置決め機構15を下降させることにより、ロケートピン15aがロケート穴15bから離れ、エンジンブロック9は台車101と一体となってコンベア10の上に載せられる。さらに、位置決め機構15が下降し初期位置に戻ると、制御手段5はコンベア10を起動する指令を出力する。エンジンブロック9と一体となった台車101は再びコンベア10により図中左の方向に移動する。
【0071】以上が第1実施例の作用の説明であるが、本実施例のようにチャンバー104の容積を容積計測手順(1)のように求める代りに、次に述べる第2実施例により容積計測手順(2)のようにして求めることもできる。
【0072】(チャンバー容積の計測手順(2))図22R>2には、本発明の第2実施例を示す。
【0073】以上説明してきたチャンバー104の容積の計測手順は図22に示すような第2実施例によっても実現することができる。
【0074】図22は、第2実施例における制御手段5の構成を示している。図22と図14との構成上の差異をまず述べる。図22において、点線Hで示す部分以外は図14の構成と同一である。点線H内においてCPU部49からの出力信号は点線H内のカウンター部61への制御信号である。マイク27bからの音圧信号はアンプ60、第1のフィルター53、第1のPLL(Phase LockedLoop)回路62を通った後、加算器55に伝達される。同様にマイク27aからの音圧信号はアンプ60、第2のフィルター54、第2のPLL回路63を通った後、加算器55に伝達される。加算器55でこれら2つの信号を加算したのち、アンプ59に伝達されるため、信号の流れに関するループが形成される。また第1のPLL回路62及び第2のPLL回路63からの出力信号はおのおのカウンター部61に伝達され2つの信号の共鳴周波数f1 及びf2 が演算される。これら周波数信号はCPU部49に伝達される。
【0075】ここでPLL回路とは位相同期回路のことであり、第1のPLL回路62は、予め前記(2)式で求められる管18の共鳴周波数f2 付近でロックするように設定される。同様に、第2のPLL回路63は、予め前記(1)式で求められる共鳴周波数f1 付近をロックするように設定される。2つの共鳴周波数f1 ,f2 から予めデータマップ66に蓄えておいた、データを参照し、チャンバー104の容積Vを求める。データマップ66としては、第1実施例と同様に図20に示したものが用いられる。
【0076】図23及び図24には、本発明の第3実施例を示す。
【0077】本実施例は、音源を密閉用治具側に取付けたものである。
【0078】密閉用治具17と管18の所定の部位には、マイク取付け穴26が形成され、また密閉用治具17には音源取付け穴25が形成されている。そして密閉用治具17側に音源が取付けられるようになっている。本構成は、前記図5(第1実施例)に対し、管18に音源を配置するスペースがないエンジン機種に関し、本発明を適用することができる構成である。
【0079】図25及び図26には、本発明の第4実施例を示す。この実施例は、完成車に適用したものである。点火プラグ穴112のねじ部に第2の管18aをねじ込み、さらに第1実施例等に示した管18を挿入し、エンジン119の点火タイミングをタイミングライト118で計測できるように角度が刻まれているウォータプーリ114に同軸に配置された角度検出器113を組合わせ、完成車で前記第1実施例等と同様の計測ができるようにしたものである。なお、127はエンジンカバー、110は冷却水の通路であるウォータジャケット、108はピストン、109はピストンリング、111はカムである。
【0080】まず角度検出器113をウォータープーリ114に同軸に装着しエンジン119を運転する。点火タイミング検出器120の点火パルス信号はコンピュータ115に取込まれる。そして作業者がタイミングライト118を用いてウォータープーリ114の刻印から現在の点火時期を読取りその数値をコンピュータ115に入力する。コンピュータは点火タイミング検出器120からの信号と作業者が入力した点火時期とから、点火時期0°すなわち第1気筒のピストン108が上死点に位置する時期を知ることができる。このタイミングをもって角度検出器113の連続パルス信号を0°として記憶する。この作業のあとは角度検出器113からの連続パルス信号により、エンジン119の第2から第4気筒の上死点を知ることができる。次にエンジン119を停止させ、十分に時間がたった後計測したい気筒の点火プラグ102を抜取り、第2の管18aの点火プラグ穴112のねじ部にねじ込みさらに管18を第2の管18aの上部に挿入する。本構成において管を2つに分割したのは、管18aを点火プラグ穴112にねじ込む時に、マイク27b及び音源30の信号ケーブルがねじれるのを防止するためである。また本構成ではマイクは1つ用いるが、取付スペースに余裕がある場合は、マイクは2つ用いてもよい。また、不図示のクランクシャフトを回転させ、各気筒を上死点に移動させる手段としてウォータプーリー114の中心穴に挿入するクランクハンドル126を用いる。
【0081】本実施例の効果を簡単に説明する。車両のエンジン各部品は長時間の走行によりシリンダ、バルブシートの摩耗やチャンバー内部へのカーボンの付着等によりチャンバー容積が変化し、そのため新車時のエンジン性能に比べて性能が劣化することが多い。本実施例はこのような問題を解決することが可能である。即ち、本実施例は、主に自動車整備工場等で車両の点検時にエンジン119の各気筒のチャンバー容積を計測し、この計測値に基づいてエンジンの点火時期、燃料噴射タイミング等エンジン特性を最適になるように各気筒ごとに細かいチューニングを行うのに好適である。
【0082】なお本実施例では、恒温槽を用いていないが、さらに高精度が必要であるときは車両を恒温槽に入れて計測してもよい。そして、本実施例では、(イ)車両性能の経時的低下が防止できる。(ロ)従来の空気圧の変化を計測する手法において完全な気密が不可能であるため精度を確保するのが困難であったが、本実施例では不十分な気密でも高精度に計測が可能であるという2つの特有の効果が得られる。
【0083】図27及び図28には、本発明の第5実施例を示す。
【0084】本実施例は、移動台11の端部にマスター計測ヘッド122を配置し、さらにマスターチャンバー121を配置した構成としたものである。マスター計測ヘッド122は計測ヘッド12と全く同一であり、マスターチャンバー121はチャンバー104と同一部材で形成され、形状は設計時の要求精度を管理された形状である。また、両者の位置は計測ヘッド12をシリンダーボア123に挿入したときと同じに装着される。本実施例においては、マスター計測ヘッド及び計測ヘッド12が同一の温度環境に配置されるために、恒温槽を用いなくても高精度に計測を行うことができるという効果を生じる。本実施例におけるチャンバー加工代計算のフローチャートを図28に示す。V1からV4の容積計測と同様にマスターチャンバー121の容積V0を計測する(ステップ89)。そして4つのチャンバー104の容積1〜V4の中から最大容積を計算し、Vmax の名前でメモリに保存する(ステップ72)。容積Vmax に対するV1からV4の容積偏差X1,X2,X3,X4を計算する(ステップ73)。そして、この実施例ではマスターチャンバー121の容積V0が設計容積ゆえに前記図17のVref に 当するので、V0とVmaとの偏差をY1として、これをメモリに保存する(ステップ90)。その他の計測加工などの手順は、第1実施例の場合と同様である。
【0085】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、エンジンブロックにおける各チャンバーの開口部を気密にする気密手段と、この気密手段で気密にされた各チャンバーの閉空間内に音圧を印加する音圧発生手段と、この音圧発生手段で印加された各チャンバー内の音圧を検出する音圧検出手段と、この音圧検出手段の検出信号からヘルムホルツ共鳴周波数を検出するヘルムホルツ共鳴検出手段と、このヘルムホルツ共鳴検出手段で検出されたヘルムホルツ共鳴周波数に基づいて各チャンバーの容積を演算し、所望の容積値との偏差量を求める偏差量演算手段と、この偏差量演算手段で求められた偏差量に従って各チャンバーを所要量切削する切削手段とを具備させたため、シリンダヘッド一体型のエンジンブロックでも全てのチャンバーの容積計測が可能となり、さらには気密が不完全でも全てのチャンバーの容積を高い精度で計測することができる。そしてこの計測結果得た所望の容積値との偏差量に基づいて各チャンバーを所定値に加工することができる。したがって各気筒間偏差を高精度に吸収することが可能となってエンジン性能を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエンジンブロック加工装置の第1実施例における装置全体のレイアウトを示す図である。
【図2】図1における計測部の構成を示す図である。
【図3】図2の計測部に対するエンジンブロックの位置決め機構を示す図である。
【図4】図3の上面図である。
【図5】図2の計測部における計測ヘッドを詳細に示す斜視図である。
【図6】図5の計測ヘッドがシリンダーボアに挿入された状態を示す図である。
【図7】図5の計測ヘッドにおけるヘルムホルツ共鳴器の上面図である。
【図8】図7のヘルムホルツ共鳴器の側面断面図である。
【図9】図7のヘルムホルツ共鳴器におけるマイク取付け部を拡大して示す図である。
【図10】図7のヘルムホルツ共鳴器における音源取付け部を拡大して示す図である。
【図11】図3の位置決め機構におけるバルブ吸引ユニットの構成を示す図である。
【図12】図1中の第1の加工部の構成を示す図である。
【図13】図1中の第2の加工部の構成を示す図である。
【図14】図1中の制御手段の構成を示すブロック図である。
【図15】ヘルムホルツ共鳴器の動作原理を説明するための図である。
【図16】エンジンブロックの製造工程を示すフローチャートである。
【図17】チャンバーの加工量を演算する手法のフローチャートである。
【図18】第1の加工部の動作を制御するための制御フローチャートである。
【図19】第2の加工部の動作を制御するための制御フローチャートである。
【図20】図14中のデータマップにおいてヘルムホルツ共鳴周波数に基づいてチャンバーの容積を求めるマップ内容の一例を示す図である。
【図21】図14の制御手段において求められる2つの共鳴周波数を求めるための振幅伝達関数の一例を示す図である。
【図22】本発明の第2実施例における制御手段を示すブロック図である。
【図23】本発明の第3実施例におけるヘルムホルツ共鳴器の上面図である。
【図24】図23の側面断面図である。
【図25】本発明の第4実施例における要部縦断面図である。
【図26】第4実施例における計測制御系を示す系統図である。
【図27】本発明の第5実施例における計測部の構成を示す図である。
【図28】第5実施例においてチャンバーの加工量を演算する手法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 計測部
3 第1の加工部
4 第1の加工部とともに切削手段を構成する第2の加工部
9 エンジンブロック
19 気密機構(気密手段)
27a,27b マイク(音圧検出手段)
30 音源(音圧発生手段)
49 第1、第2のフィルタとともにヘルムホルツ共鳴検出手段を構成するCPU部
50 演算部(偏差量演算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 それぞれ開口された少なくとも2つのチャンバーを有するエンジンブロックにおける当該チャンバーの容積を所定値に加工するエンジンブロック加工装置であって、前記各チャンバーの開口部を気密にする気密手段と、該気密手段で気密にされた前記各チャンバーの閉空間内に音圧を印加する音圧発生手段と、該音圧発生手段で印加された前記各チャンバー内の音圧を検出する音圧検出手段と、該音圧検出手段の検出信号からヘルムホルツ共鳴周波数を検出するヘルムホルツ共鳴検出手段と、該ヘルムホルツ共鳴検出手段で検出されたヘルムホルツ共鳴周波数に基づいて前記各チャンバーの容積を演算し、所望の容積値との偏差量を求める偏差量演算手段と、該偏差量演算手段で求められた偏差量に従って前記各チャンバーを所要量切削する切削手段とを有することを特徴とするエンジンブロック加工装置。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図15】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図21】
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【図23】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図24】
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【図18】
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【図20】
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【図22】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開平5−87610
【公開日】平成5年(1993)4月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−249646
【出願日】平成3年(1991)9月27日
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)