説明

エンジン冷却装置

【課題】本発明は、ラジエータの冷却効率を向上させつつ、走行風や冷却風をラジエータ後方のエンジンに行き届きやすくしたエンジン冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明のエンジン冷却装置は、ラジエータ5の外形形状を、プロペラファン16のファン外周端が描く円形の回転軌跡αの形状とほぼ同じ形状とした。同構成により、ラジエータ5は、冷却むらやエンジン8へ向かう風(走行風や冷却風)の通風損失をきたす、プロペラファン16の回転軌跡αから外側へ張り出すラジエータ部分の多くが無くなるので、ラジエータ5の冷却効率は高まるうえ、走行風やプロペラファン16からの冷却風はエンジン8へ行き届きやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータとエンジンとの間に、プロペラファンで構成される冷却用ファンを配置したエンジン冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなど車両の多くは、車体のフロントグリルなどに形成されている空気取入口にラジエータを設け、当該ラジエータの後方にエンジンを据え付け、ラジエータとエンジンとの間に冷却用ファンを配置したエンジン冷却構造が採用される(特許文献1を参照)。同構造にて走行中は、空気取入口から取り込まれる走行風、すなわちラジエータを経てエンジンへ至る走行風で、エンジンを冷却し、走行風が不足するなどエンジン温度の上昇があるときは、冷却用ファンの運転によって取り込まれる冷却風を用いて、同様にエンジンを冷却する。
【0003】
一般にこうした冷却用ファンには、ラジエータの後面にプロペラを向き合わせて配置し、同プロペラをエンジンの出力にて駆動(クランク出力駆動式)、電動機にて駆動(電動機駆動式)するプロペラファンが用いられる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−100656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ラジエータは、風の流れる方向に遮るように配置される。このため、走行風やプロペラファンの冷却風により、エンジンを効果的に冷却するためには、できるだけラジエータの影響を避けて、多くの走行風や冷却風をエンジンへ行き届かせることが求められる。
ところが、ラジエータは、通常、プラペラファンが回転したときの外周端が描く円形の回転軌跡から外側へ張り出るラジエータ部分の面積がかなり多い矩形形状の製品が用いられる。このため、ラジエータが風に与える損失は多く、走行風や冷却風がエンジンに行き届きにくい。しかも、プロペラファンの回転軌跡から外側へ張り出るラジエータ部分は、走行風や冷却風の流速が、プロペラファンと対向するラジエータの中央部分より低下するので、ラジエータの冷却むらが生じやすく、ラジエータの冷却効率にも影響を与えている。
【0006】
このため、エンジン周囲(エンジンルームを含む)は、エンジンの発生する熱(エンジン熱)が滞留しやすい傾向がある。しかも、ラジエータの冷却性能が十分に発揮できない傾向にある。特にエンジン熱が滞留しやすくなると、エンジンに付いている補機のシール部材などには、エンジン熱に耐える高い耐熱性の部品を採用するなど、別途、滞留する熱に対する多くの手段を講じることが求められる。
そこで、本発明の目的は、ラジエータの冷却効率を向上させつつ、走行風や冷却風をラジエータ後方のエンジンに行き届きやすくしたエンジン冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、ラジエータの外形形状を、冷却用ファンをなすプロペラファンのファン外周端が描く円形の回転軌跡の形状とほぼ同じ形状とした。
同構成によると、走行風やプロペラファンの冷却風は、プロペラファンの回転軌跡とほぼ同じ外形のラジエータを通り、エンジンへ導かれる。すなわち、ラジエータは、冷却むらやエンジンへ向かう風(走行風や冷却風)の通風損失をきたすプロペラファンの回転軌跡から外側へ張り出すラジエータ部分が無くなるから、ラジエータの冷却効率は高まり、走行風やプロペラファンからの冷却風はエンジンへ行き届きやすくなる。
【0008】
請求項2の発明は、上記目的に加え、インタークーラが付いたラジエータでも、走行風やプロペラファンの冷却風で効果的にエンジンが冷却されるよう、ラジエータの前面あるいは後面にインタークーラを有するときは、インタークーラの外形形状をラジエータの外形形状にならう形状とし、インタークーラも、できるだけ走行風や冷却風の気流の流れに影響を与えずにすむようにした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、プロペラファンの回転軌跡とほぼ同じ外形のラジエータの採用により、ラジエータは、冷却むらやエンジンへ向かう風(走行風や冷却風)の通風損失をきたす、プロペラファンの回転軌跡から外側へ張り出すラジエータ部分の多くが無くなる。
これにより、ラジエータの各部には、ほとんど流速の高い風が通過するから、ラジエータの冷却効率を高めることができる。しかも、ラジエータは、プロペラファンの外側へ張り出すラジエータ部分が無くなるに伴い、通風に係る損失が低減するから、ラジエータを通過する走行風や冷却風を、できるだけ流速や流量が損なわれずにエンジンへ向かわせることができる。
【0010】
それ故、同発明により、ラジエータの冷却効率を向上させつつ、走行風や冷却風をラジエータ後方のエンジンへ行き届きやすくでき、エンジンの熱的負担を軽減することができる。
請求項2の発明によれば、インタークーラが付いたラジエータでも、十分にエンジンへ走行風や冷却風を行き届かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態のエンジン冷却装置を示す斜視図。
【図2】同エンジン冷却装置の側断面図。
【図3】図2中のA−A線に沿うラジエータの正面図。
【図4】本発明の第2の実施形態の要部を示すそれぞれ異なるラジエータの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図1ないし図3に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は車両であるところの例えばキャブオーバ形トラックのエンジン冷却装置の全体を示していて、図2は同装置の断面を示し、図3は同装置の要部を示している。
まず、トラックの基本的な構造を概略的に説明すると、図1中1は、車両前部に有するキャブ(図示しない)の最前部に形成されているフロントグリルを示している。フロントグリル1には、空気取入口2が形成されていて、車両最前部から走行風が導入されるようにしてある。この空気取入口2からキャブ下部(図示しない)に渡る部位にはエンジンルーム3が形成されている。
【0013】
このエンジンルーム3の前部となる空気取入口2の内側の地点には、ラジエータ5が設置されている。ラジエータ5は、エンジン冷却水を冷却する熱交換器で、ここでは例えば前面に空冷式のインタークーラ6が組み付けた構造が用いてある。
このラジエータ5の後方の地点には、エンジン、例えば多気筒のレシプロディーゼルエンジン8(以下、単にエンジン8という)が据え付けられている。エンジン8は、エンジンルーム3の大部分を占めるように据え付けられている。
【0014】
同エンジン8は、周知のようにピストン(図示しない)を収めたシリンダブロック9、動弁系(図示しない)や吸・排気側のマニホールド10(排気側しか図示せず)などが付いたシリンダヘッド11、オイルパン12、燃料噴射装置(図示しない)などから構成される。このエンジン8の冷却系統を構成する冷却水路が、ラジエータホース(いずれも図示しない)を介して上記ラジエータ5と接続してある。またエンジン8はターボ過給機(図示しない)が装着されていて、同ターボ過給機とエンジン8の吸気入口(図示しない)とをむすぶ吸気通路(図示しない)の途中に上記インタークーラ6が介装してある。
なお、エンジン8の出力部は、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャ(いずれも図示しない)を介して、車両後部の走行輪(後輪:図示しない)に連結され、走行に必要な駆動力が走行輪に伝達される構造になっている。
【0015】
ラジエータ5とエンジン8の前部との間には冷却用ファン15が設けられている。詳しくは冷却用ファン15には、複数翼を放射状に配置したプロペラ17を有したプロペラファン16が用いてある。このプロペラファン16が、プロペラ17の入口側をラジエータ5の後面と向き合わせて、ラジエータ5の後面側に組み付けてある。さらに述べると、ラジエータ5の後面のプロペラ17は、周知のようにエンジンのクランク出力や電動機(図示しない)などを駆動源として駆動される構造となっていて、プロペラ17の駆動に伴い、車両前方から冷却風を取り込み、プロペラ17の出口側から後方のエンジン8へ送風されるようにしてある。ここでは、エンジン8のクランク出力でプロペラ17が駆動される構造が用いてある。
【0016】
つまり、車両は、走行風やプロペラファン16の運転で取り込まれる冷却風により、ラジエータ5やインタークーラ6が冷却され、さらに当該ラジエータ5やインタークーラ6を通過した走行風や冷却風により、エンジン8やエンジン8の周囲やエンジンルーム3が冷却されるようにしている。つまり、エンジン冷却装置19を構成している。
【0017】
このエンジン冷却装置19をなすラジエータ5には、ラジエータ5の冷却効率を高めたり、後方のエンジン8へ走行風や冷却風を行き届きやすくする工夫が施されている。
同工夫は、図1〜図3(図2のA−A線から見た後面図)に示されるようにラジエータ5の外形形状を、プロペラファン16が回転したときのプロペラ外周端(本願のファン外周端に相当)が描く円形の回転軌跡α(図3中に一点鎖線で図示)とほぼ同じ形状にしたことにある。
【0018】
ここでは、図1および図3に示されるようにラジエータ5の外形形状(全体)は、円形の回転軌跡αにならう形状、例えば多角形、具体的には八角形状で形成した。この形状により、従来の矩形形状のラジエータと比べると、ラジエータ5からは、冷却むらやエンジン8へ向かう風(走行風や冷却風)の通風抵抗(損失)をきたす要因となる、回転軌跡αから外側へ張り出た多くのラジエータ部分が無くなる。このラジエータ5により、走行風やプロペラファン16で生成される冷却風の気流は、そのままラジエータ5の全体(ほとんどの部位)を直線状に通過し、そのまま後方のエンジン8へ向かう。なお、ラジエータ5には、一般的な冷却水が流通する通路に多数毎の縦向きフィンを取着した熱交換構造が用いてある。
【0019】
ラジエータ5の外周部には、プロペラ17の外周端を囲むように筒形のファンシュラウド18が形成されていて、走行風や冷却風が効果的にエンジン8へ導けるようにしている。
またインタークーラ6の外形形状も、ラジエータ5の外形にならう形状、ここではラジエータ5の八角形状にならう多角形状に形成されていて、インタークーラ6も、ラジエータ5と同様、できるだけ走行風や冷却風の気流に影響を与えずない外形にしている。
【0020】
こうした車両によると、走行中の多くはプロペラファン16を運転せず、その代わり、フロントグリル1の空気取入口2から取り込まれた走行風を冷却風として用いられる。すなわち、空気取入口2から取り込まれた冷却風は、インタークーラ6、ラジエータ5に導かれ、同インタークーラ6、ラジエータ5と熱交換した後、エンジン8やエンジンルーム3へ送り込まれる。これにより、走行風で、インタークーラ6、ラジエータ5、エンジン8やエンジンルーム3が冷却される。
【0021】
このとき、ラジエータ5の外形は、プロペラ17の円形な回転軌跡αとほぼ同じ形状に形成してあるから、走行風は、プロペラファン16の回転軌跡αとほぼ同じ外形のラジエータ5を、そのまま直線状に通り、ファンシュラウド18、プロペラ17を経て、そのままエンジン8へ導かれる。
ここで、ラジエータ5は、プロペラファン16の回転軌跡αから外側へ張り出すラジエータ部分を除いた形状であるから、ラジエータ5の各部は流速の高い走行風が通過するだけとなる。
【0022】
そのため、ラジエータ5は、冷却むらが解消され、ラジエータ5の冷却効率は高まる。しかも、エンジン8へ向かう走行風の通風抵抗(損失)をきたす、ラジエータ5の回転軌跡αから外側へ張り出すラジエータ部分はかなり無くなるから、取り込まれた走行風は、できるだけ流速や流量が損なわれずに、エンジン8へ向かう。
【0023】
また、冷却性能の不足により、プロペラファン16が運転して、プロペラ17の回転で冷却風を取り入れるときも、ラジエータ5の各部を流速の高い冷却風が通り、そのまま後方のエンジン8へ導かれるから、同様に、ラジエータ5は冷却効率が高まる。しかも、プロペラファン16によって取り込まれた冷却風は、同様に、できるだけ流速や流量が損なわれずに、エンジン8へ向かう。
【0024】
したがって、ラジエータ5の冷却効率を向上させつつ、冷却に必要な風(走行風、冷却風)をラジエータ後方のエンジン8へ行き届きやすくできる。これにより、エンジン8の熱的負担は軽減でき、エンジン8の各部における負担が軽減できる。
特にインタークーラ6がラジエータ5に付いている場合、インタークーラ6の外形形状をラジエータ5の外形にならった形状にすると、インタークーラ6についても、できるだけ走行風や冷却風の気流の流れに影響を与えずにすみ、インタークーラ6が付いたラジエータ5でも、十分にエンジン8へ走行風や冷却風を行き届かせることができる。
【0025】
本発明は、上述した第1の実施形態に限定されるものではなく、図4に示される第2の実施形態にしても構わない。
すなわち、第2の実施形態は、ラジエータ5の外形を八角形状以外で、プロペラ16の回転軌跡αとほぼ同じ外形にしたものである。具体的には図4(a)は、ラジエータ5の外形をプロペラファン16の円形な回転軌跡αにならう円形形状とし、図4(b),(c)は、プロペラファン16の円形な回転軌跡αにならうそれぞれ異なる異形な多角形形状としたものである。
このようなラジエータ5の外形形状でも、第1の実施形態と同様の効果を奏する。但し、第2の実施形態において第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付してその説明を省略した。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば上述の実施形態はトラックに本発明を適用したが、これに限らず、他の乗用車などの車両のエンジン冷却装置に本発明を適用しても構わない。
【符号の説明】
【0027】
5 ラジエータ
6 インタークーラ
8 エンジン
16 プロペラファン
17 プロペラ
19 エンジン冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行風が導入される地点にラジエータを設け、同ラジエータの後方にエンジンを設置し、前記ラジエータと前記エンジンとの間に、前記ラジエータの後面と向き合うようにプロペラファンを配置させたエンジン冷却装置であって、
前記ラジエータの外形形状は、前記プロペラファンが回転したときのファン外周端が描く円形の回転軌跡の形状とほぼ同じ形状としてなる
ことを特徴とするエンジン冷却装置。
【請求項2】
前記ラジエータは、前面あるいは後面にインタークーラを有し、
前記インタークーラの外形形状が、前記ラジエータの外形形状にならう形状としてある
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−67720(P2012−67720A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215185(P2010−215185)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)