説明

エンジン

【課題】冷却水タンク内の冷却水が沸騰して、膨張したときに、水蒸気の出口を確実に確保して、冷却水タンク上面に設けた冷却水の補給口から水蒸気と沸騰水となった冷却水とが外部に突然飛び出すことを防止することを課題とする。
【解決手段】シリンダ又はクランクケース上方に冷却水タンク1を配置するエンジンにおいて、前記冷却水タンク1の上面に冷却水の補給口体2を設け、該補給口体2に水用通路4と水蒸気用通路3とを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式のエンジンに関し、特にそのシリンダ又はクランクケース上方に配置する冷却水タンクに設ける冷却水の補給口部分の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水冷式のエンジンにおいては、シリンダの周囲にウォータジャケットを配設するとともに、シリンダの上方に冷却水タンクを配設し、該冷却水タンクとウォータジャケットを連通させて、エンジン作動時にウォータジャケット内の冷却水が温められると上昇して冷却水タンク内に入り、それよりも冷えた冷却水タンク内の水がウォータジャケット内に入り循環してシリンダを冷却するようにしていた。そして、冷却水タンクの上部には冷却水の補給口を設け、該補給口を介して冷却水を充填するとともに、冷却水タンク内と外気とを連通させて、冷却水の温度上昇により体積が増加しても許容できるようにしていた(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−250388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の水冷式のエンジンおいては、冷却水タンク内の冷却水が沸騰すると、冷却水が膨張して水面が補給口に至るとともに、沸騰により発生する気泡と水蒸気と体積膨張とによる水面上昇により補給口が塞がれて、冷却水タンク内の圧力が高くなり、突然、沸騰水と水蒸気が補給口から飛び出すという問題があった。また、図8に示すように、冷却水タンク61の上面に設ける開口部に補給口体62を設け、該補給口体62の上部に補給口61aを設け、下部には出口孔63を設け、該補給口61aと出口孔63が平面視で重複しないように配置して、沸騰したときに直接沸騰水が補給口からでないようにしていた。そして更に、補給口体62の上部の一側面に連通口64を設けて、冷却水が沸騰したときには膨張分の圧を逃がすとともに水蒸気を排出するように構成していたものもある。しかし、この場合も、沸騰すると気泡が水面上発生して体積膨張により水面が上昇して連通口64を塞いでしまい、これにより冷却水タンク61内部の圧力が上昇し、一気に沸騰水と水蒸気とが補給口61aから飛び出すという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、シリンダ又はクランクケース上方に冷却水タンクを配置するエンジンにおいて、前記冷却水タンクの上面に冷却水の補給口体を設け、該補給口体に水用通路と水蒸気用通路とを形成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記水蒸気用通路の出口の上端よりも下方に冷却水のオーバーフロー通路を設けたものである。
【0007】
請求項3においては、前記補給口体を筒状に構成し、前記水蒸気用通路を補給口体の上部周囲に設けたものである。
【0008】
請求項4においては、前記補給口体の上部周囲の水蒸気用通路の出口部分に、下向きの壁部を形成したものである。
【0009】
請求項5においては、シリンダ又はクランクケース上方に冷却水タンクを配置するエンジンにおいて、前記冷却水タンクの上面に冷却水の補給口体を設け、該補給口体の周囲下面にシール取付用凹部を形成し、該シール取付用凹部とオーバーフロー通路との間に連通溝を形成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、シリンダ又はクランクケース上方に冷却水タンクを配置するエンジンにおいて、前記冷却水タンクの上面に冷却水の補給口体を設け、該補給口体に水用通路と水蒸気用通路とを形成したことから、沸騰水と水蒸気の通路とが別々となり、冷却水タンクの内の冷却水が沸騰して、冷却水が膨張したときに、沸騰水と水蒸気の通路とが補給口から外部に一気に飛び出すことを防止することができる。また、冷却水タンク内に補給口体から冷却水を補給するときに、一気に冷却水を補給しても、水蒸気用通路によりエア抜きをして、冷却水をスムースに補給することができる。
【0012】
請求項2においては、前記水蒸気用通路の出口の上端よりも下方に冷却水のオーバーフロー通路を設けたことから、冷却水が膨張して補給口から溢れ出るときに、オーバーフロー通路へ流れて、水蒸気用通路の出口を塞ぐことがないので、補給口からの突然の沸騰水の飛び出しを防止することができる。また、該オーバーフロー通路により沸騰水を所望の方向へ排出することができる。
【0013】
請求項3においては、前記補給口体を筒状に構成し、前記水蒸気用通路を補給口体の上部周囲に設けたことから、水蒸気用通路の入口部分を大きくできる。そのため、冷却水タンク内の冷却水が沸騰して膨張した場合やエンジン本体がいずれかの方向に傾いた場合などでも、冷却水で入口部分を塞ぐことなく、水蒸気を排出するための通路を確実に確保することができる。
【0014】
請求項4においては、前記補給口体の上部周囲の水蒸気用通路の出口部分に、下向きの壁部を形成したことから、壁部により水蒸気の吹き出しを下方に曲げた後、水蒸気を出口から排出することができるので、水蒸気が補給口から一気に飛び出すことを防止することができる。また、壁部の内側に水蒸気や気泡の溜まりを構成することができ、発生した気泡の固まりを大きくして、小さな気泡が水蒸気用通路の出口部分に滞留することを防止することができる。
【0015】
請求項5においては、シリンダ又はクランクケース上方に冷却水タンクを配置するエンジンにおいて、前記冷却水タンクの上面に冷却水の補給口体を設け、該補給口体の周囲下面にシール取付用凹部を形成し、該シール取付用凹部とオーバーフロー通路との間に連通溝を形成したことから、シール取付用凹部に溜まる水を連通溝から外部に排出可することができ、この際、オーバーフロー通路に合わせて水を所望の方向に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る補給口体の側面図、図2は同じく補給口体の側面断面図、図3は上部体の斜視図、図4は同じく底面図、図5は下部体の斜視図、図6は環状体の斜視図、図7はエンジンの側面図である。
【0017】
本実施例のエンジン50は水冷式のディーゼルエンジンであり、図7に示すように、該エンジン50のシリンダ51又はクランクケース52上方に冷却水タンク1を配置している。そして、冷却水タンク1とシリンダ51の周囲に配置した冷却水ジャケットとを連通することにより、冷却水を冷却水タンク1と冷却水ジャケットとの間を循環させて冷却するようにしている。
【0018】
図1及び図2に示すように、前記冷却水タンク1の上面の最も高い位置に開口部1aを設け、該開口部1aに補給口体2を取り付けている。該補給口体2は上面略中央に開口した補給口11aと、該補給口に繋がる水蒸気用通路3と水用通路4とを有する上部体10と、上部体10の水用通路4に気泡が下方から直接入ることを防止する下部体20と、上部体10と下部体20の周囲に配置して側方から気泡が入ることを防止する環状体30とから構成して、冷却水が沸騰したときに水蒸気や気泡が直接補給口11aに入ることがなく、気泡により補給口11aを埋めて、沸騰水と水蒸気が突然飛び出すことがないようにしている。
【0019】
そして、前記補給口体2においては、上部体10に備える水用通路4と水蒸気用通路3とを後述のごとく形成して、沸騰水と水蒸気の通路を別々とすることで、冷却水タンクの内の冷却水が沸騰して、膨張したときに、沸騰水と水蒸気とが補給口11aから外部に一気に飛び出すことを防止している。さらに、冷却水タンク1内に補給口体2から冷却水を補給するときに、一気に冷却水を補給しても、水蒸気用通路3によりエア抜きをして、冷却水をスムースに補給することができるようにしている。
【0020】
以下、補給口体2の上部体10、下部体20、環状体30について詳細に説明する。
【0021】
図2、図3に示すように、上部体10は支持部11と円筒状部12とから構成し、支持部11を平面視略四角形状に構成してその中央より若干一側に片寄って補給口11aを設けている。そして、補給口11aの周囲から下方に向かって円筒状部12を突出するように設けている。支持部11の外周囲には水平方向に延設した縁部13を構成し、該縁部13の適宜箇所(本実施例では四隅)に孔13aを設け、開口部1aに円筒状部12を上方から挿入した状態で各孔13aを冷却水タンク1に設けた孔に合わせて、これらの孔13aにボルト5を挿入して螺装することで、支持部11、即ち上部体10を冷却水タンク1に締結固定するようにしている。前記縁部13の内側には外周に沿って上方に立ち上げる土手部11dを形成し、該土手部11dの一部を切り欠いて後述するオーバーフロー通路14としている。
【0022】
また、図2、図4に示すように、支持部11の裏面周囲は断面視階段形状に構成することで、支持部11の内側に冷却水タンク1上面よりも上方に位置するように二段の凹部11b・11cを形成している。そして、該凹部11b・11cと後述する円筒状部12の孔12aと環状体30上部との間に空間を形成して水蒸気用通路3としている。このようにして水蒸気用通路3を冷却水タンク1の開口部1aの上方周囲に設けることにより、水蒸気用通路3の入口部分3aを大きくして、冷却水タンク1内の冷却水が沸騰して膨張した場合やエンジン本体がいずれかの方向に傾いた場合などでも、冷却水で入口部分3aを塞ぐことがないようにすることで、水蒸気を排出するための通路を確実に確保できるようにしている。
【0023】
前記円筒状部12は、中央上部の開口を補給口11aとして、該補給口11a周囲より下方に突出した形状とし、その下部を冷却水タンク1内に配置するようにしている。円筒状部12の側面には上下方向に長いスリット状の孔12aを円周方向に所定間隔ごとに設けている。該円筒状部12の孔12aは前記水蒸気用通路3の出口と水用通路の出入口を兼ねるものであり、前記水蒸気用通路3を経た水蒸気を外部に排出できるようにしている。該水蒸気用通路3は補給口11a周囲に配置していることから、エンジン本体がどの方向に傾いて配設されても、傾斜上手側の一部は常に開口された状態となり、冷却水タンク1内外が連通して、沸騰時に沸騰水が突然に飛び出すことがないようになっている。また、円筒状部12の下端は底板12cとして閉じ、該底板12cに形成したメスネジ部15に後述するネジ26を螺装するためのネジ孔を上下方向に穿設している。
【0024】
円筒状部12の上部周囲における支持部11の補給口11a外周には下向きの壁部12bを形成している。該壁部12bの下端は前記凹部11bよりも高い位置とし、前記水蒸気用通路3の出口部分3bを構成している。こうして、支持部11下面に沿って水蒸気用通路3を流れて中央部に至る水蒸気を一旦下方に曲げた後、孔12aを通過して補給口11aから排出するようにして、水蒸気が補給口11aから一気に飛び出すことを防止している。さらに、該壁部12bと土手部11dの間(水蒸気用通路3側)に形成される凹部11cには水蒸気や気泡の溜まりを構成できるようにして、発生した気泡の固まりを大きくすることで、小さな気泡が水蒸気用通路3や補給口11aに滞留することを防止できるようにしている。
【0025】
また、支持部11上面には補給口11aから外側の前記土手部11dの切欠に向かって一段低い溝を形成し、該溝を冷却水のオーバーフロー通路14としている。該オーバーフロー通路14の底面は水蒸気用通路3の出口となる円筒状部12の孔12aの上端よりも下方に配置して、冷却水が膨張して孔12aから溢れ出るときに、オーバーフロー通路14へ流れて、水蒸気用通路3の出口を塞ぐことがないようしている。こうして、水蒸気の出口を常に確保して、突然の沸騰水の飛び出しを防止している。また、該オーバーフロー通路14により沸騰水を所望の方向へ排出できるようにしている。つまり、シリンダ51の上方に配置される冷却水タンク1から溢れる水が、下方のエンジン50の電気系統や吸気部等に至り故障の原因とならないように、水に濡れても影響のない方向へ沸騰水を排出するようにオーバーフロー通路14を位置させて、補給口体2を冷却水タンク1に取り付けている。
【0026】
さらに、図4に示すように、前記上部体10の周囲に設けられた縁部13の下面には全周に渡ってシール取付用凹部13bが上方に凹んで形成している。さらに、シール取付用凹部13bには取付時において、外部と連通するための連通溝13cを形成して、前記オーバーフロー通路14と同一直線上に配置している。つまり、オーバーフロー通路14の延長上の縁部13下面に連通溝13cを形成している。このように、シール取付用凹部13bとオーバーフロー通路14との間に連通溝13cを形成することで、シール取付用凹部13bに溜まる水を連通溝13cから外部に排出可能とし、この際、オーバーフロー通路14に合わせた同方向の所望の方向に水を排出可能としている。
【0027】
また、補給口体2には冷却水の量が容易に分かるようにフロート16を一体的に取り付けている。フロート16は円柱状の浮体17と該浮体17を支持するための棒体18から構成し、該フロート16の浮体17を支持する棒体18を上部体10の支持部11に昇降自在に支持している。フロート16の浮体17は水より比重の小さい合成樹脂や中空体や発泡体などで構成して、冷却水タンク1内において、水面の高さ位置に応じて昇降し、棒体18の先端部(上端)の位置で水面の高さ(冷却水タンク内の水の容量)を確認できるようにしている。本実施例では、フロート16の浮体17は下部体20の下側方に配置し、平面視で該下部体20と浮体17が一部重複するように配置している。
【0028】
こうして、冷却水を冷却水タンク1内に充填するとその量に比例してフロート16は上昇し、満杯に近づくと浮体17の上面が下部体20の外周下面に衝突し、浮体17の上昇は停止する。さらに冷却水を充填し続けると、補給口11aから水面を認識することができ、適量で補給をやめる。このとき、浮体17を支持する棒体18は上昇を停止したままの状態として、補給口体2、即ち、冷却水タンク1上面から不要に上昇することがないようにしている。つまり、水面の上昇に伴って浮体17が上昇しても、棒体18を必要以上の高さには上昇しないようにして、突出した棒体18に引っかけたり、エンジン50を筐体内に配置した場合などでは、その他の機器と干渉したり邪魔になったりすることがないようにしている。また、このようにフロート16を補給口体2と一体的に構成することで、組み立てを簡単に行うことができるようにしている。
【0029】
また、図2、図5に示すように、前記下部体20は円盤状の基部21と支持板22・23とから構成し、該基部21の上面にその中心で交差するように配置した支持板22と支持板23とを放射状に立設している。但し、支持板の枚数は限定するものではない。基部21の周囲には斜め上方に傾く斜面を有する縁部24を構成して皿状とし、該縁部24の半径が環状体30の半径よりも大きく開口部1aの半径よりも小さくなるように構成している。こうして、基部21の周囲下面を前記フロート16のストッパーとする一方、該基部21の周囲下面により沸騰時に発生する冷却水内の気泡を周囲側方へ導くようにして、下部体20上方に構成される水用通路4の入口部分4aに水蒸気や気泡が固まって入ることを防止している。また、上部体10と下部体20と環状体30とを組み立てた後の補給口体2を開口部1aより挿入するときには、前記縁部24の斜面がガイドとなって、殆ど引っ掛かることなく下部体20と環状体30を冷却水タンク1内に挿入して容易に補給口体2を取り付けることができるようになっている。
【0030】
前記支持板22・23の両側端部の上部は階段状に形成し、その段部22a・23aは同一半径で同一高さに構成して、環状体30の底部36を嵌合支持するようにしている。こうして、基部21上面と底部36の間に空間を形成して水用通路4の入口部分4aを構成している。さらに、支持板22と支持板23の空間から底部36の中心側の空間に流通できるようにしている。また、段部22a・23aは環状体30の位置決め部材の役目も果たしている。
【0031】
また、一方の支持板22の長手方向中途部には、ボス25が一体的に成形され、該ボス25を前記上部体10の円筒状部12の底板12cに設けたメスネジ部15のネジ孔に合わせて、これらの孔に下方からネジ26を挿入して、下部体20を上部体10に締結固定するようにしている。なお、ボス25は基部21上の任意位置に設けることも可能であるが、支持板22と一体的に構成することで補強の役目も果たしている。但し、ボス25の数は限定するものではない。
【0032】
図2、図6に示すように、環状体30は上部の枠状部31と、下部の円筒状部32と、枠状部31と円筒状部32の間に水平方向に設ける仕切板33とから構成している。該仕切板33の中央部には前記上部体10に設けた補給口11aと同心状に位置に合わせて開口部33aを設け、該開口部33aの周囲から円筒状部32を下方に向かって突出している。円筒状部32の半径は、上部体10の円筒状部12の半径よりも大きなものとして、両者の間に所定の空間を形成し、該上部体10の円筒状部12に環状体30の円筒状部32を外嵌する構成としている。また、仕切板33の外周囲から若干内側に、周囲に沿って枠状部31を角筒状に立設している。そして、該枠状部31を前記上部体10の外形に合わせた形状として、凹部11c内に挿入できるようにしている。
【0033】
また、前記枠状部31よりも外側の仕切板33の周囲を縁部34として形成し、該縁部34上面と枠状部31外側面に係止板35・35・・・を所定間隔ごとに鉛直方向に設けている。該係止板35の上外側は前記上部体10の支持部11の裏面周囲に形成した階段形状の凹部11b・11cに合わせて形成し、下方より環状体30を上部体10に組み付けるときに、段部35aが前記凹部11bに係止されて位置決めされるとともに、環状体30外周と上部体10内面の間に所定の空間が形成されるようにしている。こうして、環状体30の縁部34と枠状部31と、上部体10の凹部11b・11cとの間に所定のラビリンス状空間を形成して水蒸気用通路3を構成している。なお、枠状部31の上端の高さは前記壁部12bの下端の高さよりも低く設定している。
【0034】
一方、前記円筒状部32の下端から水平方向中央側にリング状の底部36を形成し、該底部36の中心部に開口部36aを設けて、該開口部36aに下部体20を挿入して円筒状部32の底部36を支持板22・23の段部22a・23aで支持するようにしている。そして、該開口部36aと、基部21と底部36の間を水用通路4の入口部分4aとし、環状体30の円筒状部32と上部体10の円筒状部12との間に空間を形成して水用通路4を構成している。
【0035】
そして、上部体10の円筒状部12を環状体30の枠状部31及び円筒状部32に挿入し、環状体30の縁部34の係止板35で上部体10の支持部11を係止するとともに、環状体30の円筒状部32の開口部36aに下部体20を挿入して底部36を支持板22・23で支持し、この状態で下部体20のボス25を上部体10のメスネジ部15に合わせてこれらの孔に下方からネジ26を挿入することで、下部体20を上部体10に締結固定し、これに伴い環状体30を上部体10と下部体20の間で挟持固定できるようにしている。このようにして、補給口体2を上部体10と下部体20と環状体30とから間単に組み立てることができるようにしている。
【0036】
このような構成において、エンジン50を始動する前に冷却水を所定量補給口11aより冷却水タンク1に充填しておく。このとき、冷却水は補給口11aよりスリット状の孔12aを通過して、円筒状部12と環状体30の間、開口部36aと、基部21と底部36の間、所謂、水用通路4を通過して冷却水タンク1内に入ることになる。
【0037】
そして、エンジン50が作動して冷却水が温められて沸騰すると、冷却水の体積が増加して水面が上昇し、補給口11aの高さまで至ると、冷却水はオーバーフロー通路14より機外に排出されることになる。また、冷却水内で沸騰と略同時に発生する気泡は上昇し、このとき下部体20により気泡は水用通路4内に入ることはなく、環状体30の縁部34周囲と開口部1aの間の水蒸気用通路3の入口部分3aから凹部11c内に入る。そして、小さい気泡は合体して大きくなり壁部12bから補給口11aを経て機外に排出されることになる。このとき上部体10の壁部12b下端はオーバーフロー通路14の下面よりも高い位置となっているので、溢れる冷却水が気泡の排出を邪魔することがなく、補給口11aが塞がれることがなく、突発的に沸騰水が補給口11aより飛び出すこともなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例に係る補給口体の側面図。
【図2】同じく補給口体の側面断面図。
【図3】上部体の斜視図。
【図4】同じく底面図。
【図5】下部体の斜視図。
【図6】環状体の斜視図。
【図7】エンジンの側面図。
【図8】従来の補給口体の側面断面図。
【符号の説明】
【0039】
1 冷却水タンク
2 補給口体
3 水蒸気用通路
4 水用通路
12b 壁部
13b シール取付用凹部
13c 連通溝
14 オーバーフロー通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ又はクランクケース上方に冷却水タンクを配置するエンジンにおいて、前記冷却水タンクの上面に冷却水の補給口体を設け、該補給口体に水用通路と水蒸気用通路とを形成したことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記水蒸気用通路の出口の上端よりも下方に冷却水のオーバーフロー通路を設けたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記補給口体を筒状に構成し、前記水蒸気用通路を補給口体の上部周囲に設けたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記補給口体の上部周囲の水蒸気用通路の出口部分に、下向きの壁部を形成したことを特徴とする請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
シリンダ又はクランクケース上方に冷却水タンクを配置するエンジンにおいて、前記冷却水タンクの上面に冷却水の補給口体を設け、該補給口体の周囲下面にシール取付用凹部を形成し、該シール取付用凹部とオーバーフロー通路との間に連通溝を形成したことを特徴とするエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−29206(P2006−29206A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208971(P2004−208971)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)