説明

エンジン

【課題】上下方向にほぼ沿って配置されたクランクシャフトの上部を支持するメタルベアリングを良好に潤滑可能なエンジンを提供する。
【解決手段】回転中心軸が上下方向にほぼ沿って配置されたクランクシャフト10と、クランクシャフトを収容するクランクケース30,40と、クランクケースの上部に設けられ、クランクシャフトの上部を支持するメタルベアリング32と、クランクケース内の下部に設けられ、クランクシャフトと連動してほぼ水平に配置された回転軸回りに回転するガバナ機構70とを有するエンジンを、ガバナ機構の一部に設けられ、クランクケースの下部に貯留されたオイルを上方へかき上げる羽根部80と、クランクケースの上部に設けられ、羽根部がかき上げたオイルの一部をメタルベアリングの摺動部に導入するオイル通路34とを有し、羽根部からオイル通路の入口までオイルが通過する経路は、クランクシャフトのウェブ部13,15が通過する領域を避けて配置される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトが上下方向にほぼ沿って配置されるエンジンであって、クランクシャフトの上部を支持するメタルベアリングを良好に潤滑可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば芝刈機、小型耕運機、高圧洗浄機などに用いられる汎用エンジンには、クランクシャフトの回転中心軸を上下方向にほぼ沿って配置したいわゆるV軸(縦軸)のものがある。
このようなクランクシャフトの上端部を回転可能に支持するベアリングは、一般にクランクケース内に飛散するミスト状のオイルによって潤滑される。
【0003】
このようなV軸の汎用エンジンに関する従来技術として、例えば特許文献1(図3等)には、動弁系の潤滑を良好に行なうことを目的として、調速用の遠心ガバナの回転盤の一部に羽根車を形成してオイルを飛散させるとともに、上部ベアリングの近傍に、オイルのミストをベアリングに供給する通路を設けることが記載されている。
特許文献1に記載された技術においては、羽根車と上部ベアリング近傍の通路との間は、クランクシャフトのウェブ部によって遮られており、上部ベアリングには、オイルはミストとして供給されるものと認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−131733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えばエンジンの冷間始動直後のようにオイルが低温である場合には、オイルの粘度が高いためミスト状に飛散しにくく、上部のベアリングの潤滑を良好に行なうことが困難であり、潤滑不良による焼き付きなどが懸念される。
特に、コスト低減のためにアルミニウム合金系のクランクケース自体を機械加工して、直接メタルベアリングとして用いる場合には、別体の軸受を設ける場合などに対して、潤滑条件をより改善することが要求される。
本発明の課題は、上下方向にほぼ沿って配置されたクランクシャフトの上部を支持するメタルベアリングを良好に潤滑可能なエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、回転中心軸が上下方向にほぼ沿って配置されたクランクシャフトと、前記クランクシャフトを収容するクランクケースと、前記クランクケースの上部に設けられ、前記クランクシャフトの上部を支持するメタルベアリングと、前記クランクケース内の下部に設けられ、前記クランクシャフトと連動してほぼ水平に配置された回転軸回りに回転するガバナ機構とを有するエンジンであって、前記ガバナ機構の一部に設けられ、前記クランクケースの下部に貯留されたオイルを上方へかき上げる羽根部と、前記クランクケースの上部に設けられ、前記羽根部がかき上げたオイルの一部を前記メタルベアリングの摺動部に導入するオイル通路とを有し、前記羽根部から前記オイル通路の入口までオイルが通過する経路は、前記クランクシャフトのウェブ部が通過する領域を避けて配置されることを特徴とするエンジンである。
これによれば、羽根部がかき上げたオイルがクランクシャフトのカウンタウェイト、クランクアーム等からなるウェブ部によって遮られることなく直接オイル通路の入口に入るため、オイルの粘度が高くミストが形成されにくい低温時であっても、クランクシャフトの上部を支持するメタルベアリングを良好に潤滑することができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記羽根部の端縁部に隣接して、前記羽根部によってかき上げられるオイルを上方へ案内するガイド面部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のエンジンである。
これによれば、オイルが羽根部の外径側や側方に逃げることを抑制して、より良好にオイルをオイル通路側へ飛ばすことができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記羽根部は、回転中心からみて内径側の端部に対して外径側の端部が、回転方向に対して後退するように径方向に対して傾斜して配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンである。
これによれば、粘度の高い低温のオイルを、低〜中回転時時に良好にかき上げることができる。また、オイルの粘度が低下する高温時や、オイルの飛散量が増加する高回転時において、オイルが過度に多く飛散してブローバイが増加することを防止でき、運転状態の変化に応じたオイルの飛散量を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、上下方向にほぼ沿って配置されたクランクシャフトの上部を支持するメタルベアリングを良好に潤滑可能なエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用したエンジンの実施例をシリンダ中心軸を含む鉛直面で切って見た断面図である。
【図2】図1のII−II部矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III部矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、上下方向にほぼ沿って配置されたクランクシャフトの上部を支持するメタルベアリングを良好に潤滑可能なエンジンを提供する課題を、ガバナ機構に設けられた羽根部がはね上げたオイルを、クランクケース上部に設けたオイル通路を介してメタルベアリングに供給するとともに、羽根部からオイル通路までのオイルの通過経路を、クランクウェブが通過する領域からオフセットして配置することによって解決した。
【実施例】
【0012】
以下、本発明を適用したエンジンの実施例について説明する。
実施例のエンジンは、例えば芝刈機等に搭載されるV軸(縦軸)の空冷単気筒OHCの汎用4ストロークガソリンエンジンである。
図1は、実施例のエンジンをシリンダ中心軸を含む鉛直面で切って見た断面図である。
図2は、図1のII−II部矢視断面図である。
図3は、図1のIII−III部矢視断面図である。
【0013】
図1等に示すように、エンジン1は、クランクシャフト10、ピストン20、クランクケースアッパ30、クランクケースロワ40、シリンダヘッド50、タイミングチェーン60、ガバナ機構70、羽根80等を有して構成されている。
【0014】
クランクシャフト10は、エンジン1の出力軸であって、回転中心軸が鉛直方向にほぼ沿うように配置されている。
クランクシャフト10は、上方から順に、ネジ部11a、フライホイール取付部11bアッパジャーナル部12、アッパクランクウェブ部13、クランクピン部14、ロワクランクウェブ部15、ガバナドライブギヤ16、ロワジャーナル部17、出力部18等を有して構成されている。
【0015】
ネジ部11aは、フライホイール取付部11bに固定されるフライホイールを固定するものである。
アッパジャーナル部12は、クランクケースアッパ30に設けられたアッパベアリング32に回転可能に支持される軸部である。
アッパクランクウェブ部13は、クランクピン14を支持するクランクアーム13a及びカウンタウェイト13bを一体の板状に形成した部分である。カウンタウェイト13bは、クランクアーム13aに対して、回転中心軸を挟んだ反対側に配置されている。
クランクピン部14は、コンロッド21の大端部21bが揺動可能に接続される軸部である。
ロワクランクウェブ部15は、クランクピン14を支持するクランクアーム15a及びカウンタウェイト15bを一体の板状に形成した部分である。カウンタウェイト15bは、クランクアーム15aに対して、回転中心軸を挟んだ反対側に配置されている。
ガバナドライブギヤ16は、ガバナ機構70のガバナドリブンギヤ71を駆動するものである。ガバナドライブギヤ16は、円盤状に形成され、その外周縁部にギヤ歯が形成されている。
ロワジャーナル部17は、クランクケースロワ40に設けられたロワベアリング41に回転可能に支持される軸部である。
また、ガバナドライブギヤ16とロワジャーナル部17との間には、タイミングチェーン60を駆動する図示しないドライブスプロケットが設けられている。
出力部18は、クランクシャフト10の下端部に設けられ、駆動対象となる機器等が接続される部分である。
【0016】
ピストン20は、クランクケースアッパ30に設けられたシリンダ31に挿入されて往復運動する部材であって、クランクシャフト10のクランクピン部14とコンロッド(コネクティングロッド)21を介して接続されている。
ピストン20の外周面部には、ピストンリング(コンプレッションリング)及びオイルリングが、それぞれ対応するリング溝にはめ込まれて装着されている。
コンロッド21の小端部21aは、ピストンピン22を介して、ピストン20に対して揺動可能に連結されている。
コンロッド21の大端部21bは、クランクピン部14に揺動可能に連結されている。
【0017】
クランクケースアッパ30及びクランクケースロワ40は、協働してクランクシャフト10等を収容する上下2つ割のクランクケースを構成するものである。
クランクケースアッパ30及びクランクケースロワ40は、例えばアルミニウム系合金を鋳造した後、部分的に機械加工することによって形成されている。
【0018】
クランクケースアッパ30は、シリンダ31、アッパベアリング32、チェーン室33、オイル通路34等が形成され、オイルシール35等が設けられている。
シリンダ31は、ピストン20が挿入される円筒状の部分であって、中心軸がほぼ水平となるように配置されている。
シリンダ31の内径側の部分には、円筒状のスリーブ31aが挿入されている。
シリンダ31の外周面部には、冷却用のフィンが形成されている。
アッパベアリング32は、クランクシャフト10のアッパジャーナル部12を回転可能に支持する部分であって、クランクケースアッパ30の本体部を構成するアルミニウム系合金を機械加工した面部を、そのままメタルベアリング(滑り軸受)として利用する構成となっている。
チェーン室33は、動弁系を駆動するタイミングチェーン60が通過する空洞部であって、シリンダ31の下方に設けられている。
オイル通路34は、後述するガバナ機構70に設けられる羽根80がかき上げるオイルを、アッパベアリング32の軸受面部(アッパジャーナル部12と当接する面部)に導入する通路である。
オイル通路34は、クランクケースの上面部に設けられ下方に向かって開口した入口部、及び、軸受面部に開口した出口部とを有し、これらの間を直線的に結ぶよう傾斜して配置されている。
オイル通路34の入口部は、図1及び図2に示すように、羽根80がオイルをかき上げて上昇し、回転中心軸の直上を通過するときに、この羽根80のほぼ直上(回転中心軸のほぼ直上)となるように配置されている。
オイルシール35は、アッパベアリング32の上端部近傍に設けられ、オイルの外部への漏出を防止するものである。
【0019】
クランクケースロワ40は、ロワベアリング41、ガイド部42等が形成され、オイルシール43等が設けられている。
ロワベアリング41は、クランクシャフト10のロワジャーナル部17を回転可能に支持する部分であって、アルミニウム系合金を機械加工した面部をそのままメタルベアリング(滑り軸受)として利用する構成となっている。
ガイド部42は、後述する羽根80の回転中心から見て外径側の端縁部、及び、ガバナドリブンギヤ71の鍔部71bとは反対側の端縁部に隣接して形成された部分であって、羽根80がかき上げるオイルを、上方へ案内する部分である。
このガイド部42については、後に詳しく説明する。
オイルシール43は、ロワベアリング41の下端部近傍に設けられ、オイルの外部への漏出を防止するものである。
【0020】
シリンダヘッド50は、シリンダ31のクランクシャフト10側とは反対側の端部に設けられ、燃焼室を構成するとともに、図示しない吸排気ポート及びこれらを開閉する吸排気バルブ等の動弁系、各バルブを開閉駆動する動弁駆動系などを備えて構成されている。
シリンダヘッド50は、ヘッドガスケット51を挟んだ状態でシリンダ31の端部に締結されている。
また、シリンダヘッド50のシリンダ31側と反対側の端部には、図示しないカムシャフトやロッカアーム等をカバーするカバー52が取り付けられている。
【0021】
タイミングチェーン60は、クランクシャフト10に設けられたドライブスプロケットによって駆動されるとともに、シリンダヘッド50に設けられた図示しないカムスプロケットを介して、吸排気バルブを駆動する図示しないカムシャフトを駆動するものである。
タイミングチェーン60は、ほぼ水平面内を周回するように配置され、その中間部はクランクケースアッパ30のチェーン室33内を通されている。
【0022】
ガバナ機構70は、エンジン1の調速制御を行う遠心調速装置であって、ガバナドリブンギヤ71、遠心ガバナ72等を有して構成されている。
ガバナドリブンギヤ71は、シリンダ31の中心軸とほぼ平行かつほぼ水平に配置された回転中心軸回りに回転可能に支持されるとともに、クランクシャフト10のガバナドライブギヤ16によって、クランクシャフト10と連動して回転駆動されるものである。
ガバナドリブンギヤ71は、一体に形成された中央部71a、鍔部71bを備えている。
中央部71aは、ガバナドリブンギヤ71の中央部をクランクシャフト10とは反対側にカップ状に張り出しさせて形成した部分である。
鍔部71bは、中央部71aのクランクシャフト10側の端部から、外径側に張り出して形成された部分である。ギヤ歯は、鍔部71bの外周縁部からガバナドライブギヤ16側に突き出して形成されている。
中央部71aの外周面部は、ガバナドリブンギヤ71の回転中心軸と同心の円筒状に形成されている。
遠心ガバナ72は、回転速度変動に伴う遠心力の変化を利用して、エンジン1の回転速度が所定の設定速度近傍となるように、図示しないスロットルバルブを開閉駆動するものである。遠心ガバナ72は、中央部71aの側端部に固定されている。
【0023】
また、ガバナドリブンギヤ71には、クランクケース内の下部に貯留されたオイルを、上方へかき上げて飛ばす羽根80が形成されている。
羽根80は、平板状に形成されてガバナドリブンギヤ71の中央部71aの外径側に設けられ、内周側の端部は、中央部71aの外周面に接続されている。
また、羽根80の側端部は、ガバナドリブンギヤ71における鍔部71bに接続されている。
羽根80は、ガバナドリブンギヤ71と一体に形成され、回転中心軸対称に、例えば2枚が設けられている。
【0024】
また、図2に示すように、羽根80は、ガバナドリブンギヤ71の回転軸方向から見たときに、内径側の端部に対して、外径側の端部が、回転方向に対して後退するように、ガバナドリブンギヤ71の径方向に対して傾斜して配置されている。
このような構成とすることによって、低温時に粘度が高いオイルが羽根80に多く粘りつき、その後遠心力で外径側(図2に示す経路P1〜P5の方向)へ飛ばされることによって、オイルを良好にかき上げることが可能となり、また、高温時や高回転時に過度に多量のオイルが飛散してブローバイが増加することを防止できる。
【0025】
上述したクランクケースロワ40のガイド部42は、図1等に示す側壁部42a、及び、図2等に示す周壁部42bを有して構成されている。
側壁部42aは、羽根80の鍔部71b側とは反対側(遠心ガバナ72側)の端縁部が、回転時に通過する軌跡にほぼ沿って、ガバナドリブンギヤ71の回転中心軸と直交する方向に延在する平板状に形成されている。
周壁部42bは、羽根80の回転時に外周側の端縁部が通過する軌跡にほぼ沿って、ガバナ機構70の回転中心軸とほぼ同心の円筒内面状の凹曲面として形成されている。
ガイド部42は、図2に示すように、ガバナドリブンギヤ71の下部から、オイルをかき上げる側の回転中心軸よりもやや下方の領域にかけて配置されている。
これらガイド部42の側壁部42a、周壁部42bは、ガバナドリブンギヤ71の鍔部71bと協働して、羽根80によってかき上げられるオイルが、水平方向やガバナドリブンギヤ71の外径側へ漏出することを抑制し、効率よくオイルをかき上げることに寄与する。
【0026】
図2には、冷間時において羽根80がかき上げて飛散させるオイルが通過する経路P1乃至P5を図示している。
また、図2には、エンジン1のオイルレベル上限位置、下限位置を、それぞれ図示している。
経路P1は、オイルレベル上限における1000rpm時、オイルレベル下限における700rpm時のオイル飛散経路を示している。
経路P2は、オイルレベル上限における1800rpm時、オイルレベル下限における1600rpm時のオイル飛散経路を示している。
これらの経路P1,P2においては、オイルはオイル通路34の入口に至ることなく、再びクランクケース内の下部に落下している。
【0027】
経路P3は、オイルレベル上限における2400rpm時、オイルレベル下限における2000rpm時のオイル飛散経路を示している。
この経路P3においては、オイルはオイル通路34の入口に到達し、その一部はここからアッパベアリング32に供給されてアッパベアリング32を潤滑する。
【0028】
経路P4は、オイルレベル上限における2800rpm時、オイルレベル下限における2400rpm時のオイル飛散経路を示している。
経路P5は、オイルレベル上限における3600rpm時、オイルレベル下限における3000rpm時のオイル飛散経路を示している。
これらの経路P4、P5においては、オイルはクランクケースアッパ30の天井に衝突はするが、オイル通路34の入口からは外れた位置となる。
しかし、このような高回転時には、クランクケース内部にオイルのミストが形成されるため、ミストがオイル通路34に入ることによって、アッパベアリング32にオイルが供給され、潤滑が行なわれる。
【0029】
また、図1に示すように、羽根80からオイル通路34の入口にかき上げられ、飛ばされるオイルの経路は、クランクシャフト10のアッパクランクウェブ部13、ロワクランクウェブ部15が回転時に通過する領域を避けるよう、シリンダ31から離れた側へオフセットして配置されている。
【0030】
以上説明したように、本実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ガバナ機構70のガバナドリブンギヤ71に設けられた羽根80によってオイルをかき上げて、クランクケースアッパ30の上部に設けられたオイル通路34までオイルを飛ばし、ここからアッパベアリング32にオイルを供給することによって、オイルの粘度が高くミストが形成されにくい低温時であっても、アッパベアリング32を良好に潤滑することができ、潤滑条件がシビアなメタルベアリングであっても焼き付きを防止することができる。
また、羽根80からオイル通路34まで飛ばされるオイルの経路がクランクシャフト10のアッパクランクウェブ部13、ロワクランクウェブ部15が回転時に通過する領域からオフセットして配置されることによって、オイルが各クランクウェブ部によって遮られることがなく、アッパベアリング32の潤滑を良好に行なうことができる。
(2)羽根80に隣接してガイド部42を形成したことによって、羽根80がかき上げるオイルが水平方向や外径側へ漏出することが抑制され、より良好にオイルをオイル通路34側に飛ばすことができる。
(3)羽根80の外径側が内径側よりも回転方向に対して後退するように傾斜して配置されることによって、粘度の高い低温のオイルを、低〜中回転時から良好にかき上げることができる。また、オイルの粘度が低下する高温状態や、高回転時において、オイルが過度に多く飛散してブローバイが増加することを防止でき、運転状態の変化に応じたオイルの飛散量を安定化させることができる。
【0031】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)エンジンを構成する各部材の形状、構造、寸法、材質、製法等は、上述した実施例の構成に限らず、適宜変更することができる。
(2)羽根の枚数、形状、角度や、ガイド部及びオイル通路の形状、位置等は、個々のエンジンの仕様等に応じて適宜変更することができる。
(3)実施例では、羽根をガバナドリブンギヤと一体に形成したが、羽根を別部材によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 エンジン 10 クランクシャフト
11a ネジ部 11b フライホイール取付部
12 アッパジャーナル部
13 アッパクランクウェブ部 13a クランクアーム
13b カウンタウェイト 14 クランクピン部
15 ロワクランクウェブ部 15a クランクアーム
15b カウンタウェイト 16 ガバナドライブギヤ
17 ロワジャーナル部 18 出力部
20 ピストン
21 コンロッド 21a 小端部
21b 大端部 22 ピストンピン
30 クランクケースアッパ 31 シリンダ
31a スリーブ 32 アッパベアリング
33 チェーン室 34 オイル通路
35 オイルシール 40 クランクケースロワ
41 ロワベアリング 42 ガイド部
42a 側壁部 42b 周壁部
43 オイルシール 50 シリンダヘッド
51 ヘッドガスケット 52 カバー
60 タイミングチェーン 70 ガバナ機構
71 ガバナドリブンギヤ 71a 中央部
71b 鍔部 72 遠心ガバナ
80 羽根 P1〜P5 オイルの経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心軸が上下方向にほぼ沿って配置されたクランクシャフトと、
前記クランクシャフトを収容するクランクケースと、
前記クランクケースの上部に設けられ、前記クランクシャフトの上部を支持するメタルベアリングと、
前記クランクケース内の下部に設けられ、前記クランクシャフトと連動してほぼ水平に配置された回転軸回りに回転するガバナ機構と
を有するエンジンであって、
前記ガバナ機構の一部に設けられ、前記クランクケースの下部に貯留されたオイルを上方へかき上げる羽根部と、
前記クランクケースの上部に設けられ、前記羽根部がかき上げたオイルの一部を前記メタルベアリングの摺動部に導入するオイル通路とを有し、
前記羽根部から前記オイル通路の入口までオイルが通過する経路は、前記クランクシャフトのウェブ部が通過する領域を避けて配置されること
を特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記羽根部の端縁部に隣接して、前記羽根部によってかき上げられるオイルを上方へ案内するガイド面部を形成したこと
を特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記羽根部は、回転中心からみて内径側の端部に対して外径側の端部が、回転方向に対して後退するように径方向に対して傾斜して配置されること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−92129(P2013−92129A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235618(P2011−235618)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】