説明

エンボス加工タフティング針

新規なタフティング針(4)が、中央平面(29)に対して好ましくは対称的で、両側に面取り部(33,34)を具備した中空溝(15)で区別される。面取り部(33,34)は内側位置で、すなわち中央平面(29)に近くにある領域で基準面(28)に対して小さい鋭角(α)だけ傾いている。一方、外側に位置するリム(エッジ(46,47))の境界を定める領域では面取り部(33,34)は基準面(28)に対して大きい鋭角(β)だけ傾いている。この特徴が剛性、タフティング特性、機械的強度及び新規なタフティング針(4)の磨耗耐性を改良する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンボス加工タフティング針に関する。
【背景技術】
【0002】
タフティング針は、例えば特許文献1から知られている。そこで記述されたタフティング針は、保持端部が保持体に保持され、その他方の端部が鳩目と結合した先端で終端している基礎ボディを有する。さらに、糸溝は柄に沿って鳩目に延びる。
【0003】
特許文献2は、ルーパーのためにフランクに弓形面取り部を有するタフティング針を開示する。しかしながら、それは本当の中空溝を有しない。面取り部の領域では、シャフトは弓形三角形のような形状の断面を有する。
【0004】
さらに、特許文献3は、鳩目の付近に中空溝を備えたタフティング針を開示する。中空溝により、ルーパー又は他の工具が糸により良好にアクセスできる。タフティング針は平らにされ、中空溝の領域で機械により弱められる。
【0005】
ルーパーは中空溝の領域でタフティング針に当接し、針に対して横に中空溝に達する。この操作の間に時に材料の磨耗のためにタフティング針に磨耗が生じる。タフティング針は、このような磨耗が過度になり又は糸溝に達した場合に交換しなければならない。これらの現象はタフティング針の耐用寿命を限定する。
【0006】
前記の操作の途中でプロセスの不確かさのために、ルーパーがタフティング針のフランクに当接し、従って中空溝を外れることがある。
【0007】
【特許文献1】EP0874932B1
【特許文献2】US5189966
【特許文献3】WO90/06391
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、タフティング針の耐用寿命を増加させ、同時に中空溝になる入口スペースを拡大することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は請求項1に記載のタフティング針により達成される。
【0010】
本発明に従うタフティング針は、さらに内側の針フランクに隣接するエッジにおいてより険しい傾きを有する少なくとも1つの面取り部を具備した中空溝を有する。請求項1の表現によれば、これは、針中央の付近の面取り部と基準面がさらに外側にある鋭角βより小さい鋭角αを形成することを意味する。ルーパーは、角度βの外側領域において面取り部に当接する。角度βは例えば35°〜50°の範囲にあり、45°が好ましい。このようにして、ルーパーのための入口スペースが中空溝の領域で増加するので、糸ループを受ける間高い信頼性が保証される。針のフランクにルーパーが当接することは実質的に避けられる。面取り部の角度は内側で20°〜40°の間の小さめの大きさに落ちる。このようにして、ルーパーとタフティング針の減少した磨耗をもたらすルーパーと中空溝との摩擦は減少する。
【0011】
中空溝の面取り部の半径方向に見た凸状の構造により、平坦な面取り部に比べて面取り部と糸溝の間の壁厚が増加する。このようにして、タフティング針の耐用寿命はルーパーにより飛躍的に増加しうる。両方の因子、すなわち針とルーパーの間の減少した摩擦と、糸溝と面取り部の間の厚めの壁とは、別個に又は組み合わせて、針の耐用寿命の増加をかなりもたらす。
【0012】
針体はある設定角度でタフティングモジュールに配置される。これは、タフティング針の基準面はニードルボードの設定表面に垂直でないことを意味する。ルーパーと針の間の摩擦を通常増加させるこのような設定が本発明に従う針により許容される。
【0013】
針体は平たくされると好ましい。これは特に中空溝の領域に当てはまる。中空溝と隣接する部分も平らな構造を有してもよい。この特徴は、その横方向の針の良好な弾性とそれに垂直な横方向の高い針剛性をもたらす。後者の方向は、原則としてベース材料の輸送方向と一致する。
【0014】
タフティング針は糸溝を有する。しかしながら、必要なければ省いてもよい。
【0015】
中空溝は中央平面に関して対称構造であると好ましい。針は右側又は左側方向で使用される。
【0016】
特に、中空溝は前記の構造を可能にするために面取り部を両側に具備している。このような例では、中空溝は中央平面に対して対称であると好ましい。これにより、右側方向又は左側方向の操作モードは同一である。この場合の針の断面は中空溝の領域で上方に丸みを帯びた又は面取りされた屋根型形状を有する。中空溝の両側の面取りにもかかわらず、糸溝に向かう大きい壁厚が得られる。
【0017】
面取り部を面取りすることも可能であり、個々の面が広範囲の丸みによって互いに接続する。全体が丸い中空溝を構成することも可能であり、この場合縦に延びたサドル面が形成される。前記のタフティング針上の面及び平らな部分はエンボス加工により得られる。このようにして製造された平らな部分はエンボス加工されてない柄を越えて側方に突出する。中空溝の領域における糸溝の外側エッジの突出は柄の幅の約5%〜20%になる。これは、例えばタフティング針の安定性を高める。
【0018】
さらに、面取り部の対称配置は付加的な理由のために針の磨耗挙動を改良する。片方だけの糸レイアウトの場合、針の戻りストロークの間にルーパーがかなり中空溝のエッジで擦れることが防がれる。キャリア材料を損傷させる、尖ったエッジが形成される恐れは減少する。
【0019】
本発明の有利な特徴のさらなる詳細は図面、明細書又は請求項に含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図面は本発明に従うタフティング針の実施形態を示す。
【0021】
図1は、タフティングモジュール2を保持するニードルバー1を示す。タフティングモジュール2はボディ3を有し、その中に又はその上に一連のタフティング針4が保持される。ボディ3はニードルボード1のフロントサイド5の平坦面に当接する。タフティング針4は互いに平行に間隔を置き、下方に指向している。
【0022】
図2及び3はタフティングモジュール2を別個に示す。図2に見られるように、タフティング針4は同一構造であり、平たくされている。それらは上側端部でボディ3に保持される。鳩目6は図3に見られるように例えば互いに一直線になっている。
【0023】
図4,5及び6は1つのタフティング針4の構造を示す。図6に示されるように、タフティング針4は先端8まで延びる柄9を構成する針体7を有する。これは柄9の中央を特徴付ける。針体7と柄9の長さ方向を画定する縦軸11は先端8を通る。
【0024】
クランプ部分とみなされ、実質的に円形又は少なくとも丸みを帯びた断面を有する第1部分12から出発して、平坦部分13は先端8に向かって延びる。平坦部分13は中空溝15を具備した部分14と接続する。部分13は平坦面16により上方に閉じられる。平坦面16より縦軸11に近い中空溝15は縦方向に延びたサドル形凹部を形成する。中空溝15のすぐ近くに鳩目6が設けられる。鳩目6は、平坦面16と好ましくは同一平面にある平坦な環状表面17で取り囲まれる。環状表面17から、針体7は先端8に向かって先細りした部分18が延びる。
【0025】
図6に特によく見られるように、平坦面16の反対側にあるタフティング針4の側面に、部分13,14を越えて鳩目6に延びる糸溝19が形成される。糸溝19の断面はその全長に沿って基本的に一定である。図4は、図5の線IV−IVに沿うタフティング針4の断面を示す。図4,5は異なる縮尺で構造を示す。図4に示されているように、糸溝19はほぼ台形形状を有すると好ましい。糸溝19は、糸溝の側面の平坦面23,24で画定されたレッグ21,22と両側で接続する。平坦面23,24は互いに鈍角を形成する。これらは、柄9の部分12を有する輪郭27の半径方向のかなり外側にあるエッジ25,26で終端する。従って、レッグ21,22は輪郭27を越えて突出する。
【0026】
図4に従う例では、切り落とされ従って見えない鳩目は、基準面28と垂直に指向した垂直の開口方向を有する。今度は基準面は平坦面16と平行であり、タフティング針4を通って縦に延び、従って縦軸11を有する。基準面28と垂直方向に、縦軸11である交差の線において基準面28と交差する中央平面29が想像できる。中央平面29はタフティング針4の対称平面を構成する。
【0027】
中空溝15の形状は特に図4によく見られる。平坦面16を画定するエッジから出発して、長さ方向に対して直線表面になる丸み部分31が設けられる。これらの表面は、中央平面29に対して対称かつ基準面28と好ましくは平行に指向した平坦面32を有する。平坦面32の両側では、基準面28と交差し、中央平面29に対して対称の面取り部33,34が配置される。本実施例では、面取り部33,34は平らに削られる。従って、それぞれの面取り部33,34はそれぞれ、丸みを帯びた又は弓形の表面41,42に変化する2つのストリップ形の平坦面35,36及び37,38を有する。表面41は平坦面35と36の間にあり、表面42は平坦面37と38の間にある。さらに、面取り部33,34は丸みを帯びた又は弓形の表面43,44を介して平坦面32と結合する。平坦面35,36及び37,38はそれぞれの場合にペアで互いに鈍角を形成する。このようにして、図4に示されるように、これらは基準面28又はそれに平行な面に対して様々な角度で指向している。平坦面38は、基準面28と平行な線45と鋭角αを形成する。同じことが平坦面36にも当てはまる。平坦面37は千45と鋭角βを形成する。同じことが平坦面35にも当てはまる。角度αは角度βより小さい。角度αは20°〜40°の範囲にあると好ましい。本実施形態では、αは30°が好ましい。角度βは35°〜55°の範囲にあると好ましい。本実施形態では、βは45°が好ましい。平坦面35,37は、輪郭27の外側にあるエッジ46,47で好ましくは終端するように配置される。このようにして、部分14の外側フランク48,49は輪郭27の外側に配置される。フランク48,49は僅かに湾曲していると好ましい。
【0028】
ここまで説明したタフティング針4は以下のように動作する。
【0029】
使用の際、糸は糸溝及び鳩目6を介してガイドされる。タフティング針4がベース材料を貫通すると、糸は鳩目によりそこを通って引っ張られる。その下側の反転位置の付近では、フック形状のルーパーがタフティング針4に向かって移動する。先ず、ルーパーはその先端で平坦面37に当接する。平坦面37の基準面28に対する実質的な傾き(鋭角β)に基づいて、エッジ47と線45の間の大きい距離が得られる。従って、非一直線化、交差、不正確さ又はたわみとは無関係に、ルーパーの先端は面取り部34に固定して当接する。次いで、先端は先ず平坦面37上をそれに沿ってスライドし、その後平坦面38に達する。平坦面38の基準面28に対する小さい角度(小さめの鋭角α)のために摩擦が減少する。その後、ルーパーは平坦面32にわたってガイドされ、針の戻りストロークの間ルーパーは鳩目によりベース材料を貫通した糸をしっかり保持する。
【0030】
それぞれ41,42における面取り部33,34にあるアーチは、糸溝19に向かう壁厚a,bを拡大させる。これは結局タフティング針4の剛性だけでなく、その磨耗耐性も高める。このような壁の徐々の磨耗は非常に長く使用した後にのみ許容できない磨耗をもたらす。
【0031】
新規なタフティング針(4)が、中央平面(29)に対して好ましくは対称的で、両側に面取り部(33,34)を具備した中空溝(15)で区別される。面取り部(33,34)は内側位置で、すなわち中央平面(29)に近くにある領域で基準面(28)に対して小さい鋭角(α)だけ傾いている。一方、外側に位置するリム(エッジ(46,47))の境界を定める領域では面取り部(33,34)は基準面(28)に対して大きい鋭角(β)だけ傾いている。この特徴が剛性、タフティング特性、機械的強度及び新規なタフティング針(4)の磨耗耐性を改良する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ニードルボードと、複数の相互に平行に指向したタフティング針を有する保持されたタフティング針モジュールの部分斜視図である。
【図2】図1に従うモジュールの前部正面図である。
【図3】図1に従うモジュールの側面正面図である。
【図4】中空溝の領域を通って取られたタフティング針の断面図である。
【図5】図2及び3に従うモジュールのタフティング針の1つの前部正面図である。
【図6】図5に従うタフティング針の縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ニードルボード
2 タフティングモジュール
3 ボディ
4 タフティング針
5 フロントサイド
6 鳩目
7 針体
8 先端
9 柄
11 縦軸
12,13,14 部分
15 中空溝
16 平坦面
17 環状表面
18 部分
19 糸溝
21,22 レッグ
23,24 平坦面
25,26 エッジ
27 輪郭
28 基準面
29 中央平面、針中央
31 丸み部分
32 平坦面
33,34 面取り部
35,36;37,38 平坦面
41,42;43,44 表面
45 線
46,47 エッジ
48,49 フランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針体(7)を有するタフティング針(4)であって、針体は端部において先端(8)で終端したシャフト(9)を有し、鳩目(6)を具備し、その付近に中空溝(15)を備え、鳩目(6)の開口方向が基準面(28)に垂直に指向しており、
中空溝(15)が少なくとも1つの面取り部(33,34)を具備し、面取り部は基準面(28)に対して傾いて配置され、針中央(29)の付近で基準面(28)と鋭角(α)を形成し、この角度(α)は、針中央(29)から大きい横の距離を置いた基準面(28)と面取り部(33,34)で形成される角度(β)より小さいことを特徴とするタフティング針。
【請求項2】
針体(7)が平らにされることを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項3】
針体(7)が中空溝(15)から離れた面に糸溝(19)を具備することを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項4】
中空溝(15)が縦に延びたサドルの形状を有することを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項5】
基準面(28)に垂直な平面であって、針の長さ方向(11)に指向した中央平面(29)に関して対称であることを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項6】
中空溝(15)が両側に面取り部(33,34)を具備することを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項7】
面取り部(33,34)が、基準面(28)に垂直な平面であって、針の長さ方向(11)に指向した中央平面(29)に関して対称であることを特徴とする請求項6に記載のタフティング針。
【請求項8】
面取り部(33,34)が中空溝(15)の全長に沿って延びることを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項9】
面取り部(33,34)が少なくとも2つの平坦面(35,36;37,38)を有し、それぞれが基準面(28)と異なる角度(α,β)を形成することを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項10】
平坦面(35,36;37,38)が丸みを帯びた面(41,42)に変わることを特徴とする請求項9に記載のタフティング針。
【請求項11】
面取り部(33,34)が弓形面(41,42)で構成されることを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項12】
柄(9)の幅が、中空溝(15)の領域において、他の柄の部分の幅に対して拡大されていることを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項13】
面取り部(33,34)の間の中空溝(15)に、隣接する面(16,17)より深い平坦面(32)が設けられることを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。
【請求項14】
鳩目(6)の開口方向が基準面(28)に垂直に指向し、中空溝(15)が基準面(28)に平行であることを特徴とする請求項1に記載のタフティング針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−529639(P2007−529639A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503213(P2007−503213)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001585
【国際公開番号】WO2005/095703
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)