説明

エーテル組成物および潤滑剤

【課題】粘度が低く、流動性が高く、溶媒への溶解性が高いにもかかわらず、基材への定着性が高いエーテル組成物、低摩擦係数の表面を与える潤滑剤を提供する。
【解決手段】基(Y)と、基(Y)に結合した基(X1)または基(X2)と、基(Y)に結合した基(X3)とを有し、基(Y)に結合した基(Z1)を有してもよい2種以上の化合物(A)からなるエーテル組成物であり、基(X1)〜基(X3)および基(Z1)の総モル数の合計に対する基(X3)の総モル数の割合が50〜90モル%である。基(Y):ペルフルオロ化された2価以上の飽和炭化水素基等。基(X1):末端にHO−CHCFO−基を有する基。基(X2):末端にHO−CHCHO−基を有する基。基(X3):末端にHO−CHCH(OH)CHO−基を有する基。基(Z1):末端にRO−基を有する基(Rは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基等。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤等として有用なエーテル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロ化されたポリエーテル構造を有する化合物(以下、PFPEと記す。)は、磁気記録媒体の表面に適用する潤滑剤等として用いられている(非特許文献1)。
該潤滑剤としては、従来から分子の末端に2つの−CHOH基を有するPFPEが汎用されている。
【0003】
また、潤滑剤等として有用なPFPEまたはその組成物として、本発明者は下記を提案している。
(1)下式(1)で表される基(ただし、式(1)中のaは0〜100の整数、bは0〜100の整数、cは1〜100の整数、dは1〜200の整数を示す。)を2個以上有するPFPE(特許文献1)。
HO−(CHCHO)・(CHCH(OH)CHO)−(CH−CFO(CFCFO)− (1)
(2)分子量の異なる2種のPFPEを含むエーテル組成物(特許文献2)。
【0004】
近年、磁気記録媒体の記録密度の増大に伴い、磁気記録媒体と記録素子との間の空隙の狭化および磁気記録媒体の回転の高速化が進んでいる。そのため、磁気記録媒体の表面に塗布される潤滑剤の使用環境は、より厳しいものとなっている。そこで、該潤滑剤には、下記の性質が要求されている。
(i)磁気記録媒体の高速化に伴い、磁気記録媒体への定着性が高いこと。
(ii)磁気記録媒体に記録素子が接触した際の衝撃を分散するために、塗膜としたときの表面の摩擦係数が低いこと。
(iii)均一な磁気記録媒体の表面ができるために、粘度が低く、流動性が高いこと。
【0005】
しかし、本発明者らの検討によれば、従来の潤滑剤において(iii)の性質が良好である場合には、(i)および(ii)の性質に劣る傾向があり、(i)〜(iii)の全ての性質において満足な潤滑剤は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/068534号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/013412号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「月刊トライボロジ」、1995年、第99巻、11月号、p.37−38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粘度が低く、流動性が高く、溶媒への溶解性が高いにもかかわらず、基材への定着性が高いエーテル組成物、低摩擦係数の表面を与える、該エーテル組成物を含む潤滑剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、さらなる検討を行った結果、分子量が同程度であったとしても、末端基の構造によって、粘度や流動性を変化させられることを見いだした。通常、PFPEは平均組成式で表され、2種以上の化合物の混合物からなる組成物であるが、該組成物中の特定の末端基の割合を調節すると、粘度と流動性のバランスに優れたPFPEになりうることを見いだした。また該PFPEを磁気記録媒用の基材に塗布した場合には、摩擦係数が低く、定着性にも優れることを見いだした。
【0010】
本発明は、下記[1]〜[8]の発明である。
[1]下記基(Y)と、前記基(Y)に結合した下記基(X1)および前記基(Y)に結合した下記基(X2)から選ばれる1種以上の基と、前記基(Y)に結合した下記基(X3)とを有し、前記基(Y)に結合した下記基(Z1)をさらに有してもよい2種以上の化合物(A)からなるエーテル組成物であり、該エーテル組成物中の基(X1)の総モル数、基(X2)の総モル数、基(X3)の総モル数および基(Z1)の総モル数の合計に対する基(X3)の総モル数の割合が、50〜90モル%である、エーテル組成物。
基(Y) :ペルフルオロ化された2価以上の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基。
基(X1):末端にHO−CHCFO−基を有する基。
基(X2):末端にHO−CHCHO−基を有する基。
基(X3):末端にHO−CHCH(OH)CHO−基を有する基。
基(Z1) :末端にRO−基を有する基(ただし、Rは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基)。
【0011】
[2]前記基(Y)が、ペルフルオロ化された2〜7価の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である、[1]のエーテル組成物。
[3]前記基(X1)が、下式(X11)で表される基(ただし、d1は1〜200の整数である。)であり、前記基(X2)が、下式(X12)で表される基(ただし、a1は1または2であり、c1は1〜100の整数であり、d2は1〜200の整数である。)であり、前記基(X3)が、下式(X13)で表される基(ただし、a2は0〜2の整数であり、c2は1〜100の整数であり、d3は1〜200の整数である。)であり、前記基(Z1)が、下式(Z11)で表される基(ただし、gは3〜200の整数である。)である、[1]または[2]のエーテル組成物。
HO−CHCFO(CFCFO)d1− (X11)
HO−(CHCHO)a1−(CHc1−CFO(CFCFO)d2− (X12)
HO−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)a2−(CHc2−CFO(CFCFO)d3− (X13)
O(CFCFO)− (Z11)
(ただし、Rは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基)
【0012】
[4]前記化合物(A)が、下式(A)で表わされる化合物である、[1]〜[3]のエーテル組成物。
(X11−)m1(X12−)m2(X13−)m3(Z11−)m4Y (A)
ただし、m1は0〜2の整数であり、m2は0〜2の整数であり、m1+m2は1〜4の整数であり、m3は1または2であり、m4は0または1であり、m1+m2+m3+m4は2〜7の整数であり、X1は前記式(X11)で表される基であり、X12は前記式(X12)で表される基であり、X13は前記式(X13)で表される基であり、Z11は前記式(Z11)で表される基であり、Yは、ペルフルオロ化された(m1+m2+m3+m4)価の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である。
[5]前記化合物(A)が、−OCFO−構造を有さない化合物である、[1]〜[4]のエーテル組成物。
【0013】
[6][1]〜[5]のエーテル組成物を含む、潤滑剤。
[7][1]〜[5]のエーテル組成物と、前記化合物(A)を溶解する溶媒とを含む、潤滑剤。
[8]前記化合物(A)の質量と前記溶媒の質量との合計に対する前記化合物(A)の質量の割合が、0.0001〜10質量%である、[7]の潤滑剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエーテル組成物は、粘度が低く、流動性が高く、溶媒への溶解性が高いにもかかわらず、基材への定着性が高い。
本発明の該エーテル組成物を含む潤滑剤は、低摩擦係数の表面を与える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<エーテル組成物>
本発明のエーテル組成物は、 下記基(Y)と、基(Y)に結合した下記基(X1)および基(Y)に結合した下記基(X2)から選ばれる1種以上の基と、基(Y)に結合した下記基(X3)とを有し、基(Y)に結合した下記基(Z1)をさらに有してもよい化合物(A)であって、基(X1)、基(X2)、基(X3)および基(Z1)の組み合わせが異なる2種以上の化合物(A)の混合物であり、エーテル組成物中の基(X1)の総モル数、基(X2)の総モル数、基(X3)の総モル数および基(Z1)の総モル数の合計に対する基(X3)の総モル数の割合が50〜90モル%のものである。
【0016】
(基(X1))
基(X1)は、末端にHO−CHCFO−基を有する基である。
基(X1)としては、化合物(A)の製造のしやすさおよび安定性の点から、下式(X11)で表される基が好ましい。
HO−CHCFO(CFCFO)d1− (X11)
【0017】
d1は、1〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、5〜50の整数がより好ましい。
【0018】
1分子中に複数の基(X1)が存在する場合、それぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。基(X1)が同一である基の範疇には、構造単位の数が異なる基も含まれる。たとえば、d1の数のみが異なる基(X11)は同一の基と考える。1分子中に複数の基(X1)が存在する場合、同一の基であるのが好ましい。
【0019】
(基(X2))
基(X2)は、末端にHO−CHCHO−基を有する基である。
基(X2)としては、化合物(A)の製造のしやすさおよび安定性の点から、下式(X12)で表される基が好ましい。
HO−(CHCHO)a1−(CHc1−CFO(CFCFO)d2− (X12)
【0020】
a1は、1または2であり、1が好ましい。
c1は、1〜100の整数であり、1〜10の整数が好ましく、1または2がより好ましい。
d2は、1〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、5〜50の整数がより好ましい。
【0021】
1分子中に複数の基(X2)が存在する場合、それぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。基(X2)が同一である基の範疇には、構造単位の数が異なる基も含まれる。たとえば、d2の数のみが異なる基(X12)は同一の基と考える。a1、c1、d2の数において、d2以外の数であるa1およびc1がそれぞれ異なる基(X12)は異なる基であると考える。1分子中に複数の基(X2)が存在する場合、同一の基であるのが好ましい。
【0022】
(基(X3))
基(X3)は、末端にHO−CHCH(OH)CHO−基を有する基である。
基(X3)としては、化合物(A)の製造のしやすさおよび安定性の点から、下式(X13)で表される基が好ましい。
HO−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)a2−(CHc2−CFO(CFCFO)d3− (X13)
【0023】
a2は、0〜2の整数であり、0または1が好ましい。
c2は、1〜100の整数であり、1〜10の整数が好ましく、1または2がより好ましい。
d3は、1〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、5〜50の整数がより好ましい。
【0024】
1分子中に複数の基(X3)が存在する場合、それぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。基(X3)が同一である基の範疇には、構造単位の数が異なる基も含まれる。たとえば、d3の数のみが異なる基(X13)は同一の基と考える。a2、c2、d3の数において、d3以外の数であるa2およびc2がそれぞれ異なる基(X13)は異なる基であると考える。1分子中に複数の基(X3)が存在する場合、同一の基であるのが好ましい。
【0025】
(基(Z1))
基(Z1)は、末端にRO−基を有する基である。
基(Z1)としては、化合物(A)の製造のしやすさおよび安定性の点から、下式(Z11)で表される基が好ましい。
O(CFCFO)− (Z11)
【0026】
は、炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である。Rの炭素数は、1〜16が好ましく、1〜6がより好ましい。
gは、3〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、3〜70の整数がより好ましく、5〜50の整数が特に好ましい。
【0027】
1分子中に複数の基(Z1)が存在する場合、それぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。基(Z1)が同一である基の範疇には、構造単位の数が異なる基も含まれる。たとえば、gの数のみが異なる基(Z11)は同一の基と考える。1分子中に複数の基(Z1)が存在する場合、同一の基であるのが好ましい。
【0028】
(基(Y))
基(Y)は、ペルフルオロ化された2価以上の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である。基(Y)中には基(Z1)の構造は存在しない。
基(Y)としては、化合物(A)の製造のしやすさおよび安定性の点から、ペルフルオロ化された2〜7価の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基が好ましく、ペルフルオロ化された3〜5価の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基がより好ましい。
【0029】
基(Y)は、−CF基を有さないことが好ましい。Yが−CF基を有していたとしても、−CF基は4級炭素原子に結合することが好ましい。基(Y)中の4級炭素原子とは、フッ素原子が結合していない炭素原子を意味する。−CF基が2級炭素原子(CF)または3級炭素原子(CF)に結合している場合には、分子内での自由度が高いため、摩擦係数の低下、低粘度化に寄与する一方、定着性を阻害する傾向がある。
【0030】
基(Y)が、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である場合、エーテル性酸素原子の数は、1〜3が好ましい。エーテル性酸素原子は炭素−炭素原子間に存在することから、基(X1)、基(X2)、基(X3)および基(Z1)に結合する基(Y)の末端にはエーテル性酸素原子は存在しない。基(Y)がエーテル性酸素原子を含む場合、基(Y)としては−OCFO−構造を有さないものが好ましく、また、基(X1)、基(X2)、基(X3)および基(Z1)と結合する末端部分に−OCF−構造を有さないものが好ましい。該構造が存在しない化合物においては、化学的安定性が顕著に向上する。
【0031】
3価の基(Y)としては、基(Y−1)〜基(Y−4)が挙げられる。ただし、基(Y−4)は、ペルフルオロシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を示す。
【0032】
【化1】

【0033】
4価の基(Y)としては、基(Y−1)〜基(Y−4)が挙げられ、合成のしやすさ、化合物の化学的安定性、および結晶性の低さの点から、基(Y−1)が好ましい。
【0034】
【化2】

【0035】
5価の基(Y)としては、基(Y−1)が挙げられる。
【0036】
【化3】

【0037】
(化合物(A))
化合物(A)は、化学的安定性の点から、−OCFO−構造を有さないことが好ましい。−OCFO−構造を有さない化合物とは、通常の分析手法(19F−NMR等)では該構造の存在が検出できない化合物を意味する。
【0038】
化合物(A)としては、製造のしやすさおよび安定性の点から、下式(A)で表わされる化合物が好ましい。
(X11−)m1(X12−)m2(X13−)m3(Z11−)m4Y (A)
【0039】
ただし、m1は0〜2の整数であり、m2は0〜2の整数であり、m1+m2は1〜4の整数であり、m3は1または2であり、m4は0または1であり、m1+m2+m3+m4は2〜7の整数であり、X1は前記式(X11)で表される基であり、X12は前記式(X12)で表される基であり、X13は前記式(X13)で表される基であり、Z11は前記式(Z11)で表される基であり、Yは、ペルフルオロ化された(m1+m2+m3+m4)価の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である。
【0040】
(エーテル組成物)
本発明のエーテル組成物は、2種以上の化合物(A)からなる組成物である。
本発明におけるエーテル組成物は、化合物(A)が化学式で一義的に表現できる場合においても、該化学式は平均組成式であり、化学構造の異なる2種以上の化合物(A)の混合物であることを意味する。また異なる化学式で表される化合物(A)の2種以上からなる組成物もまた、本発明におけるエーテル組成物に含まれる。
化合物(A)からなる組成物としては、基(Y)、基(X1)、基(X2)、基(X3)および基(Z1)が同一の基であり、基(X1)、基(X2)、基(X3)および基(Z1)の数が異なる化合物(A)の2種以上からなる組成物が挙げられる。該組成物は、基(Y)、基(X1)、基(X2)、基(X3)および基(Z1)が同一の基であり、基(Z1)の数が異なる化合物(A)の2種以上からなる組成物が好ましい。
【0041】
エーテル組成物中の基(X1)におけるd1の平均は、1〜200であり、3〜100が好ましく、5〜50がより好ましい。
【0042】
エーテル組成物中の基(X2)におけるa1の平均は、1〜2であり、1が好ましい。
エーテル組成物中の基(X2)におけるc1の平均は、1〜100であり、1〜10が好ましく、1〜2がより好ましい。
エーテル組成物中の基(X2)におけるd2の平均は、1〜200であり、3〜100が好ましく、5〜50がより好ましい。
【0043】
エーテル組成物中の基(X3)におけるa2の平均は、0〜2であり、0〜1が好ましい。
エーテル組成物中の基(X3)におけるc2の平均は、1〜100であり、1〜10が好ましく、1〜2がより好ましい。
エーテル組成物中の基(X3)におけるd3の平均は、1〜200であり、3〜100が好ましく、5〜50がより好ましい。
【0044】
エーテル組成物中のる基(Z1)におけるgの平均は、3〜200であり、3〜100が好ましく、3〜70がより好ましく、5〜50が特に好ましい。
【0045】
エーテル組成物中の基(X1)の総モル数、基(X2)の総モル数、基(X3)の総モル数および基(Z1)の総モル数の合計に対する基(X3)の総モル数の割合は、50〜90モル%であり、55〜85モル%が好ましく、60〜80モル%がより好ましい。基(X3)の総モル数の割合が50モル%以上であれば、基材への定着性が高くなる。基(X3)の総モル数の割合が90モル%以下であれば、粘度が低くなり、流動性が高くなる。また、基(X3)の総モル数の割合が85モル%以下であれば、さらに、溶媒への溶解性が高くなる。
【0046】
本発明のエーテル組成物は、基材への定着性の点からは、基(Z1)を有する化合物(A)をできるだけ含まないことが好ましい。エーテル組成物中の基(X1)の総モル数、基(X2)の総モル数、基(X3)の総モル数および基(Z1)の総モル数の合計に対する基(Z1)の総モル数の割合は、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。
【0047】
末端にHO−基を有する基のモル数は、以下のようにして求めることができる。
末端がHO−CHCFO−基である場合には、該基中のCFのフッ素原子に由来する19F−NMRの−80〜−81.0ppm付近のピーク面積から求める。
末端がHO−CHCHOCHCFO−基である場合には、該基中のCFのフッ素原子に由来する19F−NMRの−78.0〜−80.0ppm付近のピーク面積から求める。
末端がHO−CHCH(OH)CHOCHCFO−基である場合には、該基中のCFのフッ素原子に由来する19F−NMRの−75.0〜−78.0ppm付近のピーク面積から求める。
【0048】
また別の方法として、水素原子とフッ素原子を併有する化合物を内部標準物質として用い、19F−NMRとH−NMRの測定結果から求める方法が挙げられる。内部標準物質としては、ビストリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。
たとえば、末端がHO−CHCFO−基である場合には、該基中のCHに由来するH−NMRの4.0〜4.1ppm付近のピーク面積から求める。
末端がHO−CHCHOCHCFO−基またはHO−CHCH(OH)CHOCHCFO−基である場合には、CFに隣接するCHに由来する3.8〜4.0ppm付近のピーク面積から求める。または末端のHO−CH−基のCHに由来する3.5ppm付近のピーク面積との比でも求めることができる。またCH(OH)部分のCHに由来する3.7〜3.9ppm付近のピーク面積からも求めることができる。
【0049】
CHCH(OH)CHとCHCHOを併有する場合には、HO−基のモル数の定量に用いるH−NMRのシグナルが重複することから、該基に結合するHO−基を化学修飾により、CFC(O)O−、またはCHC(O)O−等の基に変換し、該基のH−NMRまたは19F−NMRのケミカルシフトのピーク面積からHO−基の数を求めることができる。
さらにH−NMRの測定の際には、HO−基に由来するピークは測定環境(pH等)によってピーク位置が変動し、特に同定上重要な3.5〜3.8ppm付近に重複する場合がある。したがって、ごく微量の重水素溶媒(たとえば、重水)をサンプルに加えることで、HO−基の水素を重水素化し、前述したピーク群に重複しない位置にシフトさせることが望ましい。
【0050】
末端にRO−基を有する基のモル数は、CFO−基の場合、以下のようにして定量できる。
CFO−基のモル数を求める方法としては、エーテル組成物中に含まれる化合物の構造を同定し、含有量を定量することにより求める方法、または組成物のまま求める方法が挙げられる。
具体的には、NMR法を用いて求める場合において、エーテル組成物の19F−NMRを測定し、CFO−基のピーク面積を求める。たとえば、CFO−基の19F−NMRのケミカルシフトは−54.0〜−56.0ppm付近に観測できる。
【0051】
本発明のエーテル組成物は、基(Y)に結合した基がすべて基(Z1)である化合物(H)を含まないのが好ましい。化合物(H)を含まないとは、全く含まれていないか、含まれていたとしても、高速液体クロマトグラフィ(以下、HPLCと記す。)で定量する含有量が2.0質量%以下であることを意味する。
本発明のエーテル組成物が化合物(H)を含まないことにより、ブリードアウトを抑制でき、基材に対する潤滑剤の定着性を高くできる。化合物(H)は、後述する精製方法によりエーテル組成物から除去することが好ましい。
【0052】
本発明のエーテル組成物は、基(Y)に結合した基がすべて基(X1)である化合物、基(Y)に結合した基がすべて基(X2)である化合物、基(Y)に結合した基がすべて基(X3)である化合物、および基(Y)に結合した基がすべて基(Z1)である化合物の1種以上を含む場合がある。
化合物(A)の総量は、エーテル組成物に対して95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましい。該総量は、100質量%であってもよい。
【0053】
エーテル組成物の数平均分子量(以下、Mnと記す。)は、500〜1000000が好ましく、500〜100000がより好ましく、1000〜20000が特に好ましい。
エーテル組成物の分子量分布(以下、Mw/Mnと記す。)は、1.01〜1.5が好ましく、1.05〜1.25がより好ましい。
MnおよびMw/Mnが該範囲にあれば、粘度が低く、蒸発成分が少なく、溶媒に溶解した際の均一性に優れる。
Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと記す。)により測定される。Mw/Mnは、GPCにより測定されたMnおよびMw(質量平均分子量)から求める。
【0054】
本発明のエーテル組成物の製造方法としては、下記方法が挙げられる。
方法1)2種以上の化合物(A)をそれぞれ製造して精製した後に、それぞれを配合してエーテル組成物を調製する方法。
方法2)1種の化合物(A)を製造する際に、該1種の化合物(A)とは異なる化合物(A)を副生成物として含む反応生成物を得て、該反応生成物を精製して基(X3)の総モル数の割合が特定の範囲であるエーテル組成物とする方法。
方法3)方法2において精製後のエーテル組成物の2種以上を配合してエーテル組成物とする方法。
【0055】
たとえば、方法1による場合、2種以上の化合物(A)は、国際公開第2005/068534号パンフレットに記載の方法における原料をそれぞれの化合物(A)に対応する原料に変更することにより製造できる。具体的には、国際公開第2005/068534号パンフレットに記載する、エステル化、直接液相フッ素化、エステル分解反応によって末端がFC(O)−基である化合物を得る。ついで、該末端がFC(O)−基である化合物を、アルコール類または水と反応させて末端をエステルまたはカルボン酸とした後に還元することによる方法または該末端がFC(O)−基である化合物を、アルコール類とエステル交換することにより末端をエステル化した後に還元することによる方法によって末端がHO−CH−基である化合物を得る。ついで、末端のHO−CH−基の一部に2−メチル−2−プロパノールを開環付加させ、化合物(A)を得る。
【0056】
方法2による場合、方法1と同様に反応を行うことにより、または、方法1における反応条件を変更することにより副生成物を含む反応生成物が得られる。たとえば、化合物(A)を、直接液相フッ素化反応を経る方法により製造する場合で、かつ直接液相フッ素化反応の条件が厳しい場合、分子の末端の切断反応が起こり、末端にCF−基を有する化合物(A)が生成することがある。また、2−メチル−2−プロパノールの量を調整することによって、基(X3)の数の異なる複数の化合物(A)が、2−メチル−2−プロパノールの量に対応した割合で生成する。
直接液相フッ素化反応において、液相に吹き込むガスに含まれるフッ素ガス濃度は、5.0〜50体積%が好ましく、10〜30体積%がより好ましい。フッ素ガス濃度が50体積%以下であると、基(Z1)の生成割合が低くなる傾向がある。
【0057】
直接液相フッ素化反応の条件によっては、生成物に化合物(H)が含まれることがある。
化合物(H)、他の不純物が含まれる場合、精製により除くことが好ましい。
精製方法としては、イオン吸着ポリマーによって金属不純物、陰イオン不純物等を除去する方法、超臨界抽出法、カラムクロマトグラフィが挙げられ、これらを組み合わせた方法が好ましい。
【0058】
(他のPFPE)
本発明のエーテル組成物は、そのまま用いてもよく、他の化合物を添加して用いてもよく、他の化合物への添加剤として用いてもよい。
たとえば、潤滑剤として用いる場合には、本発明のエーテル組成物をそのまま用いてもよく、本発明のエーテル組成物に化合物(A)以外のPFPE(以下、他のPFPEという)を添加して用いてもよく、他のPFPEに本発明のエーテル組成物を添加して用いてもよい。
【0059】
本発明のエーテル組成物に他のPFPEを添加する場合の他のPFPEの量は、本発明の特性を充分に発揮させために、エーテル組成物の全量(本発明のエーテル組成物および他のPFPEの合計)に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0060】
他のPFPEに本発明のエーテル組成物を添加する場合の他のPFPEの量は、エーテル組成物の全量(本発明のエーテル組成物および他のPFPEの合計)に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。他のPFPEに本発明のエーテル組成物を添加することにより、他のPFPEの粘度調整および定着性を改善できる。
【0061】
他のPFPEとしては、末端にHO−基を有する他のPFPE、末端に紫外線吸収基を有する他のPFPE等が好ましい。
末端にHO−基を有する他のPFPEとしては、ソルベイ社製のFOMBLIN Z−DiOL、FOMBLIN Z−TetraOL、ダイキン工業社製のDEMNUM SA等が挙げられる。
末端に紫外線吸収基を有する他のPFPEとしては、ソルベイ社製のFOMBLIN Z−DIAC、FOMBLIN Z−DEAL、FOMBLIN AM2001、FOMBLIN Z−DISOC、ダイキン工業社製のDEMNUM SH、松村石油社製のMorescoA20H等が挙げられる。
【0062】
他のPFPEとしては、末端基がCF−基のみであるPFPEを含まないものが好ましい。
さらに、他のPFPEとしては、数平均分子量が1000〜10000であるものが好ましい。
【0063】
<潤滑剤>
本発明の潤滑剤は、本発明のエーテル組成物を含む以下の(i)〜(iv)の4つの形態をいう。
(i)エーテル組成物のみを含む潤滑剤。
(ii)エーテル組成物を溶媒に溶解または分散させた潤滑剤。
(iii)エーテル組成物と、エーテル組成物および溶媒以外の成分(以下、他の成分と記す。)とを含む潤滑剤。
(iv)エーテル組成物と、溶媒と、他の成分とを含む潤滑剤。
【0064】
本発明の潤滑剤に用いる溶媒としては、ペルフルオロアミン類(ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等)、ペルフルオロアルカン類(バートレルXF(デュポン社製)等)またはヒドロフルオロエーテル類(AE−3000(旭硝子社製)等)が好ましく、オゾン破壊係数が低い点から、ヒドロフルオロエーテル類がより好ましい。
【0065】
本発明の潤滑剤は、溶液、懸濁液または乳化液のいずれであってもよく、溶液が好ましい。
本発明の潤滑剤中のエーテル組成物の濃度は、0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましい。
【0066】
本発明の潤滑剤に用いる他の成分としては、ラジカルスカベンジャー(たとえば、X1p(Dow Chemicals社製)等)等が挙げられる。
本発明の潤滑剤を表面改質剤として用いる場合の他の成分としては、カップリング剤(シラン系、エポキシ系、チタン系、アルミニウム系等)等が挙げられる。カップリング剤は、基材と塗膜との定着性を向上させる。
【0067】
本発明の潤滑剤は、所望の性能を達成できないおそれがあることから、金属イオン類、陰イオン類、水分、低分子極性化合物等を含まないことが好ましい。
金属イオン類(Na、K、Ca、Al等)は、陰イオンと結合してルイス酸触媒を生成し、PFPEの分解反応を促進する場合がある。陰イオン類(F、Cl、NO、NO、PO、SO、C等)および水分は、基材の表面を腐食させる場合がある。よって、それぞれの含有量は次のとおりであるのが好ましい。Al、Mgはいずれも1000ppb以下、Na、Kはいずれも20000ppb以下、Caは10000ppb以下、Fe、Ni、Cu、Znはいずれも100ppb以下が好ましい。Fは10000ppm以下、蟻酸、Cl、NO、SO、シュウ酸はいずれも5000ppb以下が好ましい。潤滑剤の含水率は、2000ppm以下が好ましく、1000ppm以下が特に好ましい。低分子極性化合物(アルコール類;樹脂から溶出する可塑剤等)は、基材と塗膜との定着性を低減させる場合がある。
【0068】
本発明の潤滑剤を、磁気記録媒体用の潤滑剤として用いる場合には、公知の潤滑剤の使用方法を適用できる。たとえば、磁気記録媒体用の基材表面へ潤滑剤を塗布して、潤滑剤層を形成させる。潤滑剤の塗布方法としては、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法(浸漬法)、スピンコート法、水上キャスト法、ダイコート法、ラングミュア・プロジェット法、真空蒸着法等が挙げられ、ディップコート法、スピンコート法または真空蒸着法が好ましい。
基材としては、NiPメッキされた基板(アルミニウム、ガラス等。)上に、下地層、記録層、カーボン保護膜を順に有するものが挙げられる。
カーボン保護膜の厚さは、5.0nm以下が好ましく、カーボン保護膜の平均表面粗さ(Ra)は、2.0nm以下が好ましい。
潤滑剤が溶媒を含む場合は、基材表面に潤滑剤を塗布した後、乾燥させて溶媒を除去し、潤滑剤層を形成させるのが好ましい。
【0069】
潤滑剤層を形成させた磁気記録媒体においては、吸着処理を行い、潤滑剤をカーボン保護膜の表面に強固に吸着させるのが好ましい。
吸着処理としては、加熱処理、赤外線照射処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が挙げられ、加熱処理または紫外線照射処理が好ましく、紫外線吸収剤等の添加剤が不要なため、加熱処理がより好ましい。加熱処理の場合、処理中に基材が劣化しないことから、100〜150℃で処理するのが好ましい。紫外線照射処理の場合、潤滑剤に紫外線吸収剤を添加し、常温で5〜10分かけて処理するのが好ましい。さらに、吸着処理後の磁気記録媒体を、付着物の除去、余剰の潤滑剤の除去を目的に、フッ素系溶媒にて洗浄してもよい。
吸着処理後の潤滑剤塗膜の表面は、高い撥水性を有することから、たとえ高温、高湿度下に置いたとしても、水分の磁気記録媒体内部への侵入が防止され、長期間にわたり高い潤滑性を維持できる。
【0070】
本発明のエーテル組成物から形成される塗膜の厚さは、記録密度の向上の点から、5.0nm以下が好ましく、3.0nm以下がより好ましく、2.0nm以下が特に好ましい。耐久性の点から、0.25nm以上が好ましい。
【0071】
本発明のエーテル組成物は、磁気記録媒体用基材以外の表面にも適用可能である。たとえば、ポリマー基材の表面に塗布してポリマー基材の屈折率を制御する表面改質剤、ポリマー基材の耐薬品性を表面改質剤改善する表面改質剤、電線被覆材、撥インク剤(たとえば、塗装用撥インク剤、印刷機器(インクジェット等)用撥インク剤等)、半導体素子用接着剤(たとえば、リードオンチップテープ用接着剤等)、半導体用保護コート(たとえば、防湿コート剤、半田用這い上がり防止剤等)、光学分野に用いる薄膜(たとえば、ペリクル膜等)への添加剤、ディスプレイ用反射防止膜の潤滑剤、レジスト用反射防止膜等としても有用である。
【0072】
本発明のエーテル組成物から得られた塗膜は、透明であり、屈折率が低く、または耐熱性もしくは耐薬品性に優れる。また、塗膜は、高い潤滑性を保持し、かつ自己修復性を有する。
また、本発明のエーテル組成物は、界面活性剤としても有用である。たとえば、塗料の表面張力を低下させる添加剤、塗料のレベリング剤、研磨液のレベリング剤等として用いうる。塗料に添加する場合、本発明のエーテル組成物の添加量は、塗料に対して0.01〜5質量%が好ましい。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。実施例において、
テトラメチルシランをTMS、
CClFCClFをR−113、
ジクロロペンタフルオロプロパンをR−225、
CClFCClFCFOCFCClFをCFE−419、
ヘキサフルオロイソプロピルアルコールをHFIP、
イソプロピルアルコールをIPA、
重水素化メタノールをCDOD、
重水素化水をD2
と略記する。
また、実施例における分析は、それぞれ室温(25℃)にて行った。
【0074】
(NMR分析)
H−NMR(300.4MHz、積算回数;64)の基準物質としては、TMSを、
19F−NMR(282.7MHz、積算回数;128)の基準物質としては、CFClを用いた。
測定溶液は、化合物またはエーテル組成物のおよそ0.3gを溶媒(2.0g)に希釈して調製した。溶媒としては、R−113(50g)に少量のDO(0.5g)、TMS(0.1g)、CFCl(0.1g)をそれぞれ添加したものを用いた。なお、サンプルが懸濁状態である場合は、CDODを少量ずつ添加し、測定溶液が完全に溶解した状態で測定を行った。
【0075】
(GPC分析)
特開2001−208736号公報に記載の方法にしたがって、下記の条件にてGPCによりMnおよびMwを測定し、Mw/Mnを求めた。
移動相:R−225(旭硝子社製、アサヒクリンAK−225SECグレード1)とHFIPとの混合溶媒(R−255/HFIP=99/1体積比)、
分析カラム:PLgel MIXED−Eカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を2本直列に連結したもの、
分子量測定用標準試料:Mw/Mnが1.1未満であり、分子量が2000〜10000のペルフルオロポリエーテルの4種およびMw/Mnが1.1以上であり、分子量が1300のペルフルオロポリエーテルの1種、
移動相流速:1.0mL/分、
カラム温度:37℃、
検出器:蒸発光散乱検出器。
【0076】
(HPLC分析)
HPLC装置(島津製作所社製、Prominence)を用い、下記の条件にてHPLC分析を行った。具体的には、1サイクルの分析において、移動相中のHFIPの濃度を0%から100%に徐々に増加させてエーテル組成物を溶出させ、溶出時間から化合物の極性を分析した。
分析カラム:順相系シリカゲルカラム(ワイエムシー社製、SIL−gel)、
移動相:R−225(旭硝子社製、アサヒクリンAK−225G)およびHFIP、
移動相流速:1.0mL/分、
カラム温度:37℃、
検出器:蒸発光散乱検出器。
【0077】
(粘度測定)
各エーテル組成物について、20℃、80℃における粘度測定を行った。装置には、回転式粘度計(Tokimec社製、TV−20)を用いた。測定子には、Cone and plate型回転子を用いた。
【0078】
(流動性評価)
各組成物について、−30℃での流動性を分析した。室温においてエーテル組成物中に、直径0.1mmのガラス製キャピラリー管を、垂直に10mm浸した。−30℃に冷却したのち、温度を変えることなくキャピラリー管を引き上げ、12時間での流出量によって、つぎの基準で評価した。
○:完全にキャピラリー管から流出する。
△:10%以上がキャピラリー管から流出する。
×:キャピラリー管からの流出が10%未満である。
【0079】
(溶解性評価)
各エーテル組成物について、R−225、CF(CFH)CFCF(デュポン社製、バートレルXF)およびCFHCFOCHCF(旭硝子社製、AE−3000)に対する室温での溶解性を調べた。化合物の濃度が1〜5質量%になるようにエーテル組成物と溶媒とをそれぞれ混合し、目視にて溶解性を確認した。溶解性は不溶成分の有無で判断し、つぎの基準で評価した。
○:1〜5質量%の範囲で沈殿が認められない。
△:1〜2.5質量%の範囲で沈殿が認められない。
×:1質量%で沈殿が認められる。
【0080】
〔例1〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例11に記載の方法において、ポリオキシエチレングリセロールエーテル(日本油脂社製、ユニオックスG1200)を、ジグリセリン開始ポリオキシエチレングリセロールエーテル(坂本薬品工業社製、SC−E1500)に変更した以外は、同様に反応を実施した。ジグリセリン開始ポリオキシエチレングリセロールエーテルに、FC(O)CF(CF)OCFCF(CF)O(CFFを反応させ、室温で液体の下記化合物(B−1)を得た。NMR分析の結果、化合物(B−1)の(h+i+j+k)の平均値は37.0であり、Rは−CF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFであり、Mnは2600であり、Mw/Mnは1.15であった。
【0081】
【化4】

【0082】
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):3.4〜3.8,4.5。
19F−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):−76.0〜−81.0,−81.0〜−82.0,−82.0〜−82.5,−82.5〜−85.0,−128.0〜−129.2,−131.1,−144.7。
【0083】
〔例2〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例2−1に記載の方法において、R−113をCFE−419に変更し、液相に吹き込むガスに含まれるフッ素ガス濃度を20体積%から、10体積%に変更した以外は同様に液相フッ素化反応を行った。生成物は、下記化合物(C−1)を主成分とし、化合物(B−1)の水素原子の99.9モル%以上がフッ素原子に置換された組成物(c−1)であった。
【0084】
【化5】

【0085】
組成物(c−1)において測定したNMRスペクトルは以下のとおりである。
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−55.8,−77.5〜−86.0,−88.2〜−92.0,−120.0〜−139.0,−142.0〜−146.0。
【0086】
〔例3〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例3に記載の方法にしたがって、組成物(c−1)においてエステル分解反応を行い、下記化合物(D−1)を主成分とする組成物(d−1)を得た。
【0087】
【化6】

【0088】
〔例4〕
〔例4−1〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例4−1に記載の方法にしたがって、組成物(d−1)とエタノールを反応させることによるエステル化反応を行った。下記化合物(E−1)を主成分とする組成物(e−1)を得た。該組成物(e−1)を例5の反応に用いた。
【0089】
〔例4−2〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例4−2に記載の方法にしたがって、組成物(d−1)とエタノールを反応させることによるエステル交換反応を行い、下記化合物(E−1)を主成分とする組成物を得た。
【0090】
【化7】

【0091】
〔例5〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例5に記載の方法において、組成物(e−1)の還元反応を行い、下記化合物(F−1)を主成分とする組成物(f−1)を得た。
【0092】
【化8】

【0093】
組成物(f−1)において測定したNMRスペクトルは以下のとおりである。
H−NMR δ(ppm):3.94。
19F−NMR δ(ppm):−54.0,−80.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0094】
〔例6〕
〔例6−1〕
例1〜5を繰り返し行い、400gの組成物(f−1)を得た。
窒素雰囲気下の250mLの丸底フラスコに、組成物(f−1)の40g、および2−メチル−2−プロパノールの20gを投入し、均一混合するまで撹拌した。丸底フラスコに、出口が20℃に保持され、かつ窒素ガスで置換された還流管を設置した。
つぎに、t−ブトキシドカリウムの1.5gを丸底フラスコに投入し、70℃に加熱して30分間撹拌した。さらに内温を70℃に保持して、2,3−エポキシ−1−プロパノールの3.6gを2時間かけて滴下し、12時間撹拌した。丸底フラスコを25℃に冷却し、窒素ガスで置換してから、0.2g/Lの塩酸の50mLを滴下して2層分離液を得た。該液の有機層を回収し、R−225の50mLを加えた溶液を、重曹水の500mLで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水してから、エバポレーターで溶媒を留去し、25℃で液体の薄黄色の組成物(g−1)の41.4gを得た。
【0095】
〔例6−2〕
例6−1に記載の方法の、2,3−エポキシ−1−プロパノールの3gを2.6gに変更した以外は、同様に合成を実施し、25℃で液体の薄黄色の組成物(g−2)の41.0gを得た。
【0096】
〔例6−3〕
例6−1に記載の方法の、2,3−エポキシ−1−プロパノールの3gを2.3gに変更した以外は、同様に合成を実施し、25℃で液体の薄黄色の組成物(g−3)の40.7gを得た。
【0097】
〔例6−4〕
例6−1に記載の方法の、2,3−エポキシ−1−プロパノールの3gを2.0gに変更した以外は、同様に合成を実施し、25℃で液体の薄黄色の組成物(g−4)の40.9gを得た。
【0098】
〔例6−5〕
例6−1に記載の方法の、2,3−エポキシ−1−プロパノールの3gを1.5gに変更した以外は、同様に合成を実施し、25℃で液体の薄黄色の組成物(g−5)の40.9gを得た。
【0099】
〔例6−6〕
例6−1に記載の方法の、2,3−エポキシ−1−プロパノールの3gを1.1gに変更した以外は、同様に合成を実施し、25℃で液体の薄黄色の組成物(g−6)の40.3gを得た。
【0100】
組成物(g−1)〜(g−6)のNMR分析を行ったところ、化合物(F−1)の中のHO−CHCFO−基(以下、基(X1−1)と記す。)の一部に2,3−エポキシ−1−プロパノールが開環付加し、HO−CHCH(OH)CHOCHCFO−基(以下、基(X3−1)と記す。)に変換された化合物を主成分とする組成物であることを確認した。
【0101】
組成物(g−1)〜(g−6)において測定したNMRスペクトルは以下のとおりである。
H−NMR δ(ppm):3.5〜3.8、3.8〜4.0、4.0〜4.1。
19F−NMR δ(ppm):−54.0〜56.0,−75.0〜−81.0,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0102】
〔例7〕
組成物(g−1)〜(g−6)を下記のカラムクロマトグラフィ法により精製した。
粒状シリカゲル(エスアイテック社製、MS−Gel D75−120A)をR−225で希釈したものを、直径150mm、長さ500mmのカラムに充填し、高さ100mmのシリカゲル充填相を形成した。
組成物の40gをシリカゲル充填相に投入した後、抽出溶媒(R−225/IPA=50/50体積比の混合溶媒)を用い、ゲル化した成分の吸着除去を行った。シリカゲル充填相より溶出した溶液をエバポレーターにて濃縮して粗精製物を回収した。
以上の操作を組成物(g−1)〜(g−6)についてそれぞれ実施し、粗精製物(g’−1)〜(g’−6)を得た。
【0103】
〔例8〕
粗精製物(g’−1)〜(g’−6)を下記の超臨界抽出法により精製した。
入口および出口を有する肉厚のステンレス容器(内径φ33mm×深さ45mm)、超臨界二酸化炭素流体送液ポンプ(日本分光社製、SCF−201)、自動圧力調整弁(日本分光社製、880−81)、通常のカラムクロマトグラフィに用いるカラムオーブンを備えた装置を用意した。
粗精製物の30gを容器内に注入し、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5.0cc/分で流した。容器内の温度を100℃に固定し、容器内の圧力を20MPaとして3時間抽出操作を行い、低極性成分を分画除去した。抽出量が低下したところで容器内の圧力を28Paとし、かつ、補助送液ポンプ(日本分光社製、SCF−201)より抽出助剤であるR−225を0.25cc/分で供給した。6時間抽出操作を行い、精製物を含む溶液を回収した。抽出した溶液の溶解助剤を高圧真空乾燥炉にて減圧除去し、粗精製物を回収した。
以上の操作を粗組成物(g’−1)〜(g’−6)についてそれぞれ実施し、精製物(g”−1)〜(g”−6)を得た。
【0104】
〔例9〕
各精製物について、NMR分析を行った。その結果、各精製物は下記化合物(A−1)の2種以上からなる組成物であることが判明した。
【0105】
【化9】

【0106】
式中の末端基Xは、下記基(X1−1)、基(X3−1)および基(Z1−1)から選択され、1つ以上の末端基Xが基(X3−1)である。
基(X1−1):HO−CHCFO−基。
基(X3−1):HO−CHCH(OH)CHOCHCFO−基。
基(Z1−1) :CFO−基。
【0107】
基(X3−1)は、例6の工程で、化合物(F−1)の中の基(X1−1)に2,3−エポキシ−1−プロパノールが開環付加して生じたものである。
基(X1−1)は、例6の工程で、化合物(F−1)の中の基(X1−1)に2,3−エポキシ−1−プロパノールが開環付加せずに残留したものである。
基(Z1−1)は、例2の液相フッ素化反応でエステル基が脱離、フッ素化されて生じた基である。
【0108】
精製物中の各基のモル数は、19F−NMR、H−NMRよって求めることができる。基(X1−1)と基(X3−1)はHO−基の酸性度の違いにより分離が可能である。
【0109】
19F−NMRの場合は、以下のように求める。
基(X1−1):HO−CHCFO−基のモル数は、該基中のCFのフッ素原子に由来する−80〜−81.0ppm付近のピーク面積から求める。
基(X3−1):HO−CHCH(OH)CHOCHCFO−基のモル数は、基は、該基中のCFのフッ素原子に由来する−75.0〜−78.0ppm付近のピーク面積から求める。
基(Z1−1):CFO−基のモル数は、該基のフッ素原子に由来する−54.0〜−56.0ppm付近のピーク面積から求める。
【0110】
H−NMRの場合は、以下のように求める。
基(X1−1):HO−CHCFO−基のモル数は、該基中のCHに由来する4.0〜4.1ppm付近のピーク面積から求める。
基(X3−1):HO−CHCH(OH)CHOCHCFO−基のモル数は、該基中のCH基に由来する3.8〜4.0ppm付近のピーク面積から求める。
【0111】
H−NMRの測定の際に、HO−基に由来するピークが他のピークと重複した場合、重水素溶媒を加えてピーク位置をシフトさせることにより定量を行った。
また、内部標準として、ビストリフルオロメチルベンゼンを用いた。
【0112】
NMR分析により同定した各基のモル数から、2,3−エポキシ−1−プロパノール(別名:グリシジルアルコール)の開環付加率(以下、グリシジル付加率と記す。)を、下式を用いて算出した。
グリシジル付加率[モル%]=基(X3−1)[モル]/{基(X1−1)[モル]+基(X3−1)[モル]+基(Z1−1)[モル]}×100。
【0113】
各精製物のNMR分析結果およびグリシジル付加率を表1に示す。
比較のため、例5で得た組成物(f−1)およびソルベイ社製のFOMBLIN Z−TetraOL(下記化合物(FT)、m/n=1.0、Mn:3000、Mw/Mn=1.23)についても、同様にNMR分析した。
HOCHCH(OH)CHOCHCFO(CFO)(CFCFO)−CFCHOCHCH(OH)CHOH (FT)。
【0114】
〔例10〕
〔例10−1〕
精製物(g”−1)〜(g”−6)、組成物(f−1)および化合物(FT)について、GPC分析およびHPLC分析を行った。結果を表1に示す。
【0115】
GPC分析において、精製物(g”−1)〜(g”−6)、組成物(f−1)は、グリシジル付加率の上昇とともに、見かけ上、分子量が減少する傾向がみられる。これは、化合物の極性増加とともにGPCカラム中での吸脱着速度が低下し、溶出時間が大きくなるため、溶出時間による検量を行うと実際よりも分子量が低く換算されることによる。
【0116】
したがって、HPLC分析における化合物の溶出時間を用いて、極性の定性分析を行った。同手法で水を分析すると、その溶出時間(R.T.)は23.5分である。PFPEを磁気記録媒体に用いる場合、化合物の極性が水より小さいと長期の使用に際して大気中の水分で基板に吸着した官能基が交換脱離することが知られている。
【0117】
〔例10−2〕
精製物(g”−1)〜(g”−6)、組成物(f−1)および化合物(FT)について、粘度測定および流動性評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
精製物(g”−1)〜(g”−6)、組成物(f−1)は、グリシジル付加率の上昇とともに、粘度が上昇する傾向がみられる。これは、化合物の極性増加とともに官能基間の相互作用が大きくなることが原因である。PFPEを磁気記録媒体に用いる場合、昨今の用途拡大から、−30〜80℃程度の広範でオイルとしての流動性が求められる。
【0119】
〔例10−3〕
精製物(g”−1)〜(g”−6)、組成物(f−1)および化合物(FT)について、溶解性評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
精製物(g”−1)〜(g”−6)、組成物(f−1)は、グリシジル付加率の上昇とともに、フッ素溶媒への溶解性が低下する傾向がみられる。これも、化合物の極性増加とともに、非極性溶媒であるフッ素溶媒への親和性が低下することが要因である。PFPEを磁気記録媒体に用いる場合、表面張力の小さいフッ素溶媒で希釈したのちに塗布が行われるため、これらへの充分な溶解性が求められる。
【0121】
【表1】

【0122】
〔例11〕
〔例11−1〕
精製物(g”−4)の安定性試験例:
精製物(g”−4)について、窒素雰囲気(100mL/分)下、10℃/分の割合で25℃から500℃まで昇温して精製物(g”−4)の25mgの質量減少を示差熱天秤上で測定する方法で安定性試験を行った。その結果、350℃に至るまでに質量減少はなく、ほぼ一定であった。
酸触媒であるγ−アルミナ微粉(日揮化学社製、N−611N)の0.5gを存在させ、精製物(g”−4)の25mgの安定性試験を行った。結果、質量減少プロフィールは酸触媒がない場合と同様であり、優れた安定性を示した。
【0123】
〔例11−2〕
公知のPFPEの安定性試験例:
公知のPFPE(化合物(FT))を用いて、例11−1と同様の方法で安定性試験を行った。結果、該化合物は、γ−アルミナ微粉の存在下では250℃で全量が一瞬に分解し、低分子量化合物となって気化した。
【0124】
本発明の精製物(g”−2)〜(g”−5)は、化合物(FT)と比較して熱安定性にすぐれる。表1から、粘度が低く、流動性が高く、溶媒への溶解性にすぐれる。また、磁気記録媒体への定着性にもすぐれる。
一方、表1から、グリシジル付加率が90モル%を超える精製物(g”−1)は、特に20℃での粘度が高く、流動性および溶媒への溶解性が不充分である。グリシジル付加率が50モル%未満である精製物(g”−6)は、極性が低く、たとえば磁気記録媒体用の潤滑剤として用いる場合、磁気記録媒体への定着性が不充分である。さらにグリシジル付加率が0モル%の組成物(f−1)は、極性が低く、たとえば磁気記録媒体用の潤滑剤として用いる場合、磁気記録媒体への定着性が不充分である。化合物(FT)は、熱安定性が不充分である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明のエーテル組成物は、潤滑剤等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記基(Y)と、
前記基(Y)に結合した下記基(X1)および前記基(Y)に結合した下記基(X2)から選ばれる1種以上の基と、
前記基(Y)に結合した下記基(X3)とを有し、
前記基(Y)に結合した下記基(Z1)をさらに有してもよい2種以上の化合物(A)からなるエーテル組成物であり、
該エーテル組成物中の基(X1)の総モル数、基(X2)の総モル数、基(X3)の総モル数および基(Z1)の総モル数の合計に対する基(X3)の総モル数の割合が、50〜90モル%である、エーテル組成物。
基(Y) :ペルフルオロ化された2価以上の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基。
基(X1):末端にHO−CHCFO−基を有する基。
基(X2):末端にHO−CHCHO−基を有する基。
基(X3):末端にHO−CHCH(OH)CHO−基を有する基。
基(Z1):末端にRO−基を有する基(ただし、Rは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基)。
【請求項2】
前記基(Y)が、ペルフルオロ化された2〜7価の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である、請求項1に記載のエーテル組成物。
【請求項3】
前記基(X1)が、下式(X11)で表される基(ただし、d1は1〜200の整数である。)であり、
前記基(X2)が、下式(X12)で表される基(ただし、a1は1または2であり、c1は1〜100の整数であり、d2は1〜200の整数である。)であり、
前記基(X3)が、下式(X13)で表される基(ただし、a2は0〜2の整数であり、c2は1〜100の整数であり、d3は1〜200の整数である。)であり、
前記基(Z1)が、下式(Z11)で表される基(ただし、gは3〜200の整数である。)である、請求項1または2に記載のエーテル組成物。
HO−CHCFO(CFCFO)d1− (X11)
HO−(CHCHO)a1−(CHc1−CFO(CFCFO)d2− (X12)
HO−CHCH(OH)CHO−(CHCHO)a2−(CHc2−CFO(CFCFO)d3− (X13)
O(CFCFO)− (Z11)
(ただし、Rは炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基)
【請求項4】
前記化合物(A)が、下式(A)で表わされる化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載のエーテル組成物。
(X11−)m1(X12−)m2(X13−)m3(Z11−)m4Y (A)
ただし、m1は0〜2の整数であり、m2は0〜2の整数であり、m1+m2は1〜4の整数であり、m3は1または2であり、m4は0または1であり、m1+m2+m3+m4は2〜7の整数であり、X1は前記式(X11)で表される基であり、X12は前記式(X12)で表される基であり、X13は前記式(X13)で表される基であり、Z11は前記式(Z11)で表される基であり、Yは、ペルフルオロ化された(m1+m2+m3+m4)価の飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である。
【請求項5】
前記化合物(A)が、−OCFO−構造を有さない化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載のエーテル組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のエーテル組成物を含む、潤滑剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のエーテル組成物と、前記化合物(A)を溶解する溶媒とを含む、潤滑剤。
【請求項8】
前記化合物(A)の質量と前記溶媒の質量との合計に対する前記化合物(A)の質量の割合が、0.0001〜10質量%である、請求項7に記載の潤滑剤。

【公開番号】特開2012−184275(P2012−184275A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167059(P2009−167059)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】