説明

オイルストレーナ

【課題】オイルに含まれる水分を確実に除去するための手段を提供することを課題とする。
【解決手段】多孔質シリカを充填したオイルストレーナにより、前記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質シリカを充填したオイルストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の自動変速機内部にはオイルが充填されており、内部ギアの潤滑や冷却などの役割を果たしている。車両が走行すると変速機内部は高温となるため、内部圧力の上昇を防止するために開口式のブリーザ装置が搭載されている。そのため、外部からブリーザ装置を介して水分がオイルに混入する。水分の混入量が増加すると、オイルの絶縁性能が低下するため、漏電が発生する危険性がある。
【0003】
従来より、オイル中の水分を除去する方法は数多く知られている。例えば、特許文献1では、燃料油に含まれる水分を除去するために、水に対して吸着性を有するセルロース及びその誘導体、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、ポリエチレンオキシド及びその誘導体、アルギン酸及びその誘導体、グアガム及びその誘導体、無水マレイン酸ブタジエン誘導体、ペクチン、キサンタンガム、並びにカラギナンガムを使用することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、舶用燃料油に含まれる水分を除去するために、ポリアクリル酸系樹脂などの吸水性ポリマーを使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−179089号公報
【特許文献2】特開平3−238003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などが大きく注目されているが、セルロースなどの従来の水分除去剤では、HVやEVが要求する絶縁性能を満足させることはできない。また、オイル中の水分はオイルの摩擦特性(μ−V特性)も低下させるため、車両に振動(ジャダー)を生じさせる可能性がある。
【0007】
そのため、本発明は、より確実にオイルに含まれる水分を除去するための手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、オイルストレーナに多孔質シリカを充填することにより、オイルに含まれる水分を効率的に除去できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)多孔質シリカを充填したオイルストレーナ。
(2)多孔質シリカが多孔質シリカゲルである、(1)に記載のオイルストレーナ。
(3)多孔質シリカが親水性部を有する、(1)に記載のオイルストレーナ。
(4)親水性部がポリオキシアルキレンである、(3)に記載のオイルストレーナ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オイルに含まれる水分を効率的に除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】多孔質シリカを充填したオイルストレーナを示す。
【図2】水分と絶縁性能との関係を示す。
【図3】多孔質シリカによる水分除去を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、多孔質シリカを充填したオイルストレーナに関する。多孔質シリカを使用することにより、オイルに含まれる水分を効率的に除去することができる。その結果、オイルの絶縁性能及び摩擦特性の低下を防止することができる。
【0013】
本発明で使用する多孔質シリカとしては、従来から知られている様々な種類のものを使用することができる。特に限定するものではないが、多孔質シリカとして多孔質シリカゲルを使用することが好ましい。多孔質シリカゲルを使用することにより、より効率的にオイル中の水分を除去することができる。
【0014】
多孔質シリカとして、親水性部を有するものを使用することもできる。親水性部としては、例えば、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなど)を挙げることができる。特に限定するものではないが、親水性部としてポリオキシエチレンを有していることが好ましい。
【0015】
より具体的には、以下の式(I):
−Si―R4−n (I)
[式中、
は、独立して、−(CH−(OCHCH−OHであり;
は、独立して、水素、ヒドロキシ、C1−6アルキル(好ましくは、C1−3アルキル)、又はC1−6アルコキシ(好ましくは、C1−3アルコキシ)であり;
nは1、2、3、又は4であり;
xは1〜6の整数であり
yは1〜6の整数である]
で表される多孔質シリカを挙げることができる。
【0016】
図1に多孔質シリカを充填したオイルストレーナを例示する。図1に示すように、オイルを各箇所に圧送するオイルストレーナに多孔質シリカを充填することにより、外部から浸入した水分を吸収することができる。特に、オイルが低温の状態において水分を吸収し、オイルが高温の状態(例えば、100℃以上)になると多孔質シリカから水分が蒸発する。これにより、多孔質シリカの水分除去能力を維持することができる。
【0017】
図2に示すように、オイルに水分が混入すると絶縁性能が低下する。そのため、従来は水分が混入することを前提として、予めモーターの使用頻度などに制御をかけていた。しかし、多孔質シリカを使用することにより、水分の混入による漏電を防止することができる。そのため、従来の前提制御を抑えることができ、燃費や製品力を向上させることが可能となる。
【0018】
多孔質シリカは、従来の水分除去剤と組み合わせて使用することもできる。従来の水分除去剤としては、例えば、セルロース、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、ポリエチレンオキシド及びその誘導体、アルギン酸及びその誘導体、グアガム及びその誘導体、無水マレイン酸ブタジエン誘導体、ペクチン、キサンタンガム、カラギナンガム、ポリアクリル酸などを挙げることができる。
【0019】
本発明のオイルストレーナの用途は、自動車(HV、EVなど)に限られず、船舶、航空機、発電機などに使用することもできる。特に、オイルストレーナを通過するオイルの温度が低温から高温まで変化する系において使用することが好ましい。例えば、−40〜160℃、特に、20〜140℃の範囲でオイルの温度が変化する系において使用することが好ましい。このような系では、低温状態において水分が多孔質シリカに吸収され、高温状態において、吸収された水分が蒸発するため、多孔質シリカを繰り返し使用することが可能となる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0021】
1.水分と絶縁性能との関係
試験はJIS C2101(電気絶縁油試験方法,24.体積抵抗率試験)に準拠して行った。オイル(鉱物油ベースの潤滑油)に0.5%の水を添加し、絶縁性能の変化を測定した(図2)。図2に示すように、特に低温(40℃)において、水分の存在はオイルの絶縁性能に悪影響を与えた。
【0022】
2.多孔質シリカによる水分除去
試験はJIS K2275(原油及び石油製品−水分試験方法)に準拠して行った。オイル(鉱物油ベースの潤滑油、500ml)に規定量(2.5ml)の水を添加し、多孔質シリカ(10g、富士シリシア化学(株)製のフジシリカゲルB形)と共に密閉容器に入れ、120℃で10時間放置した。多孔質シリカによる水分除去の前後における水分量の変化を測定した(図3)。比較として、多孔質シリカを使用しない場合の水分量の変化も測定した。
【符号の説明】
【0023】
1 多孔質シリカ
2 金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シリカを充填したオイルストレーナ。
【請求項2】
多孔質シリカが多孔質シリカゲルである、請求項1に記載のオイルストレーナ。
【請求項3】
多孔質シリカが親水性部を有する、請求項1に記載のオイルストレーナ。
【請求項4】
親水性部がポリオキシアルキレンである、請求項3に記載のオイルストレーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22537(P2013−22537A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161172(P2011−161172)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】