説明

オイルフェンス

【課題】滞油性及び作業性が高いオイルフェンスを提供すること。
【解決手段】水面に浮かべるためのフロートと、油等の浮遊物が河川、湖、海等の水面上に拡散することを防止するための、フロート下部に取り付けた不透水性のスカートと、からなるオイルフェンスであって、スカート下端部の延長方向に連続して緊張材を設け、前記緊張材に係留ロープを取り付けることを特徴とする、オイルフェンス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油等の浮遊物の拡散を防止するためのオイルフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋又は河川において油流出事故が発生した際に、油の拡散防止及び回収のために、オイルフェンスが用いられる。
オイルフェンスは、水面に浮かべるためのフロートと、フロート下部に取り付けて油の拡散を防止するためのスカートと、によって構成されるものが一般的である。
【0003】
従来、国土交通省から型式承認を受けたオイルフェンスが、日本における共通仕様として製造・使用されている。
この仕様のオイルフェンスは、フロート直下のスカート上部に緊張材を設け、その緊張材に係留ロープを取り付けて現場水面上に展開するものである。(図4)
このオイルフェンスは、スカート下端を水中に沈下させて流出油を遮断するように、スカート下部にチェーン等の錘を取り付けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のオイルフェンスには、以下のような問題があった。
<1>現場の水流速度が20cm/秒程度以上になると、スカート下部が流されて捲れ上がって、スカート下端の水深(有効水深)が浅くなり、流出油がスカートの下を潜り抜けてしまい、滞油性を損なうことが多い。
<2>上記<1>を回避するために、錘の重量を増やすと、オイルフェンスの重量が増加し、運搬・展開・緊張作業の効率が悪くなってしまい、作業が遅れ、油が拡散してしまう恐れがある。
<3>錘には鉛や鉄等の金属が使用されており、自然環境への悪影響が懸念される。
<4>錘となる鉛や鉄等の金属は、船体や他の金属と接触して火花を発する恐れがある。
<5>使用後のオイルフェンスは焼却によって最終処分を行うが、焼却前に錘となる金属を取り外す作業が発生する。
【0005】
本発明の目的は、滞油性及び作業性が高く、軽量で環境に配慮したオイルフェンスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、水面に浮かべるためのフロートと、油等の浮遊物が河川、湖、海等の水面上に拡散することを防止するための、フロート下部に取り付けた不透水性のスカートと、からなるオイルフェンスであって、スカート下端部の延長方向に連続して緊張材を設け、前記緊張材に係留ロープを取り付けたことを特徴とする、オイルフェンスを提供することを目的とする。
本願の第2発明は、第1発明のオイルフェンスにおいて、前記緊張材は、繊維からなるベルト材又はロープ材であることを特徴とする、オイルフェンスを提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>スカート下端部に設けた緊張材に係留ロープを取り付けることによって、スカート下部が引張力で保持され、スカートが捲れ上がることなく、有効水深が保持され、滞油性が向上する。
<2>緊張材は繊維製であるため、軽量であり、運搬・展開・緊張作業等の効率が向上するとともに、作業員の怪我の恐れが大幅に軽減される。
<3>錘として金属を使用しないため、自然環境への影響がない。
<4>錘として金属を使用しないため、他の金属との接触による火花の発生も全く無く、安全である。
<5>錘として金属を使用しないため、使用後の最終処分(焼却)も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るオイルフェンスの斜視図
【図2】本発明に係るオイルフェンスの正面図
【図3】本発明に係るオイルフェンスの説明図
【図4】従来のオイルフェンスの説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例】
【0010】
[1]オイルフェンスの構成
本発明のオイルフェンス1は、フロート2と、フロート2下部に取り付けたスカート3とから構成されている。(図1、図2)
【0011】
(1)フロート
フロート2は、オイルフェンス1を海面や川面に浮かべるためのものである。
フロート2は、袋体の内部に空気や略円柱状の発泡材等の浮体を封入して構成する。
【0012】
(2)スカート
スカート3は、フロート2から水中に垂下し、油等の浮遊物が河川、湖、海等の水面上に拡散することを防止するためのものである。
スカート3は、不透水性で可撓性を有する布製の略矩形の部材である。
スカート3は、フロート2から垂下するように、縫合等によって取り付ける。
スカート3の下端には、延長方向に沿って緊張材4を設ける。
フロート2とスカート3の両端部には、オイルフェンス1同士を連結するために、フロート2とスカート3の側面に連続する連結部5を設け、両端の連結部5の互いに対応する位置に、連結穴51を設ける。
【0013】
(3)緊張材
緊張材4(テンションメンバ)は、スカート3の下端の延長方向に沿って連続して配置する部材である。
緊張材4は、ポリエステル繊維を編んだベルト状又はロープ状の部材(テンションベルト)であり、スカート3の下部に縫合等によって連続して取り付ける。
オイルフェンス1を連結した場合には、緊張材4は連結部5を介して連続する。
緊張材4の端部付近には、接続具41を介して係留ロープ6を取り付ける。
【0014】
(4)係留ロープ
係留ロープ6は、オイルフェンス1を係留するための部材であり、ポリプロピレン製のロープ材である。
係留ロープ6は、一方の端部を接続具41を介して緊張材4に取り付け、もう一方の端部を船に取り付け、又は地面や水底でアンカーによって固定、又は陸上の杭等に固定する。
オイルフェンス1を複数個連結して使用する場合には、係留ロープ6は連結したオイルフェンス1の両端の接続具41に取り付ける。
【0015】
[2]使用方法
次に、上記したオイルフェンス1の使用方法について説明する。
(1)運搬
オイルフェンス1を、油等の浮遊物の拡散防止及び回収を行う現場まで、車両や船によって運搬する。
スカート3に設ける緊張材4は繊維性であるため、オイルフェンス1は軽量となり、海洋上に限らず、商業地や住宅地にある河川で流出事故が発生した際にも、容易に運搬を行うことができる。
複数のオイルフェンス1を連結する場合には、隣り合うオイルフェンス1の対応する連結穴5を重ね合わせ、ボルト等の結合部材を挿通して、現場で展開する前にあらかじめ連結する。
ジッパーによる連結ではなく、結合部材を連結穴51に挿通することによる連結であるため、ジッパーの破損や開具の位置合わせがなく、また、砂噛みもないため、連結作業の効率が向上する。
【0016】
(2)展開
次に、拡散している油等の浮遊物の範囲に合わせて、オイルフェンス1を展開する。
展開は、流出した油等の浮遊物より下流側の水面上にオイルフェンス1を浮かべ、両端に設けた係留ロープ6を船や人力によって曳行して行う。予め一方の端部を地面や水底にアンカーを取り、一方の端部を曳航してもよい。
オイルフェンス1の緊張材4は繊維製であり、金属製の錘も使用していないため、オイルフェンス1は軽量となり、船体等の他金属との接触による火花の発生を考慮する必要がなく、迅速に展開することができ、事故による被害の拡大を防止することができる。
また、緊張材4は繊維製であるため、作業員の怪我の恐れが大幅に軽減される。
【0017】
(3)緊張
展開したオイルフェンス1は、両端に設けた係留ロープ6によって保持される。
オイルフェンス1は、スカート3が不透水性であるため、フロート2やスカート3に作用する水流による力Fや係留ロープ6の引張力Tによって、緊張した状態で保持される。(図3)
このとき、係留ロープ6は、スカート3下部の緊張材4に取り付けるため、オイルフェンス1は、スカート3の下部を支点として係留される。
【0018】
(4)下部係留の効果
オイルフェンス1には水流による力Fが作用する。スカート3の下部の両端は係留ロープ6で係留されているため、スカート3の下部には端部方向への引張力が作用する。スカート3下部には緊張材4を設けているため、緊張材4が補強材となり、スカート3の強度が増し、引張力が作用しても破損することがない。
係留ロープ6の引張力Tと、スカート3に作用する水流による力F、及び、フロート2の浮力が組み合わさることによって、オイルフェンス1のスカート3の下端は、フロート2より上流側に位置し、スカート3の有効水深は確保される。
スカート3の有効水深が確保されるため、流出した油等の浮遊物がスカート3の下を潜り抜けることがない。
流速が速い現場では、スカート3に作用する力Fが増加することによって、緊張材4及び係留ロープ6に作用する引張力Tが増すが、フロートの浮力により有効水深が確保されることになり、拡散防止性能(滞油性)が落ちることはない。
【0019】
また、下部係留は、スカート3に作用する力Fによって有効水深を確保するため、錘を使用する必要がない。
錘は鉛や鉄等の金属であり、この金属を使用しないため、環境へ悪影響を及ぼすことがない。
また油回収後に、使用したオイルフェンス1は焼却処分するが、金属が廃棄物として発生しないため、廃棄物を削減することができる。また、金属を取り外す作業が発生しないため、処分作業も容易となる。
【符号の説明】
【0020】
1 オイルフェンス
2 フロート
3 スカート
4 緊張材
41 接続具
5 連結部
51 連結穴
6 係留ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮かべるためのフロートと、油等の浮遊物が河川、湖、海等の水面上に拡散することを防止するための、フロート下部に取り付けた不透水性のスカートと、からなるオイルフェンスであって、
スカート下端部の延長方向に連続して緊張材を設け、
前記緊張材に係留ロープを取り付けたことを特徴とする、
オイルフェンス。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルフェンスにおいて、
前記緊張材は、繊維からなるベルト材又はロープ材であることを特徴とする、
オイルフェンス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−159563(P2010−159563A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1544(P2009−1544)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【出願人】(598094399)株式会社タナカ商事 (2)
【Fターム(参考)】