説明

オムツ固定カバー

【課題】
成人用オムツは、使用時に尿漏れが起きるという問題があった。これは使用者の下肢部の動きにて大腿部付け根に空隙が生ずることが主な原因である。
【解決手段】
オムツの上から、改良された褌型の布状カバーを装着することにより、使用者の動きを妨げることなく、尿漏れを防止することが可能となる。これにより、使用者や介護者の肉体的・精神的負担を軽減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老若男女を問わず、身体障害者や疾病者などで廃糞尿の処理でオムツをあてがった人に有効なオムツ固定カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会に対応した、成人用オムツが多種開発され、市販されている。高齢者や身体障害者、病気などに罹患した患者など何らかの介護を必要とする人が、独自での用便に不自由する場合、廃糞尿の処理のため近年では高分子吸収剤などを含むディスポーザブル、パンツタイプの成人用オムツが広く使用されている。当該商品は吸水性や装着容易性には優れるものの、オムツの交換が遅れた場合、または使用者の動きによって、尿漏れ対策については満足いくものとは言えない。一度尿漏れが起きると、寝具や着衣が濡れ、腹部への逆流などもあり、使用者の不快感を招き、睡眠の妨げとなるばかりか、介護者の負担も増しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3107949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年市販されている成人用オムツは、吸水性と装着容易性に優れているが、仰臥位において使用者が寝返りなどの動きをした場合など、体重や可動時の体圧などにより押されて、一旦高分子吸収剤などに吸収された尿や汚物が、身体部とオムツとの境界部より漏れ出てしまう、所謂「尿漏れ」が発生することが多い。また、吸収剤で尿を吸収したオムツと下肢部との密着部にズレが生じることにより、使用者に不快感が生じやすい。
【0005】
本発明の目的は、当該成人用オムツの問題点である、オムツ外への尿漏れを防止させることにある。本発明は、尿を吸収したオムツを固定させることで、尿漏れを防ぎ、同時に圧迫感や下肢部の動きを妨げることなく、使用者の不快感を軽減させることにある。
【0006】
従来のオムツ着用時に、使用者に不快感が生じる理由としては、特に仰臥を強いられる状態の使用者にとって一旦オムツに吸収された尿が、下肢部の動きにより寝具との間で圧迫されて吸収された尿が再度漏洩することに起因するところが大きい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は鋭意検討した結果、漏れが生じる原因が1.使用者の動きによってオムツとオムツカバーとの間に隙間が生じること、2.使用者が動くことにより、尿を吸収した吸収剤部分を圧迫させることに起因することと考え、オムツを如何に使用者の動きを妨げることなく、かつ不快感を与えることなく固定するかが肝要であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、オムツを使用者の動きによっても、その下肢部からずれないように固定させるオムツ固定カバーである。本発明のオムツ固定カバーは、オムツを下肢部にあてがった状態で、オムツの上に装着するものであり、その主たる構成は、主要部である長方形状の布地の一端に後ろ紐を取り付け、いわゆる「ふんどし」形状とし、布地の他端はV字型に裁断して裁断部分の縁に沿って前紐を付けたものである。
【0009】
このオムツ固定カバーの使用方法は、下肢部にオムツをあてがった使用者自身かまたは介護者が、まずこのオムツ固定カバーの主要部である長方形状の布の一端に沿って縫い付けた後ろ紐をもって前に回し、臍辺りで軽く結ぶ。続いて主要部のV字状にカットされた他端に縫い付けられて垂れている太くて長い前紐をもち上げ、主要部を股下にくぐらせて前に引き上げ、前紐を前から後ろに回して後ろの中央部分で交差させ、前斜め臍下に持ってきて両端を結ぶ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成人用オムツの課題であった、吸水能力の限界を超えた場合、または使用者が下肢部を動かすことにより生じるオムツと下肢部との間に生じる隙間から尿漏れが発生することを防止できる。
【0011】
本発明により、尿漏れを防止でき、寝具や着衣を汚すことが無くなり、使用者の不快感及び介護者の負担を改善することができる。寝返りや下肢部の動きが生じても、オムツの位置がずれることなく、尿漏れが防止できる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】オムツ固定カバーを構成する主要部、後ろ紐及び前紐の裁断して示した図
【図2】同主要部に後ろ紐と前紐を縫いつける状態図
【図3】同主要部に後ろ紐と前紐を縫いつけた仕立て上りのオムツ固定カバーを示す図
【図4】同オムツ固定カバーを使用者の下肢部にあてがい後ろ紐を前に持ってきて結んだ図
【図5】同オムツ固定カバーの前紐を左右両手でもって、背中の中央部分で交差させる過程の状態図
【図6】同オムツ固定カバーの前紐を背中の中央部分で交差させ前に持ってきて臍下で左右の端部を結んだ側面図
【図7】同オムツ固定カバーを使用者が装着して、主要部の直線部分と下肢部との密着度具合を示して歩く図
【図8】同オムツ固定カバーを使用者が装着をし終えた状態を正面からみた図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に使用するオムツ固定カバーでは、各種の布状素材を使用することができるが、メリヤスの様な伸縮性がある素材や安易に破損する素材は好ましく無い。即ち強固であり、伸縮性のない、平織りで嵩張らない、薄めの木綿や合成繊維の布が望ましい。
【0014】
本発明では、固定カバーの装着に特別な手間と時間をかけることなく、オムツを固定できる。更に本発明は、装着時に使用者の下肢部の動きを妨げることなく、尿漏れを防止できる。またズボン、スカート等の着衣の下に装着しても着膨れすることなく安定である。
【0015】
本発明の主たる構成は図1に示した3つの部分、すなわち布製の主要部と後ろ紐及び前紐からなり、図2及び図8に示すような、日本旧来の「褌」「たふさぎ」前後に結束紐を有する布製の装着帯である。オムツ全体を包み込む中央部の長方形の主要部のV字状にカットされた部分には襞が複数本生じるように前紐が縫い付けられる。
【0016】
主要部の大きさは、使用者の体格にて変化するが、身長140cmから180cmの成人を想定した場合、幅100〜140cm、長さ70〜100cmが適当である。望ましくは、幅120±10cm、長さ85cm±10cmが好ましい。
【0017】
後ろ紐、前紐の長さは、使用者の体格にて変化するが、身長140cmから180cmの成人を想定した場合、前紐は210cmから270cmの長さ、後ろ紐は150cmから200cmの長さが適当である。望ましくは、前紐は長さ240cm±10cm、後ろ紐は長さ170cm±10cmが好ましい。
また、紐の幅は、安易に外れなく、結束できる太さであれば問題無い。尚、前紐にはオーガンジーの芯地をはさみ入れ、腰部がシワにならないよう、痛がらないよう配慮してあるので腰痛を緩和するコルセットの役目をも果たす。
【0018】
本発明品の装着方法は、図3及び4に示すとおり次の3ステップにて行う。イ後方部分の短い方の後ろ紐1をもち、本発明品を広げ、腰部の後方から前に廻して結束する。このとき前方股関節の両側に主要部の布の1部が覆い被さる布9(以下後ろ布と称す)。ロ次に主要部を符号10の下矢印の方向に後方から股間をくぐらせて主要部布(以下前布と称す)を前に移動させ、上部へ向けて引き上げながら、オムツ全体を覆いこむ。このとき、前布は後ろ布の上に被さることとなる。ハ最後に、前方部分の長い方の紐3を前方から後方に廻して再度前方へ1回転させて廻しこみ、前方にて結束する。ポイントは、前方での結束位置を下腹部下部、へその下10cmから15cmの位置にて結束することにある。以上にて最も尿漏れしやすい大腿部付け根部分の空隙が、布により押さえ込まれ、漏れを防止することとなる。
【0019】
装着時、腹部、腰部及び大腿部に主要部布が密着することが肝要であるが、主要部布前方をV字型にカットし、更にV字に沿ってそれぞれ両方に襞を取るが、この襞がオムツ固定カバー帯のゆとりとなった、可動部分を妨げることなく、密着性を増す効果を発揮する。
【0020】
当該装着方法にて、大腿部付け根部分の前布は、下肢から腰部に向けて斜め方向に固定されることとなり、大腿部付け根の可動領域を妨げることなく、尿漏れの原因となる空隙を無くすことができる。
【0021】
当該発明品の装着は、非常に簡便であり、装着時間は1分程度にて完了する。
【0022】
当該発明品は、工業的にも製作工程は簡便であり、安価にて生産が可能である。
【0023】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。図2に示す発明品を複数作成し、介護必要で、成人用オムツの常用者ボランティアに装着してもらい、実験を実施した。
【0024】
<実施例1>
ボランティアA:
年齢 75歳 男性、 症例;糖尿病罹患、オムツ着用年数 2年
【0025】
上記対象者にて、14日間、4回に渡り、発明品の装着時と非装着時とを繰り返し、A装着性 B違和感 C尿漏れ回数 D限界尿回数 E不快感に関して装着の効果を評価した。
その結果、非装着時は、1日間に2回の失禁にて、尿漏れが生じ、衣類と寝具を汚したが、装着時には2日間最長で、4回の失禁に対しても漏れることなく、対象者も違和感なく安眠でき、衣類と寝具も濡れることは無かった。漏れを発生しない限界尿回数は、平均で3.4回であった。
【0026】
<実施例2>
ボランティアB:
年齢 80歳 女性、 症例;アルツハイマー型痴呆症、オムツ着用年数 3年
【0027】
上記対象者にて、10日間、3回に渡り、発明品の装着時と非装着時とを繰り返し、A装着性 B違和感 C尿漏れ回数 D限界尿回数 E不快感に関して装着の効果を評価した。
その結果、非装着時は、1日間に2回の失禁にて、尿漏れが生じ、衣類と寝具を汚したが、装着時には2日間最長で5回の失禁に対しても漏れることなく、対象者も違和感なく安眠でき、衣類と寝具も濡れることは無かった。漏れを発生しない限界尿の回数は、平均で3回であった。
【符号の説明】
【0028】
1・・・後ろ紐
2・・・主要部
3・・・前紐
4・・・V字状カット
5・・・主要部布角部(直角)
6、7・・・主要部布側部(直線)
7’・・・主要部布中央長
8・・・前方紐との接合部角度
9・・・主要部後ろ布(前方部布に押さえられる箇所)
10・・・主要部後ろ布
11・・・前方紐の下部(中心で2.5cm幅の襞をとる)
A・・・臀部中心部(襞と皺)
B・・・臀部側部(襞と皺が無い部分)
12・・前方紐結束位置(やや斜め下方向で結束)
13・・主要布側部(直接部分)
14・・背部 前方部紐と後方部紐との交差部分













































【特許請求の範囲】
【請求項1】
市販のオムツの上に装着するオムツ固定カバーで、主要部である布自体は平織りの直線を利用するため伸びない布を用い、その形状は「ふんどし」型で主要部をなす長方形の布の前後に結束紐を取り付け、後ろ紐を腹部のへその所で軽く結び、垂れた前紐をもって主要部を股下にくぐらせて引き上げ、前から後ろ中央で紐を交差させ前斜めのへそ下にもってきて結束するオムツ固定カバー。
【請求項2】
請求項1のオムツ固定カバーにおいて、腹部、腰部及び大腿部に布が密着し、且つ大腿部前部との密着部にV字構造を設け、且つ適切な襞部分を設けることにより、前部の大腿部下肢部可動域を妨げることなく、漏れを防止できるオムツ固定カバー。
























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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