説明

オリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法

【課題】本発明の課題は、少量の加水分解酵素の存在下、簡便な操作で、速やかにオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物を収率良く取得することができる、工業的に優れ、かつ環境的負荷の少ない製造法を提供することにある。
【解決手段】加水分解酵素(特にリパーゼ)の存在下、アルキレンジオールジアシレート化合物とカーボネート化合物とのエステル交換反応によるオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物を得る製造方法において、触媒を失活させず、安定に存在させることで、従来よりも少量の酵素の使用で、かつ反応速度の速い新規な工業的製造プロセスを見出し本発明に至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解酵素を用いたアルキレンジオールジアシレート化合物とカーボネート化合物との反応によるオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法に関する。
【0002】
本発明の方法により、製造されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物は、生分解性を有する、優れた高分子機能性材料として有用な化合物である。
【背景技術】
【0003】
従来より、オリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物は、優れた生分解性に加え、高い生体への安全性から、例えば、医薬品や香粧品分野における徐放性薬剤の基材等としての利用をはじめ、機能性或いは、高性能有機材料分野等、高分子素材として様々な分野での使用が期待されている。
【0004】
オリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物を得る方法としては、古くから、ホスゲンとジオール化合物とから製造する方法が広く知られている。しかし、有毒なホスゲンを用い、ハロゲン化合物を廃棄物として副生しながら製造するため、別の製造方法が望まれてきた。
また近年、加水分解酵素を用いた重合反応により、アルキレンジオール化合物とカーボネート化合物とを酵素を用いて反応させる方法についても報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2参照)。
これらの酵素を用いる方法は、多くの場合、大量の酵素を用いて反応が行なわれている。その理由として、この酵素反応において、基質であるアルコール、または副生するアルコール化合物により、酵素は、失活しやすいことが一般的に知られており、例えば、C.antarcticaからのリパーゼは、グリセロールにより阻害されるということも既に報告されている(例えば、特許文献2参照)。更に同文献では、第二級アルコールを初期反応混合物に含まないことが好ましいとも記載されている。従って、アルキレンジオール化合物とカーボネート化合物とから、ポリ(アルキレンカーボネート)化合物を得るような重合反応においても同様に、原料のアルキレンジオール化合物や反応により副生するアルコール化合物は、酵素の変性剤となり、その活性を消失させる場合が多く、その結果、反応自体を止めてしまうことが分かっている。そのため、反応を十分に進行させるためには、この失活分を補うべく大量の酵素を適宜追加することが必要となるが、このような大量の薬品の使用、及び廃棄物を産出する方法は、工業的に好適な製造方法とはいい難かった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−80160号公報
【特許文献2】特表平08−503850号公報
【非特許文献1】Macromol.Chem.Phys.,201,1632(2000)
【非特許文献2】Macromolecules,40,7934(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、少量の加水分解酵素の存在下、アルキレンジオールジアシレート化合物とカーボネート化合物とから、簡便な操作で、速やかにオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物を収率良く取得することができる、工業的に優れ、かつ環境的負荷の少ない製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、加水分解酵素(特にリパーゼ)の存在下、アルキレンジオールジアシレート化合物とカーボネート化合物とのエステル交換反応によるオリゴアルキレンカーボネート、又はポリアルキレンカーボネート化合物を得る製造方法において、触媒を失活させず、安定に存在させることで、従来よりも少量の酵素の使用で、かつ反応速度の速い新規な工業的製造プロセスを見出し本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明の課題は、加水分解酵素の存在下、下記式(I);
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは、炭素原子数1から10のアルキル基、又は炭素原子数7から20のアラルキル基を示し、置換基を有していても良い。Rは、炭素原子数1から20の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、又は芳香環含有又は複素環含有アルキレン基を示し、置換基を有していても良い。)
で示されるアルキレンジオールジアシレート化合物と、下記式(II);
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、RとRは、それぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基、又は炭素原子数7から20のアラルキル基、又はアリール基を示し、置換基を有していても良い。)
又は、式(III);
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Rは、炭素原子数1から20の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、又は芳香環含有又は複素環含有アルキレン基を示し、置換基を有していても良い。RとRは、それぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基、又は炭素原子数7から20のアラルキル基、又はアリール基を示し、置換基を有していても良い。更に、RとRが一緒になって環を形成してもよい。)
で示されるジカーボネート化合物とを反応させることを特徴とする、下記式(IV);
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、Rは、前記と同義である。また、X及びYは、互いに同一又は異なっていても良く、前記と同義のR、OR、又はORから、それぞれ一つ選ばれる。nは重合度を表わし、2以上の整数を示す。)
又は、式(V);
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、X’及びY’は、互いに同一又は異なっていても良く、R、OR、又はORから、それぞれ一つ選ばれる。また、A及びBは、互いに同一又は異なっていても良く、前記と同義のR、又はRから、それぞれ一つ選ばれる。n’は重合度を表わし、1以上の整数を示す。)
で示される、オリゴアルキレンカーボネート、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法によって解決される。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、加水分解酵素存在下、アルキレンジオールジアシレート化合物とカーボネート化合物とから穏和な条件下、簡便かつ工業的に好適な方法によって、様々なアルキレン基の組み合わせのオリゴアルキレンカーボネート、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造が可能となった。
また、本発明の製造方法により、アルキレンジオールジアシレート化合物を使用することで、反応中に酵素に変性作用を及ぼすアルコール化合物が副生しないため、従来問題であった酵素の失活を回避し、酵素を安定に存在させることが可能になった。その結果、重合反応を長期間行なうことが可能になり、様々な重合度のオリゴアルキレンカーボネート、及びポリアルキレンカーボネート化合物を得ることが可能となった。
更に本発明で副生するエステル化合物は、従来の原料としてジオール化合物を使用した場合に副生するアルコール化合物よりも、低沸点であるという点から反応系外への除去操作は有利である。そこで、副生するアルコール化合物を反応系から除去することで、可逆反応である本反応の平衡が目的物の生成方向へ移動し、速やかに反応が進行することを見出し、これを利用して、短い反応時間、かつ少量の酵素の使用でオリゴアルキレンカーボネート、及びポリアルキレンカーボネート化合物を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、有機溶媒の存在下、又は非存在下、加水分解酵素、式(I)で示されるアルキレンジオールジアシレート化合物(化合物(I))、及び式(II)で示されるカーボネート化合物(化合物(II))とを混合し、アルキレン基;Rを有する、式(IV)で示されるオリゴアルキレンカーボネート、又はポリアルキレンカーボネート化合物を得る、反応式〔1〕;
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、RからR、X、Y及びnは、前記と同義である。また、Zは、前記と同義のR又はRから選ばれる。)
又は、化合物(II)の代わりに、式(III)で示されるアルキレンジオールジカーボネート化合物(化合物(III))を用いて、反応式〔1〕と同様の反応を行い、アルキレン基;R及びRを有する、式(V)で示されるオリゴアルキレンカーボネート、又はポリアルキレンカーボネート化合物を得る、反応式〔2〕;
【0023】

【0024】
(式中、R、R、R、R、R、A、B、X'、Y'、及びn’は、前記と同義である。また、Wは、前記と同義のR又はRから一つ選ばれる。)
で示される、2つの重合反応により行なわれる。
また、本発明の前記重合反応は、次の2つの操作方法にて行なわれる。
【0025】
(方法1;ワンポット合成法)方法1は、以下の2つの工程により行なわれる。
第一工程:有機溶媒存在下、又は非存在下、加水分解酵素、化合物(I)、化合物(II)又は化合物(III)とを撹拌等により混合しながら、例えば、化合物(II)が除去されない程度の減圧下、及び/又は加熱条件下にて、反応により生じる式(VI)で示されるエステル化合物(化合物(VI))を除去しながら、目的物である式(IV)、又は式(V)で示されるオリゴアルキレンカーボネート、又はポリアルキレンカーボネート化合物を含む反応溶液を得る。
第二工程:引き続き、第一工程にて得られた反応溶液を、第一工程より高い減圧下、及び/又は高い加熱条件下、反応により生じる式(VI)で示されるエステル化合物を除去しながら重合反応を行い、目的とする当該オリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネートを合成する。
【0026】
(方法2;段階合成法)方法2は、以下の2つの工程により行なわれる。
第一工程:方法1、第一工程と同様の反応条件、反応操作を行い、反応終了後、目的とする当該オリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネートの単離取得を行なう。
第二工程:有機溶媒存在下、又は非存在下、加水分解酵素、第一工程にて得られたポリアルキレンカーボネート化合物又はオリゴアルキレンカーボネート化合物、化合物(II)又は化合物(III)とを混合し、方法1、第二工程と同様の反応条件下にて重合反応を行い、さらに重合度の高い当該オリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネートを合成する。
【0027】
本発明の反応において、原料のアルキレンジオールジアシレート化合物(化合物(I))は、前記反応式中の式(I)で示される。
式(I)において、Rは、炭素原子数1から10のアルキル基、又は炭素原子数7〜20のアラルキル基を示し、置換基を有していても良い。
【0028】
式(I)中、Rにおけるアルキル基としては、炭素原子数1〜10の直鎖状、又は炭素原子数3〜10の分岐鎖状又は環状のアルキル基を示し、直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられ、分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、及びアミル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、及びシクロデシル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0029】
におけるアルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基等の炭素原子数1〜4のアルコキシル基(各種異性体を含む);アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基(各種異性体を含む);シアノ基;ニトロ基等が挙げられるが、好ましくはフッ素原子、塩素原子、アミノ基、及びジアルキルアミノ基である。これらの置換基は、前記アルキル基に対して、1種以上有していてもよい。
置換基を有するアルキル基の具体例としては、3−メチルシクロブチル基、3−エチルシクロペンチル基、1−フルオロシクロプロピル基、2−クロロシクロプロピル基、3−フルオロシクロブチル基、2−クロロシクロブチル基、2−メトキシシクロプロピル基、3−アミノシクロペンチル基、4−ジメチルアミノシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2,2−ジクロロシクロヘキシル基、2−シアノシクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、及び2―トリフルオロエチル基等が挙げられる。
【0030】
式(I)中、Rにおけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、フェネチル基、フェニルプロピル基及びフェニルブチル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基にフェニル基、ナフチル基、アントリル基、或いはフェナントリル基が置換した炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
【0031】
におけるアラルキル基は、アリール基上、又はアルキル鎖上に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基(各種異性体を含む);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基等の炭素原子数1〜4のアルコキシル基(各種異性体を含む);メチレンジオキシ基等の炭素原子数1〜4のアルキレンジオキシ基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、及びニトロ基が挙げられる。なお、これらの置換基は、前記アラルキル基に対して、1種以上有していてもよい。
アラルキル基の具体的としては、2−メチルベンジル基、3,4−ジメチルベンジル基、2−フルオロベンジル基、3−クロロベンジル基、3,4−ジクロロベンジル基、4−ブロモベンジル基、4−ヨードベンジル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、4−イソプロポキシベンジル基、3,4−メチレンジオキシベンジル基、2−ニトロベンジル基、2−(4−フルオロフェニル)プロピル基、1−(3−メチルナフチル)メチル基、及び2−(1,3−ジメチルナフチル)メチル基等が挙げられる。
【0032】
として、好ましくは、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び炭素原子数3〜6の環状のアルキル基、3−メチルシクロブチル基、1−フルオロシクロプロピル基、2−クロロシクロブチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、及び2―トリフルオロエチル基、ベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、3−フェニルプロピル基、及び3−フェニルブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基にアリール基が置換したアラルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びシクロプロピル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2―トリフルオロエチル基、ベンジル基、2−メチルベンジル基、2−フルオロベンジル基、3−クロロベンジル基、3,4−ジクロロベンジル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、3,4−メチレンジオキシベンジル基、2−ニトロベンジル基、1−(3−メチルナフチル)メチル基、及び2−(1,3−ジメチルナフチル)メチル基である。
【0033】
本発明の反応式中の式(I)で示されるアルキレンジオールジアシレート化合物において、Rは、置換基を有していても良い、炭素原子数1から20の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、芳香環含有又は複素環含有のアルキレン基を示す。
におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ヘキサメチレン基、ドデカメチレン基等の飽和の直鎖状アルキレン基;例えば、下記の式にも示されるような、2−ブテン基(式(VII))、2−ブチン基(式(VIII))、2,4−ヘキサジエン基(式(IX))等の不飽和結合を有する直鎖状アルキレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基(式(X))、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−2−エチル−1,3−プロピレン基(式(XI))、2−シクロプロピル−1,3−プロピレン基(式(XII))、2−シクロペンチル−1,3−プロピレン基等の飽和の分岐状アルキレン基;2−メチル−1,4−ブチル−2−エン基(式(XIII))等の不飽和結合を有する分岐状アルキレン基、及びシクロブチレン基、シクロへキサメチレン基(式(XIV))等の飽和の環状アルキレン基;1,4−シクロへキサ−2−エン基(式(XV))、1,4−シクロへキサ−2、5−ジエン基等の不飽和結合を有する環状アルキレン基を示す。
なお、不飽和結合を含有するアルキレン基において、不飽和結合は、結合末端部分以外の炭素原子と形成することが出来、分岐状、及び環状のアルキレン基の場合、各種異性体を含む。
【0034】
【化7】

【0035】
(式中の波線は、酸素原子との結合部位を示す。また、式(XIV)は結合の位置を限定しないことを示す。)
【0036】
における芳香環又は複素環含有アルキレン基としては、例えば、下記式にも示されるような、1,4−ビス(アルキレン)フェニル基(式(XVI))、1,1’−ビス(アルキレン)ビフェニル基、2,6−ビス(アルキレン)ナフチル基(式(XVII))等の芳香環を含有するアルキレン基;2,5−ビス(アルキレン)ピリジル基(式(XVIII))、1,4−ビス(アルキレン)チオフェニル基(式(XIX))等の芳香族性の複素環を含有するアルキレン基;1,4−ビス(アルキレン)ピペリジル基式(XX))、2,3−ビス(アルキレン)エポキシル基、(式(XXI))等の脂環式の複素環を含有するアルキレン基が挙げられる。なお、式(XVI)〜式(XXI)中、L,Mは、前記と同義の飽和、又は不飽和結合を含有する直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキレン基から、それぞれひとつ選ばれ、l、mは、前記L又はMの個数を示し、それぞれ、0又は1〜3の整数を示すが、その際、芳香環含有又は複素環含有アルキレン基としての総炭素原子数は、20を超えない。なお、芳香環含有又は複素環含有アルキレン基において、芳香環、複素環、及び式(XVI)〜式(XXI)のL,Mにおける不飽和結合は、結合末端部分以外の炭素原子と形成することが出来、分岐状、及び環状のアルキレン基の場合、各種異性体を含む。
【0037】
【化8】

【0038】
(式中の波線は、酸素原子との結合部位を示す。L、Mは、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の飽和、又は不飽和のアルキレン基から、それぞれひとつ選ばれ、l、mは、置換基L又はMの個数を示し、それぞれ0又は1〜3の整数を示す。)
これらのアルキレンジオールジアシレート化合物のうち、市販品がないものについては、例えば、対応するジオール化合物を入手し、アシル化する等により別途合成する。また、対応するジオール化合物のうち、市販品がないものについては、例えば、対応するジアルデヒド化合物、ジカルボン酸化合物又はジカルボン酸エステル化合物を入手し、ヒドリド還元するか、或いは、対応するアルキレンハライド化合物を入手し加水分解する等によって別途合成・用意する。
【0039】
式(I)中、Rにおけるアルキレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基等の炭素原子数1から4のアルコキシル基(各種異性体を含む);アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等の炭素原子数1から3のアルキル基を有するジアルキルアミノ基(各種異性体を含む);シアノ基、ニトロ基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ビニル基、アリル基、及びプロパルギル基等が挙げられるが、総炭素原子数は20を超えない。好ましくはフッ素原子、塩素原子、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基である。
【0040】
置換基を有するアルキレン基の具体例としては、2−メチルペンチレン基、2−フルオロペンチレン基、3−クロロペンチレン基、3−メトキシペンチレン基、3−アミノペンチレン基、2−ジメチルアミノペンチレン基、3−クロロヘキシレン基、3,4−ジクロロヘキシレン基、及び3−シアノヘキシレン基、2―シアノ−2−ブテン基、2―フルオロ−2−ブテン基、1,4−ビス(メチレン)テトラフルオロフェニル基、1,4−ビス(エチレン)−2−ニトロ−チオフェニル基等が挙げられる。
【0041】
として、好ましくは、炭素原子数2から12の飽和、又は不飽和結合を有する直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、及び炭素原子数4から20の芳香環含有又は複素環含有アルキレン基、より好ましくは、炭素原子数2から12の飽和、又は不飽和結合を有する直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基である。
【0042】
本発明の反応において、原料であるカーボネート化合物(化合物(II))は、前記反応式中、式(II)で示される。式(II)において、式中、RとRは、同一又は相互に異なっていても良い、Rと同義のアルキル基及びアラルキル基、又はアリール基を示し、置換基を有していても良い。
【0043】
式(II)中、R、Rにおける、置換基を有していても良い、アルキル基、及びアラルキル基は、前記R記載の当該アルキル基、及びアラルキル基と同義である。
、Rにおけるアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びフェナントリル基等の炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基が挙げられる。
、Rとして、好ましくは、炭素原子数1〜4の直鎖状、及び炭素原子数3又は4の分岐鎖状又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、及びベンジル基、より好ましくは、R、Rが同一で、かつメチル基、エチル基、フェニル基、及びベンジル基である。
【0044】
本発明の反応において、カーボネート化合物(化合物(III))は、前記反応式中、式(III)で示される。式(III)中、Rは、炭素原子数1から20の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、及び芳香環含有又は複素環含有アルキレン基を示し、置換基を有していても良い。
の当該直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、及び芳香環含有又は複素環含有アルキレン基は、前記R記載と同義である。
として、好ましくは、炭素原子数2から12の飽和、又は不飽和結合を有する直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、及び炭素原子数4から20の芳香環含有又は複素環含有アルキレン基、より好ましくは、炭素原子数2から12の飽和、又は不飽和結合を有する直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基である。
【0045】
式(III)中、RとRは、それぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基、又は炭素原子数7から20のアラルキル基、又はアリール基を示し、置換基を有していても良い。更に、R、及びRが、互いに結合して環状のカーボネート化合物を形成していても良い。
、及びRの当該アルキル基、アラルキル基、及びアリール基は、前記R、及びR記載と同義のものを示す。また、環状カーボネート化合物としては、例えば、ジエチレンカーボネート等が挙げられる。
、及びRとして、好ましくは、炭素原子数1〜4の直鎖状、及び炭素原子数3又は4の分岐鎖状又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、及びジエチレンカーボネート、より好ましくは、R、Rが同一で、かつメチル基、エチル基、フェニル基、及びベンジル基である。
【0046】
本発明の製造方法おいて、反応後、式(VI)或いは式(VI’)で示されるエステル化合物(化合物(VI)又は化合物(VI’))が生成する。反応式〔1〕、又は反応式〔2〕中、式(VI)又は式(VI’)における、Rは、前記と同義である。また、Zは、前記と同義のR又はRから選ばれ、Wは、前記と同義のR又はRから選ばれる。
【0047】
本発明において、目的物あるオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物は、前記反応式中、式(IV)、及び式(V)としてそれぞれ示される。
式(IV)において、その末端基X及びYは、互いに同一又は異なっていても良く、前記と同義のR、OR、又はORから、それぞれ一つ選ばれる
式(V)において、A及びBは、R、Rと同義で、その末端基X’及びY’は、互いに同一又は異なっていても良く、前記と同義のR、OR、又はORから、それぞれ一つ選ばれる。nは重合度を表わし、2以上の整数を示す。
ここで、末端基;X、Y、X’及びY’は、原料の仕込み比、反応条件によって左右されるが、多くの場合、Rを有するアシル基、又はOR、OR、OR又はORを有するカーボネート基である。
【0048】
本発明の反応において、反応中に微量の水を、例えば添加する等により存在させると、本発明の重合反応と加水分解が同時に進行するため、アシル基末端またはカーボネート末端基の一部が加水分解を受け、反応式〔1〕からは、以下の式(XXII)で示されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物;
【0049】
【化9】

【0050】
(式中、Rは、前記と同義である。また、X’’は、前記と同義のR、OR、OR、又はO−R−OHから選ばれる。n’は重合度を表わし、1以上の整数を示す。)
、及び反応式〔2〕からは、以下の式(XXIII)で示されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物;
【0051】
【化10】

【0052】
(式中、Y’’は、R、OR、OR、O−R−OH、又はO−R−OHから選ばれる。また、A、B、及びGは、互いに同一又は異なっていても良く、前記と同義のR、又はRから、それぞれ一つ選ばれる。n’は重合度を表わし、1以上の整数を示す。)
として、末端に水酸基を有する化合物(XXII)又は、化合物(XXII)を製造することが出来る。
また、これらの化合物は、試薬、又は触媒中に含まれる水分、あるいは系外から混入した微量の水分によっても生成することがある。
【0053】
化合物(II)及び化合物(III)の使用量は、化合物(I)1モルに対して、好ましくは1.0〜10モル、より好ましくは1.05〜5モル、特に好ましくは1.1〜3モルである。
【0054】
本発明で使用する加水分解酵素としては、例えば、プロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ等が挙げられるが、好ましくは豚肝臓由来のエステラーゼ(PLE)、豚肝臓由来のリパーゼ(PPL)、酵母又は細菌から単離可能な微生物のリパーゼ、より好ましくは、バルクホルデリア・セパシア(シュードモナス・セパシア)(Burkholderia cepacia (Pseudomonas cepacia))を起源とするリパーゼ(例えば、Amano PS(アマノエンザイム社製)等)、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)を起源とするリパーゼ(例えば、Novozym 435(ノボザイム社製)等)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor Miehei)を起源とするリパーゼ(例えば、Lipozyme RM IM(ノボザイム社製)等)、サーモマイセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)を起源とするリパーゼ(Lipase TL)、ムコール・ミエヘイ(Mucor Miehei)を起源とするリパーゼ(Lipase MM)、特に好ましくはCandida antarcticaを起源とするリパーゼが使用される。なお、これらの加水分解酵素は、天然の形又は固定化酵素として市販品をそのまま使用することが出来、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0055】
前記の加水分解酵素は、天然の形又は固定化酵素として市販されているものを、化学的処理又は物理的処理を行った後に使用することも出来る。
前記化学的処理又は物理的処理方法としては、例えば、加水分解酵素を緩衝液に溶解させ(必要に応じて有機溶媒を存在させても良い)、これをそのまま、又は攪拌した後、凍結乾燥する等の方法が挙げられる。なお、ここでの凍結乾燥とは、例えば、J.Am.Chem.Soc.,122(8),1565−1571(2000)記載の水溶液又は水分を含む物質を急速に氷点以下の温度で凍結させ、その凍結物の水蒸気圧以下に減圧して水を昇華させて除去し、物質を乾燥させる方法である。なお、当該処理によって、触媒活性(反応性や選択性等)を向上させることができる。
【0056】
前記加水分解酵素の使用量は、化合物(I)1gに対して、好ましくは0.1〜1000mg、より好ましくは、1〜200mg、特に好ましくは10〜100mgである。
【0057】
本発明の反応は、有機溶媒中、又は無溶媒下にて行なうことが出来る。
本発明の反応において使用される有機溶媒としては、酵素を失活させない溶媒であれば特に限定されないが、脱水された溶媒を用いることが望ましい。
本発明の反応において使用される有機溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類から選ばれる少なくとも一種が挙げられるが、好ましくはn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、トルエン、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル又はテトラヒドロフラン、より好ましくは、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びアセトニトリル、特に好ましくはシクロヘキサン、トルエン、t-ブチルメチルエーテル、である。なお、これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0058】
前記有機溶媒の使用量は、化合物(I)1gに対して、好ましくは2〜200mL、より好ましくは、5〜50mL、特に好ましくは2〜20mLである。
【0059】
本発明の反応は、前記記載の方法1、及び方法2で示される2つの方法により行われる。いずれの方法においても、使用するそれぞれの酵素の特性に合わせ、失活しない範囲にて行うことが望ましい。反応溶液のpHは特に限定されないが、好ましくは、pH値5〜9、より好ましくは、pH値6〜8.5、特に好ましくは、pH値6.5〜8である。
【0060】
また、本反応は可逆反応であり、化学平衡を生成物側へ移動させることで、反応が速やかに進行する。また、従来法の場合に副生するアルコールよりも、より沸点の低いエステル化合物(化合物(VI)、又は化合物(VI’))が副生する。
そこで、本発明の方法では、このエステル化合物を除去する操作を行いながら反応を行なうことが好ましい。
例えば、このような方法として、反応式〔1〕において、Rがメチル基、エチル基、又はプロピル基、R及びRが、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基からそれぞれ選ばれる場合、反応により生成するエステル化合物(化合物(VI))は、原料のカーボネート化合物(化合物(II))より、沸点が低い。そこで、反応の際、反応温度、及び/又は減圧度を適宜調整することにより、エステル化合物(化合物(VI))を選択的に反応系外に除去することが可能となる。その結果、反応の平衡が生成系へと移動することで、本反応が速やかに進行することが可能となり、より短い反応時間で、より高分子量の式(IV)で示されるポリカーボネート化合物を得ることができる。また、除去したエステル化合物(化合物(VI))は、再度反応溶媒として使用することも出来る。
【0061】
本発明の反応温度は、0〜130℃、より好ましくは10〜90℃、特に好ましくは40〜70℃にて行なわれる。
本発明の方法の第一工程、および第二工程の反応は、原料である化合物(I)、化合物(II)又は化合物(III)に対し、好ましくは、反応にて生じるエステル化合物(化合物(VI)又は化合物(VI’))が選択的に除去できるような、圧力条件を考慮した反応温度であり、より好ましくは、反応終了時に前記化合物(VI)又は化合物(VI’)が完全に除去されるような反応温度を適宜調節しながら実施することである。
【0062】
本発明の方法1、及び方法2における反応圧力は、特に制限されず、常圧下又は減圧下のいずれの条件でも行なうことができる。
本発明の方法の第一工程、および第二工程の反応は、原料である化合物(I)、化合物(II)又は化合物(III)に対し、好ましくは、反応にて生じるエステル化合物(化合物(VI)又は化合物(VI’))が選択的に除去できるような、温度条件を考慮した0.13kPa以上、101.3kPa未満(1mmHg以上760mmHg未満)内の反応圧力であり、より好ましくは反応終了時に前記化合物(VI)又は化合物(VI’)が完全に除去されるような反応温度を適宜調節しながら実施することである。
【0063】
本発明の方法は、反応中の溶液を、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等を用いて分析しながら行なうことができる。そこで、反応を適宜分析し、例えば、反応時間、反応温度等を調整しながら行なうことで、所望の分子量(重合度)のポリアルキレンカーボネート化合物を目的物として得ることもできる。また、同様の操作により、分子量が1000以下のオリゴアルキレンカーボネート化合物を得ることも出来る。
【0064】
本発明の反応によって得られる式(IV)又は式(V)で示されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物は、例えば、前記第二工程終了後、得られた反応物に、これらを溶解させるために前記反応の際に使用される有機溶媒と同義の有機溶媒を適量加え(又は、もし、使用した有機溶媒に溶解した状態であれば、そのまま)、次いでろ過により酵素もしくは固定化酵素を分離した後、得られた濾液を減圧下にて有機溶媒を除去することにより取得することが出来る。
【0065】
本発明の製造装置は、特に制限されず、例えば、反応容器、加熱(冷却)装置等、一般的な製造装置にて行なうことができる。更に、反応容器からエステル化合物(化合物(VI)、及び化合物(VI’))を除去するために、例えば、蒸留装置、蒸留物の回収装置等を設けることが好ましく、反応圧力が調整できる装置を備えた製造装置を用いることがより好ましい。また、回収装置により、回収された蒸留物のうち、化合物(VI)及び/又は化合物(VI’)は、再度反応に使用することができる。
【0066】
なお、得られたオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物(化合物(IV)又は化合物(V))は、晶析、再結晶、分液、抽出、及びカラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって、更に精製することも出来る。
【0067】
本発明の方法にて得られたオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物(化合物(IV)、又は化合物(V))は、重量平均分子量1000以上、及び分散度3.0以下であるため、高分子材料として成型が行い易い。また、ホスゲンを用いる従来法と比べ、ハロゲン化合物を含まない点で、化学的により安全な製品である。また、生分解性素を有することから環境的負荷の少ない高分子素材でもある。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、得られた目的物は、IR、NMRスペクトル分析等のほか、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;使用カラム;TSK gel G2000HXL(TOSOH製)、及びGPC KF−804L(Shodex製))を用いて、分子量測定を行った。
【0069】
実施例1(ポリヘキサメチレンカーボネートの合成)
ディーンスターク蒸留装置、圧力調整装置、温度調整装置、温度計、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、1,6−ヘキサンジオールジアセテート50.00g(0.25mol)とジメチルカーボネート22.27g(0.25mol)を混合し、30℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ2.50g(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、同温度で6時間攪拌して反応させた。次に得られた混合物にジメチルカーボネート22.27g(0.25mol)を加え、50℃で48時間攪拌して反応させ、更に反応系内圧力を13kPa(100mmHg)に減圧して50℃で15時間、次いで70℃で32時間攪拌して反応させた(このときのpHをpH計にて測定したところ、pH=8.5を示した)。
反応終了後、得られた反応溶液にアセトニトリル200mLを加え、ろ過後、得られた濾液を減圧濃縮にて溶媒を除去したところ、目的物のポリヘキサメチレンカーボネート33.71gを白色固体として得た。
得られたポリヘキサメチレンカーボネートの物性値は、以下の通りであった。
【0070】
IR(KBr,cm−1);1741.5(carbonate;C=O).
H−NMR(CDCl,δ(ppm));1.41−1.42(4H,m)、1.67−1.70(4H,m)、4.12−4.14(4H,m).
13C−NMR(CDCl,δ(ppm));25.4、28.5、67.7、155.3.
元素分析;計算値(C12:C,58.31%;H,8.37%
実測値:C,58.07%;H,8.27%
融点:57〜58℃
GPC(ポリスチレン基準:溶離液 テトラヒドロフラン)
数平均分子量 :5142
重量平均分子量 :10471
分散度 :2.04
【0071】
実施例2(ポリヘキサメチレンカーボネートの合成)
ディーンスターク蒸留装置、圧力調整装置、温度調整装置、温度計、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、1,6−ヘキサンジオールジアセテート150.00g(0.74mol)とジメチルカーボネート133.62g(0.25mol)を混合し、50℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ7.50g(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、同温度で48時間攪拌して反応させた。次に同温度で、反応系内圧力を4時間かけて10kPa(75mmHg)に減圧して、同圧力で10時間、次いで70℃で9−10kPa(68mmHg〜75mmHg)反応させた。(このときのpHをpH試験紙にて測定したところ、pH=6から7の範囲を呈色した)。
20時間後、系内の一部をサンプリングし、アセトニトリルを加え、ろ過後、得られた濾液を減圧濃縮にて溶媒を除去したところ、目的物のポリヘキサメチレンカーボネートを白色固体として得た。
得られたポリヘキサメチレンカーボネートの物性値は、以下の通りであった。
【0072】
IR(KBr,cm−1);1741.2(carbonate;C=O).
H−NMR(CDCl,δ(ppm));1.39−1.45(4H,m)、1.66−1.72(4H,m)、4.10−4.15(4H,m).
13C−NMR(CDCl,δ(ppm));25.4、28.6、67.8、155.4.
GPC(ポリスチレン基準:溶離液 テトラヒドロフラン)
数平均分子量 :3194
重量平均分子量 :7723
分散度 :2.42
【0073】
実施例3(ポリブチレンカーボネートの合成)
圧力調整装置、温度調整装置、温度計、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、1,4−ブタンジオールジアセテート2.00g(11.5mmol)とジメチルカーボネート3.10g(34.4mmol)を混合し、50℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ100mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、同温度で45時間攪拌して反応させた。次に反応系内圧力を10kPa(75mmHg)に減圧して同温度で24時間攪拌して反応させた。
反応終了後、得られた反応溶液にテトラヒドロフラン10mLを加え、ろ過後、得られた濾液を減圧濃縮にて溶媒を除去したところ、目的物のポリブチレンカーボネート2.06gを白色固体として得た。
得られたポリブチレンカーボネートの物性値は、以下の通りであった。
【0074】
IR(液膜,cm−1);1744.0(carbonate;C=O).
H−NMR(CDCl,δ(ppm));1.73−1.87(4H,m)、4.15−4.18(4H,m).
13C−NMR(CDCl,δ(ppm));(25.1、25.2)、(67.3、67,4)、(155.2、155.3、155.4).
GPC(ポリスチレン基準:溶離液 テトラヒドロフラン)
数平均分子量 :1700
重量平均分子量 :2671
分散度 :1.57
【0075】
実施例4(ポリプロピレンカーボネートの合成)
圧力調整装置、温度調整装置、温度計、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、1,3−プロパンジオールジアセテート500mg(3.1mmol)とジメチルカーボネート1125mg(12.5mmol)を混合し、30℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ25mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、同温度で72時間攪拌して反応させた。反応混合物を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮して油状物質200mgを得た。次いでこの油状物質を50℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ10mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、反応系内圧力を10kPa(75mmHg)に減圧して同温度で14時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応溶液にテトラヒドロフラン2mLを加え、ろ過後、得られた濾液を減圧濃縮にて溶媒を除去したところ、目的物のポリプロピレンカーボネート200mgを白色固体として得た。
得られたポリプロピレンカーボネートの物性値は、以下の通りであった。
【0076】
GPC(ポリスチレン基準:溶離液 テトラヒドロフラン)
数平均分子量 :1462
重量平均分子量 :2746
分散度 :1.88
【0077】
実施例5(ポリエチレンカーボネートの合成)
圧力調整装置、温度調整装置、温度計、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、1,2−エタンジオールジアセテート820mg(5.6mmol)と1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタン1000mg(5.6mmol)を混合し、30℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ41mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、同温度で3時間攪拌して反応させた。次いで反応系内圧力を0.1kPa(1mmHg)に減圧して70℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応溶液にテトラヒドロフラン5mLを加え、ろ過後、得られた濾液を減圧濃縮にて溶媒を除去したところ、目的物のポリエチレンカーボネート877mgを白色固体として得た。
得られたポリエチレンカーボネートの物性値は、以下の通りであった。
【0078】
IR(液膜,cm−1);1747.5(carbonate;C=O).
H−NMR(CDCl,δ(ppm)); 4.22−4.27(2H,m)、4.36−4.38(2H,m).
13C−NMR(CDCl,δ(ppm));(65.3、65.4、65.5、65.6)、(154.7、154.8、154.9、155.0).
GPC(ポリスチレン基準:溶離液 テトラヒドロフラン)
数平均分子量 :1451
重量平均分子量 :2723
分散度 :1.88
【0079】
実施例6(ポリプロピレンカーボネートの合成)
圧力調整装置、温度調整装置、温度計、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、1,3−プロパンジオールジアセテート417mg(2.6mmol)と1,3−ビス(メトキシカルボニルオキシ)プロパン500mg(2.6mmol)を混合し、50℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ25mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、反応系内圧力を0.1kPa(1mmHg)に減圧して50℃で72時間攪拌して反応させた。反応終了後GPC測定を行った。
得られたポリプロピレンカーボネートの物性値は、以下の通りであった。
GPC(ポリスチレン基準:溶離液 テトラヒドロフラン)
数平均分子量 :1407
重量平均分子量 :2411
分散度 :1.71
【0080】
実施例7(共重合体の合成:ポリ(プロピレンカーボネート−co−ブチレンカーボネート))
圧力調整装置、温度調整装置、温度計、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、1,3−プロパンジオールジアセテート674mg(4.2mmol)と1,4−ビス(メトキシカルボニルオキシ)ブタン868mg(2.6mmol)を混合し、50℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ38mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、反応系内圧力を30kPa(225mmHg)に減圧して同温度で6時間攪拌して反応させた。次いで反応系内圧力を9.5kPa(71mmHg)に減圧して70℃で8時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応溶液にテトラヒドロフラン5mLを加え、ろ過後、得られた濾液を減圧濃縮にて溶媒を除去したところ、目的物の共重合体(ポリ(プロピレンカーボネート−co−ブチレンカーボネート))863mgを油状物質として得た。
得られた共重合体(ポリ(プロピレンカーボネート−co−ブチレンカーボネート))の物性値は、以下の通りであった。
【0081】
IR(液膜,cm−1);1744.7(carbonate;C=O).
H−NMR(CDCl,δ(ppm));1.73−1.82(m)、2.01−2.09(m)、4.16−4.31(m).
13C−NMR(CDCl,δ(ppm));(25.0、25.1、25.2、25.4)、(28.0、28.0、28.8、28.9)、(64.2、64.3、64.5、64.6、65.0)、(67.3、67.4、67.5).(154.9、155.0、155.2、155.4).
GPC(ポリスチレン基準:溶離液 テトラヒドロフラン)
数平均分子量 :1824
重量平均分子量 :3134
分散度 :1.72
【0082】
実施例8(共重合体の合成:ポリ(エチレンカーボネート−co−ヘキサメチレンカーボネート))
圧力調整装置、温度調整装置、温度計、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、1,6−ヘキサンジオールジアセテート681mg(3.4mmol)と1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタン600mg(3.4mmol)を混合し、30℃に保ったままカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ34mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を加え、同温度で3時間攪拌して反応させた。次いで反応系内圧力を0.1kPa(1mmHg)に減圧して70℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応溶液にテトラヒドロフラン5mLを加え、ろ過後、得られた濾液を減圧濃縮にて溶媒を除去したところ、目的物の共重合体(ポリ(エチレンカーボネート−co−ヘキサメチレンカーボネート))524mgを白色固体として得た。
得られたポリ(エチレンカーボネート−co−ヘキサメチレンカーボネート)の物性値は、以下の通りであった。
【0083】
IR(液膜,cm−1);1745.5(carbonate;C=O).
H−NMR(CDCl,δ(ppm));1.40−1.43(m)、1.67−1.68(m)、4.10−4.16(m)、4.35−4.53(m).
13C−NMR(CDCl,δ(ppm));(25.3,25.4)、(28.5,28.6)、(65.1,65.2,65.5,65.6)、155.0、155.4.
GPC(ポリスチレン基準:溶離液 テトラヒドロフラン)
数平均分子量 :4973
重量平均分子量 :8459
分散度 :1.70
【0084】
比較例1(カーボネート化合物に対するアルコールとエステルの反応速度の比較)
n−ブチルアルコールとジメチルカーボネートとからn−ブチルメチルカーボネートを合成する反応初速度(V)と酢酸n−ブチルとジメチルカーボネートからn−ブチルメチルカーボネートを合成する反応初速度(V)を、以下に示す同一の反応条件下にて測定を行い、反応速度の比較を行なった。
攪拌装置を備えた内容積10mlのガラス製反応容器に、n−ブチルアルコール1.00g(13.5mmol)、ジメチルカーボネート5.68ml(67.4mmol)、及びカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ50.4mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を混合し、攪拌しながら30℃の恒温槽内で1時間反応させた。同様に、酢酸n−ブチル1.01g(8.69mmol)、ジメチルカーボネート3.63ml(43.1mmol)、及びカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ50.5mg(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)を混合し、攪拌しながら30℃の恒温槽内で1時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーにて分析(内部標準法)したところ、n−ブチルアルコールを用いた場合は0.997gのn−ブチルアルコールが残存していた(転化率0.3%、V1=0.0134μmol/min・mg)。酢酸n−ブチルを用いた場合は0.967gの酢酸n−ブチルが残存しいていた(転化率4.3%、V=0.122μmol/min・mg)。結果はV/V=9であった。
【0085】
上記実施例より、本発明の製造方法は、加水分解酵素を失活させることなく、良好な重合度のポリアルキレンカーボネート化合物を合成することが出来る方法である。そのため、従来に比べ加水分解酵素の使用量を低減させることが可能となり、環境への負荷が低い製造方法である。
【0086】
また、従来、オリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造において、アルキレンジオール化合物とカーボネート化合物とのエステル交換反応速度は、アルキレンジアシレート化合物とカーボネート化合物とのエステル交換速度より著しく速いというこれまでの化学常識を覆し、比較例1の結果から、本発明の方法ではこの常識と異なる結果、すなわち、ジアシレート化合物とカーボネート化合物のエステル交換反応の方が、反応速度が速いことから、本発明の製造方法は、従来に比べ製造時間が短縮できる、より効率的な方法である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、加水分解酵素存在下、アルキレンジオールジアシレート化合物とカーボネート化合物とを用いたオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法に関する。本発明により、得られたオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物は、生分解性を有する、優れた機能性高分子材料として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒存在下、又は非存在下、加水分解酵素、下記式(I)で示されるアルキレンジオールジアシレート化合物;
【化1】

(式中、Rは、炭素原子数1から10のアルキル基、又は炭素原子数7から20のアラルキル基を示し、置換基を有していても良い。Rは、炭素原子数1から20の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、又は芳香環含有又は複素環含有アルキレン基を示し、置換基を有していても良い。)
と、下記式(II)で示されるカーボネート化合物;
【化2】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基、又は炭素原子数7から20のアラルキル基、又はアリール基を示し、置換基を有していても良い。)
とを反応させること特徴とする、下記式(IV);
【化3】

(式中、Rは、前記と同義である。また、X及びYは、互いに同一又は異なっていても良く、前記と同義のR、OR、又はORから、それぞれ一つ選ばれる。nは重合度を表わし、2以上の整数を示す。)
で示されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項2】
有機溶媒存在下、又は非存在下、加水分解酵素、請求項1記載の式(I)で示されるアルキレンジオールジアシレート化合物、及び式(III)で示されるカーボネート化合物;
【化4】

(式中、Rは炭素原子数1から20の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、又は芳香環含有又は複素環含有アルキレン基を示し、置換基を有していても良い。RとRは、それぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基、又は炭素原子数7から20のアラルキル基、又はアリール基を示し、置換基を有していても良い。更に、RとRが一緒になって環を形成してもよい。)
とを反応させることを特徴とする、下記式(V);
【化5】

(式中、X’及びY’は、互いに同一又は異なっていても良く、R、OR、又はORから、それぞれ一つ選ばれる。また、A及びBは、互いに同一又は異なっていても良く、前記と同義のR、又はRから、それぞれ一つ選ばれる。n’は重合度を表わし、1以上の整数を示す。)
で示されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項3】
反応により生じる式(VI);
【化6】

(式中、Rは、前記と同義である。Zは、前記と同義のR又はRから選ばれる。)
又は、式(VI’);
【化7】

(式中、Rは、前記と同義である。Wは、前記と同義のR又はRから選ばれる。)
で示されるエステル化合物を除去しながら行なう、請求項1及び請求項2記載の式(IV)又は式(V)で示されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3記載の方法にて得られる、重量平均分子量500から100000を有することを特徴とする、式(IV)又は式(V)記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物。
【請求項5】
請求項1から請求項3記載の方法にて得られる、数平均分子量500から100000を有することを特徴とする、式(IV)又は式(V)記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物。
【請求項6】
請求項1から請求項3記載の方法にて得られる、分子量分布3.0以下を有することを特徴とする、式(IV)又は式(V)記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物。
【請求項7】
加水分解酵素が、プロテアーゼ、エステラーゼ又はリパーゼである、請求項1から請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項8】
加水分解酵素が、リパーゼである、請求項1から3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項9】
リパーゼが、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)を起源とするリパーゼである、請求項8記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項10】
が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びシクロプロピル基である、請求項1から請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項11】
が、炭素原子数2から12の飽和、又は不飽和結合を有する直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、及び炭素原子数6から20の芳香環含有又は複素環含有アルキレン基である請求項1から請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項12】
及びRが、同一で、炭素原子数1〜4の直鎖状、及び炭素原子数3又は4の分岐鎖状又は環状のアルキル基である、請求項1から請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項13】
反応を有機溶媒中で行なう、請求項1から請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項14】
有機溶媒が、ニトリル類、エーテル類、ケトン類、エステル類、脂肪族炭化水素類及び芳香族炭化水素類からなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒である、請求項1から3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項15】
化合物(VI)または化合物(VI’)の留去が、0.13kPa以上、101.3kPa未満の反応圧力にて、行われることを特徴とする、請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項16】
反応をpH5から9で行なう、請求項1から請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項17】
反応溶液を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて分析しながら反応を行なうことにより、所望の分子量(重合度)のポリアルキレンカーボネート化合物、又は分子量が1000以下のオリゴアルキレンカーボネート化合物を得ること特徴とする、請求項1から請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項18】
反応中に微量の水が存在することを特徴とする、請求項1から請求項3記載のオリゴアルキレンカーボネート化合物、及びポリアルキレンカーボネート化合物の製造方法。
【請求項19】
請求項1の方法において、反応中に微量の水を存在させて得られる、下式(XXII)で示されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物。
【化8】

(式中、Rは、前記と同義である。また、X’’は、前記と同義のR、OR、OR、又はO−R−OHから選ばれる。n’は重合度を表わし、1以上の整数を示す。)
【請求項20】
請求項2の方法において、反応中に微量の水を存在させて得られる、下式(XXIII)で示されるオリゴアルキレンカーボネート化合物、又はポリアルキレンカーボネート化合物。
【化9】

(式中、Y’’は、R、OR、OR、O−R−OH、又はO−R−OHから選ばれる。また、A、B、及びGは、互いに同一又は異なっていても良く、前記と同義のR、又はRから、それぞれ一つ選ばれる。n’は重合度を表わし、1以上の整数を示す。)