説明

オレフィンの製造方法

【課題】単一の工程でケトンと水素とを直接反応させてオレフィンを得るための、工業上、実用的な方法を確立することが可能な、新たなオレフィンの製造方法を提供すること。特に、アセトンと水素とを直接反応させて高選択率でプロピレンを得るための新規なオレフィンの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のオレフィンの製造方法は、固体酸物質および水添触媒の存在下で、ケトンと水素とを反応させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトンと水素とを反応させてオレフィンを製造する方法に関する。詳しくは、単一反応工程でケトンと水素とを出発物質とし、高選択的にオレフィンを製造する方法に関する。
【0002】
特に、アセトンと水素とを反応させてプロピレンを製造する方法に関する。詳しくは、単一反応工程で、アセトンと水素とを出発物質として、プロピレンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ベンゼンとプロピレンを反応させてクメンを製造する方法、クメンを酸化してクメンヒドロペルオキシドを製造する方法、クメンヒドロペルオキシドを酸分解させてフェノールとアセトンを製造する方法は、既にそれぞれ公知である。これらの反応を組み合わせた方法は一般にクメン法と呼ばれるフェノール製造方法であり、現在フェノール製造法の主流である。
【0004】
このクメン法はアセトンが併産されるという特徴があり、アセトンが同時にほしい場合は長所となるが、得られるアセトンがその需要よりも過剰である場合には原料であるプロピレンとの価格差が不利な方向へ働き、経済性を悪化させる。そこで、併産するアセトンを様々な方法を用いてクメン法の原料として再使用する方法が提案されている。
【0005】
アセトンは、水添することにより容易にイソプロパノールへ変換でき、このイソプロパノールをさらに脱水反応によりプロピレンとした後にベンゼンと反応させクメンを得るプロセス。すなわち、アセトンを二段階の反応により、プロピレンへと変換することにより、クメン法の原料として再使用するプロセスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記のような再使用においては、アセトンから高選択的にプロピレンを製造する方法を工業上、実用的に確立することが必要とされている。また、プロピレンのみならず、一般的なケトンから高選択的にオレフィンを製造する方法が工業上、実用的に確立されれば他のプロセスにおいても有用である。
【0007】
また、Cu(25%)−酸化亜鉛(35%)−酸化アルミニウム(40%)触媒の存在下、400℃でアセトンの水素化反応を行い、プロピレンを得る方法も知られている。(特許文献2参照)しかし、この方法では反応温度が高く、熱効率の点で難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−174737号公報
【特許文献2】東ドイツ特許 DD84378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、単一反応工程でケトンと水素とを直接反応させて高選択率でオレフィンを得るための、工業上、実用的な方法を確立することが可能な、新規なオレフィンの製造方法を提供することを目的とする。特に、アセトンと水素とを直接反応させて高選択率でプロピレンを得るための、新規なプロピレンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、触媒として水添触媒と固体酸物質とを用いることで、単一反応工程で、ケトンおよび水素を出発物質として、高選択的にオレフィンを製造できることを見出した。
【0011】
特に、アセトンおよび水素を出発物質として高収率でプロピレンを製造することができることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明のオレフィンの製造方法は、固体酸物質および水添触媒の存在下で、ケトンと水素とを反応させる。
【0013】
前記水添触媒が、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒であることが好ましい。
【0014】
前記少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒が、さらにIIIA族、IIB族およびVIB族からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。
【0015】
前記固体酸物質がゼオライトであることが好ましい。
【0016】
前記ケトンがアセトンであり、前記オレフィンがプロピレンであることが好ましい。
【0017】
反応温度が、50〜500℃であることが好ましい。
【0018】
前記水添触媒が銅元素を含む水添触媒であり、反応温度が50〜300℃であることが好ましい。
【0019】
前記水添触媒が銀元素または金元素を含む水添触媒であることも好ましい。
【0020】
前記ケトンが、植物由来原料からイソプロピルアルコールおよびアセトンを生成しうるイソプロピルアルコール生成細菌により得られたアセトンであり、前記オレフィンがプロピレンであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法によれば、単一反応工程でケトンと水素とを出発物質とし、工業上、実用的な方法でオレフィンを得ることができる。特に、アセトンと水素とを直接反応させて高選択率でプロピレンを得るための、新規なプロピレンの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のオレフィンの製造方法は、固体酸物質および水添触媒の存在下で、ケトンと水素とを反応させることを特徴とする。
【0023】
前記水添触媒としては、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、触媒として前記固体酸物質と前記水添触媒との2成分を用いればよく、その利用方法については特に制限はないが、酸触媒成分である前記固体酸物質と、前記水添触媒とをセンチメートルサイズの触媒粒子レベルで物理混合してもよいし、両者を微細化し混合した後改めてセンチメートルサイズの触媒粒子へ成型してもよいし、さらには酸触媒として作用する前記固体酸物質を担体としてその上に前記水添触媒を担持してもよいし、逆に前記水添触媒を担体としその上に前記固体酸物質を担持してもよい。
【0025】
本発明のオレフィンの製造方法では、水添触媒の作用により、ケトンが水素化されてアルコールが生成した後、固体酸物質の作用により、該アルコールが脱水されてオレフィンが生成すると考えられる。例えば、オレフィンがプロピレンである場合は、水添触媒の作用により、アセトンが水素化されてイソプロピルアルコールが生成した後、固体酸物質の作用により、該イソプロピルアルコールが脱水されてプロピレンおよび水が生成すると考えられる。
【0026】
すなわち、本発明のオレフィンの製造方法では、水素化および脱水反応が段階的に起こっていると考えられる。従って、区別可能な触媒層を形成し、反応の各段階に応じた適当な触媒種を順番に充填したり、水添触媒と固体酸物質との混合比に傾斜をつけてもよい。
【0027】
本発明において使用するケトンは、目的とするオレフィンに応じて選択すればよく、例えば、オレフィンとしてプロピレンを得るためには、ケトンとしてアセトンが用いられ、オレフィンとして1−ブテンを得るためには、ケトンとしてメチルエチルケトンが用いられる。
【0028】
本発明のオレフィンの製造方法は、ケトンとしてアセトンを用い、オレフィンとしてプロピレンを得る際に好適に適用することができる。
【0029】
ケトンを得る方法としては特に限定はなく、フェノール製造時の副産物として得られるアセトン、2−ブタノールの脱水素により得られるメチルエチルケトン等を用いることができる。また、ケトンがアセトンである場合には、植物由来原料からイソプロピルアルコールおよびアセトンを生成しうるイソプロピルアルコール生成細菌により得られたアセトンを用いてもよい。
【0030】
前記植物由来原料とは、植物から得られる炭素源であり、細菌が代謝し、イソプロピルアルコールに変換しうるものであれば特に限定はされない。本発明においては、根、茎、幹、枝、葉、花、種子等の器官、それらを含む植物体、植物器官、またはそれらの分解産物を指し、更に植物体、植物器官、またはそれらの分解産物から得られる炭素源のうち、微生物が培養において炭素源として利用しうるものも、植物由来原料に包含される。このような植物由来原料に包含される炭素源には、一般的なものとしてデンプン、グルコース、フルクトース、シュークロース、キシロース、アラビノース等の糖類、またはこれら成分を多く含む草木質分解産物やセルロース加水分解物などが例示できる。更には植物油由来のグリセリンや脂肪酸も、本発明における炭素源に該当する。本発明における植物由来原料としては、穀物等の農作物、トウモロコシ、米、小麦、大豆、サトウキビ、ビート、綿等を好ましく用いることができ、その原料としての使用形態は、未加工品、絞り汁、粉砕物等、特に限定されない。また上記の炭素源のみの形態であっても良い。
【0031】
前記イソプロピルアルコール生産細菌は、前記植物由来原料からイソプロピルアルコールおよびアセトンを生成する能力を有するものであればよく、例えば培養によって植物由来原料を資化し、一定時間後に培養液中にイソプロピルアルコールおよびアセトンを分泌する細菌が例示できる。このようなイソプロピルアルコール生成細菌は、例えば、国際公開WO2009/008377号公報、中国特許出願公開第CN1043956A号、特開昭61−67493号公報、Applied and Environmental Microbiology,Vol.64、No.3、p1079−1085(1998)等の文献に記載されているものを用いることができる。中でも、国際公開WO2009/008377号公報に記載されているイソプロピルアルコール生成細菌を用いるのが好ましい。
【0032】
前記国際公開WO2009/008377号公報に記載されているイソプロピルアルコ
ール生産細菌は、アセト酢酸デカルボキシラーゼ活性、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性、CoAトランスフェラーゼ活性およびチオラーゼ活性が付与されたものである。
【0033】
活性の「付与」とは、酵素をコードする遺伝子を宿主細菌の菌体外から菌体内に導入することの他に、宿主細菌がゲノム上に保有する酵素遺伝子のプロモーター活性を強化すること、または他のプロモーターと置換することによって酵素遺伝子を強発現させたものを含む。
【0034】
前記アセト酢酸デカルボキシラーゼ活性、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性、CoAトランスフェラーゼ活性およびチオラーゼ活性がそれぞれ、クロストリジウム属細菌、バチルス属細菌およびエシェリヒア属細菌からなる群より選択された少なくとも1種由来の酵素をコードする遺伝子の導入により得られたものであることが好ましい。
【0035】
前記アセト酢酸デカルボキシラーゼ活性およびイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性が、クロストリジウム属細菌由来の酵素をコードする遺伝子の導入により得られたものであり、前記CoAトランスフェラーゼ活性およびチオラーゼ活性が、エシェリヒア属細菌由来の酵素をコードする遺伝子の導入により得られたものであることがより好ましい。
【0036】
前記アセト酢酸デカルボキシラーゼ活性がクロストリジウム・アセトブチリカム由来の酵素をコードする遺伝子の導入により得られたものであり、前記イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性がクロストリジウム・ベイジェリンキ由来の酵素をコードする遺伝子の導入により得られたものであり、前記CoAトランスフェラーゼ活性およびチオラーゼ活性が、エシェリヒア・コリ由来の酵素をコードする遺伝子の導入により得られたものであることが特に好ましい。
【0037】
前記アセト酢酸デカルボキシラーゼ活性、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性、CoAトランスフェラーゼ活性、およびチオラーゼ活性がそれぞれ、クロストリジウム属細菌由来の酵素をコードする遺伝子の導入により得られたものであることも好ましい。
【0038】
前記イソプロピルアルコール生成細菌が大腸菌(Escherichia coli)であることが好ましい。
【0039】
植物由来原料から、イソプロピルアルコール生成細菌によって、イソプロピルアルコールおよびアセトンを生成することが可能であるが、該生成においては、通常水、カルボン酸等の他の副生成物が同時に得られる。本発明に用いるケトンとして、植物由来原料からイソプロピルアルコール生成細菌によって得られるアセトンを用いる場合には、生成物中のイソプロピルアルコール、水、他の副生成物等を除去する精製を行った、純度の高いアセトンを用いてもよい。
【0040】
また、得られた生成物中の、イソプロピルアルコールおよびアセトンを高濃度化し、他の副生成物を除去したものを用いてもよい。このような場合には、アセトンと同時に、イソプロピルアルコールおよび水を反応器中に供給することになる。イソプロピルアルコールが供給された場合には、固体酸物質により、イソプロピルアルコールは脱水されてプロピレンおよび水が生成する。
【0041】
本発明においてケトンと反応させる水素は、分子状の水素ガスでも良く、また反応条件で水素を発生するシクロヘキサンなどの炭化水素でも良い。水素は、原理的にはケトンと
等モル以上あればよく、分離回収の点からは、好適な範囲はケトン1モルに対して、1〜10モル、好ましくは、1〜5モルである。ケトンの転化率を100%未満に抑えたい場合は、用いる水素の量を1倍モルから低減させることで対応できる。また本発明の反応において供給する水素は、ケトンの持つ酸素原子と反応し、最終的には水となり反応器出口から取り出すことが可能である。また、ケトンの当量以上の水素は好ましからざる副反応が進行しない限り、本質的には消費されないことになる。
【0042】
反応へ水素ガスを添加する場合には、通常連続的に供給するが、この方法に特に限定されるものではなく、反応開始時に水素ガスを添加した後反応中供給を停止し、ある一定時間後に再度供給する間欠的な供給でもよいし、液相反応の場合溶媒に水素ガスを溶解させて供給してもかまわない。また、リサイクルプロセスでは軽沸留分とともに塔頂から回収される水素ガスを供給しても良い。添加する水素の圧力は、反応器の圧力と同等であることが一般的であるが、水素の供給方法に応じ適宜変更させればよい。
【0043】
本反応を行う場合、その方法、条件としては特に制限はなく、例えば、以下に示すような条件、方法が採用できる。
【0044】
反応原料であるケトンと水素ガスとの接触は、気液向流、気液併流どちらでも良く、また液、ガスの方向として、液下降−ガス上昇、液上昇−ガス下降、液ガス上昇、液ガス下降のいずれでも良い。
【0045】
<固体酸物質>
本発明に用いる固体酸物質は、酸としての機能を持つ触媒であり、一般的に固体酸と呼ばれるものであれば良く、ゼオライト、シリカアルミナ、アルミナ、硫酸イオン担持ジルコニア、WO3担持ジルコニアなどを用いることができる。
【0046】
アルミナとしては、α‐アルミナ、γ‐アルミナなどを用いることができる。
【0047】
特に、γ‐アルミナや、主にケイ素とアルミニウムとから構成される無機の結晶性多孔質化合物であるゼオライトは、耐熱性や酸強度の面から好適な固体酸触媒である。ゼオライトとしては、本発明の製造方法において、中間体として存在すると考えられるアルコールおよび目的とするオレフィンの分子径により、好適なゼオライトを選択する。
【0048】
すなわち、ゼオライトとして、酸素8〜16員環の細孔を有するゼオライトを用いることが好ましい。
【0049】
酸素8〜16員環の細孔を有するゼオライトとしてはチャバサイト、エリオナイト、フェリエライト、ヒューランダイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、NU−87、シーター1、ウェイネベアイト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、モルデナイト、脱アルミニウムモルデナイト、β−ゼオライト、MCM−22、MCM−36、MCM−56、グメリナイト、オフレタイト、クローバライト、VPI−5、UTD−1などが挙げられる。
【0050】
これらゼオライトの中でも、アルコールの分子径と同程度の細孔を持つものが好適であり、酸素8〜12員環の細孔を有するゼオライトを用いることがより好ましい。酸素8〜12員環の細孔を有するゼオライトとしては、チャバサイト、エリオナイト、Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、モルデナイト、脱アルミニウムモルデナイト、β−ゼオライト、MCM−22、MCM−56、ZSM−12、ZSM−5等が挙げられる。これらゼオライトにおけるケイ素とアルミニウムとの組成比(ケイ素/アルミニウム)は2/1〜200/1の範囲にあれば良く、特に活性と熱安定性の面から5/1〜100/1のもの
が好ましい。さらにゼオライト骨格に含まれるアルミニウム原子を、Ga、Ti、Fe、Mn、Bなどのアルミウム以外の金属で置換した、いわゆる同型置換したゼオライトを用いることもできる。
【0051】
固体酸物質の形状は特に制限は無く、球状・円柱状・押し出し状・破砕状いずれでもよく、またその粒子の大きさも、0.01mm〜100mmの範囲のもので反応器の大きさに応じ選定すればよい。
【0052】
なお、これら固体酸物質は、一種単独で用いてもよく、二種以上を用いても良い。
【0053】
<水添触媒>
本発明に用いる水添触媒としては、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒であることが好ましい。また、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒が、さらにIIIA族、IIB族およびVIB族からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことがより好ましい。IB族の元素としては、銅、銀、金等が挙げられ、触媒活性とコストとのバランスの観点から、銅、銀が好ましい。すなわち、本発明に用いる水添触媒としては、銅元素を含む水添触媒、銀元素を含む水添触媒、金元素を含む水添触媒が挙げられ、銅元素を含む水添触媒、銀元素を含む水添触媒が好ましい。
【0054】
なお、これら水添触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を用いても良い。
【0055】
少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒が、銅元素を含む触媒である場合には、該触媒は、ケトンの水素化触媒として作用するだけでなく、オレフィンの水素化触媒としても作用する場合がある。一方、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒が、銀元素を含む触媒である場合には、該触媒は、ケトンの水素化触媒として作用するが、オレフィンの水素化触媒としては、ほぼ作用しない。このため、水添触媒として、銅元素を含む触媒を用いる場合には、副生物としてオレフィンが水添されたパラフィンが、水添触媒として銀元素を含む触媒を用いた場合と比べて、多量に生成する場合がある。このような場合には、触媒の充填量、充填方法等を適宜設定することが好ましい。また、水添触媒としては、銀元素を含む触媒を用いることが、副生物としてパラフィンが生成することを抑制する観点から好ましい。ケトンがアセトンである場合には、銀元素を含む触媒を用いると、副生物であるプロパンの生成が抑制される。
【0056】
水添触媒が銅元素を含む触媒の場合には、固体酸物質として、前述のゼオライトを用いるのが好ましい。ゼオライトとしては、酸素10〜12員環の細孔を有するゼオライトが好ましい。酸素10〜12員環の細孔を有するゼオライトとしては、フェリエライト、ヒューランダイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、NU−87、シーター1、ウェイネベアイト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、モルデナイト、脱アルミニウムモルデナイト、β−ゼオライト、MCM−22、MCM−36、MCM−56、グメリナイト、オフレタイト、クローバライト、VPI−5、UTD−1などが挙げられる。これらの中でもβ−ゼオライトが好ましい。
【0057】
少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒としては、少なくとも一種のIB族の元素を金属そのものとして含むもの、金属化合物の形で含有するもの等が挙げられる。例えば、CuO、Cu2O、Ag2Oなどの金属酸化物や、CuCl2、AgCl、HAuCl4、などの金属塩化物や、Cu−Ag、Cu−Auなどのクラスター金属の形で含有するものが挙げられる。
【0058】
少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒は、担体に担持されていてもよく、該担体としては、例えばシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシア、シリカマグ
ネシア、ジルコニア、酸化亜鉛、カーボン、酸性白土、けいそう土、ゼオライトを用いることができる。中でも、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシア、シリカマグネシア、ジルコニア、酸化亜鉛、カーボンのうちの少なくとも1つを選択することが好ましい。
【0059】
担体に担持された少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒の調製方法としては、例えば、少なくとも一種のIB族の元素の硝酸塩等の水溶液に担体を含浸、焼成する方法や、これら少なくとも一種のIB族の元素を有機溶媒に可溶にするため配位子とよばれる有機分子を結合させた錯体として、有機溶媒中に添加し、溶液を調整し、該溶液に担体を含浸、焼成する方法や、さらに錯体のうちあるものは真空下で気化するため蒸着などの方法で担体に担持することも可能である。また、担体を対応する金属塩から得る際に、水添触媒となる少なくとも一種のIB族の元素を共存させて、担体合成と水添触媒の担持とを同時に行う共沈法を採用することもできる。
【0060】
市場で入手できる水添触媒としては、例えば、CuO−ZnO−Al23、CuO―Cr23−BaO、Ag担持シリカ触媒、Ag担持アルミナ触媒、Au担持シリカ触媒、Au担持アルミナ触媒、Au担持酸化亜鉛触媒等が挙げられる。なお、これら元素を含む水添触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を用いても良い。
【0061】
水添触媒として、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒を用いる場合には、さらに、IIIA族、IIB族およびVIB族からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。IIIA族としてはAl、In、またIIB族としてはZn、VIB族としてはCr、Moが好ましい元素として挙げられる。
【0062】
なお、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒が、さらに、IIIA族、IIB族およびVIB族からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む場合には、該触媒の調製方法としては例えば、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒に、IIIA族、IIB族およびVIB族からなる群から選択される少なくとも一種の元素を担持する方法等が挙げられる。
【0063】
またこれら元素を含む水添触媒は、PbSO4、FeCl2やSnCl2などの金属塩、
KやNaなどのアルカリ金属やアルカリ金属塩、BaSO4などを添加すると活性や選択
性が向上する場合が有り、必要に応じて添加すればよい。
【0064】
これら元素を含む水添触媒の形状は特に制限は無く、球状・円柱状・押し出し状・破砕状いずれでもよく、またその粒子の大きさも、0.01mm〜100mmの範囲のもので反応器の大きさに応じ選定すればよい。
【0065】
また、前述のように前記水添触媒は、前記固体酸物質に担持されていてもよく、前記固体酸触媒に担持された水添触媒の調製方法としては例えば、少なくとも一種のIB族の元素の硝酸塩等の水溶液に固体酸物質を含浸、焼成する方法や、これら少なくとも一種のIB族の元素を有機溶媒に可溶にするため配位子とよばれる有機分子を結合させた錯体として、有機溶媒中に添加し、溶液を調整し、該溶液に固体酸物質を含浸、焼成する方法や、さらに錯体のうちあるものは真空下で気化するため蒸着などの方法で固体酸物質に担持することも可能である。また、固体酸物質を対応する金属塩から得る際に、水添触媒となる少なくとも一種のIB族の元素を共存させて、担体合成と水添触媒の担持とを同時に行う共沈法を採用することもできる。
【0066】
反応温度についても本発明では特に限定されることはないが、好ましくは50〜500℃、更に好ましくは60〜400℃の範囲である。また、通常好ましい実施圧力範囲は、
0.1〜500気圧であり、更に好ましくは0.5〜100気圧である。
【0067】
また、水添触媒として、銅元素を含む触媒を用いる場合には反応温度は、好ましくは50〜300℃、更に好ましくは150〜250℃、特に好ましくは、150〜200℃の範囲である。
【0068】
また本発明を実施するに際し、使用する触媒量は特に限定されないが、例えば、反応を固定床流通装置を用いて行う場合、原料(ケトン)の時間あたりの供給量(重量)を触媒の重量で割った値、即ちWHSVで示すと、0.01〜200/hの範囲であることが望ましく、より好ましくは0.02〜100/hの範囲が好適である。
【0069】
なお、上記固体酸物質と、水添触媒との用いる量比としては特に限定は無いが、通常は固体酸物質:水添触媒(重量比)が1:0.01〜1:100であり、好ましくは1:0.05〜1:50である。あまりにも固体酸物質の重量比が小さいと脱水反応が充分に行われず、オレフィン収率が低下するため、経済的ではない。またあまりにも固体酸物質の重量比が大きいとケトンの転化率が低下し、これもまた経済的ではない。
【0070】
本発明において反応形式を固定床反応とする場合、固体酸物質と前記水添触媒の充填方法は反応成績に大きな影響を与える場合がある。上述のように本発明は、水素化と脱水とが段階的に起こっていると考えられる。従って、反応の各段階に応じた適当な触媒種を順番に充填することは、触媒を効率よく使用するという意味で、また目的としない副反応を抑制するという意味で好ましい充填方法である。
【0071】
特に反応速度を上げるために水素圧や温度を増大する場合、低い水素圧や低い温度での反応では見られなかった好ましくない副反応が起こることは一般的な化学反応においてよく見られる挙動であり、このような場合においては特に触媒の充填方法が反応成績に大きな影響を与える可能性がある。
【0072】
反応の各段階に応じた適当な触媒種を順番に充填する方法としては、例えば(1)固体酸物質および水添触媒を混合し、充填する方法、(2)前記水添触媒からなる層(上流側)と、固体酸物質からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法、(3)前記水添触媒を担持した固体酸物質を充填する方法、(4)前記水添触媒からなる層(上流側)と、固体酸物質および前記水添触媒からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法、(5)前記水添触媒からなる層(上流側)と、前記水添触媒を担持した固体酸物質からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法、(6)固体酸物質および前記水添触媒からなる層(上流側)と、固体酸物質からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法、(7)前記水添触媒を担持した固体酸物質からなる層(上流側)と、固体酸物質からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法等が挙げられる。なお、上流側とは、反応器の入り口側、すなわち原料が反応の前半に通過する層を示し、下流側とは、反応器の出口側、すなわち原料が反応の後半に通過する層を示す。また、ケトンと水素とを気液向流で接触させることにより反応させる場合には、前記反応器の入り口側とは、ケトンを導入するための入り口を示す。
【0073】
本発明を実施するにあたり、反応系内に触媒および反応試剤に対して不活性な溶媒もしくは気体を添加して、希釈した状態で行うことも可能である。
【0074】
本発明を実施するに際して、その方法はバッチ式、セミバッチ式、または連続流通式のいずれの方法においても実施することが可能である。液相、気相、気−液混合相の、いずれの形態においても実施することが可能である。触媒の充填方式としては、固定床、流動床、懸濁床、棚段固定床等種々の方式が採用され、いずれの方式で実施しても差し支えな
い。
【0075】
本発明を実施する際には、固体酸物質および水添触媒を公知の方法で脱水することが望ましい。固定床反応方式の場合には、固体酸物質および水添触媒を充填した反応器へ窒素、ヘリウムなどの不活性ガスを流通させながら、300℃以上の温度に、10分以上保持すればよい。さらに水添触媒の活性を発現させるために、脱水処理後、水素気流下での処理を行うこともできる。
【0076】
ある経過時間において触媒活性が低下する場合に、公知の方法で再生を行い固体酸物質および前記水添触媒の活性を回復することができる。
【0077】
オレフィンの生産量を維持するために、反応器を2つまたは3つ並列に並べ、一つの反応器が再生している間に、残った1つまたは2つの反応器で反応を実施するメリーゴーランド方式をとっても構わない。さらに反応器が3つある場合、他の反応器2つを直列につなぎ、生産量の変動を少なくする方法をとっても良い。また流動床流通反応方式や移動床反応方式で実施する場合には、反応器から連続的または断続的に、一部またはすべての触媒を抜き出し、相当する分を補充することにより一定の活性を維持することが可能である。
【実施例】
【0078】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0079】
〔実施例1〕
高圧用フィードポンプ、高圧用水素マスフロー、高圧用窒素マスフロー、電気炉、触媒充填部分を有する反応器、背圧弁を設置した固定床反応装置を用い、ダウンフローによる加圧液相流通反応を行った。
【0080】
内径1cmのSUS316製反応器に、反応器の出口側からまず、銅−亜鉛触媒(SudChemie社製、製品名ShiftMax210、元素質量%Cu 32〜35%、Zn 35〜40%、Al 6〜7%)粉末(250〜500μへ分級したもの)を上流側の触媒層として1.0g充填した。触媒層を分離するため石英ウールを詰めた後、β−ゼオライト(触媒化成社製、20MPaで圧縮成型後、250〜500μへ分級したもの)1.0gを下流側の触媒層として充填した。
【0081】
水素で2.5Mpaまで加圧した後、反応器入口側より20ml/分の水素気流下、200℃で3時間還元処理を行った。20ml/分の水素気流下のまま、175℃へ降温し、ここに反応器入口側よりアセトンを0.75g/Hrで流通させた。
【0082】
反応器出口と背圧弁の中間に高圧窒素マスフローにより50ml/分の窒素を導入した。背圧弁以降のラインにGC(ガスクロマトグラフィー)を設置し、オンラインで生成物を定量した。反応結果は表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
〔実施例2〕
高圧用フィードポンプ、高圧用水素マスフロー、高圧用窒素マスフロー、電気炉、触媒充填部分を有する反応器、背圧弁を設置した固定床反応装置を用い、ダウンフローによる加圧液相流通反応を行った。
【0085】
内径1cmのSUS316製反応器に、反応器の出口側からまず、銅−亜鉛触媒(SudChemie社製、製品名ShiftMax210、元素質量%Cu 32〜35%、Zn 35〜40%、Al 6〜7%)粉末(250〜500μへ分級したもの)0.3gとβ−ゼオライト(触媒化成社製、20MPaで圧縮成型後、250〜500μへ分級したもの)0.6gとをよく混合したものを触媒層として充填した。
【0086】
水素で3.0Mpaまで加圧した後、反応器入口側より12ml/分の水素気流下、180℃でアセトンを0.30g/Hrで流通させた。
【0087】
反応器出口と背圧弁の中間に高圧窒素マスフローにより50ml/分の窒素を導入した。背圧弁以降のラインにGCを設置し、オンラインで生成物を定量した。
【0088】
反応結果を表2に示す。表2に示したように銅−亜鉛触媒と固体酸物質を混合した触媒充填ではアセトン転化率が100%に到達していないにもかかわらず、生成したプロピレンがさらに水添されたプロパンが大量に副生した。
【0089】
〔製造例1〕
300mlのナスフラスコにシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC−100)50.0g、乳酸銀(0.5水和物)4.77g、イオン交換水100mlを加えロータリーエバポレータを用い、室温で1時間混合した。20mmHgの減圧下40〜50℃で水を留去し、銀をシリカゲルに担持した。得られた銀が担持されたシリカゲルに、水素気流下で、100℃から5時間をかけて段階的に300℃まで温度を上げる還元処理を行った。その結果、黒色の5%Ag/シリカ触媒52.5gを得た。5%Ag/シリカ触媒を、ふるいを用いて250〜500μに分級した。
【0090】
〔実施例3〕
銅−亜鉛触媒の代わりに製造例1で調製した5%Ag/シリカ触媒(250〜500μへ分級したもの)6.0gを用いた以外は、実施例2と同様に反応を行った。
【0091】
反応結果を 表2に示す。表2に示したように選択性良くプロピレンを生成した。
【0092】
〔製造例2〕
300mlのナスフラスコに製造例1で調製した5%Ag/シリカ触媒29.1g、硝酸インジウム3水和物0.43g、イオン交換水100mlを加えロータリーエバポレータを用い、室温で1時間混合した。20mmHgの減圧下40〜50℃で水を留去し、硝酸インジウムを5%Ag/シリカ触媒に担持した。得られたインジウムが担持された5%Ag/シリカ触媒に、水素気流下で、100℃から3時間をかけて段階的に300℃まで温度を上げる還元処理を行った。その結果、黒色の5%Ag−0.5%In/シリカ触媒29.2gを得た。5%Ag−0.5%In/シリカ触媒を、ふるいを用いて250〜500μに分級した。
【0093】
〔実施例4〕
5%Ag/シリカ触媒(250〜500μへ分級したもの)の代わりに製造例2で調製した5%Ag−0.5%In/シリカ触媒(250〜500μへ分級したもの)6.0gを用
い、水素の流量を22ml/分に増大した以外は、実施例2と同様に反応を行った。
【0094】
反応結果を表2に示す。表2に示したように選択性良くプロピレンを生成した。
【0095】
〔実施例5〕
反応温度を240℃に上げた以外は、実施例4と同様に反応を行った。
【0096】
反応結果を表2に示す。表2に示したように選択性良くプロピレンを生成した。
【0097】
〔実施例6〕
反応温度を280℃に上げた以外は、実施例4と同様に反応を行った。
【0098】
反応結果を表2に示す。表2に示したように選択性良くプロピレンを生成した。
【0099】
〔実施例7〕
βゼオライト0.6gをγ−アルミナ(日揮化学製N611N、20MPaで圧縮成型後、250〜500μへ分級したもの)1.0gに変えた以外は、実施例6と同様に反応を行った。
【0100】
反応結果を表2に示す。表2に示したように選択性良くプロピレンを生成した。
【0101】
【表2】

【0102】
前記表中、「選択率(%)/アセトン」は、原料アセトン量に対する、生成した各成分のアセトン換算量(モル百分率)を意味し、「選択率(%)/(アセトン−IPA−DIPE)」は、原料アセトン量から生成したIPAおよびDIPEのアセトン換算量を差し引いた量に対する、生成した各成分のアセトン換算量(モル百分率)を意味する。ここで、IPAおよびDIPEは、上述した水素化および脱水反応の一連の反応における中間体に相当する。
【0103】
〔実施例8〕
(イソプロピルアルコールおよびアセトンの製造)
WO2009/008377の実施例4に記載のイソプロピルアルコール生産大腸菌(エシェリヒア・コリpGAP-Iaaa/B株)を用いてイソプロピルアルコールを生産
した。本実施例では、WO2009/008377号パンフレット図1に示される生産装置10を用いて処理を行った。培養槽及びトラップ槽には3リットル容のものを使用した。培養槽、トラップ槽、注入管、連結管、排出管は、すべてガラス製のものとした。トラップ槽には、トラップ液としての水(トラップ水)が1.8Lの量で注入されている。更
にトラップ水は10℃に冷却して使用した。
【0104】
なお、培養槽には廃液管を設置し、糖や中和剤の流加により増量した培養液を適宜培養槽外に排出した。
【0105】
pGAP-Iaaa/B株を前培養としてアンピシリン50μg/mLを含むLB B
roth, Miller培養液(Difco244620)25mLを入れた100mL容三角フラスコ植菌し、一晩、培養温度35℃、120rpmで攪拌培養を行った。前培養液全量を、以下に示す組成の培地1475gの入った3L容の培養槽(ABLE社製培養装置BMS−PI)に移し、培養を行った。培養は大気圧下、通気量1.5L/min、撹拌速度550rpm、培養温度35℃、pH7.0(NH3水溶液で調整)で行っ
た。培養開始から8時間後までの間、45wt/wt%のグルコース水溶液を7.5g/L/時間の流速で添加した。その後は45wt/wt%のグルコース水溶液を15g/L/時間の流速で添加した。培養開始130時間後のトラップ水をGC分析した結果、アセトンが1.6重量%、イソプロピルアルコールは5.6重量%含有されていることがわかった。
【0106】
<培地組成>
コーンスティープリカー(日本食品化工製):20g/L
Fe2SO4・7H2O:0.09g/L
2HPO4:2g/L
KH2PO4:2g/L
MgSO4・7H2O:2g/L
(NH42SO4:2g/L
アデカノールLG126(旭電化工業)0.6g/L
残部:水
(プロピレンの製造)
上記イソプロピルアルコールおよびアセトンを含む水溶液(培養開始130時間後のトラップ水)から蒸留により、イソプロピルアルコール、アセトンを高濃度化し取り出した。
【0107】
具体的には最初に上記水溶液1947.0gを陽イオン交換樹脂(オルガノ製、アンバーリスト31WET)240mlを充填したカラムに流速500ml/hで通液し、残存するアンモニアを除去した。この処理液を常圧下蒸留した。沸点53〜81.6℃の留分を取り出し、GC分析した結果、アセトン22.6重量%、イソプロピルアルコール58.7重量%、残りは水であった。
【0108】
前記留分を原料とし、高圧用フィードポンプ、高圧用水素マスフロー、高圧用窒素マスフロー、電気炉、触媒充填部分を有する反応器、背圧弁を設置した固定床反応装置を用い、ダウンフローによる加圧液相流通反応を行った。
【0109】
内径1cmのSUS316製反応器に、反応器の出口側からまず、銅−亜鉛触媒(SudChemie社製、製品名ShiftMax210、元素質量%Cu 32〜35%、Zn 35〜40%、Al 6〜7%)粉末(250〜500μへ分級したもの)を上流側の触媒層として0.5g充填した。触媒層を分離するため石英ウールを詰めた後、β−ゼオライト(触媒化成社製、20MPaで圧縮成型後、250〜500μへ分級したもの)1.5gを下流側の触媒層として充填した。
【0110】
水素で2.5Mpaまで加圧した後、反応器入口側より20ml/分の水素気流下、200℃で3時間還元処理を行った。20ml/分の水素気流下のまま、180℃へ降温し
、ここに前記留分を原料とし、反応器入口側より0.60g/Hrで流通させた。
【0111】
反応器出口と背圧弁の中間に高圧窒素マスフローにより200ml/分の窒素を導入した。背圧弁直後のラインに気液分離管を設置し、採取したガス成分、液成分をそれぞれGC分析して生成物を定量した。反応結果を表3に示す。
【0112】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、ケトンと水素を直接反応させて、単一反応工程で高選択的にオレフィンを得るための工業上、実用的な方法を提供するものである。この方法を用いれば、クメン法によるフェノール製造時に併産されるアセトンから、直接プロピレンを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸物質および水添触媒の存在下で、ケトンと水素とを反応させるオレフィンの製造方法。
【請求項2】
前記水添触媒が、少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒である請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも一種のIB族の元素を含む触媒が、さらにIIIA族、IIB族およびVIB族からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む請求項2に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項4】
前記固体酸物質がゼオライトである請求項1〜3のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項5】
前記ケトンがアセトンであり、前記オレフィンがプロピレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項6】
反応温度が、50〜500℃である請求項1〜5のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項7】
前記水添触媒が銅元素を含む水添触媒であり、反応温度が50〜300℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項8】
前記水添触媒が銀元素または金元素を含む水添触媒であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項9】
前記ケトンが、植物由来原料からイソプロピルアルコールおよびアセトンを生成しうるイソプロピルアルコール生成細菌により得られたアセトンであり、前記オレフィンがプロピレンであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2010−241790(P2010−241790A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264869(P2009−264869)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】