説明

オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法及びその判別キット

【課題】オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、その類別を判定するに、前記呈色が選択的に固定であって判別が簡単である、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法及びその判別キットを提供する。
【解決手段】オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、その類別を判定する判別方法であって、まず、オーステナイト系ステンレス鋼の複数の標準製品をそれぞれ所定の電解液と接触させる過程と、外部電源と接続して所定時間電解をし、標準製品の成分のマンガンの呈色の基準を作っておいてから、前記過程を踏まえて被検物であるオーステナイト系ステンレス鋼を電解により呈色させ、その呈色を前記呈色基準に照らしてステンレス鋼の類別を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーステナイト鋼の鋼種を判別する方法及びその判別キットに関し、特にオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法及び判別するための判別キットに関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は、主成分の鉄にクロムやニッケルを含有させた合金鋼であって、クロム系ステンレス鋼とクロム・ニッケル系ステンレス鋼とに大別される。
【0003】
クロム・ニッケル系ステンレス鋼は、通常、オーステナイト系ステンレス鋼と呼ばれ、その中に特に300系は耐食性にも、機械的性質にも、また溶接・加工性にも優れるため、大量に使用されて世界のステンレス鋼生産量の70%超を占めている。
【0004】
しかし、2003年以来のニッケル価格の高騰、及び、中国市場のオーステナイト系ステンレス鋼に対するデマンドが原因で、高マンガン・低ニッケルの安価な200系がどんどん市場に入っている。
【0005】
ただ、300系と200系とは性質が遥かに違うが、ともに非磁性のものであるため、見分けがつきにくく、非常に紛れやすい。ステンレス鋼製造工場に受け入れられるスクラップ材は、その来歴により種々雑多なものが含まれており、その成分は前述のように実にバラバラである。しかも、熟練者といえどもその外観からその鋼種(換言すれば、その構成成分)を判別することは不可能である。もし、不当表示とされれば、業主ないし消費者の不利益につながる一方、スクラップを溶解するミルのスクラップ分別管理にも困難さを与え、世界的な問題になっている。
【0006】
製鋼業者には、300系と200系とをいろいろな鋼種から正確に選別する技術がもちろん存在しているが、その分析や選別過程が複雑であって手間がかなりかかるため、製鋼現場でステンレス鋼の鋼種を迅速に判別する方法が望まれていた。
【0007】
従来のこのような簡易分別法としては、被検物であるステンレス鋼を電解液と接触させ、外部電源にてステンレス鋼をプラス電位に、電解液をマイナス電位にしてステンレス鋼の各成分を電解液内に溶出させ、溶出成分の内、マンガンを酸化して呈色させ、この呈色の程度でステンレス鋼に含有されるマンガン量を判定するように行われている(特許文献1を参照)。この方法では、200系は高マンガン・低ニッケルのものであってマンガンを多く含有しているので、発色が300系と遥かに違うので、それによって直ぐ判別できる。
【特許文献1】日本公開特許第2005−331451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記簡易分別法は、外見からみれば、確かに現場での300系と200系との間の一時的な紛れを簡単に避けることができそうが、マンガン含有量による呈色の、顔色、濃淡、色差の程度、発色の時間などによる変化は、いずれも電解の、例えば使用される電解液の種類、濃度及びpH値、電圧並びに時間などにより変わるため、経験の浅い工員にとっては、判別がやはり極めて困難であるので、発明者は、本発明を提供する。
【0009】
即ち、本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、そのステンレス鋼の類別を判定するに、前記呈色変化が選択的に固定であって判別が簡単である、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法及びその判別キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、そのステンレス鋼の類別を判定する判別方法であって、まず、オーステナイト系ステンレス鋼の複数の標準製品をそれぞれ所定の電解液と接触させる過程と、前記各標準製品の電解液がない第1箇所をプラス電位にし、電解液がある第2箇所をマイナス電位にするように所定電圧の外部電源と接続して所定時間電解をし、前記第2箇所における標準製品の成分を電解液内に溶出し呈色させる過程と、前記複数の標準製品についてそれらの前記電解によって溶出されたマンガンの呈色の程度をそれぞれ対応付けて羅列する過程とで、オーステナイト系ステンレス鋼のマンガン成分による呈色の基準を作っておいてから、前記過程に踏まえて被検物であるオーステナイト系ステンレス鋼を電解により呈色させ、その呈色を前記呈色基準に照らしてステンレス鋼の類別を判定するオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、そのステンレス鋼の類別を判定するための判別キットであって、少なくとも、オーステナイト系ステンレス鋼の所定条件下における、マンガン成分による呈色の基準表と、直流電源供給装置と、導線によりそれぞれ前記直流電源供給装置の陰陽二極と接続する陰陽二探針とを備え、特に、前記電解に使用された電解液と同一の電解液が入っている電解液収納瓶をも備えており、それにより、前記陰陽二探針をそれぞれ前記直流電源供給装置の陰陽二極に接続してから、被検物であるオーステナイト系ステンレス鋼の表面に前記電解液をおき、そして、前記陰極探針を電解液の液滴内に陽極探針を表面だけにとオーステナイト系ステンレス鋼に接触させ、電解液の電解による呈色を前記呈色基準表に照らしてステンレス鋼の類別を判定する、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キットをも提供する。
【0012】
前記所定条件とは、前記所定の電解液、所定の電圧及び所定の電解時間を言い、前記所定の電解液とは、所定の種類、濃度及びpH値を言い、また、前記所定とは、そのマンガン含有量による呈色変化が条件と明白的に対応できれば、一種でも良く、複数種でも良い。
【発明の効果】
【0013】
前記オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法及びその判別キットによると、前記判別方法における呈色基準の作成法により前記判別キットにおける呈色基準表を作ることができ、また、前記呈色基準表から所定の電解条件を選択することによりマンガン含有量による呈色変化を固定し、オーステナイト系ステンレス鋼の鋼種判別を容易にさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の上記その他の目的と特徴は以下の説明を実施形態の各一覧表及び添付図面とあわせて参照することに従って詳述する。
【0015】
各種の電解液における使用成分:
(電解液1)硫酸マグネシウム(MgSO4):濃度0.005M(pH5.67)、0.05M(pH5.97)、0.5M(pH6.04)、1.5M(pH5.9)、2.0M(pH5.81)及び飽和溶液(pH5.34)
(電解液2)硫酸ナトリウム(Na2SO4):濃度0.005M(pH6.00)、0.05M(pH5.95)、0.5M(pH5.89)、1.5M(pH5.67)、2.0M(pH5.64)及び飽和溶液(pH5.61)
(電解液3)硫酸カリウム(K2SO4):濃度0.005M(pH5.54)、0.05M(pH5.84)、0.5M(pH6.04)及び飽和溶液(pH6.05)
(電解液4)蓚酸ナトリウム(Na2C2O4):濃度0.05M(pH6.84)
(電解液5)リン酸二水素カリウム(KH2PO4):濃度4.5M(pH4.3)
(電解液6)酢酸アンモニウム(NH4CH3COO):濃度10M(pH6.85)
(電解液7)塩素酸カリウム(KClO2):濃度0.5M(pH3.7)
(電解液8)過硫酸カリウム(K2S2O8):濃度0.05M(pH3.02)
(電解液9)硝酸カリウム(KNO3):濃度0.5M(pH6.5)
(電解液10)硝酸アンモニウム(NH4NO3):濃度0.5M(pH5.62)
まず、ステンレス鋼における成分含量と電解よる呈色との関係を分かるために、次の実験を行った。
即ち、ステンレス鋼の標準製品として、200系に対し型番SUS201を、300系に対し型番SUS304を、また、400系に対し型番SUS430(全部発明者自社の製品)を選択してそれぞれ濃度10%の硫酸溶液で溶解した後、3ボルトの電圧により電解をして呈色させ、呈色の度合いをなるべく明白に記載し、そして、高周波誘導結合型プラズマ発光法(ICP発光分光分析法)によって、前記電解溶液中のクロム、鉄、マンガン成分を分析し定量した(分析装置:ICP発光分光装置はPerkin Elmer製Optima 4300DV型を用いた)。次に、定量の結果に基づいて添付図2及び下記表(1)を作った。
【0016】
【表1】

表(1)は、前記のように、標準製品の鋼種と電解による呈色との基本対照表である。
【0017】
表(1)に示すように、高マンガン・低ニッケルの200系はマンガンを多く含有しているので、発色が純粋なマンガン(Mn7+)の赤紫色に近い。
そして、マンガンを少なく含有している400系は、発色が純粋な鉄(Fe3+)の黄色に近い。
そしてまた、高ニッケル・低マンガンの300系は、マンガン含有量がその間にあるので、発色が橙色となった。
即ち、200系の呈色は300系と遥かに違うので、はっきりに分別できると分かる。
【0018】
次に、電解条件とマンガン含有量による呈色変化との関係をも入れた呈色基準を作るために、次の実験をし、表を作った。
【0019】
下記実験を行うために、発明者は、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キットの実施形態におけるような直流電源供給装置1と、導線によりそれぞれ直流電源供給装置1の陰陽二極12、11と接続する陰陽二探針14、13とを先に用意しておいた。
【0020】
そして、前記陰陽二探針14、13をそれぞれ直流電源供給装置1の陰陽二極12、11に接続してから、
1.200系(SUS201)及び300系(SUS304)の標準製品の表面に前記各種の電解液(図1における3を参照)をおき、即ち標準製品をそれぞれ前記各種の電解液と接触させる過程と、
2.前記直流電源供給装置1を所定の電圧に調整してから、陰極探針14を電解液3の液滴内に陽極探針13を表面だけにとオーステナイト系ステンレス鋼2に接触させ、即ち前記各標準製品の電解液がない第1箇所をプラス電位にし、電解液がある第2箇所をマイナス電位にするように前記直流電源供給装置1と接続して所定時間に亘って電解をし、前記第2箇所における標準製品の成分を電解液内に溶出し呈色させる過程と、
3.前記複数の標準製品についてそれらの前記電解による呈色の一番著しい時間と前記電解によって溶出されたマンガンの呈色の程度とをそれぞれ対応付けて羅列する過程とで、
オーステナイト系ステンレス鋼のマンガン成分による呈色の基準を下記表(2)〜(8)に示すような137の実施例で70種類作った。
【0021】
下記実施例1〜実施例24は、オーステナイト系ステンレス鋼の標準製品として、200系(SUS201)を使用したが、電解条件として、表(2)に示す各濃度(硫酸マグネシウム)、pH及び電圧を使用した。
【0022】
前記条件の下に電解をして呈色させ、呈色の一番著しい時間及びその時の呈色程度をなるべく明白に記載し、その結果を表(2)に示した。
【0023】
【表2】

また、実施例25〜実施例47は、下記表(3)に示すように、前記表(2)と同じ電解条件で操作を行ったが、標準製品として、300系(SUS304)を使用した。
【0024】
【表3】

前記表(2)及び表(3)にて実施例を47示したが、表(3)に示した実施例25〜47の24種類の電解条件が表(2)に示した実施例1〜24の電解条件と同じなので、24種類の基準となっていて、この24種類のいずれかの条件を選択して試験すると、鋼種を200系であるかまたは300系であるかを判別することができる。
【0025】
また、実施例48〜実施例70は、標準製品2として、200系(SUS201)を使用したが、電解条件として、表(4)に示す各濃度(硫酸ナトリウム)、pH及び電圧を使用した。
【0026】
前記条件の下に電解をして呈色させ、呈色の一番著しい時間及びその時の呈色程度をなるべく明白に記載し、その結果を表(4)に示した。
【0027】
【表4】

また、実施例71〜実施例93は、下記表(5)に示すように、前記表(4)と同じ電解条件で操作を行ったが、標準製品として、300系(SUS304)を使用した。
【0028】
【表5】

前記表(4)及び表(5)にて実施例を46示したが、表(5)に示した実施例71〜93の23種類の電解条件が表(4)に示した実施例48〜70の電解条件と同じなので、23種類の基準となっていて、この23種類のいずれかの条件を選択して試験すると、鋼種を200系であるかまたは300系であるかを判別することができる。
【0029】
また、実施例94〜実施例108は、標準製品2として、200系(SUS201)を使用したが、電解条件として、表(6)に示す各濃度(硫酸カリウム)、pH及び電圧を使用した。
【0030】
前記条件の下に電解をして呈色させ、呈色の一番著しい時間及びその時の呈色程度をなるべく明白に記載し、その結果を記表(6)に示した。
【0031】
【表6】

また、実施例109〜実施例123は、下記表(7)に示すように、前記表(6)と同じ電解条件で操作を行ったが、標準製品として、300系(SUS304)を使用した。
【0032】
【表7】

前記表(6)及び表(7)にて実施例を30示したが、表(7)に示した実施例109〜123の15種類の電解条件が表(6)に示した実施例94〜108の電解条件と同じなので、15種類の基準となっていて、この15種類のいずれかの条件を選択して試験すると、鋼種を200系であるかまたは300系であるかを判別することができる。
【0033】
さらに、実施例124〜実施例137には、下記表(8)に示すように、実施例を二つずつ組み合わせて7組となす上、各組における実施例の標準製品として、それぞれ200系(SUS201)及び300系(SUS304)を対照的に使用したが、各組の電解条件として、同じ9ボルトの電圧の下にそれぞれ異なる電解液及び異なる濃度、pHを使用した。
【0034】
前記条件の下に電解をして呈色させ、その呈色程度をなるべく明白に記載し、その結果を表(8)に示した。
【0035】
【表8】

前記表(8)にて実施例124〜実施例137を14示したが、7組となる上、7種類の電解条件を使用したので、7種類の基準となっていて、この7種類のいずれかの条件を選択して試験すると、鋼種を200系であるかまたは300系であるかを判別することができる。
【0036】
ここで、特に注意しなければならないのは、実施例134と実施例135とからなる組における実施例134及び実施例136と実施例137とからなる組における実施例136の呈色はすべて淡赤紫色であるが、いずれも反応が極めて速いため、淡赤紫色の呈色が忽ち現れてから忽ち実施例135または実施例137と同じ淡黄色に変わり、数秒ぐらいの短時間内にそれを掌握しなければ200系であるかまたは300系であるかを判別することができないので、特別な場合を除き、この2組を基準として使用することを避けた方が良い。
【0037】
ところで、前記実施例の結果を見ると、前記無機酸塩水溶液として硫酸マグネシウム(MgSO4)溶液の呈色時間が一番長い。これは、硫酸マグネシウム(MgSO4)溶液とステンレス鋼との反応が弱いと思われる。また、前記所定の電解液、濃度、pH値及び所定の電圧を選択することにより電解時間及び呈色変化時間を制御することができる。また、前記無機酸塩水溶液として、pH3〜7のものを使用することが好ましいが、pH5〜7のものを使用することが特に好ましい。なお、前記無機酸塩水溶液として、濃度0.005M〜飽和濃度のものを使用することが好ましいが、濃度0.05M〜飽和濃度のものを使用することが特に好ましい。さらに、前記電解は、電圧3〜18ボルトの下に行うことが好ましい。因みに、前記直流電源供給装置の種類は特に限定されないが、例えば市販の乾電池は入手が容易である上、非常に安価であるので、特に好ましい。
【0038】
前記のように作った基準表を電源供給装置1と導線によりそれぞれ直流電源供給装置1の陰陽二極12、11と接続する陰陽二探針14、13と組み合わせて本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キットを提供することができる。
【0039】
このように組み合わせてなる判別キットを使用する時、ただ前記呈色の基準を作った過程に踏まえて被検物であるオーステナイト系ステンレス鋼を電解により呈色させ、その呈色を前記呈色基準に照らすことにより簡単にステンレス鋼の類別を判定することができる。
【0040】
なお、前記判別キットに、前記基準表、前記電源供給装置及び前記陰陽二探針のほかに、前記基準表を作るに使用された電解液と同一の電解液が入っている電解液収納瓶を加えても良い。その時、前記直流電源供給装置と前記陰陽二探針とを一つのケーシングに組み込んで一体となさせてから、その中に、前記基準表と前記電解液収納瓶とを容易に出せるように入れることが好ましい。
【0041】
その例として図3に示す例があげられる。
図3に示す例は、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キットとして使用される携帯型計測セットである。この携帯型計測セットは、主として計測器4と、クリップ付き蓋41と、電解液収納瓶30、呈色基準表(5)とからなっている。
【0042】
計測器4は、反対二端を有するペン形のケーシング40を有する。
ケーシング40の一端から、電解するための陰陽二極の探針140、130が出ており、クリップ(411)付き蓋41は、丁度ケーシング40の該端に取外し可能についている。クリップ付き蓋41の構造を更に詳細に言うと、それは、その一端が計測器4の前記一端に外嵌できる開口410を有し、他端が閉塞となっている長筒形のものであり、該長筒形の他端の外側に更に磁性体412がついている。300系と200系とのオーステナイト系ステンレス鋼は共に非磁性のものであるため、この携帯型計測セットの電解による判別を行う前、まず該磁性体412によって「300系または200系であるか否か」及び「電解分析を行う必要があるかどうか」を簡単且つ快速に判別することができる。また、該クリップ付き蓋41が前記計測器4の一端に外嵌している場合、前記陰陽二極の探針140、130が蓋の内部周壁に沿って延在しながら互いにに並列し、その間に空間を残して電解液収納瓶30及び呈色基準表(5)を収納している。
【0043】
そして、電解液収納瓶30を説明すると、蓋付きボトルであってその中に通電によってオーステナイト系ステンレス鋼を電解できる電解液が入っているものである。
【0044】
以上は、携帯型計測セットのセット全体の構成関係を説明したが、次に、その詳細な構造を更に説明する。
ケーシング40の他端には、後押しプラグ401がついている。ケーシング40内には、後押しプラグ401の近くには電池室100がなる上、電池10(3V、3枚)が該電池室100に入れられると後押しプラグ401に押されて電池の陽極110が陽極探針130と、陰極120が陰極探針140と、それぞれ通路になるように構成されている。
【0045】
前記に関係する構成をもっと詳細に説明すると、ケーシング40内には、絶縁材からなる隔板403が設けられており、該隔板403の前記他端側に陽極シート162が、反対側に陰極シート161がそれぞれ設けられている。陽極探針130の内端部が、隔板403を貫通して陽極シート162と連結し、陰極探針140の内端部が、陰極シート161と連結している。また、ケーシング40内の、後押しプラグ401の前記一端側に押さえ板402が設けられている。該押さえ板402は、陰極シート161と電気的に連続している上、後押しプラグ401に押されて電池の陰極120側を押圧することができるように構成されている。さらに、陽極シート162の前記他端側にそれを介して電池の陽極110と対抗するためのバネ15が設けられており、それにより、電池室100に電池10を入れられてから後押しプラグ401を付けられると、押さえ板402はバネ15に対抗しながら電池の陰極120と接触して陰極シート161を導通させる上、電池10を押して電池の陽極110をバネ15を介して陽極シート162と導通させ、陰陽二極の探針140、130を下記スイッチ18の制御に作業されるようにさせることができる。
【0046】
また、前記計測器のケーシング40には、探針140への電源供給が通る発光ダイオード17(以下LEDと略記する)が設置されている。LED17への電源供給は、陰極リード171が、隔板15を貫通して陰極シート161と電気的に連続している上、陽極リード172が、バネ15を介して陽極シート162と電気的に連続しているように構成されている。スイッチ18がオンにさせられ、且つ、陰陽二極の探針140、130が電解を行う導通状態になっている際に、LED17は光を放すので、それから陰陽両極が稼動中であるか否かを確認することができる。
【0047】
本実施形態例の携帯型計測セットの使用については、例えばステンレス鋼の納入を担当する工員が該計測セットを随時に携帯し、現場に仕事をする。
【0048】
説明中に実施形態例を挙げて本発明を更に詳しく説明することがあるが、本発明はこれらの実施形態例によりその範囲を限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
如上のように、前記オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法及びその判別キットによると、前記判別方法における呈色基準の作成法により前記判別キットにおける呈色基準表を作ることができ、また、前記呈色基準表から所定の電解条件を選択することによりマンガン含有量による呈色変化を固定し、オーステナイト系ステンレス鋼の鋼種判別を容易にさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キットの部分構成図である。
【図2】ステンレス鋼の標準製品におけるクロム、鉄、マンガン成分の記録図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る携帯型計測セットの縦断面構成図である。
【符号の説明】
【0051】
1 直流電源供給装置
10 電池
100 電池室
11 陽極
110 陽極
12 陰極
120 陰極
13 陽極探針
130 陽極探針
14 陰極探針
140 陰極探針
15 バネ
161 陰極シート
162 陽極シート
17 発光ダイオード(LEDと略記する)
171 陰極リード
172 陽極リード
18 スイッチ
2 ステンレス鋼
3 電解液
30 電解液収納瓶
4 計測器
40 ケーシング
401 後押しプラグ
402 押さえ板
403 隔板
41 クリップ付き蓋
410 開口
411 クリップ
412 磁性体
5 呈色基準表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、そのステンレス鋼の類別を判定する判別方法であって、まず、
オーステナイト系ステンレス鋼の複数の標準製品をそれぞれ所定の電解液と接触させる過程と、
前記各標準製品の電解液がない第1箇所をプラス電位にし、電解液がある第2箇所をマイナス電位にするように所定電圧の外部電源と接続して所定時間に亘って電解をし、前記第2箇所における標準製品の成分を電解液内に溶出し呈色させる過程と、
前記複数の標準製品についてそれらの前記電解によって溶出されたマンガンの呈色の程度をそれぞれ対応付けて羅列する過程とで、
オーステナイト系ステンレス鋼のマンガン成分による呈色の基準を作っておいてから、
前記過程に踏まえて被検物であるオーステナイト系ステンレス鋼を電解により呈色させ、その呈色を前記呈色基準に照らしてステンレス鋼の類別を判定することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法。
【請求項2】
前記電解液として、無機酸塩水溶液で作られたものを使用することを特徴とする、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法。
【請求項3】
前記無機酸塩水溶液として、硫酸塩、蓚酸塩、リン酸塩、酢酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩及び硝酸塩の群から選んで作られたものを使用することを特徴とする、請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法。
【請求項4】
前記無機酸塩水溶液として、pH3〜7のものを使用することを特徴とする、請求項3に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法。
【請求項5】
前記無機酸塩水溶液として、濃度0.005M〜飽和濃度のものを使用することを特徴とする、請求項3に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法。
【請求項6】
前記電解は、電圧3〜18ボルトの下に行うことを特徴とする、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別方法。
【請求項7】
オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、そのステンレス鋼の類別を判定するための判別キットであって、少なくとも、
オーステナイト系ステンレス鋼の所定条件下における、マンガン成分による呈色の基準表と、
直流電源供給装置と、
導線によりそれぞれ前記直流電源供給装置の陰陽二極と接続する陰陽二探針とを備えていることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キット。
【請求項8】
オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、そのステンレス鋼の類別を判定するための判別キットであって、少なくとも、
オーステナイト系ステンレス鋼の電解に溶出されたマンガン成分による呈色の基準表と、
直流電源供給装置と、
導線によりそれぞれ前記直流電源供給装置の陰陽二極と接続する陰陽二探針と、
前記電解に使用された電解液と同一の電解液が入っている電解液収納瓶とを備えており、
それにより、前記陰陽二探針をそれぞれ前記直流電源供給装置の陰陽二極に接続してから、被検物であるオーステナイト系ステンレス鋼の表面に前記電解液をおき、そして、前記陰極探針を電解液の液滴内に陽極探針を表面だけにとオーステナイト系ステンレス鋼に接触させ、電解液の電解による呈色を前記呈色基準表に照らしてステンレス鋼の類別を判定することができることを特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キット。
【請求項9】
オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、そのステンレス鋼の類別を判定するための判別キットであって、少なくとも、
オーステナイト系ステンレス鋼の電解に溶出されたマンガン成分による呈色の基準表と、
そのケーシング内に直流電源供給装置が収納され、ケーシングからそれぞれ前記直流電源供給装置の陰陽二極と接続した陰陽二探針が突出している計測器とを備えていることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キット。
【請求項10】
オーステナイト系ステンレス鋼を電解によりマンガン成分を溶出して呈色させ、そのステンレス鋼の類別を判定するための判別キットであって、少なくとも、
オーステナイト系ステンレス鋼の電解に溶出されたマンガン成分による呈色の基準表と、
そのケーシングの全体がペン形となり、ケーシング内に直流電源供給装置が収納され、また、ケーシングからそれぞれ前記直流電源供給装置の陰陽二極と接続した陰陽二探針が突出している計測器と、
前記電解に使用された電解液と同一の電解液が入っている電解液収納瓶とを備えており、
被検物であるオーステナイト系ステンレス鋼の表面に前記電解液をおいてから、前記計測器を、陰極探針が電解液の液滴内に陽極探針が表面だけにとオーステナイト系ステンレス鋼に接触させ、電解液の電解による呈色を前記呈色基準表に照らしてステンレス鋼の類別を判定することができることを特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キット。
【請求項11】
前記基準表には、異なる電解液によって作られた複数の呈色基準列が羅列してあることを特徴とする請求項7、8、9または10に記載の、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キット。
【請求項12】
前記基準表には、異なる電解液によって作られた複数の呈色基準列が羅列してあり、
また、前記電解液収納瓶は複数あって、それぞれ前記異なる電解液を収納していることを特徴とする請求項8または10に記載の、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キット。
【請求項13】
前記電解液収納瓶が収納した電解液は、濃度0.005M〜飽和濃度、pH3〜7の無機酸塩水溶液であることを特徴とする請求項8、10、11または12に記載の、オーステナイト系ステンレス鋼の電解による判別キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−115608(P2009−115608A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288716(P2007−288716)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(502455463)▲いえ▼聯鋼鐵股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】