説明

オーディオ信号処理回路およびそれを用いた電子機器

【課題】高音質でステレオ録音する。
【解決手段】A/Dコンバータ10は、Lチャンネル、Rチャンネルのアナログオーディオ信号をそれぞれ、デジタルオーディオ信号に変換する。ボリウム回路は、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれに、調節可能な利得G1L、G1Rを乗ずる。制御部40は、キャリブレーションモードにおいて、ピーク検出回路22をアクティブとし、LチャンネルおよびRチャンネルのデジタルオーディオ信号のピーク値S3を取得する。そして制御部40は、Lチャンネルのピーク値S3Lと所定の基準値REFとの差分に応じて、通常モードにおいてボリウム回路に設定すべきLチャンネルの利得G1Lを計算し、Rチャンネルのピーク値S3Rと基準値REFとの差分に応じて、通常モードにおいてボリウム回路24に設定すべきRチャンネルの利得G1Rを計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に録音機能を提供するオーディオ信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな電子機器に、音声、環境音、音楽など(以下、これらを総称して単に音声という)を録音する機能が実装されている。こうした電子機器では、マイクから入力されたオーディオ信号を、所定のフォーマットで圧縮符号化し、これを記憶手段に格納する。再生時には、記憶手段からオーディオデータを読み出し、それをデコードして再生する。この機能を実現するために、マイクからのオーディオ信号を処理するオーディオ信号処理回路(CODEC回路とも称される)が使用される。
【0003】
オーディオ信号を高い臨場感で録音するために、LチャンネルとRチャンネルを有するステレオマイクが使用される。ここでステレオマイクのLチャンネルとRチャンネルの感度が異なると、むしろ臨場感がそこなわれ音質が悪化する。かかる事情から従来では、感度のばらつきが小さなマイクを搭載する必要があったが、こうしたばらつきの小さなマイクは高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−273062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、高音質なステレオ録音が可能なオーディオ信号処理回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、マイクにより電気信号に変換されたLチャンネルとRチャンネルのアナログオーディオ信号を受け、所定の信号処理を施すオーディオ信号処理回路に関する。オーディオ信号処理回路は、Lチャンネル、Rチャンネルのアナログオーディオ信号をそれぞれ、デジタルオーディオ信号に変換するA/Dコンバータと、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれに、調節可能な利得を乗ずるボリウム回路と、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれのピーク値を検出するピーク検出回路と、ボリウム回路を経たLチャンネルとRチャンネルのデジタルオーディオ信号を受け、所定のフォーマットにエンコードするエンコーダと、本オーディオ信号処理回路を制御する制御部と、を備える。制御部は、キャリブレーションモードにおいて、(1)ピーク検出回路をアクティブとし、マイクに所定の音量のオーディオ信号を入力した状態でLチャンネルおよびRチャンネルのデジタルオーディオ信号のピーク値を取得し、(2)Lチャンネルのピーク値と所定の基準値との差分に応じて、通常モードにおいてボリウム回路に設定すべきLチャンネルの利得を計算し、Rチャンネルのピーク値と基準値との差分に応じて、通常モードにおいてボリウム回路に設定すべきRチャンネルの利得を計算可能に構成される。
【0007】
この態様によると、オーディオ信号処理回路によって、LチャンネルとRチャンネルのマイクの感度のばらつきを測定し、補正することができる。これにより、通常使用時において、高音質な録音が可能となる。
【0008】
本発明の別の態様もまた、オーディオ信号処理回路である。このオーディオ信号処理回路は、Lチャンネル、Rチャンネルのアナログオーディオ信号をそれぞれ、デジタルオーディオ信号に変換するA/Dコンバータと、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれに、調節可能な利得を乗ずるボリウム回路と、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれのピーク値を検出するピーク検出回路と、ボリウム回路を経たLチャンネルとRチャンネルのデジタルオーディオ信号を受け、所定のフォーマットにエンコードするエンコーダと、本オーディオ信号処理回路を制御する制御部と、を備える。制御部は、キャリブレーションモードにおいて、(1)ピーク検出回路をアクティブとし、マイクに所定の音量のオーディオ信号を入力した状態で、LチャンネルおよびRチャンネルのデジタルオーディオ信号のピーク値を取得し、(2)Lチャンネルのピーク値とRチャンネルのピーク値の差分に応じて、通常モードにおいてボリウム回路に設定すべきLチャンネルおよびRチャンネルそれぞれの利得を計算可能に構成される。
【0009】
この態様によると、同相ノイズの影響を除去しつつ、LチャンネルとRチャンネルのマイクの感度のばらつきを測定し、補正することができる。
【0010】
ある態様のオーディオ信号処理回路は、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれをフィルタリングするフィルタをさらに備えてもよい。制御部は、キャリブレーションモードにおいて、フィルタをピーク検出回路の前段に挿入してアクティブとし、かつフィルタの通過周波数を、マイクに入力するオーディオ信号の周波数と一致させてもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、Lチャンネルのマイクと、Rチャンネルのマイクと、Lチャンネル、Rチャンネルのマイクからのアナログオーディオ信号を受ける上述のいずれかのオーディオ信号処理回路と、オーディオ信号処理回路を制御するマイコンと、を備える。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高音質なステレオ録音が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るオーディオ信号処理回路を備える電子機器の構成を示すブロック図である。
【図2】キャリブレーションモードにおけるオーディオ信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図3】キャリブレーションモードにおけるオーディオ信号処理回路の別の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本明細書において、「部材Aが部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
図1は、実施の形態に係るオーディオ信号処理回路100を備える電子機器1の構成を示すブロック図である。
【0018】
電子機器1は、デジタルカメラ、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)、ビデオレコーダ、ボイスレコーダをはじめとする、オーディオ信号の録音・再生機能を備えるデバイスである。
【0019】
電子機器1は、LチャンネルおよびRチャンネルのマイク2L、2R、スピーカ4、マイコン6およびオーディオ信号処理回路100を備える。
【0020】
Lチャンネル、Rチャンネルを有するステレオマイク2L、2Rは、入力された音響信号を、電気信号(以下、アナログオーディオ信号という)S1L、S1Rに変換する。
オーディオ信号処理回路100は、ひとつの半導体チップ上に集積化された機能IC(Integrated Circuit)であり、CODEC(COder/DECoder)回路と称される。オーディオ信号処理回路100は、マイク2L、2Rからのアナログオーディオ信号S1L、S1Rを受け、それらをデジタルオーディオ信号に変換して所定の信号処理を施し、メモリ8に格納可能なデータ形式に変換する。また、オーディオ信号処理回路100は、メモリ8に格納された所定のフォーマットのデジタルオーディオ信号を読み出し、それをデコードし、アナログオーディオ信号S20に変換して、スピーカ4へと出力する。
【0021】
マイコン6は、電子機器1全体を統合的に制御するホストプロセッサであり、オーディオ信号処理回路100をはじめとするさまざまなブロックを制御する。
【0022】
以上が電子機器1の全体の構成である。続いて、オーディオ信号処理回路100の具体的な構成を説明する。
【0023】
オーディオ信号処理回路100は、A/Dコンバータ10L、10R、D/Aコンバータ12、デジタル信号処理部20、インタフェース回路14を備える。
【0024】
A/Dコンバータ10L、10Rはそれぞれ、マイク2L、2RからのLチャンネルとRチャンネルのアナログオーディオ信号S1L、S1Rを受け、それらをLチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号S2L、S2Rに変換し、デジタル信号処理部20へと出力する。またD/Aコンバータ12は、デジタル信号処理部20からのデジタルオーディオ信号S21を受け、それをアナログオーディオ信号S20に変換する。以下、LチャンネルおよびRチャンネルを区別する必要が無い場合には、適宜添え字L、Rを省略する。
【0025】
インタフェース回路14は、マイコン6をはじめとする外部回路とバス7を介して接続され、外部回路との間で、制御信号やデジタルオーディオ信号を送受信する。
【0026】
デジタル信号処理部20は、A/Dコンバータ10からのデジタルオーディオ信号S2を受け、所定の信号処理を施し、メモリ8に格納可能なフォーマットにエンコードする。また、デジタル信号処理部20は、メモリ8から読み出されたデジタルオーディオ信号を受け、それをデコードし、D/Aコンバータ12へと出力する。デジタル信号処理部20は、ピーク検出回路22、ボリウム回路24、フィルタ26、L/R差分演算器28、エンコーダ30、デコーダ32を備える。
【0027】
ピーク検出回路22は、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号S2L、S2Rそれぞれのピーク値を検出する。ボリウム回路24は、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号S2L、S2Rそれぞれに、調節可能な利得を乗ずる。フィルタ26は、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号S2L、S2Rそれぞれをフィルタリングする。L/R差分演算器28は、Lチャンネルのデジタルオーディオ信号S2LとRチャンネルのデジタルオーディオ信号S2Rの差分を演算する。LチャンネルとRチャンネルの位相差や音量差は、様々な演算処理に利用される。
【0028】
エンコーダ30は、Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号S2L、S2Rそれぞれを、メモリ8に格納可能な形式にエンコードする。デコーダ32は、メモリ8からのデジタルオーディオ信号S2L、S2Rをデコードする。
【0029】
ピーク検出回路22、ボリウム回路24、フィルタ26、L/R差分演算器28は、それぞれのオン(アクティブ)、オフ(非アクティブ)状態や、パラメータが独立に設定可能となっており、また、それらの演算処理の順序も切りかえ可能に構成される。制御部40は、ピーク検出回路22、ボリウム回路24、フィルタ26、L/R差分演算器28の状態を制御する。
【0030】
したがってA/Dコンバータ10からのデジタルオーディオ信号S2は、ピーク検出回路22、ボリウム回路24、フィルタ26、L/R差分演算器28の任意の組み合わせを経て、エンコーダ30へと供給される。デコーダ32によりデコードされたデジタルオーディオもまた、ピーク検出回路22、ボリウム回路24、フィルタ26、L/R差分演算器28の任意の組み合わせを経て、D/Aコンバータ12へと供給される。
【0031】
電子機器1の通常の使用時(後述の通常モード)において、ボリウム回路24はアクティブとなり、A/Dコンバータ10からエンコーダ30へ至る経路上に配置される。L/R差分演算器28がアクティブとされる場合、ボリウム回路24は、L/R差分演算器28より前段に配置されることが好ましい。L/R差分演算器28が利用されない場合は、ボリウム回路24の位置は特に限定されないが、汎用性を考慮すると、ボリウム回路24はA/Dコンバータ10の直後に配置しておくことが望ましい。
【0032】
以上がオーディオ信号処理回路100の基本構成である。オーディオ信号処理回路100は、それ自身がマイク2L、2Rのばらつきを測定し、そのばらつきを補正するキャリブレーション機能を備える。以下、このキャリブレーション機能に関する説明をする。オーディオ信号処理回路100は、マイク2のキャリブレーション時には、キャリブレーションモードに設定され、通常の信号処理時には、通常モードに設定される。
【0033】
図2は、キャリブレーションモードにおけるオーディオ信号処理回路100の構成を示すブロック図である。
【0034】
インタフェース回路14は、マイコン6からキャリブレーションモードを指示する制御信号を受ける。この制御信号に応じて制御部40は、デジタル信号処理部20内の信号処理ブロックの配置を変更する。具体的には制御部40は、キャリブレーションモードが指示されると、フィルタ26およびピーク検出回路22を、A/Dコンバータ10から出力されるデジタルオーディオ信号S2の経路上に、順に直列に配置する。
【0035】
制御部40は、(1)マイク2に所定の音量のオーディオ信号を入力した状態で、フィルタ26およびピーク検出回路22をアクティブとし、LチャンネルおよびRチャンネルのデジタルオーディオ信号S2のピーク値S3Lを取得する。
【0036】
電子機器1の設計者は、マイク2の感度の公称値、A/Dコンバータ10、フィルタ26の性能を知っており、また、キャリブレーション工程においてマイク2に入力される音量を知っている。したがってキャリブレーション工程において、マイク2に所定の音量のオーディオ信号を入力したときに、ピーク検出回路22により取得されるピーク値の期待値を計算することができる。マイコン6は、この期待値に対応する基準値REFを、オーディオ信号処理回路100に送信する。
【0037】
そして制御部40は、(2)Lチャンネルのピーク値S3Lと所定の基準値REFとの差分ΔL=(S3L−REF)に応じて、通常モードにおいてボリウム回路24Lに設定すべきLチャンネルの利得G1Lを計算する。同様に、Rチャンネルのピーク値S3Rと基準値REFとの差分ΔR=(S3R−REF)に応じて、通常モードにおいてボリウム回路24Rに設定すべきRチャンネルの利得G1Rを計算する。
【0038】
上述のように、制御部40は、通常モードにおいてボリウム回路24に設定すべき利得G1R、G1Lを、インタフェース回路14を介してマイコン6に送信する。マイコン6は、図示しない不揮発性メモリに、利得G1R、G1Lの値を格納する。
【0039】
以上がキャリブレーション処理に関する説明である。続いて、図1の電子機器1の動作を説明する。
【0040】
電子機器1のアセンブルが完了すると、電子機器1の製造者は、マイク2L、2Rのキャリブレーションを行う。
キャリブレーションは以下のようにして実行される。まず、マイコン6からオーディオ信号処理回路100に対して、キャリブレーションモードを指示する制御信号が出力される。これを受けて制御部40は、図2に示すようにデジタル信号処理部20の構成を変更する。またマイコン6は、オーディオ信号処理回路100に対して、ピーク値S3L、S3Rの期待値を示す基準値REFを出力する。
【0041】
この状態で、電子機器1の外部のスピーカから、マイク2L、2Rに対して所定の音量のオーディオ信号を出力する。これにより、ピーク検出回路22によって、マイク2Lにより取得されたオーディオ信号のピーク値S3Lと、2Rによって取得されたオーディオ信号のピーク値S3Rが生成される。
【0042】
マイク2L、2Rの感度が公称値と一致していれば、ピーク値S3Lと基準値REFの差、ピーク値S3Rと基準値REFの差はそれぞれゼロとなる。一方、マイク2L、2Rの感度が、公称値に対してばらついていると、ピーク値S3Lと基準値REFの差分ΔL、ピーク値S3Rと基準値REFの差分ΔRは、非ゼロとなる。制御部40は、Lチャンネル、Rチャンネルそれぞれの差分ΔL、ΔRにもとづき、通常モードにおけるボリウム回路24の利得G1L、G1Rを計算し、それをマイコン6に送信する。利得G1L、G1Rは、図示しない不揮発性メモリに格納される。
【0043】
以上でキャリブレーション工程は終了である。
続いて、電子機器1の出荷後の動作を説明する。電子機器1の電源が投入されると、マイコン6は、オーディオ信号処理回路100に対して、通常モードを指示する制御信号を出力する。また、マイコン6は図示しない不揮発性メモリから利得G1L、G1Rを読み出し、オーディオ信号処理回路100へと送信する。
【0044】
オーディオ信号処理回路100は、通常モードが指示されると、デジタル信号処理部20内のブロックを、実行すべき信号処理の内容に応じた順序で配置する。この際に、ボリウム回路24は、デジタルオーディオ信号S2L、S2Rの経路上に配置され、それらの利得は、マイコン6から受信した利得G1L、G1Rに設定される。
【0045】
これにより、通常モードにおいては、ボリウム回路24から出力されるデジタルオーディオ信号のレベルは、マイク2L、2Rの感度のばらつきがキャンセルされたものとなる。
【0046】
以上のように、オーディオ信号処理回路100によれば、キャリブレーション工程により、マイク2L、2Rの感度を補正し、LチャンネルとRチャンネルの特性を揃えることができる。その結果、自然なステレオ感でオーディオ信号を録音することができる。
【0047】
一般に、感度のばらつきの小さなマイクは、ばらつきの大きなマイクよりも高価である。オーディオ信号処理回路100を用いれば、感度ばらつきの大きな安価なマイクを使用できるため、オーディオ信号処理回路100のコストを下げることができる。
【0048】
実施の形態に係るオーディオ信号処理回路100は、キャリブレーションモードにおいて、ピーク検出回路22の前段にフィルタ26を挿入するようにしている。キャリブレーション時にマイク2L、2Rに入力するオーディオ信号の周波数と、フィルタ26の通過帯域を一致させることにより、それ以外の帯域の影響を排除することができ、より高精度なキャリブレーションが実現できる。この場合、オーディオ信号は、単一スペクトルとしてもよい。
【0049】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0050】
図3は、キャリブレーションモードにおけるオーディオ信号処理回路の別の構成を示すブロック図である。
【0051】
オーディオ信号処理回路100aの制御部40aは、キャリブレーションモードにおいて、Lチャンネルのピーク値S3LとRチャンネルのピーク値S3Rの差分ΔLRを算出する。差分の算出には、図1のL/R差分演算器28を利用してもよい。そして制御部40aは、差分ΔLRに応じて、通常モードにおいてボリウム回路24に設定すべきLチャンネル、Rチャンネルそれぞれの利得G1L、G1Rを計算する。
【0052】
図2の構成では、マイク2L、2Rを、基準値REFに対して絶対的にキャリブレーションしていた。これに対して、図3の変形例では、2つのマイク2L、2Rを相対的にキャリブレーションできる。相対的なキャリブレーションは、LチャンネルとRチャンネルの同相ノイズの影響を排除することができるという利点がある。
【0053】
さらに別の変形例では、キャリブレーションモードにおいて、図2のデジタル信号処理部20の構成と、図3のデジタル信号処理部20の構成が、マイコン6からの制御信号に応じて切りかえ可能とすることが望ましい。
【0054】
ノイズ等の影響が問題とならない場合、キャリブレーションモードにおいてフィルタ26を非アクティブとしてもよい。
【0055】
実施の形態にもとづき、本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を離脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…電子機器、2…マイク、4…スピーカ、6…マイコン、8…メモリ、100…オーディオ信号処理回路、10…A/Dコンバータ、12…D/Aコンバータ、14…インタフェース回路、20…デジタル信号処理部、22…ピーク検出回路、24…ボリウム回路、26…フィルタ、28…L/R差分演算器、30…エンコーダ、32…デコーダ、40…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクにより電気信号に変換されたLチャンネルとRチャンネルのアナログオーディオ信号を受け、所定の信号処理を施すオーディオ信号処理回路であって、
前記Lチャンネル、Rチャンネルのアナログオーディオ信号をそれぞれ、デジタルオーディオ信号に変換するA/Dコンバータと、
前記Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれに、調節可能な利得を乗ずるボリウム回路と、
前記Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれのピーク値を検出するピーク検出回路と、
前記ボリウム回路を経たLチャンネルとRチャンネルのデジタルオーディオ信号を受け、所定のフォーマットにエンコードするエンコーダと、
本オーディオ信号処理回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、キャリブレーションモードにおいて、
(1)前記ピーク検出回路をアクティブとし、前記マイクに所定の音量のオーディオ信号を入力した状態で、前記LチャンネルおよびRチャンネルのデジタルオーディオ信号のピーク値を取得し、(2)Lチャンネルのピーク値と所定の基準値との差分に応じて、通常モードにおいて前記ボリウム回路に設定すべきLチャンネルの利得を計算し、Rチャンネルのピーク値と前記基準値との差分に応じて、通常モードにおいて前記ボリウム回路に設定すべきRチャンネルの利得を計算可能に構成されることを特徴とするオーディオ信号処理回路。
【請求項2】
マイクにより電気信号に変換されたLチャンネルとRチャンネルのアナログオーディオ信号を受け、所定の信号処理を施すオーディオ信号処理回路であって、
前記Lチャンネル、Rチャンネルのアナログオーディオ信号をそれぞれ、デジタルオーディオ信号に変換するA/Dコンバータと、
前記Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれに、調節可能な利得を乗ずるボリウム回路と、
前記Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれのピーク値を検出するピーク検出回路と、
前記ボリウム回路を経たLチャンネルとRチャンネルのデジタルオーディオ信号を受け、所定のフォーマットにエンコードするエンコーダと、
本オーディオ信号処理回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、キャリブレーションモードにおいて、
(1)前記ピーク検出回路をアクティブとし、前記マイクに所定の音量のオーディオ信号を入力した状態で、前記LチャンネルおよびRチャンネルのデジタルオーディオ信号のピーク値を取得し、(2)Lチャンネルのピーク値とRチャンネルのピーク値の差分に応じて、通常モードにおいて前記ボリウム回路に設定すべきLチャンネルおよびRチャンネルそれぞれの利得を計算可能に構成されることを特徴とするオーディオ信号処理回路。
【請求項3】
前記Lチャンネル、Rチャンネルのデジタルオーディオ信号それぞれをフィルタリングするフィルタをさらに備え、
前記制御部は、キャリブレーションモードにおいて、前記フィルタを前記ピーク検出回路の前段に挿入してアクティブとし、かつ前記フィルタの通過周波数を、前記マイクに入力するオーディオ信号の周波数と一致させることを特徴とする請求項1または2に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項4】
Lチャンネルのマイクと、
Rチャンネルのマイクと、
前記Lチャンネル、Rチャンネルのマイクからのアナログオーディオ信号を受ける請求項1から3のいずれかに記載のオーディオ信号処理回路と、
前記オーディオ信号処理回路を制御するマイコンと、
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−46140(P2013−46140A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181470(P2011−181470)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】