説明

オーブン付ストーブ

【課題】 燃焼熱の温度変化があっても調理室の温度変動が生じにくいようにして調理物を所望の調理具合に調理することができるようにしたオーブン付ストーブを提供する。
【解決手段】 固形燃料を燃焼する燃焼室Bを有した金属製の本体1と、本体1の燃焼室B内に設けられ上壁81,下壁82及び側壁83で囲繞され調理物を収容する調理室Cを有し燃焼室Bの固形燃料の燃焼熱を熱源として調理室C内の調理物を加熱調理するオーブン80とを備えたオーブン付ストーブSにおいて、オーブン80の上壁81,下壁82及び側壁83を石で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪等の固形燃料を燃焼する燃焼室を有した本体の燃焼室内に、調理物を収容する調理室を有し調理室で調理物を加熱調理するオーブンを設けたオーブン付ストーブに係り、特に、燃焼室の固形燃料の燃焼熱を熱源として調理室の調理物を加熱調理するオーブン付ストーブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のオーブン付ストーブとしては、例えば、特許文献1(特開2004−232932号公報)に記載されたものが知られている。
図9に示すように、このオーブン付ストーブSaは、薪等の固形燃料を燃焼する燃焼室101を有した金属製の本体100と、本体100の燃焼室101内に設けられ上壁111a,下壁111b及び側壁111cで囲繞され調理物を収容する調理室111を有し燃焼室101の固形燃料の燃焼熱を熱源として調理室111内の調理物を加熱調理する金属製のオーブン110とを備えて構成されている。
本体100は、内部を燃焼室101とするボックス状に形成されており、本体100の前面102の下側に燃焼室101に固形燃料を入れるための開閉可能な開口103が設けられ、本体100の側面104の下側に燃焼室101に空気を供給するための空気供給口部105が設けられ、本体100の上面106に煙突107が接続され燃焼室101からの排気ガスを排気する排気口108が設けられている。また、オーブン110は、本体100の燃焼室101内の上側に本体100を貫通して横設されており、本体100から突出した側壁111cの左右側壁に調理室110に対して調理物を出し入れするための開閉可能な出入口112が設けられている。
【0003】
このように構成されたオーブン付ストーブSaを使用するときは、本体100の開口103を開いて開口103から薪等の固形燃料を入れて着火し、その後開口103を閉じる。この状態では、空気供給口部105から適時に外気が燃焼室101に供給されるようになるので、燃焼室101で固形燃料が燃焼し、この固形燃料の燃焼熱により暖をとることができる。
そして、このオーブン付ストーブSaを使用して調理物を加熱調理する場合は、固形燃料が燃焼している状態で、適宜のタイミングでオーブン110の出入口112を開いて調理物を調理室111に入れて出入口112を閉じる。調理室111は、固形燃料の燃焼熱によって加熱されて高温状態になっているので、調理物を加熱調理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−232932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来のオーブン付ストーブSaにおいては、オーブン110が金属製なので、燃焼室101の固形燃料の燃焼熱が熱伝導しやすく、そのため、燃焼熱の温度変化によって調理室111の温度が変動しやすいので、それだけ、調理物を所望の調理具合に調理することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、燃焼熱の温度変化があっても調理室の温度変動が生じにくいようにして調理物を所望の調理具合に調理することができるようにしたオーブン付ストーブを提供することを目的とする。また、必要に応じ、加工や組み付けを容易にしたオーブン付ストーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明のオーブン付ストーブは、固形燃料を燃焼する燃焼室を有した金属製の本体と、該本体の燃焼室内に設けられ上壁,下壁及び側壁で囲繞され調理物を収容する調理室を有し上記燃焼室の固形燃料の燃焼熱を熱源として上記調理室内の調理物を加熱調理するオーブンとを備えたオーブン付ストーブにおいて、上記オーブンの上壁,下壁及び側壁を石で形成した構成としている。
【0008】
これにより、本オーブン付ストーブを使用するときは、燃焼室に固形燃料を入れて着火し、燃焼室で固形燃料を燃焼させる。この固形燃料の燃焼熱により暖をとることができる。そして、調理物を加熱調理する場合は、固形燃料が燃焼している状態で、適宜のタイミングで調理物を調理室に入れる。オーブンの上壁,下壁及び側壁は燃焼室の燃焼熱により加熱されているので調理室の温度が高くなっていることから、この調理室で調理物を加熱調理することができる。この場合、オーブンの上壁,下壁及び側壁は石で形成されており、石は熱伝導率が低いので、燃焼熱の温度変化があっても調理室の温度変動が生じにくく、温度が安定し、調理物をこれに合った所望の調理具合に調理することができる。
【0009】
そして、必要に応じ、上記本体を、内部を燃焼室とするボックス状に形成し、該本体の前面下側に上記燃焼室に固形燃料を入れるための開閉可能な開口及び上記燃焼室に空気を供給するための開度調整可能な空気供給口部を設け、上記本体の後面上側に煙突が接続され上記燃焼室からの排気ガスを排気する排気口を設け、上記オーブンの側壁を、前側壁,後側壁及び前側壁と後側壁との間に連接される横側壁を備えて外形が多角形状になるように形成し、該オーブンを、その前側壁が上記本体の前面側に位置し後側壁が上記本体の排気口に間隔を隔てて対峙するように上記本体の燃焼室の上側に設け、上記前側壁に外部に露出可能に形成され上記調理室に対して調理物を出し入れするための開閉可能な出入口を設け、上記後側壁に上記燃焼室と開閉可能に連通する連通口を設けた構成としている。
【0010】
これにより、本オーブン付ストーブを使用するときは、本体の開口を開いて開口から固形燃料を入れて着火し、その後開口を閉じる。この状態では、空気供給口部から適時に外気が燃焼室に供給されるようになるので、燃焼室で固形燃料が確実に燃焼するようになる。そして、燃焼室で燃焼した固形燃料により発生する排気ガスは、燃焼室の上側に至り本体の後面とオーブンの後側壁との間の空間を通って排気口から排気される。開口及び空気供給口部が本体の下側に設けられ、排気口が本体の上側に設けられているので、燃焼室で発生した排気ガスをスムーズに排気することができる。
【0011】
また、このオーブン付ストーブを使用して調理物を加熱調理する場合は、固形燃料が燃焼している状態で、適宜のタイミングでオーブンの出入口を開いて調理物を調理室に入れて出入口を閉じる。オーブンは燃焼室の上側に設けられているので、固形燃料の燃焼熱を効率良くオーブンに熱伝導することができ、そのため、オーブンを比較的早い段階で使用しはじめることができる。そして、燃焼室に入れた固形燃料の燃焼状態や調理室に入れた調理物の調理具合に応じて連通口を開閉させ、調理物を所望の調理具合に加熱調理する。詳しくは、例えば、魚等の加熱調理時に排気ガスが発生する調理物を調理する際には、固形燃料が燃焼して排気ガスが発生している状態で連通口を開にしても燃焼室から排気ガスが調理室に入り込まずに調理物から発生する排気ガスが調理室から排出されるようになるので、調理物の調理具合に応じて連通口を開閉させて適宜に調理室から排気ガスを排出させるようにする。この調理室から排出された排気ガスは、本体の後面とオーブンの後側壁との間の空間を通って燃焼室の排気ガスとともに排気口から排気される。また、例えば、ピザ等の加熱調理時に比較的排気ガスが発生しない調理物を調理する際には、固形燃料が燃焼して排気ガスが発生している状態では連通口を閉にしておき、固形燃料から排気ガスが発生しない状態、所謂熾きの状態になったら連通口を開にする。こうすることで燃焼室から調理室に排気ガスが入り込まずに燃焼室の熱が壁のみならず連通口を通しても調理室に伝達されるようになるので、調理物を所望の調理具合に調理することができる。更に、オーブンの側壁を外形が多角形状になるように形成しているので、円形に形成した場合と比較して、石を加工しやすく、そのため、オーブンを作成しやすくなる。
【0012】
また、必要に応じ、上記オーブンの側壁の外形を六角以上の多角形状に形成した構成としている。
調理物は、主に調理室で発生した放射熱により加熱調理されるが、オーブンの側壁の外形を六角以上の多角形状に形成することにより、放射熱がオーブンの側壁に当たって反射する反射熱が調理室の中心部を通りやすくなり、そのため、調理室の中心部に調理物を置くことで反射熱を調理物に向けて反射させることができるようになるので、調理物を効率良く加熱調理することができる。
【0013】
更に、必要に応じ、上記本体に、上側に開放する開放口を有し上記オーブンが上記開放口から入れられて嵌まり込んで収容されるボックス状の収容室を設け、該収容室の開放口を閉塞する金属製の蓋を設け、上記収容室の前面部に上記オーブンの出入口に連通する出入口開口を形成し、該前面部に上記出入口開口を開閉する開閉扉を設け、上記収容室の後面部に上記オーブンの連通口に連通する連通口開口を形成した構成としている。
【0014】
これにより、オーブンを本体に組み付けるときは、蓋を外し、オーブンを開放口から入れて収容室に嵌め込んで収容し、その後蓋をする。オーブンを収容室に収容するだけなので、オーブンの組み付けを容易に行なうことができる。
【0015】
更にまた、必要に応じ、上記オーブンの上壁,下壁及び側壁を夫々石製のブロックで構成している。
これにより、オーブンを作成する際、上壁,下壁及び側壁を夫々別途作成することができるので、一体形成する場合に比較してオーブンを比較的簡易に作成することができる。
【0016】
そして、また、必要に応じ、上記オーブンの側壁を、該側壁を形作る多角形の各辺に応じて分割して形成した構成としている。
これにより、側壁を、複数の石板で構成することができるので、より一層オーブンを簡易に作成することができる。
【0017】
また、必要に応じ、上記オーブンの側壁を上記上壁と下壁との間に挾装した構成としている。
これにより、オーブンを組み立てるときは、下壁に側壁を積み重ね、その後上壁を側壁に積み重ねることで行なう。即ち、上壁,下壁及び側壁を順次積み重ねて組み立てできるので、組み付け性を向上させることができる。
【0018】
更に、必要に応じ、上記連通口及び連通口開口を上記調理室の左右方向に沿って複数設け、上記本体に対して出入りするとともに上記収容室の後面部に沿って移動し上記連通口及び連通口開口を開閉する開閉板と、上記収容室の後面部に設けられ上記開閉板をスライド移動可能にガイドするガイドレールと、上記開閉板の一端に設けられ該開閉板を移動させるための把持部とを備えて構成している。
【0019】
これにより、連通口及び連通口開口を開閉するときは、把持部を把持して開閉板を収容室の後面部に沿って移動させることにより行なう。この際、開閉板の本体に対する出し入れを調整することにより、複数の連通口及び連通口開口のうち開にする連通口及び連通口開口と閉にする連通口及び連通口開口とを調整することができる。即ち、開閉板のスライド位置を変えることで連通口及び連通口開口を開度調整できるので、連通口及び連通口開口を開閉する操作性を向上させることができる。
【0020】
更にまた、必要に応じ、上記開閉扉に上記調理室の空気調整を行なう空気調整部を設けた構成としている。
これにより、調理室に適宜に必要量の空気を供給することができるので、調理物をより一層所望の調理具合に加熱調理することができる。
【0021】
また、必要に応じ、上記本体に該本体の開口を開閉する開閉戸を設け、上記空気供給口部を、一端に上向きの空気が流入する流入口が形成されるとともに他端が上記開閉戸に接続されて上記燃焼室に連通するエルボ管と、該エルボ管の流入口縁部に回動可能に設けられ回動により該流入口の開度調整を行なう空気調整開閉板とを備えて構成している。
【0022】
これにより、燃焼室に固形燃料を供給するときは、開閉戸を開けて開口から固形燃料を入れて開閉戸を閉じる。また、燃焼室に空気を供給するときは、空気調整開閉板を回動させて流入口を外部に臨ませる。このとき、空気調整開閉板はエルボ管の上向きの流入口縁部に設けられているので、上から開閉操作をすることができ、そのため、操作性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のオーブン付ストーブによれば、燃焼室で固形燃料を燃焼させることにより発生する燃焼熱によって暖をとることができるとともに、固形燃料が燃焼している状態で、適宜のタイミングで調理物を調理室に入れることにより、調理室は固形燃料の燃焼熱によって加熱されて高温状態になっているので調理物を加熱調理することができる。この場合、オーブンの上壁,下壁及び側壁は石で形成されており、石は熱伝導率が低いので、燃焼熱の温度変化があっても調理室の温度変動が生じにくく、温度が安定し、調理物をこれに合った所望の調理具合に調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るオーブン付ストーブを示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るオーブン付ストーブを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るオーブン付ストーブを示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るオーブン付ストーブを示す側面図である。
【図5】図4中、A−A線断面図である。
【図6】図4中、B−B線断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るオーブン付ストーブを示す側面断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る開閉板及びガイドレールを示す斜視図である。
【図9】従来のオーブン付ストーブの一例を示し、(A)は側面図、(B)は(A)の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るオーブン付ストーブを説明する。
図1乃至図8には、本発明の実施の形態に係るオーブン付ストーブSを示している。本オーブン付ストーブSは、固形燃料Kを燃焼する燃焼室Bを有した金属製の本体1と、本体1の燃焼室B内に設けられ上壁81,下壁82及び側壁83で囲繞され調理物Tを収容する調理室Cを有し燃焼室Bの固形燃料Kの燃焼熱を熱源として調理室C内の調理物Tを加熱調理するオーブン80とを備えて構成されている。
【0026】
本体1は、内部を燃焼室Bとする六角柱状のボックス状に形成されている。この本体1の下面2には、接地面に本体1を設置するための脚部3が4本設けられている。また、この本体1の横側面4外周の下側には、燃焼室Bの熱によって高温となった本体1に人体や燃焼物等が接触しないように本体1の横側面4を覆う網状の安全カバー5が設けられている。
【0027】
また、この本体1の前面6下側には、燃焼室Bに固形燃料Kを入れるための開閉可能な矩形状の開口10と、この開口10を開閉する開閉戸11とが設けられている。この開閉戸11は、開口10の開口縁に沿って本体1の前面6に設けられる枠体12と、枠体12の外側に設けられ本体1の前面6とヒンジ13を介して開口10を開閉可能に接続される戸部14と、戸部14に設けられ把持されて戸部14を開閉可能にするとともに戸部14の閉時に戸部14を枠体12に対してロックすることが可能なロック部15とを備えて構成されている。
【0028】
更に、本体1の前面6下側には、燃焼室Bに空気を供給するための開度調整可能な空気供給口部20が設けられている。この空気供給口部20は、一端21aに上向きの空気が流入する流入口22が形成されるとともに他端21bが開閉戸11の戸部14に接続されて燃焼室Bに連通するエルボ管21と、エルボ管21の流入口縁部に回動可能に設けられ回動により流入口22の開度調整を行なう空気調整開閉板23とを備えて構成されている。空気調整開閉板23は、矩形状の金属板で構成され、エルボ管21の流入口縁部上側に回動軸24を介して流入口22を開度調整可能に設けられている。この空気調整開閉板23には、把持されて空気調整開閉板23を回動軸24を中心に回動可能にするハンドル25が設けられている。
【0029】
更にまた、本体1の後面7上側には、煙突31が接続され燃焼室Bからの排気ガスを排気する円筒状の排気口30が設けられている。この排気口30に接続される煙突31には、開時に排気口30からの排気ガスを外部に排気可能にし、閉時に排気口30からの排気ガスの排気を不能にするダンパ32が設けられている。
【0030】
また、この本体1には、上側に開放する開放口41を有しオーブン80が開放口41から入れられて嵌まり込んで収容されるボックス状の収容室40が設けられている。この収容室40は、本体1の前面6を構成する前面部42に後述するオーブン80の出入口84に連通する矩形状の出入口開口50と、この出入口開口50を開閉する開閉扉51とが設けられている。この開閉扉51は、出入口開口50の開口縁に沿って収容室40の前面部42に設けられる枠体部52と、枠体部52の外側に設けられ収容室40の前面部42とヒンジ53を介して出入口開口50を開閉可能に接続される扉部54と、扉部54に設けられる把手55とを備えて構成されている。また、この開閉扉51には、調理室Cの空気調整を行なう空気調整部60が設けられている。この空気調整部60は、開閉扉51に設けられ調理室Cに連通する空気調整口61と、前面部42に沿って左右方向に移動し空気調整口61を開度調整可能に開閉する耐熱ガラス製のスライド板62と、開閉扉51に設けられスライド板62をスライド移動可能にガイドするレール部63と、スライド板62に設けられる把持可能な取手64とを備えて構成されている。
【0031】
また、この収容室40には、その後面部43に後述するオーブン80の連通口85に連通する連通口開口70が設けられている。この連通口開口70は、収容室40の左右方向に複数設けられており、収容室40の縦軸線を中心に左右対称に一対形成される大孔開口71と、収容室40の横軸線を中心に上下対称に一対形成される小孔開口72とを備えて構成されている。
【0032】
更に、この収容室40には、収容室40の開放口41を閉塞する金属製の蓋44が設けられている。実施の形態では、この蓋44は、本体1の上面8を構成しており、収容室40の開放口41のみならず、収容室40の後面部43と本体1の後面7との間の上側空間も閉塞するように六角形状に形成されている。また、図示しないが、この蓋44には、蓋44の外周縁に沿って下側に向けて垂設され、内周面が本体1の横側壁4,前面6及び後面7の上側に接する鉤部が形成されている。
【0033】
また、この本体1には、本体1に対して出入りするとともに収容室40の後面部43に沿って移動し後述する連通口85及び連通口開口70を開閉する開閉板73と、収容室40の後面部43に設けられ開閉板73をスライド移動可能にガイドするガイドレール74と、開閉板73の一端73aに設けられ開閉板73を移動させるための把持部75とが設けられている。
【0034】
オーブン80は、その上壁81,下壁82及び側壁83が夫々石板状のブロックで形成され、側壁83が上壁81と下壁82との間に挾装されて構成されている。このオーブン80を構成する石は、どのようなものを用いても良いが、本実施の形態では、灰長石((Ca,Na)(Si,Al)48)を用いている。
【0035】
このオーブン80は、上壁81及び下壁82が八角形状の石板で形成され、側壁83が前側壁83a,後側壁83b及び前側壁83aと後側壁83bとの間に連接される横側壁83cを備えて外形が八角形状になるように形成されている。この側壁83は、側壁83を形作る八角形の各辺に応じて分割して形成されており、この8枚の石板を連接させて外形が八角形状になるように形成している。オーブン80の上壁81,下壁82及び側壁83を複数の石板で形成したので、オーブン80を作成する際、上壁81,下壁82及び側壁83を夫々別途作成することができ、そのため、一体形成する場合に比較してオーブン80を比較的簡易に作成することができる。
【0036】
また、このオーブン80は、その前側壁83aが本体1の前面6側に位置し後側壁83bが本体1の排気口30に間隔を隔てて対峙するように本体1の燃焼室Bの上側に設けられている。この前側壁83aには、外部に露出可能に形成され調理室Cに対して調理物Tを出し入れするための開閉可能な矩形状の出入口84が設けられており、後側壁83bには、燃焼室Bと開閉可能に連通する連通口85が設けられている。この連通口85は、調理室Cの左右方向に沿って複数設けられており、調理室Cの縦軸線を中心に左右対称に一対の大孔86が形成され、調理室Cの横軸線を中心に上下対称に一対の小孔87が形成されている。
【0037】
このオーブン80を本体1に組み付けるときは、先ず、収容室40の蓋44を外し、次に、収容室40に下壁82を入れて嵌め込み、その後、下壁82に1枚の前側壁83a,1枚の後側壁83b及び6枚の横側壁83cからなる側壁83を夫々立てて連接させて積み重ねる。このとき、前側壁83aを収容室40の前面部42に接合させ、後側壁83bを収容室40の後面部43に接合させ、横側壁83cを収容室40の横側面部45に接合させて連設させる。それから、上壁81を側壁83に積み重ねて収容室40に嵌め込み、最後に、収容室40の蓋44を被せることにより行なう。
【0038】
即ち、上壁81,下壁82及び側壁83を順次積み重ねて組み立てできるので、組み付け性を向上させることができる。また、オーブン80を収容室40に収容するだけなので、この点でも、オーブン80の組み付け性を向上させることができる。
【0039】
従って、この実施の形態に係るオーブン付ストーブSを使用するときは、開閉戸11のロック部15を把持し、開閉戸11を開いて本体1の開口10から固形燃料Kを入れて着火し、その後開閉戸11を閉じてロック部15をロックする。そして、固形燃料Kの燃焼状態に応じて適宜に空気供給口部20から空気を燃焼室Bに供給しながら燃焼室Bで固形燃料Kを燃焼させる。燃焼室Bに空気を供給するときは、ハンドル25を把持して空気調整開閉板23を回動軸24を中心に回動させて流入口22を外部に臨ませることにより行なう。このとき、空気調整開閉板23は、エルボ管21の上向きの流入口縁部に設けられているので、上から開閉操作をすることができ、そのため、操作性を向上させることができる。
【0040】
この状態では、空気供給口部20から適時に外気が燃焼室Bに供給されるようになるので、燃焼室Bで固形燃料Kが確実に燃焼するようになり、この固形燃料Kの燃焼熱により暖をとることができる。
【0041】
そして、燃焼室Bで燃焼した固形燃料Kにより発生する排気ガスは、燃焼室Bの上側に至り本体1の後面7とオーブン80の後側壁83bとの間の空間を通って排気口30から煙突31を通して排気される。開口10及び空気供給口部20が本体1の下側に設けられ、排気口30が本体1の上側に設けられているので、燃焼室Bで発生した排気ガスをスムーズに排気することができる。
【0042】
そして、このオーブン付ストーブSを使用して調理物Tを加熱調理する場合は、固形燃料Kが燃焼している状態で、適宜のタイミングで調理物Tを調理室Cに入れる。詳しくは、把手55を把持して扉部54を開き、出入口84及び出入口開口50を開いて出入口84及び出入口開口50から調理物Tを調理室Cに入れ、扉部54を閉めて出入口84及び出入口開口50を閉じる。その後、燃焼室Bに入れた固形燃料Kの燃焼状態や調理室Cに入れた調理物Tの調理具合に応じて連通口85及び連通口開口70を適宜に開閉して調理室C内の排気ガスを排出するとともに、空気調整部60を適宜に開閉して調理室Cの空気調整を行ない、調理物Tを所望の調理具合に加熱調理する。そして、調理室Cから排出された排気ガスは、本体1の後面7とオーブン80の後側壁83bとの間の空間を通って燃焼室Bの排気ガスとともに排気口30から排気される。
【0043】
連通口85及び連通口開口70を開閉するときは、把持部75を把持し、開閉板73をガイドレール74に沿ってスライドさせて収容室40の後面部43に沿って移動させることにより行なう。このとき、開閉板73の本体1に対する出し入れを調整することにより、複数の連通口85及び連通口開口70のうち開にする連通口85及び連通口開口70と閉にする連通口85及び連通口開口70とを調整することができる。即ち、開閉板73のスライド位置を変えることで連通口85及び連通口開口70を開度調整できるので、連通口85及び連通口開口70を開閉する操作性を向上させることができる。
また、空気調整部60を開閉するときは、取手64を把持し、スライド板62をレール部63に沿ってスライドさせて前面部42に沿って左右方向に移動させることにより行なう。このとき、スライド板62の移動を調整することにより、空気調整口61の開度を調整することができる。即ち、調理室Cに適宜に必要量の空気を供給することができるので、調理物Tを所望の調理具合に加熱調理することができる。
【0044】
これにより、オーブン80の上壁81,下壁82及び側壁83は燃焼室Bの燃焼熱により加熱されているので調理室Cの温度が高くなっていることから、この調理室Cで調理物Tを加熱調理することができる。この場合、オーブン80の上壁81,下壁82及び側壁83は石で形成されており、石は熱伝導率が低いので、燃焼熱の温度変化があっても調理室Cの温度変動が生じにくく、温度が安定し、調理物Tをこれに合った所望の調理具合に調理することができる。
【0045】
また、オーブン80は燃焼室Bの上側に設けられているので、固形燃料Kの燃焼熱を効率良くオーブン80に熱伝導することができ、そのため、オーブン80を比較的早い段階で使用しはじめることができる。
【0046】
更に、調理物Tは、主に調理室Cで発生した放射熱により加熱調理されるが、オーブン80の側壁83の外形を六角以上の多角形状に形成することにより、放射熱がオーブン80の側壁83に当たって反射する反射熱が調理室Cの中心部を通りやすくなり、そのため、調理室Cの中心部に調理物Tを置くことで反射熱を調理物Tに向けて反射させることができるようになるので、調理物Tを効率良く加熱調理することができる。また、オーブン80の側壁83を外形が六角以上の多角形状になるように形成しているので、円形に形成した場合と比較して、石を加工しやすく、そのため、オーブン80を作成しやすくなる。
【0047】
本発明のオーブン付ストーブSは、燃焼室Bに入れた固形燃料Kの燃焼状態や調理室Cに入れた調理物Tの調理具合に応じて連通口85及び連通口開口70を開閉させることにより、調理物Tをこれに合った所望の調理具合に加熱調理することができる。
【0048】
詳しくは、例えば、魚等の加熱調理時に排気ガスが発生する調理物Tを調理する際には、固形燃料Kが燃焼して排気ガスが発生している状態で連通口85及び連通口開口70を開にしても燃焼室Bから排気ガスが調理室Cに入り込まずに調理物Tから発生する排気ガスが調理室Cから排出されるようになるので、調理物Tの調理具合に応じて連通口85及び連通口開口70を開閉させて適宜に調理室Cから排気ガスを排出させるようにすることで調理物Tを所望の調理具合に調理することができる。
【0049】
また、例えば、ピザ等の加熱調理時に比較的排気ガスが発生しない調理物Tを調理する際には、固形燃料Kが燃焼して排気ガスが発生している状態では連通口85を閉にしておき、固形燃料Kから排気ガスが発生しない状態、所謂熾きの状態になったら連通口85を開にする。こうすることで燃焼室Bから調理室Cに排気ガスが入り込まずに燃焼室Bの熱がオーブン80の上壁81,下壁82及び側壁83のみならず連通口85及び連通口開口70を通しても調理室Cに伝達されるようになるので、調理物Tを所望の調理具合に調理することができる。
【0050】
尚、本実施の形態において、収容室40の前面部42を本体1の前面6を構成するように形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、収容室40の前面部42が本体1の前面6よりも前方に突出形成されていても良く、適宜変更して差支えない。
また、本実施の形態において、本体1を六角柱状のボックス状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、多角柱状,円柱状のボックス状に形成しても良く、適宜変更して差支えない。
更に、本実施の形態において、オーブン80の外形を六角形状以上の多角形状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、オーブン80の外形を三角形状,四角形状,円形状等に形成しても良く、適宜変更して差支えない。
【符号の説明】
【0051】
S オーブン付ストーブ
K 固形燃料
T 調理物
B 燃焼室
C 調理室
1 本体
2 下面
3 脚部
4 横側面
5 安全カバー
6 前面
7 後面
8 上面
10 開口
11 開閉戸
12 枠体
13 ヒンジ
14 戸部
15 ロック部
20 空気供給口部
21 エルボ管
22 流入口
23 空気調整開閉板
24 回動軸
25 ハンドル
30 排気口
31 煙突
32 ダンパ
40 収容室
41 開放口
42 前面部
43 後面部
44 蓋
45 横側面部
50 出入口開口
51 開閉扉
52 枠体部
53 ヒンジ
54 扉部
55 把手
60 空気調整部
61 空気調整口
62 スライド板
63 レール部
64 取手
70 連通口開口
71 大孔開口
72 小孔開口
73 開閉板
74 ガイドレール
75 把持部
80 オーブン
81 上壁
82 下壁
83 側壁
83a 前側壁
83b 後側壁
83c 横側壁
84 出入口
85 連通口
86 大孔
87 小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形燃料を燃焼する燃焼室を有した金属製の本体と、該本体の燃焼室内に設けられ上壁,下壁及び側壁で囲繞され調理物を収容する調理室を有し上記燃焼室の固形燃料の燃焼熱を熱源として上記調理室内の調理物を加熱調理するオーブンとを備えたオーブン付ストーブにおいて、
上記オーブンの上壁,下壁及び側壁を石で形成したことを特徴とするオーブン付ストーブ。
【請求項2】
上記本体を、内部を燃焼室とするボックス状に形成し、該本体の前面下側に上記燃焼室に固形燃料を入れるための開閉可能な開口及び上記燃焼室に空気を供給するための開度調整可能な空気供給口部を設け、上記本体の後面上側に煙突が接続され上記燃焼室からの排気ガスを排気する排気口を設け、
上記オーブンの側壁を、前側壁,後側壁及び前側壁と後側壁との間に連接される横側壁を備えて外形が多角形状になるように形成し、該オーブンを、その前側壁が上記本体の前面側に位置し後側壁が上記本体の排気口に間隔を隔てて対峙するように上記本体の燃焼室の上側に設け、上記前側壁に外部に露出可能に形成され上記調理室に対して調理物を出し入れするための開閉可能な出入口を設け、上記後側壁に上記燃焼室と開閉可能に連通する連通口を設けたことを特徴とする請求項1記載のオーブン付ストーブ。
【請求項3】
上記オーブンの側壁の外形を六角以上の多角形状に形成したことを特徴とする請求項2記載のオーブン付ストーブ。
【請求項4】
上記本体に、上側に開放する開放口を有し上記オーブンが上記開放口から入れられて嵌まり込んで収容されるボックス状の収容室を設け、該収容室の開放口を閉塞する金属製の蓋を設け、上記収容室の前面部に上記オーブンの出入口に連通する出入口開口を形成し、該前面部に上記出入口開口を開閉する開閉扉を設け、上記収容室の後面部に上記オーブンの連通口に連通する連通口開口を形成したことを特徴とする請求項2または3記載のオーブン付ストーブ。
【請求項5】
上記オーブンの上壁,下壁及び側壁を夫々石製のブロックで構成したことを特徴とする請求項4記載のオーブン付ストーブ。
【請求項6】
上記オーブンの側壁を、該側壁を形作る多角形の各辺に応じて分割して形成したことを特徴とする請求項4または5記載のオーブン付ストーブ。
【請求項7】
上記オーブンの側壁を上記上壁と下壁との間に挾装したことを特徴とする請求項4乃至6何れかに記載のオーブン付ストーブ。
【請求項8】
上記連通口及び連通口開口を上記調理室の左右方向に沿って複数設け、
上記本体に対して出入りするとともに上記収容室の後面部に沿って移動し上記連通口及び連通口開口を開閉する開閉板と、上記収容室の後面部に設けられ上記開閉板をスライド移動可能にガイドするガイドレールと、上記開閉板の一端に設けられ該開閉板を移動させるための把持部とを備えて構成したことを特徴とする請求項4乃至7何れかに記載のオーブン付ストーブ。
【請求項9】
上記開閉扉に上記調理室の空気調整を行なう空気調整部を設けたことを特徴とする請求項4乃至8何れかに記載のオーブン付ストーブ。
【請求項10】
上記本体に該本体の開口を開閉する開閉戸を設け、上記空気供給口部を、一端に上向きの空気が流入する流入口が形成されるとともに他端が上記開閉戸に接続されて上記燃焼室に連通するエルボ管と、該エルボ管の流入口縁部に回動可能に設けられ回動により該流入口の開度調整を行なう空気調整開閉板とを備えて構成したことを特徴とする請求項2乃至9何れかに記載のオーブン付ストーブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−169509(P2011−169509A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33294(P2010−33294)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(596093503)株式会社 いしや (2)