説明

オープンケーソン施工方法

【課題】沈設させたオープンケーソン本体内部における濁水の状態を客観的に判断してコンクリートを打設する工程を適切に行うことにより、施工時間の短縮化およびコストの低減化を図ることができるオープンケーソン施工方法を提供する。
【解決手段】沈設工程にて筒状のオープンケーソン本体10を地中に沈設させ、打設工程にてコンクリートを打設して底盤を構築するオープンケーソン施工方法において、沈設工程後にオープンケーソン本体10の内部にある濁水12を予め決められた所定時間放置し、その後に少なくとも底盤を構築する部位に対応する濁水12を採取してその比重を測定する測定工程と、測定工程により得られた測定値と、予め決められた閾値とを比較する比較工程とを含み、比較工程において測定値が閾値以下の場合に前記打設工程を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンケーソン施工方法に関し、より詳細には、沈設工程にて筒状のオープンケーソン本体を地中に沈設させ、打設工程にてコンクリートを打設して底盤を構築するオープンケーソン施工方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、沈設工程にて筒状のオープンケーソン本体を地中に沈設させ、打設工程にてコンクリートを打設して底盤を構築するオープンケーソン施工方法が知られている。
【0003】
このようなオープンケーソン施工方法において、底盤を構築するために打設するコンクリートには、充填性および水密性が要求されている。充填性は、水中不分離コンクリートを使用することにより確保することが可能である。水密性は、オープンケーソン本体の内部の水(濁水)の濁度が小さい方が好ましい。このように濁度が小さい方が好ましいのは、濁水中に泥が軟泥状になったもの、いわゆるスライムが比較的多いとコンクリートを打設時にスライムがコンクリートに巻き込まれ、かかるスライムが漏水の原因となってしまうからである。
【0004】
そこで、従来、濁水中のスライムを除去する方法として、例えばクラムシェルバケット等でスライムを採取して除去したり、あるいは濁水中に凝集剤等を投入し、水中の浮遊物を凝集させて沈殿物にし、かかる沈殿物を採取する結果スライムを除去するようなことが行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−98560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来においては、沈設させたオープンケーソン本体の内部における濁水の濁度は、目視等の主観的な要素に基づき判断していたのが実情である。そのため、濁水中のスライムの量が、コンクリート打設後の漏水に影響を与えない程度の場合もある。かかる場合にもスライム除去処理を実施すれば、オープンケーソン施工時間に要する時間が必要以上に長大になるとともに、施工に要するコストが増大する虞れがある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、沈設させたオープンケーソン本体内部における濁水の状態を客観的に判断してコンクリートを打設する工程を適切に行うことにより、施工時間の短縮化およびコストの低減化を図ることができるオープンケーソン施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るオープンケーソン施工方法は、沈設工程にて筒状のオープンケーソン本体を地中に沈設させ、打設工程にてコンクリートを打設して底盤を構築するオープンケーソン施工方法であって、前記沈設工程後に前記オープンケーソン本体の内部にある濁水を予め決められた所定時間放置し、その後に少なくとも前記底盤を構築する部位に対応する濁水を採取してその比重を測定する測定工程と、前記測定工程により得られた測定値と、予め決められた閾値とを比較する比較工程とを含み、前記比較工程において測定値が閾値以下の場合に前記打設工程を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るオープンケーソン施工方法は、上述した請求項1において、前記比較工程において測定値が前記閾値を超える場合には、前記濁水を浄化するための濁水処理工程を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るオープンケーソン施工方法は、上述した請求項1または請求項2において、前記測定工程は、前記オープンケーソン本体の濁水を複数層に区分けし、それぞれの層の濁水を採取してその比重を測定するものであり、前記比較工程は、前記測定工程により区分けした複数層のうち底盤を構築する部位に対応する層の測定値と前記閾値とを比較するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオープンケーソン施工方法によれば、筒状のオープンケーソン本体を地中に沈設させる沈設工程後にオープンケーソン本体の内部にある濁水を予め決められた所定時間放置し、その後に少なくとも底盤を構築する部位に対応する濁水を採取してその比重を測定する測定工程と、測定工程により得られた測定値と、予め決められた閾値とを比較する比較工程とを含み、比較工程において測定値が閾値以下の場合に、コンクリートを打設して底盤を構築する打設工程を行うので、濁水の濁度を客観的な要素で判断できる。しかも濁水の比重が閾値以下の場合には、コンクリートを打設して底盤を構築するので、濁水の濁度が良好な場合にも濁水処理工程を行うことがなく、これにより施工時間の短縮化およびコストの低減化を図ることができる。すなわち、沈設させたオープンケーソン本体内部における濁水の状態を客観的に判断してコンクリートを打設する工程を適切に行うことにより、施工時間の短縮化およびコストの低減化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るオープンケーソン施工方法の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
本実施の形態におけるオープンケーソン施工方法は、沈設工程と、測定工程と、比較工程と、打設工程とを含むものである。
【0014】
沈設工程は、図1に示すように、所定の地中1にオープンケーソン本体10を沈設するものである。オープンケーソン本体10は、筒状の形態を成し、下端部分11が刃先状の形状を呈している。このようなオープンケーソン本体10を沈設する場合には、図示しない補強材を所定の地中1に埋設しておき、その後オープンケーソン本体10の内部に対応する地盤域を掘削していくことにより行われる。この結果、図2に示すようにオープンケーソン本体10が所定の地中1に埋設される。この場合において、オープンケーソン本体10の内部には濁水12が貯留される。
【0015】
測定工程は、沈設工程後にオープンケーソン本体10の内部にある濁水12を予め決められた所定時間放置して行われるものである。ここに濁水12を放置しておく所定時間であるが、少なくとも6時間以上であって、特に12時間程度であることが好ましい。このように濁水12を所定時間放置しておくことにより、濁水12中の浮遊物の大部分を底部に堆積させることができる。
【0016】
上述したように濁水12を所定時間放置した後、図3に示すように、濁水12を所定間隔ごとに複数層a〜dに区分け設定する。ここで区分けする間隔は特に決められたものではないが、一例を挙げると例えば1mごとに均等に区分けする。
【0017】
そして、各層a〜dの中間深さ付近における濁水12を濁水採取機により採取し、採取したそれぞれの濁水12の比重を測定する。
【0018】
比較工程は、上記測定により測定した濁水12の比重の値、すなわち測定値と、予め決められた閾値とを比較する工程である。ここで、予め決められた閾値は、コンクリートを打設しても濁水12中のスライムにより漏水の虞れがないと判断される許容限界値であり、オープンケーソン施工方法においては、1.05〜1.10とされ、より詳細には1.07とされている。このような値は、実験値等から得られたものである。また、濁水12の砂分率は、1%以下であることが好ましく、粘性率は20〜30(Pa・s)であることが好ましい。
【0019】
かかる比較工程による比較の結果、打設工程にて底盤を構築する部位に対応する層dの濁水12の比重が上記閾値以下の場合、後述する打設工程を行う。
【0020】
打設工程は、図4に示すように、沈設させたオープンケーソン本体10の底部付近13にコンクリート14を打設して底盤を構築する工程である。かかる打設工程により底盤が構築されて、オープンケーソンが設置されたことになる。
【0021】
ところで、上記比較工程による比較の結果、対応する層dの濁水12の比重が上記閾値を超えている場合、上記打設工程の前に次のような濁水処理工程を行う。
【0022】
濁水処理工程は、濁水12を浄化するための工程である。濁水12を浄化するための方法としては、従来より知られている種々の方法を用いることができるが、本実施の形態では、測定工程により測定して得られた各層a〜dの測定値に基づいて濁水12中のスライム総量を算出し、算出結果に応じて適当な濁水処理を実施すればよい。ここで、濁水処理の方法としては、沈殿槽において凝集剤を使用することにより、うわ水と、水分を多く含むスライムとに分離した後、うわ水は濁水処理機で処理後に排水する一方、水分を多く含むスライムは、遠心分離機とフィルタプレスとによりさらに水と泥とに分離し、泥は圧縮減量化して産廃処分するものがある。また、遠心分離機とフィルタプレスとを用いずに、水分を多く含むスライムのまま産廃処分する方法もある。しかしこの方法は、泥を圧縮減量化して産廃処分する方法に比べ、機械導入経費を要しない代わりに産廃処分費の増大を招来する。これらいずれの方法を採用するかは、算出されたスライム総量から、各方法における機械導入経費と産廃処分費とのそれぞれの合計額を算出して決定されることになる。通常は、その合計額で安価な方法が採用されることになる。そして、底盤を構築するためのコンクリートを打設する打設工程の後、決定された濁水処理方法でオープンケーソン内の底盤より上方にある濁水を全て処理する。
【0023】
以上のように説明したオープンケーソン施工方法においては、筒状のオープンケーソン本体10を地中1に沈設させる沈設工程後に、オープンケーソン本体10の内部にある濁水12を予め決められた所定時間放置し、その後に濁水12を複数層a〜dに区分けし、それぞれの層a〜dの濁水12を採取してその比重を測定する測定工程と、区分けした複数層a〜dうち底盤を構築する部位に対応する層dの測定値と所定の閾値とを比較する比較工程とを含み、比較工程において測定値が閾値以下の場合に、コンクリート14を打設して底盤を構築するようにしたので、濁水12の濁度を客観的な要素で判断できる。しかも濁水12の比重が閾値以下の場合には、コンクリート14を打設して底盤を構築するので、濁水12の濁度が良好な場合にも濁水処理工程を行うことがなく、これにより施工時間の短縮化およびコストの低減化を図ることができる。
【0024】
また、上記オープンケーソン施工方法によれば、濁水12を所定間隔ごとに複数層a〜dに区分けし、各層a〜dの濁水12の比重を測定するので、オープンケーソン本体10の内部にある濁水12中のスライムの総量を算出することが可能になる。これにより、上記比較工程において対応する層dの測定値が閾値を超える場合には、算出されたスライム総量に応じた適切な濁水処理工程を実施することが可能になる。更に、スライムの総量を算出することによって経済的な濁水処理方法を選択し決定することができる。
【0025】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施の形態においては、濁水12を所定間隔ごとに複数層a〜dに区分けし、各層a〜dの濁水12の比重を測定したが、本発明では、オープンケーソン本体10の内部にある濁水12のうち、打設工程において底盤を構築する部位に対応する部分の比重を測定するだけでも構わない。これによっても、沈設させたオープンケーソン本体10内部における濁水12の状態を客観的に判断してコンクリート14を打設する工程を適切に行うことにより、施工時間の短縮化およびコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態におけるオープンケーソン施工方法の沈設工程を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるオープンケーソン施工方法の測定工程を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるオープンケーソン施工方法の測定工程を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるオープンケーソン施工方法の打設工程を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
10 オープンケーソン本体
12 濁水
14 コンクリート
a〜d 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈設工程にて筒状のオープンケーソン本体を地中に沈設させ、打設工程にてコンクリートを打設して底盤を構築するオープンケーソン施工方法において、
前記沈設工程後に前記オープンケーソン本体の内部にある濁水を予め決められた所定時間放置し、その後に少なくとも前記底盤を構築する部位に対応する濁水を採取してその比重を測定する測定工程と、
前記測定工程により得られた測定値と、予め決められた閾値とを比較する比較工程と
を含み、
前記比較工程において測定値が閾値以下の場合に前記打設工程を行うことを特徴とするオープンケーソン施工方法。
【請求項2】
前記比較工程において測定値が前記閾値を超える場合には、前記濁水を浄化するための濁水処理工程を行うことを特徴とする請求項1に記載のオープンケーソン施工方法。
【請求項3】
前記測定工程は、前記オープンケーソン本体の濁水を複数層に区分けし、それぞれの層の濁水を採取してその比重を測定するものであり、
前記比較工程は、前記測定工程により区分けした複数層のうち底盤を構築する部位に対応する層の測定値と前記閾値とを比較するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオープンケーソン施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−2087(P2009−2087A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165500(P2007−165500)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)