説明

オーボエとオーボエヘッド

オーボエは、一方を他方に嵌め込むことのできる2つの部分から成る細長い本体を含み、第1の部分(10)は片端(10a)にリードを収容するように適合されたピペレル(11)を担持し、第2の部分(20)はベル(30)に嵌め込まれるよう適合されている。本体の2つの部分(10、20)の横断方向のジョイント面はオクターブホール(13)とトーンホールの間にあり、トーンホールが前記第2の部分(20)とベル(30)の中のみに位置づけられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーボエのような管楽器に関する。
【0002】
本発明は同様に、本発明に係るオーボエの本体の一部分上に取付けられるように適合されたオーボエヘッドに関する。
【背景技術】
【0003】
オーボエは、一般に、一方が他方に嵌め込まれる3つの部分を含む管楽器である。
【0004】
かくして、オーボエは一方を他方に嵌め込むことのできる2つの部分から成る細長い本体を有する。リードを収容するべく適合されたピペレル(リード挿入部)を片端に担持する第1の部分は上管と呼ばれる。下管と呼ばれる本体の第2の部分は、オーボエの第3の部分を構成するベルに嵌め込まれるように適合されている。
【0005】
本体及びベルの異なる部分にはホール(穴)があけられ、その開閉により特に楽器が発する音の高低を変更することができる。
【0006】
従来の方法では、これらのホールはコルク又はフェルトで被覆されたタンポを用いて閉塞されており、これらのタンポはそれ自体キーとタンポの間に延びるレバーを介して一連のキーを用いて作動される。
【0007】
従来の方法では、オーボエはそのピペレルからベルに至るまで一連の開口部特にオクターブホール、トリルホール(カデンツホールとも呼ばれる)及び低B♭(シ♭)及びC♯(ド♯)の間又はオープンD♭(レ♭)の間の1オクターブ以上にわたって広がるトーンホールを有する。
【0008】
従来のオーボエにおいては、上管は、オクターブホール、トリルホール、及びC♯(ド♯)とG♯(ソ♯)の間に含まれるトーンホールを有している。
【0009】
下管は、G(ソ)とC(ド)の間に含まれるトーンホールを有し、一方ベルはB(シ)ナチュラルのトーンホールならびにベルの共鳴を修正できるホールを有している。低B♭(シ♭)は、全てのトーンホールを塞いだ状態でB(シ)ナチュラルを閉じることで得られる。
【0010】
このタイプの管楽器は、得られるその音質のため今なお伝統的に木製で、又は一般的には黒檀で作られる。
【0011】
しかしながらこのような楽器は非常に脆く、オーボエの本体、特にオーボエの上管が演奏者の息の中に存在する水分と接触した時点で及び熱衝撃の際に割れることがめずらしくない。
【0012】
さらに、上管及び下管の組立ては、各々の本体を超えて延びるキー及びレバーの存在によりつねに容易なわけではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上述の欠点を解決し、演奏者にとってさらに優れた組立て及び演奏面の人間工学を提供するオーボエを提供することにある。
【0014】
このため、本発明は、一方を他方に嵌め込むことのできる2つの部分から成る細長い本体を有し、第1の部分が片端にリードを収容するように適合されたピペレルを担持し、第2の部分はベルに嵌め込まれるよう適合されているオーボエを対象としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、本体の2つの部分の横断方向のジョイント面は、オクターブホールとトーンホールの間にあり、トーンホールは上記第2の部分とベルの中のみに位置づけられている。
【0016】
かくして、本発明に係るオーボエは、本体の新たな配分を呈し、もはや従来の通りほぼ同じ長さの上下2つの部分に分断されておらず、むしろオーボエヘッドが上に組立てられる主本体で構成されている。このオーボエヘッドはピペレルの近くにあるオクターブホールを有し、場合によって、オクターブホールとトーンホールとの間に配置されるトリルホールを有する。
【0017】
本体の2つの部分の横断方向のジョイント面のこの新たな位置づけは、特にオーボエの本体に沿った音の位置合せを変更できるようにし、特に従来のオーボエの2つの本体部分の間に必要な固定手段の存在を理由として従来遠隔していたいくつかの音を近づけることを可能にする。
【0018】
その上、該オーボエは、互換が容易なヘッドを有し、このため単にヘッドを交換するだけで各々のオーボエに固有の音の探究及び音域の適合が可能となる。
【0019】
なお、このオーボエヘッドが割れた場合、より容易にこのヘッドを交換しオーボエの主本体に適合可能な新しいヘッドで置換えることができる。
【0020】
本発明の好ましい1つの特徴によれば、横断方向のジョイント面は、オクターブホールとこれらのオクターブホールとトーンホールの間に配置されたトリルホールとの間にある。
【0021】
換言すると、該オーボエ本体の第1の部分は、オクターブホールしか有していない。
【0022】
本発明の好ましいもう1つの特徴によれば、G♯(ソ♯)キーは、その一部分がE♭(ミ♭)キーの下に延びている。
【0023】
従来はA(ラ)とG(ソ)のトーンホールの間にあったキーのこの配置は、オーボエの本体のこの部分にジョイント面が存在しないことによって可能となっている。
【0024】
こうして、キー間を移行する際に奏者にとって演奏上の優れた人間工学が可能となる。
【0025】
有利には、本発明に係るオーボエは、演奏者が音及び調性を修正できるような形で、上記第1の部分と互換性あるもう1つの第1の部分を付属部品として有する。
【0026】
本発明の第2の形態によれば、該発明は同様に、リードを収容するように適合されたピペレルを片端に担持する、オクターブホールを有するオーボエヘッドをもその対象としている。このオーボエヘッドは、本発明の第1の形態によるオーボエの本体の第2の部分に嵌め込まれるように適合されている。
【0027】
本発明のその他の特長及び利点は、さらに以下の記述において明らかになることだろう。
【0028】
限定的な意味のない一形態として示されている添付図面において:
−図1は、本発明の一実施形態に従った分解されたオーボエを例示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ここで図1を参照にしながら、本発明に係るオーボエについて述べる。
【0030】
このオーボエは次の3つの部分を有している:
− 片端にピペレル11を担持し、以下の記述においてオーボエのヘッド10と呼ばれる本体の部分10;
− オーボエのヘッド10上に第1の端部20aのレベルで組立てられるように適合された第2の部分20;及び
− オーボエの本体20の第2の端部20bのレベルで組立てられるようになっているベル30。
【0031】
ここで本発明に係るオーボエのこれらの部分10、20、30の各々についてここでさらに詳細に述べる。
【0032】
第1の部分10は、その片端10aに、リード(図示せず)を収容するように適合されたピペレル11を担持している。
【0033】
このオーボエヘッド10は、第2の端部10bにおいて、オーボエの本体20内でのこのヘッド10の嵌め込みを可能にするように適合された固定用手段12をその長さ内に有している。
【0034】
この実施形態においては、固定手段12は、ほぞで構成されており、これがかくしてヘッド10を超える突出部を形成する。
【0035】
このオーボエヘッドは、100〜120mmの間に含まれる長さを有することができる。好ましくは、このヘッドは、突出する固定手段12を含まずに102mmの長さを有する。
【0036】
従ってこのオーボエヘッド10は、ほぼ233mmに等しい従来のオーボエの上管の通常の長さよりもかなり短い長さを有している。
【0037】
かくして、このオーボエヘッド10は、この実施形態においては3つのオクターブホール13のみを有している。このヘッドは同様に、それぞれオクターブホール13の各々に結びつけられたキー14及びレバー類も支持している。
【0038】
オーボエの主本体20は同様に、その端部20a、20bの各々にそれぞれ配置された固定手段21a、21bを有する。
【0039】
この本体20の端部20aは、オーボエのヘッド10と嵌め込み協働するようになっていることから、固定手段21aは、ほぞ12と相補的な寸法のほぞホール21aで形成されている。
【0040】
反対に、本体20の第2の端部20bは、オーボエのヘッド10のほぞ12と類似したほぞから成る固定手段21bを有する。
【0041】
このオーボエ本体20の長さは、この本体20の片端20bで突出した固定用手段21bを含まずに、365〜375mmの間に含まれている。
【0042】
記述された実施形態においては、オーボエヘッドは102mmの長さを有することから、本体20は好ましくは370mmの長さを有する。
【0043】
かくして、オーボエのこの本体部分20の長さは、約238mmの従来のオーボエの下管の従来の長さよりもはるかに長いものである。
【0044】
オーボエのこの本体20は、上から下に向かって(すなわち図中では右から左に向かって)トリルホール22(カデンツホールとも呼ばれる)及びD♭(レ♭)(又はオープンでC♯(ド♯))のプレートに結びつけられたE♭(ミ♭)、D(レ)及びD♭(レ♭)の音のオクターブ演奏に対応するハーフホール23を有する。
【0045】
オーボエの本体20には、C(ド)ナチュラル、B(シ)、B♭(シ♭)、A(ラ)、G♯(ソ♯)、G(ソ)、F♯(ファ♯)、F(ファ)、E(ミ)、E♭(ミ♭)、D(レ)、D♭(レ♭)及びC(ド)という音に対応する一連のホールがあけられている。この点において、それぞれフォークF(ファ)及びキーF(ファ)と呼ばれる2つのF(ファ)音が存在するということを指摘しておきたい。
【0046】
オーボエのこの本体20は同様に従来通り、その開閉を可能にするトーンホール各々に結びつけられたキー及びレバー一式を有している。
【0047】
特に、これは、G♯(ソ♯)キーと呼ばれるキー24及びガチョウのアシという名で知られる部分を形成するそれぞれE♭(ミ♭)キー、B(シ)ナチュラルキー及びB♭(シ♭)キーと呼ばれるキー25、26、27が備わっている。
【0048】
オーボエ本体のこの部分20は、ベル30上に第2の端部20bのレベルで組立てられるようになっている。このベルは、片端30aに、ここでは本体20のほぞ21bと協働するように適合されたほぞホール31aから成る相補的固定手段31aを有する。
【0049】
このベルのもう1つの端部30bは、自由空間に通じ、オーボエの共鳴を可能にするための開口部を形成し、低B♭(シ♭)音はこの開口部から出る。
【0050】
このベルの長さは128mmにほぼ等しく、伝統的なオーボエのベルの長さに対応する。
【0051】
楽器全体は、ひとたび組立てられた時点で、ほぼ600mmに等しいベルの端部30bとピペレルとの間の長さを有する。
【0052】
従来、このベル30はB(シ)ナチュラルのトーンホールならびにこのベルの共鳴を修正できるようにするオリフィス32を有する。
【0053】
かくして、本発明に係るオーボエは、この実施形態においてはオーボエの本体20の端部20aの端部に配置されたトリルホール22とオクターブホール13との間である、トーンホールとオクターブホールとの間にある本体20とヘッドとの間にジョイント面を呈している。
【0054】
この新しい配置は、ほぼG(ソ)とG♯(ソ♯)のトーンホールの間でオーボエ本体の中に従来具備されていたジョイント面を削除できるようにしている。
【0055】
ジョイント面のこの新しい配置は、伝統的なオーボエにおける上管と下管のジョイントに起因する異なる本体間の内径の差が存在しなくなっていることから、特に本体の長手方向の管内部形状レベルでより均質な本体20を得ることを可能にする。かくして、オーボエの主本体内の内部の心ずれ又はずれの危険性はことごとく無くなる。
【0056】
この本体20はモノブロック(単一パーツ)であるため、楽器上のトーンホールの位置合せつまり配置を改善し特により良く配分することが可能である。
【0057】
結びつけられたレバー及びキーのシステムは、かくしてさらに論理的に実現可能である。
【0058】
特に、もはや本体20のこの部分のレベルに、ほぞが存在しないことから、A(ラ)、G♯(ソ♯)及びG(ソ)のトーンホールを接近させることができる。
【0059】
実際には、オーボエのピペレル11の方向にG(ソ)のホールを約3mm上げ、逆にG♯(ソ♯)、A(ラ)、B♭(シ♭)、B(シ)及びC(ド)をベル30の方向に約2mm下げることが可能である。かくしてG(ソ)とG♯(ソ♯)との間の距離を伝統的なオーボエと比べ約5mmだけ短かくすることができる。
【0060】
同様に、ハーフホール23が低音のE♭(ミ♭)、D(レ)及びD♭(レ♭)のためのオクターブキーの代りも務めることから中間D♭(レ♭)のプレートを約5mmだけ下げることも可能である。
【0061】
根音との関係におけるこのオクターブキー23の接近は、特に該楽器の最も微妙な音色とみなされているD♭(レ♭)の音色について、これらの根音のオクターブ移行を著しく改善する。
【0062】
なお、ジョイント面及びガチョウアシのキー24〜27をG♯(ソ♯)の音のレベルから排除したことにより、このガチョウアシのレベルでのキーの配置を修正して、より人間工学的な機構を得ることが可能である。特に、図に充分例示されている通り、G♯(ソ♯)キー24は、その一部分がE♭(ミ♭)キー25の下に延びている。
【0063】
ジョイント面がガチョウアシのレベルで実施されている伝統的なオーボエにおいては不可能であったこのタイプの組立てにより、奏者による演奏を容易にする配置を得ることが可能である。
【0064】
その上、オーボエのヘッド10は、楽器の音及び演奏のためだけでなく木の割れの場合のその交換のためにも、交換が容易にできるという利点を呈している。
【0065】
実際、このヘッド部分10は楽器の音、音程の正確さ及びオクターブ演奏にとってきわめて重要であり、オーボエが単数又は複数の互換性あるヘッドを付属部品として含んでいることが有利であり得る。
【0066】
例えば、このオーボエヘッド10は、異なる長さ方向の管内部形状の直径ならびに場合によっては、異なる長さを有することができると思われる。
【0067】
さらに、例えば樹脂、プラスチックさらにはAltuglass(登録商標)タイプのポリメタクリル酸メチル製といった、熱衝撃及び水分に対して感応しない材料でできたヘッドを利用することが可能である。
【0068】
このタイプの材料は、演奏者の息の中の水分の存在を理由としてだけではなく、低温の場所(教会、クーラーのきいた部屋など)の場合の割れに対するオーボエヘッドの、より優れた強度を提供する。
【0069】
各奏者はかくして、適切なオーボエヘッド10の選択により、楽器を自らの好みに合わせることができる。
【0070】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく上述の実施形態に対し数多くの修正を加えることができる。
【0071】
かくして、オーボエのヘッド10及び主本体20のジョイント面がオクターブホール13とトリルホール22の間にある実施形態について記述した。
【0072】
しかしながら、本発明の範囲内において、ジョイント面がトリルホール22とトーンホールの間、例えばトリルホール22と中間オープンD♭(レ♭)のトーンホールの間にあることを考慮することが可能である。
【0073】
また、図1を参照にしてC(ド)管のオーボエについて記述した。
【0074】
本発明は、E♭(ミ♭)管ミュゼットピッコロ、A(ラ)管オーボエダモーレ、C(ド)管バリトンオーボエ又はF(ファ)管イングリッシュホルンといったようなその他のタイプの管楽器のために応用することも可能であると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に従った分解されたオーボエを例示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方を他方に嵌め込むことのできる2つの部分から成る細長い本体を有し、第1の部分(10)は片端(10a)にリードを収容するように適合されたピペレル(11)を担持し、第2の部分(20)はベル(30)に嵌め込まれるよう適合されているオーボエにおいて、前記本体の2つの部分の横断方向のジョイント面がオクターブホール(13)とトーンホールの間にあり、前記トーンホールが前記第2の部分(20)と前記ベル(30)の中のみに位置づけられている、ことを特徴とするオーボエ。
【請求項2】
前記横断方向のジョイント面は、前記オクターブホール(13)と、該オクターブホール(13)とトーンホールとの間に配置されたトリルホール(22)との間にある、ことを特徴とする請求項1に記載のオーボエ。
【請求項3】
前記本体の第1の部分(10)は、前記オクターブホール(13)しか有していない、ことを特徴とする請求項2に記載のオーボエ。
【請求項4】
G♯(ソ♯)キー(24)は、その一部分がE♭(ミ♭)キー(25)の下に延びている、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つの請求項に記載のオーボエ。
【請求項5】
前記オクターブホール(13)を担持する前記本体の第1の部分(10)は、100〜120mmの間に含まれる長さを有する、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つの請求項に記載のオーボエ。
【請求項6】
前記本体の第1の部分(10)は、102mmにほぼ等しい長さを有する、ことを特徴とする請求項5に記載のオーボエ。
【請求項7】
前記トーンホールを担持する前記本体の第2の部分(20)は、370mmにほぼ等しい長さを有する、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つの請求項に記載のオーボエ。
【請求項8】
付属部品として前記第1の部分(10)と互換性あるもう1つの第1の部分を含む、ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一つの請求項に記載のオーボエ。
【請求項9】
リードを収容するように適合されたピペレル(11)を片端(10a)に担持する、オクターブホール(13)を有するオーボエヘッドにおいて、請求項1から請求項8のいずれか一つの請求項に記載のオーボエの本体の第2の部分(20)に嵌め込まれるように適合されている、ことを特徴とするオーボエヘッド。
【請求項10】
100〜120mmの間に含まれる長さを有する、ことを特徴とする請求項9に記載のオーボエヘッド。
【請求項11】
さらにトリルホール(22)を有する、ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載のオーボエヘッド。

【図1】
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【公表番号】特表2007−530994(P2007−530994A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504440(P2007−504440)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000619
【国際公開番号】WO2005/104087
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506264133)