カウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法、カウンセリング制御プログラム
【課題】SAT法を使ったカウンセリングにおいて、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出し、被験者に適切な心理治療を受ける機会を与える。
【解決手段】第1のカウンセリングの質問に対する回答を収集して分析する第1カウンセリング実施部202、第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施する心理テスト実施部201、心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態とSAT法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて閾値を決定する閾値決定部203、閾値を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択部206と、選択された被験者に対し第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施部204及びメッセージ作成部205によってカウンセリング装置を構成する。
【解決手段】第1のカウンセリングの質問に対する回答を収集して分析する第1カウンセリング実施部202、第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施する心理テスト実施部201、心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態とSAT法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて閾値を決定する閾値決定部203、閾値を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択部206と、選択された被験者に対し第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施部204及びメッセージ作成部205によってカウンセリング装置を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法、カウンセリング制御プログラムにかかり、特に構造化連想法を使ったカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法、カウンセリング制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンピュータネットワークを介して被験者から情報を収集し、収集された情報をコンピュータによって解析するカウンセリングのシステムが実用化されている。このようなカウンセリングシステムの従来例として、例えば、特許文献1、特許文献2が挙げられる。
特許文献1に記載された発明は、被験者に対話形式で質問をし、回答をWebサーバに送信する。質問に対する回答は、多段階に設定されている選択肢を選択することによって行われる。Webサーバに送信された回答は、アセスメント部によって分析される。分析の結果に基づいて被験者が感じているストレッサーを評価し、カウンセリングの必要性を示唆する、あるいは専門機関の情報を提供する。
【0003】
このような特許文献1によれば、簡易なカウンセリングの結果、より高度なカウンセリングが必要な被験者を抽出し、高度なカウンセリングを受けるように指導することができる。また、専門機関の情報を提供し、専門家による直接対面カウンセリングを被験者に勧めることが可能になる。
また、特許文献2は、ストレス診断処理装置が被験者のパーソナルコンピュータ等に自己診断ファイルを提供する。自己診断ファイルによって自己診断が可能な画面がパーソナルコンピュータに表示される。被験者は、画面に表示された「NO」や「YES」を選択することによってストレスに関する状況を入力する。入力されたデータはストレス診断処理装置に送信され、リラクゼーション処理装置が、データに基づいて被験者にストレスを解消するためのサービスを判断し、提供する。
【0004】
このような特許文献2によれば、被験者個々の自己診断の結果に応じてサービスを提供することができるので、画一的なサービスを提供するよりも高いストレス緩和の効果を得ることができると考えられる。
【特許文献1】特開2005−334205号公報
【特許文献2】特開2003−108674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特許文献1、特許文献2は、いずれも、質問に対して予め設定されている選択肢のうち自身の感情に最も近いと思われるものを選択することによって回答するものである。このような形式で行われるカウンセリングに対し、近年の社会の価値観が多様化するに伴い、各人の主観的な感情を抽出することが可能な調査が各分野で要求されている。
【0006】
例えば、ストレスによるうつ病の罹患者や自殺者の増加を抑止するには、各個人が自己のストレスの有無や程度を自覚して改善に努めると共に、医療機関等が個人のストレスについて把握し、適正な治療や支援を提供することが必要になる。
また、犯罪や災害にあった被験者に対しては、各個人のストレス障害の程度やその経過を把握し、障害の程度に応じて適正な時期に適正なケアをすることが地域の復興や個人の復帰に有効である。さらに、地域開発にあたっては、開発される地域に対する住民の思い入れや感情を把握し、尊重することによって開発を円滑に進めることが可能になる。
【0007】
現在、各個人が感じる主観的なストレスを抽出する技術として、SAT法(構造化連想法)によるカウンセリングがある。SAT法とは、つくば大学の宗像教授らによって提唱されたカウンセリング技法であって、「構造化された(Structured)」問いかけによって問題解決脳である右脳を活性化し、意識下あるいは変性意識(催眠状態)での「ひらめき、連想(Association)」を用いて問題の解決法や新しい生き方の気付きを促す「技法(Technique)」である。
【0008】
SAT法の自己イメージ法では、被験者が距離をおいて自己を観察し、自分自身が何をしたらいいかを自己決定させる。自己決定は、直感的なひらめきによって決定されることが望ましい。このようなSAT法は、「SAT療法(宗像恒次著:金子書房)」等の本によって周知のカウンセリングの技法である。
本発明の発明者は、コンピュータシステムを使ったSAT法によるカウンセリングシステムを開発している。そして、このようなシステムにおいても、カウンセリングの結果に基づいて、カウンセラーとの対面カウンセリングを含む別のカウンセリング(再カウンセリング)を実施することを考えている。
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1では、被験者のストレスの程度を示す得点を偏差値に変換することによって再カウンセリングを受ける必要がある被験者を抽出している。このような特許文献1の発明は、集団に属する人員全体のストレスの平均を基準にカウンセリングの必要性を決定するものといえる。
一方、SAT法を使ったカウンセリングは、前記したように、各個人が主観的に感じるストレスの程度に注目してなされるものであって、他者が感じるストレスを一切考慮するものではない。このようなSAT法を使ったカウンセリングは、特許文献1のカウンセリングとは思想を異にするものであるから、特許文献1の手法を流用して再カウンセリングが必要な被験者の抽出をすることはできない。
【0010】
また、特許文献2の発明のリラクゼーション機能では、被験者が選択したキャラクタを使って被験者にメッセージを送ることができる。このような機能は、各個人に適したストレス緩和を実現することができるものといえる。ただし、特許文献2のリラクゼーションは、被験者のストレス緩和を目的としており、再カウンセリングが必要な被験者を抽出することはできない。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、SAT法を使ったカウンセリングにおいて、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法及びカウンセリング制御プログラムを提供し、抽出された被験者に対してさらに別のカウンセリングを実施する、あるいはカウンセリングを受けるよう勧めることによって被験者に適切な心理治療を受ける機会を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1のカウンセリングシステムは、構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリングシステムであって、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段を備えたカウンセリング装置と、前記カウンセリング装置によって提供された第1のカウンセリングのための質問を被験者に提示し、前記質問に対する被験者の回答を受付ける回答受付手段と、を含み、前記カウンセリング装置は、前記第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを前記回答受付手段に提供する心理テスト提供手段と、前記心理テスト提供手段によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定手段と、前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択手段と、前記被験者選択手段によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このような発明によれば、構造化連想法による第1カウンセリングに対する回答結果を収集することができる。また、心理テストと構造化連想法によるカウンセリングとの結果に基づいて被験者の一部を選択し、選択された被験者に第1カウンセリングとは異なる第2カウンセリングを実施することができる。このため、第2カウンセリングを実施すべき被験者を選択するための閾値を被験者に対して行う心理テストに基づいて決定することができるので、被験者に即した閾値を設定することができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態をも考慮しているので、構造化連想法を用いた第1カウンセリングをも考慮して閾値を決定することができる。
【0014】
さらに、このようにして決定された閾値を使って第2カウンセリングの対象となる被験者を選択することができるため、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリングシステムを提供することができる。そして、抽出された被験者に対してさらに別のカウンセリングを実施する、あるいはカウンセリングを受けるよう勧めることによって被験者に適切な心理治療を受ける機会を与えることができる。
【0015】
本発明の請求項2に記載のカウンセリング装置は、構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング装置であって、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段と、前記第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供手段と、前記心理テスト提供手段によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定手段と、前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択手段と、前記被験者選択手段によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
このような発明によれば、心理テストと構造化連想法によるカウンセリングとの結果に基づいて被験者の一部を選択し、選択された被験者に第1カウンセリングとは異なる第2カウンセリングを実施することができる。このため、第2カウンセリングを実施すべき被験者を選択するための閾値を被験者に対して行う心理テストに基づいて決定することができるので、被験者に即した閾値を設定することができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態をも考慮しているので、構造化連想法を用いた第1カウンセリングをも考慮して閾値を決定することができる。
さらに、このようにして決定された閾値を使って第2カウンセリングの対象となる被験者を選択することができるため、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリング装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載のカウンセリング装置は、請求項2に記載の発明において、前記閾値決定手段が、前記回答分析手段によって収集、分析された被験者の回答のデータ、構造化連想法によって得られた被験者の心理状態の予め取得されているデータ、の少なくとも一方を使って前記閾値を決定することを特徴とする。
このような発明によれば、回答分析手段によって収集、分析された被験者の回答に基づいて閾値を決定することにより、被験者により即した閾値を得ることができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態の予め取得されているデータを使って閾値を決定することにより、第1カウンセリングの実施開始時から閾値を設定して被験者を判別することができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載のカウンセリング装置は、請求項2または3に記載の発明において、前記閾値決定手段が、前記心理テストの結果によって第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と、改善が期待できない被験者とを判別するための閾値を決定し、前記第1のカウンセリングによって得られる被験者の自己肯定感、自立心及び依存心の程度によって前記第1のカウンセリングによって心理状態が改善された被験者と改善されなかった被験者とを判別するための閾値を決定することを特徴とする。
【0019】
このような発明によれば、第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者であって、かつ実際に心理状態が改善された者、改善されなかった者、改善が期待されていなかったにも関わらず実際に心理状態が改善された者、改善されなかった者を判別することができる。また、被験者の心理状態の状態を判定することができる。このため、被験者各々に応じて適正な第2カウンセリングを選択することができる。また、第1カウンセリングの中止、続行の判断等もすることができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載のカウンセリング装置は、請求項4に記載のカウンセリング装置において、前記閾値決定手段が、第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と改善が期待できない被験者とを判別するための前記心理テストの得点、前記第1のカウンセリングにおける被験者の自己否定感を示すデータの入力回数、前記第1のカウンセリングにおける被験者の他者に対する依存要求を表すデータの入力回数の少なくとも1つを決定することを特徴とする。
このような発明によれば、被験者の自己肯定感、自立心及び依存心の程度を簡易な手法で判断することができる。このため、装置構成を小型、簡易化するのに有利であり、処理時間が短いカウンセリング装置を提供することができる。
【0021】
また、本発明の請求項6のカウンセリング装置は、請求項1から請求項5に記載の発明において、前記第2カウンセリング実施手段が、前記心理テストによるカウンセリング、被験者に自身の状態をイメージさせるイメージ療法によるカウンセリング、カウンセリング指導を受けるための情報の提供をすることを特徴とする。
このような発明によれば、第1カウンセリングでは得られない情報や効果を得ることができるカウンセリングを第2カウンセリングとして実施することができる。
【0022】
請求項7に記載のカウンセリング方法は、構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング方法であって、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供工程と、前記心理テスト提供工程によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定工程と、前記閾値決定工程において決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択工程と、前記被験者選択工程において選択された被験者に対し、記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
このような発明によれば、第2カウンセリングを実施すべき被験者を選択するための閾値を被験者に対して行う心理テストに基づいて決定することができるので、被験者に即した閾値を設定することができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態をも考慮しているので、構造化連想法を用いた第1カウンセリングをも考慮して閾値を決定することができる。
さらに、このようにして決定された閾値を使って第2カウンセリングの対象となる被験者を選択することができるため、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリング方法を提供することができる。
【0024】
請求項8に記載のカウンセリング制御プログラムは、構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング制御プログラムであって、コンピュータに、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供機能と、前記心理テスト提供機能によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定機能と、前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択機能と、前記被験者選択機能によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施機能と、を実現させることを特徴とする。
【0025】
このような発明によれば、第2カウンセリングを実施すべき被験者を選択するための閾値を被験者に対して行う心理テストに基づいて決定することができるので、被験者に即した閾値を設定することができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態をも考慮しているので、構造化連想法を用いた第1カウンセリングをも考慮して閾値を決定することができる。
さらに、このようにして決定された閾値を使って第2カウンセリングの対象となる被験者を選択することができるため、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリング制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図を参照して本発明にかかるカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法の一実施形態を説明する。
(1)カウンセリングシステムの全体構成
図1は、本実施形態のカウンセリングシステムの概念を説明するための図である。図示したシステムは、構造化連想法(以下SAT法と記す)によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリングシステムである。
図示したカウンセリングシステムは、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段を備えたWEBサーバ1と、カウンセリング装置によって提供された第1のカウンセリングのための質問を被験者に提示し、この質問に対する被験者の回答を受付けるPC(Personal Computer)4とを備えている。
【0027】
なお、本実施形態の第1のカウンセリングのための質問は、SAT法による質問であり、被験者はSAT法の入力フォーム3に自由に自己の考えや感情を言語によって記述する。被験者の記述した言語の内容が言語情報としてWEBサーバ1に送られる。WEBサーバ1は、送られてきた言語情報を受付けてデータベースサーバ2に蓄積する。
第1のカウンセリングを以降第1カウンセリングと記す。第1カウンセリングは、被験者が主観的に感じる自己肯定感、自己否定感、自立心や依存心の程度を抽出するカウンセリングである。第1カウンセリングについては後に詳述する。
【0028】
図1中に示したSAT法による被験者の入力フォーム3によれば、被験者は、テーマ情報に対して想起された事象(エピソード)、エピソードを想起した原因となる背後感情、背後感情から被験者が自己または他者に対して持つ希望や期待が入力される。また、希望や期待を実現する自己に対するイメージ(自己イメージ)、イメージを実現するための目標や行動、決断を入力することができる。
解析プログラム101は、入力フォーム3にしたがって入力された言語情報を解析する。解析の結果は、WEBサーバ1の管理者によって管理され、医療や保健に関する調査、あるいは政府等による調査に利用される。さらに、解析結果を被験者に送信し、被験者の自己カウンセリングに利用することもできる。
上記した構成では、WEBサーバ1がカウンセリング装置、PC4が回答受付手段として機能する。
【0029】
(2)WEBサーバ及びデータベースサーバ
図2は、WEBサーバ1及びデータベースサーバ2を説明するための図である。WEBサーバ1の解析プログラム101は、第1カウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータをPC4に提供してディスプレイ4aに表示させる心理テスト実施部201、第1カウンセリング用のデータをPC4に提供してSAT法による第1カウンセリングを実施する第1カウンセリング実施部202、心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態とSAT法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値設定部203を備えている。被験者選択部206は、第1カウンセリングの実施と並行して被験者の少なくとも一部を、選択基準を使って選択し、第2カウンセリング実施部204及びメッセージ作成部205は、選択された被験者に対して第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する。
【0030】
以上の構成のうち、心理テスト実施部201が心理テスト提供手段、閾値設定部203が閾値決定手段、被験者選択部206が被験者選択手段、第2カウンセリング実施部204及びメッセージ作成部205が第2カウンセリング実施手段として機能する。
また、WEBサーバ1は、第1カウンセリング、第2カウンセリング用の質問等を保存しておくDB22、DB23を備えている。また、本実施形態では、カウンセリングの結果はデータベースサーバ2のDB21に保存しておくものとする。
さらに、WEBサーバ1には、カウンセリングの結果を表示するためのディスプレイ28、PC4やデータベースサーバ2と通信するためにネットワークを制御する通信制御部29とを備えている。
【0031】
・心理テスト
上記した心理テストとは、例えば、自己価値観尺度、自己抑制型行動特性尺度、情緒的支援ネットワーク認知尺度、問題解決行動特性尺度、対人依存型行動尺度、不安傾向尺度、抑うつ尺度、カウンセリング必要度尺度、感情認知困難度尺度、自己憐憫度尺度、自己乖離度尺度、自己否定感尺度、PTSS度(トラウマ度)尺度といったテストをいう。
このようなテストは、いずれも「SAT療法(宗像恒次著:金子書房)」等の本に説明されているテストであって、各テストに専用の心理チェックリストを使って実施される。
【0032】
図3(a)、(b)、(c)に心理チェックリストを例示する。(a)は自己価値観尺度のテスト用の心理チェックリストである。また、(b)は自己抑制型行動特性尺度の心理チェックリストであり、(c)は情緒的支援ネットワーク認知尺度の心理チェックリストである。被験者は、各心理チェックリストに記載されている選択肢から自身に最も当てはまると思われるものを選択する。
【0033】
心理テスト実施部201は、選択された選択肢の点数を合計して各心理テストの得点を算出する。算出された得点は、心理テストの種別ごとに、被験者の氏名等と対応付けて例えばDB21に保存される。
なお、心理テストは、上記した種別の全てを実施するものに限定されるものではなく、選択されたものだけを実施するようにしてもよい。また、心理テストは、上記したものに限定されるものでなく、第1カウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と、改善が期待できない被験者とを判別することが期待できるテストであればどのようなテストであってもよい。
【0034】
・第1カウンセリング
図4ないし図8は、第1カウンセリング実施部202によってなされるSAT法によるカウンセリングを説明するための図である。第1カウンセリング実施部202は、具体的な事柄に関する質問(具体的質問)、この質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問(イメージ的質問)、具体的な事柄に関する質問の回答に関する主観的な感情についての質問(主観的質問)を混在させてカウンセリングを実施する。各質問を図4〜図8に例示するものとする。第1カウンセリング実施部202は、図4〜図8に示した質問をPC4のディスプレイ4aに表示させるためのデータ(カウンセリングデータ)を、ネットワークを介してPC4に送信する。
【0035】
具体的質問は、被験者が論理的に思考して回答することを期待してなされる質問である。また、イメージ的質問及び主観的質問は被験者が直感的に回答することを期待してなされる質問である。このような質問を混在させてカウンセリングすることにより、本実施形態は、被験者がカウンセリングに回答するうちに右脳と左脳とを概ね交互に機能させ、右脳の思考によって得られる直感的な回答を適正に得ることができる。
【0036】
第1カウンセリング実施部202は、図示したように、Q1からQ7までの7つの質問によって構成されるカウンセリングデータを作成する。本実施形態のカウンセリングは、被験者に対し、自己イメージ法により、被験者が居住する地域や生活に対してすべきことを気付かせるために行われるカウンセリングに本実施形態のカウンセリング装置によって実行されるカウンセリングを含ませたものである。
【0037】
図4(a)、(b)、(c)は、本実施形態のQ1、Q2、Q3を示すための図である。本実施形態のQ1は、「今、あなたのお住まいの地域やあなた自身の生活にどんなことを感じていますか」の質問を被験者にするものである(a)。本実施形態では、Q1において居住地域や生活といった広い範囲から被験者自身のエピソードを選択させ、被験者はQ1に答えることによって現在関心があるエピソードを選択することができる。
【0038】
なお、「このエピソードの場所を記録」のボタンを設けている。被験者がこのボタンをクリックすると、図示しない地図がディスプレイ4aに表示される。被験者が書き込まれたエピソードと関係すると主観的に思う場所を地図上で選択する。
このような本実施形態のカウンセリング装置は、いわゆる名所、旧跡ではないが、被験者が主観的に意味を感じる場所を記録してデータ化することができる。このようなデータは、地域の開発や都市計画等に使用できるものと考えられる。
【0039】
また、Q1中の「そのことは、以下の例と照らし合わせてどちらに近いと思いますか」の質問は、被験者にとってのエピソードの意味付けや重要性の参考にするための回答を得る目的で設定されたものであって、本実施形態の構成に直接関係するものではない。
Q2は、「Q1のように考えたとき、頭の中にはどんな色が浮かびましたか」という質問である。この質問には、被験者は直感的になんらかの色を回答し、回答の際に右脳が機能することが期待される。Q2は、右脳を機能させることを目的とするものであって、回答の内容は本実施形態のカウンセリング装置による解析の結果になんら影響するものではない。
Q3は、「Q2で頭の中に浮かんだ色や気持ちを感情に直すとどれになりますか」の質問である。Q3に対し、被験者は、直感的に浮かんだ色に結びつく感情を選択肢の中から選ぶ。この際、被験者は、現在関心を持っているエピソードと結びつく感情を選択することができる。
【0040】
図5は、Q4を説明するための図である。Q4は、被験者の自己に対する主観的な感情に関する質問と、他者に対する主観的な感情についての質問とである。自己に対する主観的な感情に関する質問には、主観的な感情に対する自己の寄与に関する質問である自己要求質問を含む。また他者に対する主観的な感情についての質問が、主観的な感情に対する他者の寄与に関する質問である他者要求質問を含む。なお、自己要求とは、Q1で答えたエピソードに関する感情を、被験者自身が改善しようとする意識をいう。また、他者要求とは、このエピソードに関する感情を、被験者が他者の支援によって改善しようとする意識をいう。
【0041】
図5(a)は、Q3において被験者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において被験者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において被験者が怒り・不満を選択した場合の質問である。Q4では、いずれの質問においても、「どんな自分かを下に書き込んでくださいの」質問が自己要求質問であり、「どんな他人かを下に書き込んでください」の質問が他者要求質問である。
また、Q4では、自己として自分個人、自分を含む家族といった例を表示し、他者として家族、隣人といった例を表示しておく。このようにすれば、被験者は自己要求と他者要求とを明確に区別して回答することを支援することができる。
【0042】
図6は、Q5を説明するための図である。Q5は、Q4で直感的に自己要求、他者要求を判断した被験者の思考を、左脳を使用する思考に戻すことを目的とする質問である。Q5(a)は、Q3において被験者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において被験者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において被験者が怒り・不満を選択した場合の質問である。
Q5は、被験者に自己の感情を論理的に整理させ、次の質問Q6に対して直感的に回答させることができる。なお、Q5の「もし、あなたが回答している途中で「このエピソードは”喜び、嬉しさ”ではないな」と感じたら、当てはまる感情ボタンをクリックしてください」のメッセージは、被験者が回答を誤った場合に戻るために設定されたものである。
【0043】
図7及び図8はQ6を説明するための図であって、図7は、Q6のうちのQ4における自己要求に関連する質問を示している。また、図8は、Q4における他者要求に関連する質問を示している。図7、図8のいずれにおいても、(a)は、Q3において被験者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において被験者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において被験者が怒り・不満を選択した場合の質問である。
【0044】
図7に示した質問によれば、直感的に被験者は自己要求を感じている自己を外部から見ている状態をイメージすることができる。また、図8に示した質問によれば、直感的に被験者は他者要求を感じている自己を外部から見ている状態をイメージすることができる。
Q6の「そういうあなたを自己観察すると、どんな自分に見えてきますか」の質問は、被験者がこのような自己に対する評価の高低に関する質問である自己評価質問である。本実施形態では、自己評価質問に対して自己イメージを「+」、「−」によって回答することができるよう設定されている。
【0045】
Q4で自己要求、他者要求の両方を書き込んだ場合であっても、Q6では、両者を総合して自己評価をする。自己要求、他者要求に関する感情が相反する場合、被験者は葛藤しているので、葛藤している自己の自己イメージを「+」または「−」で評価する。なお、「+」、「−」を設定するための具体的な操作については後述するものとする。
図9は、Q7を説明するための図である。Q7は、Q1で質問した内容について自己イメージ法を使い、自己のすべきことを直感的に答えさせる質問である。Q7は、本実施形態のカウンセリングが、被験者にすべきことを気付かせるために行われるカウンセリングとして機能するために最も重要な質問である。
【0046】
図10は、カウンセリングに対する回答例を示した図である。図10に示した回答のデータは、PC4からWEBサーバ1を介してデータベースサーバ2のDB21に保存される。図10(a)は、前記したカウンセリングに対する被験者Bさんの4回目の入力結果を示している。(b)は、被験者Bさんの12回目の入力結果を示し、(c)は25回目の入力結果を示している。
本実施形態では、図示したように、Q1〜Q7の全てが、被験者が任意に文字を入力することによって回答される質問である。なお、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、具体的質問の少なくとも一部、イメージ的質問の少なくとも一部、主観的質問の少なくとも一部が、被験者が任意に文字を入力することによって回答される質問であればよい。
【0047】
また、本実施形態では、Q6の解答欄にボタン71を設けている。ボタン71は、例えば、クリックされるたびに「+」、「−」が切替わるよう構成される。被験者は、Q6で答えた自己のイメージが肯定的なイメージ(プラスイメージ)であった場合にはボタンを「+」にし、否定的なイメージ(マイナスイメージ)であった場合にはボタンを「−」に切替える。なお、ボタン71の「+」、「−」の区別は文書として書き込まれた内容とは無関係に被験者が決定するものであってよい。
【0048】
第1カウンセリング実施部202は、Q4の回答において自己要求質問に対する回答が書き込まれている場合には自己要求のカウントを+1とする。また、他者要求質問に対する回答が書き込まれている場合には他者要求のカウントを+1とし、自己要求質問及び他者要求質問に対する回答が書き込まれている場合には自己要求、他者要求ともカウントを0とする。
【0049】
また、第1カウンセリング実施部202は、Q6において、ボタン71が「+」である場合、自己評価のカウントを+1、「−」である場合には自己評価のカウントを−1とする。さらに、一方を自己要求の度合い、他方を他者要求の度合いを示す軸と、自己評価を示す軸とを定める。そして、2つの軸上にカウント値を記録することによってカウント値によって決定される座標を順次記録する。
このような処理により、第1カウンセリング実施部202は、自己評価質問に対する回答の評価の高低と、自己要求質問及び前記他者要求質問に対する回答結果と、に基づいて、主観的質問であるQ4、Q6に対する回答結果の経時的な変化を得ることができる。
【0050】
図11は、以上のようにして記録された回答を表示するための表示データの一例を示した図である。表示データでは、所定の基準点を定め、基準点を原点として第1カウンセリングによって得られた回答に基づく座標にプロットが表示される。また、次回入力があった場合、直前の入力回に表示された座標を原点として次回の入力の座標にプロットが表示される。このようにして順次表示されたプロットを全て表示すると、図11のように、プロットの経時的な移動(変化)が表示できる。
【0051】
図11に示した画像では、縦軸が自己要求と他者要求の程度を示していて、プロットが画像中の上に位置するほど自己要求が大きいことを示している。反対に、プロットが画像中の下に位置するほど他者要求が大きいことを示している。
また、図11に示した画像では、横軸が自己評価の程度を表していて、プロットが画像中の右に位置するほど自己評価が高いことを示している。反対に、プロットが画像中の左に位置するほど自己評価が低いことを示している。
【0052】
したがって、プロットが図中に示した矢印Aの方向に向かうほど、被験者の自己否定感、自己嫌悪の感情が強いことを示す。また、プロットが図中に示した矢印Bの方向に向かうほど、被験者の自己肯定感及び自立心が強いことを示す。さらに、プロットは、図中に示した矢印Cの方向に向かうほど被験者の依存心が強いことを示し、矢印Dの方向に向かうほど、被験者の依存心が強く、自己肯定感が減少することを示す。
【0053】
また、図11に示した例では、プロットが画像の上に位置するほど被験者の自己要求が強く、自分自身で問題を解決しようとするため、被験者の問題意識が内省化、内在化する傾向がある。一方、プロットが画像の下に位置するほど被験者の他者要求が強く、他者に依存して問題を解決しようとするため、被験者の問題意識が外在化する傾向がある。
図11に示した表示データは、ディスプレイ28に表示してシステム管理者がカウンセリングや調査に利用することができる。また、PC4のディスプレイ4aに送って被験者が画像を見て自己の精神状態を把握することに利用することもできる。
【0054】
図12は、図11に示した表示データを生成するためのフローチャートである。第1カウンセリング実施部202は、具体的質問とイメージ的質問と主観的質問とを混在させてカウンセリングのデータを作成する(S111)。通信制御部29は、ステップS111において作成されたカウンセリングデータをPC4に提供する(S112)。提供されたカウンセリングデータは、PC4のディスプレイ4aに表示される。
【0055】
被験者は、PC4を使って複数の日にわたり、カウンセリングを実施する。実施されたカウンセリングの回答は通信制御部29によってWEBサーバ1に収集され(S113)、データベースサーバ2のDB21に蓄積される。この結果、カウンセリングに対する回答結果が複数の日にわたって記録される。
第1カウンセリング実施部202は、DB21に蓄積された回答を抽出して解析する。より具体的には、第1カウンセリング実施部202は、回答のうちのQ4に自己要求の記入があるか否か判断する(S114)。自己要求の記入があれば(S114:Yes)、Q4の回答に他者要求があるか否か判断する(S115)。他者要求の記入があれば(S115:Yes)、自己要求カウント、他者要求カウントを共にカウントしない(S116)。
【0056】
一方、第1カウンセリング実施部202は、ステップ114において自己要求が記入されていないと判断した場合(S114:No)、自己要求カウントを0にする(S123)。続いて他者要求の記入があるか否か判断し(S124)、他者要求の記入がある場合には(S124:Yes)、他者要求カウントを1カウントアップする(S125)。また、他者要求の記入もない場合(S124:No)、自己要求カウント、他者要求カウントを共にカウントしない(S116)。
【0057】
また、第1カウンセリング実施部202は、ステップ114において自己要求が記入されていて(S114:Yes)、かつ、他者要求が記入されていないと判断した場合(S115:No)、自己要求カウントを1カウントアップする(S122)。
次に、第1カウンセリング実施部202は、Q6の自己評価が「+」に設定されているか否か判断する(S117)。この結果、自己評価が「+」に設定されている場合には(S117:Yes)、自己評価カウントを1カウントアップする(S118)。一方、ステップS117において自己評価が「+」に設定されていない場合(S117:No)、自己評価が「−」に設定されているから、自己評価カウントを1カウントダウンする(S121)。
【0058】
第1カウンセリング実施部202は、以上のようにしてカウントされたカウント値に基づいてプロットの座標を決定する(S119)。すなわち、自己評価カウントが1カウントアップされていれば、横軸の座標は、図10に示した自己イメージ(+)側に1つ移動する。また、自己要求カウントが1カウントアップされていれば、縦軸の座標は、自己要求の方向(図中では上)に1つ移動することになる。
【0059】
表示データは、第1カウンセリング実施部202によって決定された座標に順次プロットを記すことによって生成され、ディスプレイ28等に表示される(S120)。画像中のプロット同士を線で接続することにより、画像は、解析結果を示すプロットの経時的な変化を示すことができる。
このような本実施形態のカウンセリングシステムは、「通常ならこの程度のストレスなら耐えられる」、「1年間も経てば立ち直る」といった一般的、客観的な基準ではなく、各被験者が実際に感じている主観的な感情である「思い」を判断することができる。なお、ここでいう「思い」とは、客観的に把握できる事実を指す情報ではなく、回答者が主観的に感じた情動を伴う情報であって、イメージ情報あるいは主観情報とも呼ばれる。イメージ情報には、感情の情報と感知された事柄の情報とが含まれる。このような実施形態1では、回答者の思いをより正確に判断し、様々な分野に有効な情報を得ることができる。
【0060】
例えば、本実施形態のカウンセリングシステムを、ストレスによる精神疾患等の治療に使用すれば、患者が主観的に感じるストレスや感情を正確に抽出し、指導に役立てることができる。
また、災害や事件等によって心的外傷を負った患者に対し、心的外傷の治癒の程度の指標を得ることができる。さらに、本実施形態のカウンセリングシステムを、食事や運動といった生活習慣に起因する糖尿病等の患者に使用すれば、食事制限や運動の義務付けに対する患者の主観的なストレスの程度を外部から把握して適切な指導をすることができる。
さらに、犯罪等によって矯正中の者にカウンセリングを提供してカウンセリングすれば、被験者が感じる主観的な意識の変化や刑罰に対して感じるストレスの指標を得ることができる。このような指標は、矯正を適正に行うために有効な情報であるといえる。
【0061】
・閾値設定
次に、本実施形態の閾値設定部203によってなされる閾値の設定につい説明する。閾値設定部203は、第1のカウンセリングによって得られる被験者の自己肯定感、自立心及び依存心の程度を判断するための閾値を設定する。自己肯定感、自立心及び依存心の程度は、第1のカウンセリングにおける被験者の自己否定感を示すデータの入力回数、第1のカウンセリングにおける被験者の他者に対する依存要求(本実施形態では他者要求)を表すデータの入力回数によって表されるものとする。
【0062】
具体的には、本実施形態では、Q4の回答において他者要求を示す座標が連続して大きくなる方向に所定の回数(N1回)以上移動した場合に第1カウンセリングとは異なるカウンセリングを実施する。また、Q6の回答において自己のマイナスイメージを示す座標が連続して大きくなる方向に所定の回数(N2回)以上移動した場合に第1カウンセリングとは異なるカウンセリングを実施する。つまり、本実施形態では、上記したN1回、N2回を閾値とし、閾値設定部203は、閾値N1及びN2の値を決定する。
【0063】
また、本実施形態では、閾値設定部203が、閾値N1及びN2の値と共に、閾値N1、N2を使って選択された被験者をさらに選別するために使用される心理テストの種別や心理テストの得点を決定する。このような心理テスト及び得点をも本実施形態の閾値に含まれる。
閾値N1及びN2は、第1のカウンセリングによって心理状態が改善された被験者と改善されなかった被験者とを判別するための閾値である。また、心理テストの種別や心理テストの得点は、心理テストの結果によって第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と、改善が期待できない被験者とを判別するための閾値である。
【0064】
図13、図14は、本実施形態のカウンセリングシステムが閾値を設定する方法を説明するためのフローチャートである。図2に示した閾値設定部203は、図13、図14に示した方法をコンピュータによって実行するためのコンピュータプログラムである。図示したように、閾値設定部203は、第1カウンセリングのQ6において自己イメージのマイナスが入力されたか否か判断する(S131)。
【0065】
自己イメージマイナスの入力とは、図11に示したプロットが自己イメージのマイナス側に移動することをいい、Q6においてボタン71のマイナスが選択された場合をいう。また、自己イメージプラスの入力とは、図11に示したプロットが自己イメージのプラス側に移動することをいい、Q6においてボタン71のプラスが選択された場合をいう。
【0066】
自己イメージのマイナスが入力された場合(S131:Yes)、閾値設定部203は、自己イメージマイナスが連続して入力された回数のカウントを1つカウントアップする(S135)。また、自己イメージのマイナスが入力されなかった場合(S131:No)、閾値設定部203は、自己イメージプラスが入力されたか否か判断する(S132)。自己イメージプラスが入力された場合(S132:Yes)、自己イメージのマイナスの連続入力が終了したとして自己イメージマイナスが連続して入力された回数をデータとして取得する(S136)。取得されたデータは、例えば、DB21に蓄積される。
【0067】
閾値設定部203は、以上のようにして取得されたデータが閾値設定に充分な量蓄積されたか否か判断する(S133)。この結果、データ量が閾値を設定できる量に満たないと判断された場合には再び自己マイナスイメージの入力について判断する。また、閾値の設定ができると判断された場合には(S133:Yes)、閾値を設定する処理をする。
なお、ステップS132において、自己イメージプラスの入力もなされていないと判断された場合(S132:No)、本実施形態では、データとして採用することなくデータ量の判断をするものとした。
【0068】
また、閾値設定部203は、Q4において、他者要求がプラスになったか否か判断する(S141)。他者要求がプラスになったとは、図11に記したプロットが他者要求のプラス側に移動したことをいい、自己要求の回答の欄に記入がなく、他者要求の解答欄にのみ何らかの文字情報が記入されている場合に該当する。また、他者要求0とは、自己要求、他者要求の回答の欄に記入がある、または両方の回答欄に記入がない、さらに自己要求の回答の欄にのみ記入がある場合に該当する。
【0069】
ステップS141において、他者要求プラスと判断された場合(S141:Yes)、閾値設定部203は、他者要求プラスが連続して入力された回数のカウントを1つカウントアップする(S145)。また、他者要求プラスにならなかった場合(S141:No)、閾値設定部203は、他者要求が0であるか否か判断する(S142)。他者要求0である場合(S142:Yes)、他者要求プラスの連続入力が終了したとして他者要求プラスが連続した回数をデータとして取得する(S146)。取得されたデータは、例えば、DB21に蓄積される。
【0070】
閾値設定部203は、以上のようにして取得されたデータが閾値設定に充分な量蓄積されたか否か判断する(S143)。この結果、データ量が閾値を設定できる量に満たないと判断された場合には再び自己マイナスイメージの入力について判断する。また、閾値の設定ができると判断された場合には(S143:Yes)、閾値を設定する処理をする。
なお、ステップS142において、入力が他者要求0にも該当しないと判断された場合(S142:No)、本実施形態では、データとして採用することなくデータ量の判断をするものとした。
【0071】
図15(a)、(b)は、図13のステップS134の処理を具体的に説明するための図である。(a)は、心理テストの得点を縦に、自己イメージマイナスが連続して入力された回数を横にとって示したテーブルである。(b)は、(a)に示したカットオフポイント151を決定する方法を示した図である。心理テストには複数の種別があって、図15は、このうちの自己否定感尺度の心理テストについて記したものである。
【0072】
閾値設定部203は、自己イメージマイナスが入力されると、自己イメージマイナスの入力が連続してなされた回数をデータとして取得する。そして、取得した回数と、自己イメージマイナスを入力した被験者の心理テストの得点との両方に一致する欄に、データ取得の回数を順次記録していく。
この結果、図15(a)には、例えば、心理テストの得点が3点〜4点の被験者が、連続して3回〜6回自己イメージマイナスを入力した回数が欄152に記録される。また、心理テストの得点が3点〜4点の被験者が、連続して14回以上自己イメージマイナスを入力した回数が欄153に記録される。
【0073】
閾値設定部203は、各欄に記録された入力回数に応じてカットオフポイント151を設定する。そして、カットオフポイント151を基準にして自己イメージマイナスの連続回数を決定し、この回数を閾値N1及び閾値得点に設定する。
図示した例では、図15(a)に示したテーブルにおいて、カットオフポイント151が心理テストの得点10点と11点との境界線と連続入力回数10回と11回との境界線の交点となっている。このような場合、入力回数の全データは2つの境界線によって4つのグループO、P、Q、Rに分けられる。
【0074】
自己否定感尺度の心理テストでは、概ね得点が低い被験者が第1カウンセリングによる心理状態の向上が期待できるとされ、得点の高い被験者が心理状態の向上が期待し難いとされている。また、第1カウンセリングでは、自己イメージマイナスの連続入力回数が多い場合よりも少ない場合にカウンセリングの効果が上がったと判断する。
このため、4つのグループO、P、Q、Rのうち、グループOのデータは、カウンセリング効果が上がるべき人に効果が上がった例であるといえる。また、グループPのデータはカウンセリング効果が上がるべき人に効果が上がらなかった例、グループQのデータはカウンセリング効果が上がらないはずの人に効果が上がらなかった例である。グループRのデータは、カウンセリング効果が上がるべき人に効果が上がらなかった例であるといえる。
【0075】
本実施形態では、グループOを真陽性、グループPを偽陰性、グループQを真陰性、グループRを偽陽性という。
次に、カットオフポイント151の決定の方法を、図15(b)を使って説明する。図15(b)は、カットオフポイントを決定する得点と連続入力回数との組み合わせ(図15(a)における位置)を変化させることによって変化させた真陽性、真陰性、擬陽性、偽陰性の各データ数の割合を示す図である。データの縦軸は感度、横軸はデータの特異度を1から減じた値(1−特異度)を示したグラフである。感度、特異度は、以下の式によって表される。
【0076】
感度 = 真陽性のデータ数/(真陽性のデータ数+偽陽性のデータ数)
特異度= 真陰性のデータ数/(真陰性のデータ数+偽陰性のデータ数)
(1−特異度=偽陰性のデータ数/(真陰性のデータ数+偽陰性のデータ数))
図15(b)のようにしてデータを表示すると、データは、図中に示す曲線150のように表される。カットオフポイント151は、曲線150のカーブが最も大きく変化する点、あるいは1−特異度の値が最小値になる点に設定される。このようにすれば、真陽性に属するデータ数の陽性における割合が大きくなるように閾値N1、N2を設定することができる。あるいは、陰性に属するデータ数の陰性における割合が小さくなるように閾値N1、N2を設定することができる。
【0077】
なお、カットオフポイントを決定する理想的な線とは、一点鎖線で示した線154のように、感度100%、1−特異度が0%の近傍で略90度にカーブする線をいう。線154が示す線を使ってカットオフポイントを設定できれば、カウンセリング効果が期待できる被験者を正確に抽出することができ、しかもカウンセリング効果が期待できたにも関わらずカウンセリング効果が上がらなかった被験者を極力少なくすることができる。すなわち、カウンセリング効果を正しく予想することができる閾値を設定することができる。線の形状は、心理テストの種別によって変化するため、本実施形態では、後に述べるように、図15(b)に示した曲線150から、カウンセリング効果の予想に使用される心理テストを選定している。
【0078】
図16(a)、(b)は、図14のステップS144の処理を具体的に説明するための図である。(a)は、心理テストの得点を縦に、自己イメージマイナスが連続して入力された回数を横にとって示したテーブルである。(b)は、(a)に示したカットオフポイント161を決定する方法を示した図である。心理テストには複数の種別があって、図16は、このうちの対人依存度の心理テストについて記したものである。
【0079】
閾値設定部203は、他者要求がプラスになると、他者要求が連続してプラスになった回数をデータとして取得する。そして、取得した回数と、他者要求プラスになった被験者の心理テストの得点との両方に一致する欄に、データ取得の回数を順次記録していく。
この結果、図16(a)には、例えば、心理テストの得点が3点〜4点の被験者が、連続して3回〜6回他者要求がプラスになった回数が欄162に記録される。また、心理テストの得点が3点〜4点の被験者が、連続して14回以上他者要求がプラスになった回数が欄163に記録される。
【0080】
閾値設定部203は、各欄に記録された入力回数に応じてカットオフポイント161を設定する。そして、カットオフポイント161を基準にして他者要求プラスの連続回数を決定し、この回数を閾値N2に設定する。
図示した例では、図16(a)に示したテーブルにおいて、カットオフポイント161が心理テストの得点10点と11点との境界線と連続入力回数6回と7回との境界線の交点となっている。このような場合、入力回数の全データは2つの境界線によって4つのグループO、P、Q、Rに分けられる。
【0081】
対人依存行動特性の心理テストにおいても、概ね得点が低い被験者が第1カウンセリングによる心理状態の向上が期待できるとされ、得点の高い被験者が心理状態の向上が期待し難いとされている。また、第1カウンセリングでは、他者要求の連続回数が多い場合よりも少ない場合にカウンセリングの効果が上がったと判断する。図16に示した例でも、グループOを真陽性、グループPを偽陰性、グループQを真陰性、グループRを偽陽性という。
【0082】
次に、カットオフポイント161の決定の方法を、図16(b)を使って説明する。図16(b)は、カットオフポイントを決定する得点と連続入力回数との組み合わせ(図16(a)における位置)を変化させることによって変化させた真陽性、真陰性、擬陽性、偽陰性の各データ数の割合を示す図である。図16(b)においても、縦軸にはデータの感度を、横軸にはデータの特異度を1から減じた値(1−特異度)を示している。図16(b)のようにしてデータを表示すると、データは、図中に示す曲線160のように表される。カットオフポイント161は、曲線160のカーブが最も大きく変化する点、あるいは1−特異度の値が最小値になる点に設定される。
【0083】
さらに、本実施形態では、図15(b)や図16(b)に示した1つの曲線のみによってカットオフポイントを決定するものに限定されるものではない。すなわち、図17に示すように、曲線150、曲線160を合成してより理想的な曲線に近い曲線170を生成し、曲線170を使ってカットオフポイントを設定するようにしてもよい。このようにする場合、後述する第2カウンセリングとして実施される心理テストは、曲線170を得るように合成された曲線を得た心理テストを複数選択して行われる。
【0084】
以上述べた本実施形態は、カウンセリングの効果が期待でき、かつ、実際に心理状態が向上した被験者の数が最大値をとるように、あるいはカウンセリング効果が期待できたにも関わらず心理状態の向上が見られなかった被験者が最小になるようにカットオフポイントを設定することができる。
そして、このようにカットオフポイントを設定することにより、本実施形態は、第1カウンセリングによって心理状態が向上するか否かを判定するための適正な閾値N1、N2を設定することができる。
【0085】
なお、以上述べた本実施形態は、第1カウンセリングの過程でカットオフポイントを設定するためのデータ収集をしているが、本実施形態はこのような構成に限定されるものではない。SAT法によるカウンセリングの研究者らは、多数の被験者に対して行った第1カウンセリングにおける自己イメージマイナスの連続入力回数や、他者要求プラスの連続カウント回数と各心理テストの結果との関係のデータを取得している。本実施形態は、例えば、複数の被験者に心理テストを実施し、予め取得されているカウント回数のデータに心理テストの得点を対照してカットオフポイントを決定するもできる。
【0086】
さらに、本実施形態は、収集されたデータと予め取得されているデータのいずれか一方だけを使用するものに限定されるものではなく、少なくとも一方を使うものであればよい。例えば、第1カウンセリングの実施開始時には予め取得されているデータを使って決定したカットオフポイントによって決定された閾値を使用し、データが取得されるうちにカットオフポイントを取得されたデータを使って修正、更新するものであってもよい。
【0087】
・被験者の選択及び第2カウンセリング
次に、本実施形態の閾値による被験者の選択と、選択された被験者に対する第2カウンセリングについて説明をする。
被験者選択部206は、閾値設定部203によって設定された閾値N1、N2を使って第2カウンセリングの実施を受ける被験者を選択する。第2カウンセリング実施部204は、閾値設定部203によって設定された閾値N1、N2を使って選択された被験者に第2カウンセリングを実施する。
【0088】
図18は、被験者選択部206が第1カウンセリングのQ6を使って被験者を選択し、第2カウンセリング実施部204が第2カウンセリングを実施するまでの一連の処理を説明するためのフローチャートであって、被験者選択部206及び第2カウンセリング実施部204によって実行される。図18に示した処理のうち、ステップS181〜185は被験者選択部206によって実行される処理である。また、ステップS185〜191は第2カウンセリング実施部204によって実行される処理である。
【0089】
I 被験者の選択
被験者選択部206は、第1カウンセリングの実施中、Q6において自己イメージのマイナスが入力されたか否か判断する(S181)。この結果、自己イメージのマイナスが入力されない場合には(S181:No)、自己イメージプラスが入力されたか否か判断する(S182)。自己イメージプラスも入力されていない場合(S182:No)、次回の第1カウンセリングのQ6の回答に備えて待機する。また、自己イメージプラスが入力された場合(S182:Yes)、自己イメージマイナスの連続入力が終了したから、自己イメージマイナスのカウント値が閾値N1に達したか否か判断する(S184)。
【0090】
また、ステップS181において、自己イメージマイナスが入力されたと判断された場合(S181:Yes)、被験者選択部206は、自己イメージマイナスのカウントを1つカウントアップする(S183)。そして、自己イメージマイナスのカウント値が閾値N1に達したか否か判断する(S184)。
自己イメージマイナスのカウント値が閾値N1に達した場合(S184:Yes)、第1カウンセリング実施部202は第1カウンセリングの実施を中断し、被験者選択部206は、マイナス自己イメージカウントをリセットする(S185)。そして、心理テストを実施する(S186)。なお、この際、被験者選択部206は、第1カウンセリングとは異なるカウンセリングである心理テストを実施するので、本実施形態の第2カウンセリングとしても機能するものとなる。
【0091】
II 第2カウンセリング
前記したように、閾値設定部203は、1または複数の心理テストの結果を使ってカットオフポイントを設定する。被験者選択部206は、ステップS186において、カットオフポイントの設定に使用された心理テストを実行する。そして、この合計得点によって被験者を選別し、被験者に対して実施される第2カウンセリングの種別を決定する。
図18に示した例では、心理テストの得点をT1以下、T1〜T2未満、T2以上の3段階に分けている。得点T1、T2は、T2>T1の関係にあって、得点が低いほど第1カウンセリングによる心理状態の改善が期待できることを示している。なお、得点T1、T2、T3は、いずれも本実施形態の被験者を選択するための閾値であって、心理状態の改善が期待される被験者と改善が期待できない被験者とを判別するための閾値である。
【0092】
閾値であるT1、T2は、カットオフポイントに基づいて決定される。つまり、T1は、連続入力回数を決定したカットオフポイントの得点よりも小さい値に設定され、T2は、この得点よりも大きい値に設定される。このようにT1、T2を決定することにより、本実施形態は、被験者を、カウンセリングによる心理状態の改善の期待度に沿って適正に判別し、以降被験者の状態に適したカウンセリングを実施することが可能になる。
【0093】
閾値N1回以上連続してマイナス自己イメージを入力した被験者の心理テストの合計得点がT1以下であった場合、この被験者は第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が高い。このため、被験者選択部206は、第1カウンセリング実施部202を呼び出して第1カウンセリングに戻り、この被験者に引き続き第1カウンセリングを受けさせる(S191)。
【0094】
また、被験者の心理テストの合計得点がT1〜T2未満であった場合、この被験者は第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が中程度であると考えられる。被験者選択部206は、第2カウンセリング実施部204を呼び出す。第2カウンセリング実施部204は、第2カウンセリングであるイメージ法によるカウンセリングを被験者に対して実施し(S190)、カウンセリングの終了後、被験者を第1カウンセリングの処理に戻す(S191)。
【0095】
なお、イメージ法とは、被験者に自身の状態をイメージさせるイメージ療法である。イメージ法には、「未来自己イメージ法」、「進化遡及イメージ法」等がある。このようなイメージ法は、いずれも被験者が自己変容の目標を自身で設定するものである。例えば、未来自己イメージ法では、被験者に対し、「先祖代々、子が親に充分愛され、あなたの両親も祖父母に充分愛され、自分の満足した生き方ができたと仮定し、それを映像化してください。」といったメッセージを送る。
【0096】
さらに、第2カウンセリング実施部204は、映像によって自身の状態をイメージした被験者に対し、「あなたには強力なスポンサーがいて、ほとんど無制限に面倒や支援してもらえると仮定すれば、あなたがこれからやってみたい、「楽しいこと、リラックスすること、幸せなこと、元気が出ること」は何ですか等と質問する。被験者は、このような質問に対して思いついたことを書き出し、第2カウンセリング実施部204に返信する。
【0097】
イメージ法は、被験者にこのようなイメージを想起させることによって被験者の心理状態を向上させることを目的にしてなされるものである。第2カウンセリング実施部204は、カウンセリングの終了後、被験者を第1カウンセリングの処理に戻す(S191)。
また、被験者の心理テストの合計得点がT2以上であった場合、この被験者は第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が低いと考えられる。被験者選択部206は、第2カウンセリング実施部204を呼び出す。第2カウンセリング実施部204は、不安の状態の測定を実施するSDS検査や、特性的不安を測定するSTAI検査を実施する(S187)。
【0098】
さらに、第2カウンセリング実施部204は、ステップS187において実施された結果に基づいて、被験者に異常があるか否かを判断する(S188)。判断の結果、異常がない場合(S188:Yes)、第2カウンセリング実施部204は、被験者にイメージ法によるカウンセリングを実施し(S190)、被験者を第1カウンセリングに戻す(S191)。
【0099】
一方、ステップS188において、異常があると判断された場合(S188:No)、メッセージ作成部205が保健指導を推奨するメッセージを表示するデータを生成して送信し、ディスプレイ4a等を介して被験者に提供する(S189)。
なお、保健指導を推奨するメッセージとは、カウンセリング指導を受けるための情報の一例である。カウンセリング指導を受けるための情報とは、対面カウンセリング等のメンタルヘルス向上のための保健指導に関する情報をいい、より具体的には、対面カウンセリングが受けられる機関や病院、カウンセラーの連絡先を含む情報である。
【0100】
ただし、図18は、一連の基本的な処理を例示したものであって、ここで説明した処理を一部略すものであってもよいし、他の処理を加えるものであってもよい。また、説明したな処理を適宜変更、修正してもよいことはいうまでもない。
図18に示した処理に加えられる処理とは、例えば、得点がT1〜T2未満の被験者に対して「どんな自分だといいですか?」との質問をし、被験者の自己イメージを明瞭にするものがある。また、処理の変更とは、例えば、マイナス自己イメージが10回連続して入力されたことがN1回連続して起こったことによって第2カウンセリングを実施することが考えられる。このような処理は、マイナス自己イメージがN1回連続して入力されたことによって第2カウンセリングを実施する処理を変更したものである。
さらに、本実施形態は、心理テストの結果に加え、被験者の年齢や性別といった情報を考慮して第2カウンセリングの内容を決定するようにしてもよい。
【0101】
図19は、Q4の自己要求、他者要求の回答に基づいて被験者の自立心や依存心の程度を抽出し、第2カウンセリングを実施する場合の処理を説明するためのフローチャートである。図19に示した処理も、以上述べた図18の処理と同様に、被験者選択部206が、第1カウンセリングの実施中に連続して他者要求プラスになった回数をカウントする(S191、S192、S193)。
そして、被験者選択部206は、第2カウンセリング実施手段として機能し、カウントされた回数が閾値N2に達した被験者に対して心理テストを実施する(S196)。第2カウンセリング実施部204は、心理テストの得点に基づいて被験者を3つのグループに選別する。そして、第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が中程度の被験者に対してはイメージ法によるカウンセリングを実施する(S200)。
【0102】
また、第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が低い被験者に対しては、不安の状態の測定を実施するSDS検査や、被験者が自身の攻撃性を自己診断するBAQ検査といった検査を実施する(S197)。そして、検査の結果に基づいて、保健指導を推奨するメッセージをPC4に送信する(S199)。
なお、以上述べた図13、図14、図18、図19に示した処理は、本実施形態のカウンセリング方法を説明している。このようなカウンセリング方法は、コンピュータプログラムであるカウンセリング制御プログラムによって実行することができる。
【0103】
本実施形態のカウンセリング制御プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、本実施形態のカウンセリング方法をコンピュータに実行させるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。
また、本実施形態のカウンセリング制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能なROM、フラッシュメモリ、メモリカード、USB接続型フラッシュメモリ等のメモリデバイスに記録されて提供されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の本実施形態のカウンセリングシステムの概念を説明するための図である。
【図2】図1に示したWEBサーバ及びデータベースサーバを説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態の心理テストの心理チェックリストを例示するための図である。
【図4】本発明の一実施形態のQ1、Q2、Q3を示すための図である。
【図5】本発明の一実施形態のQ4を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態のQ5を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態のQ6のうちのQ4における自己要求に関連する質問を示すための図である。
【図8】本発明の一実施形態のQ6のうちのQ4における他者要求に関連する質問を示すための図である。
【図9】本発明の一実施形態のQ7を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態のカウンセリングに対する回答例を示した図である。
【図11】本発明の一実施形態の表示データを説明するための図である。
【図12】本発明の本実施形態のカウンセリング方法及びカウンセリング制御プログラムを説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態のカウンセリングシステムが閾値を設定する方法を説明するためのフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態のカウンセリングシステムが閾値を設定する方法を説明するための他のフローチャートである。
【図15】図13のステップS134の処理を具体的に説明するための図である。
【図16】図14のステップS144の処理を具体的に説明するための図である。
【図17】図15(b)、図16(b)に示した曲線を合成して1つの曲線を生成することを説明するための図である。
【図18】図2に示した被験者選択部が第1カウンセリングのQ6を使って被験者を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】図2に示した被験者選択部が第1カウンセリングのQ4を使って被験者を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0105】
1 WEBサーバ
2 データベースサーバ
3 入力フォーム
4 PC
4a,28 ディスプレイ
71 ボタン
101 解析プログラム
201 心理テスト実施部
202 第1カウンセリング実施部
203 閾値設定部
204 第2カウンセリング実施部
205 メッセージ作成部
206 被験者選択部
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法、カウンセリング制御プログラムにかかり、特に構造化連想法を使ったカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法、カウンセリング制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンピュータネットワークを介して被験者から情報を収集し、収集された情報をコンピュータによって解析するカウンセリングのシステムが実用化されている。このようなカウンセリングシステムの従来例として、例えば、特許文献1、特許文献2が挙げられる。
特許文献1に記載された発明は、被験者に対話形式で質問をし、回答をWebサーバに送信する。質問に対する回答は、多段階に設定されている選択肢を選択することによって行われる。Webサーバに送信された回答は、アセスメント部によって分析される。分析の結果に基づいて被験者が感じているストレッサーを評価し、カウンセリングの必要性を示唆する、あるいは専門機関の情報を提供する。
【0003】
このような特許文献1によれば、簡易なカウンセリングの結果、より高度なカウンセリングが必要な被験者を抽出し、高度なカウンセリングを受けるように指導することができる。また、専門機関の情報を提供し、専門家による直接対面カウンセリングを被験者に勧めることが可能になる。
また、特許文献2は、ストレス診断処理装置が被験者のパーソナルコンピュータ等に自己診断ファイルを提供する。自己診断ファイルによって自己診断が可能な画面がパーソナルコンピュータに表示される。被験者は、画面に表示された「NO」や「YES」を選択することによってストレスに関する状況を入力する。入力されたデータはストレス診断処理装置に送信され、リラクゼーション処理装置が、データに基づいて被験者にストレスを解消するためのサービスを判断し、提供する。
【0004】
このような特許文献2によれば、被験者個々の自己診断の結果に応じてサービスを提供することができるので、画一的なサービスを提供するよりも高いストレス緩和の効果を得ることができると考えられる。
【特許文献1】特開2005−334205号公報
【特許文献2】特開2003−108674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特許文献1、特許文献2は、いずれも、質問に対して予め設定されている選択肢のうち自身の感情に最も近いと思われるものを選択することによって回答するものである。このような形式で行われるカウンセリングに対し、近年の社会の価値観が多様化するに伴い、各人の主観的な感情を抽出することが可能な調査が各分野で要求されている。
【0006】
例えば、ストレスによるうつ病の罹患者や自殺者の増加を抑止するには、各個人が自己のストレスの有無や程度を自覚して改善に努めると共に、医療機関等が個人のストレスについて把握し、適正な治療や支援を提供することが必要になる。
また、犯罪や災害にあった被験者に対しては、各個人のストレス障害の程度やその経過を把握し、障害の程度に応じて適正な時期に適正なケアをすることが地域の復興や個人の復帰に有効である。さらに、地域開発にあたっては、開発される地域に対する住民の思い入れや感情を把握し、尊重することによって開発を円滑に進めることが可能になる。
【0007】
現在、各個人が感じる主観的なストレスを抽出する技術として、SAT法(構造化連想法)によるカウンセリングがある。SAT法とは、つくば大学の宗像教授らによって提唱されたカウンセリング技法であって、「構造化された(Structured)」問いかけによって問題解決脳である右脳を活性化し、意識下あるいは変性意識(催眠状態)での「ひらめき、連想(Association)」を用いて問題の解決法や新しい生き方の気付きを促す「技法(Technique)」である。
【0008】
SAT法の自己イメージ法では、被験者が距離をおいて自己を観察し、自分自身が何をしたらいいかを自己決定させる。自己決定は、直感的なひらめきによって決定されることが望ましい。このようなSAT法は、「SAT療法(宗像恒次著:金子書房)」等の本によって周知のカウンセリングの技法である。
本発明の発明者は、コンピュータシステムを使ったSAT法によるカウンセリングシステムを開発している。そして、このようなシステムにおいても、カウンセリングの結果に基づいて、カウンセラーとの対面カウンセリングを含む別のカウンセリング(再カウンセリング)を実施することを考えている。
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1では、被験者のストレスの程度を示す得点を偏差値に変換することによって再カウンセリングを受ける必要がある被験者を抽出している。このような特許文献1の発明は、集団に属する人員全体のストレスの平均を基準にカウンセリングの必要性を決定するものといえる。
一方、SAT法を使ったカウンセリングは、前記したように、各個人が主観的に感じるストレスの程度に注目してなされるものであって、他者が感じるストレスを一切考慮するものではない。このようなSAT法を使ったカウンセリングは、特許文献1のカウンセリングとは思想を異にするものであるから、特許文献1の手法を流用して再カウンセリングが必要な被験者の抽出をすることはできない。
【0010】
また、特許文献2の発明のリラクゼーション機能では、被験者が選択したキャラクタを使って被験者にメッセージを送ることができる。このような機能は、各個人に適したストレス緩和を実現することができるものといえる。ただし、特許文献2のリラクゼーションは、被験者のストレス緩和を目的としており、再カウンセリングが必要な被験者を抽出することはできない。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、SAT法を使ったカウンセリングにおいて、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法及びカウンセリング制御プログラムを提供し、抽出された被験者に対してさらに別のカウンセリングを実施する、あるいはカウンセリングを受けるよう勧めることによって被験者に適切な心理治療を受ける機会を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1のカウンセリングシステムは、構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリングシステムであって、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段を備えたカウンセリング装置と、前記カウンセリング装置によって提供された第1のカウンセリングのための質問を被験者に提示し、前記質問に対する被験者の回答を受付ける回答受付手段と、を含み、前記カウンセリング装置は、前記第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを前記回答受付手段に提供する心理テスト提供手段と、前記心理テスト提供手段によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定手段と、前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択手段と、前記被験者選択手段によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このような発明によれば、構造化連想法による第1カウンセリングに対する回答結果を収集することができる。また、心理テストと構造化連想法によるカウンセリングとの結果に基づいて被験者の一部を選択し、選択された被験者に第1カウンセリングとは異なる第2カウンセリングを実施することができる。このため、第2カウンセリングを実施すべき被験者を選択するための閾値を被験者に対して行う心理テストに基づいて決定することができるので、被験者に即した閾値を設定することができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態をも考慮しているので、構造化連想法を用いた第1カウンセリングをも考慮して閾値を決定することができる。
【0014】
さらに、このようにして決定された閾値を使って第2カウンセリングの対象となる被験者を選択することができるため、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリングシステムを提供することができる。そして、抽出された被験者に対してさらに別のカウンセリングを実施する、あるいはカウンセリングを受けるよう勧めることによって被験者に適切な心理治療を受ける機会を与えることができる。
【0015】
本発明の請求項2に記載のカウンセリング装置は、構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング装置であって、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段と、前記第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供手段と、前記心理テスト提供手段によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定手段と、前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択手段と、前記被験者選択手段によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
このような発明によれば、心理テストと構造化連想法によるカウンセリングとの結果に基づいて被験者の一部を選択し、選択された被験者に第1カウンセリングとは異なる第2カウンセリングを実施することができる。このため、第2カウンセリングを実施すべき被験者を選択するための閾値を被験者に対して行う心理テストに基づいて決定することができるので、被験者に即した閾値を設定することができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態をも考慮しているので、構造化連想法を用いた第1カウンセリングをも考慮して閾値を決定することができる。
さらに、このようにして決定された閾値を使って第2カウンセリングの対象となる被験者を選択することができるため、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリング装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載のカウンセリング装置は、請求項2に記載の発明において、前記閾値決定手段が、前記回答分析手段によって収集、分析された被験者の回答のデータ、構造化連想法によって得られた被験者の心理状態の予め取得されているデータ、の少なくとも一方を使って前記閾値を決定することを特徴とする。
このような発明によれば、回答分析手段によって収集、分析された被験者の回答に基づいて閾値を決定することにより、被験者により即した閾値を得ることができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態の予め取得されているデータを使って閾値を決定することにより、第1カウンセリングの実施開始時から閾値を設定して被験者を判別することができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載のカウンセリング装置は、請求項2または3に記載の発明において、前記閾値決定手段が、前記心理テストの結果によって第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と、改善が期待できない被験者とを判別するための閾値を決定し、前記第1のカウンセリングによって得られる被験者の自己肯定感、自立心及び依存心の程度によって前記第1のカウンセリングによって心理状態が改善された被験者と改善されなかった被験者とを判別するための閾値を決定することを特徴とする。
【0019】
このような発明によれば、第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者であって、かつ実際に心理状態が改善された者、改善されなかった者、改善が期待されていなかったにも関わらず実際に心理状態が改善された者、改善されなかった者を判別することができる。また、被験者の心理状態の状態を判定することができる。このため、被験者各々に応じて適正な第2カウンセリングを選択することができる。また、第1カウンセリングの中止、続行の判断等もすることができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載のカウンセリング装置は、請求項4に記載のカウンセリング装置において、前記閾値決定手段が、第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と改善が期待できない被験者とを判別するための前記心理テストの得点、前記第1のカウンセリングにおける被験者の自己否定感を示すデータの入力回数、前記第1のカウンセリングにおける被験者の他者に対する依存要求を表すデータの入力回数の少なくとも1つを決定することを特徴とする。
このような発明によれば、被験者の自己肯定感、自立心及び依存心の程度を簡易な手法で判断することができる。このため、装置構成を小型、簡易化するのに有利であり、処理時間が短いカウンセリング装置を提供することができる。
【0021】
また、本発明の請求項6のカウンセリング装置は、請求項1から請求項5に記載の発明において、前記第2カウンセリング実施手段が、前記心理テストによるカウンセリング、被験者に自身の状態をイメージさせるイメージ療法によるカウンセリング、カウンセリング指導を受けるための情報の提供をすることを特徴とする。
このような発明によれば、第1カウンセリングでは得られない情報や効果を得ることができるカウンセリングを第2カウンセリングとして実施することができる。
【0022】
請求項7に記載のカウンセリング方法は、構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング方法であって、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供工程と、前記心理テスト提供工程によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定工程と、前記閾値決定工程において決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択工程と、前記被験者選択工程において選択された被験者に対し、記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
このような発明によれば、第2カウンセリングを実施すべき被験者を選択するための閾値を被験者に対して行う心理テストに基づいて決定することができるので、被験者に即した閾値を設定することができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態をも考慮しているので、構造化連想法を用いた第1カウンセリングをも考慮して閾値を決定することができる。
さらに、このようにして決定された閾値を使って第2カウンセリングの対象となる被験者を選択することができるため、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリング方法を提供することができる。
【0024】
請求項8に記載のカウンセリング制御プログラムは、構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング制御プログラムであって、コンピュータに、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供機能と、前記心理テスト提供機能によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定機能と、前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択機能と、前記被験者選択機能によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施機能と、を実現させることを特徴とする。
【0025】
このような発明によれば、第2カウンセリングを実施すべき被験者を選択するための閾値を被験者に対して行う心理テストに基づいて決定することができるので、被験者に即した閾値を設定することができる。また、構造化連想法によって得られる被験者の心理状態をも考慮しているので、構造化連想法を用いた第1カウンセリングをも考慮して閾値を決定することができる。
さらに、このようにして決定された閾値を使って第2カウンセリングの対象となる被験者を選択することができるため、コンピュータシステムによるカウンセリングの結果に基づいて、別のカウンセリングを受ける必要がある被験者を適正に抽出することができるカウンセリング制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図を参照して本発明にかかるカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法の一実施形態を説明する。
(1)カウンセリングシステムの全体構成
図1は、本実施形態のカウンセリングシステムの概念を説明するための図である。図示したシステムは、構造化連想法(以下SAT法と記す)によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリングシステムである。
図示したカウンセリングシステムは、ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段を備えたWEBサーバ1と、カウンセリング装置によって提供された第1のカウンセリングのための質問を被験者に提示し、この質問に対する被験者の回答を受付けるPC(Personal Computer)4とを備えている。
【0027】
なお、本実施形態の第1のカウンセリングのための質問は、SAT法による質問であり、被験者はSAT法の入力フォーム3に自由に自己の考えや感情を言語によって記述する。被験者の記述した言語の内容が言語情報としてWEBサーバ1に送られる。WEBサーバ1は、送られてきた言語情報を受付けてデータベースサーバ2に蓄積する。
第1のカウンセリングを以降第1カウンセリングと記す。第1カウンセリングは、被験者が主観的に感じる自己肯定感、自己否定感、自立心や依存心の程度を抽出するカウンセリングである。第1カウンセリングについては後に詳述する。
【0028】
図1中に示したSAT法による被験者の入力フォーム3によれば、被験者は、テーマ情報に対して想起された事象(エピソード)、エピソードを想起した原因となる背後感情、背後感情から被験者が自己または他者に対して持つ希望や期待が入力される。また、希望や期待を実現する自己に対するイメージ(自己イメージ)、イメージを実現するための目標や行動、決断を入力することができる。
解析プログラム101は、入力フォーム3にしたがって入力された言語情報を解析する。解析の結果は、WEBサーバ1の管理者によって管理され、医療や保健に関する調査、あるいは政府等による調査に利用される。さらに、解析結果を被験者に送信し、被験者の自己カウンセリングに利用することもできる。
上記した構成では、WEBサーバ1がカウンセリング装置、PC4が回答受付手段として機能する。
【0029】
(2)WEBサーバ及びデータベースサーバ
図2は、WEBサーバ1及びデータベースサーバ2を説明するための図である。WEBサーバ1の解析プログラム101は、第1カウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータをPC4に提供してディスプレイ4aに表示させる心理テスト実施部201、第1カウンセリング用のデータをPC4に提供してSAT法による第1カウンセリングを実施する第1カウンセリング実施部202、心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態とSAT法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値設定部203を備えている。被験者選択部206は、第1カウンセリングの実施と並行して被験者の少なくとも一部を、選択基準を使って選択し、第2カウンセリング実施部204及びメッセージ作成部205は、選択された被験者に対して第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する。
【0030】
以上の構成のうち、心理テスト実施部201が心理テスト提供手段、閾値設定部203が閾値決定手段、被験者選択部206が被験者選択手段、第2カウンセリング実施部204及びメッセージ作成部205が第2カウンセリング実施手段として機能する。
また、WEBサーバ1は、第1カウンセリング、第2カウンセリング用の質問等を保存しておくDB22、DB23を備えている。また、本実施形態では、カウンセリングの結果はデータベースサーバ2のDB21に保存しておくものとする。
さらに、WEBサーバ1には、カウンセリングの結果を表示するためのディスプレイ28、PC4やデータベースサーバ2と通信するためにネットワークを制御する通信制御部29とを備えている。
【0031】
・心理テスト
上記した心理テストとは、例えば、自己価値観尺度、自己抑制型行動特性尺度、情緒的支援ネットワーク認知尺度、問題解決行動特性尺度、対人依存型行動尺度、不安傾向尺度、抑うつ尺度、カウンセリング必要度尺度、感情認知困難度尺度、自己憐憫度尺度、自己乖離度尺度、自己否定感尺度、PTSS度(トラウマ度)尺度といったテストをいう。
このようなテストは、いずれも「SAT療法(宗像恒次著:金子書房)」等の本に説明されているテストであって、各テストに専用の心理チェックリストを使って実施される。
【0032】
図3(a)、(b)、(c)に心理チェックリストを例示する。(a)は自己価値観尺度のテスト用の心理チェックリストである。また、(b)は自己抑制型行動特性尺度の心理チェックリストであり、(c)は情緒的支援ネットワーク認知尺度の心理チェックリストである。被験者は、各心理チェックリストに記載されている選択肢から自身に最も当てはまると思われるものを選択する。
【0033】
心理テスト実施部201は、選択された選択肢の点数を合計して各心理テストの得点を算出する。算出された得点は、心理テストの種別ごとに、被験者の氏名等と対応付けて例えばDB21に保存される。
なお、心理テストは、上記した種別の全てを実施するものに限定されるものではなく、選択されたものだけを実施するようにしてもよい。また、心理テストは、上記したものに限定されるものでなく、第1カウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と、改善が期待できない被験者とを判別することが期待できるテストであればどのようなテストであってもよい。
【0034】
・第1カウンセリング
図4ないし図8は、第1カウンセリング実施部202によってなされるSAT法によるカウンセリングを説明するための図である。第1カウンセリング実施部202は、具体的な事柄に関する質問(具体的質問)、この質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問(イメージ的質問)、具体的な事柄に関する質問の回答に関する主観的な感情についての質問(主観的質問)を混在させてカウンセリングを実施する。各質問を図4〜図8に例示するものとする。第1カウンセリング実施部202は、図4〜図8に示した質問をPC4のディスプレイ4aに表示させるためのデータ(カウンセリングデータ)を、ネットワークを介してPC4に送信する。
【0035】
具体的質問は、被験者が論理的に思考して回答することを期待してなされる質問である。また、イメージ的質問及び主観的質問は被験者が直感的に回答することを期待してなされる質問である。このような質問を混在させてカウンセリングすることにより、本実施形態は、被験者がカウンセリングに回答するうちに右脳と左脳とを概ね交互に機能させ、右脳の思考によって得られる直感的な回答を適正に得ることができる。
【0036】
第1カウンセリング実施部202は、図示したように、Q1からQ7までの7つの質問によって構成されるカウンセリングデータを作成する。本実施形態のカウンセリングは、被験者に対し、自己イメージ法により、被験者が居住する地域や生活に対してすべきことを気付かせるために行われるカウンセリングに本実施形態のカウンセリング装置によって実行されるカウンセリングを含ませたものである。
【0037】
図4(a)、(b)、(c)は、本実施形態のQ1、Q2、Q3を示すための図である。本実施形態のQ1は、「今、あなたのお住まいの地域やあなた自身の生活にどんなことを感じていますか」の質問を被験者にするものである(a)。本実施形態では、Q1において居住地域や生活といった広い範囲から被験者自身のエピソードを選択させ、被験者はQ1に答えることによって現在関心があるエピソードを選択することができる。
【0038】
なお、「このエピソードの場所を記録」のボタンを設けている。被験者がこのボタンをクリックすると、図示しない地図がディスプレイ4aに表示される。被験者が書き込まれたエピソードと関係すると主観的に思う場所を地図上で選択する。
このような本実施形態のカウンセリング装置は、いわゆる名所、旧跡ではないが、被験者が主観的に意味を感じる場所を記録してデータ化することができる。このようなデータは、地域の開発や都市計画等に使用できるものと考えられる。
【0039】
また、Q1中の「そのことは、以下の例と照らし合わせてどちらに近いと思いますか」の質問は、被験者にとってのエピソードの意味付けや重要性の参考にするための回答を得る目的で設定されたものであって、本実施形態の構成に直接関係するものではない。
Q2は、「Q1のように考えたとき、頭の中にはどんな色が浮かびましたか」という質問である。この質問には、被験者は直感的になんらかの色を回答し、回答の際に右脳が機能することが期待される。Q2は、右脳を機能させることを目的とするものであって、回答の内容は本実施形態のカウンセリング装置による解析の結果になんら影響するものではない。
Q3は、「Q2で頭の中に浮かんだ色や気持ちを感情に直すとどれになりますか」の質問である。Q3に対し、被験者は、直感的に浮かんだ色に結びつく感情を選択肢の中から選ぶ。この際、被験者は、現在関心を持っているエピソードと結びつく感情を選択することができる。
【0040】
図5は、Q4を説明するための図である。Q4は、被験者の自己に対する主観的な感情に関する質問と、他者に対する主観的な感情についての質問とである。自己に対する主観的な感情に関する質問には、主観的な感情に対する自己の寄与に関する質問である自己要求質問を含む。また他者に対する主観的な感情についての質問が、主観的な感情に対する他者の寄与に関する質問である他者要求質問を含む。なお、自己要求とは、Q1で答えたエピソードに関する感情を、被験者自身が改善しようとする意識をいう。また、他者要求とは、このエピソードに関する感情を、被験者が他者の支援によって改善しようとする意識をいう。
【0041】
図5(a)は、Q3において被験者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において被験者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において被験者が怒り・不満を選択した場合の質問である。Q4では、いずれの質問においても、「どんな自分かを下に書き込んでくださいの」質問が自己要求質問であり、「どんな他人かを下に書き込んでください」の質問が他者要求質問である。
また、Q4では、自己として自分個人、自分を含む家族といった例を表示し、他者として家族、隣人といった例を表示しておく。このようにすれば、被験者は自己要求と他者要求とを明確に区別して回答することを支援することができる。
【0042】
図6は、Q5を説明するための図である。Q5は、Q4で直感的に自己要求、他者要求を判断した被験者の思考を、左脳を使用する思考に戻すことを目的とする質問である。Q5(a)は、Q3において被験者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において被験者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において被験者が怒り・不満を選択した場合の質問である。
Q5は、被験者に自己の感情を論理的に整理させ、次の質問Q6に対して直感的に回答させることができる。なお、Q5の「もし、あなたが回答している途中で「このエピソードは”喜び、嬉しさ”ではないな」と感じたら、当てはまる感情ボタンをクリックしてください」のメッセージは、被験者が回答を誤った場合に戻るために設定されたものである。
【0043】
図7及び図8はQ6を説明するための図であって、図7は、Q6のうちのQ4における自己要求に関連する質問を示している。また、図8は、Q4における他者要求に関連する質問を示している。図7、図8のいずれにおいても、(a)は、Q3において被験者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において被験者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において被験者が怒り・不満を選択した場合の質問である。
【0044】
図7に示した質問によれば、直感的に被験者は自己要求を感じている自己を外部から見ている状態をイメージすることができる。また、図8に示した質問によれば、直感的に被験者は他者要求を感じている自己を外部から見ている状態をイメージすることができる。
Q6の「そういうあなたを自己観察すると、どんな自分に見えてきますか」の質問は、被験者がこのような自己に対する評価の高低に関する質問である自己評価質問である。本実施形態では、自己評価質問に対して自己イメージを「+」、「−」によって回答することができるよう設定されている。
【0045】
Q4で自己要求、他者要求の両方を書き込んだ場合であっても、Q6では、両者を総合して自己評価をする。自己要求、他者要求に関する感情が相反する場合、被験者は葛藤しているので、葛藤している自己の自己イメージを「+」または「−」で評価する。なお、「+」、「−」を設定するための具体的な操作については後述するものとする。
図9は、Q7を説明するための図である。Q7は、Q1で質問した内容について自己イメージ法を使い、自己のすべきことを直感的に答えさせる質問である。Q7は、本実施形態のカウンセリングが、被験者にすべきことを気付かせるために行われるカウンセリングとして機能するために最も重要な質問である。
【0046】
図10は、カウンセリングに対する回答例を示した図である。図10に示した回答のデータは、PC4からWEBサーバ1を介してデータベースサーバ2のDB21に保存される。図10(a)は、前記したカウンセリングに対する被験者Bさんの4回目の入力結果を示している。(b)は、被験者Bさんの12回目の入力結果を示し、(c)は25回目の入力結果を示している。
本実施形態では、図示したように、Q1〜Q7の全てが、被験者が任意に文字を入力することによって回答される質問である。なお、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、具体的質問の少なくとも一部、イメージ的質問の少なくとも一部、主観的質問の少なくとも一部が、被験者が任意に文字を入力することによって回答される質問であればよい。
【0047】
また、本実施形態では、Q6の解答欄にボタン71を設けている。ボタン71は、例えば、クリックされるたびに「+」、「−」が切替わるよう構成される。被験者は、Q6で答えた自己のイメージが肯定的なイメージ(プラスイメージ)であった場合にはボタンを「+」にし、否定的なイメージ(マイナスイメージ)であった場合にはボタンを「−」に切替える。なお、ボタン71の「+」、「−」の区別は文書として書き込まれた内容とは無関係に被験者が決定するものであってよい。
【0048】
第1カウンセリング実施部202は、Q4の回答において自己要求質問に対する回答が書き込まれている場合には自己要求のカウントを+1とする。また、他者要求質問に対する回答が書き込まれている場合には他者要求のカウントを+1とし、自己要求質問及び他者要求質問に対する回答が書き込まれている場合には自己要求、他者要求ともカウントを0とする。
【0049】
また、第1カウンセリング実施部202は、Q6において、ボタン71が「+」である場合、自己評価のカウントを+1、「−」である場合には自己評価のカウントを−1とする。さらに、一方を自己要求の度合い、他方を他者要求の度合いを示す軸と、自己評価を示す軸とを定める。そして、2つの軸上にカウント値を記録することによってカウント値によって決定される座標を順次記録する。
このような処理により、第1カウンセリング実施部202は、自己評価質問に対する回答の評価の高低と、自己要求質問及び前記他者要求質問に対する回答結果と、に基づいて、主観的質問であるQ4、Q6に対する回答結果の経時的な変化を得ることができる。
【0050】
図11は、以上のようにして記録された回答を表示するための表示データの一例を示した図である。表示データでは、所定の基準点を定め、基準点を原点として第1カウンセリングによって得られた回答に基づく座標にプロットが表示される。また、次回入力があった場合、直前の入力回に表示された座標を原点として次回の入力の座標にプロットが表示される。このようにして順次表示されたプロットを全て表示すると、図11のように、プロットの経時的な移動(変化)が表示できる。
【0051】
図11に示した画像では、縦軸が自己要求と他者要求の程度を示していて、プロットが画像中の上に位置するほど自己要求が大きいことを示している。反対に、プロットが画像中の下に位置するほど他者要求が大きいことを示している。
また、図11に示した画像では、横軸が自己評価の程度を表していて、プロットが画像中の右に位置するほど自己評価が高いことを示している。反対に、プロットが画像中の左に位置するほど自己評価が低いことを示している。
【0052】
したがって、プロットが図中に示した矢印Aの方向に向かうほど、被験者の自己否定感、自己嫌悪の感情が強いことを示す。また、プロットが図中に示した矢印Bの方向に向かうほど、被験者の自己肯定感及び自立心が強いことを示す。さらに、プロットは、図中に示した矢印Cの方向に向かうほど被験者の依存心が強いことを示し、矢印Dの方向に向かうほど、被験者の依存心が強く、自己肯定感が減少することを示す。
【0053】
また、図11に示した例では、プロットが画像の上に位置するほど被験者の自己要求が強く、自分自身で問題を解決しようとするため、被験者の問題意識が内省化、内在化する傾向がある。一方、プロットが画像の下に位置するほど被験者の他者要求が強く、他者に依存して問題を解決しようとするため、被験者の問題意識が外在化する傾向がある。
図11に示した表示データは、ディスプレイ28に表示してシステム管理者がカウンセリングや調査に利用することができる。また、PC4のディスプレイ4aに送って被験者が画像を見て自己の精神状態を把握することに利用することもできる。
【0054】
図12は、図11に示した表示データを生成するためのフローチャートである。第1カウンセリング実施部202は、具体的質問とイメージ的質問と主観的質問とを混在させてカウンセリングのデータを作成する(S111)。通信制御部29は、ステップS111において作成されたカウンセリングデータをPC4に提供する(S112)。提供されたカウンセリングデータは、PC4のディスプレイ4aに表示される。
【0055】
被験者は、PC4を使って複数の日にわたり、カウンセリングを実施する。実施されたカウンセリングの回答は通信制御部29によってWEBサーバ1に収集され(S113)、データベースサーバ2のDB21に蓄積される。この結果、カウンセリングに対する回答結果が複数の日にわたって記録される。
第1カウンセリング実施部202は、DB21に蓄積された回答を抽出して解析する。より具体的には、第1カウンセリング実施部202は、回答のうちのQ4に自己要求の記入があるか否か判断する(S114)。自己要求の記入があれば(S114:Yes)、Q4の回答に他者要求があるか否か判断する(S115)。他者要求の記入があれば(S115:Yes)、自己要求カウント、他者要求カウントを共にカウントしない(S116)。
【0056】
一方、第1カウンセリング実施部202は、ステップ114において自己要求が記入されていないと判断した場合(S114:No)、自己要求カウントを0にする(S123)。続いて他者要求の記入があるか否か判断し(S124)、他者要求の記入がある場合には(S124:Yes)、他者要求カウントを1カウントアップする(S125)。また、他者要求の記入もない場合(S124:No)、自己要求カウント、他者要求カウントを共にカウントしない(S116)。
【0057】
また、第1カウンセリング実施部202は、ステップ114において自己要求が記入されていて(S114:Yes)、かつ、他者要求が記入されていないと判断した場合(S115:No)、自己要求カウントを1カウントアップする(S122)。
次に、第1カウンセリング実施部202は、Q6の自己評価が「+」に設定されているか否か判断する(S117)。この結果、自己評価が「+」に設定されている場合には(S117:Yes)、自己評価カウントを1カウントアップする(S118)。一方、ステップS117において自己評価が「+」に設定されていない場合(S117:No)、自己評価が「−」に設定されているから、自己評価カウントを1カウントダウンする(S121)。
【0058】
第1カウンセリング実施部202は、以上のようにしてカウントされたカウント値に基づいてプロットの座標を決定する(S119)。すなわち、自己評価カウントが1カウントアップされていれば、横軸の座標は、図10に示した自己イメージ(+)側に1つ移動する。また、自己要求カウントが1カウントアップされていれば、縦軸の座標は、自己要求の方向(図中では上)に1つ移動することになる。
【0059】
表示データは、第1カウンセリング実施部202によって決定された座標に順次プロットを記すことによって生成され、ディスプレイ28等に表示される(S120)。画像中のプロット同士を線で接続することにより、画像は、解析結果を示すプロットの経時的な変化を示すことができる。
このような本実施形態のカウンセリングシステムは、「通常ならこの程度のストレスなら耐えられる」、「1年間も経てば立ち直る」といった一般的、客観的な基準ではなく、各被験者が実際に感じている主観的な感情である「思い」を判断することができる。なお、ここでいう「思い」とは、客観的に把握できる事実を指す情報ではなく、回答者が主観的に感じた情動を伴う情報であって、イメージ情報あるいは主観情報とも呼ばれる。イメージ情報には、感情の情報と感知された事柄の情報とが含まれる。このような実施形態1では、回答者の思いをより正確に判断し、様々な分野に有効な情報を得ることができる。
【0060】
例えば、本実施形態のカウンセリングシステムを、ストレスによる精神疾患等の治療に使用すれば、患者が主観的に感じるストレスや感情を正確に抽出し、指導に役立てることができる。
また、災害や事件等によって心的外傷を負った患者に対し、心的外傷の治癒の程度の指標を得ることができる。さらに、本実施形態のカウンセリングシステムを、食事や運動といった生活習慣に起因する糖尿病等の患者に使用すれば、食事制限や運動の義務付けに対する患者の主観的なストレスの程度を外部から把握して適切な指導をすることができる。
さらに、犯罪等によって矯正中の者にカウンセリングを提供してカウンセリングすれば、被験者が感じる主観的な意識の変化や刑罰に対して感じるストレスの指標を得ることができる。このような指標は、矯正を適正に行うために有効な情報であるといえる。
【0061】
・閾値設定
次に、本実施形態の閾値設定部203によってなされる閾値の設定につい説明する。閾値設定部203は、第1のカウンセリングによって得られる被験者の自己肯定感、自立心及び依存心の程度を判断するための閾値を設定する。自己肯定感、自立心及び依存心の程度は、第1のカウンセリングにおける被験者の自己否定感を示すデータの入力回数、第1のカウンセリングにおける被験者の他者に対する依存要求(本実施形態では他者要求)を表すデータの入力回数によって表されるものとする。
【0062】
具体的には、本実施形態では、Q4の回答において他者要求を示す座標が連続して大きくなる方向に所定の回数(N1回)以上移動した場合に第1カウンセリングとは異なるカウンセリングを実施する。また、Q6の回答において自己のマイナスイメージを示す座標が連続して大きくなる方向に所定の回数(N2回)以上移動した場合に第1カウンセリングとは異なるカウンセリングを実施する。つまり、本実施形態では、上記したN1回、N2回を閾値とし、閾値設定部203は、閾値N1及びN2の値を決定する。
【0063】
また、本実施形態では、閾値設定部203が、閾値N1及びN2の値と共に、閾値N1、N2を使って選択された被験者をさらに選別するために使用される心理テストの種別や心理テストの得点を決定する。このような心理テスト及び得点をも本実施形態の閾値に含まれる。
閾値N1及びN2は、第1のカウンセリングによって心理状態が改善された被験者と改善されなかった被験者とを判別するための閾値である。また、心理テストの種別や心理テストの得点は、心理テストの結果によって第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と、改善が期待できない被験者とを判別するための閾値である。
【0064】
図13、図14は、本実施形態のカウンセリングシステムが閾値を設定する方法を説明するためのフローチャートである。図2に示した閾値設定部203は、図13、図14に示した方法をコンピュータによって実行するためのコンピュータプログラムである。図示したように、閾値設定部203は、第1カウンセリングのQ6において自己イメージのマイナスが入力されたか否か判断する(S131)。
【0065】
自己イメージマイナスの入力とは、図11に示したプロットが自己イメージのマイナス側に移動することをいい、Q6においてボタン71のマイナスが選択された場合をいう。また、自己イメージプラスの入力とは、図11に示したプロットが自己イメージのプラス側に移動することをいい、Q6においてボタン71のプラスが選択された場合をいう。
【0066】
自己イメージのマイナスが入力された場合(S131:Yes)、閾値設定部203は、自己イメージマイナスが連続して入力された回数のカウントを1つカウントアップする(S135)。また、自己イメージのマイナスが入力されなかった場合(S131:No)、閾値設定部203は、自己イメージプラスが入力されたか否か判断する(S132)。自己イメージプラスが入力された場合(S132:Yes)、自己イメージのマイナスの連続入力が終了したとして自己イメージマイナスが連続して入力された回数をデータとして取得する(S136)。取得されたデータは、例えば、DB21に蓄積される。
【0067】
閾値設定部203は、以上のようにして取得されたデータが閾値設定に充分な量蓄積されたか否か判断する(S133)。この結果、データ量が閾値を設定できる量に満たないと判断された場合には再び自己マイナスイメージの入力について判断する。また、閾値の設定ができると判断された場合には(S133:Yes)、閾値を設定する処理をする。
なお、ステップS132において、自己イメージプラスの入力もなされていないと判断された場合(S132:No)、本実施形態では、データとして採用することなくデータ量の判断をするものとした。
【0068】
また、閾値設定部203は、Q4において、他者要求がプラスになったか否か判断する(S141)。他者要求がプラスになったとは、図11に記したプロットが他者要求のプラス側に移動したことをいい、自己要求の回答の欄に記入がなく、他者要求の解答欄にのみ何らかの文字情報が記入されている場合に該当する。また、他者要求0とは、自己要求、他者要求の回答の欄に記入がある、または両方の回答欄に記入がない、さらに自己要求の回答の欄にのみ記入がある場合に該当する。
【0069】
ステップS141において、他者要求プラスと判断された場合(S141:Yes)、閾値設定部203は、他者要求プラスが連続して入力された回数のカウントを1つカウントアップする(S145)。また、他者要求プラスにならなかった場合(S141:No)、閾値設定部203は、他者要求が0であるか否か判断する(S142)。他者要求0である場合(S142:Yes)、他者要求プラスの連続入力が終了したとして他者要求プラスが連続した回数をデータとして取得する(S146)。取得されたデータは、例えば、DB21に蓄積される。
【0070】
閾値設定部203は、以上のようにして取得されたデータが閾値設定に充分な量蓄積されたか否か判断する(S143)。この結果、データ量が閾値を設定できる量に満たないと判断された場合には再び自己マイナスイメージの入力について判断する。また、閾値の設定ができると判断された場合には(S143:Yes)、閾値を設定する処理をする。
なお、ステップS142において、入力が他者要求0にも該当しないと判断された場合(S142:No)、本実施形態では、データとして採用することなくデータ量の判断をするものとした。
【0071】
図15(a)、(b)は、図13のステップS134の処理を具体的に説明するための図である。(a)は、心理テストの得点を縦に、自己イメージマイナスが連続して入力された回数を横にとって示したテーブルである。(b)は、(a)に示したカットオフポイント151を決定する方法を示した図である。心理テストには複数の種別があって、図15は、このうちの自己否定感尺度の心理テストについて記したものである。
【0072】
閾値設定部203は、自己イメージマイナスが入力されると、自己イメージマイナスの入力が連続してなされた回数をデータとして取得する。そして、取得した回数と、自己イメージマイナスを入力した被験者の心理テストの得点との両方に一致する欄に、データ取得の回数を順次記録していく。
この結果、図15(a)には、例えば、心理テストの得点が3点〜4点の被験者が、連続して3回〜6回自己イメージマイナスを入力した回数が欄152に記録される。また、心理テストの得点が3点〜4点の被験者が、連続して14回以上自己イメージマイナスを入力した回数が欄153に記録される。
【0073】
閾値設定部203は、各欄に記録された入力回数に応じてカットオフポイント151を設定する。そして、カットオフポイント151を基準にして自己イメージマイナスの連続回数を決定し、この回数を閾値N1及び閾値得点に設定する。
図示した例では、図15(a)に示したテーブルにおいて、カットオフポイント151が心理テストの得点10点と11点との境界線と連続入力回数10回と11回との境界線の交点となっている。このような場合、入力回数の全データは2つの境界線によって4つのグループO、P、Q、Rに分けられる。
【0074】
自己否定感尺度の心理テストでは、概ね得点が低い被験者が第1カウンセリングによる心理状態の向上が期待できるとされ、得点の高い被験者が心理状態の向上が期待し難いとされている。また、第1カウンセリングでは、自己イメージマイナスの連続入力回数が多い場合よりも少ない場合にカウンセリングの効果が上がったと判断する。
このため、4つのグループO、P、Q、Rのうち、グループOのデータは、カウンセリング効果が上がるべき人に効果が上がった例であるといえる。また、グループPのデータはカウンセリング効果が上がるべき人に効果が上がらなかった例、グループQのデータはカウンセリング効果が上がらないはずの人に効果が上がらなかった例である。グループRのデータは、カウンセリング効果が上がるべき人に効果が上がらなかった例であるといえる。
【0075】
本実施形態では、グループOを真陽性、グループPを偽陰性、グループQを真陰性、グループRを偽陽性という。
次に、カットオフポイント151の決定の方法を、図15(b)を使って説明する。図15(b)は、カットオフポイントを決定する得点と連続入力回数との組み合わせ(図15(a)における位置)を変化させることによって変化させた真陽性、真陰性、擬陽性、偽陰性の各データ数の割合を示す図である。データの縦軸は感度、横軸はデータの特異度を1から減じた値(1−特異度)を示したグラフである。感度、特異度は、以下の式によって表される。
【0076】
感度 = 真陽性のデータ数/(真陽性のデータ数+偽陽性のデータ数)
特異度= 真陰性のデータ数/(真陰性のデータ数+偽陰性のデータ数)
(1−特異度=偽陰性のデータ数/(真陰性のデータ数+偽陰性のデータ数))
図15(b)のようにしてデータを表示すると、データは、図中に示す曲線150のように表される。カットオフポイント151は、曲線150のカーブが最も大きく変化する点、あるいは1−特異度の値が最小値になる点に設定される。このようにすれば、真陽性に属するデータ数の陽性における割合が大きくなるように閾値N1、N2を設定することができる。あるいは、陰性に属するデータ数の陰性における割合が小さくなるように閾値N1、N2を設定することができる。
【0077】
なお、カットオフポイントを決定する理想的な線とは、一点鎖線で示した線154のように、感度100%、1−特異度が0%の近傍で略90度にカーブする線をいう。線154が示す線を使ってカットオフポイントを設定できれば、カウンセリング効果が期待できる被験者を正確に抽出することができ、しかもカウンセリング効果が期待できたにも関わらずカウンセリング効果が上がらなかった被験者を極力少なくすることができる。すなわち、カウンセリング効果を正しく予想することができる閾値を設定することができる。線の形状は、心理テストの種別によって変化するため、本実施形態では、後に述べるように、図15(b)に示した曲線150から、カウンセリング効果の予想に使用される心理テストを選定している。
【0078】
図16(a)、(b)は、図14のステップS144の処理を具体的に説明するための図である。(a)は、心理テストの得点を縦に、自己イメージマイナスが連続して入力された回数を横にとって示したテーブルである。(b)は、(a)に示したカットオフポイント161を決定する方法を示した図である。心理テストには複数の種別があって、図16は、このうちの対人依存度の心理テストについて記したものである。
【0079】
閾値設定部203は、他者要求がプラスになると、他者要求が連続してプラスになった回数をデータとして取得する。そして、取得した回数と、他者要求プラスになった被験者の心理テストの得点との両方に一致する欄に、データ取得の回数を順次記録していく。
この結果、図16(a)には、例えば、心理テストの得点が3点〜4点の被験者が、連続して3回〜6回他者要求がプラスになった回数が欄162に記録される。また、心理テストの得点が3点〜4点の被験者が、連続して14回以上他者要求がプラスになった回数が欄163に記録される。
【0080】
閾値設定部203は、各欄に記録された入力回数に応じてカットオフポイント161を設定する。そして、カットオフポイント161を基準にして他者要求プラスの連続回数を決定し、この回数を閾値N2に設定する。
図示した例では、図16(a)に示したテーブルにおいて、カットオフポイント161が心理テストの得点10点と11点との境界線と連続入力回数6回と7回との境界線の交点となっている。このような場合、入力回数の全データは2つの境界線によって4つのグループO、P、Q、Rに分けられる。
【0081】
対人依存行動特性の心理テストにおいても、概ね得点が低い被験者が第1カウンセリングによる心理状態の向上が期待できるとされ、得点の高い被験者が心理状態の向上が期待し難いとされている。また、第1カウンセリングでは、他者要求の連続回数が多い場合よりも少ない場合にカウンセリングの効果が上がったと判断する。図16に示した例でも、グループOを真陽性、グループPを偽陰性、グループQを真陰性、グループRを偽陽性という。
【0082】
次に、カットオフポイント161の決定の方法を、図16(b)を使って説明する。図16(b)は、カットオフポイントを決定する得点と連続入力回数との組み合わせ(図16(a)における位置)を変化させることによって変化させた真陽性、真陰性、擬陽性、偽陰性の各データ数の割合を示す図である。図16(b)においても、縦軸にはデータの感度を、横軸にはデータの特異度を1から減じた値(1−特異度)を示している。図16(b)のようにしてデータを表示すると、データは、図中に示す曲線160のように表される。カットオフポイント161は、曲線160のカーブが最も大きく変化する点、あるいは1−特異度の値が最小値になる点に設定される。
【0083】
さらに、本実施形態では、図15(b)や図16(b)に示した1つの曲線のみによってカットオフポイントを決定するものに限定されるものではない。すなわち、図17に示すように、曲線150、曲線160を合成してより理想的な曲線に近い曲線170を生成し、曲線170を使ってカットオフポイントを設定するようにしてもよい。このようにする場合、後述する第2カウンセリングとして実施される心理テストは、曲線170を得るように合成された曲線を得た心理テストを複数選択して行われる。
【0084】
以上述べた本実施形態は、カウンセリングの効果が期待でき、かつ、実際に心理状態が向上した被験者の数が最大値をとるように、あるいはカウンセリング効果が期待できたにも関わらず心理状態の向上が見られなかった被験者が最小になるようにカットオフポイントを設定することができる。
そして、このようにカットオフポイントを設定することにより、本実施形態は、第1カウンセリングによって心理状態が向上するか否かを判定するための適正な閾値N1、N2を設定することができる。
【0085】
なお、以上述べた本実施形態は、第1カウンセリングの過程でカットオフポイントを設定するためのデータ収集をしているが、本実施形態はこのような構成に限定されるものではない。SAT法によるカウンセリングの研究者らは、多数の被験者に対して行った第1カウンセリングにおける自己イメージマイナスの連続入力回数や、他者要求プラスの連続カウント回数と各心理テストの結果との関係のデータを取得している。本実施形態は、例えば、複数の被験者に心理テストを実施し、予め取得されているカウント回数のデータに心理テストの得点を対照してカットオフポイントを決定するもできる。
【0086】
さらに、本実施形態は、収集されたデータと予め取得されているデータのいずれか一方だけを使用するものに限定されるものではなく、少なくとも一方を使うものであればよい。例えば、第1カウンセリングの実施開始時には予め取得されているデータを使って決定したカットオフポイントによって決定された閾値を使用し、データが取得されるうちにカットオフポイントを取得されたデータを使って修正、更新するものであってもよい。
【0087】
・被験者の選択及び第2カウンセリング
次に、本実施形態の閾値による被験者の選択と、選択された被験者に対する第2カウンセリングについて説明をする。
被験者選択部206は、閾値設定部203によって設定された閾値N1、N2を使って第2カウンセリングの実施を受ける被験者を選択する。第2カウンセリング実施部204は、閾値設定部203によって設定された閾値N1、N2を使って選択された被験者に第2カウンセリングを実施する。
【0088】
図18は、被験者選択部206が第1カウンセリングのQ6を使って被験者を選択し、第2カウンセリング実施部204が第2カウンセリングを実施するまでの一連の処理を説明するためのフローチャートであって、被験者選択部206及び第2カウンセリング実施部204によって実行される。図18に示した処理のうち、ステップS181〜185は被験者選択部206によって実行される処理である。また、ステップS185〜191は第2カウンセリング実施部204によって実行される処理である。
【0089】
I 被験者の選択
被験者選択部206は、第1カウンセリングの実施中、Q6において自己イメージのマイナスが入力されたか否か判断する(S181)。この結果、自己イメージのマイナスが入力されない場合には(S181:No)、自己イメージプラスが入力されたか否か判断する(S182)。自己イメージプラスも入力されていない場合(S182:No)、次回の第1カウンセリングのQ6の回答に備えて待機する。また、自己イメージプラスが入力された場合(S182:Yes)、自己イメージマイナスの連続入力が終了したから、自己イメージマイナスのカウント値が閾値N1に達したか否か判断する(S184)。
【0090】
また、ステップS181において、自己イメージマイナスが入力されたと判断された場合(S181:Yes)、被験者選択部206は、自己イメージマイナスのカウントを1つカウントアップする(S183)。そして、自己イメージマイナスのカウント値が閾値N1に達したか否か判断する(S184)。
自己イメージマイナスのカウント値が閾値N1に達した場合(S184:Yes)、第1カウンセリング実施部202は第1カウンセリングの実施を中断し、被験者選択部206は、マイナス自己イメージカウントをリセットする(S185)。そして、心理テストを実施する(S186)。なお、この際、被験者選択部206は、第1カウンセリングとは異なるカウンセリングである心理テストを実施するので、本実施形態の第2カウンセリングとしても機能するものとなる。
【0091】
II 第2カウンセリング
前記したように、閾値設定部203は、1または複数の心理テストの結果を使ってカットオフポイントを設定する。被験者選択部206は、ステップS186において、カットオフポイントの設定に使用された心理テストを実行する。そして、この合計得点によって被験者を選別し、被験者に対して実施される第2カウンセリングの種別を決定する。
図18に示した例では、心理テストの得点をT1以下、T1〜T2未満、T2以上の3段階に分けている。得点T1、T2は、T2>T1の関係にあって、得点が低いほど第1カウンセリングによる心理状態の改善が期待できることを示している。なお、得点T1、T2、T3は、いずれも本実施形態の被験者を選択するための閾値であって、心理状態の改善が期待される被験者と改善が期待できない被験者とを判別するための閾値である。
【0092】
閾値であるT1、T2は、カットオフポイントに基づいて決定される。つまり、T1は、連続入力回数を決定したカットオフポイントの得点よりも小さい値に設定され、T2は、この得点よりも大きい値に設定される。このようにT1、T2を決定することにより、本実施形態は、被験者を、カウンセリングによる心理状態の改善の期待度に沿って適正に判別し、以降被験者の状態に適したカウンセリングを実施することが可能になる。
【0093】
閾値N1回以上連続してマイナス自己イメージを入力した被験者の心理テストの合計得点がT1以下であった場合、この被験者は第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が高い。このため、被験者選択部206は、第1カウンセリング実施部202を呼び出して第1カウンセリングに戻り、この被験者に引き続き第1カウンセリングを受けさせる(S191)。
【0094】
また、被験者の心理テストの合計得点がT1〜T2未満であった場合、この被験者は第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が中程度であると考えられる。被験者選択部206は、第2カウンセリング実施部204を呼び出す。第2カウンセリング実施部204は、第2カウンセリングであるイメージ法によるカウンセリングを被験者に対して実施し(S190)、カウンセリングの終了後、被験者を第1カウンセリングの処理に戻す(S191)。
【0095】
なお、イメージ法とは、被験者に自身の状態をイメージさせるイメージ療法である。イメージ法には、「未来自己イメージ法」、「進化遡及イメージ法」等がある。このようなイメージ法は、いずれも被験者が自己変容の目標を自身で設定するものである。例えば、未来自己イメージ法では、被験者に対し、「先祖代々、子が親に充分愛され、あなたの両親も祖父母に充分愛され、自分の満足した生き方ができたと仮定し、それを映像化してください。」といったメッセージを送る。
【0096】
さらに、第2カウンセリング実施部204は、映像によって自身の状態をイメージした被験者に対し、「あなたには強力なスポンサーがいて、ほとんど無制限に面倒や支援してもらえると仮定すれば、あなたがこれからやってみたい、「楽しいこと、リラックスすること、幸せなこと、元気が出ること」は何ですか等と質問する。被験者は、このような質問に対して思いついたことを書き出し、第2カウンセリング実施部204に返信する。
【0097】
イメージ法は、被験者にこのようなイメージを想起させることによって被験者の心理状態を向上させることを目的にしてなされるものである。第2カウンセリング実施部204は、カウンセリングの終了後、被験者を第1カウンセリングの処理に戻す(S191)。
また、被験者の心理テストの合計得点がT2以上であった場合、この被験者は第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が低いと考えられる。被験者選択部206は、第2カウンセリング実施部204を呼び出す。第2カウンセリング実施部204は、不安の状態の測定を実施するSDS検査や、特性的不安を測定するSTAI検査を実施する(S187)。
【0098】
さらに、第2カウンセリング実施部204は、ステップS187において実施された結果に基づいて、被験者に異常があるか否かを判断する(S188)。判断の結果、異常がない場合(S188:Yes)、第2カウンセリング実施部204は、被験者にイメージ法によるカウンセリングを実施し(S190)、被験者を第1カウンセリングに戻す(S191)。
【0099】
一方、ステップS188において、異常があると判断された場合(S188:No)、メッセージ作成部205が保健指導を推奨するメッセージを表示するデータを生成して送信し、ディスプレイ4a等を介して被験者に提供する(S189)。
なお、保健指導を推奨するメッセージとは、カウンセリング指導を受けるための情報の一例である。カウンセリング指導を受けるための情報とは、対面カウンセリング等のメンタルヘルス向上のための保健指導に関する情報をいい、より具体的には、対面カウンセリングが受けられる機関や病院、カウンセラーの連絡先を含む情報である。
【0100】
ただし、図18は、一連の基本的な処理を例示したものであって、ここで説明した処理を一部略すものであってもよいし、他の処理を加えるものであってもよい。また、説明したな処理を適宜変更、修正してもよいことはいうまでもない。
図18に示した処理に加えられる処理とは、例えば、得点がT1〜T2未満の被験者に対して「どんな自分だといいですか?」との質問をし、被験者の自己イメージを明瞭にするものがある。また、処理の変更とは、例えば、マイナス自己イメージが10回連続して入力されたことがN1回連続して起こったことによって第2カウンセリングを実施することが考えられる。このような処理は、マイナス自己イメージがN1回連続して入力されたことによって第2カウンセリングを実施する処理を変更したものである。
さらに、本実施形態は、心理テストの結果に加え、被験者の年齢や性別といった情報を考慮して第2カウンセリングの内容を決定するようにしてもよい。
【0101】
図19は、Q4の自己要求、他者要求の回答に基づいて被験者の自立心や依存心の程度を抽出し、第2カウンセリングを実施する場合の処理を説明するためのフローチャートである。図19に示した処理も、以上述べた図18の処理と同様に、被験者選択部206が、第1カウンセリングの実施中に連続して他者要求プラスになった回数をカウントする(S191、S192、S193)。
そして、被験者選択部206は、第2カウンセリング実施手段として機能し、カウントされた回数が閾値N2に達した被験者に対して心理テストを実施する(S196)。第2カウンセリング実施部204は、心理テストの得点に基づいて被験者を3つのグループに選別する。そして、第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が中程度の被験者に対してはイメージ法によるカウンセリングを実施する(S200)。
【0102】
また、第1カウンセリングによる心理状態の改善の期待度が低い被験者に対しては、不安の状態の測定を実施するSDS検査や、被験者が自身の攻撃性を自己診断するBAQ検査といった検査を実施する(S197)。そして、検査の結果に基づいて、保健指導を推奨するメッセージをPC4に送信する(S199)。
なお、以上述べた図13、図14、図18、図19に示した処理は、本実施形態のカウンセリング方法を説明している。このようなカウンセリング方法は、コンピュータプログラムであるカウンセリング制御プログラムによって実行することができる。
【0103】
本実施形態のカウンセリング制御プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、本実施形態のカウンセリング方法をコンピュータに実行させるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。
また、本実施形態のカウンセリング制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能なROM、フラッシュメモリ、メモリカード、USB接続型フラッシュメモリ等のメモリデバイスに記録されて提供されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の本実施形態のカウンセリングシステムの概念を説明するための図である。
【図2】図1に示したWEBサーバ及びデータベースサーバを説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態の心理テストの心理チェックリストを例示するための図である。
【図4】本発明の一実施形態のQ1、Q2、Q3を示すための図である。
【図5】本発明の一実施形態のQ4を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態のQ5を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態のQ6のうちのQ4における自己要求に関連する質問を示すための図である。
【図8】本発明の一実施形態のQ6のうちのQ4における他者要求に関連する質問を示すための図である。
【図9】本発明の一実施形態のQ7を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態のカウンセリングに対する回答例を示した図である。
【図11】本発明の一実施形態の表示データを説明するための図である。
【図12】本発明の本実施形態のカウンセリング方法及びカウンセリング制御プログラムを説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態のカウンセリングシステムが閾値を設定する方法を説明するためのフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態のカウンセリングシステムが閾値を設定する方法を説明するための他のフローチャートである。
【図15】図13のステップS134の処理を具体的に説明するための図である。
【図16】図14のステップS144の処理を具体的に説明するための図である。
【図17】図15(b)、図16(b)に示した曲線を合成して1つの曲線を生成することを説明するための図である。
【図18】図2に示した被験者選択部が第1カウンセリングのQ6を使って被験者を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】図2に示した被験者選択部が第1カウンセリングのQ4を使って被験者を選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0105】
1 WEBサーバ
2 データベースサーバ
3 入力フォーム
4 PC
4a,28 ディスプレイ
71 ボタン
101 解析プログラム
201 心理テスト実施部
202 第1カウンセリング実施部
203 閾値設定部
204 第2カウンセリング実施部
205 メッセージ作成部
206 被験者選択部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリングシステムであって、
ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段を備えたカウンセリング装置と、
前記カウンセリング装置によって提供された第1のカウンセリングのための質問を被験者に提示し、前記質問に対する被験者の回答を受付ける回答受付手段と、
を含み、
前記カウンセリング装置は、
前記第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを前記回答受付手段に提供する心理テスト提供手段と、
前記心理テスト提供手段によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定手段と、
前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択手段と、
前記被験者選択手段によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施手段と、
を備えることを特徴とするカウンセリングシステム。
【請求項2】
構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング装置であって、
ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段と、
前記第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供手段と、
前記心理テスト提供手段によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定手段と、
前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択手段と、
前記被験者選択手段によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施手段と、
を備えることを特徴とするカウンセリング装置。
【請求項3】
前記閾値決定手段は、
前記回答分析手段によって収集、分析された被験者の回答のデータ、構造化連想法によって得られた被験者の心理状態の予め取得されているデータ、の少なくとも一方を使って前記閾値を決定することを特徴とする請求項2に記載のカウンセリング装置。
【請求項4】
前記閾値決定手段は、
前記心理テストの結果によって第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と、改善が期待できない被験者とを判別するための閾値を決定し、前記第1のカウンセリングによって得られる被験者の自己肯定感、自立心及び依存心の程度によって前記第1のカウンセリングによって心理状態が改善された被験者と改善されなかった被験者とを判別するための閾値を決定することを特徴とする請求項2または3に記載のカウンセリング装置。
【請求項5】
前記閾値決定手段は、
第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と改善が期待できない被験者とを判別するための前記心理テストの得点、前記第1のカウンセリングにおける被験者の自己否定感を示すデータの入力回数、前記第1のカウンセリングにおける被験者の他者に対する依存要求を表すデータの入力回数の少なくとも1つを決定することを特徴とする請求項4に記載のカウンセリング装置。
【請求項6】
前記第2カウンセリング実施手段は、
前記心理テストによるカウンセリング、被験者に自身の状態をイメージさせるイメージ療法によるカウンセリング、カウンセリング指導を受けるための情報の提供をすることを特徴とする請求項2から請求項5に記載のカウンセリング装置。
【請求項7】
構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング方法であって、
ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供工程と、
前記心理テスト提供工程によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定工程と、
前記閾値決定工程において決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択工程と、
前記被験者選択工程において選択された被験者に対し、記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施工程と、
を含むことを特徴とするカウンセリング方法。
【請求項8】
構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング制御プログラムであって、
コンピュータに、
ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供機能と、
前記心理テスト提供機能によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定機能と、
前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択機能と、
前記被験者選択機能によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施機能と、
を実現させることを特徴とするカウンセリング制御プログラム。
【請求項1】
構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリングシステムであって、
ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段を備えたカウンセリング装置と、
前記カウンセリング装置によって提供された第1のカウンセリングのための質問を被験者に提示し、前記質問に対する被験者の回答を受付ける回答受付手段と、
を含み、
前記カウンセリング装置は、
前記第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを前記回答受付手段に提供する心理テスト提供手段と、
前記心理テスト提供手段によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定手段と、
前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択手段と、
前記被験者選択手段によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施手段と、
を備えることを特徴とするカウンセリングシステム。
【請求項2】
構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング装置であって、
ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングのための質問に対する回答を収集して分析する回答分析手段と、
前記第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供手段と、
前記心理テスト提供手段によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定手段と、
前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択手段と、
前記被験者選択手段によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施手段と、
を備えることを特徴とするカウンセリング装置。
【請求項3】
前記閾値決定手段は、
前記回答分析手段によって収集、分析された被験者の回答のデータ、構造化連想法によって得られた被験者の心理状態の予め取得されているデータ、の少なくとも一方を使って前記閾値を決定することを特徴とする請求項2に記載のカウンセリング装置。
【請求項4】
前記閾値決定手段は、
前記心理テストの結果によって第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と、改善が期待できない被験者とを判別するための閾値を決定し、前記第1のカウンセリングによって得られる被験者の自己肯定感、自立心及び依存心の程度によって前記第1のカウンセリングによって心理状態が改善された被験者と改善されなかった被験者とを判別するための閾値を決定することを特徴とする請求項2または3に記載のカウンセリング装置。
【請求項5】
前記閾値決定手段は、
第1のカウンセリングによる心理状態の改善が期待される被験者と改善が期待できない被験者とを判別するための前記心理テストの得点、前記第1のカウンセリングにおける被験者の自己否定感を示すデータの入力回数、前記第1のカウンセリングにおける被験者の他者に対する依存要求を表すデータの入力回数の少なくとも1つを決定することを特徴とする請求項4に記載のカウンセリング装置。
【請求項6】
前記第2カウンセリング実施手段は、
前記心理テストによるカウンセリング、被験者に自身の状態をイメージさせるイメージ療法によるカウンセリング、カウンセリング指導を受けるための情報の提供をすることを特徴とする請求項2から請求項5に記載のカウンセリング装置。
【請求項7】
構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング方法であって、
ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供工程と、
前記心理テスト提供工程によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定工程と、
前記閾値決定工程において決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択工程と、
前記被験者選択工程において選択された被験者に対し、記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施工程と、
を含むことを特徴とするカウンセリング方法。
【請求項8】
構造化連想法によるカウンセリングを実施して被験者が主観的に判断する自己肯定感及び自己否定感、自立心及び依存心の程度を抽出するカウンセリング制御プログラムであって、
コンピュータに、
ネットワークを介して被験者に提供された第1のカウンセリングとは異なる心理テストを実施するための心理テストデータを被験者に提供する心理テスト提供機能と、
前記心理テスト提供機能によって提供された心理テストの結果によって得られる被験者の心理状態と構造化連想法によって得られる被験者の心理状態とに基づいて、被験者の少なくとも一部を選択するための選択基準を決定する閾値決定機能と、
前記閾値決定手段によって決定された選択基準を使って被験者の少なくとも一部を選択する被験者選択機能と、
前記被験者選択機能によって選択された被験者に対し、前記第1のカウンセリングとは異なる第2のカウンセリングを実施する第2カウンセリング実施機能と、
を実現させることを特徴とするカウンセリング制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−293370(P2008−293370A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139587(P2007−139587)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(591091087)株式会社建設技術研究所 (18)
【出願人】(507172336)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(591091087)株式会社建設技術研究所 (18)
【出願人】(507172336)
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