説明

カウンターの支持構造

【課題】カウンターを床面上に支持するにあたり、カウンターと床面との間に障害物の無い空間を形成出来る手段を提供する。
【解決手段】矩形状の枠体構造を有する取付具10の縦フレーム部11を壁面の所定位置に固定し、この取付具10の上に間仕切り部材20を被せた後、横フレーム部12に取着した接合フレーム16上に、カウンター1の端縁部1aを載置し、接合フレーム16に下側から挿通させたボルトをカウンター1に埋設したインサート部材等に螺合させて締め付ける。これによりカウンター1が取付具10に強固に固定され、間仕切り部材20も容易には脱落しないように取着される。カウンター1と床面との間に障害物の無い連通空間が形成されるので、足元を広く使用でき、車椅子をカウンター1の下側で移動させるのが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面カウンターや作業カウンター等のカウンター部分を床面上に支持するための構造に関し、詳しくは、カウンターと床面との間に、なるべく障害物の無い空間を形成することの出来る手段の提供を目的とする。
【背景技術】
【0002】
洗面カウンター等を施工するに際し、カウンター部分を壁面へ取り付けるために採用されている手段の一つに、特許文献1,2に記載されるように、壁面に固定したブラケットでカウンターの下面を支持する構造がある。
【特許文献1】特開2001−275863公報
【特許文献2】特開2002−223971公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図12に示す如く、壁面Wに固定したブラケット3で、カウンター1の下面を支持する場合、カウンター1は重量物であるので、ブラケット3には十分な耐荷重強度を有するものを使用する必要がある。しかも、洗面器2を取り付けて洗面カウンターとする場合は、より一層の重量物となるので、これらの重量を支持するべく、ブラケット3の外形寸法は比較的大きくならざるを得ない。その結果、ブラケット3が、カウンター1と床面Fとの間の空間Sに干渉するおそれがあった。特に、車椅子Kの使用者が洗面器2及び水栓器具4を利用する場合、カウンター1の下方へ脚を入れることになるが、上記ブラケット3と脚とが干渉して、カウンター1の下面側における車椅子Kの円滑な移動を困難にするおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が前記従来の問題点を解決するために創案したカウンターの支持構造の特徴とするところは、請求項1に記載する如く、少なくともカウンターの左右いずれか一方側を、当該カウンターの端縁部に隣接して配置した取付具又は当該端縁部の上方に配置した取付具によって床面上に支持するための構造であって、前記取付具は、前記カウンターより上方に配置され且つ壁面に固定される縦フレーム部と、前記カウンターの端縁部を支持する横フレーム部とを有し、前記縦フレーム部及び横フレーム部によって間仕切り部材が支持されることにある。なお本発明の実施にあたり、前記取付具は、カウンターの左右いずれか一方側の端縁部を支持するのに用いてもよく、あるいは、左右両側の端縁部支持に用いてもよい。
【0005】
前記支持構造において、請求項2に記載する如く、前記縦フレーム部の上端部と、前記横フレーム部の先端部とを連結フレーム部によって連結して、前記取付具を枠体状に構成し、間仕切り部材を前記取付具に対し着脱可能とすることが可能である。
【0006】
上記の場合、請求項3に記載の如く、前記縦フレーム部と前記横フレーム部と前記連結フレーム部によって構成される枠体の内部に、格子構造を設けてもよい。
【0007】
あるいは請求項4に記載の如く、前記縦フレーム部と前記横フレーム部と前記連結フレーム部によって構成される枠体の内部に、収納棚を設けてもよい。
【0008】
さらには請求項5に記載の如く、前記縦フレーム部と前記横フレーム部と前記連結フレーム部によって構成される枠体を挟んで面状の間仕切り部材を装着し、当該間仕切り部材間の空隙に配管を設けると共に、当該配管に接続した水栓器具を、前記間仕切り部材の表面に取り付けることも可能である。
【0009】
なお本発明に係るカウンターの支持構造は、請求項6に記載するように、前記カウンターにおける前記取付具によって支持される端縁部の下方を、床面との間に障害物の無い連通空間と成すことができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載する支持構造によれば、カウンターの端縁部に隣接させた取付具又は当該端縁部の上方に配置した取付具における縦フレーム部を、カウンターよりも上方で壁面へ固定すると同時に、横フレーム部でカウンター端縁部を床面上に支持するから、カウンターと床面との間に、障害物の無い空間を形成することが可能である。また、取付具で間仕切り部材を支持するから、当該取付具をカウンターの上部空間の間仕切り部材として機能させることが出来る。従って、本発明を利用してカウンターを施工すれば、観察者に対し、取付具は間仕切りとしての外観を呈することになり、取付具として意識させるとがなくなるので、美観性が向上する。
【0011】
請求項2に記載する如く、取付具を枠体状に構成し、間仕切り部材を取付具に対し着脱可能とした場合は、間仕切り部材の保守・交換が容易になり、所望に応じて、色調や模様等の外観が異なる間仕切り部材を選択できるから、意匠性が向上する。また、完全遮光、30%遮光、50%遮光、透明など、施工環境に応じて、透光性が異なる部材を適宜選択できる。
【0012】
請求項3に記載の如く、取付具の枠体内部に格子構造を設けた場合は、視覚的な圧迫感の少ない間仕切りを提供できる。また、鏡体や照明装置などの付属品を装着するのが容易になる。
【0013】
請求項4に記載の如く、取付具の枠体の内部に収納棚を設けた場合は、収納機能を発揮させることができる。
【0014】
請求項5に記載の如く、枠体を挟んで装着した間仕切り部材間の空隙に配管を設け、水栓器具を間仕切り部材の表面に取り付けた場合は、カウンター上の水栓器具を省略できるから、カウンターの上面を広く利用することが可能となる。あるいは、従来より奥行き寸法の狭いカウンターを使用することが可能となる。水栓器具の位置を手前側に配置できるから、特に小児や高齢者・身障者にとって水栓器具を使い易くなる。
【0015】
なお本発明によれば、請求項6に記載の如く、カウンターの端縁部下方に、床面との間に障害物の無い連通空間を形成できるから、足元の開放性が高い非常にすっきりしたカウンター構造を提供でき、車椅子の利用者は移動が大変容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明に係る支持構造を用いた洗面カウンターの施工状況の一例を示すものであって、図1は、洗面器2及び水栓器具4等が配設されるカウンター1と、カウンター1の端縁部1aに隣接して配置される取付具10と、間仕切り部材20とを分解して示す図面、図2(A)は、洗面カウンターの施工後の状況を示す斜視図、同図(B)はカウンター1の支持構造の要部を示す拡大断面図である。
【0017】
図1に示す如く、カウンター1を壁面へ取り付けるための取付具10は、垂直方向の縦フレーム部11と、水平方向の横フレーム部12と、縦フレーム部11の上端部及び横フレーム部12の先端部それぞれに連結される起立部13及び水平部14から成る連結フレーム部15とからなり、これらが一体に構成されて矩形状の枠体構造を構築している。縦フレーム部11はカウンター1の上方に相当する位置において壁面に固定される。横フレーム部12は、直接、カウンター1の端縁部1aに固定することも可能であるが、本例では、接合フレーム16を介して連結する構成を採用している。これについては後述する。取付具10の材質は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミ等の金属の外、セラミック、プラスチック、FRPも考えられる。
【0018】
間仕切り部材20は、様々な形態が考えられるが、本例では、取付具10へ上方又は側方から被せて、取付具10の全体を覆う形態とした。間仕切り部材20の材質は、プラスチック、セラミック、ガラス、金属、木質など、所望する意匠性に応じた種類を選択すればよい。
【0019】
前記取付具10を用いたカウンター1の取り付けは、まず、カウンター1の間口寸法に合わせて所定位置へ配置した取付具10の縦フレーム部11を、ボルト又はビス5(図2(B)参照)で壁面に固定し、次いで、この取付具10の上に間仕切り部材20を被せた後、図2(B)に示すように、横フレーム部12に接合フレーム16を、ボルト6等を用いて取着する。しかるのち、カウンター1の左右両端縁部1aをそれぞれ、接合フレーム16上に載置し、接合フレーム16に下側から挿通させたボルト7等を、カウンター1に埋設したインサート部材8等に螺合させて締め付ける。これにより、カウンター1を取付具10に強固に固定することができる。このとき、間仕切り部材20も、容易には脱落しないように取着される。
【0020】
かかる構成によれば、カウンター1と床面との間に、障害物の無い連通空間が形成されるので、足元を広く使用することができ、車椅子をカウンター1の下側で移動させるのが容易になる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3及び図4に示す実施形態は、横フレーム部12とカウンター端縁部1aとを結合する手段として、平板状の接合部材17を用いた点、及び、間仕切り部材21(a),21(b)は取付具10の対向する両面に取着した点が、前記と相違する。なお、平板状の接合部材17を横フレーム部12へ固着する手段は、ビス、ボルトのほか、あらかじめ溶接で固定することも可能である。
【0022】
(第3の実施形態)
図5は、取付具10の異なる形態を示すものである。本例の取付具10は、横フレーム部12を着脱可能とすると共に、その取着位置を変更して、カウンター1の高さ調整が出来るように構成した。このため、横フレーム部12における長手方向の両端部に、起立片12aを立設すると共に、取付具10における縦フレーム部11及び連結フレーム部15の起立部13に多数のネジ穴11a,13aを形成した。起立片12aの螺着位置を変更することで、横フレーム部12の高さ位置が調整可能である。
【0023】
(第4の実施形態)
図6は、取付具10において、横フレーム部12を着脱可能とすると共に、その取着位置を変更可能にするための異なる手段を示すものである。本例では、横フレーム部12を平板状に形成し、取付具10における縦フレーム部11及び連結フレーム部15の起立部13に多数の溝部11b,13bを形成した。横フレーム部12を挿入する溝部11b,13bの位置を変更することで、横フレーム部12の高さ位置が調整可能である。
【0024】
(第5の実施形態)
図7(A)に示すように、枠体状の取付具10に対し、間仕切り部材22を着脱可能にした場合、この間仕切り部材22の材質をさまざまに変更することで、多様な意匠性を与えることが可能となる。例えば、間仕切り部材22の透光性を増減させることで、適度な明るさを設定できる。あるいは、透明にしたり、反対に全く遮光する場合も考えられる。間仕切り部材22の色調や模様を選択することで、所望の美観性を発揮させることが出来る。また、間仕切り部材22を鏡体とすることも可能である。なお、間仕切り部材22を着脱可能とすることにより、汚損や損傷を受けた場合に、容易に交換できるという利点を有している。
【0025】
(第6の実施形態)
図7(B)は、枠体状の取付具10に格子構造23を設け、これを間仕切りとした例である。格子構造23は、隣接領域との部分的に連通する箇所を有しているため。視覚的な圧迫感が少ないという利点を有している。また格子構造23は、鏡体31や照明器具32等の付属品を取り付けるのが容易であるという利点を有している。
【0026】
(第7の実施形態)
図8(A)は、取付具10の表面を間仕切り部材24で覆うと共に、内部に配管(図示せず)を設け、この配管に接続した水栓器具33を、間仕切り部材24の表面に取着した例を示すものである。なお本例の場合、洗面器2が、間仕切り部材24の比較的近くに位置していることが望ましい。本例では、カウンター1上面から水栓器具を無くせるから、カウンター1の上面を広く利用できる。あるいは、奥行きの短いコンパクトなカウンター1でも、各種作業を余裕を持って行える。さらに、カウンター1の前端から水栓器具33までの距離が短くなるから、小児・高齢者・身障者にとって、水栓器具33を使用し易くなるという利点が得られる。
【0027】
(第8の実施形態)
図8(B)に示すように、枠体状の取付具10の内部に棚板25aを配設し、間仕切り部材25を収納棚として利用することも考えられる。
【0028】
(第9の実施形態)
図9(A)に示すように、取付具10を、直角に連接した縦フレーム部11及び横フレーム部12のみで製作することも可能である。あるいは同図(B)に示すように、縦フレーム部11の上端部と横フレーム部12の先端部とを、直線状の連結フレーム部15で連結することにより、取付具10の形態を、ほぼ三角形の枠体状とすることも可能である。なお本実施形態では、取付具10の横フレーム部12を、カウンター1の上面へ直接固定する構造を採用している。
【0029】
(第10の実施形態)
取付具10は、カウンター1の左右いずれか一方の端縁部を支持すれば良い。従って、図10に示すように、カウンター端縁部1aの一方を壁面Wに当接させて設置する場合、壁面W側の端縁部1aは下面側に配置したブラケット3で支持し、反対側の端縁部1aは本発明の取付具10で支持する構成が考えられる。これにより、カウンター1下面と床面Fとの間の空間Sと、その外側の空間との間が、何も障害物のない連通空間Pに形成されるから、足元の開放性に優れ、車椅子の利用者の移動がきわめて容易になる。
【0030】
(第11の実施形態)
図11に示すように、間仕切り部材20の奥行き寸法Yを、カウンター1の奥行き寸法Xよりも大きく設定することが可能である。かかる構成によれば、間仕切り部材20がカウンター1の側端面全体を覆うので、美観性を向上させることができる。なお本例において、取付具10及び間仕切り部20両方の奥行き寸法Yを共にカウンター奥行き寸法Xより大きくしてもよいが、間仕切り部材20のみ大きい寸法とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に関するものであって、カウンターと取付具と間仕切り部材とを分解して示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に関するものであって、図(A)は洗面カウンターの施工後の状況を示す斜視図、図(B)はカウンター端縁部の支持構造を示す要部を拡大した正面断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に関するものであって、カウンターと取付具と間仕切り部材とを分解して示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に関するものであって、図(A)は洗面カウンターの施工後の状況を示す斜視図、図(B)はカウンター端縁部の支持構造を示す要部を拡大した正面断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に関するものであって、図(A)は取付具の分解斜視図、図(B)は取付具の組付け状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に関するものであって、図(A)は取付具の分解斜視図、図(B)は取付具の組付け状態を示す斜視図である。
【図7】図(A)は本発明の第5の実施形態を示す斜視図、図(B)は本発明の第6の実施形態を示す斜視図である。
【図8】図(A)は本発明の第7の実施形態を示す斜視図、図(B)は本発明の第8の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の第9の実施形態に関するものであって、図(A)は異なる態様の取付具の斜視図、図(B)はさらに異なる態様の取付具の斜視図である。
【図10】本発明の第10の実施形態に関するものであって、図(A)は洗面カウンターの異なる施工状況を示す斜視図、図(B)は同施工状況の正面断面図である。
【図11】本発明の第11の実施形態に関するものであって、洗面カウンターの施工状況を示す斜視図である。
【図12】従来の洗面カウンターの施工状況を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…カウンター 2…洗面器 3…ブラケット 4…水栓器具 10…取付具 11…縦フレーム部 12…横フレーム部 15…連結フレーム部 16…接合フレーム 20…間仕切り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカウンターの左右いずれか一方側を、当該カウンターの端縁部に隣接して配置した取付具又は当該端縁部の上方に配置した取付具によって床面上に支持するための構造であって、前記取付具は、前記カウンターより上方に配置され且つ壁面に固定される縦フレーム部と、前記カウンターの端縁部を支持する横フレーム部とを有し、前記縦フレーム部及び横フレーム部によって間仕切り部材が支持されることを特徴とするカウンターの支持構造。
【請求項2】
前記縦フレーム部の上端部と、前記横フレーム部の先端部とが連結フレーム部によって連結されて前記取付具が枠体状に構成され、間仕切り部材が前記取付具に対し着脱可能である請求項1に記載するカウンターの支持構造。
【請求項3】
前記縦フレーム部と前記横フレーム部と前記連結フレーム部によって構成される枠体の内部に、格子構造を設けた請求項2に記載するカウンターの支持構造。
【請求項4】
前記縦フレーム部と前記横フレーム部と前記連結フレーム部によって構成される枠体の内部に、収納棚を設けた請求項2に記載するカウンターの支持構造。
【請求項5】
前記縦フレーム部と前記横フレーム部と前記連結フレーム部によって構成される枠体を挟んで面状の間仕切り部材が装着され、当該間仕切り部材間の空隙に配管が設けられると共に、当該配管に接続した水栓器具を、前記間仕切り部材の表面に取り付けた請求項2に記載するカウンターの支持構造。
【請求項6】
前記カウンターにおける前記取付具によって支持される端縁部の下方は、床面との間に障害物の無い連通空間に成されている請求項1乃至5のいすれかに記載するカウンターの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−44200(P2007−44200A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230986(P2005−230986)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)