説明

カスタマイズされた歯列矯正装置の製造方法、およびその方法により製造された装置

患者に治療を施すための、カスタマイズされた歯列矯正装置の製造方法であって、前記装置は、治療用の少なくとも1つの歯列矯正用アーチと、前記歯列矯正用アーチを挿入できる少なくとも1つのスロットを備えるブラケットをそれぞれが含む複数の要素とを含み、各ブラケットは、歯の後面に配置されるベースに配置されるものであり、前記方法は、矯正後の位置における、歯列弓および前記ベースが取り付けられる歯の面を表すモデルの形成後に、前記ベースの数値的な設計を個別に予想する、方法において:前記ベースの少なくともいくつかが、ラピッドプロトタイピングを使用して数値的に設計および製造され;大量生産されたブラケットが前記ベースの各々に取り付けられ;および、湾曲された歯列矯正用アーチが数値的に設計および製造され、前記ブラケットのスロットへ挿入後に、矯正後の位置の歯列弓の曲率に従うように、アーチを特別に付形することを特徴とする、方法。上述の方法によって製造された装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌側の技術、すなわち、目に見えない歯の後面に装置が位置決めされる技術において使用されることを目的とした、患者に治療を施すための、カスタマイズされた歯列矯正装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、そのような装置は、
−少なくとも1つの歯列矯正用アーチ、換言すると、歯の不満足なまたは「不正咬合」の初期位置から、「矯正後の位置」として公知の、満足のいく最終位置まで歯をもたらす力を歯に加える金属ワイヤーと;
−歯列矯正用アーチを収容するための少なくとも1つのスロットを各々が備える一連のブラケットであって(英語でいう「ブラケット」は、他の言語でもよくみられる);これらのブラケットは、患者の歯の決められた位置に、個別に取り付けられ、その位置で、歯列矯正用アーチが、治療期間中、不正咬合位置から矯正後の位置まで歯を動かすのに必要な力を歯に伝達できるようにしている、ブラケット
を含む。
【0003】
より一般的には、1つ以上の歯列矯正用アーチ、および歯列矯正用アーチと共に、1つ以上のスロットをそれぞれが含む単一の一連のブラケットを使用する。
現在のところ、歯列矯正用ブラケットの工業生産には2つの競合するプロセスがある:大量生産およびラピッドプロトタイピングである。まず第1に、これらの製造タイプを定義することが重要である。
【0004】
大量生産は、製造される構成部品の各タイプ、形またはモデル用に特別に設計された機械設備を必要とする。これらの大量生産された構成部品は、寸法の精度が約1/100mmと非常に高い。第1の大量生産された構成部品の製造は、機械設備の設計およびプログラミングに時間がかかるが、これらの2つの作業が実施されたら、次の構成部品を、非常に短期間のうちに莫大な数で大量生産することができるため、特別な機械設備の相当なコストが補償される。従来、大量生産型の歯列矯正用ブラケットの製造に使用される方法論は、金属射出成形(MIM)、セラミック射出成形(CIM)、押出切断および機械加工(様々な機械加工方法が標準NFE05−019に説明されている)である。
【0005】
「ラピッドプロトタイピング」または「加法または減法成形加工」は、直接的または間接的成形加工のために材料の層を漸次追加するまたは取り去ることによって構成部品を製造することを含む。成形加工が、特にレーザー焼結によって実施される場合には直接的であり、特にロストワックス鋳造方法によって実施される場合には間接的である。この方法を使用することによって、機械加工によるよりもまたは専門の機械設備を必要とする他の何らかの方法によるよりも迅速に、単一のカスタマイズされたブラケットを製造できる。しかしながら、この方法の寸法精度は約1/10mmにすぎず、これでは不十分であることがある。このため、ラピッドプロトタイピングは、複雑な形状、より具体的には、精密な歯列矯正用ブラケットの作製には不適当である。
【0006】
歴史的に、装置を外側からほとんど見えない状態にするという美的利点を有する舌側矯正技術は、およそ1980年に開発され始め、この技術では、大量生産されたブラケットを使用した。しかしながら、当時は、装置の取り付けは完全に手作業に依存しており、実施するのが非常に複雑であった。特に、治療の成功の重要な要因は、ブラケット、従って、そのスロットを歯へ正しく位置決めすることである。なぜなら、この位置決めが、対応する歯に加えられる力の向きを、従って、その矯正後の最終位置にあるとき、空間における様々な方向で歯の向きを決定してしまうためである。この位置決めは、舌側の技術において実施する場合、唇側または前側技術(装置が、歯の前面に位置決めされる)として公知の技術よりもかなりコツがいる。なぜなら、歯の後面の形態的不均一性のためである。この特殊性は、ブラケットの位置決めにわずかな誤りがあると、歯の位置に所望の矯正を行うことができない不正確な位置にスロットの位置を定め得ることを意味する。
【0007】
この技術の改良は、CLASSシステムとして公知のシステムであった。CLASSシステムは、患者の歯列弓の印象および不正咬合の歯の印象の2つの石膏鋳型を取ることである。これらの鋳型の一方は保存され、他方は、技術者によって、矯正後の最終位置にある歯の歯列弓のモデルを作製するのに使用される。そのためには、鋳型から歯が1つずつ削り出されて、前記矯正後の位置に再配置される(このステップは、一般に「セットアップ」として知られている)。次いで、技術者は、既存のゲージ上に、大量生産されたブラケットを位置決めする。その位置は、技術者が、歯列弓の定められた領域における(例えば切歯に面する、犬歯の各々に面する、一連の小臼歯の各々に面するおよび一連の大臼歯の各々に面する)歯の内側の曲率に一番適していると考え、かつこれらのゲージ−ブラケット組立体を鋳型の歯に接近させる位置である。各ゲージのテンプレートは、さまざまな標準的な歯列矯正用アーチから入手できるプリフォームアーチに対応する。その結果、大量生産されたブラケットの1つまたはいくつかが、鋳型の歯に対して直接押し付けられ得るが、他のブラケットと他の歯との間には隙間があることになる。これらの隙間は樹脂性材料で埋められて、ブラケットを適所に保持する。次いで、ブラケットが適所にある鋳型のコピーが取られ、このコピーから、歯を矯正後の位置にもたらすために必要とされる歯列矯正用アーチの形状が決定される。その後、ブラケットは部分的に小さな樹脂シェルに拘束され、ブラケットは、不正咬合位置にある歯の鋳型の歯に、保持装置を使用して配置され、歯列弓全体用のシリコーントランスファートレイが作製され、そのトレイを使用して、ブラケットの全てを、患者の不正咬合の歯に結合させることによる一回の作業で同時に移すことができる。次いで、プリフォーム歯列矯正用アーチは、大量生産されたブラケットのスロットに位置決めされ、スロットへの入口が閉鎖されることによってアーチが固定され、アーチがそこから逃げ出さないようにされて、治療を開始できる。
【0008】
しかしながら、この技術にはいくつもの欠点がある。ブラケットとそれに対応する歯との間の隙間を埋めかつ治療中にブラケット−歯の取り付けを可能にする樹脂の量は、比較的近似的に量られ得る。その材料はエージングしやすく、歯の再配置にはもはやその役割を正しく果たすことができない。さらに、この材料が破損すると、理論上理想的なその初期形状の復元が不可能である。それゆえ寸法が標準化された既存のゲージおよび保持装置の使用は、それらが達成できるブラケットの位置決めが、患者の歯列弓の正確な形態構造に常に理想的に適合しているわけではないことを意味する。概して、この方法は、かなり多くの生産時間およびかなり資質の高いかつ正確な技術者を必要とするため、この方法は、望ましい最良の結果を得るために、考えられる最良の条件下で実現できる。その使用は、歯列矯正用アーチが患者の形態構造に正確に適しているわけではないため、患者が限定される。しかしながら、この方法論は、「セルフライゲーティングブラケット」システムとして公知のものを既に組み込み得る大量生産されたブラケットの使用を可能にするという利点を有する。セルフライゲーティングブラケットでは、アーチがスロットに、クリップなどによって固定されている。
【0009】
コンピュータ支援の設計および「ラピッドプロトタイピング」を使用する製造技術が、各患者に特有の、カスタマイズされた歯列矯正装置を設計できる有意義な最適化を容易に提供できている。
【0010】
特に、特許文献1では、一方では、歯が矯正後の位置にある患者の歯列弓のコンピュータ画像に基づいて数値的に設計された、歯へ取り付けるためのベースの仮想イメージと、他方では、歯列矯正用アーチを挿入するためのスロットを備えるブラケットの仮想イメージであって、予め定められた形状のブラケットの仮想ライブラリーから取られるイメージとで1セットとして形成された個別設計が教示されている。次いで、これら2つのイメージの組み合わせの結果得られる単一の本体で形成されたブラケットが作製される。その後、歯列矯正用アーチが、設計され、特別な装置を使用して付形され、ブラケットを接続しかつ患者の歯を矯正後の位置にもたらすようにされる。このアーチは、特に、ブラケットを接続するために必要な、曲率半径の異なる一連の複数の領域で構成され、および空間の三次元全てに延在し得るため、必然的に複雑な形状を有する。
【0011】
この技術の欠点は、主に以下の通りである。歯に取り付けられるベース、およびアーチを挿入するスロットを有するブラケットの双方を形成する本体が、ラピッドプロトタイピングによって単一ユニットとして設計および製造されるため、ブラケットの形状に関して最適にされるブラケットシステムを作製することが困難である。特に、この技術は、現在のところ、「セルフライゲーティング」ブラケットを使用することができない。このタイプのブラケットの使用はますます広まっており、このタイプのブラケットは、治療の十分な成功に重要な要因であるようである。加えて、歯列矯正用アーチの付形は、その複雑性ゆえ、この形状を取ってそれを保持することができるように、的確な特性を有する材料を使用して、ロボットによって行う必要がある。さらに、治療の開始時または治療期間中にアーチの形状を変更する必要がありそうな場合、アーチ全体を変更することなく、これを行うことはできず、このことは、患者および開業医にとって不利益な時間の損失を与えることとなる。それゆえ、装置のモジュール化は限られている。最後に、既に上述したように、全体的に、三次元空間の全ての方向に実質的に延在し得るアーチに湾曲部が多いと、ブラケットのスロットの内側に沿って摺動する能力が著しく制限される。この摺動能力が、歯の矯正後の位置への歯の動きに従うために、治療を順調に進めることに望ましい場合においてでもである。
【0012】
本出願人の名における特許文献2ではまた:
−数値的方法を使用して、各歯に個別に、取り付けられる歯の面の形状に従うベースと、歯列矯正用アーチが挿入されるスロットを備えるブラケットと、ベースとブラケットとの間の、プロトタイプが作製された中間部であって、中間部の幾何学的形状は、中間部がないと、治療の最後に、矯正後の位置にある対応する歯と、その初期の形状に戻る歯列矯正用アーチとの間が空のままとなる空間に対応する中間部とで形成されたセットを形成することであって;このセットは、今述べたばかりの部品全てを組み込む単一の構成要素の形に、または後で結合される2つまたは3つの別個の構成要素の形に作製し得ることと;
−歯列矯正用アーチであって、例えば歯の間または異なる種類の一群の歯の間(例えば犬歯と小臼歯との間および/または小臼歯と大臼歯との間)の移行部に対応する領域の可能性を除いて実質的に連続する曲率を有するその形状および寸法を標準化でき、かつ実質的に連続的な曲率をそれぞれが有する一連の部分を規定する歯列矯正用アーチと
の共同使用が提案されている。
【0013】
いずれにしろ、このアーチには、患者の歯の各々に適合させるための、その形状の微調整を目的とした複雑な付形作業が全く施されない。
それゆえ、歯列矯正用アーチは、単一平面に延びかつ標準化モデルに従って製造された公知の「直線ワイヤー」タイプとし得る。
【0014】
しかしながら、この方法は、少なくともほとんどの部分において、形状およびサイズが非標準的であるブラケットの製造を必要とするという特徴を有し、これは欠点となり得る。これらのブラケットは、「ラピッドプロトタイピング」によって製造し得る。しかしながら、その場合、ブラケットの表面仕上げの品質が装置の適切な運転に関して重要な要因であっても、この表面仕上げが最適ではなく、各アイテムごとに異なることがある:歯列矯正用アーチは、ブラケットの内側に沿ってやすやすと摺動できる必要がある。加えて、各構成要素は、定義上、ユニークであり、および出来上がった装置が全てまたは実質的に全て異なる1セットのブラケットの製造には(いくつかが同一のブラケットを製造できた場合でも)、かなりの時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第03/068099号
【特許文献2】国際公開第2009/056776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、装置の製造の正確さとこの製造にかかる最小コストとの正反対の条件を上手く歩み寄らせる一方で、当然ながら、同時に、歯列矯正治療を成功させるために最適な性能を維持することができる歯列矯正装置を設計および製造する方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このために、本発明の1つの課題は、患者に治療を施すための、カスタマイズされた歯列矯正装置の製造方法であって、前記装置は、治療用の少なくとも1つの歯列矯正用アーチと、前記歯列矯正用アーチを挿入できる少なくとも1つのスロットを備えるブラケットをそれぞれが含む複数の要素とを含み、各ブラケットは、歯の後面に配置されるベースに配置されるものであり、前記方法は、矯正後の位置における、歯列弓および前記ベースが取り付けられる歯の面を表すモデルの形成後に、前記ベースの個別の数値的な設計を予想する方法において、
−前記ベースの少なくともいくつかが、ラピッドプロトタイピングを使用して数値的に設計および製造され;
−前記ベースの各々に、大量生産されたブラケットが取り付けられ;および
−湾曲した歯列矯正用アーチが数値的に設計および製造されて、前記ブラケットのスロットにアーチが挿入された後に、矯正後の位置にある歯列弓の曲率に従うように、特別に付形されていることを特徴とする、方法である。
【0018】
それゆえ、各ベースおよびそのアダプタは、歯の後面の形態構造の違いを補償する。
前記湾曲したアーチを作製するために、歯列矯正用アーチの外形を、ベースと歯列矯正用ブラケットとの対の外形と同時に、数値的に設計することが可能である。
【0019】
本発明の代替的な形態では、前記湾曲したアーチを作製するために:
−前記プロトタイプで作製したベースを備える前記モデルのデジタル画像が作成され;
−前記デジタル画像上の空間において前記ブラケットの正確な点が特定され;
−これらの特定の結果が、特別に曲げられた歯列矯正用アーチを製造するための装置のソフトウェアに入力され;
−前記湾曲した歯列矯正用アーチが、前記装置を使用して作製され;および
−前記アーチが前記ブラケットの前記スロットに取り付けられる。
【0020】
前記ベースの全てを、ラピッドプロトタイピングによって製造し得る。
本発明の別の課題は、患者に治療を施すための、カスタマイズされた歯列矯正装置であって、前記装置は、治療用の少なくとも1つの歯列矯正用アーチと、前記歯列矯正用アーチを挿入できる少なくとも1つのスロットを備えるブラケットをそれぞれが含む複数の要素とを含み、各ブラケットは、歯の後面に配置されるベースに配置されるものである、歯列矯正装置において、ベースの少なくともいくつかはラピッドプロトタイピングによって製造され、ブラケットは、大量生産されたブラケットであり、歯列矯正用アーチは、特別に曲げられたアーチであり、および前記装置は、上述の方法を使用して作製されることを特徴とする、歯列矯正装置である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好みで、ブラケットの少なくともいくつかはセルフライゲーティングである。
当然のことながら、本発明による方法は、単独で知られる様々な技術を、それらの利点、すなわち、コンピュータ支援によるプロトタイピングと大量生産による製造技術とを組み合わせて、歩み寄らせるが、ここでは、それら技術がまとめられて、全体的にコヒーレントとなり、可能な限り最低のコストで最高の装置を得ることを可能にする。
【0022】
国際公開第2009/056776号で説明されている方法とは異なり、この方法は、標準的な(直線ワイヤー)歯列矯正用アーチまたは標準化された位置および形状での湾曲数が限られているアーチを単に使用できるというのではなく、特別に曲げられた歯列矯正用アーチの製造を伴う。本発明による方法の利点は、「大量生産された」ブラケットをもっぱら使用できるようにすることであり、それゆえ、前もって準備でき、および形状およびサイズが十分に標準化され、これら大量生産されたブラケットの使用と、プロトタイプで作製されたベースとを結びつけることができ、それゆえ、ベースを、歯の後面の形態構造に合わせることができる。このプロトタイプで作製されたベースと標準化ブラケットとの対は、大量生産されたブラケットに、ベースを非常に高い寸法精度で位置決めできる正確さと、これらをセルフライゲーティングにする可能性とを組み合わせるという点で、明らかに有利である。
【0023】
特に、アーチが挿入されるスロットは、優れた寸法精度で構成される;これは、スロットにアーチを最小のクリアランスで位置決めできるようにするため、その作用を歯に正確に及ぼすことができる。その作用は、その意図された最終位置にもたらすために、望まれる限り高い。同様に、スロットには複雑な形状が与えられ、ブラケットとアーチとの間に接触のない1つ以上の耐摩耗領域をもたらすことができる。
【0024】
ブラケットの大量生産はまた、ブラケットに複雑な形状を与えることができ、これにより、満足度が遥かに劣る動作条件下のラピッドプロトタイピングによる製造では可能にできないまたはあまり可能にできない、セルフライゲーティング装置の組み込みが容易になる。ブラケットでセルフライゲーティングシステムが全く利用できない場合、ブラケットに追加されたエラストマープラグによってアーチをスロットに保持する必要がある。この手法では、それぞれのブラケットにおける装置の取り付けまたは調整にかかる時間が増える一方、セルフライゲーティングブラケットの場合には、この保持を達成するには、矯正歯科医が、リガチャーを提供する要素に対して単に作用することで十分である。加えて、このセルフライゲーティング機能を実行する要素は、ブラケットの残りの部分と同じ表面品質を有する一方、エラストマープラグは、アーチの金属との摩擦係数は高く、これが、スロット内でのアーチの摺動を妨げ、それゆえ、歯をその不正咬合位置から適所に適切にもたらすのを妨げる。最後に、エラストマーリガチャーは、数週間後、または数日後にはそれらの機械的性質がかなり劣化することも認識されている。それゆえ、セルフライゲーティングブラケットを使用することは、歯列矯正用アーチに沿った歯−ベース−ブラケットのセットを摺動させる機構がより良くなり、かつスロットでのアーチの長期の保持がより信頼性が高くなることを意味する。
【0025】
好みで、ブラケットの全てがセルフライゲーティングであるが、当然ながら、ブラケットのいくつかのみをこのタイプで作ることもできる。
ベースの数値的な設計は、矯正後の位置の歯列弓の数値的なモデルおよびベース用のブラケットの幾何学的パラメータに基づいて実施される。これと並行して、方法は、歯列矯正用アーチの数値的な設計を提供する。ラピッドプロトタイピングを使用するベースの作製に数値的CAD生成ファイルを使用し、この方法は、それらの製造に十分な精度を有する。本発明の趣旨から逸脱することなく、特定のベースはラピッドプロトタイピングによって作製され、および他のベースは、いくつかの他の方法によって作製され得る。数値的なアーチ設計ファイルは、設計ファイルとしては、歯列矯正用ワイヤーの自動付形用の機械を使用するアーチの作製に使用される。
【0026】
次いで、ベースが歯列弓のモデルに装着され、および大量生産されたブラケットは、既に製造されており、それゆえ形状および寸法の点で標準化されている既存のモデルの在庫から取ることができ、溶接または信頼性の高い任意の他の取り付け手段(ベースおよびブラケットの設計が可能にする場合には、ボンディングまたはクリップ留め)によってベースに取り付けられる。
【0027】
方法の代替的な形態では、歯列矯正用アーチは、並行して設計されるのではなく、第2のステップまで設計されない。それゆえ:
−前記ブラケットを備えた前記モデルの新しいデジタル画像を作成し;
−前記ブラケットの正確な特徴点、特に空間でのそれらのスロットの位置を、前記デジタル画像上の空間において特定し;
−これらの特定の結果が、湾曲した歯列矯正用アーチを作製するための装置のソフトウェアに入力され;
−前記湾曲した歯列矯正用アーチが、前記装置を使用して作製され;かつ
−前記アーチが前記ブラケットの前記スロットに取り付けられる。
【0028】
こうして装置を作製し、従来の技術を使用して患者の歯列弓に移すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に治療を施すための、カスタマイズされた歯列矯正装置の製造方法であって、前記装置が、治療用の少なくとも1つの歯列矯正用アーチと、前記歯列矯正用アーチを挿入できる少なくとも1つのスロットを備えるブラケットをそれぞれが含む複数の要素とを含み、各ブラケットは、歯の後面に配置されるベースに配置されるものであり、前記方法は、矯正後の位置における、歯列弓および前記ベースが取り付けられる歯の面を表すモデルの形成後に前記ベースの数値的な設計を個別に予想する、方法において:
−前記ベースの少なくともいくつかは、ラピッドプロトタイピングを使用して数値的に設計および製造され;
−大量生産されたブラケットは、前記ベースの各々に取り付けられ;および
−湾曲された歯列矯正用アーチは、数値的に設計および製造され、前記ブラケットの前記スロットに挿入された後に、前記矯正後の位置にある歯列弓の曲率に従うように、アーチを特別に付形することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記湾曲したアーチを作製するために、前記歯列矯正用アーチの外形が、前記ベースと歯列矯正用ブラケットとの対の外形と並行して、数値的に設計されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湾曲したアーチを作製するために:
−前記プロトタイピングで作製されたベースを備えた前記モデルのデジタル画像が作成され;
−前記デジタル画像上の空間で前記ブラケットの正確な点が特定され;
−これらの特定の結果が、特別に曲げられた歯列矯正用アーチを製造するための装置のソフトウェアに入力され;
−前記湾曲された歯列矯正用アーチが、前記装置を使用して作製され;および
前記アーチが、前記ブラケットの前記スロットに取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベースの全てがラピッドプロトタイピングによって製造されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
患者に治療を施すための、カスタマイズされた歯列矯正装置であって、前記装置が、治療用の少なくとも1つの歯列矯正用アーチと、前記歯列矯正用アーチを挿入できる少なくとも1つのスロットを備えるブラケットをそれぞれが含む複数の要素とを含み、各ブラケットは、歯の後面に配置されるベースに配置されるものである、歯列矯正装置において、前記ベースの少なくともいくつかがラピッドプロトタイピングによって製造され、前記ブラケットが、大量生産されたブラケットであり、前記歯列矯正用アーチが、特別に曲げられたアーチであり、および前記装置が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法を使用して製造されることを特徴とする歯列矯正装置。
【請求項6】
前記ブラケットの少なくともいくつかがセルフライゲーティングであることを特徴とする、請求項5に記載の患者に治療を施すための、カスタマイズされた歯列矯正装置。

【公表番号】特表2013−512023(P2013−512023A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540479(P2012−540479)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052506
【国際公開番号】WO2011/067510
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512136606)
【氏名又は名称原語表記】H 32
【Fターム(参考)】