説明

カセット及びこれを備えたプリンタ

【課題】印画時にメディアに回転抵抗力を与えず、カセットの外部から弛みを解消することが可能なカセット及びこれを備えたプリンタを提供する。
【解決手段】本発明のカセット10は、ロール状のメディア20を内部に収納するカセット10であって、フランジ30に保持されたメディア20に制動力を伝達するためにフランジ30に設けられたメディア歯車30aと、メディア歯車30aと噛合する、歯車単体又は複数の歯車列からなる歯車手段40〜70と、歯車手段40〜70のいずれかの歯車に噛合するトルクリミッタ80と、カセット10に外部操作可能に設けられ、歯車手段40〜70のいずれかの歯車を回転させるハンドル50aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロール状のメディアを収納するメディアのカセット及びこれを備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
カセットに設けた印画紙やインクリボン(以下、メディアと称する)の弛み防止機構として、特許文献1には、メディアの供給側のギアに回転抵抗付与手段を噛み合わせる構成が開示されている。
【0003】
又、特許文献2には、弛みの生じる方向の回転を止めることで弛みを防止する機構が開示されている。この事例での弛み防止機構は、印画紙を送る回転体の回転方向のうち、弛みが生じる回転方向をワンウェイクラッチで止めるものである。
【0004】
又、特許文献3には、紙ロールに弛み防止具を直接当てる弛み防止機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−314968号公報(第2図)
【特許文献2】特開平3−284783号公報(第1図)
【特許文献3】特開2004−81738号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の弛み防止機構は、回転抵抗付与手段の制動部材をメディアに常に噛み合わせており、メディアをカセットに挿入しカセットをプリンタに装着する前の状態でメディアに回転抵抗力が働き弛み防止として働く。しかし、カセットをプリンタに装着した状態でも回転抵抗力が引き続きメディアに働くため、メディアを引き出すには回転抵抗力を上回る力が必要であった。
【0007】
又、印画が進みメディアの巻き終わり付近で巻径が小さくなった時に、巻径の大きな時に比べてより大きな力が必要になり、そのための大きな設備や多くの機構が必要になるという問題があった。
【0008】
又、この弛み防止機構によって弛みを100%防止することが出来ず、メディアを挿入したカセットをプリンタへ装着する前に弛みが発生すると、メディアを直接手で回して弛みをとらなければならない。
【0009】
特許文献2に記載の弛み防止機構は、印画紙を搬送する回転体の回転方向のうち、弛みが生じる回転方向をワンウェイクラッチで止めることにより弛みの発生を防止するものである。しかし、印画時において印画紙は両方向に移動させる必要があり、一方向の回転を止めてしまうことはプリンタの性能上問題である。
【0010】
特許文献3に記載の弛み防止機構では、弛み防止具を紙に常に押し当てているため常に回転抵抗力が紙に加わっており、この回転抵抗力を上回る力で紙を引き出す必要がある。
【0011】
そこで、本発明は上述の問題点に鑑み、印画時にメディアに回転抵抗力を与えず、カセットの外部から弛みを解消することが可能なカセット及びこれを備えたプリンタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のカセットは、ロール状のメディアを内部に収納するカセットであって、フランジに保持されたメディアに制動力を伝達するためにフランジに設けられたメディア歯車と、メディア歯車と噛合する、歯車単体又は歯車列からなる歯車手段と、歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段と、カセットに外部操作可能に設けられ、歯車手段のいずれかの歯車を回転させるハンドルと、を備える。
【0013】
又、本発明のプリンタは、ロール状のメディアを内部に収納するカセットを装着する装着部を備えたプリンタであって、カセットは、フランジに保持されたメディアに制動力を伝達するためにフランジに設けられたメディア歯車と、メディア歯車と噛合する、歯車単体又は歯車列からなる歯車手段と、歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段と、を備え、装着部は突起を備え、カセットを装着部に装着した際に、歯車手段の所定の歯車は突起に押されて噛合が外れる位置に摺動する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカセットは、外部操作可能に設けられ、歯車手段のいずれかの歯車を回転させるハンドルを備える。これにより、メディアに生じた弛みをカセットの外部から解消することが出来る。
【0015】
又、本発明のプリンタは、装着部に突起を備え、歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段を備え、カセットを装着部に装着した際に、歯車手段の所定の歯車は突起に押されて噛合が外れる位置に摺動することを特徴とする。これにより、カセットを装着部に装着した印画時には、回転抵抗付与手段の回転抵抗力がメディアに伝わらず、軽い力でメディアを駆動することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係るカセットの立体斜視図である。
【図2】実施の形態2に係るカセットの立体斜視図である。
【図3】実施の形態1に係るカセットの断面図である。
【図4】実施の形態2に係るカセットの立体斜視図である。
【図5】実施の形態1に係るカセットの断面図である。
【図6】実施の形態2に係るカセット及びプリンタの断面図である。
【図7】実施の形態2に係るカセットがプリンタに装着されていない状態を示す図である。
【図8】実施の形態2に係るカセットがプリンタに装着された状態を示す図である。
【図9】実施の形態1に係るメディアを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1のプリンタの装着部に装着するカセット10を正面側から見た立体斜視図である。カセット10は蓋部10aと底部10bを備え、これによってカセット10の内部に収納する印画紙などのメディア20(図3参照)を外部と遮断し、メディア20にゴミが付着したり外力によって傷がつかないようにしている。
【0018】
図3は、カセット10の内部構造を示す断面図である。カセット10は内部にメディア20を回転自在にして収納している。メディア20の構成を図9に示す。メディア20はロール状であって、その両端をフランジ30に挟まれている。ロール状のメディア20から使用に供されるメディア20aが引き出される。フランジ30の略外周にはメディア20に制動力を伝達するメディア歯車30aが設けられている。
【0019】
図3において、カセット10はさらに、歯車40,50,60,70と、トルクリミッタ80を備える。歯車40はメディア歯車30に噛合し、歯車50は歯車40に噛合し、歯車60は歯車50に噛合し、歯車70は歯車60に噛合する。トルクリミッタ80は歯車70に回転抵抗付与手段として組み込まれている。このような構成により、トルクリミッタ80の回転抵抗力が歯車40〜70を介してメディア20に加わる。つまり、歯車40〜70よりなる歯車列はトルクリミッタ80の回転抵抗力をメディア20に伝える歯車手段として機能する。しかし、歯車手段は歯車列である必要はなく、単体の歯車でも機能する。
【0020】
図5は、図3とは異なる方向のカセット10の断面図である。カセット10は歯車50と連結した軸部50bと、軸部50bを介して歯車50を回転させるハンドル50aを備えている。ハンドル50aはカセット10の外側に設けられているため、カセット10の外側からハンドル50aを操作して歯車50を回転させることが可能である。
【0021】
すなわち、実施の形態1のカセットは、ロール状のメディア20を内部に収納するカセット10であって、フランジ30に保持されたメディア20に制動力を伝達するためにフランジ30に設けられたメディア歯車30aと、メディア歯車30aと噛合する、歯車単体又は歯車列からなる歯車手段と、歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段(トルクリミッタ80)と、カセット10に外部操作可能に設けられ、歯車手段のいずれかの歯車を回転させるハンドル50aと、を備える。これにより、ユーザはハンドル50aの操作によってメディア20に直接触れることなくメディア20の弛みを解消することが出来る。
【0022】
<動作>
ユーザがハンドル50aを手で回すと、軸部50bを介して歯車50が回転する。歯車50の回転はこれと噛合した歯車40、さらにはメディア歯車30aに伝わり、メディア20が回転する。
【0023】
<効果>
カセット10は内部に収納したメディア20へのゴミの付着や外力による傷つきを防止する観点から、又カセット10単体での取り扱いなどの便宜上蓋部10aを設けており、ユーザは直接メディア20に触ることが出来ない構造となっている。
【0024】
しかし、本実施の形態では既に述べたとおり以下の効果を奏する。すなわち、実施の形態1のカセットは、ロール状のメディア20を内部に収納するカセット10であって、フランジ30に保持されたメディア20に制動力を伝達するためにフランジ30に設けられたメディア歯車30aと、メディア歯車30aと噛合する、歯車単体又は歯車列からなる歯車手段と、歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段(トルクリミッタ80)と、カセット10に外部操作可能に設けられ、歯車手段のいずれかの歯車を回転させるハンドル50aと、を備える。これにより、ユーザはハンドル50aの操作によってメディア20に直接触れることなくメディア20の弛みを解消することが出来る。
【0025】
(実施の形態2)
<構成>
図4は、実施の形態2のプリンタの装着部に装着されるカセット10の構成図である。実施の形態1と同一の構成要素には同一の番号を付している。実施の形態2のカセットは、実施の形態1のカセットの構成に加えて、歯車60を次段の歯車50と噛合する位置(図中右上方向)へ付勢するバネ65を備えている。
【0026】
図2はカセット10を背面側から見た立体斜視図である。図2に示すように、実施の形態2のカセット10は、実施の形態1のカセット10の構成に加えて、底部10bの側面に穴10cを有している。
【0027】
図7は、カセット10をプリンタ90の装着部に装着する前の状態を示す図である。なお、カセット10の蓋部10aは図示していない。プリンタ90はカセット10の装着部に突起90aを有している。
【0028】
<動作>
図8は、カセット10をプリンタ90の装着部に装着した状態を示す図であり、突起90aが穴10cに嵌合している。この状態で突起90aは穴10cを通って歯車60を押し込み、歯車60は次段の歯車50との噛合が外れる。そのため、カセット10が装着された印画時には、トルクリミッタ80の回転抵抗力はメディア20に伝わらず、軽い力でメディアを駆動することが出来る。図6は、プリンタ90の装着部にカセット10を装着した状態を示す断面図であり、突起90が歯車60の噛合が外れる位置に歯車60を押し込んでバネ65が縮んでいる状態を示している。
【0029】
図7に示すようにカセット10をプリンタ90の装着部から外したときは、突起90aが歯車60を押さないため、歯車60はバネ65の付勢力によって図6において左方向へ押されて歯車50と噛合し、メディア20はトルクリミッタ80の回転抵抗力を受ける。よって、メディア20の弛みが防止する。
【0030】
すなわち、実施の形態2に係るプリンタは、ロール状のメディア20を内部に収納するカセット10を装着する装着部を備えたプリンタであって、カセット10は、フランジ30に保持されたメディア20に制動力を伝達するためにフランジ30に設けられたメディア歯車30aと、メディア歯車30と噛合する、歯車単体又は複数の歯車列からなる歯車手段と、歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段(トルクリミッタ80)と、を備え、装着部は突起90aを備え、カセット10を装着部に装着した際に、歯車手段の所定の歯車60は突起90aに押されて噛合が外れる位置に摺動することを特徴とする。これにより、カセット10を装着部に装着した印画時には、トルクリミッタ80の回転抵抗力がメディア20に伝わらず、軽い力でメディア20を駆動することが出来る。
【0031】
さらに、カセット10は、カセット10に外部操作可能に設けられ、歯車手段のいずれかの歯車を回転させるハンドル50aを備えることを特徴とする。これにより、カセット10を装着部に装着した印画時には、トルクリミッタ80の回転抵抗力がメディア20に伝わらず、軽い力でメディア20を駆動することが出来ると同時に、ユーザはハンドル50aの操作によってメディア20に直接触れることなくメディア20の弛みを解消することが出来る。
【0032】
<効果>
実施の形態2に係るプリンタによれば、既に述べた通り実施の形態1の効果に加えて以下の効果を奏する。すなわち、実施の形態2に係るプリンタは、ロール状のメディア20を内部に収納するカセット10を装着する装着部を備えたプリンタであって、カセット10は、フランジ30に保持されたメディア20に制動力を伝達するためにフランジ30に設けられたメディア歯車30aと、メディア歯車30と噛合する、歯車単体又は複数の歯車列からなる歯車手段と、歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段(トルクリミッタ80)と、を備え、装着部は突起90aを備え、カセット10を装着部に装着した際に、歯車手段の所定の歯車60は突起90aに押されて噛合が外れる位置に摺動することを特徴とする。これにより、カセット10を装着部に装着した印画時には、トルクリミッタ80の回転抵抗力がメディア20に伝わらず、軽い力でメディア20を駆動することが出来る。
【0033】
さらに、カセット10は、カセット10に外部操作可能に設けられ、歯車手段のいずれかの歯車を回転させるハンドル50aを備えることを特徴とする。これにより、カセット10を装着部に装着した印画時には、トルクリミッタ80の回転抵抗力がメディア20に伝わらず、軽い力でメディア20を駆動することが出来ると同時に、ユーザはハンドル50aの操作によってメディア20に直接触れることなくメディア20の弛みを解消することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
10 カセット、20 メディア、30 フランジ、30a メディア歯車、40,50,60,70 歯車、50a ハンドル、65 バネ、80 トルクリミッタ、90 プリンタ、90a 突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状のメディアを内部に収納するカセットであって、
フランジに保持された前記メディアに制動力を伝達するために前記フランジに設けられたメディア歯車と、
前記メディア歯車と噛合する、歯車単体又は歯車列からなる歯車手段と、
前記歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段と、
前記カセットに外部操作可能に設けられ、前記歯車手段のいずれかの歯車を回転させるハンドルと、を備える、カセット。
【請求項2】
ロール状のメディアを内部に収納するカセットを装着する装着部を備えたプリンタであって、
前記カセットは、フランジに保持されたメディアに制動力を伝達するために前記フランジに設けられたメディア歯車と、
前記メディア歯車と噛合する、歯車単体又は歯車列からなる歯車手段と、
前記歯車手段のいずれかの歯車に噛合する回転抵抗付与手段と、を備え、
前記装着部は突起を備え、
前記カセットを前記装着部に装着した際に、前記歯車手段の所定の歯車は前記突起に押されて噛合が外れる位置に摺動することを特徴とする、プリンタ。
【請求項3】
前記カセットは、当該カセットに外部操作可能に設けられ、前記歯車手段のいずれかの歯車を回転させるハンドルをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−247392(P2010−247392A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97735(P2009−97735)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】