説明

カチオン改質クレー粒子を含有するインクジェット記録媒体

本発明は、インクジェットプリンターと、インク組成物と、支持体を具有して、該支持体上にそれぞれ特定の制限を有する多孔質基材層および多孔質最上層をこの順で被覆させたインクジェット記録用媒体を具備するインクジェット印刷システムに関する。インクジェット記録媒体およびプリンターシステムは、単一のコーティング工程および乾燥工程のみを必要とする効率的な方法で、安価な材料を使用して製造でき、また、該システムは優れた光沢、色濃度および画像品質を備える画像を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質のインクジェット印刷に適する多層被覆インクジェット受像体と、該受像体の製造方法、並びにインクジェット印刷機を用いて紙の上に印刷する方法に関する。より詳細には、本発明は、優れた印刷色濃度、光沢、および画像品質を有するインクジェット記録素子に関する。コーティング組成物は、1回の塗布工程で被覆層を形成させるのに適する。
【背景技術】
【0002】
典型的なインクジェット記録装置または印刷装置において、インク液滴が記録素子または媒体に向けて高速でノズルから噴射され、媒体上に画像が形成される。インク液滴または記録液体は、記録剤、例えば染料または顔料、並びに多量の溶媒を一般的に含有する。一般的に、溶媒またはキャリア液体は、例えば、水および1種以上の有機物質、例えば一価アルコールまたは多価アルコールなどを含有する水性混合物で構成されている。
【0003】
一般的に、インクジェット記録素子は、少なくとも1つの表面上に少なくとも1種のインク受像層(IRL)を備える支持体を具備する。一般的に、2種類のIRLが存在する。第1種のIRLは、高い膨潤能を有するポリマーの非多孔質コーティングを具備し、該非多孔質コーティングは分子拡散によりインクを吸収する。カチオン性またはアニオン性物質が、カチオン性若しくはアニオン性染料に対する染料定着剤または媒染剤としての機能を果たすようにコーティングへ添加される。一般的に、支持体は滑らかな樹脂コート紙であり、また、コーティングは光学的に透明で極めて滑らかであるために非常に高い光沢を有する「写真等級」インクジェット記録素子がもたらされる。しかしながら、一般に、この種のIRLはインクを徐々に吸収する傾向があり、その結果、受像体または印刷物は瞬間的に触感乾燥しない。
【0004】
第2種のインク受像層またはIRLは、無機粒子、ポリマー粒子若しくは有機-無機複合粒子と、ポリマーバインダー、および所望の添加剤、例えば染料固着剤若しくは媒染剤などの多孔質コーティングを含有する。これらの粒子の化学組成、大きさ、形状、および粒子内多孔度は変化させることができる。この場合、印刷液は、実質的に毛管現象により、IRLにおける相互接続した開放細孔内へ吸収され、瞬間的に触感乾燥する印刷物が得られる。一般に、1種または複数種の層を具備する多孔質媒体における、相互接続した粒子内全細孔体積は、画像を形成する塗布インクの全量を保持するのに十分な量よりも大きい。
【0005】
基本的には、多孔質層中の有機および/または無機粒子は、該粒子間の間隙によって細孔を形成する。バインダーは、粒子を相互に保持するために使用される。しかしながら、高い細孔体積を維持するためには、バインダーの量を制限することが望ましい。過度に多量のバインダーは、粒子若しくはビーズ間の細孔を充填してインクの吸収性を低減させる。一方、過度に少ないバインダー量は、多孔質層の亀裂を防ぐのに不十分である。
【0006】
一般に、光沢を有する多孔質インクジェット記録媒体は、支持体に加えて少なくとも2つの層、即ち、支持体により近い基材層、および支持体からより離れた光沢を有する受像層を具備する。「写真等級」の光沢を得るための1方法は、樹脂で被覆した紙支持体上にインクジェット受像層を被覆させる方法である。しかしながら、樹脂で被覆した紙支持体は、比較的コスト高であり、また、その製造において余分の樹脂塗布工程を必要とする。
【0007】
例えば、バーメルらによる米国特許第6630212号明細書には、樹脂コート支持体紙上に2つの多孔質層を被覆させたインクジェット記録媒体が開示されている。該2つの層は、ポリエチレン樹脂で被覆した支持体紙上に、押出しホッパーコーティングを利用する前計量法により同時に塗布される。基材層コーティング組成物は、ヒュームドアルミナ粒子、PVAバインダーおよびコーティング助剤を含有する(固形分:30%)。基材層の被覆量は、43g/mである。基材層上の受像層は、ヒュームドアルミナ粒子、カチオン性のポリマーラテックス分散体、およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)バインダーを含有する。IRLの被覆量は2.2g/mである。アルミナは、インク容量の高い記録材料に対して比較的高価な材料である。
【0008】
普通紙の支持体を被覆することによって、「写真等級」の光沢を備えるインクジェット記録媒体を調製することができる。なぜならば、一般に、普通紙の支持体は、樹脂コート紙の支持体と比べて、より粗いか滑らかさに劣るが、一般的に、受像層上に滑らかで光沢のある表面をもたらすために、特別なコーティング方法、例えばキャストコーティング法またはフィルム転写コーティング法などを使用する必要があるからである。これらの特別なコーティング法は、乾燥条件または余分な工程により当該記録媒体の生産性を低下させる。また、受像層上に光沢表面を形成するために、普通紙上への後計量コーティング法(ナイフ、ロッドまたはエアーナイフを用いる塗布法)または前計量コーティング法(ビードまたはカーテンを用いる塗布法)と組合せて、熱および圧力を印加する緩やかなカレンダー掛けを用いてもよい。過度のカレンダー掛けは、インク吸着容量の減少をもたらし得る。
【0009】
一般に、多孔質インクジェット受像体の製造方法においては、水性粒子分散液のコーティング法が使用される。通常、このような組成物において有用な粒子は、粒子間の斥力および水性相中の極性分子との引力をもたらすことにより分散液の安定化を補助する表面電荷を有する。これらの粒子は、表面の化学的性質によって特徴づけてもよい。粒子表面上の帯電した化学的部位が負の形式電荷を主に有する場合、この種の粒子を、本明細書においてはアニオン粒子と定義する。自然状態(適度なpH3〜10の状態)における炭酸カルシウム粒子および酸化ケイ素粒子の分散体が、アニオン粒子の例である。その一方、正味の正の表面電荷を有する分散粒子を、本明細書においてはカチオン粒子と称する。アルミナは、インクジェット受像体の多孔質相においてよく使用されるカチオン粒子の例である。
【0010】
前述の粒子を使用する多孔質層を具備するインクジェット受像体は既知である。サダシバンらによる米国特許第6689430号明細書においては、普通紙支持体上に被覆させた2層のインク受理材が開示されている。多孔質基材層は、アニオン性顔料、例えば沈降炭酸カルシウム(PCC)およびシリカゲル、並びにバインダー、例えばポリ(ビニルアルコール)およびスチレン-ブタジエンラテックスを含有し、乾燥総重量は27g/mである。多層材における基材層の主な機能の一つは、その上方に上部層を被覆させる未加工の紙と比べて、より滑らかな支持体をもたらすことである。さらに、多孔質基材層は、プリンターにより最上層に塗布されるインク中のインク液用の溜めを提供する。基材層を後計量法、例えばロッドコーティング法により塗布し、続いて乾燥させ、次いで、上部層を前計量法、例えばビードコーティング法により塗布する。受像層は、カチオン粒子、すなわちコロイドアルミナおよびヒュームドシリカ、カチオン性ポリマーラテックス分散液、PVAバインダー、およびコーティング助剤の混合物を含有する固形分15%のコーティング組成物を使用して、8.6g/mの量で、乾燥した基材層上に塗布される。所望により、最初の基材層を被覆させた後の任意の段階において、該材料を少なくとも1回カレンダー掛けする。
【0011】
インクジェット画像の品質と密度が増加するにつれ、インクジェット記録媒体(「受像体」とも称する)に対して塗布されるインクの量も増加する。このため、パドリング、癒着および色間滲みを防ぐために、媒体中に十分な空隙容量をもたらすことが重要である。同時に、使用者に便利さをもたらすために印刷速度も上昇している。したがって、インクの増加量を吸収するための十分な容量が必要とされるだけでなく、さらに、媒体は、インク体積/単位面積/単位時間の観点から次第に増大するインク流量を処理できなければならない。
【0012】
キャンベル他による米国特許出願公開第2007/0134450号明細書においては、サダシバンらによるものと類似するインクジェット記録素子が開示されており、異なる形態の炭酸カルシウム粒子の混合物を含有する基材層から成る改良点は、画像品質を向上させるためにインク吸収性の向上をもたらす。キャンベル等による2層のインクジェット受像体は、癒着を生じることなく適度な流量のインクを吸収でき、また、所望の光沢水準をもたらすことができる。
【0013】
さらに、サダシバン等およびキャンベル等により開示されたインクジェット記録素子は、良好な画像品質と適度な光沢をもたらすものの、基材層用および上部層用のコーティング組成物が適合性のない反対の表面電荷の粒子をそれぞれ含有するので、該基材層の塗布工程と該受像層の塗布工程の間に乾燥工程を必要とする。非相溶性のコーティング組成物のコーティングを同時にまたは湿潤状態で異時におこなうと、コーティングステーションにおいてコーティング分散体の凝固を生じさせるので、コーティングが完全に妨げられるか、あるいは乏しいコーティング品質がもたらされる。炭酸カルシウム(負の表面電荷を有する粒子)を含有する基材層用コーティング組成物は、アルミナ(正の表面電荷を有する粒子)を含有する上部層用コーティング組成物と相溶性を示さない。炭酸カルシウムを含有する組成物とアルミナを含有する組成物の同時コーティングは、非相溶性組成物の性質により妨げられ、該組成物と接触するコーティング装置を詰まらせてしまう。
【0014】
キヤマ等による米国特許第6899930号明細書においては、2つの層、即ち、p-DADMACで処理したヒュームドシリカを含有するより下層と、アルミナまたはアルミナ水和物(疑ベーマイト)を含有する上層とを具備する光沢を有するインクジェット受像体が開示されている。該明細書においては、スライドビード塗布機を用いて樹脂で被覆された紙支持体上に2層を同時に塗布するコーティング方法が開示されている。ヒュームドシリカ層は、バインダーに作用する硬化剤を使用しないと、亀裂を生じて光沢を小さくする傾向がある。キヤマ等は、ポリ(ビニルアルコール)バインダーに対してホウ素化合物が好ましいことを開示している。しかしながら、これらの化合物は、コーティング組成物へ直接添加した場合、極めて急速に反応してしまう。拡散性の架橋剤を付与するために、余分の塗布および乾燥工程によって塗布される副層は既知であるが、該副層を設けるためには1つよりも多くの塗布工程を必要とする。
【0015】
チェン等による米国特許第6150289号明細書においては、粒子の表面電荷を正の状態にするようにカチオンポリマーで処理したクレー粒子の被覆層を有する普通紙を具備し、艶消し表面を有するインクジェット受像体が開示されている。粒子の70%は、0.5ミクロンより大きい等価球径を有する。彼らは、このコーティング組成物を使用して、光沢のあるインクジェット受像体を調製する手段を提案していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6630212号明細書
【特許文献2】米国特許第6689430号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0134450号明細書
【特許文献4】米国特許第6899930号明細書
【特許文献5】米国特許第6150289号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
単一の塗布工程および乾燥工程のみを必要とする効率的な方法で、低コストの材料を使用して製造可能な写真品質インクジェット受像材であって、優れた光沢、色濃度および画像品質を備える該インク受像材に対する要求を満足していないままである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以下のもの具備するインクジェット印刷システムを提供する:
a)インクジェットプリンター、
b)インク組成物、および
c)支持体を具備し、該支持体上に多孔質基材層および多孔質最上層の順でこれらの層が被覆されたインクジェット記録媒体であって、
1)該多孔質基材層は、バインダーと、正符号のゼータ電位をもたらすようにカチオン性表面改質剤で処理されたクレー粒子とを含有し、該クレー粒子は1.0ミクロン未満のメジアン粒径を有し、
2)該多孔質最上層は、正符号のゼータ電位を有するか又は該電位を有するように処理された半金属酸化物粒子若しくは金属酸化物粒子を含有し、該粒子は、500nm未満の平均2次粒径を有し、および、
3)該基材層中のグラム当りのクレー粒子に対するカチオン性改質剤のミリモル当量の比は0.1よりも大きい、該インクジェット記録媒体。
【発明の効果】
【0019】
また、本発明は記録媒体および該媒体の製造方法を提供する。インクジェット記録媒体は、1回の塗布および乾燥工程のみを必要とする効率的な方法で、低コストの材料を使用して製造することができ、および印刷システムは、優れた光沢と色濃度および画像品質を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面に対して共通する同一の特徴を指定できるように、同一の参照番号が使用される以下の説明および図面とを参酌することにより、本発明の上記目的および別の目的、特徴、および利点は、より明確に理解できる。
【図1】図1は、本発明において有用なインクジェットプリンターの模式的斜視図である。
【図2】図2は、インクジェットプリンターの捕給品トレーから回収品トレーへの媒体の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は先に要約されている。本発明において有用なインクジェット印刷システムは、プリンターと、少なくとも1種のインクと、インクジェットプリンターからのインクを受理するのに適する画像記録素子、特にシート(以下「媒体」とも称する)とを具備する。インクジェット印刷は、デジタルデータ信号に応答して、画像記録素子へピクセル−バイ−ピクセル法でインク液滴を沈着させることにより、印刷画像を形成させるノン-インパクト法である。所望の印刷画像を得るためには、画像記録素子上へのインク液滴の沈着を制御するために種々の方法を利用してもよい。ドロップ・オン・デマンド型インクジェットとして既知の1つの方法の場合、個々のインク液滴は、所望の印刷画像を形成するために、画像記録素子上へ必要に応じて投射される。ドロップ・オン・デマンド型印刷におけるインク液滴の投射を制御する常套の装置は、圧電変換器、熱的バブル形成器または可動性アクチュエーターを具備する。
【0022】
ドロップ・オン・デマンド(DOD)型の液体噴射装置は、長年に亘り、インクジェット印刷システムにおけるインク印刷装置として知られている。初期の装置は、例えばキーサー等による米国特許第3946398号明細書およびステム等による米国特許第3747120号明細書などに記載された圧電アクチュエーターに基づいたものである。インクジェット印刷の現在の一般的な態様は、ハラ等による米国特許第4296421号明細書において記載されているような、液滴噴射を生じさせる蒸気バブルを発生させる電気抵抗ヒータを使用するサーマルインクジェット(または「サーマルバブル噴射」)である。連続インクジェットとして既知な別の方法の場合、液滴の連続流が生成され、その一部が、画像記録素子の表面上に画像に対応して偏向され、一方、未画像化液滴は、採取されインク溜めへ戻される。連続的なインクジェットプリンターは、米国特許第6588888号明細書、同第6554410号明細書、同第6682182号明細書、同第6793328号明細書、同第6866370号明細書、同第6575566号明細書および同第6517197号明細書に記載されている。
【0023】
図1は、プリンターの内部構成部品のための保護カバー40を具備するインクジェットプリンター10を例示する模式図を示す。プリンターは、トレー中に媒体補給品20を収容する。プリンターは、印刷ヘッド30へインクを供給する1個以上のインクタンク18(ここでは4種のインクが図示されている)を具備する。印刷ヘッド30およびインクタンク18は、キャリッジ100上に取り付けられる。プリンターは、印刷ヘッド30からインク液滴を射出するための命令として、制御装置(図示せず)により指示される信号を付与する画像データ源12を具備する。印刷ヘッドはインクタンクと一体であってもよく、独立していてもよい。印刷ヘッドの例は、米国特許第7350902号明細書に記載されている。一般的な印刷操作の場合、媒体シートは、媒体補給品用トレー中の記録媒体(またはインクジェット受理体)補給品20から、印刷ヘッド30が該媒体シート上へインク液滴を沈着させる領域まで移動する。印刷済媒体回収品22は、取出されトレー中に積層される。
【0024】
図2の側面図において模式的に示されるように、図2は、インクジェットプリンターが、プリンターを通過する媒体シートを前進させる種々のローラーをどのような態様で具備するかを模式的に示す。この例において、ピックアップローラー320は、矢印302の方向へ、媒体補給品用トレー360に配設される媒体の積層20における最上部の媒体シート371を移動させる。媒体シートが、プリンターの矢印304方向に沿って連続的に前進するように、回転ローラー322は、C形状の通路350(図示されない曲面と連携する)に沿って媒体シート371を移動させるように作用する。その後、媒体シート317が、印刷領域303を横切り、プリンターキャリッジ100の下方を通る方向304に沿って前進するよう、供給ローラー312および(複数の)アイドラローラー323により移動させる。排出ローラー324および(複数の)スター・ホイール325は、方向304に沿って、取出しトレー380の方向へ印刷済媒体シート390を運搬する。標準的な媒体のピックアップおよび供給に関して、全ての被動ローラーは順方向313に回転することが望ましい。媒体シートの性質またはそれらに付与される表示を検出可能な光学センサー215を、キャリッジ100上に取り付けることができる。媒体シートの性質またはそれらに付与された表示を検出可能な別の光学センサー375は、媒体シート371の表面若しくは裏面に面して配設させてもよく、また、媒体供給トレー360を含む媒体運搬通路350に沿う任意好都合な位置に設置させてもよい。あるいは、インクジェット印刷システムは、印刷後に個別の印刷物へ切断してもよい。できるインク記録媒体の連続ロールが供給されるプリンターを具備する。
【0025】
種々の画像記録素子(媒体)は、それらのインク吸収能の点で広範囲に相違する。インクジェット印刷システムは、具体的な媒体の種類に応じて設計される多種多様な印刷モードを提供する。印字モードは、印刷操作中におけるインク液滴の噴出量、噴射配置および噴射タイミングを決定するための1組のルールである。インクジェット印刷における最適な画像再生のために、印刷システムは、供給される媒体の種類と適正な印刷モードとを調和させるべきである。印刷システムは、供給される媒体の同一性を受け入れるためにユーザーインターフェースを頼りにしてもよく、あるいは自動化された媒体検出システムを使用してもよい。媒体検出システムは、媒体検出器、信号調整手順、および媒体の同一性を決定するためのアルゴリズム若しくはルックアップ表を備える。媒体検出器は、ロゴ、または媒体の種類に対応する模様を含む媒体上に存在する表示を検出するように設計されてもよく、あるいは媒体の固有特性、一般に光の反射を検出するように設計されてもよい。検出する性質に基づいて、媒体シートの表面若しくは裏面を検査できる位置に媒体の光学センサーを配設してもよい。図2に例示するように、光学センサー375は、媒体補給品トレー360における媒体シート371を検査できるように配設されてもよく、または媒体運搬通路350に沿うように配設されてもよい。あるいは、光学センサー215は印刷領域303に配設されてもよい。米国特許第7120272号明細書において記載された方法により検出可能な繰返しパターンを有する媒体が有用である。あるいは、種々の媒体検出法が、米国特許第6585341号明細書に記載されている。
【0026】
インクジェット印刷分野において既知のインク組成物は、水性組成物若しくは溶剤型組成物であり、室温および室内圧力で、液体、固体またはゲル状態である。水性型インクは溶剤型インクと比べて環境により優しく、更に、多くの印刷ヘッドが水性型インクと共に使用するように設計されているので、水性型インク組成物が好ましい。
【0027】
インク組成物は、顔料、染料、高分子色素、増量染料/ラテックス粒子、または任意の他の種類の着色剤、あるいはこれらの混合物を用いて着色できる。顔料を基剤とするインク組成物が使用される。なぜならば、このようなインク組成物は、印刷画像に対して、他の種類の着色剤から形成された印刷画像と比較して、良好な耐光性および耐オゾン性を備えると共に、匹敵する光学濃度をもたらすからである。インク組成物中の着色剤は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、グレー、レッド、バイオレット、ブルー、グリーン、オレンジ、ブラウンなどであってもよい。
【0028】
インクジェット印刷に関する課題は、様々な種類のインクジェット受像体上に形成される画像の安定性と耐久性である。一般的に、インク着色剤として顔料を使用するインクは、特に微細孔の写真光沢受像体上に印刷された場合、光退色および環境汚染物質による退色に対して、染料系インクと比べて優れた画像安定性を提供する。良好な物理的耐久性(例えば耐摩耗性)を示す顔料系インクは、インク組成物中にバインダーポリマーを添加することにより改善できる。
【0029】
本発明において有用なインク組成物は水性である。本明細書において、水性とは、インク組成物における液体成分の大部分が水であること、好ましくは50%よりも多くが水であること、より好ましくは60%よりも多くが水であることを意味する。
【0030】
本発明において有用な水性組成物は、インク組成物がプリントのノズル内で乾燥若しくは被膜形成することを防ぎ、インク組成物中の成分の溶解性を促進し、あるいは印刷後の画像記録素子内におけるインク組成物の浸透を促進するために、保湿剤および/または補助溶剤を含有してもよい。水性系インク組成物において使用される保湿剤および補助溶剤の代表例には以下のものが含まれる:(1)アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソ−ブチルアルコール、フルフリルアルコールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールなど;(2)多価アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−プロパンジオール、糖類および糖アルコール並びにチオグリコールなど;(3)多価アルコールから誘導された低級モノ−およびジ−アルキルエーテル、例えば、エチレングリコールモノメチルエ−テル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなど;(4)窒素含有化合物、例えば、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど;および(5)硫黄含有化合物、例えば、2,2’−チオジエタノール、ジメチルスルホキシドおよびテトラメチレンスルホンなど。
【0031】
本発明において有用なインク組成物は、顔料を基剤とする。なぜならば、このようなインクは、他の種類の着色剤から形成される印刷画像と比べて、より高い光学濃度と、より良好な耐光性および耐オゾン性を有する印刷画像をもたらすからである。本発明において有用なインクに使用できる顔料には、例えば、米国特許第5026427号明細書、同第5085698号明細書、同第5141556号明細書、同第5160370号明細書および同第5169436号に記載された顔料を含む。顔料の的確な選択は、具体的な用途と、色再現および画像安定性などの性能要件によって左右される。
【0032】
本発明における使用に適する顔料には、特に限定的ではないが、以下のものが含まれる:アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、b−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジスアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンタントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、二酸化チタン、酸化鉄、およびカーボンブラック。
【0033】
使用できる顔料の典型例には、以下のものが含まれる:カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,5,6,10,12,13,14,16,17,62,65,73,74,75,81,83,87,90,93,94,95,97,98,99,100,101,104,106,108,109,110,111,113,114,116,117,120,121,123,124,126,127,128,129,130,133,136,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,165,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,183,184,185,187,188,190,191,192,193,194;C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,21,22,23,31,32,38,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,49:3,50:1,51,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,68,81,95,112,114,119,122,136,144,146,147,148,149,150,151,164,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,181,184,185,187,188,190,192,194,200,202,204,206,207,210,211,212,213,214,216,220,222,237,238,239,240,242,243,245,247,248,251,252,253,254,255,256,258,261,264;C.I.ピグメントブルー1,2,9,10,14,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,18,19,24:1,25,56,60,61,62,63,64,66、架橋アルミニウムフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントブラック1,7,20,31,32;C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,6,13,15,16,17,17:1,19,22,24,31,34,36,38,40,43,44,46,48,49,51,59,60,61,62,64,65,66,67,68,69;C.I.ピグメントグリーン1,2,4,7,8,10,36,45;C.I.ピグメントバイオレット1,2,3,5:1,13,19,23,25,27,29,31,32,37,39,42,44,50、およびこれらの混合物。
【0034】
分散剤または界面活性剤を使用することなく分散可能な自己分散性顔料も、本発明において有用である。この種の顔料は、表面処理、例えば酸化/還元、酸/塩基処理、またはカップリング反応を介する官能化などに付されているので、個別の分散剤を必要としない。このような表面処理によって、アニオン性基、カチオン性基または非イオン性基を顔料表面へ付与することができる。例えば、米国特許第6494943号明細書および同第5837045明細書を参照されたい。自己分散型顔料の例としては、以下のものが含まれる:CAB-O-JET200およびCAB-O-JET300(キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ社)およびボンジェット(BONJET)CW-1、CW-2およびCW-3(オリエント・ケミカル・インダストリーズ社)。特に、自己分散型のカーボンブラック顔料インクが、本発明における有用なインクセットに使用でき、この場合、インクは、無機塩基により中和された酸性基を含有する水溶性ポリマーを含有し、カーボンブラック顔料は、同時継続中の本出願による米国特許仮出願第60/892137号明細書に記載されるような揮発性の表面官能基を11重量%より多く含有する。
【0035】
本発明において有用な顔料を基剤とするインク組成物は、インクジェット印刷の分野において既知の任意の方法により調製できる。有用な方法は、一般に次の2つの工程を含む:(a)顔料を一次粒子へと粉砕するための分散または微粉砕工程(ここで、一次粒子は、粒子系において識別可能な最小区分粒子として定義される)。(b)インクの使用濃度をもたらすように、工程(a)からの顔料分散液を残りのインク成分で希釈する希釈工程。
【0036】
微粉砕工程(a)は、任意の型の細粉砕機、例えば媒体ミル、ボールミル、二軸ロールミル、三軸ロールミル、ビードミルおよびエアジェットミル、磨砕機、または液体相互作用チェンバーを用いて行うことができる。微粉砕工程(a)では、一般的に、工程(b)において顔料分散液を希釈するのに使用する媒体と同一若しくは類似した媒体中へ、顔料を所望により懸濁させる。一次粒子まで顔料を粉砕することを容易にするために、不活性な微粉砕媒体を、所望により微粉砕工程(a)に存在させる。不活性な微粉砕媒体としては、ポリマービーズ、ガラス、セラミックス、金属、および例えば米国特許第5891231号明細書に記載されているようなプラスチックが含まれる。微粉砕媒体は、工程(a)で得られる顔料分散液、あるいは工程(b)で得られるインク組成物のいずれかから取り除かれる。
【0037】
一次粒子への顔料の粉砕を容易にするために、所望により、分散剤を微粉砕工程(a)に存在させてもよい。工程(a)で得られた顔料分散液または工程(b)で得られたインク組成物に対して、粒子の安定性を維持してその沈降を防ぐために、所望により分散剤を存在させてもよい。本発明における使用に適する分散剤には、特に限定てきではないが、インクジェット印刷の分野において一般的に使用されている分散剤が含まれる。水性顔料を基剤とするインク組成物に対する有用な分散体は、アニオン性、カチオン性または非イオン性の界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム、または例えば、米国特許第5679138号明細書、同第5651813号明細書または同第5985017号明細書に記載されているようなオレイルメチルタウリン酸カリウムもしくはナトリウムなどである。
【0038】
ポリマー分散剤も既知であり、水性顔料を基剤とするインク組成物に有用である。ポリマー分散剤は、微粉砕工程(a)の前および該工程の間に顔料分散液へ添加してもよく、ポリマー分散剤には、例えば、ホモポリマー、コポリマー、アニオン性、カチオン性若しくは非イオン性のポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマー、枝分かれポリマー及びグラフトポリマー等が含まれる。微粉砕操作において有用なポリマー分散剤には、親水性部分および疎水性部分を有するランダムコポリマーおよびブロックコポリマー、例えば、米国特許第4597794号明細書、同第5085698号明細書、同第5519085号明細書、同第5272201号明細書、同第5172133号明細書または同第6043297号明細書を参照されたい、およびグラフトポリマーが含まれる(例えば米国特許第5231131号明細書、同第6087416号明細書、同第5719204号明細書または第5714538号明細書を参照されたい)。
【0039】
着色剤相およびポリマー相を有する複合着色剤粒子も、本発明において有用な水性顔料を基剤とするインクに有用である。複合着色剤粒子は、顔料の存在下でモノマーを重合させることにより形成される(例えば、米国特許出願公開第2003/0199614号明細書、同第2003/0203988号明細書または同第2004/0127639号明細書を参照されたい)。マイクロカプセル型顔料粒子も有用であり、該顔料粒子は樹脂フィルムでコートした顔料粒子から成る(例えば、米国特許第6074467号明細書を参照されたい)。
【0040】
本発明における有用なインク組成物において使用される顔料は、有効量、一般的に、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%の量で存在させてもよい。
【0041】
インクジェットインク組成物は、非着色粒子、例えば、無機粒子またはポリマー粒子を含有してもよい。特に、写真品質画像をもたらすことを意図するインクジェットインク組成物において、このような粒状添加剤を使用することが近年増加している。例えば、米国特許第5925178号明細書においては、画像記録素子上の顔料粒子の耐摩擦性と光学濃度を改良するために、顔料を基剤とするインク中に無機粒子を使用することが開示されている。別の例の場合、例えば米国特許第6508548号明細書においては、印刷画像の耐光性と耐オゾン性を改善するために、染料を基剤とするインクにおいて、水分散性ポリマーラテックスを使用することが開示されている。
【0042】
印刷画像の光沢差、耐光性および耐オゾン性、耐水性、耐摩擦性およびその他の種々の性質を改善するために、インク組成物は、非着色粒子、例えば無機粒子またはポリマー粒子を含有してもよい(例えば、米国特許第6598967号明細書または同第6508548号明細書を参照)。非着色粒子を含有するが着色剤を含有しない無色のインク組成物も使用できる。例えば、米国特許出願公開第2006/0100307号明細書においては、水性媒体とミクロゲル粒子を含有するインクジェットインクが開示されている。無色のインク組成物は、普通紙上での色間にじみおよび耐水性を低減させるために、着色インク組成物の下部、上部に印刷されるか、または共に印刷される不溶性流体または「定着液」などとして、本技術分野において、しばしば使用される(たとえば、米国特許第5866638号または同第6450632号明細書を参照)。また、無色インクは、一般に、耐引っ掻き性および耐水性を改良させるために使用され、印刷画像へオーバーコート付与する(例えば、米国特許出願公開第2002/0009547号明細書または欧州特許第1022151号明細書を参照)。また、無色インクは、印刷画像における光沢差を低減させるために使用される(たとえば、米国特許第6604819号明細書、または米国特許出願公開第2003/0085974号明細書、同第2003/0193553号明細書、または同第2003/0189626号明細書を参照)。
【0043】
本発明において使用されるインクにおいて有用な無機粒子の例には、特に限定的ではないが、アルミナ、ベーマイト、クレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、熱分解クレー、アルミノシリケート、シリカ、または硫酸バリウムが含まれる。
【0044】
水系インクの場合、本発明において有用なポリマーバインダーは、ポリマー化学の技術分野の当業者によく知られている、一般に、付加ポリマーまたは縮合ポリマーとして分類される水分散性ポリマーを含む。ポリマーの例には、アクリル、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、ポリカーボネート、多酸無水物、およびそれらの組み合わせからなるコポリマーが含まれる。このようなポリマー粒子は、アイオノマー性、フィルム形成性、非フィルム形成性、可融性、または高度に架橋されたものであってよく、広範囲の分子量およびガラス転移温度を有していてもよい。
【0045】
有用なポリマーバインダーの例には、商標名ジョンクリル(JONCRYL)(S.C.ジョンソン社)、Ucar(ダウ・ケミカル社)、Jonrez(ミード・ウエストバコ社)およびバンクリル(Vancryl)(エアー・プロダクツ・アンド・ケミカル社の下に市販されているスチレン−アクリルコポリマー;商標名イーストマン(Eastman)AQ(イーストマン化学社)の下に市販されているスルホン化ポリエステル並びにポリエチレンまたはポリプロピレン樹脂エマルジョンおよびポリウレタン(例えば、ウイトコ社製のウイトコボンズ(Witcobonds))が含まれる。これらのポリマー粒子は、これらが典型的な水系インク組成物と混和性があり、また、これらが印刷画像に対して物理的な摩耗、光およびオゾンに対する高い耐性を付与するので好ましい。
【0046】
本発明において使用されるインク組成物において有用な非着色粒子およびバインダーは、有効量、一般的には0.01〜20重量%、および好ましくは0.01〜6重量%の量で存在させてもよい。物質の的確な選択は、印刷画像の具体的な用途および性能要件に依存する。
【0047】
インク組成物は、水溶性ポリマーバインダーを含有してもよい。インク組成物に有用な水溶性ポリマーは、それらがインクの水相若しくは水/水溶性溶媒相の混合相に溶解するという点で、ポリマー粒子と区別される。「水溶性」という用語は、本明細書においては、ポリマーが水に溶解するか、またはポリマーが少なくとも部分的に中和されたときに、得られる溶液が視覚的に透明であることを意味する。この種のポリマーに含まれるものとしては、非イオン性、アニオン性、両イオン性およびカチオン性のポリマーである。水溶性ポリマーの代表例としては、以下のものが含まれる:ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンイミン、ポリアミドおよびアルカリ可溶性樹脂、ポリウレタン(例えば、米国特許第6268101号明細書に記載のポリウレタン)、ポリアクリル酸型ポリマー、例えばポリアクリル酸およびスチレン−アクリルメタクリル酸コポリマー(例えば、S.C.ジョンソン社製のJoncryl 70、ミード・ウエストバコ社製TRUDOT IJ−4655、およびエアー・プロダクツ・アンド・ケミカル社製のバンクリル68S。
【0048】
本発明において有用なインクセットのインクで使用できる、水溶性アクリル系ポリマー添加剤ならびに水分散性ポリカーボネート系もしくはポリエーテル系ポリウレタンの例としては、同時係属であり、同一出願人による米国特許出願第60/892158号明細書および同第60/892171号明細書に記載されている。また、本発明において使用されるインクに有用なポリマーバインダー添加剤は、例えば、米国特許出願公開第2006/0100307号明細書および同第2006/0100308号明細書に記載されている。
【0049】
本発明の実施に際し、所望の色間にじみを有する印刷物をもたらすことができるように、インクの静的表面張力および動的表面張力が制御される。特に、微細孔写真光沢紙および普通紙のいずれにおいても色間にじみに対して許容できる性能をもたらすために、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック顔料系インク並びに無色保護インクを含有するインクセットの全インクに対する10ミリ秒の表面寿命での動的表面張力を35mN/m以上にすべきであり、一方、イエローインクおよび無色保護インクの静的表面張力を、インクセットのシアンインク、マゼンタインクおよびブラックインクの静的表面張力よりも少なくとも2.0mN/m低くすべきであり、そして、無色保護インクの静的表面張力を、イエローインクの静的表面張力よりも少なくとも1.0mN/m低くすべきであることが判明した。イエローインクの静的表面張力は、透明保護インクを除いたインクセットにおける他の全てのインクと比べて少なくとも2.0mN/m低く、透明保護インクの静的表面張力は、イエローインクを除いたインクセットにおける他の全てのインクと比べて少なくとも2.0mN/m低いことが、一般的に好ましい。
【0050】
適当な程度にインクの表面張力を調整するために、界面活性剤を添加してもよい。界面面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性であってもよく、インク組成物あたり0.01〜5%で使用される。適当な非イオン性界面活性剤の例には、以下のものが含まれる:線状または第2級アルコールエトキシレート(例えばユニオン・カーバイド社製のTERGITOL15-SおよびTERGITOL TMN型など、およびユニクマ社製のBRIJ型など)エトキシル化アルキルフェノール(例えばユニオン・カーバイト社製のTRITON型など)、フルオロ界面活性剤(例えばデュポン社製のZoNYLSなど、および3M社製のFULUORADなど)、脂肪酸エトキシレート、脂肪アミドエトキシレート、エトキシ化およびプロポキシ化ブロックコポリマー(例えばBASF製のPLURONICおよびTETRONIC型など)、エトキシ化およびプロポキシ化シリコーン系界面活性剤(例えば、CK ウイトコ社製のSILWET型など)、アルキルポリグリコシド(例えばコグニス社製のグルコポンズ(GLUCOPONS)など)およびアセチレン型ポリエチレンオキシド界面活性剤(例えばエアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社製のスルフィノル(SURFYNOL)など)。
【0051】
アニオン性界面活性剤の例には、以下のものが含まれる:カルボキシル化界面活性剤(例えばエーテルカルボキシレートおよびスルホスクシネートなど)、硫酸化界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウムなど)、スルホン化界面活性剤(例えば、スルホネート(例えばドデシルベンゼンスルホネート、アルファオレフィンスルホネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、脂肪酸タウレートおよびアルキルナフタレンスルホネートなど)、リン酸化界面活性剤(例えば、デクスター・ケミカル社製のSTRODEX型などを含む、アルキルおよびアリールアルコールのリン酸化エステルなど)、ホスホン化およびアミンオキシド界面活性剤、およびアニオン性フッ素化界面活性剤。両性の界面活性剤の例には、ベタイン、スルテイン、およびアミノプロピオネートが含まれる。カチオン性界面活性剤の例としては、第4アンモニウム化合物、カチオンアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸アミンおよびイミダゾリン界面活性剤が含まれる。上記界面活性剤のさらなる例は、「マカッチョンの、乳化剤および洗浄剤」2003年、北米版に記載されている
【0052】
水性インク中でのカビ、菌類などの微生物の増殖を抑制するために、インクジェットインク組成物へ殺生物剤を添加してもよい。インク組成物用の好ましい殺生物剤は、0.0001〜0.5重量%の最終濃度で含有されるPROXEL GXL(ゼネカ・スペシャリティーズ社製)である。インクジェットインク組成物中に所望により存在させてもよい更なる添加剤は、増粘剤、導電率向上剤、コゲーション防止剤、乾燥剤、水褪せ防止剤、色素可溶化剤、キレート化剤、バインダー、光安定剤、粘性化剤、緩衝剤、防カビ剤、カール防止剤、安定剤および消泡剤が含まれる。
【0053】
本発明において有用な水性インク組成物のpHは、有機若しくは無機の酸又は塩基を添加することにより調整できる。有用なインクは、使用される染料または顔料の種類に応じて、好ましくは2〜10のpHを有する。代表的な無機酸には、塩酸、リン酸および硫酸が含まれる。代表的な有機酸としては、メタンスルホン酸、酢酸および乳酸が含まれる。代表的な無機塩基には、アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩が含まれる。代表的な有機塩基には、アンモニア、トリエタノールアミンおよびテトラメチルエチレンジアミンが含まれる。
【0054】
インク組成物の的確な選択は、具体的な用途と、インク組成物が噴射される印刷ヘッドに要求される性能に基づいておこなわれる。インクジェット印刷の技術分野において既知のように、感熱および圧電性ドロップ・オン・デマンド型の印刷ヘッドおよび連続型印刷ヘッドは、信頼性があり正確なインクの噴射をもたらすために、種々の一連の物理的特性を備えるインク組成物をそれぞれ必要とする。許容可能な粘度は、20cP以下であり、好ましくは1.0〜6.0cPの範囲である。
【0055】
カラーインクジェット印刷の場合、最小限のシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクが、減法混色系として機能を果たす噴射用インクセットに必要である。画像中へ黒色領域をもたらすこと、およびテキストなどの白黒の文書を印刷するのに必要とされるインクを低減させるために、ブラックインクがインクセットへ高頻度で追加されている。インクセットに複数のブラックインクを付与することで、多孔質写真光沢紙および普通紙受像体の何れにも印刷できる必要性を満足する。この場合、ブラックインクのうちの1種は、多孔質写真光沢受像体上への印刷により良好に適し、別のブラックインクは、普通紙上の印刷により良好に適するようにしてもよい。受像体の種類に応じて所望の印刷濃度、印刷光沢、および耐スマッジ性をもたらすために、異なる種類のブラックインク組成物を用いることが適当である。
【0056】
他のインクもインクセットに添加できる。これらのインクには、明色もしくは淡色シアン、明色もしくは淡色マゼンタ、明色もしくは淡色ブラック、レッド、ブルー、グリーン、オレンジ、グレーなどが含まれる。付加的なインクは画像品質に対して有益であるが、これにより、システムが複雑になり、システムの費用が増加する。最終的にインクをほとんど受像しないかインクを全く受像しない印刷画像の領域へ、光沢均一性、耐久性および耐汚染性をもたらすために、無色のインク組成物をインクジェット用インクセットへ添加してもよい。極めて高濃度の着色剤を含有するインクで印刷した画像領域でさえ、付加的な利点をもたらすように、無色のインク組成物をこれらの領域に添加してもよい。上述の目的のための保護インクの例が、米国特許出願公開第2006/0100306号明細書および同第2006/0100308号明細書に記載されている。
【0057】
本明細書における本発明の説明について、以下の定義が一般的に適用される:
【0058】
「単一のコーティング工程」または「1回のコーティング工程」という用語は、ローラーでインクジェット記録材料を巻き取る前に、必要に応じて1または複数のステーションで、1層または複数層のコーティングを施すことを含むコーティング工程を意味する。ロールにインクジェット記録材料を巻き取る前と、巻き取り後、ただし、ロールでインクジェット記録材料の2回目の巻き取り前に更なるコーティング工程が施されるコーティング工程は、2回のコーティング工程と称される。
【0059】
本明細書において「後計量法」という用語は、塗布した過剰量の材料を除去することにより、コーティング後にコーティング組成物を計量する方法を意味する。
【0060】
本明細書において「前計量法」という用語は塗布する前に、例えば、ポンプによりコーティング組成物を計量する方法を意味する、直接計量法を意味する。前計量法は、例えば、カーテンコーティング、押出ホッパーコーティング、スライドホッパーコーティングなどから選択できる。
【0061】
本明細書において使用される「多孔質層」という用語は、液体分散よりも主として毛管現象により、塗布したインクを吸収することを特徴とする層と定義される。多孔度は粒子とバインダーの割合によって影響を受けるが、多孔度は粒子間の間隙により形成される孔に基づく。層の多孔度は、臨界顔料体積濃度(CPVC)に基づいて予測できる。少なくとも支持体が多孔質ではないと考えられる場合でも、支持体上に1または複数の多孔質層、好ましくは実質的に全ての層に多孔質層を有するインクジェット用受像媒体は、「多孔質インクジェット記録媒体」と称される。
【0062】
本明細書において言及される粒径は、特に表示されない限り、水中に分散させた希釈粒子の光散乱測定によって定義されるメジアン粒径であり、それは、ナノトラック(NANOTRAC)(マイクロタック社)、マールバーン(MALVERN)もしくはCILAS機器または実質的に同等の手段(通常、詳細が製品仕様書に記載されている)を使用して、レーザー回折または光子相関分光分析(PCS)技術を用いて測定される。粒径が0.3マイクロメータよりも大きい場合は、マイクロメリティックス社製のSEDIGRAPH5100または同等の手段により測定される。粒径が50nm以下の場合、粒子の測定は直説法、即ち、代表的なサンプルを透過電子顕微鏡法(TEM)または同等の手段により測定することによっておこなわれる。特に断らない限り、粒径は二次粒径を示す。
【0063】
インクジェット媒体における各層に関して、本明細書で使用される「上(over)」、「上方(above)」、「上側(upper)」、「下(under)」、「下方(below)」、「下側(lower)」という用語は支持体上の層の順序を示すが、層が直接隣接すること、または中間層が存在しないことを必ずしも意味するものではない。
【0064】
「受像層」という用語は、顔料捕捉層、染料捕捉層、または染料/顔料捕捉層として用いられる層として定義され、この場合、印刷画像は、実質的に層の全体にわたって出現する。一般的に、受像層は、染料を基剤とするインク用の媒染剤を含有する。染料を基剤とするインクの場合、画像は、所望により1層より多くの受像層に存在させてもよい。
【0065】
本明細書において使用される「基材層」(「溜め層」または「インクキャリア液受容層」と称する場合もある)は、相当な量のインクキャリア液を吸収する、少なくとも1層の別のインク保持層よりも下方にある層を示す。使用の際、インク用キャリア液の相当量、場合によっては最も多くの量が、基材層中に保持される。基材層は画像含有層の上にはなく、また、それ自体が画像含有層(顔料捕捉層または染料捕捉層)ではない。一般的に、基材層は、支持体に最も近いインク保持層である。
【0066】
「インク受容層」または「インク保持層」は、塗布されたインク組成物を受容する、支持体より上方の任意の全ての層を含み、インクジェット記録素子に画像を形成するために使用される1種以上のインク組成物の任意の部分を吸着または捕捉する層であり、たとえ後の乾燥により除去されるとしても、インクキャリア液および/または着色剤を含有する層である。したがって、インク受容層は、染料および/または顔料によって画像が形成される受像層、基材層、又は任意の付加的な層を含み、例えばインクジェット記録素子の基材層と最上層の間の層であってもよい。一般的に、支持体より上の全ての層はインクを受容する。その上方にインク受容層を被覆させる支持体がインクキャリア液を吸収してもよい。この場合、それはインク受容層よりもむしろ、インク吸収性層またはインク吸収層と称される。
【0067】
本発明において使用される「沈降炭酸カルシウム」という用語は、合成的に調製された炭酸カルシウムを示し、天然に存在する炭酸カルシウムに基づかない。
【0068】
金属酸化物粒子および半金属酸化物粒子は、湿式法により調製される粒子と乾式法(気相法または蒸気相法)により調製される粒子とに大きく分類できる。また、後述の種類の粒子は、ヒュームド粒子または熱分解粒子とも称される。蒸気相法の場合、火炎加水分解法およびアーク法が商業的に使用されている。ヒュームド粒子は、非ヒュームド粒子または水和粒子と比べて異なる性質を示す。ヒュームドシリカの場合、このことは、表面上のシラノール基の密度差に起因する。ヒュームド粒子は、高い空隙率を有する三次元構造を形成するのに適当である。
【0069】
ヒュームド粒子または熱分解粒子は、より小さな一次粒子の凝集体である。一次粒子は多孔性ではないが、凝集体は十分な気孔体積を含むので、該凝集体は急速な液体吸収を可能とする。凝集粒子が密に充填された場合でも、コーティングにおける内在粒子が最小限の気孔体積を備えるので、これらの気孔を含む凝集体は、液体の吸収に十分な容量を保持するコーティングを可能とする。例えば、本発明において任意選択的に使用されるヒュームドアルミナ粒子は、米国特許出願公開第2005/0170107号明細書に開示されている。
【0070】
「普通紙」という用語は、未加工の紙上に塗布されたコーティングが1g/m未満である紙を意味する。「未加工の紙」という用語はセルロース紙を意味し、該紙はサイズ剤で処理されるか、または表面部の上へ処理物質を浸透させるが、その表面は連続層を有さず、または該紙のセルロース繊維上に別の物質のコーティングを有さない。
【0071】
本発明における基材層は、インク液体の吸収、平滑化、および軽度のカレンダー掛けによる光沢発現能をもたらすために、普通紙支持体と有利に併用される。基材層は、多孔度をもたらすために少なくとも50重量パーセント、有利には少なくとも80重量パーセント、一般的には少なくとも90重量パーセント、適当には少なくとも95重量パーセントの無機粒子を有用に含有する。少なくとも50重量パーセント、一般的には70重量パーセントの粒子は、クレー粒子を含有する。
【0072】
クレーは、1種または複数のアルミニウム、鉄およびマグネシウムの結晶性の含水層状珪酸塩であり、様々に配列された金属原子または半金属原子の四面体または八面体の相を含有し、および無機化合物の種類に従い、さらに水和介在層を含有する。カオリンは、Al・2SiO・2HOで表される組成物を有する。一般的にカオリンは、紙の製造における充填剤として使用され、カオリンはパルプ繊維と混合され、その輝度および不透明度は当該分野において既知である。焼成過程、即ち、カオリンを500℃〜1000℃で熱処理し、カオリンを脱ヒドロキシル化して非結晶質アルミノ珪酸塩層を除去することによって、改良した輝度と不透明度がもたらされる。普通紙支持体上に塗布される基材層の主成分として、カオリンは、軽度のカレンダー掛けにより上層または種々の層の光沢を発現するのに適する支持体をもたらす。
【0073】
本発明において使用することができるカオリンの例には、カオグロス(KAOGLOSS)90(ティエレ社製)、ポリグロス(POLYGLOSS)(ハーバー社製)、およびヒドラフィン(HYDRAFINE)90(ハーバー社製)が含まれる。
【0074】
本発明に係る基材層は、少なくとも2重量パーセントのバインダー、一般的には少なくとも4重量パーセントのバインダーを含有する。コーティング後の乾燥における亀裂の発生を防ぐのに十分なバインダーが使用される。バインダーの量は望ましくは制限される。なぜならば、インクがインクジェット媒体に塗布される場合、液体キャリア(一般的には水性キャリア)は、バインダーを膨潤させ、細孔を閉じる傾向があり、滲みまたは他の問題を生じる恐れがあるためである。したがって、多孔度を維持するために、基材層は25重量パーセント未満、適当には18重量パーセント未満、一般的には10重量パーセント未満のバインダーを含有する。
【0075】
任意の適当なポリマーバインダーを、本発明において採用されるインクジェット記録素子の基材層において使用できる。好ましい実施態様において、ポリマーバインダーには、任意の相溶性ポリマー、親水性ポリマー、例えば以下のものなどが含まれる:ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゼラチン、セルロースエーテル、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(ビニルアセトアミド)、部分的に加水分解されたポリ(酢酸ビニル/ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アルキレンオキシド)、スルホン化又はリン酸化ポリエステルおよびポリスチレン、カゼイン、ゼイン、アルブミン、キチン、キトサン、デキストラン、ペクチン、コラーゲン誘導体、コロジオン、寒天、クズウコン、グアー、カラゲナン、トラガカント、キサンタンまたはラムサン。適切には、親水性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)若しくはこれらのコポリマー、またはゼラチンである。一般に、良好な結果は、ポリウレタン、酢酸ビニル−エチレンコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニル−エチレンターポリマー、アクリルポリマー、またはそれらの誘導体を用いても得ることができる。バインダーは、一般的に水溶性の親水性ポリマー、最も適当には多価アルコール、例えば、ポリ(ビニルアルコール)などである。
【0076】
画像記録素子の基材層において、他のバインダー、例えば疎水性材料、例えば、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリウレタンラテックス、ポリエステルラテックス、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、n−酢酸ビニルとエチルアクリレートのコポリマー、および酢酸ビニルとn−ブチルアクリレートのコポリマーも使用できる。ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)ラテックスが特に適当である。親水性バインダーとラテックスバインダーの混合物が有用であり、PVAとポリ(スチレン−コ−ブタジエン)ラテックスの混合物が特に適当である。
【0077】
基材層に対して力学的耐久性を付与するために、上述したバインダーに作用する架橋剤を少量添加してもよい。このような添加剤は、層の凝集力を向上させる。架橋剤としては以下のものが使用できる:例えばカルボジイミド、多官能性のアジリジン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、多価の金属カチオン、ビニルスルホン、ピリジニウム、ピリジニウムジカチオンエーテル、メトキシアルキルメラミン、トリアジン、ジオキサン誘導体、クロムミョウバン、ジルコニウムスルフェート、ホウ酸またはホウ酸塩など。一般的に、架橋剤はアルデヒド、アセタール若しくはケタール、例えば2,3-ジヒドロキシ-1,4-ジオキサン、またはホウ素化合物である。
【0078】
特に、1つの実施態様においては、基材層は2〜10重量%の量でバインダーを含有し、少なくとも90重量%の無機粒子を含有する。この場合、少なくとも60重量パーセント、一般的に少なくとも65重量パーセント、望ましくは少なくとも70重量パーセントの無機粒子はカオリンを含有し、一般的に、メジアン粒子サイズは0.2〜1マイクロメータ、望ましくは0.5マイクロメータ未満である。
【0079】
1つの適当な実施態様において、基材層は、無機粒子の総重量に基づき最大40重量%の他の粒子(有機−無機複合粒子、有機および/または他の無機粒子)と混合させたクレーを含有する。
【0080】
基材層において使用できる有機粒子の例としてはポリマービーズが含まれ、これらに限定されないが以下のものが含まれる:アクリル樹脂、例えばメチルメタクリレートなど、スチレン樹脂、セルロース誘導体、ポリビニル樹脂、エチレン−アリルコポリマー、および重縮合ポリマー、例えばポリエステルなど。中空スチレンビーズが、ある用途に対して好ましい有機粒子である。
【0081】
使用できる有機粒子の他の例には、コア/シェル粒子、例えば米国特許第6492006号に記載されている粒子など、および均質な粒子、例えば米国特許第6475602号明細書に記載されている粒子などが含まれる。
【0082】
基材層において使用できる無機粒子の例には、カオリン粒子に加えて、例えばシリカ、アルミナ、二酸化チタニウム、タルクまたは酸化亜鉛が含まれる。1つの代表的な実施態様の場合、カオリンを含有する基材層は、多孔質アルミナまたはシリカゲルを更に含有する。
【0083】
1つの望ましい実施態様において、カオリンを含有する基材層は、基材層における無機粒子の総重量に基づき、少なくとも5重量パーセント、適当には少なくとも10重量パーセント、有利には少なくとも15重量パーセントの量でシリカゲル粒子を含有する。
【0084】
望ましい実施態様において、所望により添加される有機粒子または無機粒子の平均2次粒径は、少なくとも0.3μm、適当には少なくとも0.5μm、典型的には少なくとも1.0μmである。所望により添加される有機粒子または無機粒子の平均2次粒径は、5.0ミクロン未満である。上述のように、より小さな粒子は、より小さな毛細管をもたらすが、粒子により形成される大きな表面積を考慮してバインダーに対する粒子の割合を低く調整しない限り、より亀裂を生じやすくなる傾向がある。一方、適度に大きな粒子は、例えば、コーティングの厚みが乾燥被膜を補填するごく少量のビーズ径と等しい場合、接点がより少なくなるので、脆弱となるか亀裂を生じやすくなる。
【0085】
以下に示すように、記録素子の具体的な用途に応じて、基材層中に他の常套の添加剤を含ませてもよい。
【0086】
基材層は、多孔性の最上層より下方に配設され、画像記録素子に塗布される液体キャリアの十分量を吸収できるが、被覆層よりも染料および顔料は実質的に少ない。望ましくは、着色剤は上部の画像記録層に保持されるので、一般的に基材層は媒染剤を含有しない。
【0087】
反対電荷を備える部分を導入するための粒子の化学処理により、粒子の自然な電荷を逆転させることができる。粒子の表面電荷は、分散媒と、分散粒子に付着する流体の固定層との間の電位であるゼータ電位により特徴づけられる。ゼータ電位は、ASTM標準規格D4187−82(1985年)に従い、電気泳動移動度を測定することにより推定できる。
【0088】
正電荷を備えるカチオン性表面改質剤が望ましい。なぜならば、それは、粒子に分散性と、隣接したインク受像層の他の成分、例えば媒染剤、界面活性剤および他の正に帯電した粒子への化学的相溶性とを付与するからである。適当には、処理した粒子のゼータ電位は、pH2〜6の間の任意の条件下で、少なくとも+15mVである。ゼータ電位の増加に伴い、粒子のコロイド安定性が増加する傾向があるので、この値が好ましい。
【0089】
本発明における基材層のクレー粒子は、カチオン性表面改質剤で処理される。カチオン性表面改質剤は、正に帯電しているか、あるいはクレー粒子と結合させる際に正電荷を付与でき、分子種、ポリマー材料または微粒子状であってもよい。本発明の実施に適する分子種としては、弱有機塩基、例えばアミンおよびアミド、四級アミン、およびクレー粒子の表面に結合できる有機および無機カチオンが含まれる。
【0090】
本発明の実施に適するポリマー材料は、カチオン性高分子電解質、例えばポリアルキレンアミンなどから選択される。一の態様において、本発明において有用なカチオン性ポリマーは、正味の正電荷を有する。一の態様において、カチオン性ポリマーは、高分子アミン、例えば四級アミンのポリマーなどであってもよく、または四級アミンに転換できるアミンのポリマー、およびこれらの組み合わせである。また、カチオン性ポリマーは2種以上の異なるカチオン性モノマーを含有してもよく、またはカチオン性モノマーと他の非イオン性若しくはアニオン性モノマーを含有してもよい。カチオン性ポリマーにおける適当なモノマーは、ポリマー鎖中に四級アンモニウム基を含有する水溶性ポリオレフィンから選択される1種以上のモノマーを含み、例えば、以下のようなものが含まれる:エピクロロヒドリン/ジメチルアミンコポリマー、アルキル−若しくはジアルキルジアリルアンモニウムハロゲン化物、例えばジメチルジアリルアンモニウム塩化物(DADMAC)、ジエチルジアリルアンモニウム塩化物、ジメチルジアリルアンモニウム臭化物およびジエチルアリルアンモニウム臭化物など、メチルアクリロイル−オキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、アクリロイ−オキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、メタクリロイ−オキシエチルトリメチルアンモニウムメトスルフェート、アクリロイオキシエチルトリメチルアンモニウムメトスルフェート、またはメタクリルアミド−プロピルトリメチルアンモニウム塩化物。他のモノマー例には、以下のものが含まれる:ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、およびそのメチル塩化物またはジメチルスルフェート四級アンモニウム塩、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびそのメチル塩化物塩、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩化物およびその非四級化アミン形態、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩化物およびその非四級化アミン形態、ならびにジメチルアミンおよびエピクロロヒドリン。また、ポリマーの例には、エピクロロヒドリンとアミン、特に第2アミン(単独または組み合わせて)との共重合生成物、ならびに上述した任意のカチオン性モノマーと、非イオン性モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミドまたはN、N−ジメチルアクリルアミドなどを重合させることにより調整したポリマーが含まれる。
【0091】
カチオン性ポリマーの例には、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化物(p-DADMAC)、四級ジメチルアミノエチルアクリレートのコポリマー、および四級ジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマー、ならびにエピクロロヒドリン/ジメチルアミンのコポリマーが含まれる。適当なポリマーの例には、アジフロックス(AGEFLOX) B−50LV、ナルコ(NALCO)62060、ナルコ7135、ナルコ7132およびナルコ8850として商業的に入手可能なものが含まれる。有利には、カチオン性樹脂は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)およびポリエチレンイミンから成る群から選択される。特に有利なカチオン性ポリマーは、極めて低分子量のポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)、例えばアルドリッチ社から入手可能なp-DADMACである。
【0092】
別のカチオン性ポリマーには、ホルムアルデヒドと、メラミン、尿素、またはシアノグアニジンの縮合物が含まれる。また、本発明において有用なカチオン性ポリマーには、以下のものが含まれる:上述したカチオン性モノマーと、非イオン性モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、もしくはジアセトンアクリルアミドなど、および/またはアニオン性モノマー、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、AMPS、またはマレイン酸などとのコポリマー、ただし、得られるポリマーの正味の電荷はカチオン性である。
【0093】
1つの実施態様において、カチオン性ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより定義された少なくとも1000ダルトン(Da)、適当には少なくとも10000Da、有利には少なくとも20000Daの重量平均分子量を有する。別の実施態様において、カチオン性ポリマーは、1000000Da未満、一般的に500000Da未満、望ましくは300000Da未満、有利には100000Da未満の重量平均分子量を有する。また、異なるカチオン部位を含有するカチオン性ポリマーの物理的ブレンド、または異なる平均分子量と分子量分布を有するカチオン性ポリマーブレンドも使用できる。
【0094】
本発明において使用される画像記録媒体を形成するために使用されるクレー粒子用のカチオン性表面改質剤として適する微粒子材料は、pH2〜7の間の任意の条件下で正のゼータ電位を有する金属酸化物および不溶性の金属塩である。正に帯電したラテックス粒子、例えばポリスチレンおよびポリ(メチル)メタクリレートも使用できる。
【0095】
別の適当な実施態様において、カチオン性の表面改質剤は、以下の一般式で表される金属酸化物/水酸化物錯体(metal oxide hydroxide complex)を含有する:
【0096】
【数1】

式中、Mn+は少なくとも1種の金属イオンであり、
nは、3または4であり、
Aは、有機または無機イオンであり、
pは、1、2または3であり、および
xは、0に等しいか、または0よりも大きい;
ただし、nが3である場合には、a、b及びcは、M3+金属イオンの電荷と釣り合いが取れるように、以下の関係、0<a<1.5、0<b<3及び0<pc<3を有する有理数をそれぞれ示し;および
nが4である場合にはa、b及びcは、M4+金属イオンの電荷と釣り合いが取れるように、以下の関係、0<a<2、0<b<4及び0<pc<4を有する有理数をそれぞれ示す。
【0097】
適当には、金属イオンは、それぞれ3または4の価数を有するAl、TiおよびZrから選択される。特に好ましい金属錯体は、ジアルミニウムクロリドペンタヒドロキシド:Al(OH)Clの溶液(シロジェット A200、グレース・デイビソン社製)である。
【0098】
別の望ましい実施態様の場合、カチオン性表面改質剤は以下の式で表されるアルミノシリケートポリマーを含有する:
【0099】
【数2】

式中、x:yの比は1〜3の間であり、aおよびbは電荷中性の法則に従うように選択され、およびnは0〜10の間である。本発明の実施に適するこのようなアルミノシリケートポリマーは、米国特許第7223454号明細書に記載されている。
【0100】
別の実施態様において、カチオン性表面改質剤は、オルガノシランまたは加水分解オルガノシラン、一般的には、第1級、第2級および第3級アミノ基または第4級アンモニウム基を有するシリカ結合剤を含有する。より具体的には、オルガノシランは以下の式で表される:
【0101】
【数3】

式中、Rは水素、あるいは1〜20個の炭素原子を有する置換若しくは未置換のアルキル基、または6〜20個の炭素原子を有する置換若しくは未置換のアリール基を示す。
Zは1〜20個の炭素原子を有する有機基、または6〜20個の炭素原子を有するアリール基を示し、前記Zの少なくとも1つは、少なくとも1種の第1級、第2級、第3級または第4級の窒素原子を有する。
aは1〜3の整数であり、および
bは1〜3の整数である
ただし、a+b=4である。
【0102】
カチオン性表面改質剤として適当な化合物の例には、以下のものが含まれる:アミノ−プロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン、N−トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、ジメトキシシリルメチルプロピル改質ポリエチレンイミン、N-(3-トリエトキシリルプロピル)−4,5-ジヒドロイミダゾール、およびアミノアルキルシルセスキオキサン。
【0103】
通常、クレー粒子の表面は正味の負電荷を有する。あらゆる特定の理論に束縛されるものではないが、カチオン性の改質剤とアニオン性のクレーの混合により、クレーの表面上の負に帯電した部分と改質剤が反応し、クレー表面と改質剤の間に塩結合が形成されると推測される。ポリマー型のカチオン性改質剤の場合、単一ポリマーストランドは、粒子の凝集または凝固に起因して、単一のクレー粒子の表面における複数の部位若しくは粒子間の架橋部位と反応できる。十分なカチオン性改質剤が存在する場合、改質されるクレーの表面における多くの負の部位が中和され、改質されたクレー表面は正味の正電荷を得る。この正味の正電荷の存在は、他の改質クレー粒子を反発または分散させるエネルギーをもたらすので、カチオン性改質剤は、改質クレー粒子を含有する水性スラリーにおける分散剤としても機能する。
【0104】
基材層より上方の多孔質層は、塗布したインクの液体成分の通路をもたらす相互接続間隙を含有し、基材層内へインクを明確に浸透させるので、基材層はインク受容能を備える必要がある。非多孔質層または閉鎖孔を具備する層は、インクの吸収に寄与する下位層をもたらさない。
【0105】
上述のように、インクジェット記録素子は、500nm未満、適当には300nm未満、および望ましくは150nm未満のメジアン粒径を有する1種または複数種の材料から成る粒子を層の重量に基づき50重量パーセントより多く含有する、所望により1または複数の副層に分類される、多孔質の上部インク受像層を基材層より上に配設する。
【0106】
適当には、インク受像上部層における1または複数種の材料は、水和または未水和の酸化アルミニウム粒子を含有する。有利には、1または複数種の材料は、実質的に非凝集のコロイド粒子である。望ましくは、1または複数種の材料は、水和アルミナ、即ち、オキシ水酸化アルミニウム、例えばベーマイトを含有する。
【0107】
一般的に、上部のインク受像層における1または複数種の材料は、上部のインク受像層において75〜100パーセントの無機粒子を含有する。
【0108】
本明細書において「水和アルミナ」という用語は、以下の一般式で表される物質を意味する:
【0109】
【数4】

式中、nは0〜3の整数であり、およびmは0〜10、好ましくは0〜5の数字である。多くの場合、mHOは、結晶格子の形成に関与しない水相を示すが、除去することができる。従って、mは整数以外の値をとる場合がある。しかしながら、mおよびnは同時に0にならない。
【0110】
本明細書において「未水和アルミナ」という用語は、mおよびnが同時にゼロである上記式により示され、乾式法で調製したヒュームドアルミナ、または水和アルミナを焼成することにより調製される無水アルミナAlを含む。ここで使用されるように、未水和アルミナなどの用語は、水に添加した後に生じる水和に関わらず、インクジェット記録素子を製造する間においてコーティング組成物を調製するために使用される乾燥材料に適用される。
【0111】
ベーマイト構造を示す水和アルミナの結晶は、一般に層状材料であり該結晶の(020)面はマクロ面を形成し、特徴的な回折ピークを示す。完全なベーマイトに加えて、擬ベーマイトと称され、(020)面の相間に過剰の水を含有する構造も採用できる。この擬ベーマイトのX線回折パターンは、完全なベーマイトのピーク幅と比べて幅広い回折ピークを示す。完全なベーマイトと擬ベーマイトをそれぞれに明確に区別できないので、本明細書において、「ベーマイト」または「ベーマイト構造」という用語は、文脈において特に示されない限り、両方の意味を表す。この明細書の目的に関して、「ベーマイト」という用語はベーマイトおよび/または擬ベーマイトという意味を含む。
【0112】
ベーマイトおよび擬ベーマイトは、以下の一般式により本明細書において定義されるアルミニウムオキシ水酸化物である:
【0113】
【数5】

式中、xは0または1である。
x=0の場合、物質は、擬ベーマイトよりも明らかにベーマイトである。x>0であり、物質がそれらの結晶構造内に水を組み込む場合、それらは擬ベーマイトとして知られている。ベーマイトおよび擬ベーマイトは、Al・zHOとしても表され、式中においてz=1で有る場合、物質はベーマイトであり、1<z<2である場合、物質は擬ベーマイトである。上述の物質は、それらの組成および結晶構造によって、アルミニウム水酸化物(例えばAl(OH)、バイヤライトおよびギブサイト)およびダイアスポア(α−AlO(OOH)と区別される。上述のように、通常、ベーマイトは良好に結晶化され、1つの実施態様においては、JCPDS−ICDDの粉末回折ファイル21−1307で付与されるX線回折パターンに従った構造を有する。その一方で、擬ベーマイトはあまり良好に結晶化されず、一般的に、より低い強度と共に比較的幅広いピークを有するXRDパターンを示す。
【0114】
本明細書において「アルミニウムオキシ水酸化物」という用語は、関連するあらゆる物質を含むように幅広く解釈および定義され、その表面は、一般式γ−AlO(OH)xHO(好ましくはベーマイト)で表されるシェルまたは層を形成するために加工されるか、または加工できる。このような物質には、以下のものが含まれる:アルミニウム金属、窒化アルミニウム、アルミニウム酸窒化物(AION)、α-Al、γ-Al、一般式Alで表される遷移アルミナ、ベーマイト(γ−AlO(OH))、擬ベーマイト((γ−AlO(OH))・xHO、ただし0<x<1)、ダイアスポア(α−AlO(OH))、並びにバイヤライトおよびギブサイトの水酸化アルミニウム(Al(OH))。従って、アルミニウムオキシ水酸化物粒子は、アルミニウムオキシ水酸化物を含有する表面シェルを少なくとも備える、任意の微粉化物質を含む。1つの有利な実施態様において、粒子のコアおよびシェルは共に同じ物質から成り、100m/gを越えるBET比表面積を備えるベーマイトを含有する。
【0115】
上述したように、インクジェット記録素子は、多孔質のインク受像基材層より上方に、多孔質の上部の受像層を具備する。1つの実施態様において、最上層は、少なくとも80nm、適当には100nmのメジアン粒径を有し、200nm未満、適当には150nm未満、望ましくは140nm未満のメジアン粒径を有する1種または複数種の物質の非凝集コロイド粒子(i)を含む物質の混合物を、層の重量に基づき50重量パーセントよりも多く含有する。有利には、粒子(i)は、1または複数の第2物質の粒子と比べて少なくとも10パーセント小さく、適当には20パーセント小さく、および、1または複数の物質の凝集コロイド粒子(ii)は、最大250nm、適当には最大200nm、望ましくは最大150nmのメジアン2次粒径と、7〜40nmの1次平均粒径を有し、多孔質の受像層は、乾燥重量での被覆量に基づき1〜10g/mの量で存在する。有利には、上部層は、最も高い濃度と量の媒染剤を、一般的にはカチオン性ポリマー、有利にはラテックス分散液として含有する。
【0116】
適当には、上部の受像層の第1実施態様における1または複数種の材料は、水和または未水和の金属酸化物の粒子を含有する。この場合、凝集コロイド粒子はヒュームド金属酸化物である。望ましくは、ヒュームド粒子は、層における無機粒子総量に基づき、25〜75重量パーセントの量で存在する。有利には、ヒュームドアルミナ、および上部の受像層における非凝集コロイド粒子は、層における無機粒子総量に基づき、25〜75重量パーセントの量で存在する。このような混合物の場合、2種類の粒子の平均凝集粒径の差は、一般的に、25パーセント以内、望ましくは20パーセント以内である。有用なコロイド粒子の例としては、例えば、水和アルミナ(ベーマイトなどのアルミニウムオキシ水酸化物を含む)、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウムを含む。
【0117】
適当には、非凝集コロイド粒子は、アルミニウムオキシ水酸化物物質またはコロイド(非凝集)シリカを含む。最上層において有用なシリカ粒子は、カオリン粒子の処理に使用したような、上述した種から選択されるカチオン性改質剤で処理される。
【0118】
上部のインク受像層は、相互接続空隙を具備する。インク受像層中の空隙は基材層内へインクを確実に侵入させるための経路をもたらすので、基材層により乾燥時間を低減できる。適当には、光沢を形成するインク受像層における空隙は、開放して相互に接続し、有利には(必ずしも必須というわけではないが)、適切な中間吸着のために、基材層における空隙と同様な空隙サイズを有する。
【0119】
上述した無機粒子に加えて、インク受像上部層は、有機粒子、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ブチルアクリレート)など、並びに、チタニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたは他の無機粒子を含む無機粒子の更なる混合物を含む。有利には、上部インク受像層における実質的に全ての粒子は、300nm以下の平均1次粒径を有する。
【0120】
適当には、上部インク受像層に関するポリマーバインダーには、以下のものが含まれる:例えば親水性ポリマー、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)、ポリ(アクリルアミド)、キトサン、ポリ(エチレンオキシド)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど。他のバインダー、例えば疎水性物質など、例えばポリ(スチレン−co−ブタジエン)、ポリウレタンラテックス、ポリエステルラテックス、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸−2−エチルヘキシル)、アクリル酸n−ブチルとアクリル酸エチルとのコポリマー、および酢酸ビニルとアクリル酸n−ブチルとのコポリマー等も使用できる。
【0121】
多孔質の光沢形成インク受像層で使用する粒子とバインダーとの、粒子−バインダー重量比は、100:0未満〜60:40以上に変化できる。適当には、バインダーに対する粒子比は少なくとも80:20である。有利には、バインダーに対する粒子比は少なくとも90:10である。一般に、定められた値未満の粒子−バインダー比を有する層は、良好な画像品質をもたらすのに十分な細孔を通常有さない。バインダーを含有しないコーティング化合物から、極めて薄い最上層を塗布する技術が知られているが、特に最上層の場合、バインダーに対する粒子比は98:2以下が一般的である。有利には、バインダーに対する粒子比は、97:3以下である。バインダーに対する粒子比がより高い層は、亀裂または支持体に対する層接着性の減少の影響を受けやすい。本発明における望ましい実施態様において、上部インク受像層におけるポリマーバインダーに対する粒子の体積比は1:1〜15:1である。
【0122】
上部インク受像層において所望により含むことができる他の添加剤としては、以下のものが含まれる:pH調整剤、例えば硝酸など、架橋剤、レオロジー調整剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、殺生物剤、滑剤、染料、色止め剤若しくは媒染剤、光学的光沢剤、および既知な常套の添加剤。
【0123】
インクジェット記録素子は、顔料系インクまたは染料系インクに適しており、あるいは両方のインク用に調整してもよい。顔料を基剤とするインクの場合、上部の受像層は、顔料捕捉層として機能できる。染料を基剤とするインクの場合、上部層および基材層の両方、またはそれらの比較的上方の部位は、層中の任意の媒染剤の有効性に基づいて画像を含む。
【0124】
本明細書において使用される、「顔料捕捉層」という用語は、使用に際し、画像を印刷するために使用されるインクジェットインク組成物における顔料着色剤の、一般に少なくとも75重量%、または実質的に全てが残存する、顔料を捕捉する層を意味する。
【0125】
染料媒染剤はあらゆるインク保持層中で使用できるが、通常、少なくとも上部の受像層で使用される。媒染剤は、インクジェット染料に実質的に適用できる任意の物質である。染料媒染剤は、インク保持層から得た染料を基剤とするインクから染料を取りだし、1または複数の染料捕捉層内に染料を固定する。このような媒染剤の例には、例えば米国特許第6297296号明細書及びそこに引用されている参考文献などに開示されているカチオン性格子、米国特許第5342688号明細書などに開示されているようなカチオン性ポリマー、および米国特許第5916673号明細書に開示されているような多価イオンが含まれる。これらの媒染剤の例には、高分子の四級アンモニウム化合物、または原重合体、例えばポリメタクリル酸(ジメチルアミノエチル)、ポリアルキレンポリアミン、並びに、それらと、ジシアノジアミド、アミン−エピクロロヒドリン重縮合物との縮合生成物が含まれる。さらに、レシチン及びリン脂質化合物も使用できる。このような媒染剤の具体例には、以下のものが含まれる:ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド/エチレングリコールジメタクリレート;ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド);ポリ(2−N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートメトスルフェート;ポリ(3−N,N,N−トリメチル−アンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド;ビニルピロリジノンとビニル(N−メチルイミダゾリウムクロリド)とのコポリマー;並びに、(3−N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルクロリドで誘導体化されたヒドロキシエチルセルロース。望ましい実施態様において、カチオン性媒染剤は四級アンモニウム化合物である。
【0126】
媒染剤と混合させるために、媒染剤を含有する各層のバインダーおよびポリマーは共に、未電荷または媒染剤と同じ電荷にすべきである。不安定なコロイドおよび所望でない凝集は、同じ層中のポリマーまたはバインダーが、媒染剤の電荷に対して反対の電荷を有する場合に生じ得る。
【0127】
一実施態様において、多孔質の上部受像層は、層の重量に基づいて、少なくとも2重量パーセント、一般的には10重量パーセント、適当には15重量パーセントの量で染料媒染剤を独立して含有できる。一般的に、媒染剤は、層の40重量パーセント未満、適当には25重量パーセント未満で含有される。有利には、上部層は、実質的に最も高濃度で最も多くの量の媒質剤を含有する層である。
【0128】
被覆されるインク保持層に対する支持体は、普通紙、好ましくは原紙(コーティングされていない紙)から選択できる。従って、樹脂コーティング紙を用いないことができる。本発明において使用される支持体の厚みは、12〜500μm、一般的に75〜300μmである。
【0129】
所望により、支持体への基材層の接着性を改良するために、支持体へ基材層を塗布する前に、支持体の表面をコロナ放電に付してもよい。
【0130】
インクジェット記録素子は、他の画像記録物または画像記録装置の駆動装置若しくは搬送機構と接触し得るので、添加剤、例えば界面活性剤、滑剤およびマット粒子などを、対象物の性質を低下させない範囲でインクジェット記録素子に添加できる。
【0131】
本発明におけるインクジェット記録素子、または独立した素子に分割できるシート材は、種々のコーティング法により形成でき、該方法は、これらに限定されないが、巻き線型コーティング、スロットコーティング、スライドホッパーコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティングを含む。これらの方法の幾つかは、二層以上のコーティングを同時におこなうことができ、製造に関する経済的な観点から好ましい。
【0132】
有利には、インクジェット記録材は以下の工程a)〜c)を含む方法により製造される:
a)吸水性の支持体を準備し、
b)該支持体上へ基材層をもたらし、該基材層上へ最上層をもたらすために、無機粒子、バインダーおよび所望による界面活性剤をそれぞれ含有する2種類のコーティング組成物を、前計量法により、支持体の少なくとも1つの表面上に1回の塗布でコーティングし、次いで、
c)被覆層を乾燥させる。
次いで、所望により乾燥させた層をカレンダー掛けに付す。
【0133】
適当には、コーティング組成物は、水性組成物である。一般的に、基材層コーティング組成物の無機粒子は、上述したようなクレー粒子を、乾燥させた基材層の組成物に対して、少なくとも50重量パーセント含有する。有利には、処理した粒子が正のゼータ電位を明示する程度に、上述したようなカチオン改質剤でクレー粒子を処理する。一般的に、基材層コーティング組成物は、少なくとも30%の固形物、望ましくは少なくとも40%の固形物、有利には少なくとも50%の固形物を含有する。コーティング組成物中の固形物が極めて少ない場合、調製過程、特に乾燥工程が非効率になる。
【0134】
一般的に、最上層のコーティング組成物における無機粒子は、乾燥させた最上層の組成物中に、詳細を上述した粒子を含有する。有利には、最上層におけるコーティング組成物の無機粒子は、正のゼータ電位を明示する。このような適当なカチオン性粒子の例には、未処理若しくは処理したアルミナ、または水和アルミナ粒子、並びにカチオン性改質剤で処理したシリカ粒子が含まれる。カチオン粒子を含有する最上層用のコーティング組成物は、カチオン性粒子を含有する基材層用コーティング組成物にも適用できる。
【0135】
一般的に、最上層のコーティング組成物は、少なくとも15パーセントの固形物、望ましくは少なくとも20パーセントの固形物、有利には少なくとも25パーセントの固形物を単独で含有する。
【0136】
望ましい方法において、工程(b)における2種類のコーティング組成物を、単一ステーションで同時に塗布する。
【0137】
有利な実施態様において、2つの層は、前計量法により同時に塗布される。有利には、該層は、カーテンコーティング法により塗布される。
【0138】
当該分野において常套に使用される支持体材料の上に、所望による別の層、例えば下塗り層、オーバーコートおよび更なる中間層を塗布できる。このような層は、一般的に1g/m未満である。望ましい実施態様において、基材層および最上層は、乾燥重量で5g/mより大きい唯一の層である。材料の観点から、素子が基材層と最上層のみを備えるインク受像層が有利である。
【0139】
本発明の別の実施態様は、凝集、にじみ、汚れおよび極度の湿潤に対する感度を低減し、製造可能性、プリンターを介する搬送性、画像品質、乾燥時間、色濃度、光沢、摩耗および引っ掻き抵抗性、耐亀裂性、層密着、耐水性、画像安定性、周囲気体または可視光線若しくは紫外線暴露に対する耐画像フェード特性を改善し、光沢アーチファクトの低減、例えば光沢差および光沢色差などの低減、および製造、貯蔵、印刷若しくは乾燥時のカールを低減する。
【実施例1】
【0140】
第1基材層のコーティング組成物BC−1を、以下の方法に従い調製した。極めて低い分子量のポリDADMAC(ポリ-(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、アルドリッチ社のカタログ番号52,237-6)を水に添加した。次いで、クレー(ポリグロス(POLYGLOSS)90、ヒューバー社製)を添加した。続いて、シリカゲル(GASIL IJ-624、イネオス社製)を添加し、高剪断混合機で15分間かけて混合した。最後に、ポリ(ビニルアルコール)(GOHSENOL KH-17、日本合成化学社製)を添加し、次いで組成物を更に30分間攪拌し、本発明における基材層組成物BC-1を調製した。基材層および上層を同時に塗布するために、最終的な固形物が36%のBC-1を調製し、また、基材層および上端層を逐次的に塗布するために、最終的な固形物が25%のBC-1を調製した。いずれの場合も、材料の相対乾燥重量は、4.10部のポリ-DADMAC、74.32部のPOLYGLOSS90クレー、18.58部のGASIL IJ-624シリカゲル、および3.00部のGOHSENOL KH17ポリ(ビニルアルコール)である。
【0141】
比較例の基材層組成物BC-2を、まず、ポリアクリレート分散体(COLLOID 211、ケミラ社製)を水に添加することにより調製した。次いで、シリカゲル(GASIL IJ-624、イネオス社製)を添加し、それに続けてプリズムの沈降炭酸カルシウム(ALBAGLOS S、スペシャリティーミネラル社製)を添加した。最後にポリ(ビニルアルコール)(CELVOL325、セラネス社製)およびスチレン−ブタジエンラテックス(CP692NA、ダウ・ケミカル社製)を添加し、30分間組成物を混合した。最終的な組成物は25%の固形物を含有した。材料の相対乾燥重量は、0.15部のポリアクリレート分散体、21.35部のGASIL IJ-624シリカゲル、65.40部のALBAGLOS S炭酸カルシウム、1.80部のCELVOL325ポリ(ビニルアルコール)、および11.30部のCP692NAラテックスである。
【0142】
最上層のコーティング組成物TC-1を、47.00/47.00/5.00/1.00の割合で水和アルミナ(CATAPAL200、サソル社製)、ヒュームドアルミナ(CAB-O-SPERSE PG003、キャボット社製)、ポリ(ビニルアルコール)(GOHSENOL GH-23、日本合成化学社製)およびCARTABOND GH(クラリアント社製)グリオキサル架橋剤を混合することにより調製し、水性コーティング配合物を準備した。コーティング助剤として、界面活性剤ZONYL FSN(デュポン社製)およびOLIN10G(オーリン社製)を少量添加した。基材層および上端層を同時に塗布するために、最終的な固形物が32%のTC-1を調製し、また、基材層および上端層を逐次的に塗布するために、最終的な固形物が15%のTC-1を調製した。いずれの場合も、乾燥成分重量の割合は上記のとおりであった。
【0143】
実験室規模での塗布方法に対して選択された特定の固形分%は、生産規模での方法に関して選択される固形分%を限定するものではない。高い固形物%が、コーティング形成、特にカーテンコーティングの生産規模に対して望ましい。
【0144】
スライドホッパーを用いるビーズコーティング法により、低い湿潤膨潤性を示して144g/mの基本重量を示す混合広葉樹基材からなる支持体の上方へ、順に、基材層組成BC-1および最上層組成物TC-1を順に備える、本発明における1実施態様に従うコーティングを作成した。実施例1-A〜1-Cにおいて、コーティング装置により1工程で、最上層のコーティング組成物および基材層のコーティング組成物を同時に塗布し乾燥させた。実施例1-D〜1-Fにおいて、コーティング装置により1工程で、基材層のコーティング組成物を支持体へ塗布し乾燥させ、次いで、装置による2回目の工程で、最上層のコーティング組成物を塗布し乾燥させた。実施例1-G〜1-Iにおいて、基材層のコーティング組成物BC-1を基材層のコーティング組成物BC-2に置き換えた。また、比較例のサンプルを、逐次(2工程)法により塗布した。基材層組成物を10.8g/mの乾燥レイダウンで塗布し、最上層組成物を7.5g/mの乾燥レイダウンで塗布した。全てのサンプルを、600psiおよび110Fで紙を単一ニップに2回通過させるカレンダー掛け工程に付した。
【0145】
サンプル1-A〜1-Iを、名目上の全体被覆が10%ずつ増加するインク濃度の一連のパッチを具備する、コダックEASYSHARE5100印刷機を用いて、試験対象色を印刷した。工程系列1において、シアン(C)、イエロー(Y)およびマゼンタ(M)インクを同量で印刷し、工程系列2において、ステップが100%に到達するまでMインクのみを印刷し、次いで、Cインクの増加分をステップが200%に達するまで添加し、次いで、ブラック(K)インクを、ステップが300%に達するまで添加した。凝集は、凝集が生じる閾値を算出し、50%以上の面積がインク溜まりを備える過程を観察するために、7倍の拡大鏡を用いて視覚的に評価した。インク濃度の閾値を表1に記載した。
【0146】
サンプルのインク容量を、ASTM試験法D5455に記載されているブリストー試験法により査定した。3重量部のBAYSCRIPT シアンBAシアン染料(バイエル・ケミカル社製)、12重量部のジエチレングリコール、0.5重量部のSURFYNOL465(エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、0.02重量部のPROXEL GXL 殺生物剤(アベシア社製)、0.3重量部の10%トリエタノールアミン、および84.18重量部の水を含有する、50μリットルの対照インクを、塗布ホッパー内に計量添加した。各サンプルに対するブリストーインク吸着値は、0.5、1.25および2.5mm/sのホイール回転速度で測定した。3種のホイール回転速度のそれぞれについて2回ずつ測定したブリストー値の平均値を、表1に記録した。
【0147】
【表1】

【0148】
表1で示される結果によると、カチオン改質したクレー粒子の基材層を具備するインクジェット受像体1-A〜1-Fは、未改質の炭酸カルシウム粒子の基材層を含有するインクジェット受像体1-G〜1-Iと比べて、改善されたインク吸収性をもたらすことが明らかである。3種類の基材層の平均乾燥重量は10.8〜32.3g/mであり、3種類のブリストー試験(2000ms、800ms、400ms)の条件下において、クレー粒子を含有する基材層コーティングを備える同時コーティング1-A〜1-Cは、炭酸カルシウム粒子を含有する基材層を備えるコーティング1-G〜1-Iと比べて、8.3%増加した吸収能を示す。同様に、表面改質クレーの基材層を具備する逐次的コーティング1-D〜1-Fは、炭酸カルシウム粒子の基材層と比べ、5.1%の増加をもたらす。基材層コーティング面積の乾燥重量が比較的高い2種類についてのみ考慮した場合、吸収性における相対増加は、それぞれ、11%と8.3%である。
【0149】
同じコーティング重量の場合、炭酸カルシウムを含有するコーティング1-G〜1-Iと比べて、本発明におけるサンプル1-A〜1-Fの容量が増加したことは、印刷試験の結果において明らかである。凝集臨界に達する前に、基材層コーティングの乾燥重量が等しい比較サンプルよりも、多くのインクを本発明によるサンプル上に印刷できる。60度でのガードナー光沢測定によると、本発明により調製されたサンプルの光沢は、炭酸カルシウムの基材層で調製した比較サンプルの光沢と同様であることが判る。
【0150】
実施例2
固形分60重量%のクレー(HYDRAGLOSS 90、ハーバー社、0.2ミクロンの平均ストークス等価粒径)水溶液を含有する組成物を、ローター・ステータ型混合器で30分間分散させることにより調製した。個々のサンプルの調製において、カチオン性表面改質剤を水に添加し、5分間攪拌した後、クレー分散液の一部をこの混合物に添加し、30分間攪拌した。次いで、シリカゲル(IJ-624、クロスフィールド社製)を添加し、混合物を更に15分間攪拌した。最後に、ポリ(ビニルアルコール)(CELVO325、エアープロダクツ・アンド・ケミカル社製)を添加し、組成物を更に30分間攪拌した。表面改質剤p-DADMACは、アルドリッチ社製の極めて低分子量のポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、Cat番号、522376である。SYLOJET A200は、ジアルミニウムクロリドペンタヒドロキシド、Al(OH)Cl溶液(グレース・デービソン社製)である。
【0151】
カチオン性改質剤の電荷当量(charge equivalent weight)は、改質剤の分子量を、1分子当りのカチオン部および形式電荷で割ることにより算出できる。分子化合物において、電荷当量は分子量を形式電荷で割った値と等しく、例えば、ジアルミニウムクロリドペンタヒドロキシドの場合、電荷当量は174g/モルである。ホモポリマーにおいて、電荷当量は、繰返し単位の分子量を形式電荷で割ったものと等しく、例えばp-DADMACの場合、電荷当量は162g/モルである。その後、電荷当量は、組成物中のクレー重量に対する等電荷の比を算出するために使用される。表2は、基材層組成物の成分を要約したものである。
【0152】
【表2】

【0153】
基材層のコーティング組成物における種々のサンプルの粘度を、0.5rpmで#18スピンドルを用いるブルックフィールド装置を使用して測定した。本発明において詳細を上述した標準的な手順に従い、組成物BC-3〜BC13のゼータ電位を測定した。
【0154】
最上層の組成物TC-2を、90:14:5:1の割合で、ヒュームドアルミナ(AEROXIDE Alu C、デグサ社製)、水和アルミナ(DISPEAL HP、サゾール社製)、ポリ(ビニルアルコール)(GOHSENOL GH-23、日本合成化学社製)およびグリオキサル(CARTOBOND GH、クラリアント社製)を混合することにより調製し、固形物25重量%の水性コーティング組成物を調製した。界面活性剤ZONYL FSN(デュポン社製)およびOLIN 10G(オーリン社製)をコーティング助剤として少量添加した。
【0155】
2層コーティングを、支持体紙上に基材層(第1層)組成物のビーズコーティングと最上層(第2層)組成物TC-2とを同時にスライドホッパーで塗布し空気乾燥させることにより、同様に、基材層組成物BC-3〜BC-13のそれぞれから調製した。クレー、シリカゲル、PVAがそれぞれ6.52、1.63.0.41g/mの一定した乾燥重量をもたらすよう、基材層の組成物を、26.98cc/mの湿潤レイダウンで塗布した。最上層の組成物を、5g/m乾燥レイダウンで被覆した。
【0156】
非改質のクレー粒子を含有するBC-13基材層組成物で形成したコーティングは、乏しい品質を示した。それぞれ、少なくとも0.1mmoleのp-DADMACまたはSYLOJET A200で処理した組成物BC-4〜BC-7およびBC-9〜BC-12のコーティング品質は、良好なコーティング品質をもたらすが、より少ない量の改質剤を含有する組成物BC-3およびBC-8は、乏しい被覆を示した。
【0157】
基材層のコーティング組成物のゼータ電位および粘度測定の結果、並びに同時多層コーティング試料のコーティング品質の観察結果を、表3に要約した。
【0158】
【表3】

【0159】
未処理のクレー、シリカゲル(20重量%)、およびPVAを含有する組成物BC-13は、大きな負電荷のゼータ電位を示した。サンプルBC-3〜BC-12において、p-DADMACまたはSYLOJET A200を用いた処理は、表面電荷を反転させ、また、最小濃度のSYLOJET A200を用いた処理の場合を除き、+15mv以上にゼータ電位を上昇させた。正のゼータ電位は、当該処理により粒子の表面がカチオン的に改質されたことの証である。
【0160】
表3において示される結果は、カチオン性改質剤の量が不十分な場合、乏しいコーティング品質につながる基材層コーティング組成物の粘度の激増がもたらされることを証明する。観察された挙動に関して説明できることは、カチオン的に改質された粒子および未改質のアニオン粒子および/または中性に近い表面電荷を有する部分的に改質された粒子の混合物が不安定な分散を生じさせるということである。電荷当量の改質剤が、乾燥クレー1グラム当り0.1ミリモルより多い場合、組成物の粘度はコーティングに適する粘度となる。更に、該結果は、クレー分散質を十分な量のカチオン性表面改質剤で予め処理する場合、アルミナを含有する組成物とクレーを含有する組成物の同時多層コーティングが可能であることを証明する。
【符号の説明】
【0161】
10 インクジェットプリンター
12 画像データ源
18 インクタンク
20 記録媒体補給品
22 印刷媒体回収品
30 印刷ヘッド
40 保護カバー
100 キャリッジ
215 光学センサー
302 媒体方向
303 印刷領域
304 媒体方向
312 供給ローラー
313 順方向
320 ピックアップローラー
322 回転ローラー
323 アイドラ-ローラー
324 排出ローラー
325 スター・ホイール
350 媒体運搬通路
360 媒体補給品用トレー
371 媒体シート
375 別の光学センサー
380 印刷済媒体用トレー
390 印刷済媒体シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)インクジェットプリンター、
b)インク組成物、および
c)支持体、および該支持体上に、多孔質基材層および多孔質最上層の順で被覆させた該層を具有するインクジェット記録媒体を具備するインクジェット印刷システムであって、
1)該多孔質基材層は、バインダーと、正のゼータ電位をもたらすようにカチオン性の表面改質剤で処理したクレー粒子とを含有し、該クレーが1.0ミクロン未満のメジアン粒径を有し、
2)該多孔質最上層は、正のゼータ電位を有するか、または正のゼータ電位を有するように処理した半金属酸化物または金属酸化物の粒子を含有し、該粒子は500nm未満のメジアン2次粒径を有し、
3)基材層中のグラム当りのクレー粒子に対する、カチオン性表面改質剤のミリモル当量の比が0.1よりも大きい該インクジェット印刷システム。
【請求項2】
金属酸化物がそれぞれ独立してヒュームドアルミナ、水和アルミナおよびこれらの混合物から選択され、および半金属酸化物がカチオン改質ヒュームドシリカ、カチオン改質コロイドシリカおよびこれらの混合物から選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
支持体が吸取り紙である請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
多孔質基材層がカチオン改質クレーおよびシリカゲルの混合物を含有する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
多孔質基材層のバインダーがPVAバインダーを含有する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
カチオン性表面改質剤がジアルミニウムクロリドペンタヒドロキシドである請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
カチオン性表面改質剤が四級アミンを含むカチオン性ポリマーである請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
カチオン性表面改質剤がアミノシランである請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
多孔質最上層がPVAバインダーを含有する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
多孔質最上層がヒュームドアルミナおよびコロイドアルミナ(ベーマイト)の混合物を含有する請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
基材層のクレーがカオリンを含有する請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
支持体、および該支持体上に、多孔質基材層および多孔質最上層の順で被覆させた該層を具備するインクジェット記録媒体であって、
1)該多孔質基材層は、バインダーと、正のゼータ電位をもたらすように処理したクレー粒子とを含有し、該クレーが1.0ミクロン未満のメジアン粒径を有し、
2)該多孔質最上層は、正のゼータ電位を有するか、または正のゼータ電位を有するように処理した半金属酸化物または金属酸化物粒子を含有し、該粒子は500nm未満のメジアン2次粒径を有し、
3)基材層中のグラム当りのクレー粒子に対する、カチオン性改質剤のミリモル当量の比が0.1よりも大きい該インクジェット記録媒体。
【請求項13】
基材層がカオリンを含有する請求項12に記載の媒体。
【請求項14】
金属酸化物がそれぞれ独立してヒュームドアルミナ、水和アルミナおよびこれらの混合物から選択され、および半金属酸化物がカチオン改質ヒュームドシリカ、カチオン改質コロイドシリカおよびこれらの混合物から選択される請求項12に記載の媒体。
【請求項15】
以下の工程a)〜e)を含む、インクジェット記録媒体の製造方法:
a).吸収性の支持体を準備し、
b).1.0ミクロン未満のメジアン粒径を有するクレー粒子と、正のゼータ電位を付与するカチオン性の表面改質剤と、およびバインダーとを含有する第1水性コーティング組成物を調製し(ただし、グラム当りのクレー粒子に対する、カチオン性改質剤のミリモル当量の比が0.1よりも大きい)、
c).バインダー、およびヒュームドアルミナ、水和アルミナ、カチオン改質ヒュームドシリカ若しくはカチオン改質コロイドシリカまたはこれらの混合物を含有する第2水性コーティング組成物を調製し、
d).該支持体上に、第1コーティング組成物および第2コーティング組成物をこの順で1回のコーティング工程によって塗布し、次いで、
e).該コーティング組成物を乾燥させる。
【請求項16】
コーティングのカレンダー掛け工程を更に含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも2種のコーティング組成物が同時に塗布される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
工程b)において、クレー粒子がp-DADMACまたはジアルミニウムクロリドペンタヒドロキシドで改質される請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第1コーティング組成物がシリカゲルも含有する請求項15に記載の方法。
【請求項20】
記録媒体が、少なくとも15ガードナー単位の60度光沢を示す請求項15に記載の方法。
【請求項21】
インク受像層のみを具備する請求項12に記載の媒体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−529415(P2011−529415A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521103(P2011−521103)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/004209
【国際公開番号】WO2010/014159
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】