説明

カップリング装置及び連結装置

【課題】測定装置の測定軸に径の小さな回転軸を簡易かつ適正に連結する。
【解決手段】スライド部材121を、コイルバネ123の付勢に抗してベース部11に対して左に移動すると(c)、チャック部材122の頭部1221は、スライド部材121の右側端部から離脱して突出し、自身の弾性により、3つの爪1223が開いた状態となる。この状態で、チャック部材122の3つの爪1223の間に、モータ60の回転軸2を挿入し、スライド部材121を解放すると、スライド部材121は、コイルバネ123の付勢作用によって、内周面を、頭部1221の外周面のテーパ形状に当接させながら、右側に移動し、チャック部材122の3つの爪1223を閉じていく。閉じられたチャック部材122の3つの爪1223は(d)、中央にモータ60の回転軸2を配置した状態で、コイルバネ123の付勢力をもって、しっかりと、モータ60の回転軸2を握持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク計や回転計等の測定装置の測定軸に、モータ等の測定対象の回転軸を連結する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータの回転軸と連結した測定軸の挙動より、当該モータのトルクその他の各種特性を測定するモータの特性評価用の測定装置が知られている(たとえば、特許文献1、2)。
また、このような測定装置の測定軸と、モータの回転軸との連結の技術としては、たとえば、特許文献3に示されるような、測定装置の測定軸とモータの回転軸とが両側から中空部分に挿入される中空円筒形状のカップリング装置などが用いられてきた。ここで、このようなカップリング装置では、中空部分に挿入された測定軸と回転軸は、各々カップリング装置に設けられた、径方向に進退して前記中空部分に突出するネジによって、その芯出しと固定が行われている。
【特許文献1】特開2006-220497号公報
【特許文献2】特開2006-284501号公報
【特許文献3】特開2005-036861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
回転軸の直径が1mm未満となるような超小型モータの回転軸を、特許文献3に示されるカップリング装置によって測定軸と連結する場合には、直径に合わせてカップリング装置も小型かつ精密に作成する必要が生じ、また、当該カップリング装置を用いた適正な測定軸と回転軸との連結には精緻な作業が必要となる。
【0004】
そこで、本発明は、回転軸の直径が小さい場合にも、測定装置の測定軸に、測定対象の回転軸を、簡易かつ適正に連結可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明測定装置の測定軸と測定対象の回転軸とを連結するカップリング装置を、ベース部と、前記ベース部の両端に各々設けられた連結部とより構成し、前記各連結部に、前記ベース部に対して軸方向にスライド可能に装着された中空筒状のスライド部材と、同心配置された複数の爪より形成される頭部を有する、前記スライド部材の中空部分に挿入された形態で前記ベース部に固定されたチャックと、付勢部材とを設けたものである。ここで、前記チャックは、弾性による前記複数の爪の拡開力を有し、前記スライド部材は、前記ベース部に対するスライドに伴って、前記チャックの頭部と嵌合離脱して当該チャックの頭部を開閉し、前記付勢部材は、前記スライド部材を、当該スライド部材が前記チャックの頭部と嵌合する位置方向に当該スライド部材を付勢するものである。
【0006】
このようなカップリング装置によれば、スライド部材を前記チャックの頭部と離脱する位置までスライドし、チャックに回転軸を挿入し、スライド部材を解放するだけの簡易な操作で、回転軸の直径が小さい場合にも、付勢部材の付勢力をもって、しっかりと、チャックの同心配置された複数の爪によって操作対象の回転軸を当該チャックの中央に適正に握持することができるようになる。
【0007】
なお、このようなカップリング装置の一端にのみ連結部を設けて連結装置を構成し、都外連結装置のベース部の他端を記測定軸に任意の手段により脱着可能にまたは固定的に連結するようにしてもよい。また、前記付勢部材は、前記スライド部材の中空部分に、前記チャックを貫通させた形態で配置した、コイルバネとしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、回転軸の直径が小さい場合にも、測定装置の測定軸に、測定対象の回転軸を、簡易かつ適正に連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、モータのコギングトルク等の各種トルク特性を測定するトルク計への適用を例にとり説明する。
図1に本実施形態に係るカップリング装置の概観を示す。
図1aは非使用状態におけるカップリング装置1を表す図であり、a1は非使用状態のカップリング装置1の斜視図を、a2は非使用状態のカップリング装置1の正面図を、a3は非使用状態のカップリング装置1の右側面図を表している。
また、図1bは、使用状態におけるカップリング装置1を表す図であり、当該使用状態においてカップリング装置1は、測定対象であるモータの回転軸2と測定装置の測定軸3とに連結する。そして、図1中、b1は使用状態のカップリング装置1の斜視図を、b2は使用状態のカップリング装置1の正面図を、b3は使用状態のカップリング装置1の右側面図を表している。なお、カップリング装置1の背面、上面、下面は、正面と同様に表れ、カップリング装置1の左側面は、右側面と同様に表れる。
【0010】
図示するように、カップリング装置1は、中空パイプ形状のベース部11、ベース部11の左右端に各々設けられた一対の連結部12とを有する。
そして、各連結部12は、図2a1に、その断面構造を模式的に表すように、ベース部11の端が中空部分内に遊嵌された中空パイプ形状のスライド部材121と、ベース部11の端に、一端が嵌挿された形態で固定されたチャック部材122と、径方向についてチャック部材122とスライド部材121との間に配置されたコイルバネ123とを有する。
【0011】
そして、チャック部材122は、図2bに示すように、チャック部材122はベース部11に嵌挿された端と反対側に、径が他部よりも大きく形成された頭部1221が設けられており、この頭部1223の外周面は、ベース部11側に向かって径が小さくなるテーパ状に形成されている。また、チャック部材122は、中央に貫通孔1222が設けられている。そして、チャック部材122には、頭部1221が3つの等角度間隔の爪1223によって形成されるように、等角度間隔で3つの切込1224が設けられている。
【0012】
そして、前述したコイルバネ123は、図2a1に示すように、一端がベース部11に嵌挿されたチャック部材122の頭部1221と、ベース部11の端部に左右方向について挟まれた形態で、径方向についてチャック部材122とスライド部材121との間に配置される。
【0013】
次に、スライド部材121の内周面には、スライド部材121のベース部11からの脱落を防止するために、ベース部11の端部に設けられたフランジ111と係合するストッパ部1211が設けられている。
以下、このような連結部12の作用を、右側の連結部12にモータの回転軸2を連結する動作を例にとり説明する。
まず、非使用状態では、図2a1に示すように、スライド部材121は、コイルバネ123の付勢作用によって、ベース部11の端部に設けられたフランジ111にストッパ部1211が当接する、最大右側に寄った位置に移動された状態となる。そして、この状態において、図2a2の右側面図に示すように、チャック部材122の3つの爪1223は、右側端部において切込1224が閉じるまでスライド部材121の内周面で窄められ、閉じた状態となる。
【0014】
そして、次に、図2c1に示すように、スライド部材121を、コイルバネ123の付勢力に抗してベース部11に対して左に移動すると、チャック部の頭部1221は、スライド部材121の右側端部から離脱して突出し、自身の弾性による拡開力によって、図2c2の右側面図を示すように、3つの爪1223が開いた状態となる。
そこで、この状態で、チャック部材122の3つの爪1223の間に、モータの回転軸2を挿入し、スライド部材121を解放すると、スライド部材121は、コイルバネ123の付勢作用によって、内周面を、頭部1221のテーパ形状に当接させながら、右側に移動し、チャック部材122の3つの爪1223を閉じていき、モータの回転軸2をチャック部材122の中心に移動させる。そして、図3d1に示すように、3つの爪1223がモータの回転軸2を挟みこむ位置まで移動したならば、スライド部材121は移動を停止する。そして、この状態において、図3d2の右側面図に示すように、チャック部材122の3つの爪1223は、中央にモータの回転軸2を配置した状態で、コイルバネ123の付勢力をもって、しっかりと、モータの回転軸2を握持する。
【0015】
以上、連結部12の作用を、右側の連結部12にモータの回転軸2を連結する動作を例にとり説明した。なお、左側の連結部12のトルク計の測定軸3の連結も同様に行われる。
次に、図3aに、このようなカップリング装置1を適用したトルク計の全体構成を示す。
図示するようにトルク計は、測定軸3を備えた測定装置本体51と、測定対象のモータ60を固定支持すると共に、その位置を任意位置に位置決めする移動ステージ52とを備え、移動ステージ52に固定したモータ60の回転軸2と、測定軸3とをカップリング装置1で連結し、測定本体装置本体で、モータ60を回転させながらモータ60のトルク変動などの各種回転特性を測定するものである。
【0016】
以上のように、本実施形態に係るカップリング装置1によれば、スライド部材121をコイルバネ123の付勢方向と逆方向にスライドし、チャック部材122に軸を挿入し、スライド部材121を解放するだけの簡易な操作で、軸の直径が小さい場合にも、コイルバネ123の付勢力をもって、しっかりと、チャック部材122の同心配置された複数の爪1223によって軸を中央に握持することができるようになる。
【0017】
ところで、本実施形態で示したカップリング装置1の連結部12は、図3bに示すように測定軸3の先端に設けるようにしてもよい。このようにすることにより、測定軸3をチャック機構付きの測定軸3として構成し、カップリング装置1を使用することなく、直接、測定軸3にモータ60の回転軸2を連結することができるようになる。
【0018】
また、以上で示したカップリング装置1は、左右に設ける連結部12のサイズを、たとえば、図3cに示すように異なるものとしてもよい。
また、図3dに示すように、カップリング装置1の一端のみに連結部12を設けて当該連結部12にモータ60の回転軸2を連結すると共に、カップリング装置1の他端を、中空部分に挿入された軸をネジ71によって固定する第2のカップリング70を用いて測定軸3に連結するようにしてもよい。
【0019】
なお、図3dは、カップリング装置1と第2カップリングを連結した状態を表しており、図3d1はその左側面を、図3d2は正面図を表し、図3d3はカップリング装置1と第2のカップリング70の断面を模式的に表したものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るカップリング装置を表す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカップリング装置の連結部の機構を表す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカップリング装置の使用形態と他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1…カップリング装置、2…回転軸、3…測定軸、11…ベース部、12…連結部、51…測定装置本体、52…移動ステージ、60…モータ、70…第2のカップリング、111…フランジ、121…スライド部材、122…チャック部材、123…コイルバネ、1211…ストッパ部、1222…貫通孔、1223…爪、1224…切込。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置の測定軸と測定対象の回転軸とを連結するカップリング装置であって、
ベース部と、
前記ベース部の両端に各々設けられた連結部とを有し、
前記各連結部は、
前記ベース部に対して軸方向にスライド可能に装着された中空筒状のスライド部材と、
同心配置された複数の爪より形成される頭部を有する、前記スライド部材の中空部分に挿入された形態で前記ベース部に固定されたチャックと、
付勢部材とを有し、
前記チャックは、弾性による前記複数の爪の拡開力を有し、
前記スライド部材は、前記ベース部に対するスライドに伴って、前記チャックの頭部と嵌合離脱して当該チャックの頭部を開閉し、
前記付勢部材は、前記スライド部材を、当該スライド部材が前記チャックの頭部と嵌合する位置方向に当該スライド部材を付勢することを特徴とするカップリング装置。
【請求項2】
請求項1記載のカップリング装置であって、
前記付勢部材は、前記スライド部材の中空部分に、前記チャックを貫通させた形態で配置した、コイルバネであることを特徴とするカップリング装置。
【請求項3】
測定装置の測定軸に、測定対象の回転軸を連結する連結装置であって、
前記測定軸に連結されるベース部に、当該ベース部に対して軸方向にスライド可能に装着された中空筒状のスライド部材と、
同心配置された複数の爪より形成される頭部を有する、前記スライド部材の中空部分に挿入された形態で前記ベース部に固定されたチャックと、
付勢部材とを有し、
前記チャックは、弾性による前記複数の爪の拡開力を有し、
前記スライド部材は、前記ベース部に対するスライドに伴って、前記チャックの頭部と嵌合離脱して当該チャックの頭部を開閉し、
前記付勢部材は、前記スライド部材を、当該スライド部材が前記チャックの頭部と嵌合する位置方向に当該スライド部材を付勢することを特徴とする連結装置。
【請求項4】
請求項3記載の連結装置であって、
前記付勢部材は、前記スライド部材の中空部分に、前記チャックを貫通させた形態で配置した、コイルバネであることを特徴とする連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−115183(P2009−115183A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288255(P2007−288255)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)