説明

カップ式飲料供給装置

【課題】 客自身が操作する場合であっても、衛生に保つことができるとともに、客が安心して利用できるカップ式飲料供給装置を提供する。
【解決手段】利用者がセットしたカップに飲料を供給するためのカップ式飲料供給装置1であって、装置本体2と、利用者がカップCをセット可能なカップセット位置と、利用者がアクセス不能な装置本体2内の飲料供給位置との間で、カップCを搬送するカップ搬送装置14と、装置本体2内に設けられ、飲料供給位置に搬送されたカップCに飲料を供給するための飲料ノズル13と、カップセット位置にカップCがセットされたときに、カップCを飲料供給位置に搬送するとともに、飲料ノズル13からのカップCへの飲料供給が終了したときに、カップCをカップセット位置に搬送するように、カップ搬送装置14を制御する制御装置15と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、カップへの飲料供給をセルフサービスで行う飲食店などに設置され、利用者自身がセットしたカップに飲料を供給するためのカップ式飲料供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、飲食店などに設置されるカップ式飲料供給装置、例えば清涼飲料水やコーヒー、ビールなどのディスペンサーは、店員によって操作されることが多く、店員がディスペンサーを操作し、注文された飲料をカップに注いで客に提供している。この種の飲料供給装置は、内部に飲料が充填された装置本体と、この装置本体に、外部に露出した状態で設けられた飲料供給部と、この飲料供給部の下方に設けられ、カップを載置した状態でセットされるカップステージなどを有している。飲料供給部は、下端部に飲料ノズルを有しており、この飲料ノズルを介して、飲料が下方に吐出されるようになっている。
【0003】このような飲料供給装置を備えた飲食店では、飲料の注文があると、店員は、カップをカップステージにセットしたり、カップを手で持ち、飲料ノズルに近づけたりした状態で、所定のボタンやレバーを操作する。飲料供給部には、ボタンやレバーが操作されている間、飲料を供給し続けるものがあり、このような飲料供給部を有する飲料供給装置では、店員がカップ内の飲料の量を確認しながら、カップのサイズに最適な量の飲料をカップに注いでいる。また、飲料供給部には、ボタンを1回押すと、所定量の飲料が供給されるものもあり、この場合には、ボタンを1回押すことによって、所定量の飲料がカップに注がれる。そして、これらのようにしてカップに注がれた飲料が客に提供される。
【0004】また、近年、カップへの飲料供給を、客自身が飲料供給装置を操作して行うセルフサービスの飲食店が増加している。このような飲食店では、飲料供給装置の近くに多数のカップがあらかじめ用意されており、客自身がカップを取り、上述した店員と同様に、飲料供給装置のカップステージにカップをセットするとともに、ボタンやレバーを操作することによって、カップに飲料を注いでいる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、客自身が飲料供給装置を操作し、カップに飲料を注ぐ場合には、次のような問題点がある。すなわち、従来の飲料供給装置では、飲料供給部が外部に露出しているため、操作に不慣れな客が飲料供給部の飲料ノズルに、直接、指先などで触れてしまうおそれがある。そのような場合には、その後で飲料供給装置を利用しようとする客に不快感を与えるとともに、飲料供給装置自体が不衛生になってしまう。また、客自身がカップに飲料を注ぐ際に、カップに適した量を上回り、カップから飲料を溢れさせてしまうこともある。
【0006】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、客自身が操作する場合であっても、衛生に保つことができるとともに、客が安心して利用できるカップ式飲料供給装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係るカップ式飲料供給装置は、利用者がセットしたカップに飲料を供給するためのカップ式飲料供給装置であって、装置本体と、利用者がカップをセット可能なカップセット位置と、利用者がアクセス不能な装置本体内の飲料供給位置との間で、カップを搬送するカップ搬送手段と、装置本体内に設けられ、飲料供給位置に搬送されたカップに飲料を供給するための飲料ノズルと、カップセット位置にカップがセットされたときに、カップを飲料供給位置に搬送するとともに、飲料ノズルからのカップへの飲料供給が終了したときに、カップをカップセット位置に搬送するように、カップ搬送手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】この構成によれば、利用者が、カップセット位置にカップをセットすると、そのカップは、制御手段で制御されるカップ搬送手段により、装置本体内の飲料供給位置に搬送される。次いで、このカップに、飲料ノズルを介して、飲料が供給される。そして、カップへの飲料供給の終了後、そのカップは、カップ搬送手段によりカップセット位置に搬送され、利用者に提供される。このように、利用者がカップセット位置にセットしたカップは、利用者がアクセス不能な装置本体内の飲料供給位置に搬送され、その位置で、装置本体内の飲料ノズルを介して飲料が供給されるので、利用者が飲料ノズルに触れることがなく、したがって、カップ式飲料供給装置を設置した飲食店の客自身がそれを操作し、カップに飲料を注ぐ場合であっても、カップ式飲料供給装置を衛生に保つことができるとともに、客が安心して利用することができる。
【0009】この場合、カップ搬送手段は、前後方向に移動自在に構成され、載置されたカップを、カップセット位置と飲料供給位置との間で搬送するカップトレイを有していることが好ましい。
【0010】この構成によれば、カップセット位置にカップをセットする場合には、カップトレイにカップを載置するだけでよく、また、飲料が供給されたカップを取り出す場合には、飲料供給の終了後にカップセット位置に搬送されたカップを掴んで取り上げるだけでよいので、カップセット位置におけるカップのセットおよび取り出しを、簡単に行うことができる。また、カップトレイは、前後方向に単純に移動できるものであればよいので、カップ搬送手段を、簡単な構成で実現することができる。
【0011】この場合、装置本体は、その外面に、カップトレイの移動に伴うカップの通過を許容する開口を有しており、開口を開閉するドアと、待機時に開口を閉鎖するとともに、カップトレイの移動時に開口を開放するように、ドアを制御するドア制御手段と、を更に備えていることが好ましい。
【0012】この構成によれば、ドア制御手段で制御されるドアにより、待機時に上記開口を閉鎖するとともに、カップトレイの移動時、すなわちカップトレイに載置されたカップを、カップセット位置と飲料供給位置との間で搬送する時に、開口を開放する。つまり、ドアが開口を開放するのは、カップトレイが移動する際の極めて短時間であり、したがって、開口は、ほとんど閉鎖されているので、大気中のほこりやちりなどが、開口を介して外部から装置本体内に入るのを抑制でき、その結果、カップ式飲料供給装置をより一層衛生に保つことができる。また、カップセット位置を上記開口よりも前方の位置に設定することにより、その開口の縁部が邪魔になることなく、カップセット位置におけるカップのセットおよび取り出しを、より一層簡単に行うことが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1および図2R>2は、本発明の一実施形態によるカップ式飲料供給装置を示している。このカップ式飲料供給装置1(以下単に「飲料供給装置」という)は、例えば、飲食店のセルフサービスコーナーなどに設置され、利用者である客自身がカップに飲料を注ぐためのものである。
【0014】両図に示すように、この飲料供給装置1は、ある程度の奥行き寸法を有する縦長ボックス状の装置本体2と、この装置本体2の前面に開閉自在に設けられた開閉扉3(ドア)とを備えている。装置本体2は、前面に所定形状の開口11aを有する縦長ボックス状のケース11を備えており、このケース11内には、所定の飲料が充填された飲料タンク12と、この飲料タンク12に接続され、飲料供給時に飲料を吐出する飲料ノズル13と、カップCを、後述するカップセット位置と飲料供給位置との間で搬送するカップ搬送装置14(カップ搬送手段)と、このカップ搬送装置14および開閉扉3を制御する制御装置15(制御手段、ドア制御手段)などが設けられている。
【0015】ケース11内には、上下方向のほぼ中央の高さに、前後方向に水平に延びる仕切板16が設けられており、その上側に飲料タンク12が配置される一方、下側にカップ搬送装置14が配置されている。また、仕切板16の前寄りの位置には、上記飲料ノズル13が貫通した状態で、下向きに取り付けられている。
【0016】カップ搬送装置14は、前後方向(図1(b)では左右方向)に移動自在に構成されたカップトレイ21と、このカップトレイ21を、図示しないトレイ駆動機構を介して駆動するモータ22とを有している。カップトレイ21は、前後方向に水平に延びるトレイ本体21aと、このトレイ本体21aの前寄りの位置に設けられ、上記仕切板16の下面付近まで突出した突出板21bとで構成されている。また、トレイ本体21aの上面の突出板21bよりも前側には、カップCを載置した状態でセットするためのカップ受け21cが設けられている。
【0017】このように構成されたカップトレイ21は、カップ受け21cにセットされたカップCがケース11の開口11aよりも前方に位置するカップセット位置(図1(b)に2点鎖線で示す位置、および図2(b)に示す位置)と、そのカップCが飲料ノズル13の下方に位置する飲料供給位置(図1(b)に実線で示す位置)との間で、スライドできるようになっている。また、カップトレイ21がカップセット位置にスライドしたときには、これに伴い、突出板21bが、ケース11の開口11a付近まで移動し、開口11aの大部分を後ろ側から閉鎖した状態となる。これにより、開閉扉3が開放した場合であっても、いたずらなどによって、手や指が開口11aから装置本体2内に挿入されるのを防止することができる。
【0018】なお、カップトレイ21には、カップ受け21cにカップCがセットされたこと、およびカップCが取り出されたことを検出する図示しないセンサが設けられている。このセンサからの検出信号に基づき、上記制御装置15により、カップCのセットおよび取り出しが検出されるとともに、カップトレイ21が制御される。
【0019】また、ケース11の前面には、上記開閉扉3を含め、前方に凸に形成され、正面形状が縦長楕円状に形成された接客部31が設けられている。接客部31の上半部には、上下方向に互いに所定間隔を存して並設された複数の商品選択ボタン32と、これらの下方に設けられ、飲料供給時に、点灯あるいは点滅する飲料供給ランプ33が設けられている。一方、接客部31の下半部には、開閉扉3とほぼ同じ形状の上記開口11aが形成されている。この開口11aは、上記カップトレイ21にカップCをセットした状態で、そのカップCの通過を許容する大きさに形成されている。そして、この開口11aが、上記開閉扉3によって開閉される。
【0020】開閉扉3は、正面形状が縦長楕円を上下に2分割したときの下半部のように形成されており、下端部に設けられた左右方向に延びる回動軸3aを中心に、開口11aを閉鎖する閉鎖位置(図1(b)の実線で示す位置)と、開口11aを開放し、ほぼ水平な位置まで回動する開放位置(図1(b)の2点鎖線で示す位置)との間で回動する。また、この開閉扉3は、図示しない駆動機構およびモータを介して、上記制御装置15によって制御されるようになっている。なお、閉鎖位置の開閉扉3は、その上端部が、開口11aの上縁部のストッパ11bに前方から当接し、接客部31の上半部と面一になっている。
【0021】次に、図3を参照しながら、飲料供給装置1によるカップCへの飲料供給について説明する。同図(a)は、待機時の飲料供給装置1を示しており、この場合には、カップトレイ21が装置本体2内の飲料供給位置に位置するとともに、開閉扉3が閉鎖している。この状態において、客が所望の飲料の商品選択ボタン32を押すと、開閉扉3が開放位置に向かって前方に回動するとともに、カップトレイ21がカップセット位置に向かって前方にスライドする。そして、開口11aが開放され、この開口11aよりも前方に、カップトレイ21のカップ受け21cが位置した状態となる。
【0022】この状態において、客がカップ受け21cにカップCをセットすると(同図(b)参照)、そのことが上述した図示しないセンサで検出される。そうすると、カップセット位置のカップトレイ21が飲料供給位置に向かって後方にスライドするとともに、開放位置の開閉扉3が閉鎖位置に向かって回動する。そして、同図(c)に示すように、カップCが飲料供給位置に到達するとともに、開閉扉3が閉鎖すると、飲料ノズル13を介して、選択された飲料がカップCに所定量供給される。この場合、カップCへの飲料供給中は、飲料供給ランプ33が点灯することなどによって、その旨が客に知らされる。
【0023】そして、カップCへの飲料供給の終了後、飲料供給ランプ33が消灯し、同図(d)に示すように、再度、開閉扉3が開放するとともに、カップトレイ21が前方にスライドし、飲料の入ったカップCがカップセット位置まで搬送される。これにより、カップCに入った飲料が客に提供され、そのカップCを客が取り出すと、そのことが図示しないセンサで検出される。そうすると、図3(a)に示すように、カップセット位置のカップトレイ21が待機位置としての飲料供給位置に戻るとともに、開閉扉3が閉鎖する。これにより、カップCへの一連の飲料供給が終了し、飲料供給装置1は待機状態となる。
【0024】以上詳述したように、本実施形態のカップ式飲料供給装置1によれば、カップセット位置にセットされたカップCは、装置本体2内の飲料供給位置まで搬送され、その位置で、飲料ノズル13を介して飲料が供給されるので、客が飲料ノズル13に外部から触れることはできない。したがって、上述したように、客自身が飲料供給装置1を操作し、カップCに飲料を注ぐ場合であっても、飲料ノズル13が客に触られることがなく、この飲料供給装置1を衛生的に保つことができるとともに、客が安心して利用することができる。またこの場合、客は、所望の飲料の商品選択ボタン32を押し、カップセット位置までスライドしたカップトレイ21にカップCをセットするだけでよく、操作が不慣れな客であっても、飲料供給装置1を簡単に操作することができる。さらに、飲料供給装置1では、カップトレイ21が開口11aを介して出没する短時間のみ、開閉扉3が開放し、それ以外の待機時および飲料供給時には、開閉扉3が閉鎖するので、大気中のほこりやちりなどが、開口11aを介して外部から装置本体2内に入るのを抑制でき、その結果、飲料供給装置1をより一層衛生に保つことができる。
【0025】なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、開閉扉3をモータによって駆動されるようにしたが、開閉扉3をばねなどで閉鎖位置に付勢し、カップトレイ21がカップセット位置に向かって前方にスライドする際に、開閉扉3を後方から押圧することで、開放させるようにしてもよい。この場合には、開閉扉3を駆動するための駆動機構やモータを省略することができる。また、実施形態では、飲料供給装置1を客自身が操作する場合について説明したが、飲料供給装置1を設置した飲食店の店員ももちろん、利用することができる。さらに、本発明の飲料供給装置を、カップ式飲料自動販売機に適用することもできる。さらにまた、実施形態で示した飲料供給装置1の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【0026】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のカップ式飲料供給装置は、客自身が操作する場合であっても、衛生に保つことができるとともに、客が安心して利用できるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるカップ式飲料供給装置を示し、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【図2】図1のカップ式飲料供給装置を示す斜視図であり、(a)は開閉扉が閉鎖した状態を示し、(b)は開閉扉が開放した状態を示す。
【図3】カップ式飲料供給装置によるカップへの飲料供給の一連の動作を順に説明する説明図である。
【符号の説明】
1 カップ式飲料供給装置
2 装置本体
3 開閉扉(ドア)
11 ケース
11a 開口
13 飲料ノズル
14 カップ搬送装置(カップ搬送手段)
15 制御装置(制御手段、ドア制御手段)
21 カップトレイ
C カップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 利用者がセットしたカップに飲料を供給するためのカップ式飲料供給装置であって、装置本体と、利用者がカップをセット可能なカップセット位置と、利用者がアクセス不能な前記装置本体内の飲料供給位置との間で、前記カップを搬送するカップ搬送手段と、前記装置本体内に設けられ、前記飲料供給位置に搬送されたカップに飲料を供給するための飲料ノズルと、前記カップセット位置にカップがセットされたときに、当該カップを前記飲料供給位置に搬送するとともに、前記飲料ノズルからの前記カップへの飲料供給が終了したときに、当該カップを前記カップセット位置に搬送するように、前記カップ搬送手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とするカップ式飲料供給装置。
【請求項2】 前記カップ搬送手段は、前後方向に移動自在に構成され、載置されたカップを、前記カップセット位置と前記飲料供給位置との間で搬送するカップトレイを有していることを特徴とする請求項1に記載のカップ式飲料供給装置。
【請求項3】 前記装置本体は、その外面に、前記カップトレイの移動に伴う前記カップの通過を許容する開口を有しており、当該開口を開閉するドアと、待機時に前記開口を閉鎖するとともに、前記カップトレイの移動時に前記開口を開放するように、前記ドアを制御するドア制御手段と、を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載のカップ式飲料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−54697(P2003−54697A)
【公開日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−238539(P2001−238539)
【出願日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(301023294)吹上富士自販機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】