説明

カップ飲料提供装置のカップ供給装置

【課題】複数のカップ列送り部材のスパイラル部の位相を容易に一致させることができ、それにより、安定したカップ列の搬送およびカップの供給を確保することができるカップ飲料提供装置のカップ供給装置を提供する。
【解決手段】カップ列セット部14およびこれに隣接するカップ列収納部15を有するカップ収容器3と、販売カップ列Hのカップが所定数以下になったときに、カップ列収納部15に収納されている予備カップ列Yを、カップ列セット部14側に搬送し、カップ列セット部14にセットするカップ列搬送装置5と、を備え、カップ列搬送装置5は、互いに同一の形状およびサイズに形成され、スパイラル部44を有する複数のカップ列送り部材41と、複数のスパイラル部44、44の位相を互いに一致するよう、手動で調整するための位相調整手段56、61と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ式の飲料自動販売機や飲料ディスペンサなどのカップ飲料提供装置に内蔵され、飲料の提供時にカップを供給するカップ飲料提供装置のカップ供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカップ供給装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このカップ供給装置は、カップ式自動販売機に内蔵されており、多数のカップを収容するカップ収容器と、このカップ収容器の底部に設けられ、販売時にカップを1つずつ下方に搬出するカップ搬出装置とを備えている。カップ収容器は、ボックス状に形成されており、その内部には、多数のカップが積み重なった状態の複数のカップ列が、互いに隣接した状態で、一列に並ぶように収容される。また、カップ収容器内には、上下方向に延びる押し板がカップ列の並び方向に沿って移動自在に設けられている。この押し板は、モータによって駆動される無端のベルトに連結されており、そのベルトが駆動されるのに伴い、カップ搬出装置側に移動しながら、複数のカップ列のうちの最後尾のカップ列を後ろ側から押圧し、それにより、カップ列全体をカップ搬出装置側に搬送する。
【0003】
一方、カップ搬出装置は、通常、平面形状がリング状のカップドロップリングを有している。販売用のカップ列(以下「販売カップ列」という)は、その下部がカップドロップリングの内側の開口部に挿通した状態でセットされる。そして、販売時に、カップドロップリングによって、販売カップ列の最下位のカップが直ぐ上のカップから切り離され、下方に搬出される。
【0004】
このカップ供給装置では、飲料の販売が進み、カップドロップリングにセットされている販売カップ列がカップ切れになると、カップ収容器内の複数の予備用のカップ列(以下「予備カップ列」という)が、押し板で後ろ側から押圧されることによって移動する。具体的には、最後尾の予備カップ列が押し板で押圧されるとともに、他の予備カップ列が自身の直ぐ後ろの予備カップ列で押圧され、それにより、複数の予備カップ列全体が、カップ搬出装置側に移動する。そして、これらの予備カップ列のうちの先頭の予備カップ列が、カップドロップリングの開口部に案内されながら落下し、カップドロップリングにセットされる。これにより、その予備カップ列は、販売カップ列として、カップ搬出装置に補充される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−105871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のカップ供給装置では、カップ搬出装置への予備カップ列の補充の際に、最後尾の予備カップ列以外は、カップ列を後ろ側のカップ列で押圧する。そのため、カップ列同士が、カップの開口周縁部のカール部で噛み合い、くっついてしまうことがある。また、予備カップ列は、多数のカップが積み重なったものであるので、予備カップ列の搬送中に姿勢が不安定になりやすく、特に、カップ搬出装置への補充直前に、予備カップ列が大きく撓んだり、傾斜したりすることがある。これらの場合には、カップ搬出装置に補充すべき予備カップ列がカップドロップリングの開口部に適切に落下できず、その結果、カップの供給不良が生じてしまう。
【0007】
このようなカップの供給不良の問題を解決すべく、本出願人は、本願と同日付けで、予備カップ列の搬送方向に螺旋状に延びかつ回転自在のスパイラル部をいずれも有するとともに互いに上下方向に間隔を隔てて配置された複数のカップ列送り部材を備えたカップ供給装置を出願した。このカップ供給装置では、複数のカップ列送り部材のスパイラル部が同期して回転することにより、スパイラル部のピッチ間に位置する予備カップ列を、上下方向に垂直に延びる安定した姿勢の状態のまま、カップ搬出装置側に移動させることができる。
【0008】
しかし、このカップ供給装置では、製造時の組立ミスなどによって、複数のカップ列送り部材のスパイラル部の位相が一致していなかったり、その位相が当初は一致していても、カップ収容器へのカップ列の収容の際に、作業者がカップ列送り部材に触れることなどで、スパイラル部の位相がずれたりしまうことがある。このような互いにスパイラル部の位相がずれた状態の複数のカップ列送り部材を備えたカップ収容器に対し、予備カップ列をスパイラル部のピッチ間に位置するように収納すると、その予備カップ列は、適正な姿勢に対して撓んだり、傾斜したりすることがある。この場合には、安定した予備カップ列の搬送およびカップの供給を確保できなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、複数のカップ列送り部材のスパイラル部の位相を容易に一致させることができ、それにより、安定したカップ列の搬送およびカップの供給を確保することができるカップ飲料提供装置のカップ供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、各々が積み重なった状態の複数のカップから成る複数のカップ列を収容するとともに、飲料の提供時にカップを供給するカップ飲料提供装置のカップ供給装置であって、供給用のカップ列がセットされるカップ列セット部と、このカップ列セット部に連なった状態で隣接し、1以上の予備用のカップ列が載置された状態で収納されるカップ列収納部とを、内部に有するカップ収容器と、飲料の提供時に、カップ列セット部にセットされている供給用のカップ列から最下位のカップを切り離すカップ切離し手段と、供給用のカップ列のカップが所定数以下になったときに、カップ列収納部に収納されている1以上の予備用のカップ列を、カップ列セット部側に搬送し、カップ列セット部に最も近い予備用のカップ列をカップ列セット部にセットするカップ列搬送手段と、を備え、カップ列搬送手段は、互いに同一の形状およびサイズに形成され、カップ収容器内において、互いに上下方向に間隔を隔てて配置されるとともに、各々が、カップ列セット部および前記カップ列収納部の隣接する方向に螺旋状に延びるとともに中心軸線を中心として回転自在に設けられたスパイラル部を有し、スパイラル部のピッチ間に位置する予備用のカップ列を、カップ列セット部側に協働して送る複数のカップ列送り部材と、カップ列の搬送時に、複数のカップ列送り部材のスパイラル部を、互いに同一の所定方向に同期して回転駆動する駆動機構と、複数のカップ列送り部材におけるスパイラル部の位相が互いにずれているときに、複数のスパイラル部の位相を互いに一致するよう、手動で調整するための位相調整手段と、を有していることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、カップ収容器内において、カップ列セット部に供給用のカップ列がセットされる一方、カップ列セット部に連なった状態で隣接するカップ列収納部に、1以上の予備用のカップ列が載置した状態で収納される。また、飲料の提供時に、カップ切離し手段により、カップ列セット部にセットされている供給用のカップ列から最下位のカップが切り離されて供給される。そして、カップの供給が進み、供給用のカップ列のカップが所定数以下になったときに、カップ列搬送手段により、カップ列収納部に収納されている1以上の予備用のカップ列がカップ列セット部側に搬送され、カップ列セット部に最も近い予備用のカップ列が、カップ列セット部にセットされる。
【0012】
上記のカップ列搬送手段の複数のカップ列送り部材は、互いに同一の形状およびサイズに形成され、カップ収容器内において、互いに上下方向に間隔を隔てて配置されている。また、各カップ列送り部材は、カップ列セット部およびカップ列収納部の隣接する方向に螺旋状に延びるとともに中心軸線を中心として回転自在のスパイラル部を有しており、カップ列の搬送時に、複数のカップ列送り部材のスパイラル部が、駆動機構によって、互いに同一の所定方向に同期して回転駆動されることにより、スパイラル部のピッチ間に位置する予備用のカップ列を、カップ列セット部側に協働して送る。この場合、予備用のカップ列は、その移動方向の前後において、各スパイラル部のピッチ間の両側部分で拘束されるように支持される。これにより、カップ列同士の間に隙間が生じることで、カップ列同士がくっつくのを防止できるとともに、カップ列が撓んだり、傾斜したりするのを防止しながら、カップ列をカップ列収納部からカップ列セット部に安定して搬送し、セットすることができる。
【0013】
また、複数のカップ列送り部材のスパイラル部の位相が互いにずれているときには、位相調整手段を用い、複数のスパイラル部の位相を互いに一致するよう、手動で調整する。このように、位相調整手段を用いることにより、複数のスパイラル部の位相を容易に一致させることができ、それにより、安定したカップ列の搬送およびカップの供給を確保することができる。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置において、駆動機構は、駆動源と、この駆動源によって回転駆動される駆動ローラと、複数のカップ列送り部材の同じ側の端部にそれぞれ固定され、対応するスパイラル部と一体に回転可能な複数の従動ローラと、駆動ローラおよび複数の従動ローラに巻き掛けられたベルトと、ベルトに所定の張力を付与するための張力付与ローラと、この張力付与ローラを、ベルトに押し付けるように付勢するばねと、を有し、位相調整手段は、張力付与ローラを支持し、張力付与ローラがばねの付勢力でベルトに押し付けられることによってベルトに張力を付与する張力付与位置と、張力付与ローラがばねの付勢力に抗してベルトから離れるように操作されることによってベルトへの張力付与を解除する張力付与解除位置との間で、移動自在の張力付与ローラ支持部材を有していることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、駆動源によって回転駆動される駆動ローラ、および複数のカップ列送り部材の同じ側の端部にそれぞれ固定された複数の従動ローラにベルトが巻き掛けられ、このベルトに、ばねによって付勢された張力付与ローラが押し付けられることにより、ベルトに適切な張力を付与することができる。また、駆動ローラが回転駆動されるのに伴い、ベルトが循環するように回ることにより、複数の従動ローラを同期して回転させることができ、それにより、複数のカップ列送り部材のスパイラル部を、互いに同一の所定方向に同期して回転させることができる。したがって、上記構成により、複数のカップ列送り部材のスパイラル部を互いに同一の所定方向に同期して回転駆動する駆動機構を、容易に実現することができる。
【0016】
また、上記の張力付与ローラは、位相調整手段の張力付与ローラ支持部材に支持されており、この張力付与ローラ支持部材は、上記の張力付与位置と張力付与解除位置との間で移動自在に構成されている。つまり、張力付与ローラ支持部材を、ばねの付勢力に抗して、張力付与位置から張力付与解除位置に移動させるように操作することにより、張力付与ローラがベルトから離れ、そのベルトへの張力付与が解除される。このように、ベルトへの張力付与が解除されることにより、複数の従動ローラは、独立して回転可能となり、これに伴い、これらの従動ローラが固定された複数のカップ列送り部材も、独立して手動で回転操作することが可能となる。したがって、複数のカップ列送り部材のスパイラル部の位相が互いにずれているときには、張力付与ローラ支持部材を張力付与解除位置に保持した状態で、複数のカップ列送り部材のスパイラル部の位相を互いに一致させるよう、各カップ列送り部材を手動で回すことにより、それらのスパイラル部の位相を容易に一致させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置において、複数のカップ列送り部材は、2つのカップ列送り部材で構成され、各カップ列送り部材は、中心軸線が中心を通るとともにスパイラル部に連結され、カップ収容器の互いに対向する2つの側壁に、両端部がそれぞれ回転自在に支持された回転軸を、さらに有し、位相調整手段は、2つのカップ列送り部材の回転軸の同じ側の端部が貫通した状態でそれぞれ係合する第1および第2の係合孔を有するとともに、カップ収容器の側壁に沿って、互いに異なる第1、第2および第3の所定位置に上下方向にスライド自在の位相調整スライダを、さらに有しており、第1および第2の係合孔は、位相調整スライダが第1の所定位置に位置するときに2つのカップ列送り部材の回転軸の回転をいずれも許容し、位相調整スライダが第2の所定位置に位置するときに回転軸の一方の回転を許容しかつ他方の回転を阻止し、位相調整スライダが第3の所定位置に位置するときに、2つのカップ列送り部材のスパイラル部の位相が互いに一致した状態で、回転軸のいずれの回転も阻止するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、2つのカップ列送り部材の各々は、中心軸線が通るとともにスパイラル部に連結された回転軸を有しており、この回転軸の両端部が、カップ収容器の互いに対向する2つの側壁にそれぞれ回転自在に支持されている。また、位相調整手段の位相調整スライダは、2つのカップ列送り部材の回転軸の同じ側の端部が貫通した状態でそれぞれ係合する第1および第2の係合孔を有しており、カップ収容器の側壁に沿って、第1、第2および第3の所定位置に上下方向にスライド自在に構成されている。2つのカップ列送り部材のスパイラル部の位相が互いにずれているときには、上記の位相調整スライダを用いて、両スパイラル部の位相を適正な位相に、次のようにして一致させる。
【0019】
まず、位相調整スライダを第1の所定位置に位置させた状態で、両カップ列送り部材を独立して回転可能な状態にするために、前記張力付与ローラ支持部材を張力付与位置から張力付与解除位置に移動させる。次いで、位相調整スライダが第2の所定位置に位置するときに回転軸の回転が阻止される一方のカップ列送り部材を、手動で回転させ、そのスパイラル部の位相を適正な位相に調整する。次いで、第1の所定位置に位置する位相調整スライダを、第2の所定位置にスライドさせる。この場合、他方のカップ列送り部材の回転軸は回転が許容されているので、そのカップ列送り部材を、手動で回転させ、そのスパイラル部の位相を適正な位相に調整する。次いで、第2の所定位置に位置する位相調整スライダを、第3の所定位置にスライドさせる。この場合、両カップ列送り部材は、スパイラル部の位相が適正な位相に互いに一致し、回転軸がいずれも回転阻止される。次いで、この状態のまま、張力付与解除位置に位置する張力付与ローラ支持部材を、元の張力付与位置に戻す。これにより、ベルトに適切な張力が付与される。その後、第3の所定位置に位置する位相調整スライダを、元の第1の所定位置に戻す。以上により、両カップ列送り部材のスパイラル部が、適正な位相に一致した状態に調整される。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置において、回転軸の第1または第2の係合孔に係合する端部には、断面D字状に形成された係合部が設けられており、第1の係合孔は、係合部の最大径よりも大きい径を有する第1大径部と、この第1大径部に連なって下方に延び、係合部の最大径よりも小さくかつ最小径よりも大きい幅を有する第1溝部と、を有し、第2の係合孔は、係合部の最大径よりも大きい径を有する第2大径部と、この第2大径部に連なって下方に延び、係合部の最大径よりも大きい幅を有する拡幅部と、この拡幅部に連なって下方に延び、係合部の最大径よりも小さくかつ最小径よりも大きい幅を有する第2溝部と、を有していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、各カップ列送り部材の回転軸の端部に、位相調整スライダの第1または第2の係合孔に係合する断面D字状の係合部が設けられている。また、第1の係合孔は、回転軸の係合部に係合可能でかつこの係合部と上記関係を有する第1大径部および第1溝部を有している。一方、第2の係合孔は、回転軸の係合部に係合可能でかつこの係合部と上記関係を有する第2大径部、拡幅部および第2溝部を有している。したがって、これらの第1および第2の係合孔を有する位相調整スライダを利用して、両カップ列送り部材における前述したスパイラル部の位相合わせを、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態によるカップ供給装置を示す斜視図であり、カップ列の収容数が互いに異なる3タイプのカップ供給装置を互いに組み付けた状態を示している。
【図2】図1の3タイプのカップ供給装置を分離して示す斜視図である。
【図3】前面ドアおよび上部カバーを取り外した状態のカップ供給装置を示す斜視図である。
【図4】前面ドアおよび上部カバーを省略したカップ供給装置を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図5】(a)は、3タイプのカップ供給装置のカップドロップリングを示す斜視図であり、(b)は4つのカップ列を収容可能なカップ供給装置のカップドロップリングを拡大して示す斜視図である。
【図6】カップ列送り部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は右側面図である。
【図7】動力伝達機構を説明するための図であり、(a)はベルトに所定の張力を付与した状態、(b)は張力付与を解除し、ベルトを緩めた状態を示す。
【図8】位相調整プレートを説明するための図であり、(a)は位相調整プレートを中心するカップ収容器の右側面図、(b)は位相調整プレートの上下端部を拡大して示す図、(c)は(b)から回転軸を省略した状態を示す図である。
【図9】カップ収容器内におけるカップ列の搬送動作を説明するための説明図である。
【図10】位相調整プレートによる上下のカップ列送り部材のスパイラル部の位相を一致させるための位相合わせの手順を説明するための説明図であり、(a)はカップ収容器の内部を示す正面図、(b)は、図8(b)に対応し、位相調整プレートの上下端部を拡大して示す図である。
【図11】図10に続く説明図である。
【図12】図11に続く説明図である。
【図13】図12に続く説明図である。
【図14】図13に続く説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるカップ供給装置を示している。このカップ供給装置1は、カップ式自動販売機(図示せず)に内蔵され、自動販売機内で調理されたコーヒーやジュースなどの飲料が注がれるカップを、自動販売機内でカップを搬送する搬送装置や販売口(いずれも図示せず)などに供給するものである。
【0024】
図1および図2に示すように、カップ供給装置1は、カップ列の収容数が互いに異なる3タイプのカップ供給装置1A、1Bおよび1Cが、共通の取付部材2を介して互いに組み付けられたものである。カップ供給装置1Aおよび1Bはそれぞれ、最大4つおよび3つのカップ列を収容可能に構成されており、カップ供給装置1Cは、1つのカップ列を収容可能に構成されている。
【0025】
取付部材2は、所定形状の複数の金属板を折曲げ加工するとともに、それらを互いにねじ止めなどによって組み立てることにより、正面形状が下方に開放するコ字状に形成されている。そして、この取付部材2に、カップ供給装置1Aとカップ供給装置1Bおよび1Cとが、互いに背中合わせに配置された状態でねじ止めされ、カップ供給装置1Bとカップ供給装置1Cとが、互いに左右方向に隣接した状態でねじ止めされている。
【0026】
なお、以下の説明では、上記のカップ供給装置1A、1Bおよび1Cを互いに組み付けて構成されたカップ供給装置1を適宜、「統合カップ供給装置1」というものとし、また、後述するカップ列搬送装置5を有するカップ供給装置1Aおよび1Bは、基本構成が互いに同一であるので、4つのカップ列を収容可能なカップ供給装置1Aを中心に説明するものとする。
【0027】
図3および図4に示すように、カップ供給装置1Aは、多数のカップCを収容するカップ収容器3と、このカップ収容器3の底部に設けられ、販売時にカップCを1つずつ下方に搬出するカップ搬出装置4(カップ切離し手段)と、カップ収容器3内においてカップ列を搬送するカップ列搬送装置5(カップ列搬送手段)と、これらのカップ搬出装置4およびカップ列搬送装置5を制御する、マイクロコンピュータを有する制御装置(図示せず)などで構成されている。なお、カップ搬出装置4によって搬出されたカップCは、前述したように、自動販売機内でカップCを搬送する搬送装置のカップホルダに直接、供給されたり、カップ搬出装置4から販売口に延びるカップシュート(図示せず)を介して、販売口に供給されたりする。
【0028】
カップ収容器3は、前面および上面が開放する縦長ボックス状のケース11を有しており、その上部には、ケース11の上面から前面上部にわたって覆う上部カバー12が取り付けられ、この上部カバー12の下方には、ケース11の前面を開閉する前面ドア13が、右端部を支点としてケース11に回動自在に取り付けられている。ケース11内には、図4(b)に示すように、販売用のカップ列(以下「販売カップ列H」という)、および3つの予備用のカップ列(以下「予備カップ列Y」という)の計4つのカップ列が左右方向に一列に並んだ状態で収容される。具体的には、ケース11内には、左端部に販売カップ列Hをセットするためのカップ列セット部14が設けられるとともに、これに連なった状態で右方に隣接し、3つの予備カップ列Yを載置した状態で収納するためのカップ列収納部15が設けられている。
【0029】
ケース11は、平面形状が横長矩形状のベース16と、このベース16の周縁部のうちの左右端部および後端部から上方に延びるケース本体17などで構成されている。ベース16の左端部には、上記カップ列セット部14に対応して、上下方向に貫通し、カップCの最大外径よりも一回り大きい直径を有する開口部16aが設けられている。そして、販売カップ列Hは、開口部16aに挿通した状態で、カップ列セット部14にセットされるとともに、最下位のカップ(以下「販売カップ」という)Cが、カップ搬出装置4にセットされる。
【0030】
このカップ搬出装置4は、販売カップCを切り離すためのカップドロップリング21と、このカップドロップリング21およびカップ列搬送装置5の後述する2つのカップ列送り部材41、41を駆動する駆動機構22と、カップドロップリング21の底面に連結され、下方に延びる円筒状のシュート23とを備えている。図5(a)は、統合カップ供給装置1における3つのカップ供給装置1A、1Bおよび1Cのカップドロップリング21A、21Bおよび21Cを示している。同図に示すように、これらのカップドロップリング21A、21Bおよび21Cは、互いに近接するように配置され、カップ供給装置1A、1Bおよび1Cにおいて供給すべきカップCのサイズ(カップCの開口部の直径)に対応するように構成されている。また、これらのカップ供給装置1A、1Bおよび1Cは、基本構成が互いに同一であるので、カップ供給装置1Aのカップドロップリング21Aを代表して、簡単に説明する。
【0031】
図5(b)に示すように、カップドロップリング21は、平面形状がリング状に形成されており、その内側の開口部21aが、ベース16の開口部16aに合致するように配置されている。また、カップドロップリング21の内周縁部には、内方に臨むとともに周面に所定形状のカムを有する複数(本実施形態では6つ)のカップ切離しカム24が、鉛直軸線を中心として回転自在に設けられている。各カップ切離しカム24の下端部には、ギヤ部が設けられている。また、カップドロップリング21の内部には、平面形状がリング状に形成され、内周部に各カップ切離しカム24のギヤ部に噛み合うリングギヤ25が回動自在に設けられている。このリングギヤ25には、外部に突出し、駆動機構22に連結された駆動レバー25aが設けられている。
【0032】
図4(b)に示すように、駆動機構22は、正逆回転可能なモータ26と、これに連結されたギヤボックス27と、左右方向に水平に延びるとともに右端部がギヤボックス27の出力軸に連結され、モータ26の回転に伴って正逆回転する駆動シャフト28と、この駆動シャフト28と上記リングギヤ25の駆動レバー25aとの間を連結し、駆動シャフト28が所定の一方向に回転するのに連動して、リングギヤ25を往復回動させる往復回動機構(図示せず)などを備えている。したがって、販売時に、モータ26によって、駆動シャフト28が所定の一方向に回転駆動されると、往復回動機構を介して、リングギヤ25が所定の角度範囲において1回、往復回動する。これに伴い、カップドロップリング21のすべてのカップ切離しカム24は、互いに同期して、カップドロップリング21の回動角度よりも大きい所定の角度範囲で、往復回転する。これにより、販売カップCは、直ぐ上側のカップCから切り離され、シュート23を介して、下方に搬出される。
【0033】
また、ベース16には、その上面に、滑性を高めるための所定の樹脂(例えばフッ素樹脂)がコーティングされている。これにより、カップ列収納部15に収納され、ベース16上に載置されている予備カップ列Yを、カップ列搬送装置5によって搬送する際に、ベース16上を円滑に滑らせながら搬送することができる。
【0034】
さらに、図3に示すように、ベース16上の前端部の開口部16a付近には、予備カップ列Yを搬送し、カップ列セット部14にセットする際に、その予備カップ列Yの下端部の前面をガイドするカップガイドプレート18およびカップガイドローラ19が設けられている。カップガイドプレート18は、平面形状が矩形状の金属板からなり、その一辺付近を折り返すように曲げ加工することによって構成されている。そして、このカップガイドプレート18は、折り返し部分の縁部18aが左方の開口部16aに向かって斜め後方に傾斜するように、ベース16上にねじ止めされている。一方、カップガイドローラ19は、前後方向に水平に延びる支軸20aを介して、ローラ支持プレート20に回動自在に支持されるとともに、後ろ側(予備カップ列Y側)の端面が凹状に形成されている。そして、このカップガイドローラ19は、ローラ支持プレート20がカップガイドプレート18に重なった状態でベース16上にねじ止めされることにより、カップガイドプレート18の左方に近接するように配置されている。
【0035】
ケース本体17は、所定形状の金属板を折曲げ加工することなどによって構成されている。具体的には、このケース本体17は、ベース16の後端部から上方に延びる背板部31と、この背板部31の左右端から直角に屈曲して前方に延びる左右の側板部32および33(側壁)とで構成されている。背板部31には、前後方向に貫通する上下2つの開口部31a、31aが形成されている。各開口部31aは、所定の高さ寸法を有するとともに、背板部31の左右方向の全体にわたって延びるように形成されている。そして、各開口部31aから外方に若干突出した状態で、カップ列搬送装置5の後述するカップ列送り部材41が、左右の側板部32および33に回転自在に支持されている。
【0036】
カップ列搬送装置5は、カップ収容器3内のカップ列収納部15に収納された予備カップ列Yをカップ列セット部14側に送るための上下2つのカップ列送り部材41、41と、これらを回転駆動する前記モータ26と、このモータ26の動力を両カップ列送り部材41、41に伝達する動力伝達機構42(駆動機構)とを備えている。両カップ列送り部材41、41は、互いに同一の形状およびサイズを有しており、各カップ列送り部材41は、図6に示すように、所定の径(例えば8mm)を有する金属製の丸棒で構成され、水平に所定長さ延びる回転軸43と、所定の径(例えば4mm)を有する金属製の線材で構成され、回転軸43を中心として、その長さ方向の全体にわたって螺旋状に延びるスパイラル部44とを有している。このスパイラル部44は、回転軸43の右から左に向かって、時計方向に回転しながら延びるように形成されており、所定の外径D(例えば52mm)およびピッチP(例えば85mm)を有している。また、スパイラル部44は、その左右両端部および中央部においてそれぞれ、連結棒45を介して、溶接などで回転軸43に連結されている。したがって、各カップ列送り部材41は、回転軸43の回転に伴い、これと一体にスパイラル部44が回転する。
【0037】
回転軸43は、その左端部および右端部がそれぞれ、カップ収容器3の左側板部32および右側板部33を貫通した状態で、これらに回転自在に支持されている。また、回転軸43の左端部には、動力伝達機構42の後述する従動ローラ52が固定されている。一方、回転軸43の右端部には、図6(a)に示すように、回転軸43の周方向に沿って延びかつ所定の深さを有する溝部43aが形成されており、その溝部43aから回転軸43の右側の先端にわたって、切り欠かれている。具体的には、回転軸43の中心軸線から所定距離、離れた位置で、その中心軸線と平行に切り欠かれることにより、回転軸43の右端部には、図6(a)に拡大して示すように、横凸字状の平坦面43bが形成されている。これにより、回転軸43の右端部には、溝部43aの形成に伴って得られ、回転軸43自体の径よりも小さい径を有しかつ断面D字状の小径部46(係合部)と、この小径部46に連なって隣接し、回転軸43自体の径と同じ径を有しかつ断面D字状の大径部47とが形成されている。なお、図6(d)および後述する図8(b)などでは、小径部46を見やすくするために、回転軸43を右側から見たときの小径部46にハッチングを付して表示するものとする。
【0038】
図7は、動力伝達機構42を拡大して示している。同図(a)に示すように、動力伝達機構42は、カップ収容器3の左側板部32に設けられている。具体的には、前記駆動シャフト28の先端部(左端部、図4(b)参照)に固定された駆動ローラ51と、上下のカップ列送り部材41、41の回転軸43の左端部にそれぞれ固定された上下の従動ローラ52および53と、これらのローラ51、52および53に巻き掛けられた無端のベルト54と、このベルト54に張力を付与するための2つの張力付与ローラ55、55などで構成されている。2つの張力付与ローラ55、55は、下側の従動ローラ53に近接し、その上下にそれぞれ配置されている。また、両張力付与ローラ55、55は、カップ収容器3の左側板部32に沿って前後方向(図7では左右方向)にスライド自在の張力調整プレート56(張力付与ローラ支持部材)に、回転自在に支持されている。
【0039】
この張力調整プレート56は、所定形状の金属板を折曲げ加工することなどによって、側面形状がコ字状に形成されており、後端部(図7では左端部)に、前記2つの張力付与ローラ55、55が支持されている。また、張力調整プレート56の上部および下部にはそれぞれ、前後方向(図7では左右方向)に所定長さ延びる長孔56a、56aが形成されており、各長孔56aを介してカップ収容器3の左側板部32に取り付けられた取付けねじ57によって、張力調整プレート56が、左側板部32に沿って前後方向にスライド自在に支持されている。さらに、張力調整プレート56は、その前端上部および前端下部、ならびに中央部が、外方に直角に屈曲されている。前端上部および前端下部の屈曲部56b、56bにはそれぞれ、張力調整プレート56を後方(図7では左方)に付勢するばね58、58が取り付けられている。
【0040】
このように構成された張力調整プレート56は、図7(a)に示す張力付与位置と、同図(b)に示す張力付与解除位置との間で、前後方向にスライド可能になっている。すなわち、張力調整プレート56が張力付与位置に位置するときには、張力調整プレート56が2つのばね58、58で後方に付勢され、2つの張力付与ローラ55、55がベルト54に押し付けられることによって、両張力付与ローラ55、55間のベルト54の部分を下側の従動ローラ53に強く押付け、それにより、ベルト54全体に所定の張力が付与される。したがって、この状態において、駆動ローラ51が回転駆動されることにより、ベルト54が循環するように回り、これに伴い、上下の従動ローラ52および53が同期して回転する。
【0041】
一方、張力調整プレート56を張力付与解除位置に位置させるときには、作業者が自身の指を張力調整プレート56の中央部の屈曲部56cに掛け、両ばね58、58の付勢力に抗して、両張力付与ローラ55、55がベルト54から離れるよう、張力調整プレート56を前方(図7では右方)にスライドさせる。これにより、両張力付与ローラ55、55によるベルト54への張力付与が解除され、そのベルト54の従動ローラ52、53間、および下側の従動ローラ53と駆動ローラ51の間がたるむ。このように、ベルト54に対する張力付与を解除した状態では、上下の従動ローラ52および53は、独立して回転可能となり、したがって、これらの従動ローラ52、53が左端部に固定された上下のカップ列送り部材41、41を、独立して手動で回転操作することが可能となる。
【0042】
なお、張力調整プレート56を張力付与解除位置に保持する場合、図7(b)に示すように、張力調整プレート56の上側の長孔56aにドライバーなどの工具Tを挿入することにより、ばね58、58による張力調整プレート56の張力付与位置への戻りを阻止し、それにより、張力調整プレート56を張力付与解除位置に簡単に保持することができる。
【0043】
図8(a)は、カップ収容器3の右側板部33に設けられた位相調整プレート61を示している。この位相調整プレート61は、縦長の金属板からなり、上下のカップ列送り部材41、41の右端部の抜止め機能を有するとともに、両カップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の位相がずれている場合に、それらの位相を一致させるために操作されるものである。
【0044】
位相調整プレート61の上部及び下部にはそれぞれ、上下方向に所定長さ延びる長孔62、62が形成されており、各長孔62を介してカップ収容器3の右側板部32に取り付けられた取付けピン63によって、位相調整プレート61が、右側板部32に沿って上下方向にスライド自在に支持されている。また、位相調整プレート61の上端部および下端部には、鍵穴状に形成され、上下のカップ列送り部材41、41の回転軸43の右端部にそれぞれ係合する上係合孔64(第2の係合孔)および下係合孔65(第1の係合孔)が形成されている。
【0045】
図8(b)および(c)に示すように、上係合孔64は、円形状に形成され、回転軸43の回転を許容する回転許容部64a(第2大径部)と、この回転許容部64aに連なって下方に延び、回転軸43の回転を許容する拡幅部64bと、この拡幅部64bに連なって下方に延び、回転軸43の回転を阻止する回転阻止部64c(第2溝部)と、この回転阻止部64cの下端に連なって円形状に形成され、回転軸43よりも大きい径を有する大径孔部64dとで構成されている。
【0046】
上係合孔64の回転許容部64aおよび拡幅部64bは、回転軸43の右端部における大径部47の最大径よりも小さくかつ小径部46の最大径よりも大きい径および幅をそれぞれ有している。したがって、回転軸43の小径部46が、これらの回転許容部64aまたは拡幅部64bに係合する場合、その回転軸43を有する上側のカップ列送り部材41の回転が許容される。また、回転阻止部64cは、回転軸43の小径部46の最大径よりも小さくかつ小径部46の平坦面43bに直交する最大幅よりも若干大きい幅を有している。したがって、回転軸43の小径部46が回転阻止部64cに係合する場合、上側のカップ列送り部材41の回転が阻止される。さらに、大径孔部64dは、回転軸43の大径部47の最大径よりも大きい径を有している。この大径孔部64dは、位相調整プレート61をカップ収容器3の右側板部33に取り付ける際に、カップ列送り部材41の回転軸43の大径部47を、上係合孔64に貫通させるために利用される。
【0047】
一方、下係合孔65は、上記の上係合孔64の回転許容部64a、回転阻止部64cおよび大径孔部64dにそれぞれ対応しかつ同様に形成された回転許容部65a(第1大径部)、回転阻止部65c(第1溝部)および大径孔部65dで構成されている。すなわち、この下係合孔65は、上係合孔64と異なり、拡幅部64bを有しておらず、回転許容部65aと大径孔部65dの間には、これらに連なり、上係合孔64の拡幅部64bおよび回転阻止部64cと同じ高さ寸法に形成された回転阻止部65cを有している。
【0048】
また、位相調整プレート61には、作業者が自身の指を掛けて、位相調整プレート61を上下方向にスライドさせるための円形の操作孔66が形成され、この操作孔66の上方に、位相調整プレート61を上方にスライドさせた所定位置に固定するための固定用孔67が形成されている。なお、この固定用孔67は、位相調整プレート61が上記の所定位置に位置するときに、カップ収容器3の右側板部33に形成された孔33aに合致するように形成されており、作業者が、ドライバーなどの工具を固定用孔67および孔33aに挿入することによって、位相調整プレート61を上下方向に不動に固定することができる。
【0049】
次に、図9を参照して、以上のように構成されたカップ供給装置1Aにおける予備カップ列Yの搬送動作について説明する。なお、作業者がカップ収容器3内にカップCを補充した直後には、前記図4(b)に示すように、販売カップ列Hは、最下位の販売カップCがカップドロップリング21Aに支持された状態で、カップ列セット部14にセットされる一方、3つの予備カップ列Yは、各々がベース16上に載置されるとともに、上下のカップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の上下に対応するピッチP間、より具体的には、各スパイラル部44の回動軸43よりも前方に突出する部分の間に位置するよう、左右方向に一列に並んだ状態(図6(c)参照)で、カップ列収納部15に収納される。
【0050】
図4(b)に示す状態から、自動販売機において飲料の販売が進み、図9(a)に示すように、カップ収容器3内の販売カップ列Hのカップ数が所定数(例えば5個)以下になったときに、カップ列搬送装置5が作動する。具体的には、駆動機構22のモータ26が、カップドロップリング21Aを駆動する場合と逆方向に回転し、それにより、動力伝達機構42の駆動ローラ51が所定方向に回転する。これに伴い、ベルト54が回り、それにより、上下の従動ローラ52および53が同期して回転する。これにより、上下のカップ列送り部材41、41も同期して所定方向に回転、すなわち3つの予備カップ列Yを両スパイラル部44、44で協働して左方のカップ列セット部14側に搬送するように回転する。
【0051】
そして、カップ列セット部14に最も近い予備カップ列Yが、カップ列セット部14に到達すると、図9(b)に示すように、その予備カップ列Yは、ベース16の開口部16aを介して落下し、カップドロップリング21Aに支持されて残存しているカップ列Hに積み重なる。これにより、予備カップ列Yは、カップ列セット部14にセットされ、販売カップ列として利用される。
【0052】
次に、図7、8および図10〜14を参照して、上下のカップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の位相が互いにずれている場合において、それらの位相を適正な位相に一致させるための位相合わせの手順を説明する。なお、図10〜図14では、各図(a)においてカップ収容器3の内部を示し、各図(b)において、図8(b)に対応する位相調整プレート61の上下端部を拡大して示すものとする。
【0053】
図10は、2点鎖線で示す適正な位相に対し、上側のカップ列送り部材41のスパイラル部44が遅角し、下側のカップ列送り部材41のスパイラル部44が進角している状態を示している。両スパイラル部44、44の位相合わせを行う場合、まず、両カップ列送り部材41、41を独立して回転可能な状態にするために、図7(b)に示すように、張力調整プレート56を、ばね58、58の付勢力に抗して、手動で張力付与解除位置にスライドさせて保持する。なおこの場合、前述したように、上側の長孔56aに工具Tを挿入することで、張力調整プレート56を張力付与解除位置に簡単に保持することができる。
【0054】
次いで、下側のカップ列送り部材41を、そのスパイラル部44が適正な位相になるよう、手動で回転させる。具体的には、例えば図10(b)の矢印で示す方向にカップ列送り部材41を回転させ、その回転軸43の平坦面43bを鉛直にする。そして、位相調整プレート61を手動で上方に一段スライドさせる。この場合、図11に示すように、下側のカップ列送り部材41は、そのスパイラル部44が適正な位相に調整されるとともに、回転軸43の右端部の小径部46が下係合孔65の回転阻止部65cに係合する。これにより、下側のカップ列送り部材41は、回転不能に保持される。一方、上側のカップ列送り部材41は、その回転軸43の右端部の小径部46が上係合孔64の拡幅部64bに係合しているため、回転可能な状態に維持される。なお、上述した位相調整プレート61の上方へのスライドでは、図11(b)に示すように、上係合孔64の回転阻止部64cの上端が、回転軸43の小径部46に下方から当接することで、位相調整プレート61のそれ以上のスライドが阻止される。
【0055】
次いで、上側のカップ列送り部材41を、そのスパイラル部44が適正な位相になるよう、手動で回転させる。具体的には、例えば図11(b)の矢印で示す方向にカップ列送り部材41を回転させ、図12に示すように、回転軸43の平坦面43bを鉛直にする。これにより、位相調整プレート61の上方へのスライドが許容されるので、図13に示すように、位相調整プレート61を手動で上方にさらに一段スライドさせる。この場合、上側のカップ列送り部材41は、そのスパイラル部44が適正な位相に調整されるとともに、回転軸43の小径部46が上係合孔64の回転阻止部64cに係合する。これにより、上側のカップ列送り部材41は、下側のそれと同様、回転不能に保持される。またこの場合、図8(a)に示す位相調整プレート61の固定用孔67がカップ収容器3の右側板部33の孔33aに合致するので、これらの孔67および33aに工具を挿入することによって、位相調整プレート61を上下方向に不動に保持する。
【0056】
次いで、位相調整プレート61を上記のように不動に保持した状態のまま、張力調整プレート56の長孔56aから工具Tを取り外す。これにより、図7(a)に示すように、張力調整プレート56は、ばね58、58の復元力によって、張力付与位置に戻り、動力伝達機構42のベルト54に適切な張力が付与される。
【0057】
その後、位相調整プレート61の固定用孔67から工具を取り外し、位相調整プレート61を、下方の元の位置までスライドさせる。これにより、上下のカップ列送り部材41、41の回転軸43の小径部46は、上係合孔64および下係合孔65の回転許容部64a、65aにそれぞれ係合し、スパイラル部44、44が、適正な位相に一致した状態に調整される。以上により、上下のカップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の位相合わせが終了する。
【0058】
以上詳述したように、本実施形態によれば、スパイラル部44を有する上下2つのカップ列送り部材41、41を回転させながら、カップ列収納部15に収納された予備カップ列Yを、カップ列セット部14側に搬送する。この場合、各予備カップ列Yは、その移動方向の前後において、スパイラル部44のピッチP間の両側部分で拘束されるように支持されるので、予備カップ列Y同士の間に隙間が生じることで、予備カップ列Y同士がくっつくのを防止できるとともに、予備カップ列Yが撓んだり、傾斜したりするのを防止しながら、予備カップ列Yを安定して搬送し、カップ列セット部14にセットすることができる。このように、カップ供給装置1Aおよび1Bによれば、カップ収容器3内における予備カップ列Yの搬送を安定して行うことができるとともに、予備カップ列Yを適切にカップ列セット部14にセットできることで、カップCの供給を確保することができる。
【0059】
また、上下2つのカップ列送り部材41、41のスパイラル部44、44の位相が互いにずれているときには、張力調整プレート56および位相調整プレート61のスライド操作、ならびに両カップ列送り部材41、41の回転操作によって、両スパイラル部44、44の位相を、適正な位相に一致した状態に、簡単に調整することができる。
【0060】
また、カップ供給装置1Aおよび1Bにおけるカップ列搬送装置5は、モータ26の動力を、カップ収容器3の左側板部32に設けられた動力伝達機構42によって、各カップ列送り部材41に伝達するように構成されるものであるので、比較的簡単な設計変更により、カップ収容器3におけるカップ列の収容数が異なるカップ供給装置を得ることができる。具体的には、動力伝達機構42の構成を維持したまま、カップ収容器3の背板部31およびベース16、ならびにカップ列送り部材41を、長くしたり、短くしたりするという、簡単な設計変更により、カップ収容器3およびカップ列送り部材41の左右方向のサイズを大きくしたり、小さくしたりすることができる。それにより、カップ列の収容数が多いまたは少ないカップ供給装置を容易に得ることができる。また、上記のような設計変更によって、カップ列の収容数が互いに異なるカップ収容器3を製造する場合でも、収容されるカップCのサイズが同一であれば、それらのカップ収容器3に1種類のカップドロップリング21を取り付け、カップドロップリングの共通化を図ることができる。
【0061】
さらに、統合カップ供給装置1は、3タイプのカップ供給装置1A、1Bおよび1Cが、共通の取付部材2を介して、互いに組み付けられているので、自動販売機内における統合カップ供給装置1の設置スペースや供給すべきカップCの種類に応じて、統合カップ供給装置1を簡単に構成することができる。これにより、単一のカップ供給装置1A、1Bまたは1Cに比べて、供給可能なカップ数を増大させたり、サイズの異なる複数種類のカップCを供給したりすることができる。
【0062】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、上下2つのカップ列送り部材41、41によって、予備カップ列Yを搬送するようにしたが、カップ列送り部材41の数は特に限定されるものではなく、カップ収容器3の高さやこれに収納される予備カップ列Yの高さになど応じて、カップ列送り部材41を3つ以上にすることも可能である。また、実施形態で示したカップ供給装置の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 統合カップ供給装置
1A カップ供給装置
1B カップ供給装置
1C カップ供給装置
3 カップ収容器
4 カップ搬出装置(カップ切離し手段)
5 カップ列搬送装置(カップ列搬送手段)
14 カップ列セット部
15 カップ列収納部
21 カップドロップリング
22 駆動機構
32 左側板部(側壁)
33 右側板部(側壁)
41 カップ列送り部材
42 動力伝達機構(駆動機構)
43 回転軸
44 スパイラル部
46 回転軸の小径部(係合部)
47 回転軸の大径部
51 駆動ローラ
52 従動ローラ
53 従動ローラ
54 ベルト
55 張力付与ローラ
56 張力調整プレート(張力付与ローラ支持部材)
58 ばね
61 位相調整プレート
64 上係合孔(第2の係合孔)
64a 上係合孔の回転許容部(第2大径部)
64b 上係合孔の拡幅部
64c 上係合孔の回転阻止部(第2溝部)
65 下係合孔(第1の係合孔)
65a 下係合孔の回転許容部(第1大径部)
65c 下係合孔の回転阻止部(第1溝部)
H 販売カップ列
Y 予備カップ列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が積み重なった状態の複数のカップから成る複数のカップ列を収容するとともに、飲料の提供時にカップを供給するカップ飲料提供装置のカップ供給装置であって、
供給用のカップ列がセットされるカップ列セット部と、このカップ列セット部に連なった状態で隣接し、1以上の予備用のカップ列が載置された状態で収納されるカップ列収納部とを、内部に有するカップ収容器と、
飲料の提供時に、前記カップ列セット部にセットされている供給用のカップ列から最下位のカップを切り離すカップ切離し手段と、
前記供給用のカップ列のカップが所定数以下になったときに、前記カップ列収納部に収納されている前記1以上の予備用のカップ列を、前記カップ列セット部側に搬送し、当該カップ列セット部に最も近い予備用のカップ列を当該カップ列セット部にセットするカップ列搬送手段と、
を備え、
前記カップ列搬送手段は、
互いに同一の形状およびサイズに形成され、前記カップ収容器内において、互いに上下方向に間隔を隔てて配置されるとともに、各々が、前記カップ列セット部および前記カップ列収納部の隣接する方向に螺旋状に延びるとともに中心軸線を中心として回転自在に設けられたスパイラル部を有し、当該スパイラル部のピッチ間に位置する前記予備用のカップ列を、前記カップ列セット部側に協働して送る複数のカップ列送り部材と、
カップ列の搬送時に、前記複数のカップ列送り部材のスパイラル部を、互いに同一の所定方向に同期して回転駆動する駆動機構と、
前記複数のカップ列送り部材におけるスパイラル部の位相が互いにずれているときに、当該複数のスパイラル部の位相を互いに一致するよう、手動で調整するための位相調整手段と、
を有していることを特徴とするカップ飲料提供装置のカップ供給装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、
駆動源と、
この駆動源によって回転駆動される駆動ローラと、
前記複数のカップ列送り部材の同じ側の端部にそれぞれ固定され、対応するスパイラル部と一体に回転可能な複数の従動ローラと、
前記駆動ローラおよび前記複数の従動ローラに巻き掛けられたベルトと、
前記ベルトに所定の張力を付与するための張力付与ローラと、
この張力付与ローラを、前記ベルトに押し付けるように付勢するばねと、
を有し、
前記位相調整手段は、前記張力付与ローラを支持し、当該張力付与ローラが前記ばねの付勢力で前記ベルトに押し付けられることによって当該ベルトに張力を付与する張力付与位置と、前記張力付与ローラが前記ばねの付勢力に抗して前記ベルトから離れるように操作されることによって当該ベルトへの張力付与を解除する張力付与解除位置との間で、移動自在の張力付与ローラ支持部材を有していることを特徴とする請求項1に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置。
【請求項3】
前記複数のカップ列送り部材は、2つのカップ列送り部材で構成され、
当該各カップ列送り部材は、前記中心軸線が中心を通るとともに前記スパイラル部に連結され、前記カップ収容器の互いに対向する2つの側壁に、両端部がそれぞれ回転自在に支持された回転軸を、さらに有し、
前記位相調整手段は、前記2つのカップ列送り部材の前記回転軸の同じ側の端部が貫通した状態でそれぞれ係合する第1および第2の係合孔を有するとともに、前記カップ収容器の前記側壁に沿って、互いに異なる第1、第2および第3の所定位置に上下方向にスライド自在の位相調整スライダを、さらに有しており、
前記第1および第2の係合孔は、前記位相調整スライダが前記第1の所定位置に位置するときに前記2つのカップ列送り部材の前記回転軸の回転をいずれも許容し、前記位相調整スライダが前記第2の所定位置に位置するときに前記回転軸の一方の回転を許容しかつ他方の回転を阻止し、前記位相調整スライダが前記第3の所定位置に位置するときに、前記2つのカップ列送り部材の前記スパイラル部の位相が互いに一致した状態で、前記回転軸のいずれの回転も阻止するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置。
【請求項4】
前記回転軸の前記第1または第2の係合孔に係合する端部には、断面D字状に形成された係合部が設けられており、
前記第1の係合孔は、前記係合部の最大径よりも大きい径を有する第1大径部と、この第1大径部に連なって下方に延び、前記係合部の最大径よりも小さくかつ最小径よりも大きい幅を有する第1溝部と、を有し、
前記第2の係合孔は、前記係合部の最大径よりも大きい径を有する第2大径部と、この第2大径部に連なって下方に延び、前記係合部の最大径よりも大きい幅を有する拡幅部と、この拡幅部に連なって下方に延び、前記係合部の最大径よりも小さくかつ最小径よりも大きい幅を有する第2溝部と、を有していることを特徴とする請求項3に記載のカップ飲料提供装置のカップ供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−146128(P2012−146128A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3956(P2011−3956)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】