説明

カップ飲料用トレーサービス装置

【課題】注文個数分のカップを載置されたトレーの、装置よりの取り出しを、コンパクトな構造をもって、利用者や給仕サービスを行う人型歩行ロボットが容易に行えるようにすること。
【解決手段】トレー80を載置されるトレー載置テーブル44がカップ移送装置60によるカップ受け取り位置より前方に張り出したトレー引き渡し位置へ移動可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ飲料用トレーサービス装置に関し、特に、複数杯のカップを載置されたトレー単位で飲料を提供するカップ飲料用トレーサービス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ飲料自動販売機等のカップ飲料製造装置は、装置前方に開口したカップ取出載置部を有し、飲料を注入されたカップがカップ取出載置部の上方よりカップ取出載置部上に載置されるようになっている。このようなカップ飲料製造装置において、まとめ買い等のために、カップ取出載置部に回転式の持ち運び可能なトレーが設けられ、飲料を注入されたカップがトレー上に載置される度にトレーが分割回転し、注文個数分のカップがトレー上に載置され、トレーごと注文個数分のカップを取り出されるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11(1999)−123145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カップ飲料製造装置のカップ取出載置部は、左右を隔壁によって区切られた奥まった部位にあり、このカップ取出載置部より、注文個数分のカップを載置されたトレーを水平を保って取り出さなくてはならず、トレーの取り出し易さに問題がある。
【0005】
また、従来のカップ飲料製造装置では、カップ取出載置部に対するトレーの自動供給が行われていない。カップ飲料製造装置には、カップ取出載置部の上方に、カップやカップキャップを収容し、これらをカップ取出載置部に自動供給する機構があるため、装置を大型化することなくカップ取出載置部にトレーを自動供給する機構を組み込むことが難しい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、既存のカップ飲料製造装置に取り付けられる付帯のカップ飲料用トレーサービス装置(ドリンクサーバ)として、注文個数分のカップを載置されたトレーの、装置よりの取り出しを、利用者、さらには給仕サービスを行う人型歩行ロボットが容易に行えるようにし、さらには、そのことに具現化する機構との関連において、装置を大型化することなくトレー供給を自動化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるカップ飲料用トレーサービス装置(10)は、飲料を注入されたカップ(C)を装置前方より取り出し可能に載置されるカップ取出載置部(202)を有するカップ飲料製造装置(200)の前部に配置されるカップ飲料用トレーサービス装置(10)であって、少なくとも一つのカップ(C)を載置可能なトレー(80)を載置され、カップ受け取り位置と前記カップ受け取り位置より前方に変位したトレー引き渡し位置との間を往復移動するトレー載置テーブル(44)と、前記トレー載置テーブル(44)上に、複数杯のカップ(C)を載置可能なトレー(80)を供給するトレー供給手段(90)と、前記カップ飲料製造装置(200)の前記カップ取出載置部(202)からカップ(C)を前記カップ受け取り位置に位置している前記トレー載置テーブル(44)上の前記トレー(80)の複数位置にカップを移送するカップ移送手段(60)とを有する。
【0008】
このカップ飲料用トレーサービス装置(10)によれば、トレー載置テーブル(44)がカップ受け取りより装置前方に変位したトレー引き渡し位置に移動することにより、利用者や給仕サービスを行う人型歩行ロボットは、装置前方のトレー引き渡し位置において、注文個数分のカップ(C)が載置されたトレー(80)を受け取ることができる。これにより、コンパクトな構造をもって、装置からのトレー(80)の取り出しを、利用者や人型歩行ロボットが容易に行えるようになる。
【0009】
本発明によるカップ飲料用トレーサービス装置(10)は、好ましい一つの実施例として、前記トレー載置テーブル(44)の前記カップ受け取り位置の下方に、前記トレー(80)を上下方向に積層した状態で収容するトレー収容部(86)が設けられ、前記トレー供給手段(90)は、前記トレー載置テーブル(44)の前記カップ受け取り位置のテーブル上方位置と前記トレー収容部(86)との間の往復動可能なトレーピックアップ手段(98)を有し、前記トレーピックアップ手段(98)は、前記トレー載置テーブル(44)が前記トレー引き渡し位置に移動している状態において前記トレー収容部(86)の上側よりトレーを前記テーブル上方位置に吊し上げ、当該テーブル上方位置より前記カップ受け取り位置に位置している前記トレー載置テーブル(44)上にトレー(80)を載置する。
【0010】
このカップ飲料用トレーサービス装置によれば、トレー載置テーブル(44)がトレー引き渡し位置に移動すると、カップ受け取り位置が上下に開放されることになる。これにより、トレー載置テーブル(44)がトレー引き渡し位置に移動すると、トレー収容部(86)の上側がカップ受け取り位置より更に上方の位置にまで開放され、カップ受け取り位置より高い位置から上下一直線でトレー収容部(86)にアクセスできる状態になる。
【0011】
この状態を利用して、トレー載置テーブル(44)がトレー引き渡し位置に移動している状態下で、トレーピックアップ手段(98)によってトレー収容部(86)の上側よりトレー(80)をテーブル上方位置にまで一旦吊し上げ、その後、トレー載置テーブル(44)をカップ受け取り位置に戻すことにより、吊し上げ状態のトレー(80)をトレー載置テーブル(44)上に載置することすることができる。これにより、装置を大型化することなく、特に、前方へのはり出しを大きくすることなくトレー供給を自動化することができる。
【0012】
本発明によるカップ飲料用トレーサービス装置(10)は、好ましい一つの実施例として、前記カップ移送手段(60)は、装置正面より見て左右水平方向に移動可能なスライダ(66)と、前記スライダ(66)に取り付けられた鉛直軸線周りに回転可能な水平旋回アーム(70)と、前記水平旋回アーム(70)に取り付けられ前記カップを解放可能に把持するクランプ手段(76)とを有する。
【0013】
このカップ飲料用トレーサービス装置によれば、カップ移送手段(60)が、スライダ(66)の左右水平方向の移動と水平旋回アーム(70)の旋回との組み合わせ(2軸制御)によってカップ移送を行うものであることにより、トレー載置テーブル(44)上のトレー(80)においてトレー載置テーブル(44)の前縁部に対応する前後方向位置にまでカップを配置することが可能になり、装置を大型化することがなく、カップ配置の自由度が高まる。この場合、前後方向のカップ移送は水平旋回アーム(70)の旋回によって行われるまで、前後方向もリニアスライダにより行われ場合に比して、ガイド構造が簡単になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるカップ飲料用トレーサービス装置によれば、トレー載置テーブルがカップ受け取りより装置前方に変位したトレー引き渡し位置に移動するから、利用者や給仕サービスを行う人型ロボットは、装置前方のトレー引き渡し位置において、注文個数分のカップを載置されたトレーを受け取ることができ、装置よりのトレーの取り出しを、コンパクトな構造をもって、利用者や人型ロボットが容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるカップ飲料用トレーサービス装置の一つの実施例を示す斜視図。
【図2】本実施例によるカップ飲料用トレーサービス装置のハウジング取外状態での側面図。
【図3】本実施例によるカップ飲料用トレーサービス装置のハウジング取外状態を前方から見た斜視図。
【図4】本実施例によるカップ飲料用トレーサービス装置のハウジング取外状態を後方から見た斜視図。
【図5】本実施例によるカップ飲料用トレーサービス装置のカップ移送装置部分の拡大斜視図。
【図6】(A)〜(D)は本実施例によるカップ飲料用トレーサービス装置のトレー供給装置およびその動作行程を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明によるカップ飲料用トレーサービス装置の実施例を、図1〜図6を参照して説明する。
【0017】
図1は、カップ飲料製造装置200の前部にカップ飲料用トレーサービス装置10がカップ飲料製造装置200の付帯機器として配置された状態を示している。
【0018】
カップ飲料製造装置200は、公知のものであり、内部構造の図示を省略しているが、従来のものと同様に、コーヒ、紅茶、ココア等の飲料を自動製造する飲料自動製造部、後述するカップ取出載置部202(図5参照)にカップCを自動供給するカップ自動供給部、飲料自動製造部によって製造した飲料をカップ取出載置部202にセットされたカップCに自動注入する飲料自動注入部等を有する。
【0019】
カップ飲料製造装置200は、図5に示されているように、装置前面部に左右を隔壁204によって区切られて装置前方に開口したカップ取出室206を形成されており、カップ取出室206内にカップ取出載置部202が設けられている。カップ取出載置部202に載置され、飲料を注入されたカップCは、カップ取出室206の前側開口より装置前方に取り出し可能である。なお、飲料を注入された後、カップCに、カップCの上部開口を閉じるキャップ(図示省略)が自動装着されてもよい。
【0020】
カップ飲料用トレーサービス装置10は、ハウジング12と、ハウジング12の前面上部に配置されたタッチパネル(図示省略)による飲料注文入力操作部を兼ねた液晶モニタ部14を有する。液晶モニタ部14は、ドリンクメニュー、操作ガイダンス、装置ステータスの画面表示を行う。
【0021】
図2〜図4は、ハウジング12を取り外したカップ飲料用トレーサービス装置10の全体を示している。カップ飲料用トレーサービス装置10は、水平なアッパメンバ16およびフロアメンバ18と、アッパメンバ16とフロアメンバ18とを接続する左右の鉛直なポストメンバ20、22とによる四角枠状の剛固なフレーム24を有する。
【0022】
フレーム24は鉛直なヒンジ軸線を有する上下のヒンジ26によってカップ飲料製造装置200の前部に回動可能に取り付けられている。ロアメンバ18にはキャスタ28が取り付けられており、カップ飲料用トレーサービス装置10はキャスタ28によって床面F1上に置かれる。これにより、カップ飲料用トレーサービス装置10は、カップ飲料製造装置200のメンテナンス時に容易に、カップ飲料製造装置200の前扉と共に開放可能である。
【0023】
本実施例では、ヒンジ26は、カップ飲料製造装置200に固定されて鉛直な中心軸線Aを有するヒンジ軸26Aと、フレーム24に固定されてヒンジ軸26Aが軸線方向に移動可能の貫通する貫通孔(図示省略)を有するヒンジアーム26Bとに構成され、カップ飲料製造装置200に対してフレーム24を上下方向に変位可能に連結する高さ方向フリー型のものが用いられている。
【0024】
これにより、床面F1の不整や床面F1に対して床面F2が傾斜している場合や、床面F1を構成する床材、たとえばカーペット等の沈み込みによってカップ飲料用トレーサービス装置10とカップ飲料製造装置200の高さ位置が変動することに支障なく対応できる。
【0025】
フロアメンバ18の前部には左右のテーブル支持ポストメンバ30、32が鉛直に立設されている。テーブル支持ポストメンバ30、32は、互いの上端を連結ビーム34によって連結されていると共に、補助支持部材36、38によって上端近傍を左右のポストメンバ20、22に剛固に連結されている。
【0026】
テーブル支持ポストメンバ30、32には、各々、略中間高さ位置において前後水平方向に延在するスライドカイドレール40、42が取り付けられている。スライドカイドレール40、42にはトレー載置テーブル44が前後水平方向に移動可能に設けられている。トレー載置テーブル44は、スライドカイドレール40、42に案内されて、フロアメンバ18の真上のカップ受け取り位置(図2、図3参照)と、当該カップ受け取り位置より前方に変位してハウジング12より前方に張り出したトレー引き渡し位置(図1参照)との間を水平姿勢で往復移動する。
【0027】
テーブル支持ポストメンバ32にはテーブル駆動用電動モータ46が取り付けられている。テーブル駆動用電動モータ46の出力軸にはピニオン(図示省略)が取り付けられており、ピニオンは、トレー載置テーブル44の下底面に形成されたラック(図示省略)と噛合している。これにより、テーブル駆動用電動モータ44は、トレー載置テーブル44をカップ受け取り位置とトレー引き渡し位置との間を往復移動させる。
【0028】
テーブル支持ポストメンバ30、32には前部扉52が上下移動可能に設けられている。前部扉52は、カップ受け取り位置に位置しているトレー載置テーブル44の前縁に対応する前後方向位置にあって、テーブル支持ポストメンバ32に取り付けられた前部扉駆動用電動モータ54によって、トレー載置テーブル44の上面前縁に接近した閉扉位置(図3参照)と、閉扉位置より上方に変位した開扉位置(図1参照)との間に往復駆動される。
【0029】
トレー載置テーブル44上にはトレー供給装置90によってトレー80が載置される。トレー80は、左右両側に耳片状のトレー把持部81を有するトレー板82と、トレー板82に田の字形に配置(マトリックス配置)され、各々上方よりカップCを受け入れる上方開カップホルダ部84口の4個のカップホルダ部84とを有する。カップホルダ部84は、各々、上縁部をトレー板82に連結されてトレー板82より下方へ突出している。これにより、トレー80は、トレー板82より下方へ突出したカップホルダ部84の底部をもってトレー載置テーブル44上の規定位置に位置決め載置され、トレー把持部81はトレー載置テーブル44の上面より上方に離れた位置に位置することになる。
【0030】
なお、トレー載置テーブル44上のトレー80のトレー板82の高さ位置は、カップ取出載置部202より低い位置に設定される。
【0031】
トレー載置テーブル44のカップ受け取り位置の真下位置に、つまり、フロアメンバ18上に、トレー80を上下方向に積層した状態で収容するトレー収容部86が設けられている。トレー収容部86は、フロアメンバ18に取り付けられた前後ガイドレール88に案内されて前記真下位置より装置前方に引き出し可能なトレー収容底板91と、トレー収容底板91上に鉛直に立設されて積層すべきトレー80のカップホルダ部84の底部貫通孔85とトレー板82の中央部に貫通形成された中央貫通孔83とに突き刺さってトレー80の上下方向の積層を整える積層ガイドバー93(図6参照)と、トレー収容底板91に取り付けられてトレー収容部86の前方を閉じる開閉可能なトレー収容部蓋95とを有する。
【0032】
トレー供給装置90は、ポストメンバ18に固定されて上下方向に延在して上下方向に移動可能な上下動スライダ92を有する電動式の上下動リニアアクチュエータ94と、上下動スライダ92に片持ち梁式に取り付けられて左右水平方向に延在する左右水平ビーム96と、左右水平ビーム96に下向きに取り付けられた複数個の真空式の吸着パッド(トレーピックアップ手段)98及びトレー位置検出用のタッチセンサ100とを有する。
【0033】
吸着パッド98は、図示省略の真空源97より負圧を選択的に与えられてトレー80のトレー板82の上面に吸着してトレー80を吊し上げるものであり、上下動リニアアクチュエータ94による左右水平ビーム96の上下方向の駆動により、カップ受け取り位置にあるトレー載置テーブル44の上方位置(最上昇位置)と、これより下方のトレー収容部86との間を往復動する。吸着パッド98の最上昇位置より前記カップ受け取り位置を通過してのトレー収容部86への移動及びその逆方向の移動は、トレー載置テーブル44が前記トレー引き渡し位置へ前進移動している状態下で可能になる。
【0034】
ポストメンバ20にはカップ移送装置60が取り付けられている。カップ移送装置60は、ポストメンバ20に固定されて上下方向に延在して上下方向に移動可能な上下動スライダ62を有する電動式の上下動リニアアクチュエータ64と、上下動スライダ62に片持ち梁式に取り付けられて左右水平方向に延在し、左右水平方向に移動可能な左右動スライダ66を有する電動式の左右動リニアアクチュエータ68と、左右動スライダ66に取り付られて鉛直軸線周りに回転可能な水平旋回アーム70および水平旋回アーム70を旋回駆動するステッピングモータによる旋回アーム駆動用電動モータ72と、水平旋回アーム70の先端に取り付けられてカップCを解放可能に把持する一対の把持片74を含む電動式のグリッパ(クランプ手段)76とを有する。
【0035】
カップ移送装置60は、トレー80の田の字形配置(マトリックス配置)の4個のカップホルダ84の各々に、カップCをセットする場合において、左右動スライダ66の左右水平方向の移動と水平旋回アーム70の旋回との組み合わせ(2軸制御)により、カップ飲料製造装200のカップ取出載置部202からカップCをカップ受け取り位置にあるトレー載置テーブル80上のトレー80の各カップホルダ84に順次移送することができる。
【0036】
これにより、トレー載置テーブル44上のトレー80において、トレー載置テーブル44の前縁部に対応する前後方向位置にまでカップCを配置することが可能になり、装置を大型化することがなく、カップ配置の自由度が高まる。この場合、前後方向のカップ移送は水平旋回アーム70の旋回に行われるので、前後方向もリニアスライダにより行われるXYスライダ方式の場合に比して、ガイド構造が簡単になる。
【0037】
ポストメンバ20には、マイクロコンピュータ110と、PLC(プログラマーブル・ロジック・コンピュータ)112が取り付けられている。マイクロコンピュータ110は、ドリンクメニュー管理、モニタ表示制御、タッチパネル入力制御、PLC112とのLAN通信、給仕サービスを行う人型歩行ロボット120との無線通信等を行う。PLC112は、カップ飲料用トレーサービス装置10の各機構部のアクチュエータ制御(シーケンス制御)、タッチパネル(図示省略)による飲料注文入力のカップ飲料製造装置200に対する転送、マイクロコンピュータ110とのLAN通信等を行う。
【0038】
給仕サービスを行う人型歩行ロボット120は、飲料を注文した人の音声認識によって飲料の注文内容をマイクロコンピュータ110に無線通信する機能、図1に示されているように、トレー引き渡し位置にあるトレー載置テーブル44上のトレー44を把持し、トレー44を、飲料を注文した人のもとに搬送する機能を有する。
【0039】
次に、PLC112により行われるシーケンス制御によるカップ飲料用トレーサービス装置10の一連の動作について説明する。なお、待機状態(初期状態)では、トレー載置テーブル44は、カップ受け取り位置にあって、空のトレー80を規定位置に載置され、トレー供給装置90の左右水平ビーム96は最上昇位置にあり、カップ移送装置60の水平旋回アーム70はカップ取出室206外の待機位置にあり、前部扉52は降下した閉扉位置にある。
【0040】
(1)待機状態において、モニタ部14のタッチパネル(図示省略)による飲料注文入力、あるいは人型歩行ロボット120よりの無線通信による飲料注文を受信すると、飲料注文内容がカップ飲料製造装置200に転送され、カップ飲料製造装置200が飲料注文内容に応じたカップ飲料の製造を開始する。ここでは、4杯まとめのコーヒの注文があったとする。
【0041】
(2)カップ飲料製造装置200が、カップCをカップ取出載置部202にセットし、カップ取出載置部202のカップCにコーヒが注入され、その後、カップCにキャップ(図示省略)が装着され、1杯目のカップ飲料が完成して当該カップCがカップ載置部202にセットされると、カップ移送装置60の左右動スライダ66の左右水平方向の移動と水平旋回アーム70の旋回との2軸制御により、グリッパ76の把持片74がカップ取出載置部202に位置してカップ取出載置部202のカップCを把持する。その後、左右動スライダ66の左右水平方向の移動と水平旋回アーム70の旋回との2軸制御により、グリッパ76に把持されたカップCがカップ受け取り位置にあるトレー載置テーブル44上のトレー80の一つのカップホルダ部84の真上位置に位置する。その後、上下動スライダ62が降下することにより、グリッパ76に把持されているカップCがカップホルダ部84内に入れられ、グリッパ76がカップCの把持を解放することにより、カップホルダ部84に対する一杯目のカップCの移送が完了する。なお、カップホルダ部84の真上位置よりカップCをカップホルダ部84へ落下させても、カップCの飲物に支障がない場合には、上下動スライダ62の降下移動は省略できる。
【0042】
(3)上下動スライダ62が上昇することにより、グリッパ76が元の高さ位置に戻り、上述の(2)の動作を注文個数分繰り返す。これにより、トレー80の4個のカップホルダ部84に、カップCが一つず入れられる。
【0043】
(4)前部扉52が上昇移動して前部扉52が開扉し、トレー載置テーブル44がカップ受け取り位置よりトレー引き渡し位置へ前進移動する。この状態が図1に示されている。トレー載置テーブル44はハウジング12より前方に張り出し、このトレー載置テーブル44のトレー80は、上方と左右両側を開放されているので、注文者や人型歩行ロボット120の左右両手によるトレー80の受け取りが、狭い所に手を入れる等の操作性の悪い操作を必要とすることなく、操作性よく容易に行われ得るようになる。
【0044】
トレー載置テーブル44のトレー80の左右両側のトレー把持部81は、トレー載置テーブル44の上面より上方に離れた位置にあるので、注文者、人型歩行ロボット120の何れにおいて、左右のトレー把持部81を掴み易い。このことによっても、左右両手によるトレー80の受け取りが、操作性よく容易に行われるようになる。
【0045】
(5)図6(A)に示されているように、トレー載置テーブル44がトレー引き渡し位置に前進移動している状態時に、トレー供給装置90の上下動スライダ92の降下移動によって左右水平ビーム96がトレー載置テーブル44のカップ受け取り位置を通過して降下し、トレー収容部86に移動する。図6(B)に示されているように、タッチセンサ100がトレー収容部86に積層されているトレー80の最上段のもののトレー板82の上面に当接すると、左右水平ビーム96の降下が停止し、吸着パッド98に負圧が供給されることにより、吸着パッド98が最上段のトレー80を吸着保持する。
【0046】
(6)図6(C)に示されているように、上下動スライダ92の上昇移動によって左右水平ビーム96がトレー収容部86よりトレー載置テーブル44のカップ受け取り位置を通過して上昇し、これより上方の最上昇位置に移動する。
【0047】
(7)図6(D)に示されているように、トレー載置テーブル44がトレー引き渡し位置よりカップ受け取り位置に戻る。その後、上下動スライダ92の降下移動によって左右水平ビーム96が降下し、吸着パッド98に吸着しているトレー80がトレー載置テーブル44上の規定位置に載置される。その後、吸着パッド98によるトレー80の吸着が解放され、上下動スライダ92の上昇移動によって左右水平ビーム96が元の最上昇位置に戻る。また、前部扉52が降下した閉扉位置に戻る。これにより、一連の動作が完了し、再び待機状態になる。
【0048】
上述したように、トレー載置テーブル44がトレー引き渡し位置に移動すると、トレー収容部86の上側がカップ受け取り位置より更に上方の位置にまで開放され、カップ受け取り位置より高い位置から上下一直線でトレー収容部86にアクセスできる状態になる。
【0049】
この状態を利用して、トレー載置テーブル44がトレー引き渡し位置に移動している状態下で、左右水平ビーム96をトレー収容部86まで降下させ、吸着パッド98によってトレー収容部86の上側よりトレー80をテーブル上方位置(最上昇位置)にまで一旦吊し上げ、その後、トレー載置テーブル44をカップ受け取り位置に戻すことにより、吊し上げ状態のトレー80をトレー載置テーブル44上に載置することすることができるから、上下方向のトレー搬送だけで、装置を大型化することなく、特に、カップ飲料製造装置200の前部に付帯機器として取り付けられるカップ飲料用トレーサービス装置10の前方へのはり出しを大きくすることなくトレー供給を自動化することができる。
【0050】
この実施例では、図4に示されているように、上下動リニアアクチュエータ64の上下動スライダ62に高さ位置補正用センサ106が設けられている。高さ位置補正用センサ106は、上下動スライダ62の上下移動によって上下方向にスキャンし、カップ飲料製造装置200に設けられた高さ位置マーク108を検出する。高さ位置補正用センサ106が出力するセンサ信号は、PLC112に入力される。
【0051】
PLC112は、保守サービス等のために、カップ飲料用トレーサービス装置10がヒンジ26のヒンジ軸線周りの回動により、前方に回しあけられ、その後、図1に示されているロック位置に戻される度に、高さ位置補正用センサ106よりのセンサ信号を入力して、カップ飲料製造装置200に対するカップ飲料用トレーサービス装置10のロック配置位置での高さ位置の変動を演算する。高さ位置の変動が所定値を超えている場合には、カップ移送装置60の水平旋回アーム70の待機高さ位置を補償すべく、上下動スライダ62が高さ位置変動をキャンセルする方向に移動する。
【0052】
これにより、床面F1の不整や床面F1に対して床面F2が傾斜している場合や、床面F1を構成する床材、たとえばカーペット等の沈み込みによってカップ飲料用トレーサービス装置10のロック配置位置での高さ位置が変動しても、カップ移送装置60とカップ飲料製造装置200のカップ取出載置部202との高さ位置関係が変動することがなく、カップ移送装置60によるカップ取出載置部202よりのカップCの取り出しが支障なく行われるようになる。
【0053】
なお、カップ移送装置60の上下動リニアアクチュエータ64、左右動リニアアクチュエータ68、トレー供給装置90の上下動リニアアクチュエータ94は、それぞれ、電動送りねじ式のものや、リニアモータにより構成することができる。
【0054】
また、トレー80は、複数カップ注文用のものに限られることはなく、少なくとも一つのカップCを載置できるものであればよい。
【符号の説明】
【0055】
10 カップ飲料用トレーサービス装置
14 モニタ部
24 フレーム
26 ヒンジ
30、32 テーブル支持ポストメンバ
40、42 スライドガイドレール
44 トレー載置テーブル
46 テーブル駆動用電動モータ
52 前部扉
54 前部扉駆動用電動モータ
60 カップ移送装置
62 上下動スライダ
64 上下動リニアアクチュエータ
66 左右動スライダ
68 左右動リニアアクチュエータ
70 水平旋回アーム
72 旋回アーム駆動用電動モータ
76 電動式グリッパ(クランプ手段)
80 トレー
84 カップホルダ
86 トレー収容部
90 トレー供給装置
92 上下動スライダ
94 上下動リニアアクチュエータ
96 左右水平ビーム
98 吸着パッド(トレーピックアップ手段)
200 カップ飲料製造装置
202 カップ取出載置部
206 カップ取出室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を注入されたカップを装置前方より取り出し可能に載置されるカップ取出載置部を有するカップ飲料製造装置の前部に配置されるカップ飲料用トレーサービス装置であって、
少なくとも一つのカップを載置可能なトレーを載置され、カップ受け取り位置と前記カップ受け取り位置より前方に変位したトレー引き渡し位置との間を往復移動するトレー載置テーブルと、
前記トレー載置テーブル上に、複数杯のカップを載置可能なトレーを供給するトレー供給手段と、
前記カップ飲料製造装置の前記カップ取出載置部からカップを前記カップ受け取り位置に位置している前記トレー載置テーブル上の前記トレーの複数位置にカップを移送するカップ移送手段と、
を有するカップ飲料用トレーサービス装置。
【請求項2】
前記トレー載置テーブルの前記カップ受け取り位置の下方に、前記トレーを上下方向に積層した状態で収容するトレー収容部が設けられ、
前記トレー供給手段は、前記カップ受け取り位置に位置している前記トレー載置テーブルの上方位置と前記トレー収容部との間の往復動可能なトレーピックアップ手段を有し、前記トレーピックアップ手段は、前記トレー載置テーブルが前記トレー引き渡し位置に移動している状態において前記トレー収容部よりトレーを前記テーブル上方位置に吊し上げ、当該テーブル上方位置より前記カップ受け取り位置に位置している前記トレー載置テーブル上にトレーを載置する請求項1に記載のカップ飲料用トレーサービス装置。
【請求項3】
前記カップ移送手段は、装置正面より見て左右水平方向に移動可能なスライダと、前記スライダに取り付けられた鉛直軸線周りに回転可能な水平旋回アームと、前記水平旋回アームに取り付けられ前記カップを解放可能に把持するクランプ手段とを有する請求項1または2に記載のカップ飲料用トレーサービス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−244936(P2011−244936A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119546(P2010−119546)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】