カテーテル導入用具および薬液注入システム
【課題】使用後に内針をケース内に収納できる構成としながらも、ケースがコンパクトなカテーテル導入用具を提供する。
【解決手段】カテーテル導入用具300は、カテーテル310と、カテーテル310の内部に挿入された内針320と、カテーテル310の末端側に接続された管状部材350に連結されたケース370とを有する。内針320には、管状部材350を通ってケース370の内部に導入されたワイヤが固定される。ケース370の内部には、ワイヤの一部が掛けられ、動作されることによって、内針320が管状部材350を通過してケース370内に収納されるようにワイヤを引き込ませる引き込み機構が配されている。
【解決手段】カテーテル導入用具300は、カテーテル310と、カテーテル310の内部に挿入された内針320と、カテーテル310の末端側に接続された管状部材350に連結されたケース370とを有する。内針320には、管状部材350を通ってケース370の内部に導入されたワイヤが固定される。ケース370の内部には、ワイヤの一部が掛けられ、動作されることによって、内針320が管状部材350を通過してケース370内に収納されるようにワイヤを引き込ませる引き込み機構が配されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟なカテーテルを用いて血管に薬液を注入する際に、血管にカテーテルを導入するのに用いられるカテーテル導入用具に関する。
【背景技術】
【0002】
患者への薬液の注入は、中空の金属針を患者の血管に穿刺して行われることが多い。しかし、注入時間が長時間になる場合には、血管を傷つけるのを防止するため、柔軟なカテーテル(留置針ともいう)等を血管内に留置し、これを通して薬液の注入を行うことがある。
【0003】
また、CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、超音波診断装置、アンギオ装置、MRA(MR Angio)装置等により医療画像を得る際に、診断精度を向上させる目的で、血管に造影剤を注入する。このような場合にもカテーテルが使用される。
【0004】
柔軟なカテーテルを血管内に穿刺するのに際し、カテーテルを血管内に容易に穿刺できるようにするため、カテーテル導入用具が一般に用いられている。カテーテル導入用具は、カテーテルと、カテーテル内に配された硬質の内針と、カテーテルの末端部に接続された管状部材とを有する。内針は、その先端部をカテーテルの先端から突出させて保持されており、カテーテルは内針と一緒に血管内に穿刺される。カテーテルが血管内に穿刺された後、内針がカテーテルの末端から引き抜かれ、カテーテルが血管内に留置される。これによって、管状部材の末端側からカテーテルを通じて血管内に薬液を注入することができる。
【0005】
カテーテルから抜き取った内針は、そのままでは危険であり、また血液が付着しているため二次感染のおそれもある。そこで従来、抜き取った内針を収納するケースを備えたカテーテル導入用具が知られている。
【0006】
例えば特許文献1および2には、伸縮自在に構成されたケースを管状部材の末端部に着脱可能に取り付けたカテーテル導入用具が記載されている。内針の末端部にはロッド状の連結部材が固定されている。連結部材はケースの内部を通して配されており、連結部材の末端部はケースの末端部に固定されている。
【0007】
以上の構成により、カテーテルを内針と一緒に血管内に穿刺した後、ケースを後方へ引っ張って伸張させると、内針はカテーテルから引き抜かれてケース内に収納される。その後、管状部材からケースを取り外すことによって、内針をケースに収納した安全な状態で廃棄することができる。
【特許文献1】特開2000−254225号公報
【特許文献2】特開2002−000727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載されたカテーテル導入用具では、ケースは、カテーテルを血管内に留置前する前はコンパクトであるが、留置した後は内針およびベース部材を収納するのに十分な長さまで伸張される。したがって、内針を廃棄する際にはケースが嵩張った状態とされてしまうという問題点があった。
【0009】
そこで本発明は、使用後に内針をケース内に収納できる構造としながらも、ケースがコンパクトであり廃棄時に嵩張らないカテーテル導入用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明のカテーテル導入用具は、柔軟なカテーテルを血管内に導入するのに用いられるカテーテル導入用具であって、血管内に留置されるカテーテルと、カテーテルの末端側に接続された管状部材と、先端部をカテーテルから突出させ、かつカテーテルの末端側から引き抜き可能にカテーテルの内部に挿入された内針とを有する。本発明のカテーテル導入用具はさらに、管状部材に取り外し可能に連結され、管状部材と連通しかつ内針を収納できる中空部が形成されたケースと、このケースの中空部内に配されたワイヤおよび引き込み機構とを有する。ワイヤは、先端部が内針の末端部に固定され、管状部材を通って末端部がケースの中空部内に導入されている。引き込み機構は、ワイヤの一部が掛けられており、その動作によって、内針が管状部材を通過してケースの中空部内に収納されるようにワイヤをケースの中空部内に引き込ませる。
【0011】
上記のように本発明のカテーテル導入用具では、先端部が内針に固定されたワイヤの末端部は管状部材を通ってケースの中空部内に導入されている。ケースの中空部内には、ワイヤの一部が掛けられた引き込み機構が配されており、その動作によってワイヤがケースの中空部内に引き込まれ、内針が管状部材を通過してケースの中空部内に収納される。
【0012】
本発明のカテーテル導入用具において、ワイヤは、末端部がケースの中空部内にケースに固定され、かつ、引き込み機構は、ケースの中空部内に移動自在に設けられ、移動することによってワイヤをケースの中空部内に引き込むようにワイヤの中間部が掛けられた少なくとも1つの可動部材を有することができる。この場合、必要に応じて複数の可動部材をケースの中空部内に配置したり、ワイヤが掛けられる固定部材を付加したりすることによって、ケースの中空部内でのワイヤの引き回しを適宜工夫し、これによってケースをよりコンパクトにすることが可能である。
【0013】
あるいは、本発明のカテーテル導入用具において、引き込み機構を、ワイヤの末端部が固定され、かつケースに回転自在に支持されたボビンを有して構成することもできる。この場合は、ボビンの回転によってワイヤがボビンに巻き取られ、それに伴って内針がケースの中空部内に収納される。
【0014】
さらに本発明は、上述した本発明のカテーテル導入用具と、薬液注入装置とを有する薬液注入システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワイヤが内針とともにケースの中空部内に引き込まれるように構成されることで、ケースの中空部内の寸法はワイヤの長さの影響を殆ど受けない。よって、内針がケース内に収納される構成としつつも、コンパクトなケースを達成することができ、廃棄時にも嵩張ることがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態によるカテーテル導入用具の平面図である。
【0018】
図1に示すように、カテーテル導入用具300は、カテーテル310を血管内に導入するのに用いられるものであり、カテーテル310、内針320、カテーテルハブ330、管状部材350およびケース370を有している。
【0019】
カテーテル310は、少なくとも先端が血管内に留置されるため、シリコーンゴム等の、血管に損傷を与えにくい柔軟なプラスチックまたはエラストマーで形成されている。カテーテル310の末端部は、カテーテルハブ330に固定されている。カテーテルハブ330は、カテーテル310と薬液が流通できるように中空である。
【0020】
カテーテルハブ330は、カテーテル310に内針320を挿通させた状態でカテーテル310を内針320と一緒に血管内に穿刺する際に、指で把持される部分である。従って、カテーテルハブ330は、指で把持されてもその形状を保持できる程度に硬い材料、例えば、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレン、ポリエチレン、軟質および硬質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、EPゴム等のプラスチックまたはエラストマーで形成されている。
【0021】
カテーテルハブ330の末端部には管状部材350が、カテーテルハブ330との間で薬液の流通が可能なように固定されている。管状部材350は、互いに直列に接続された可撓性チューブ351および分岐管355を有しており、可撓性チューブ351がカテーテルハブ330に固定されている。
【0022】
可撓性チューブ351は、被験者の多少の動きを許容するように、内部が閉塞しない程度に屈曲可能な柔軟な材料、例えば軟質ポリ塩化ビニル等で形成される。
【0023】
分岐管355は、先端が可撓性チューブ351と接続された直管部355aと、直管部355aの中間から分岐した側管部355bとを有している。直管部355aの内部は、その末端側でシリコーンゴム等の弾性部材(不図示)によって閉塞されている。側管部355bの末端には、管状部材350内に薬液を供給するためのチューブ(不図示)が接続される。
【0024】
ケース370は、直管部355aの末端部に取り外し可能に装着されている。ケース370の、管状部材350への着脱構造としては、スナップイン式あるいはスクリュー式など、任意の構造を採用することができる。ケース370を直管部355aから取り外した状態のときに直管部355aの末端をキャップするためのキャップ360が、管状部材350に取り付けられている。
【0025】
図2Aおよび図2Bに、ケース370の平断面図および側断面図をそれぞれ示す。図2Aおよび図2Bに示すように、ケース370は、筐体として、プーリ372を内部に保持した中空構造のハウジング部材371を有する。ハウジング部材371は、カテーテル310、カテーテルハブ330および管状部材350が接続される方向を長手方向として扁平状に形成されており、その先端には、管状部材350の末端部と連結する開口部371aを有している。ハウジング部材371の中空部は、開口部371aを介して管状部材350と連通する。
【0026】
なお、図2Aおよび図2Bでは、ハウジング部材371が1つの部品で構成されているように示されているが、複数の部品を組み合わせてハウジング部材371を構成してもよい。
【0027】
ハウジング部材371の互いに対向する2つの主面371b、371cには、ハウジング部材371の長手方向に延びるガイド穴371dが、互いに対向する位置に形成されている。これら2つのガイド穴371dを貫通して、プーリ372の両端から突出して設けられた軸部373が、ガイド穴371dに沿って移動自在に設けられている。これによって、プーリ372は、ハウジング部材371の中空部内でガイド穴371dに沿って移動自在とされる。
【0028】
軸部373の両端部には操作用タブ374が、ハウジング部材371の外側に配置されて取り付けられている。したがって、操作者が操作用タブ374をつかんでハウジング部材371の長手方向に沿って移動させることによって、プーリ372はガイド穴371dに沿って移動する。
【0029】
プーリ372にはワイヤ375の中間部が掛け回されている。ワイヤ375は、金属製の内針320が先端部に固定されて、管状部材350を通ってケース370の中空部内に導入された末端部にアンカー部材376が固定されている。アンカー部材376はハウジング部材371の開口部371aが設けられた側の内壁に固定されている。このようにして末端部がハウジング部材371に固定されたワイヤ375は、ハウジング部材371の内部でプーリ372を経由してUターンし、これによって、内針320がハウジング部材371の開口部371aを通る直線上に位置するように引き回される。
【0030】
プーリ372の移動量に関係するガイド穴371dの長さ、およびワイヤ375の長さ等は、ケース370が管状部材350に装着された状態で、プーリ372が最も開口部371a側に位置するときには内針320の少なくとも先端部がカテーテル310の先端から突出し、かつ、プーリ372が開口部371aから最も離れて位置するときには内針320が完全にハウジング部材371内に収納される寸法となるように設計される。
【0031】
次に、上述したカテーテル導入用具300を用いた、被験者への薬液の注入手順を説明する。
【0032】
カテーテル導入用具300は、初期状態では、操作用タブ374が、その移動範囲内におけるハウジング部材371の開口部371a側端部に位置している。したがって、内針320は、管状部材350の後端側より弾性部材を貫通し、管状部材350、カテーテルハブ330およびカテーテル310の内部を通って、先端部がカテーテル310の先端から突出している。
【0033】
カテーテル310は、この状態で内針320とともに被験者の血管内に穿刺される。カテーテル310の内部には金属製の内針320が通されているので、カテーテル310を血管内に穿刺するのは容易である。
【0034】
カテーテル310を穿刺した後、操作者はケース370の操作用タブ374をガイド穴371dに沿って後方(ハウジング部材371の開口部371aから離れる方向)へスライドさせることによって、プーリ372を後方にスライドさせる。プーリ372には、末端部がハウジング部材371に固定されたワイヤ375が掛け回されているので、プーリ372がスライドするにつれて、ワイヤ375はプーリ372の周面を経由して反転しながらケース370の中空部内に引き込まれていく。つまり、プーリ372は、ワイヤ375の一部が掛けられてケース370の中空部内に配され、その動作によって、内針320が管状部材350を通過してケース370の中空部内に収納されるようにワイヤ375をケース370の中空部内に引き込ませる引き込み機構として作用する。
【0035】
プーリ372は、ハウジング部材371に対して回転自在に支持されていてもよいし、回転不能に支持されていてもよい。プーリ372が回転自在に支持されている場合は、プーリ372の周面上でのワイヤ375の移動に伴ってプーリ372が回転するので、ワイヤ375の引き込みをよりスムーズに行うことができる。プーリ372が回転不能に支持されている場合は、ワイヤ375はプーリ372の周面上を滑りながら移動するので、プーリ372とワイヤ375との間での摩擦係数ができるだけ小さくなるようにプーリ372およびワイヤ375を構成することが好ましい。
【0036】
ワイヤ375の先端部には内針320が取り付けられているので、ワイヤ375がケース370の内部に引き込まれていくと、カテーテル310を血管内に留置したまま、内針320はカテーテル310の末端側から引き抜かれる。最終的には、内針320は、管状部材350を通過して、図3Aおよび図3Bに示すように、ケース370の中に収納される。よって、先鋭であり、かつ被験者の血液に接触した内針320を、ケース370に収納された状態で安全に廃棄することができる。
【0037】
内針320が管状部材350から引き抜かれると、管状部材350内に設けられた弾性部材は、それ自身の復元力によって管状部材350の末端部を閉鎖する。さらに、管状部材350の末端部をより確実に閉鎖するため、管状部材350の末端にキャップ360が被せられる。
【0038】
内針320がケース370内に収納されたら、ケース370を管状部材350から取り外す。一方、管状部材350の側管部355bに、チューブを介して薬液容器が接続される。薬液容器内の薬液は、薬液注入装置によって、チューブ、管状部材350、カテーテルハブ330およびカテーテル310を経由して、被験者の血管内に注入される。
【0039】
以上説明したように本形態によれば、ワイヤ375はプーリ372を周回して反転した状態でケース370内に収納される。プーリ372が内針320とともにケース370内に引き込むのは、ケース370内を自由に引き回すことのできるワイヤ375である。
【0040】
したがって、内針320が収納された状態でもハウジング部材371の長手方向での中空部の内寸を、ワイヤ375と内針320とを加えた長さよりも短くすることができる。その結果、使用済みの内針320が収納されたケース370を廃棄する際に嵩張らないコンパクトなケース370が達成される。
【0041】
特に本形態においては、ワイヤ375の末端部がハウジング部材371の開口部371a側の端部に固定されており、かつ、プーリ372は開口部371aの反対側の端部まで移動できるように構成されているので、ケース370の長手方向の寸法を、ワイヤ375と内針320とを加えた長さの半分近くまで小さくすることができる。
【0042】
上述した実施形態では、1つのプーリ372によってワイヤ375を1回だけ反転させるケース370を用いた例を示したが、ワイヤを複数回反転させる構成とすることによって、ケースをよりコンパクトにすることができる。その幾つかの例を以下に説明する。
【0043】
なお、以下に述べる例は、上述した形態とはケースの構造が異なるのみであり、ケース以外の部品、例えばカテーテル、カテーテルハブおよび管状部材等は上述した形態と同じものを用いることができ、また、被験者に対して薬液を注入する際の操作手順も上述した形態と同じである。したがって、以下の説明ではケースに関連する構成を中心に説明し、それ以外の説明は省略する。
【0044】
図4Aに、3つのプーリ472a、472b、472cを有するケース470を示す。ケース470は、上述した形態と同様、長手方向一端部に開口部471aが設けられた中空構造のハウジング部材471を筐体として有している。
【0045】
ハウジング部材471の中空部内において、ハウジング部材471の幅方向(長手方向と直交する方向)略中央の開口部471a側の端部に、プーリ472aが配されている。プーリ472aは、ハウジング部材471に対して回転自在に設けられてもよいし回転不能に設けられていてもよいが、その位置はプーリ472aの両端から突出した軸部473aによってハウジング部材471に固定されている。
【0046】
残りの2つのプーリ472b、472cは、ハウジング部材471の幅方向について、位置が固定されているプーリ472aの両側に配されている。これらプーリ472b、472cの配置に対応して、ハウジング部材471にはその長手方向に延びる2列のガイド穴471d、471eが形成されている。プーリ472b、472cの両端から突出した軸部473b、473cがガイド穴471d、471eを貫通して支持されることによって、プーリ472b、472cは、ガイド穴471d、471eにガイドされつつ、ハウジング部材471の長手方向に移動自在とされる。
【0047】
ハウジング部材471の外側には、操作用タブ474が配置されている。操作用タブ474は、ガイド穴471d、471eにガイドされる2つの軸部473b、473cに、これらを連結して取り付けられている。よって、操作用タブ474を操作することで、2つのプーリ472b、472cが一緒に移動する。
【0048】
内針420、ワイヤ475およびアンカー部材476は、上述した形態と同様に構成され、アンカー部材476はハウジング部材471の開口部471aが設けられた側の内壁に固定されている。アンカー部材471によって末端部がハウジング部材471に固定されたワイヤ475は、一方の移動するプーリ473c、位置が固定されたプーリ473aおよびもう一方の移動するプーリ473bをこの順番に経由して蛇行状に反転を繰り返し、先端部に設けられた内針420がハウジング部材471の開口部471aを通る直線上に位置するように引き回される。
【0049】
上述の構成に基づき、操作者が操作用タブ474をハウジング部材471の開口部471a側から移動させると、ワイヤ475は2つのプーリ473b、473cに引っ張られる。ワイヤ475は、末端部がハウジング部材471に固定され、かつ中間部がプーリ473aの周面上を経由しているので、ワイヤ475がプーリ473b、473cに引っ張られることによって、ワイヤ475はハウジング部材471の内部に収納されていく。最終的には、図4Bに示すように、内針420がハウジング部材471の内部に完全に収納される。
【0050】
本例によれば、ワイヤ475はプーリ472a〜472cを経由するごとに反転してハウジング部材471内で平面的に蛇行した状態で引き回され、最終的にはハウジング部材471の中空部内でほぼ2往復する。したがって、ハウジング部材471の長手方向での中空部の内寸を、ワイヤ475と内針420を加えた長さの約4分の1程度まで小さくすることができ、図2Aに示した例に比べてよりコンパクトなケース470が達成される。
【0051】
本例では3つのプーリ472a〜472cを用いたが、さらに多くの数のプーリを用いてケース470をよりコンパクトにすることもできる。この場合でも、ワイヤ475が、位置が固定された複数のプーリと移動可能な複数のプーリとを交互に経由してケース470の中空部内で蛇行して引き回されるように各プーリが配置される。
【0052】
図5Aに示すケース570は、上述した形態と同様、長手方向一端部に開口部(不図示)が設けられた中空構造のハウジング部材571を筐体として有しており、その中空部内に2つのプーリ572a、572bが配されている。
【0053】
プーリ572a、572bは、ハウジング部材571の長手方向に沿って配置されている。これらのうち開口部側のプーリ572aは、その位置がハウジング部材571に固定されている。もう一方のプーリ572bは、ハウジング部材571にその長手方向に沿って形成されたガイド穴571dを軸部573bが貫通して支持されることによって、ガイド穴571dにガイドされつつ、ハウジング部材571の長手方向に移動自在に設けられている。つまり、プーリ572bは、位置が固定されたプーリ572aからの距離が変化するように移動可能である。
【0054】
ハウジング部材571の外側において、軸部573bの両端部には操作用タブ574が取り付けられており、操作用タブ574を操作することによって、プーリ572bを移動させることができる。これらプーリ572a、572bは、ハウジング部材571に対して回転自在に設けられていてもよいし、回転不能に設けられていてもよい。
【0055】
内針520、ワイヤ575およびアンカー部材576は、上述した形態と同様に構成されている。アンカー部材576は、ハウジング部材571の開口部が設けられた側の内壁に固定されている。アンカー部材576によって末端部がハウジング部材571に固定されたワイヤ575は、2つのプーリ572a、572bに螺旋状に掛け回されて、先端部に設けられた内針520がハウジング部材571の開口部を通る直線上に位置するように引き回される。
【0056】
上述の構成に基づき、操作者が操作用タブ574をハウジング部材571の開口部側から離れる方向に移動させると、2つのプーリ572a、572bの間隔が大きくなり、ワイヤ575はプーリ572a、572b間で引っ張られる。ワイヤ575の末端部はハウジング部材571に固定されているので、ワイヤ575が引っ張られることによって、ワイヤ575はプーリ572a、572bを周回しながらハウジング部材571の内部に収納されていく。最終的には、図5Bに示すように、内針520がハウジング部材571の内部に完全に収納される。
【0057】
本例では、ワイヤ575は、移動自在に設けられたプーリ572bに二重に巻き付けられるように2つのプーリ572a、572b間に掛け回され、2つのプーリ572a、572b間をほぼ2往復している。よって、ハウジング部材571の長手方向での内寸を、ワイヤ575と内針520を加えた長さの約4分の1程度まで小さくすることができる。
【0058】
プーリ572a、572bへのワイヤ575の巻き付け回数特に制限されない。プーリ572a、572bへのワイヤ575の巻き付け回数を多くすればするほど、ハウジング部材571の長手方向の寸法を小さくすることができる。ただし、ワイヤ575の巻き付け回数が多くなるほど、プーリ572bを移動させるときに大きな力が必要となるので、ワイヤ575の巻き付け回数は、プーリ572bを移動させるのに支障がない程度とすることが望ましい。
【0059】
また、図5Aおよび図5Bに示した構成では、移動可能に設けられたプーリ572bへはワイヤ575が2回巻き付けられることになる。このプーリ572b上でワイヤ575の1巻き目と2巻き目が互いに接触すると、プーリ572bをスムーズに移動させることができなくなる。
【0060】
そこで本例では、プーリ572bの幅方向略中央部にフランジ577を設け、プーリ572bの周面を幅方向に2つの区画に分けている。ワイヤ575は、1巻き目と2巻き目がそれぞれ異なる区画を通過するように巻き付けられる。これによって、ワイヤ575がプーリ572b上で接触せず、プーリ572bの移動に支障が生じるのを防止できる。
【0061】
フランジ577の位置および数については、プーリ572bへのワイヤ575の巻き付け回数に応じて適宜変更することができる。また、位置が固定されたプーリ572aにワイヤ575が複数回巻き付けられる場合は、そのプーリ572aについても同様に構成することが好ましい。
【0062】
以上、本発明について代表的ないくつかの形態を例示したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
例えば、上述した形態では形状が不変なハウジング部材を示したが、ハウジング部材は長手方向に伸張するように構成されていてもよい。
【0064】
その一例を、図6Aおよび図6Bに示す。図6Aおよび図6Bに示す例では、ケース670の筐体を構成するハウジング部材は、3つの筒状体681、682、683を有している。これら筒状体681〜683は、外側から、筒状体683、筒状体682および筒状体681の順に入れ子状に組み合わされ、これによってケース670は望遠鏡のように長手方向に伸縮自在となっている。
【0065】
最も内側に配置された筒状体681は、長手方向両端に開口部を有しており、特に先端側の開口部681aは、カテーテル(不図示)と連結された筒状部材(不図示)と着脱自在に連結される連結部として機能する。この筒状体681の末端部には、筒状体681の外方を向いたフランジ681bが設けられている。
【0066】
中間に配置された筒状体682も、長手方向両端に開口部を有している。この筒状体682の先端部には、筒状体681のフランジ681bと係合する、筒状体682の内方を向いたフランジ682aが設けられている。筒状体682の末端部には、筒状体682の外方を向いたフランジ682bが設けられている。
【0067】
最も外側に配置された筒状体683は、先端側に開口部を有し、末端側は閉鎖されている。この筒状体683の先端部には、筒状体682の末端側のフランジ682bと係合する、筒状体683の内方を向いたフランジ683aが設けられている。
【0068】
各筒状体681〜683が上記のように構成されることで、ケース670は、図6Aに示す最も収縮した状態から、図6Bに示す、互いに関連するフランジ同士が係合する伸張状態まで伸張することができる。
【0069】
ケース670の内部には、操作用タブ(不図示)によって操作されるプーリ672がケース670の伸張方向に移動自在に設けられている。プーリ672をケース670内で移動自在に支持するために、ケース670にはガイド穴671dが形成されている。ガイド穴671dは、最も内側の筒状体681から最も外側の筒状体683まで直線上で連続して各筒状体681〜683に形成されたスロットによって構成される。
【0070】
プーリ672には、先端部に内針620が固定されたワイヤ675が掛け回されている。ワイヤ675の引き回し経路およびケース670への固定については図2Aに示した例と同様であるので、その説明は省略する。
【0071】
上記のとおり構成されたケース670を用いるとき、被験者の血管内へのカテーテルの導入は、図6Aに示すようにケース670を収縮させた状態で行う。カテーテルを被験者の血管内に導入した後、操作用タブの操作によってプーリ672をケース670の末端側へ移動させると、ケース670が引き伸ばされ、それに伴って内針620がカテーテルから引き抜かれる。最終的には、図6Bに示すように、内針620はケース670の内部に完全に収納される。
【0072】
以上のようにケース670を構成することにより、使用前はケース670を収縮させた状態とすることができる。これにより、カテーテル導入用具の使用前の保管等をコンパクトな状態で行うことができる。
【0073】
ここでは、ケース670の内部でのワイヤ675の引き回しを、図2Aに示した構成を適用してUターンさせた例を示したが、これに限らず、例えば、図4Aに示したような蛇行状に引き回す構成を適用してもよいし、図5Aに示したような螺旋状に引き回す構成を適用してもよい。また、伸張するケースとして蛇腹状のケースを用いることもできる。
【0074】
また、上述した各形態では、ワイヤが掛けられる部材がプーリである例を示したが、これはプーリに限られるものではない。プーリの代わりに、シャフト状の部材を用いることもできるし、ワイヤが複数の部材に掛け回される場合は、プーリとシャフト状の部材を組み合わせて用いることもできる。
【0075】
さらに、上述した各形態では、本発明でいう可動部材の移動方向が、内針がワイヤで引っ張られることによって移動する方向と一致している例を示した。しかし、可動部材と内針との間でのワイヤの引き回し経路中に、ワイヤが掛けられる他の固定部材を配置し、この固定部材の前後でワイヤの向きを変更すれば、可動部材の移動方向を、内針の移動方向とは無関係に任意に設定することができる。ただし、上述した各形態のように、可動部材の移動方向を、内針がワイヤで引っ張られることによって移動する方向と一致させることによって、操作者が内針をカテーテルから引き抜くときの可動部材の操作を直感的に理解しやすくなる。
【0076】
また、上述した各形態では、本発明でいう引っ張り機構として、ワイヤが掛けられた状態で移動することによってワイヤの中間部を引っ張る可動部材を有する例を示した。しかし、引っ張り機構としては、この他に、例えば、図7に示すようなボビン772を有する構成のものを用いることもできる。
【0077】
図7に示すケース770においては、ボビン772は、ケース770の筐体を構成するハウジング部材771の中空部内に配置され、ハウジング部材771に回転自在に支持されている。先端部に内針720が固定されたワイヤ775は、その末端部がボビン772に固定されている。
【0078】
上記の構成によれば、操作者がボビン772を図示矢印方向に回転させると、ワイヤ775はボビン772に巻き付けられ、これによって内針720がカテーテル(不図示)から引き抜かれてケース770の中空部内に収納される。操作者がケース770の外側からボビン772を回転させることができるようにするため、ボビン772の軸部に一体的に設けられた操作部材(不図示)がケース770の外部に配置される。操作部材としては、例えば、ハンドルやダイヤルなどを用いることができる。また、ボビン772の逆転を防止するために、ボビン772の回転方向をワイヤ775の巻き取り方向のみに規制するラチェット(不図示)を備えることが好ましい。
【0079】
本発明のカテーテル導入用具とともに使用することのできる薬液注入装置は、特に制限されない。使用可能な薬液注入装置の一例を図8に示す。この薬液注入装置は、注入装置本体110とシリンジ200を組み合わせて使用するものであり、ここでは2つのシリンジを搭載できるダブルヘッド型を例として示した。
【0080】
シリンジ200は、シリンダ部210とこれに挿入されるピストン部220とを有している。シリンダ部210は、円筒形本体211を有し、前端に導管部212が形成され、後端外周にはシリンダフランジ213が形成されている。また、ピストン部材の後端外周にはピストンフランジ221が形成されている。
【0081】
シリンジには、所定の薬液が充填されている。本発明の好ましい形態において、カテーテル導入用具は、造影剤の注入用に使用される。例えばシリンジ200Cに造影剤が充填され、シリンジ200Pには生理食塩水が充填される。シリンジ200Cは、予め造影剤が充填されている所謂プレフィルドタイプでも、空シリンジにボトルから造影剤が充填される後充填タイプでもどちらでもよい。
【0082】
注入装置本体110は、2つ半円筒形の凹部114によりシリンジのシリンダ部210を受け、押圧部117によりシリンジのピストンフランジ221を保持する。そして、シリンダ部210に対してピストン220を相対移動させて、シリンジ内の薬液を注入し、または吸引する。図示していないが、注入装置本体110内には、押圧部117を駆動する駆動部が備えられている。通常は、図示していないが、さらに注入装置本体110に有線または無線にて連結される制御ユニット、モニターが別体で存在する。
【0083】
シリンジ200Cおよび200Pの先端には、注入のためのチューブ390が取り付けられる。チューブ390は、必要により弁および/または分岐管等を介して、カテーテル導入用具の側管部355b(図1参照)に接続される。
【0084】
以上のように、カテーテル導入用具および薬液注入装置を使用して、造影剤等の薬液を被験者に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態によるカテーテル導入用具の平面図である。
【図2A】図1に示すカテーテル導入用具の、ケース内部の構造を示す平断面図である。
【図2B】図1に示すカテーテル導入用具の、ケース内部の構造を示す側断面図である。
【図3A】図1に示すカテーテル導入用具の、内針が収納された状態でのケースの平断面図である。
【図3B】図1に示すカテーテル導入用具の、内針が収納された状態でのケースの側断面図である。
【図4A】本発明のカテーテル導入用具に用いることのできるケースの他の形態の、平断面図である。
【図4B】図4Aに示すケースの、内針が収納された状態での平断面図である。
【図5A】本発明のカテーテル導入用具に用いることのできるケースのさらに他の形態の、側断面図である。
【図5B】図5Aに示すケースの、内針が収納された状態での側断面図である。
【図6A】本発明に用いることのできるハウジング部材の他の例を説明するための、伸張前の状態での平断面図である。
【図6B】図6Aに示すハウジング部材の伸張後の平断面図である。
【図7】本発明のカテーテル導入用具に用いることができるケースのさらに他の形態の、平断面図である。
【図8】本発明のカテーテル導入用具とともに使用することのできる薬液注入装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
300 カテーテル導入用具
310 カテーテル
330 カテーテルハブ
350 管状部材
370 ケース
371 ハウジング部材
372 プーリ
374 操作用タブ
375 ワイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟なカテーテルを用いて血管に薬液を注入する際に、血管にカテーテルを導入するのに用いられるカテーテル導入用具に関する。
【背景技術】
【0002】
患者への薬液の注入は、中空の金属針を患者の血管に穿刺して行われることが多い。しかし、注入時間が長時間になる場合には、血管を傷つけるのを防止するため、柔軟なカテーテル(留置針ともいう)等を血管内に留置し、これを通して薬液の注入を行うことがある。
【0003】
また、CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、超音波診断装置、アンギオ装置、MRA(MR Angio)装置等により医療画像を得る際に、診断精度を向上させる目的で、血管に造影剤を注入する。このような場合にもカテーテルが使用される。
【0004】
柔軟なカテーテルを血管内に穿刺するのに際し、カテーテルを血管内に容易に穿刺できるようにするため、カテーテル導入用具が一般に用いられている。カテーテル導入用具は、カテーテルと、カテーテル内に配された硬質の内針と、カテーテルの末端部に接続された管状部材とを有する。内針は、その先端部をカテーテルの先端から突出させて保持されており、カテーテルは内針と一緒に血管内に穿刺される。カテーテルが血管内に穿刺された後、内針がカテーテルの末端から引き抜かれ、カテーテルが血管内に留置される。これによって、管状部材の末端側からカテーテルを通じて血管内に薬液を注入することができる。
【0005】
カテーテルから抜き取った内針は、そのままでは危険であり、また血液が付着しているため二次感染のおそれもある。そこで従来、抜き取った内針を収納するケースを備えたカテーテル導入用具が知られている。
【0006】
例えば特許文献1および2には、伸縮自在に構成されたケースを管状部材の末端部に着脱可能に取り付けたカテーテル導入用具が記載されている。内針の末端部にはロッド状の連結部材が固定されている。連結部材はケースの内部を通して配されており、連結部材の末端部はケースの末端部に固定されている。
【0007】
以上の構成により、カテーテルを内針と一緒に血管内に穿刺した後、ケースを後方へ引っ張って伸張させると、内針はカテーテルから引き抜かれてケース内に収納される。その後、管状部材からケースを取り外すことによって、内針をケースに収納した安全な状態で廃棄することができる。
【特許文献1】特開2000−254225号公報
【特許文献2】特開2002−000727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載されたカテーテル導入用具では、ケースは、カテーテルを血管内に留置前する前はコンパクトであるが、留置した後は内針およびベース部材を収納するのに十分な長さまで伸張される。したがって、内針を廃棄する際にはケースが嵩張った状態とされてしまうという問題点があった。
【0009】
そこで本発明は、使用後に内針をケース内に収納できる構造としながらも、ケースがコンパクトであり廃棄時に嵩張らないカテーテル導入用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明のカテーテル導入用具は、柔軟なカテーテルを血管内に導入するのに用いられるカテーテル導入用具であって、血管内に留置されるカテーテルと、カテーテルの末端側に接続された管状部材と、先端部をカテーテルから突出させ、かつカテーテルの末端側から引き抜き可能にカテーテルの内部に挿入された内針とを有する。本発明のカテーテル導入用具はさらに、管状部材に取り外し可能に連結され、管状部材と連通しかつ内針を収納できる中空部が形成されたケースと、このケースの中空部内に配されたワイヤおよび引き込み機構とを有する。ワイヤは、先端部が内針の末端部に固定され、管状部材を通って末端部がケースの中空部内に導入されている。引き込み機構は、ワイヤの一部が掛けられており、その動作によって、内針が管状部材を通過してケースの中空部内に収納されるようにワイヤをケースの中空部内に引き込ませる。
【0011】
上記のように本発明のカテーテル導入用具では、先端部が内針に固定されたワイヤの末端部は管状部材を通ってケースの中空部内に導入されている。ケースの中空部内には、ワイヤの一部が掛けられた引き込み機構が配されており、その動作によってワイヤがケースの中空部内に引き込まれ、内針が管状部材を通過してケースの中空部内に収納される。
【0012】
本発明のカテーテル導入用具において、ワイヤは、末端部がケースの中空部内にケースに固定され、かつ、引き込み機構は、ケースの中空部内に移動自在に設けられ、移動することによってワイヤをケースの中空部内に引き込むようにワイヤの中間部が掛けられた少なくとも1つの可動部材を有することができる。この場合、必要に応じて複数の可動部材をケースの中空部内に配置したり、ワイヤが掛けられる固定部材を付加したりすることによって、ケースの中空部内でのワイヤの引き回しを適宜工夫し、これによってケースをよりコンパクトにすることが可能である。
【0013】
あるいは、本発明のカテーテル導入用具において、引き込み機構を、ワイヤの末端部が固定され、かつケースに回転自在に支持されたボビンを有して構成することもできる。この場合は、ボビンの回転によってワイヤがボビンに巻き取られ、それに伴って内針がケースの中空部内に収納される。
【0014】
さらに本発明は、上述した本発明のカテーテル導入用具と、薬液注入装置とを有する薬液注入システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワイヤが内針とともにケースの中空部内に引き込まれるように構成されることで、ケースの中空部内の寸法はワイヤの長さの影響を殆ど受けない。よって、内針がケース内に収納される構成としつつも、コンパクトなケースを達成することができ、廃棄時にも嵩張ることがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態によるカテーテル導入用具の平面図である。
【0018】
図1に示すように、カテーテル導入用具300は、カテーテル310を血管内に導入するのに用いられるものであり、カテーテル310、内針320、カテーテルハブ330、管状部材350およびケース370を有している。
【0019】
カテーテル310は、少なくとも先端が血管内に留置されるため、シリコーンゴム等の、血管に損傷を与えにくい柔軟なプラスチックまたはエラストマーで形成されている。カテーテル310の末端部は、カテーテルハブ330に固定されている。カテーテルハブ330は、カテーテル310と薬液が流通できるように中空である。
【0020】
カテーテルハブ330は、カテーテル310に内針320を挿通させた状態でカテーテル310を内針320と一緒に血管内に穿刺する際に、指で把持される部分である。従って、カテーテルハブ330は、指で把持されてもその形状を保持できる程度に硬い材料、例えば、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレン、ポリエチレン、軟質および硬質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、EPゴム等のプラスチックまたはエラストマーで形成されている。
【0021】
カテーテルハブ330の末端部には管状部材350が、カテーテルハブ330との間で薬液の流通が可能なように固定されている。管状部材350は、互いに直列に接続された可撓性チューブ351および分岐管355を有しており、可撓性チューブ351がカテーテルハブ330に固定されている。
【0022】
可撓性チューブ351は、被験者の多少の動きを許容するように、内部が閉塞しない程度に屈曲可能な柔軟な材料、例えば軟質ポリ塩化ビニル等で形成される。
【0023】
分岐管355は、先端が可撓性チューブ351と接続された直管部355aと、直管部355aの中間から分岐した側管部355bとを有している。直管部355aの内部は、その末端側でシリコーンゴム等の弾性部材(不図示)によって閉塞されている。側管部355bの末端には、管状部材350内に薬液を供給するためのチューブ(不図示)が接続される。
【0024】
ケース370は、直管部355aの末端部に取り外し可能に装着されている。ケース370の、管状部材350への着脱構造としては、スナップイン式あるいはスクリュー式など、任意の構造を採用することができる。ケース370を直管部355aから取り外した状態のときに直管部355aの末端をキャップするためのキャップ360が、管状部材350に取り付けられている。
【0025】
図2Aおよび図2Bに、ケース370の平断面図および側断面図をそれぞれ示す。図2Aおよび図2Bに示すように、ケース370は、筐体として、プーリ372を内部に保持した中空構造のハウジング部材371を有する。ハウジング部材371は、カテーテル310、カテーテルハブ330および管状部材350が接続される方向を長手方向として扁平状に形成されており、その先端には、管状部材350の末端部と連結する開口部371aを有している。ハウジング部材371の中空部は、開口部371aを介して管状部材350と連通する。
【0026】
なお、図2Aおよび図2Bでは、ハウジング部材371が1つの部品で構成されているように示されているが、複数の部品を組み合わせてハウジング部材371を構成してもよい。
【0027】
ハウジング部材371の互いに対向する2つの主面371b、371cには、ハウジング部材371の長手方向に延びるガイド穴371dが、互いに対向する位置に形成されている。これら2つのガイド穴371dを貫通して、プーリ372の両端から突出して設けられた軸部373が、ガイド穴371dに沿って移動自在に設けられている。これによって、プーリ372は、ハウジング部材371の中空部内でガイド穴371dに沿って移動自在とされる。
【0028】
軸部373の両端部には操作用タブ374が、ハウジング部材371の外側に配置されて取り付けられている。したがって、操作者が操作用タブ374をつかんでハウジング部材371の長手方向に沿って移動させることによって、プーリ372はガイド穴371dに沿って移動する。
【0029】
プーリ372にはワイヤ375の中間部が掛け回されている。ワイヤ375は、金属製の内針320が先端部に固定されて、管状部材350を通ってケース370の中空部内に導入された末端部にアンカー部材376が固定されている。アンカー部材376はハウジング部材371の開口部371aが設けられた側の内壁に固定されている。このようにして末端部がハウジング部材371に固定されたワイヤ375は、ハウジング部材371の内部でプーリ372を経由してUターンし、これによって、内針320がハウジング部材371の開口部371aを通る直線上に位置するように引き回される。
【0030】
プーリ372の移動量に関係するガイド穴371dの長さ、およびワイヤ375の長さ等は、ケース370が管状部材350に装着された状態で、プーリ372が最も開口部371a側に位置するときには内針320の少なくとも先端部がカテーテル310の先端から突出し、かつ、プーリ372が開口部371aから最も離れて位置するときには内針320が完全にハウジング部材371内に収納される寸法となるように設計される。
【0031】
次に、上述したカテーテル導入用具300を用いた、被験者への薬液の注入手順を説明する。
【0032】
カテーテル導入用具300は、初期状態では、操作用タブ374が、その移動範囲内におけるハウジング部材371の開口部371a側端部に位置している。したがって、内針320は、管状部材350の後端側より弾性部材を貫通し、管状部材350、カテーテルハブ330およびカテーテル310の内部を通って、先端部がカテーテル310の先端から突出している。
【0033】
カテーテル310は、この状態で内針320とともに被験者の血管内に穿刺される。カテーテル310の内部には金属製の内針320が通されているので、カテーテル310を血管内に穿刺するのは容易である。
【0034】
カテーテル310を穿刺した後、操作者はケース370の操作用タブ374をガイド穴371dに沿って後方(ハウジング部材371の開口部371aから離れる方向)へスライドさせることによって、プーリ372を後方にスライドさせる。プーリ372には、末端部がハウジング部材371に固定されたワイヤ375が掛け回されているので、プーリ372がスライドするにつれて、ワイヤ375はプーリ372の周面を経由して反転しながらケース370の中空部内に引き込まれていく。つまり、プーリ372は、ワイヤ375の一部が掛けられてケース370の中空部内に配され、その動作によって、内針320が管状部材350を通過してケース370の中空部内に収納されるようにワイヤ375をケース370の中空部内に引き込ませる引き込み機構として作用する。
【0035】
プーリ372は、ハウジング部材371に対して回転自在に支持されていてもよいし、回転不能に支持されていてもよい。プーリ372が回転自在に支持されている場合は、プーリ372の周面上でのワイヤ375の移動に伴ってプーリ372が回転するので、ワイヤ375の引き込みをよりスムーズに行うことができる。プーリ372が回転不能に支持されている場合は、ワイヤ375はプーリ372の周面上を滑りながら移動するので、プーリ372とワイヤ375との間での摩擦係数ができるだけ小さくなるようにプーリ372およびワイヤ375を構成することが好ましい。
【0036】
ワイヤ375の先端部には内針320が取り付けられているので、ワイヤ375がケース370の内部に引き込まれていくと、カテーテル310を血管内に留置したまま、内針320はカテーテル310の末端側から引き抜かれる。最終的には、内針320は、管状部材350を通過して、図3Aおよび図3Bに示すように、ケース370の中に収納される。よって、先鋭であり、かつ被験者の血液に接触した内針320を、ケース370に収納された状態で安全に廃棄することができる。
【0037】
内針320が管状部材350から引き抜かれると、管状部材350内に設けられた弾性部材は、それ自身の復元力によって管状部材350の末端部を閉鎖する。さらに、管状部材350の末端部をより確実に閉鎖するため、管状部材350の末端にキャップ360が被せられる。
【0038】
内針320がケース370内に収納されたら、ケース370を管状部材350から取り外す。一方、管状部材350の側管部355bに、チューブを介して薬液容器が接続される。薬液容器内の薬液は、薬液注入装置によって、チューブ、管状部材350、カテーテルハブ330およびカテーテル310を経由して、被験者の血管内に注入される。
【0039】
以上説明したように本形態によれば、ワイヤ375はプーリ372を周回して反転した状態でケース370内に収納される。プーリ372が内針320とともにケース370内に引き込むのは、ケース370内を自由に引き回すことのできるワイヤ375である。
【0040】
したがって、内針320が収納された状態でもハウジング部材371の長手方向での中空部の内寸を、ワイヤ375と内針320とを加えた長さよりも短くすることができる。その結果、使用済みの内針320が収納されたケース370を廃棄する際に嵩張らないコンパクトなケース370が達成される。
【0041】
特に本形態においては、ワイヤ375の末端部がハウジング部材371の開口部371a側の端部に固定されており、かつ、プーリ372は開口部371aの反対側の端部まで移動できるように構成されているので、ケース370の長手方向の寸法を、ワイヤ375と内針320とを加えた長さの半分近くまで小さくすることができる。
【0042】
上述した実施形態では、1つのプーリ372によってワイヤ375を1回だけ反転させるケース370を用いた例を示したが、ワイヤを複数回反転させる構成とすることによって、ケースをよりコンパクトにすることができる。その幾つかの例を以下に説明する。
【0043】
なお、以下に述べる例は、上述した形態とはケースの構造が異なるのみであり、ケース以外の部品、例えばカテーテル、カテーテルハブおよび管状部材等は上述した形態と同じものを用いることができ、また、被験者に対して薬液を注入する際の操作手順も上述した形態と同じである。したがって、以下の説明ではケースに関連する構成を中心に説明し、それ以外の説明は省略する。
【0044】
図4Aに、3つのプーリ472a、472b、472cを有するケース470を示す。ケース470は、上述した形態と同様、長手方向一端部に開口部471aが設けられた中空構造のハウジング部材471を筐体として有している。
【0045】
ハウジング部材471の中空部内において、ハウジング部材471の幅方向(長手方向と直交する方向)略中央の開口部471a側の端部に、プーリ472aが配されている。プーリ472aは、ハウジング部材471に対して回転自在に設けられてもよいし回転不能に設けられていてもよいが、その位置はプーリ472aの両端から突出した軸部473aによってハウジング部材471に固定されている。
【0046】
残りの2つのプーリ472b、472cは、ハウジング部材471の幅方向について、位置が固定されているプーリ472aの両側に配されている。これらプーリ472b、472cの配置に対応して、ハウジング部材471にはその長手方向に延びる2列のガイド穴471d、471eが形成されている。プーリ472b、472cの両端から突出した軸部473b、473cがガイド穴471d、471eを貫通して支持されることによって、プーリ472b、472cは、ガイド穴471d、471eにガイドされつつ、ハウジング部材471の長手方向に移動自在とされる。
【0047】
ハウジング部材471の外側には、操作用タブ474が配置されている。操作用タブ474は、ガイド穴471d、471eにガイドされる2つの軸部473b、473cに、これらを連結して取り付けられている。よって、操作用タブ474を操作することで、2つのプーリ472b、472cが一緒に移動する。
【0048】
内針420、ワイヤ475およびアンカー部材476は、上述した形態と同様に構成され、アンカー部材476はハウジング部材471の開口部471aが設けられた側の内壁に固定されている。アンカー部材471によって末端部がハウジング部材471に固定されたワイヤ475は、一方の移動するプーリ473c、位置が固定されたプーリ473aおよびもう一方の移動するプーリ473bをこの順番に経由して蛇行状に反転を繰り返し、先端部に設けられた内針420がハウジング部材471の開口部471aを通る直線上に位置するように引き回される。
【0049】
上述の構成に基づき、操作者が操作用タブ474をハウジング部材471の開口部471a側から移動させると、ワイヤ475は2つのプーリ473b、473cに引っ張られる。ワイヤ475は、末端部がハウジング部材471に固定され、かつ中間部がプーリ473aの周面上を経由しているので、ワイヤ475がプーリ473b、473cに引っ張られることによって、ワイヤ475はハウジング部材471の内部に収納されていく。最終的には、図4Bに示すように、内針420がハウジング部材471の内部に完全に収納される。
【0050】
本例によれば、ワイヤ475はプーリ472a〜472cを経由するごとに反転してハウジング部材471内で平面的に蛇行した状態で引き回され、最終的にはハウジング部材471の中空部内でほぼ2往復する。したがって、ハウジング部材471の長手方向での中空部の内寸を、ワイヤ475と内針420を加えた長さの約4分の1程度まで小さくすることができ、図2Aに示した例に比べてよりコンパクトなケース470が達成される。
【0051】
本例では3つのプーリ472a〜472cを用いたが、さらに多くの数のプーリを用いてケース470をよりコンパクトにすることもできる。この場合でも、ワイヤ475が、位置が固定された複数のプーリと移動可能な複数のプーリとを交互に経由してケース470の中空部内で蛇行して引き回されるように各プーリが配置される。
【0052】
図5Aに示すケース570は、上述した形態と同様、長手方向一端部に開口部(不図示)が設けられた中空構造のハウジング部材571を筐体として有しており、その中空部内に2つのプーリ572a、572bが配されている。
【0053】
プーリ572a、572bは、ハウジング部材571の長手方向に沿って配置されている。これらのうち開口部側のプーリ572aは、その位置がハウジング部材571に固定されている。もう一方のプーリ572bは、ハウジング部材571にその長手方向に沿って形成されたガイド穴571dを軸部573bが貫通して支持されることによって、ガイド穴571dにガイドされつつ、ハウジング部材571の長手方向に移動自在に設けられている。つまり、プーリ572bは、位置が固定されたプーリ572aからの距離が変化するように移動可能である。
【0054】
ハウジング部材571の外側において、軸部573bの両端部には操作用タブ574が取り付けられており、操作用タブ574を操作することによって、プーリ572bを移動させることができる。これらプーリ572a、572bは、ハウジング部材571に対して回転自在に設けられていてもよいし、回転不能に設けられていてもよい。
【0055】
内針520、ワイヤ575およびアンカー部材576は、上述した形態と同様に構成されている。アンカー部材576は、ハウジング部材571の開口部が設けられた側の内壁に固定されている。アンカー部材576によって末端部がハウジング部材571に固定されたワイヤ575は、2つのプーリ572a、572bに螺旋状に掛け回されて、先端部に設けられた内針520がハウジング部材571の開口部を通る直線上に位置するように引き回される。
【0056】
上述の構成に基づき、操作者が操作用タブ574をハウジング部材571の開口部側から離れる方向に移動させると、2つのプーリ572a、572bの間隔が大きくなり、ワイヤ575はプーリ572a、572b間で引っ張られる。ワイヤ575の末端部はハウジング部材571に固定されているので、ワイヤ575が引っ張られることによって、ワイヤ575はプーリ572a、572bを周回しながらハウジング部材571の内部に収納されていく。最終的には、図5Bに示すように、内針520がハウジング部材571の内部に完全に収納される。
【0057】
本例では、ワイヤ575は、移動自在に設けられたプーリ572bに二重に巻き付けられるように2つのプーリ572a、572b間に掛け回され、2つのプーリ572a、572b間をほぼ2往復している。よって、ハウジング部材571の長手方向での内寸を、ワイヤ575と内針520を加えた長さの約4分の1程度まで小さくすることができる。
【0058】
プーリ572a、572bへのワイヤ575の巻き付け回数特に制限されない。プーリ572a、572bへのワイヤ575の巻き付け回数を多くすればするほど、ハウジング部材571の長手方向の寸法を小さくすることができる。ただし、ワイヤ575の巻き付け回数が多くなるほど、プーリ572bを移動させるときに大きな力が必要となるので、ワイヤ575の巻き付け回数は、プーリ572bを移動させるのに支障がない程度とすることが望ましい。
【0059】
また、図5Aおよび図5Bに示した構成では、移動可能に設けられたプーリ572bへはワイヤ575が2回巻き付けられることになる。このプーリ572b上でワイヤ575の1巻き目と2巻き目が互いに接触すると、プーリ572bをスムーズに移動させることができなくなる。
【0060】
そこで本例では、プーリ572bの幅方向略中央部にフランジ577を設け、プーリ572bの周面を幅方向に2つの区画に分けている。ワイヤ575は、1巻き目と2巻き目がそれぞれ異なる区画を通過するように巻き付けられる。これによって、ワイヤ575がプーリ572b上で接触せず、プーリ572bの移動に支障が生じるのを防止できる。
【0061】
フランジ577の位置および数については、プーリ572bへのワイヤ575の巻き付け回数に応じて適宜変更することができる。また、位置が固定されたプーリ572aにワイヤ575が複数回巻き付けられる場合は、そのプーリ572aについても同様に構成することが好ましい。
【0062】
以上、本発明について代表的ないくつかの形態を例示したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
例えば、上述した形態では形状が不変なハウジング部材を示したが、ハウジング部材は長手方向に伸張するように構成されていてもよい。
【0064】
その一例を、図6Aおよび図6Bに示す。図6Aおよび図6Bに示す例では、ケース670の筐体を構成するハウジング部材は、3つの筒状体681、682、683を有している。これら筒状体681〜683は、外側から、筒状体683、筒状体682および筒状体681の順に入れ子状に組み合わされ、これによってケース670は望遠鏡のように長手方向に伸縮自在となっている。
【0065】
最も内側に配置された筒状体681は、長手方向両端に開口部を有しており、特に先端側の開口部681aは、カテーテル(不図示)と連結された筒状部材(不図示)と着脱自在に連結される連結部として機能する。この筒状体681の末端部には、筒状体681の外方を向いたフランジ681bが設けられている。
【0066】
中間に配置された筒状体682も、長手方向両端に開口部を有している。この筒状体682の先端部には、筒状体681のフランジ681bと係合する、筒状体682の内方を向いたフランジ682aが設けられている。筒状体682の末端部には、筒状体682の外方を向いたフランジ682bが設けられている。
【0067】
最も外側に配置された筒状体683は、先端側に開口部を有し、末端側は閉鎖されている。この筒状体683の先端部には、筒状体682の末端側のフランジ682bと係合する、筒状体683の内方を向いたフランジ683aが設けられている。
【0068】
各筒状体681〜683が上記のように構成されることで、ケース670は、図6Aに示す最も収縮した状態から、図6Bに示す、互いに関連するフランジ同士が係合する伸張状態まで伸張することができる。
【0069】
ケース670の内部には、操作用タブ(不図示)によって操作されるプーリ672がケース670の伸張方向に移動自在に設けられている。プーリ672をケース670内で移動自在に支持するために、ケース670にはガイド穴671dが形成されている。ガイド穴671dは、最も内側の筒状体681から最も外側の筒状体683まで直線上で連続して各筒状体681〜683に形成されたスロットによって構成される。
【0070】
プーリ672には、先端部に内針620が固定されたワイヤ675が掛け回されている。ワイヤ675の引き回し経路およびケース670への固定については図2Aに示した例と同様であるので、その説明は省略する。
【0071】
上記のとおり構成されたケース670を用いるとき、被験者の血管内へのカテーテルの導入は、図6Aに示すようにケース670を収縮させた状態で行う。カテーテルを被験者の血管内に導入した後、操作用タブの操作によってプーリ672をケース670の末端側へ移動させると、ケース670が引き伸ばされ、それに伴って内針620がカテーテルから引き抜かれる。最終的には、図6Bに示すように、内針620はケース670の内部に完全に収納される。
【0072】
以上のようにケース670を構成することにより、使用前はケース670を収縮させた状態とすることができる。これにより、カテーテル導入用具の使用前の保管等をコンパクトな状態で行うことができる。
【0073】
ここでは、ケース670の内部でのワイヤ675の引き回しを、図2Aに示した構成を適用してUターンさせた例を示したが、これに限らず、例えば、図4Aに示したような蛇行状に引き回す構成を適用してもよいし、図5Aに示したような螺旋状に引き回す構成を適用してもよい。また、伸張するケースとして蛇腹状のケースを用いることもできる。
【0074】
また、上述した各形態では、ワイヤが掛けられる部材がプーリである例を示したが、これはプーリに限られるものではない。プーリの代わりに、シャフト状の部材を用いることもできるし、ワイヤが複数の部材に掛け回される場合は、プーリとシャフト状の部材を組み合わせて用いることもできる。
【0075】
さらに、上述した各形態では、本発明でいう可動部材の移動方向が、内針がワイヤで引っ張られることによって移動する方向と一致している例を示した。しかし、可動部材と内針との間でのワイヤの引き回し経路中に、ワイヤが掛けられる他の固定部材を配置し、この固定部材の前後でワイヤの向きを変更すれば、可動部材の移動方向を、内針の移動方向とは無関係に任意に設定することができる。ただし、上述した各形態のように、可動部材の移動方向を、内針がワイヤで引っ張られることによって移動する方向と一致させることによって、操作者が内針をカテーテルから引き抜くときの可動部材の操作を直感的に理解しやすくなる。
【0076】
また、上述した各形態では、本発明でいう引っ張り機構として、ワイヤが掛けられた状態で移動することによってワイヤの中間部を引っ張る可動部材を有する例を示した。しかし、引っ張り機構としては、この他に、例えば、図7に示すようなボビン772を有する構成のものを用いることもできる。
【0077】
図7に示すケース770においては、ボビン772は、ケース770の筐体を構成するハウジング部材771の中空部内に配置され、ハウジング部材771に回転自在に支持されている。先端部に内針720が固定されたワイヤ775は、その末端部がボビン772に固定されている。
【0078】
上記の構成によれば、操作者がボビン772を図示矢印方向に回転させると、ワイヤ775はボビン772に巻き付けられ、これによって内針720がカテーテル(不図示)から引き抜かれてケース770の中空部内に収納される。操作者がケース770の外側からボビン772を回転させることができるようにするため、ボビン772の軸部に一体的に設けられた操作部材(不図示)がケース770の外部に配置される。操作部材としては、例えば、ハンドルやダイヤルなどを用いることができる。また、ボビン772の逆転を防止するために、ボビン772の回転方向をワイヤ775の巻き取り方向のみに規制するラチェット(不図示)を備えることが好ましい。
【0079】
本発明のカテーテル導入用具とともに使用することのできる薬液注入装置は、特に制限されない。使用可能な薬液注入装置の一例を図8に示す。この薬液注入装置は、注入装置本体110とシリンジ200を組み合わせて使用するものであり、ここでは2つのシリンジを搭載できるダブルヘッド型を例として示した。
【0080】
シリンジ200は、シリンダ部210とこれに挿入されるピストン部220とを有している。シリンダ部210は、円筒形本体211を有し、前端に導管部212が形成され、後端外周にはシリンダフランジ213が形成されている。また、ピストン部材の後端外周にはピストンフランジ221が形成されている。
【0081】
シリンジには、所定の薬液が充填されている。本発明の好ましい形態において、カテーテル導入用具は、造影剤の注入用に使用される。例えばシリンジ200Cに造影剤が充填され、シリンジ200Pには生理食塩水が充填される。シリンジ200Cは、予め造影剤が充填されている所謂プレフィルドタイプでも、空シリンジにボトルから造影剤が充填される後充填タイプでもどちらでもよい。
【0082】
注入装置本体110は、2つ半円筒形の凹部114によりシリンジのシリンダ部210を受け、押圧部117によりシリンジのピストンフランジ221を保持する。そして、シリンダ部210に対してピストン220を相対移動させて、シリンジ内の薬液を注入し、または吸引する。図示していないが、注入装置本体110内には、押圧部117を駆動する駆動部が備えられている。通常は、図示していないが、さらに注入装置本体110に有線または無線にて連結される制御ユニット、モニターが別体で存在する。
【0083】
シリンジ200Cおよび200Pの先端には、注入のためのチューブ390が取り付けられる。チューブ390は、必要により弁および/または分岐管等を介して、カテーテル導入用具の側管部355b(図1参照)に接続される。
【0084】
以上のように、カテーテル導入用具および薬液注入装置を使用して、造影剤等の薬液を被験者に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態によるカテーテル導入用具の平面図である。
【図2A】図1に示すカテーテル導入用具の、ケース内部の構造を示す平断面図である。
【図2B】図1に示すカテーテル導入用具の、ケース内部の構造を示す側断面図である。
【図3A】図1に示すカテーテル導入用具の、内針が収納された状態でのケースの平断面図である。
【図3B】図1に示すカテーテル導入用具の、内針が収納された状態でのケースの側断面図である。
【図4A】本発明のカテーテル導入用具に用いることのできるケースの他の形態の、平断面図である。
【図4B】図4Aに示すケースの、内針が収納された状態での平断面図である。
【図5A】本発明のカテーテル導入用具に用いることのできるケースのさらに他の形態の、側断面図である。
【図5B】図5Aに示すケースの、内針が収納された状態での側断面図である。
【図6A】本発明に用いることのできるハウジング部材の他の例を説明するための、伸張前の状態での平断面図である。
【図6B】図6Aに示すハウジング部材の伸張後の平断面図である。
【図7】本発明のカテーテル導入用具に用いることができるケースのさらに他の形態の、平断面図である。
【図8】本発明のカテーテル導入用具とともに使用することのできる薬液注入装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
300 カテーテル導入用具
310 カテーテル
330 カテーテルハブ
350 管状部材
370 ケース
371 ハウジング部材
372 プーリ
374 操作用タブ
375 ワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟なカテーテルを血管内に導入するのに用いられるカテーテル導入用具であって、
血管内に留置される前記カテーテルと、
前記カテーテルの末端側に接続された管状部材と、
先端部を前記カテーテルから突出させ、かつ前記カテーテルの末端側から引き抜き可能に前記カテーテルの内部に挿入された内針と、
前記管状部材に取り外し可能に連結され、前記管状部材と連通しかつ前記内針を収納できる中空部が形成されたケースと、
先端部が前記内針の末端部に固定され、前記管状部材を通って末端部が前記ケースの中空部内に導入されたワイヤと、
前記ワイヤの一部が掛けられて前記ケースの中空部内に配され、動作されることによって、前記内針が前記管状部材を通過して前記ケースの中空部内に収納されるように前記ワイヤを前記ケースの中空部内に引き込ませる引き込み機構と、
を有するカテーテル導入用具。
【請求項2】
前記ワイヤは、末端部が前記ケースの中空部内で前記ケースに固定され、前記引き込み機構は、前記ケースの中空部内に移動自在に設けられ、移動することによって前記ワイヤを前記ケースの中空部内に引き込むように前記ワイヤの中間部が掛けられた少なくとも1つの可動部材を有する、請求項1に記載のカテーテル導入用具。
【請求項3】
1つの前記可動部材が前記ケースの中空部内に配され、前記ワイヤは、前記可動部材を経由してUターンするように前記ケースの中空部内で引き回されている、請求項2に記載のカテーテル導入用具。
【請求項4】
前記ワイヤが掛けられて前記ケースの中空部内で位置が固定された少なくとも1つの固定部材をさらに有し、
複数の前記可動部材が、一緒に移動するように互いに連結されて配置され、
前記ワイヤは、前記可動部材と前記固定部材とを交互に経由して蛇行するように前記ケースの中空部内で引き回されている、請求項2に記載のカテーテル導入用具。
【請求項5】
前記ワイヤが掛けられて前記ケースの中空部内で位置が固定された1つの固定部材をさらに有し、
1つの前記可動部材が、前記固定部材からの距離が変化するように移動可能に設けられ、
前記ワイヤは、前記固定部材と前記可動部材との間で螺旋状に掛け回されて前記ケースの中空部内で引き回されている、請求項2に記載のカテーテル導入用具。
【請求項6】
前記可動部材の移動方向は、前記内針が前記ワイヤによって引っ張られる方向と一致している、請求項2から5のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具。
【請求項7】
前記ケースの外側に、前記可動部材を移動させるために操作される操作部材が設けられている、請求項2から6のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具。
【請求項8】
前記可動部材は前記ケースにスライド自在に支持されたプーリである、請求項2から7のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具。
【請求項9】
前記ケースは、前記可動部材の移動方向に伸張可能に構成されている、請求項2から8のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具。
【請求項10】
前記ケースは、入れ子式に組み合わされた複数の筒状体を有している、請求項9に記載のカテーテル導入用具。
【請求項11】
前記引き込み機構は、前記ワイヤの末端部が固定され、かつ前記ケースに回転自在に支持されたボビンを有する、請求項1に記載のカテーテル導入用具。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具と、薬液注入装置とを有する薬液注入システム。
【請求項1】
柔軟なカテーテルを血管内に導入するのに用いられるカテーテル導入用具であって、
血管内に留置される前記カテーテルと、
前記カテーテルの末端側に接続された管状部材と、
先端部を前記カテーテルから突出させ、かつ前記カテーテルの末端側から引き抜き可能に前記カテーテルの内部に挿入された内針と、
前記管状部材に取り外し可能に連結され、前記管状部材と連通しかつ前記内針を収納できる中空部が形成されたケースと、
先端部が前記内針の末端部に固定され、前記管状部材を通って末端部が前記ケースの中空部内に導入されたワイヤと、
前記ワイヤの一部が掛けられて前記ケースの中空部内に配され、動作されることによって、前記内針が前記管状部材を通過して前記ケースの中空部内に収納されるように前記ワイヤを前記ケースの中空部内に引き込ませる引き込み機構と、
を有するカテーテル導入用具。
【請求項2】
前記ワイヤは、末端部が前記ケースの中空部内で前記ケースに固定され、前記引き込み機構は、前記ケースの中空部内に移動自在に設けられ、移動することによって前記ワイヤを前記ケースの中空部内に引き込むように前記ワイヤの中間部が掛けられた少なくとも1つの可動部材を有する、請求項1に記載のカテーテル導入用具。
【請求項3】
1つの前記可動部材が前記ケースの中空部内に配され、前記ワイヤは、前記可動部材を経由してUターンするように前記ケースの中空部内で引き回されている、請求項2に記載のカテーテル導入用具。
【請求項4】
前記ワイヤが掛けられて前記ケースの中空部内で位置が固定された少なくとも1つの固定部材をさらに有し、
複数の前記可動部材が、一緒に移動するように互いに連結されて配置され、
前記ワイヤは、前記可動部材と前記固定部材とを交互に経由して蛇行するように前記ケースの中空部内で引き回されている、請求項2に記載のカテーテル導入用具。
【請求項5】
前記ワイヤが掛けられて前記ケースの中空部内で位置が固定された1つの固定部材をさらに有し、
1つの前記可動部材が、前記固定部材からの距離が変化するように移動可能に設けられ、
前記ワイヤは、前記固定部材と前記可動部材との間で螺旋状に掛け回されて前記ケースの中空部内で引き回されている、請求項2に記載のカテーテル導入用具。
【請求項6】
前記可動部材の移動方向は、前記内針が前記ワイヤによって引っ張られる方向と一致している、請求項2から5のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具。
【請求項7】
前記ケースの外側に、前記可動部材を移動させるために操作される操作部材が設けられている、請求項2から6のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具。
【請求項8】
前記可動部材は前記ケースにスライド自在に支持されたプーリである、請求項2から7のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具。
【請求項9】
前記ケースは、前記可動部材の移動方向に伸張可能に構成されている、請求項2から8のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具。
【請求項10】
前記ケースは、入れ子式に組み合わされた複数の筒状体を有している、請求項9に記載のカテーテル導入用具。
【請求項11】
前記引き込み機構は、前記ワイヤの末端部が固定され、かつ前記ケースに回転自在に支持されたボビンを有する、請求項1に記載のカテーテル導入用具。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のカテーテル導入用具と、薬液注入装置とを有する薬液注入システム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−148737(P2008−148737A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336812(P2006−336812)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(391039313)株式会社根本杏林堂 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(391039313)株式会社根本杏林堂 (80)
【Fターム(参考)】
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