説明

カテーテル

【課題】比較的大きな体積を有する処置対象であっても、人間を含む哺乳類にかかる負担を軽減して薬剤を投与することができる薬剤投与装置を提供すること。
【解決手段】人間を含む哺乳類の体内に薬剤を導くカテーテル2であって、薬剤を体内の所定部位に導くチューブ3と、チューブ3の先端に設けられ、チューブ3に導かれた薬剤を体内に吐出する複数の薬剤吐出口を側面に有した薬剤投与部7と、を備え、薬剤投与部7は少なくとも先端部が円弧形状、たとえば螺旋形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人間を含む哺乳類の体内に係留でき、該体内に薬剤を導くカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間を含む哺乳類の体内に薬剤を導くためにカテーテルが用いられている。この従来のカテーテルは、柔軟なチューブの先端に内部通路を有する真っ直ぐな穿刺針が取り付けられている(特許文献1参照)。このようなカテーテルでは、通常、穿刺針の先端に設けられた開口から薬剤が体内に吐出される。したがって、薬剤の吐出位置は、1点のみとなる。
【0003】
一方、カテーテルの側面に複数の薬剤吐出穴を設けた真っ直ぐな穿刺針が知られているが、この場合、穿刺針の側面の複数箇所から薬剤が吐出されるため、薬剤の吐出位置は、直線状に分布することになる。
【0004】
【特許文献1】特開平3−57457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、患部が、ある程度の体積を有する場合に、上述した従来のカテーテルを用いる場合、複数のカテーテルを用いて、患部全体に薬剤がいきわたるようにしていた。この場合、複数のカテーテルを体内に取り付ける必要があるため、薬剤投与対象の人間を含む哺乳類にかかる負担が大きいという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、比較的大きな体積を有する処置対象であっても、人間を含む哺乳類にかかる負担を軽減して薬剤を投与することができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるカテーテルは、人間を含む哺乳類の体内に薬剤を導くカテーテルであって、前記薬剤を体内の所定部位に導くチューブと、前記チューブの先端に設けられ、前記チューブに導かれた薬剤を体内に吐出する複数の薬剤吐出口を側面に有した薬剤投与部と、を備え、前記薬剤投与部は少なくとも先端部が円弧形状に形成されていることを特徴とする。ここで、円弧形状とは、細長い3次元形状の軸線が円弧または螺旋(Helix)になっていることであり、仮想的な円筒の表面上に糸を水平または斜めに巻き付けたとき、糸のとる3次元形状をいう。水平の場合が円弧に対応し、斜めが螺旋に対応する。細長い3次元形状の物体が円弧形状となっていると、前記3次元形状の物体を組織に挿入や抜出する場合に、前記仮想的な円筒の軸まわりの回転運動を前記3次元形状の物体に加えれば、簡単に挿入や抜出をすることができる。また、挿入時において、細長い3次元形状の前進先端部が形成する組織内の経路を後続部分がそのまま通るので、組織への侵襲が小さい。抜き出し時も、挿入時に形成した組織内の経路を通って抜き出せるので、組織への侵襲が小さい。
【0008】
また、この発明にかかるカテーテルは、上述した発明において、前記円弧形状は、螺旋形状であることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるカテーテルは、上述した発明において、前記薬剤投与部は、J字型に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるカテーテルは、上述した発明において、前記チューブと前記薬剤投与部とは、内部に薬剤が流通可能な通路を有するコネクタによって着脱可能に接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるカテーテルは、上述した発明において、前記薬剤投与部の内部通路に挿脱自在であり、前記薬剤投与部の内部通路に挿入されて前記薬剤投与部の形状を保持する心材をさらに有することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるカテーテルは、上述した発明において、前記心材は、前記薬剤投与部の内部通路の形状に沿って屈曲した金属ロッドであることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるカテーテルは、上述した発明において、円弧形状に形成された前記薬剤投与部は、内部通路の壁が少なくとも2層構造であり、該2層構造の内側の層は、外側の層よりも硬質の材料で形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるカテーテルは、上述した発明において、前記内側の層は、金属で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、薬剤を体内の所定部位に導くチューブの先端に設けられ、前記チューブに導かれた薬剤を体内に吐出する複数の薬剤吐出口を側面に有した薬剤投与部の少なくとも先端部が円弧形状に形成されているので、比較的大きな体積を有する処置対象であっても、人間を含む哺乳類にかかる負担を軽減して薬剤を投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明にかかるカテーテルの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルが人体に適用された状態を示す模式図である。また、図2は、図1に示したカテーテルの薬剤投与部7の詳細構成を示す斜視図である。図1では、人間を含む哺乳類の投与対象、たとえば肝臓などの体内臓器8に対して数十ml程度の抗癌剤などの薬剤を、1週間程度の長期間にわたり連続的かつ集中的に吐出して計画投与する場合を示している。なお、ここでいう薬剤には、液状およびゲル状の薬剤を含む。
【0018】
図1および図2において、薬剤投与装置1は、カテーテル2と、このカテーテル2に薬剤を供給する薬剤投与装置本体5とを有する。カテーテル2は、生体適合性を有する柔軟なポリエチレンなどで形成されたチューブ3と、コネクタ6a,6bを介してチューブ3の先端部に設けられ、側面に複数の薬剤吐出口12を有した薬剤投与部7とを有する。なお、チューブ3の途中には、体表9に取り付けられるポート10が設けられる。
【0019】
薬剤投与部7は、少なくとも先端部が円弧形状となっており、体内臓器8内に埋め込まれる。この薬剤投与部7は、円弧形状の一例として螺旋形状となっている。薬剤投与部7は、先端13が閉じており、薬剤吐出穴は設けられていない。また、薬剤投与部7は、内部通路の壁が、たとえば金属などの硬質の内層11aと、内層11aより硬質でない、たとえばポリエチレンなどによって実現される外層11bとからなる2重構造となっている。内層11aは、薬剤投与部7全体の螺旋形状を保持する作用をもち、外層11bは、生体親和性を維持する作用をもつ。
【0020】
このカテーテル2を体内に取り付ける場合、コネクタ6a,6bが切り離された状態で、薬剤投与部7を、螺旋軸に沿って回転させながら、前進させることで体内臓器8内に取り付けられる。この薬剤投与部7の体内臓器8への取付が完了した時点で、コネクタ6a,6bを連結させる。これによって、薬剤投与装置本体5から供給される薬剤は、チューブ2、コネクタ6a,6bを介して薬剤投与部7に送り込まれ、薬剤投与部7の側面に設けられた複数の薬剤吐出口12から吐出される。なお、カテーテル2を体内から取り外す場合には、コネクタ6a,6bを取り外し、薬剤投与部7を螺旋軸に沿って逆回転させながら引き抜くことによって薬剤投与部7を体内臓器8から容易に取り外すことができる。
【0021】
ここで、体内臓器8内に取り付けられた薬剤投与部7は、螺旋形状であり、この螺旋形状の側面に複数の薬剤吐出口12が設けられていることから、比較的大きな体積をもつ体内臓器8の患部全域に対して薬剤をいきわたらせることができる。しかも、薬剤投与部7は、螺旋形状であるため、体内臓器8に対する取付状態がよく、容易に体内臓器8から抜けることがなく、安定した薬剤投与を行うことができる。
【0022】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1の薬剤投与部7は、その壁が2重構造であったが、この実施の形態2の薬剤投与部7は、内層11aに替えて、図3に示すように、内部通路の形状に沿って屈曲した図4に示す金属ロッド14が心材として、コネクタ6b側から先端部にかけて該内部通路に挿入されている。薬剤投与部7は、この金属ロッド14によって薬剤投与部7全体の螺旋形状が保持される。なお、外層11bに対応する部分は、コネクタ6bに接続されている。
【0023】
この金属ロッド14が内部通路に挿入された状態で、薬剤投与部7を螺旋軸に沿って回転させながら前進させることで、薬剤投与部7は螺旋形状を維持して体内臓器8に取り付けられる。その後、金属ロッド14を内部通路から引き抜き、図5に示すように、コネクタ6a,6bを連結することによってカテーテル2が形成される。
【0024】
この実施の形態2は、実施の形態1と同様に、比較的大きな体積をもつ体内臓器8の患部全域に対して薬剤をいきわたらせることができる。
【0025】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1,2では、薬剤投与部7が螺旋形状であったが、この実施の形態3では、図6および図7に示すように、薬剤投与部7に対応する薬剤投与部15の先端部がJ字形状となっている。
【0026】
この薬剤投与部15は、コネクタ6bを有し、チューブ2の先端部に設けられたコネクタ6aを介して着脱可能となる。図7に示すように、薬剤投与部15の側面には、複数の薬剤吐出口17が設けられている。
【0027】
この薬剤投与部15は、薬剤投与部7と同様に、壁が2重構造となっている。内層16によってJ字形状が保持される。
【0028】
薬剤投与部15を、体内臓器8に取り付ける場合、薬剤投与部15の先端部を体内臓器8に引っかけるようにして取り付ける。これによって、体内臓器8内に取り付けられた薬剤投与部15は、J字形状であり、このJ字形状の側面に複数の薬剤吐出口17が設けられていることから、比較的大きな体積をもつ体内臓器8の患部全域に対して薬剤をいきわたらせることができる。しかも、薬剤投与部15は、J字形状であるため、体内臓器8に対する取付状態がよく、容易に体内臓器8から抜けることがなく、安定した薬剤投与を行うことができる。
【0029】
なお、図8に示すように、実施の形態2と同様に、薬剤投与部15の内部通路に挿脱可能な金属ロッド18を心材として薬剤投与部15の内部通路に挿入するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1にかかるカテーテルが人体に適用された状態を示す模式図である。
【図2】図1に示したカテーテルの薬剤投与部の詳細構成を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態2にかかるカテーテルの薬剤投与部の詳細構成を示す斜視図である。
【図4】図3の薬剤投与部に用いられる金属ロッドを示す図である。
【図5】図3に示した薬剤投与部とチューブとを接続したカテーテルを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3にかかるカテーテルが人体に適用された状態を示す模式図である。
【図7】図6に示したカテーテルの薬剤投与部の詳細構成を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態3の変形例である薬剤投与部の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 薬剤投与装置
2 カテーテル
3 チューブ
5 薬剤投与装置本体
6a,6b コネクタ
7,15 薬剤投与部
8 体内臓器
9 体表
10 ポート
11a,16 内層
11b 外層
12,17 薬剤吐出口
13 先端
14,18 金属ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間を含む哺乳類の体内に薬剤を導くカテーテルであって、
前記薬剤を体内の所定部位に導くチューブと、
前記チューブの先端に設けられ、前記チューブに導かれた薬剤を体内に吐出する複数の薬剤吐出口を側面に有した薬剤投与部と、
を備え、前記薬剤投与部は少なくとも先端部が円弧形状に形成されていることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記円弧形状は、螺旋形状であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記薬剤投与部は、J字型に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記チューブと前記薬剤投与部とは、内部に薬剤が流通可能な通路を有するコネクタによって着脱可能に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記薬剤投与部の内部通路に挿脱自在であり、前記薬剤投与部の内部通路に挿入されて前記薬剤投与部の形状を保持する心材をさらに有することを特徴とする請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記心材は、前記薬剤投与部の内部通路の形状に沿って屈曲した金属ロッドであることを特徴とする請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
円弧形状に形成された前記薬剤投与部は、内部通路の壁が少なくとも2層構造であり、該2層構造の内側の層は、外側の層よりも硬質の材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記内側の層は、金属で形成されていることを特徴とする請求項7に記載のカテーテル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−125051(P2010−125051A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302724(P2008−302724)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】