説明

カヌーの製作方法

【課題】安価な費用で誰でも簡単に製作することのできるカヌーの製作方法を提供する。
【解決手段】カヌーの船体2を形成する船体部材11、12を長手方向に分割してなる分割片13、14および隔壁材15等の部品を所定の大きさの木材板10に対し割り付け、木材板10に対し割り付けた分割片13等および隔壁材15等の形状通りに、連結部を残してレーザー光によりレーザーカットし、各木材板10からレーザーカットした分割片13等および隔壁材15等を切り離し、各木材板10から切り離した分割片13等を長手方向に継ぎ合わせて必要数の船体部材11、12とし、船底部分から船体部材11、12を、隔壁材15等を組み付けつつ、順次短手方向に継ぎ合わせて船体2を組み上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誰でも簡単に製作することのできるカヌーの製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カヌーの組立方法として、専用の台の上にカヌーの横断面形状に成形した複数枚の板を固定し、複数枚の板に当接しつつ、右舷、左舷の両方から外板材を船首から船尾に架け渡し、外板材どうしを張り合わせて船体形状の外板を形成し、船首および船尾を成形してカヌーの船体を完成させるようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−335483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のカヌーの組立方法は、複雑な作業工程を必要とし、熟練作業を必要とするもので、誰でも簡単にできるものではない。また、最近では通信販売等によりカヌーの製作キットが提供されているものの、誰でも簡単に作れるように構成されたものはない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、安価な費用で誰でも簡単に製作することのできるカヌーの製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1のカヌーの製作方法は、カヌーの船体を形成する船体部材を長手方向に分割してなる分割片およびその他の部品を所定の大きさの木材板に対し割り付け、木材板に対し割り付けた分割片およびその他の部品の形状通りに、連結部を残してレーザー光によりレーザーカットし、各木材板からレーザーカットした各分割片およびその他の部品を切り離し、各木材板から切り離した分割片を長手方向に継ぎ合わせて必要数の船体部材とし、船底部分から船体部材を、必要な部品を組み付けつつ、順次短手方向に継ぎ合わせて船体を組み上げるようにしたことを特徴とする。
【0007】
カヌーの船体を形成する船体部材を長手方向に分割化してその分割片とその他の部品を木材板に割り付けるに際し、例えば長さ1メートルに満たない既存の規格の合板等を利用することができ、製作費用を安価にすることができる。
【0008】
木材板に対しレーザー光によりレーザーカットするから、分割片およびその他の部品を正確にカットすることができる。その際、連結部を残してレーザーカットするから、分割片およびその他の部品が木材板から脱落することがなく、したがって、取扱いや運搬を容易にすることができる。一方、連結部の幅を例えば1mm程度として、容易に切り離しできる。
【0009】
レーザー光によりレーザーカットした分割片およびその他の部品を木材板から切り離して、切り離した分割片およびその他の部品から、だれでも簡単にかつ正確にカヌーの船体を組み立てることができる。
【0010】
本発明に係る請求項2のカヌーの製作方法は、各分割片の長手方向の継ぎ合わせ面に沿って平面視してひょうたん型の継手を等ピッチで連設し、相対する継ぎ合わせ面のひょうたん型の継手を交互に噛み合わせて各分割片を長手方向に継ぎ合わせることを特徴とする。
【0011】
ひょうたん型の継手はそのアール形状により接合面を大きく取ることができるから、分割片の長手方向の継ぎ合わせ面を強固に継ぎ合わせることができる。
【0012】
本発明に係る請求項3のカヌーの製作方法は、各分割片の短手方向の継ぎ合わせ面に沿ってあり溝を連設し、相対する継ぎ合わせ面のあり溝とありを互いに噛み合わせて各分割片を短手方向に継ぎ合わせることを特徴とする。
【0013】
あり溝とありの組合せを用いて、船体部材どうしを短手方向に継ぎ合わせると、船体部材の一つである船底部材に継ぎ合わせする側板部材を船底部材に対し起立させても、両部材が長手方向および短手方向に対し外れることがない。したがって、船体の組立を確実に行うことができる。
【0014】
本発明に係る請求項4のカヌーの製作方法は、各部品に凸状のほぞを設け、この凸状のほぞに接着剤を塗布して船体部材に設けたほぞ穴に差し込み、ほぞ穴に差し込んだほぞに対し船体の外側からくさびを打って各部品を船体部材に組付け固定し、接着剤の乾燥後、ほぞの、船体の外側から突出する部分をカットすることを特徴とする。
【0015】
ほぞをほぞ穴に差し込み、船体の外側からくさびを打つようにしたから、誰でも簡単に船体を組み立てることができ、また、船体形状を正確に形作ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係るカヌーの製作方法によると、安価な費用で、だれでも簡単にカヌーを製作することができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を図1ないし図9を参照して説明する。これらの図において、1はカヌーの一種であるシーカヤックである。
【0018】
図1に示すように、シーカヤック1は、細長い船体2の上にデッキ3を被せ、漕ぎ手が着座するコックピット4をほぼ中央に配置し、デッキ3の船首5側には前部ハッチ6を、船尾7側には後部ハッチ8をそれぞれ設けた構造とされている。
【0019】
図1に示すシーカヤック1を、本発明に係るカヌーの制作方法を用いて製作する手順を以下に説明する。
【0020】
木材板10に対し、船体2を形成する船体部材である底板部材11および側板部材12を長手方向にそれぞれ分割してなる分割片13、14および隔壁板15を含むその他の部品を割り付ける。なお、側板部材12用に割り付けた木材板10のみを図2に示す。また、木材板10に対し、デッキ3を形成するデッキ部材16を長手方向に分割してなる分割片17およびその他の部品を割り付ける。木材板10は、耐水性、耐熱性のあるラワン製合板のもの(厚さ4mm、サイズ910mm×910mm)を用いる。木材板10に対する割り付けは、コンピュータのCAD図面上に設計した船体図の図面情報に基づき、行う。
【0021】
木材板10に対し、シーカヤック1の組立てに必要な全ての分割片13、14、17および側壁板15を含むその他の部品を正確にレーザーカットする。図示しないレーザー加工機に木材板10をセットし、割り付け図に従い、0.2mmのレーザー光により、連結部を残して分割片13等の形状とおりに正確にレーザーカットする。
【0022】
各木材板10から全ての分割片13等を切り離す。切り離し後の分割片13等は番号を付けて部位ごとに分けておく。
【0023】
木材板10から切り離した分割片13等を継ぎ合わせて船体2の組み立てに必要な船体部材とする。船体部材として底板部材11と側板部材12がある。長手方向Aに並べた2列の分割片13を船首5部分から船尾7部分まで継ぎ合わせて2枚の底板部材11とし、また、長手方向Aに並べた6列の分割片14を船首5部分から船尾7部分まで継ぎ合わせて6枚の側板部材12とする。図3は、2枚の底板部材11と6枚の側板部材12を示している。
【0024】
底板部材11を構成する分割片13の長手方向Aの継ぎ合わせ面にはひょうたん型の継手18が連設され、長手方向Aに隣接する分割片13の継ぎ合わせ面のひょうたん型の継手18と交互に噛み合わせる。同じく、側板部材12を構成する分割片14の長手方向Aの継ぎ合わせ面にもひょうたん型の継手18が連設され、長手方向Aに隣接する分割片14の継ぎ合わせ面のひょうたん型の継手18と交互に噛み合わせる。各噛み合わせ面には接着剤を塗布する。
【0025】
次に船体2を組立てるべく、船底部分の2枚の底板部材11、11どうしを短手方向Bに継ぎ合わせる。各分割片13の短手方向Bの継ぎ合わせ面にはあり溝19が連設され、相手の継ぎ合わせ面のあり20と凹凸に噛み合わせると、長手方向Aおよび短手方向Bには外れないようになっている。その上面に複数枚の隔壁材15を取付固定する。各隔壁材15のほぞ21を船底部分のほぞ穴22に差し込み、図4に示すように、船体2の外側に突出するほぞ21の貫通孔21aにくさび23を打ち、これにより隔壁材15を船底部分に取付固定する。ほぞ21には接着剤を塗布しておく。隔壁材15は船首5側から船尾7側にかけて順に前部空気室、前部ハッチ6、コックピット4、後部ハッチ8、後部空気室の各隔壁位置に取付固定する(図5参照)。
【0026】
次に船底部分の2枚の底板部材11、11に対し、1段目の両側の側板部材12、12を継ぎ合わせる。底板部材11側のあり溝19に対し、側板部材12側のあり20を噛み合わせると、水平姿勢の底板部材11に対し側板部材12を起立させても、継ぎ合わせ状態が保持される。側板部材12の起立姿勢で、各隔壁材15の側面のほぞ21を側板部材12のほぞ穴22に差し込む。船体の外側に突出するほぞ21の貫通孔21aにくさび23を打ち、側板部材12を各隔壁材15の側面に固定する。同様にして、1段目の側板部材12の上側面に2段目の側板部材12の下側面を、2段目の側板部材12の上側面に3段目の側板部材12の下側面を継ぎ合わせる。このようにして2枚の底板部材11、11の両側から3枚ずつ計6枚の側板部材12を組み上げる。
【0027】
1〜3段目の側板部材12の船首5部分と船尾7部分を合わせる。タコ糸等を使い、船首5部分と船尾7部分の合わせ目を締める。船体1の船底部分には複数のシート板24aからなるシート24(図6参照)および各種補強板25(図5参照)、床板26(図7参照)を取り付ける。
【0028】
各ほぞ21の、船体2の外側から突出する部分は、接着剤の乾燥後、カットする。
【0029】
次にデッキ3を組立てる。図8に示すように、長手方向Aに並べた分割片17を継ぎ合わせて、細長形状のデッキ部材16とし、さらにデッキ部材16どうしを短手方向Bに継ぎ合わせて、デッキ3が組み立てられる。各分割片17の長手方向Aの継ぎ合わせ面にはひょうたん型の継手18が連設され、長手方向Aに隣接する分割片17の継ぎ合わせ面のひょうたん型の継手18と凹凸に噛み合う。また、各分割片17の短手方向Bの継ぎ合わせ面にはあり溝19が連設され、短手方向Bに隣接するデッキ部材16の分割片17の継ぎ合わせ面のあり20と凹凸に噛み合う。
【0030】
船体2にデッキ3を組み付ける。船体2にデッキ3を被せ、各隔壁材15の上面のほぞ21をデッキ3のほぞ穴22に通し、デッキ3の外側に突出するほぞ21の貫通孔21aにくさび23を打つ。コックピット4の開口部に縁部材27を、前部ハッチ6、後部ハッチ8の開口部にハッチ受け部材28をそれぞれ取り付ける。各ほぞ21の、船体2の外側から突出する部分は、接着剤の乾燥後、カットする。
【0031】
船体1およびデッキ3に塗装を施す。船体1およびデッキ3にハッチ用蓋29等の艤装品を取り付けて完成させる。
【0032】
前記の実施形態では、シーカヤックの製作方法について説明したが、本発明に係る製作方法は、他のカヌー(たとえば、カナディアンカヌー(オープンデッキ、クローズドデッキ)、リバーカヤックなど)についても適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るカヌーの製作方法は、誰でも簡単に製作することのできるカヌーの製作方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るカヌーの製作方法により製作されたシーカヤックの全体斜視図、
【図2】側板部材の分割片と補強部材を割り付けた木材板を示す平面図、
【図3】船体を形成する船体部材である底板部材と側板部材をそれぞれ長手方向に沿って並べた状態を示す平面図、
【図4】隔壁板のほぞを底板部材のほぞ穴に差し込んで、船体の外側からくさびをほぞの貫通孔に打った状態を示す要部斜視図、
【図5】船首から船尾にかけて複数の隔壁材を並べて、船体の組立状態を示す斜視図、
【図6】船体のコックピット内部に取り付けるシートを示す斜視図、
【図7】船体の内部に取り付ける床板を示す平面図、
【図8】デッキを形成するデッキ部材をそれぞれ長手方向に沿って並べた状態を示す平面図、
【図9】図8のデッキ部材に対し、縁部材およびハッチ受け部材を取り付ける状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 シーカヤック
2 船体
3 デッキ
4 コックピット
5 船首
6 前部ハッチ
7 船尾
8 後部ハッチ
10 木材板
11 底板部材
12 側板部材
13、14、17 分割片
15 隔壁板
16 デッキ部材
18 ひょうたん型の継手
19 あり溝
20 あり
21 ほぞ
21a 貫通孔
22 ほぞ穴
23 くさび
24 シート
24a シート板
25 補強部材
26 床板
27 縁部材
28 ハッチ受け部材
29 ハッチ用蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カヌーの船体を形成する船体部材を長手方向に分割してなる分割片およびその他の部品を所定の大きさの木材板に対し割り付け、木材板に対し割り付けた分割片およびその他の部品の形状通りに、連結部を残してレーザー光によりレーザーカットし、各木材板からレーザーカットした各分割片およびその他の部品を切り離し、各木材板から切り離した分割片を長手方向に継ぎ合わせて必要数の船体部材とし、船底部分から船体部材を、必要な部品を組み付けつつ、順次短手方向に継ぎ合わせて船体を組み上げるようにしたことを特徴とするカヌーの製作方法。
【請求項2】
各分割片の長手方向の継ぎ合わせ面に沿って平面視してひょうたん型の継手を等ピッチで連設し、相対する継ぎ合わせ面のひょうたん型の継手を交互に噛み合わせて各分割片を長手方向に継ぎ合わせることを特徴とする請求項1記載のカヌーの製作方法。
【請求項3】
各分割片の短手方向の継ぎ合わせ面に沿ってあり溝を連設し、相対する継ぎ合わせ面のあり溝とありを互いに噛み合わせて各分割片を短手方向に継ぎ合わせることを特徴とする請求項1または請求項2記載のカヌーの製作方法。
【請求項4】
各部品に凸状のほぞを設け、この凸状のほぞに接着剤を塗布して船体部材に設けたほぞ穴に差し込み、ほぞ穴に差し込んだほぞに対し船体の外側からくさびを打って各部品を船体部材に組付け固定し、接着剤の乾燥後、ほぞの、船体の外側から突出する部分をカットすることを特徴とする請求項1ないし請求項3記載のカヌーの製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−45376(P2007−45376A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234783(P2005−234783)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(302070028)有限会社アーキ・テック (1)