説明

カバン類の施錠装置

【課題】
TSAロックに採用するのに好適とされ、いずれか一つのキーで簡易に施錠・解錠することができ、カバン類の中味を容易に検査することを可能とするカバン類の施錠装置を提供する。
【解決手段】
施錠装置2は接・離可能に開閉されるバッグ1の一側5Aに配設され、カギ穴10に第1キー9を挿入し、該キー9を開閉各ポジション間で回動操作することで一側5Aと他側5Bが接合された閉状態にあるバッグ1の一側5Aと他側5Bが接合された閉状態にあるバッグ1の一側5Aと他側5B間の解錠・施錠を可能とする第1スライダ6(第1キー操作部)と、接・離可能に開閉されるバッグ1の他側5Bに配設され、カギ穴12に第2キー11を挿入し、該キー11を開閉各ポジション間で回動操作することで一側5Aと他側5B間の解錠・施錠を可能とする第2スライダ(第2キー操作部)7とを備えるものとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ異なるキーを異なるカギ穴に挿入して回動操作し、旅行用スーツケース、アタッシュケースなどのカバン類の一側と他側間の解錠・施錠を可能とする第1キー操作部と第2キー操作部を備えたカバン類の施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旅行用スーツケース、アタッシュケースなどのカバン類の施錠装置には、従来、様々なタイプのものが存在するが、多くのものは接・離可能に開閉されるカバン類の一側にカギ穴を備えたキー操作部が存在し、該カギ穴にキーを挿入し、キーを開閉の各ポジション間で回動操作することで、一側と他側が接合された閉状態にあるカバン類の解錠・施錠を行う構造のものがほとんどであった。
【0003】
すなわち、こうしたタイプの施錠装置は、カギ穴にキーを挿入し、回動操作することで、一側と他側とが接合された閉状態にあるカバン類の他側に配設される被係合体に対し、一側に備えられ、キーの開・閉各ポジション間の回動操作により係合・係合解除を可能とする係合体を配設するものとされていた。
【特許文献1】特開2004−300889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで米国等では米国の同時多発テロ以降、爆発物検査のため米国連邦航空省運輸保安局(以下単に「TSA」という)が空港で荷物検査を実施する際、基本的にカバン類を開錠状態で預けることを利用者に要請している。このことは、カバン類を施錠させた状態で預けた場合、施錠装置を切断あるいは破壊して荷物検査が行われる場合があることを意味し、最近ではこうした事態がおこらないよう予めTSAロックを装備したスーツケース、アタッシュケースなどのカバン類が販売されている。
【0005】
TSAロックは、米国等の空港において、預けられたカバン類をTSAの係官が特殊工具を使用して解錠できるタイプの施錠装置であり、予めTSA当局に届出され、TSAの認可を受けたキーを備えたタイプのものとされる。TSAロックによれば、TSA係官が預けられたカバン類を特殊工具を使って施錠装置を壊すことなく解錠し、中味を検査することができ、検査後は再び施錠できるため、解錠状態で荷物を預ける場合に比べてプライバシーを保てる他、空港内での荷物の盗難事故も未然に防止することが可能となる。
【0006】
本発明はTSAロックに採用するのに好適とされ、いずれか一つのキーで簡易に施錠・解錠することができ、カバン類の中味を容易に検査することを可能とするカバン類の施錠装置を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、接・離可能に開閉されるカバン類の一側に配設され、カギ穴にキーを挿入し、該キーを開閉の各ポジション間で回動操作することで一側と他側が接合された閉状態にあるカバン類の一側と他側間の解錠・施錠を可能とする第1キー操作部と、接・離可能に開閉されるカバン類の他側に、前記第1キー操作部に対向する状態で配設され、前記第1キー操作部のカギ穴に挿入されるキーと異なるキーをカギ穴に挿入し、該キーを開閉の各ポジション間で回動操作することで一側と他側が接合された閉状態にあるカバン類の一側と他側間の解錠・施錠を可能とする第2キー操作部と、を備えるカバン類の施錠装置であって、前記第1キー操作部には係合体が備えられ、前記第2キー操作部には被係合体が備えられ、これら係合体と被係合体は、カバン類の一側と他側とが接合される閉状態において相互に係合し、カバン類の一側と他側とが離隔される開状態において係合解除されるものであり、前記第1キー操作部には、カギ穴に対応するキーを挿入し、該キーを閉ポジションに回動操作することで相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側間の、係合体の被係合体に対する係合状態をロックし、該キーを開ポジションに回動操作することで相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側間の、係合体の被係合体に対する係合状態のロックを解除し、接合されるカバン類の一側と他側とを離隔可能とする係合体ロック手段が備えられ、前記第2キー操作部には、カギ穴に対応するキーを挿入し、該キーを閉ポジションに回動操作することで相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側間の、被係合体の係合体に対する係合状態をロックし、該キーを開ポジションに回動操作することで相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側間の、被係合体の係合体に対する係合状態のロックを解除し、接合されるカバン類の一側と他側とを離隔可能とする被係合体ロック手段が備えられるものであるカバン類の施錠装置としたものである。
【0008】
また請求項2の発明は、係合体と被係合体のそれぞれを、カバン類の一側と他側とが相互に接合され、閉まる状態において掛合され、カバン類の一側と他側とが相互に離隔され、開く状態において掛合解除される鉤状部材とする請求項1に記載のカバン類の施錠装置としたものである。
【0009】
また請求項3の発明は、係合体あるいは被係合体としての鉤状部材を、それぞれ基端部を第1キー操作部あるいは第2キー操作部に枢支され、該枢支部を中心に先端側を揺動可能とし、カバン類の一側と他側とが相互に接合される閉状態となる位置において、先端部同士が相互に衝合し、掛合可能に回動方向を逆方向として相互に付勢可能とされる揺動片とし、各揺動片の先端部には第1キー操作部あるいは第2キー操作部の少なくともいずれかが解錠状態にあり、一側と他側間が離隔されるカバン類の開状態で離隔・対抗し、第1キー操作部あるいは第2キー操作部の少なくともいずれかが解錠状態にあり、一側と他側間とが接合されるカバン類の閉状態で、離隔・対向していた先端部同士が衝合し、相互に掛合される掛合爪が備えられ、上記係合体ロック手段並びに被係合体ロック手段のそれぞれは、一側と他側間とが接合されるカバン類の閉状態で、かつ各揺動片の先端の掛合爪が相互に衝合し、掛合される状態において、対応する揺動片の揺動を規制して、係合体の被係合体に対する係合状態をロックし、あるいは被係合体の係合体に対する係合状態をロックするものである請求項2に記載のカバン類の施錠装置としたものである。
【0010】
また請求項4の発明は、係合体あるいは被係合体としての鉤状部材を、第1キー操作部および第2キー操作部において2以上備えられるものである請求項3に記載のカバン類の施錠装置としたものである。
【0011】
また請求項5の発明は、係合体ロック手段並びに被係合体ロック手段のそれぞれを、一側と他側間とが接合されるカバン類の閉状態で、かつ各揺動片の先端の掛合爪が相互に衝合し、掛合される状態において、対応するカギ穴に対応するキーを挿入し、該キーを閉ポジションに回動操作することで対応する揺動片の揺動を規制し、固定するものとし、該キーを開ポジションに回動操作することで対応する揺動片の固定を解除し、対応する揺動片の揺動を可能として、相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側とを相互に離隔可能とするロックシリンダとした請求項3または請求項4のいずれかに記載のカバン類の施錠装置としたものである。
【0012】
また請求項6の発明は、第1キー操作部のカギ穴に挿入されるキーと、第2キー操作部のカギ穴に挿入されるキーのうち、いずれか一方のキーを米国連邦航空省運輸保安局に届出され、認可されるマスターキーとし、他方のキーをユーザが使用するユーザキーとしたものである請求項1ないし5のいずれかに記載のカバン類の施錠装置としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スーツケース、アタッシュケースなどのカバン類において、第1キー操作部のカギ穴に挿入されるキーと、第2キー操作部のカギ穴に挿入されるキーのそれぞれが異なるキーとされ、いずれかのキーを対応するカギ穴に挿入し、該キーを開閉の各ポジション間で回動操作することでカバン類の一側と他側間の解錠・施錠が可能となるため、いずれか一つのキーをTSAロックに対応するマスターキーとし、TSA係官が簡易に施錠・解錠することが可能となる。
【0014】
また他のキーをユーザが使用するユーザキーとし、ユーザは一つのユーザキーのみを管理するだけで対応することができるので米国を中心とする旅行の際、荷物を預ける際に生じていた煩わしさから解放されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1はカバン類としてのトラベルバック1を示し、本発明の実施形態に係る施錠装置2を実装してなるものである。このバック1は全体略扁平の直方体形状からなり、該バック1の利用者においてはベルト3の部分を肩に掛けたり、取手4の部分を把持し、持ち運ぶことを可能にしている。
【0016】
バッグ1は周方向に沿ってファスナー5を備えており、該ファスナー5には第1キー操作部としての第1スライダ6と、第2キー操作部としての第2スライダ7が備えられる。各スライダ6、7には、引き手8が備えられ、これら引き手8を相互に離隔する方向(図3の矢印C方向)に引くことでファスナー5の係合を解除し、これにより両スライダ6、7間においてバッグ1の内部を開けることが可能となる。逆に引き手8を両スライダ6、7が近接する方向(図2の矢印B方向)にスライドさせることでファスナー5を閉塞することが可能となる。
【0017】
すなわち、バッグ1はスライダ6、7をスライド操作し、ファスナー5のスライダ6、7間の部分(図3のA部)を開けて、該ファスナー5部分の係合を解除することで、この部分から内部に対し、荷物等を収容したり、取り出す作業を行うことができる。逆にスライダ6、7を操作し、スライダ6、7間のファスナー5を閉じて該ファスナー5部分を係合することで、内部に荷物等を収容することが可能となる。
【0018】
このようにファスナー5の部分において、相互に対向する状態で配設され、第1スライダ6と第2スライダ7とによりファスナー5の一側5Aと他側5Bを接・離可能としてなるバッグ1は、このファスナー5の一側5Aに配設される第1スライダ6の部分と、ファスナー5の他側5Bに配設される第2スライダ7の部分に実施形態に係る施錠装置2を配設してなる。
【0019】
すなわち、この施錠装置2は、相互に近接方向(図2B方向)にスライドされた第1スライド6と第2スライダ7とを接合し、両スライダ6、7間のファスナー5が閉塞された状態でスライダ6、7同士の結合状態を保持するためのものであり、この状態におけるファスナー5の一側5Aと他側5B間の解錠・施錠を可能とするものである。
【0020】
ファスナー5の一側5Aに係合され、配設される第1キー操作部としての第1スライダ6には、ファスナー5の一側5Aと他側5Bとが矢印B方向に接合された閉状態にあるバッグ1の(図2参照)、一側5Aと他側5B間の解錠・施錠を行うための、第1キー9を挿入するためのカギ穴10が備えられる。すなわち第1キー9は、カギ穴10に挿入されて、開閉各ポジション間で回動操作することを可能としている。
【0021】
一方、ファスナー5の他側5Bに係合され、配設される第2キー操作部としての第2スライダ7には、ファスナー5の一側5Aと他側5Bとが矢印B方向に接合された閉状態にあるバッグ1の(図2参照)、一側5Aと他側5B間の解錠・施錠を行うための、第2キー11を挿入するためのカギ穴12が備えられる。すなわち第2キー11は、カギ穴12に挿入されて、開閉各ポジション間で回動操作することを可能にしている。
【0022】
第1キー9と第2キー11は、互いに異なるキーとされ、第1キー9は第2スライダ7側のカギ穴12に挿入して回動操作できないものとされ、また第2キー11も第1スライダ6側のカギ穴10に挿入して回動操作できないものとされる。
【0023】
ファスナー5に沿ってスライドされる各スライダ6、7は、図4に示す各部材にて構成され、第1スライダ6には底部においてファスナー5を構成する左右のファスナエレメントと噛合う第1スライダ基台13が、第2スライダ7には底部においてファスナー5を構成する左右のファスナエレメントと噛合う第2スライド基台14が備えられる。
【0024】
第1スライド基台13に対しては、間に引き手8を介装させる状態で上部より上ケース15が装着可能とされ、上ケース15の第1スライド基台13に対する装着は、上方より止めネジ16を挿通し、螺合することにより行われる。
【0025】
第2スライド基台14に対しては、間に引き手8を介装させる状態で上部より上ケース17が装着可能とされ、上ケース17の第2スライド基台14に対する装着は、下方より止めネジ18を挿通し、螺合することにより行われる。
【0026】
こうして装着される上ケース15と第1スライド基台13の間に介装されるU字状の引き手8、並びに上ケース17と第2スライド基台14の間に介装されるU字状の引き手8のそれぞれは、先端部が上ケース15、17と対応するスライド基台13、14との間に画成される溝部19に係入されることとなり、図2あるいは図3に示すように各スライダ6、7は引き手8の部分を引っ張り、ファスナー5上を相互に近接方向(図2B方向)あるいは離隔方向(図3C方向)にスライドさせることを可能にしている。
【0027】
装着される第1スライド基台13と上ケース15の間には、図4に示すように係合体としての一対の鉤状からなる揺動片20A、20Bが備えられる(図4参照)。揺動片20A、20Bは、装着される上ケース15と第1スライド基台13間に画成される空間21において、先端部を第1スライダ6より第2スライダ7側に向け、空間21に形成された閉口部21Aより突出させる状態で配設するようにしている(図3参照)。各揺動片20A、20Bは長手方向における基端側を基台13に支持される支軸22に枢支されてP1方向に揺動可能とされ(図7参照)、先端部にはそれぞれ外側に向け、鉤状に突出する掛合爪23を備え、全体で鉤状部材を構成するようにしている(図6参照)。
【0028】
係合体としての一対の揺動片20A、20Bは、支軸22の先端側において、間に圧縮スプリング24を介装させてなり、常時揺動片20A、20Bの先端の掛合爪23側が、外方に拡開し、向くよう各揺動片20A、20Bを付勢させている(図8のPA方向を参照)。
【0029】
装着される第1スライド基台13と上ケース15の間で、空間21における揺動片20A、20Bの配設部分の基端側には、全体円筒形の係合体ロック機構25が配設される(図4参照)。係合体ロック機構25は、空間21の基端側に、その底部を装着し、支持される外筒体26と、外筒体26内に内挿され、上方部分を外筒体26の上方開口26A並びに上ケース15の開口15Aからカギ穴10の部分を露出させてなる内筒体27とを備える(図4、図5参照)。
【0030】
内筒体27の下端部には、カギ穴10に挿入される第1キー9を、開閉各ポジション間で回動操作することにより、内筒体27に内挿されてθ1方向に回動する回動体(不図示)に取着されるピン28が突設される(図5参照)。さらに内筒体27の下方の空間21の部分には、上記ピン28と係合されるロックシリンダ29が配設される。ロックシリンダ29にはピン28と係合可能な長孔30が備えられ、これらピン28と長孔30との係合により、カギ穴10に挿入される第1キー9を開閉各ポジション間で回動操作することで、θ1方向に回動するピン28の動作に従動し、ロックシリンダ29の全体を空間21内においてX方向にスライドさせることを可能にしている。
【0031】
X方向にスライド可能なロックシリンダ29には、各揺動片20A、20Bの基端側にコ字状の係入凹部31が備えられる。係入凹部31は図6に示すロックシリンダ29の、第2スライダ7に対する近接側のスライド位置において、一対の揺動片20A、20Bの支軸22に対する基端側を係入し、図7に示す状態において、支軸22を中心に矢印P1方向に揺動可能とされていた各揺動片20A、20Bの揺動が規制され、係合体としての一対の揺動片20A、20Bの揺動をロックさせるようにしている。またロックシリンダ29が、図7、図8に示す第2スライダ7に対する退動側の位置にスライドされた状態では、係入凹部31による各揺動片20A、20Bの支軸22に対する基端側の係入が解除される。これにより係合体としての一対の揺動片20A、20Bは、支軸22を中心に矢印P1方向に揺動させることが可能となり、揺動片20A、20Bの揺動ロックが解除される状態となる。
【0032】
一方、装着される第2スライド基台14と上ケース17の間には、図4に示すように被係合体としての一対の鉤状からなる揺動片32A、33Bが備えられる(図4参照)。揺動片32A、32Bは、装着される上ケース17と第2スライド基台14間に画成される空間33内において、先端部を第1スライダ6側に向ける状態で配設している(図3参照)。各揺動片32A、33Bは、長手方向における基端側を基台14に支持される支軸34に枢支されて、P2方向に揺動可能とされ(図9参照)、先端部にはそれぞれ内側に向け、鉤状に突出する掛合爪35を備え、全体で鉤状部材を構成するようにしている(図6参照)。
【0033】
被係合体としての一対の揺動片32A、32Bは、支軸34の先端側において、間に引張りスプリング36を介装させてなり、常時揺動片32A、32Bの先端の掛合爪35同士が互いに内方に向くよう各揺動片20A、20Bを挟持方向に付勢させている(図8のPA方向参照)。すなわち、各揺動片32A、32Bは、先端部の掛合爪35の部分において、各揺動片20A、20Bの先端部の掛合爪23と回動方向を逆方向として相互に付勢させてなり、これにより後述のように両掛合爪23、35同士が相互に衝合した場合に両者を掛合することが可能になる。
【0034】
装着される第2スライド基台14と上ケース17の間で、空間33における揺動片32A、33Bの配設部分の基端側には、全体円筒形の被係合体ロック機構37が配設される(図4参照)。被係合体ロック機構37は、空間33の基端側に、その底部を装着し、支持される外筒体38と、外筒体38内に内挿され、上方部分を外筒体38の上方開口38A並びに上ケース17の開口17Aからカギ穴12の部分を露出させてなる内筒体39とを備える。(図4、図5参照)。
【0035】
内筒体39の下端部には、カギ穴12に挿入される第2キー11を、開閉各ポジション間で回動操作することにより、内筒体39に内挿されてθ2方向に回動する回動体(不図示)に取着されるピン40が突設される(図5参照)。さらに内筒体39の下方の空間33の部分には、上記ピン40と係合されるロックシリンダ41が配設される。ロックシリンダ41にはピン40と係合可能な長孔42が備えられ、これらピン40と長孔42との係合により、カギ穴12に挿入される第2キー11を開閉各ポジション間で回動操作することで、θ2方向に回動するピン40の動作に従動し、ロックシリンダ41の全体を空間33内においてX方向にスライドさせることを可能にしている。
【0036】
X方向にスライド可能なロックシリンダ41には、各揺動片32A、32Bの基端側に凸状の係合凸部43が備えられる。係合凸部43は図6に示すロックシリンダ41の第1スライダ6に対する近接側のスライド位置において、一対の揺動片32A、32Bの支軸34に対する基端側間に係入され、図9に示す状態において、支軸22を中心に矢印P2方向に揺動可能とされていた各揺動片32A、32Bの揺動が規制され、被係合体としての一対の揺動片32A、32Bの揺動をロックさせるようにしている。またロックシリンダ41が、図9、図10に示す第1スライダ6に対する退動側の位置にスライドされた状態では、係合凸部43による各揺動片32A、32Bの支軸34に対する基端側間への係入が解除される。これにより被係合体としての一対の揺動片32A、32B、32Bは、支軸34を中心に矢印P2の非挟持方向に揺動させることが可能となり、揺動片32A、32Bの揺動ロックが解除される状態となる。
【0037】
上記構成からなる係合体としての一対の揺動片20A、20Bと、被係合体としての一対の揺動片32A、32Bのそれぞれを備えた施錠装置2は、例えば第2スライダ7のカギ穴12に挿入される第2キー11を米国連邦航空省運輸保安局に届出され、認可されるTSA対応のマスターキーとし、一方第1スライダ6のカギ穴10に挿入される第1キー9をユーザキーとして用いることが可能とされ、この場合の施錠装置2の施錠、解錠に関する使用方法を以下説明する。
【0038】
第2キー11をTSA対応のマスターキーとした場合、第2キー11は通常使用されず、施錠状態のままなので、カギ穴12からは閉めポジションの回動操作位置の状態で第2キー11が挿入解除されることとなる。この状態において、図5の矢印θ2方向に回動可能とされるピン40は、図6ないし図8に示す位置に回動位置決めされ、該ピン40と長孔42の部分で係合するロックシリンダ41は、第1スライダ6に対する近接側のスライド位置にスライドされて位置決めされる。
【0039】
この状態においてロックシリンダ41の係合凸部43は、引張りスプリング36の作用により先端側を挟持方向に付勢させてなる一対の揺動片32A、32Bの基端側間に係入されることとなる。
【0040】
すると一対の揺動片32A、32Bの先端部において、拡開方向の揺動が規制されることとなり、結果として被係合体ロック機構37と相俟って被係合体ロック手段を構成するロックシリンダ42が、被係合体としての揺動片32A、32Bの揺動をロックすることが可能となる。
【0041】
こうした被係合体(揺動片32A、32B)のロック状態に対し、係合体としての各揺動片20A、20Bはユーザキーとしての第1キー9をカギ穴10に挿入し、開ポジションに回動操作させた場合、図7あるいは図8に示す解錠状態に設定できることとなる。すなわち、この状態において、図5の矢印θ1方向に回動可能とされるピン28は、図7および図8に示す位置に回動位置決めされ、該ピン28と長孔30の部分で係合するロックシリンダ29は、第2スライダ7に対する退動側のスライド位置にスライドされて位置決めされる。
【0042】
この状態においてロックシリンダ29の係合凹部31は、揺動片20A、20Bの支軸22に対する基端側の係入を解除し、これにより係合体としての揺動片20A、20Bは支軸22を中心に矢印P1方向(図7参照)に揺動させることが可能となり、結果として係合体ロック機構25と相俟って係合体ロック手段を構成するロックシリンダ29が、係合体としての揺動片20A、20Bのロックを解除させる状態となる。
【0043】
こうした揺動片20A、20Bのロック解除状態においては、例えば図8に示すように第2スライダ7に対して第1スライダ6を離隔させた状態から図7に示すように第1スライダ6と第2スライダ7を相互に近接させて接合させる状態にすることができる。すなわち、この状態で第1スライダ6と第2スライダ7とを接合させると第1スライダ6から第2スライダ7側に突出形成された揺動片20A、20Bの先端が、図7に示す接合状態において第2スライダ7の内部における空間33内に係入され、揺動片20A、20Bの先端においてそれぞれ外側に向けて付勢され、突出される掛合爪23が(図8の矢印PA方向参照)、第2スライダ7側の対応する揺動片32A、32Bに対して衝合することとなる。衝合の際、揺動片32A、32Bは上記のとおりロック状態で拡開方向での揺動が規制されているのに対し、揺動片20A、20Bはロック解除の状態にあり、第1スライダ6と第2スライダ7とが接合される状態において、揺動片20A、20Bの先端は支軸22を中心に内側に揺動し、この結果揺動片20A、20Bの先端における各掛合爪23は、対向する各揺動片32A、32Bの掛合爪35に対して掛合され、第1スライダ6と第2スライダ7とが相互に係合することになる。
【0044】
また第2スライダ7に対して第1スライダ6を離隔する場合には、各スライダ」6、7の引き手8を矢印C方向に引いて(図3参照)、掛合爪35に対する掛合爪23の掛合を先とは逆に解除することが可能となり、第1スライダ6と第2スライダ7とが離隔されてその間のファスナー5部分の係合が解除される。この結果、バッグ1でのファスナー5において、一側5Aと他側5B間の部分Aを開けて、両側間を離隔可能状態におくことができ(図3のA部参照)、ユーザはこの部分から内部に荷物を収容したり、取り出す作業を行うことが可能になる。
【0045】
バッグ1に対する荷物の収容または取り出しが完了し、ユーザがファスナー5を閉めて施錠装置2を施錠させてロックする場合には、先ず各引き手8を図2の矢印B方向に引き寄せ、第1スライダ6と第2スライダ7を図2に示すように接合させるようにする。この状態で各揺動片20A、20Bの先端の掛合爪23は、図7に示すように対応する揺動片32A、32Bの掛合爪35と再び掛合され、第1スライダ6と第2スライダ7とが相互に係合することとなる。
【0046】
この係合状態においてカギ穴10に挿入された第1キー9を開ポジションから閉ポジションに回動操作させるようにする。すると係合体ロック機構25の下端におけるピン28がθ1方向に回動して(図5参照)、図7に示す位置から図6に示す位置に位置決めされ、該ピン28と長孔30の部分で係合するロックシリンダ29は、第2スライダ7に対する近接側のスライド位置にスライドされて位置決めされる。
【0047】
すると図6に示すようにロックシリンダ29の係合凹部31は、圧縮スプリング24の作用により先端側が拡開方向に付勢され、基端側が窄む状態に閉じた一対の揺動片20A、20Bの基端部を係入することとなる。
【0048】
この状態で支軸22を中心として内側に揺動可能とされていた各揺動片20A、20Bの先端の揺動が規制されることとなり、結果として係合体ロック手段としてのロックシリンダ29が係合体としての揺動片20A、20Bの揺動をロックすることが可能となる。
【0049】
すなわち、この状態において、一対の揺動片20A、20Bの掛合爪23と、一対の揺動片32A、32Bの掛合爪35同士が掛合され、ロック状態にある被係合体としての第2スライダ7に対し、係合体としての第1スライダ6の係合が行われ、カギ穴
10から閉ポジションにある第1キー9を抜くことで係合体としての揺動片20A、20Aの被係合体としての揺動片32A、32Bに対する係合状態のロックが完了することとなる(図6参照)。この状態でバッグ1はファスナー5の一側5Aと他側5Bとが接合する閉状態が保持され、施錠装置2のユーザ側での施錠が実施される状態となる。ユーザはこの施錠状態で、バッグ1を航空機の機内預け入れ荷物として航空会社に預けることとすることができる。
【0050】
次にこうしてユーザ側が施錠したバッグ1について、TSAの係官がバッグ1の内部の荷物を検査する場合を説明する。先ずTSAの係官は、予め届出されたTSA対応のマスターキーとしての第2キー11をカギ穴12に挿入し、ファスナー5の一側5Aと他側5Bが閉状態にあり、第1スライダ6に対して施錠状態にある第2スライダ7側の施錠装置2の解錠を行うようにする。
【0051】
施錠装置2の第2スライダ7側の解錠は、先ずカギ12に挿入された第2キー11を閉ポジションから開ポジションに回動操作することにより行われる。図5の矢印θ2方向に回動可能とされるピン40は、第2キー11の開ポジションへの回動操作により、図6に示す位置から図9並びに図10に示す位置に回動位置決めされ、該ピン40と長孔42の部分で係合するロックシリンダ41が第1スライダ6に対する退動側のスライド位置にスライドされて位置決めされる。
【0052】
この状態においてロックシリンダ41の係合凸部43は、一対の揺動片32A、32Bの基端側間から退動してその係入を解除される。
【0053】
すると一対の揺動片32A、32Bの先端側において、その拡開方向での揺動が可能な状態となり、結果として被係合体ロック機構37と相俟って被係合体ロック手段を構成するロックシリンダ42が、被係合体としての揺動片32A、32Bの揺動ロックを解除することになる。
【0054】
こうした状態においてTSAの係官は、バッグ1の第1スライダ6と第2スライダ7の引き手8を引いて第1スライダ6と第2スライダ7とを図3の矢印C方向に示すように離隔することが可能となる。すなわち、第1スライダ6と第2スライダ7とを相対的に離隔させた場合、引張りスプリング36の作用により挟持方向に付勢させる各揺動片32A、32Bの先端は(図10の矢印PB方向参照)、拡開方向に揺動可能となるため、ロック状態にある係合体としての揺動片20A、20Bの係合爪35に対し、被係合体としての揺動片32A、32Bの係合爪32は、外方に揺動してその掛合を解除することが可能となる(図8参照)。この結果、バッグ1でのファスナー5において、一側5Aと他側5B間の部分Aを開けて、両者間を離隔可能状態におくことができ(図3のA部参照)、TSAの係官はこの部分から内部の荷物を取り出して調べたり、目視しながら検査することが可能となる。
【0055】
バッグ1内の荷物検査を完了し、TSAの係官がファスナー5を閉めて、第2スライダ7側の施錠装置2を施錠させてロックする場合には、先ず各引き手8を図2の矢印B方向に引き寄せ、第1スライダ6と第2スライダ7を図2に示すように接合させる。この状態で各揺動片32A、32Bの先端の掛合爪35は、図9に示すように対応する揺動片20A、20Bの掛合爪23と再び掛合され、第1スライダ6と第2スライダ7とが相互に係合することとなる。
【0056】
この状態においてカギ穴12に挿入された第2キー11を開ポジションから閉ポジションに回動操作させるようにする。すると被係合体ロック機構37の下端におけるピン40がθ2方向に回動して(図5参照)、図9に示す位置から図6に示す位置に位置決めされ、該ピン40と長孔42の部分で係合するロックシリンダ41は、第1スライダ6に対する近接側のスライド位置にスライドされて位置決めされる。
【0057】
こうすることでロックシリンダ29の係合凸部43が、引張りスプリング36の作用により先端側が挟持方向に付勢され、基端側が開いた状態にある一対の揺動片32A、32Bの間に係入することとなる。
【0058】
この状態で支軸34を中心として外側に揺動可能とされていた各揺動片32A、32Bの先端の揺動が規制されることとなり、結果として被係合体ロック手段としてのロックシリンダ41が被係合体としての揺動片32A、32Bの揺動をロックすることが可能となる。
【0059】
すなわち、この状態において、一対の挟持片32A、32Bの掛合爪35と、一対の揺動片20A、20Bの掛合爪23同士が再び掛合され、ロック状態にある係合体としての第1スライダ6に対し、被係合体としての第2スライダ7の係合が行われ、カギ穴12から閉ポジションにある第2キー11を抜くことで被係合体としての揺動片20A、20Bに対する係合状態のロックが完了することとなる(図6参照)。この状態でバッグ1はファスナー5の一側5Aと他側5Bとが接合する閉状態が保持されることになり、施錠装置2のTSA係官側での施錠が実施される状態となる。
【0060】
すなわち、航空会社に預けられたバッグ1は、従来のTSA対応ロックにように特殊な工具を用いることなく、TSA係官が予めTSA当局に届出されたTSAの認可を受けた第2キー11で解錠して荷物検査の実施を行うことができる。そして検査実施後は再び施錠されるので、従来のように解錠状態で荷物を預ける場合に比べ、荷物のプライバシーを保てる他、空港内での荷物の盗難事故も未然に防止することが可能となる。
【0061】
この結果、上記施錠装置2はTSAロックに採用するのに好適とされ、第1キー9あるいは第2キー11をTSA対応のマスターキーとして簡易に施錠・解錠することができる。すなわち、実施形態に係る施錠装置2によれば、特殊な工具を用いることなしに、バッグ1の中味をTSA係官が容易に検査することが可能となる。
【0062】
またバッグ1のユーザにおいては、上記第1キー9あるいは第2キー11のいずれかがTSA対応のマスターキーとされた場合において、他側のキーをユーザキー(9あるいは11のいずれかのキー)として管理することで対応できるので、米国を中心として旅行する場合に、荷物を預ける際に生じていた煩わしさから解放されることとなる。
【0063】
なお、上記実施形態においては、第1キー9をユーザキーとし、第2キー11をTSAに届出され、認可されるマスターキーとしているがこれを逆にしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては係合体を先端に鉤状の掛合爪23を備えた一対の揺動片20A、20B(鉤状部材)、被係合体を先端に鉤状の掛合爪35を備えた一対の揺動片32A、32B(鉤状部材)とし、両掛合爪23、35の掛合・掛合解除により、係合体と被係合体の係合または係合解除を行うこととしているが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、係合体と被係合体の係合または係合解除が可能であり、係合体の被係合体に対する係合状態をロックし、あるいは被係合体の係合体に対する係合状態をロックできるものであればどのような構造のものとしてもよい。
【0065】
すなわち、上記実施形態においては、係合体あるいは被係合体としての鉤状部材を、それぞれ基端部を第1スライド基台13、第2スライド基台14に枢支され、該枢支部を中心に先端部を揺動可能とし、バッグ1におけるファスナー5の一側5Aと他側5Bとが相互に接合される閉状態となる位置において、先端部同士が相互に衝合し、掛合可能に回動方向を逆方向として相互に付勢可能とされる揺動片20A、20B(係合体)と揺動片32A、32B(被係合体)としている。そして各揺動片20A、20B(係合体)、揺動片32A、32B(被係合体)の先端部には、第1スライダ6(第1キー操作部)あるいは第2スライダ7(第2キー操作部)の少なくともいずれかが解錠状態(第1キー9または第2キー11による解錠状態)にあり、一側5Aと他側5B間が離隔されるバッグ1の開状態で離隔・対向し、第1スライダ6(第1キー操作部)あるいは第2スライダ7(第2キー操作部)の少なくともいずれかが解錠状態にあり、一側5Aと他側5B間とが接合されるバッグ1の閉状態で、離隔・対向していた先端部同士が衝合し、相互に掛合される掛合爪23、35が備えられるようにしている。さらに係合体ロック手段並びに被係合体ロック手段のそれぞれは、一側5Aと他側5B間とが接合されるバッグの閉状態で、かつ各揺動片20A、20Bの掛合爪23と揺動片32A、32Bの掛合爪35が相互に衝合し、掛合される状態において、対応する揺動片20A、20Bまたは揺動片32A、32Bの揺動を規制して、揺動片20A、20B(係合体)の揺動片32A、32B(被係合体)に対する係合状態をロックし、あるいは揺動片32A、32B(被係合体)の揺動片20A、20B(係合体)に対する係合状態をロックするものとしている。
【0066】
しかしながら、本発明の係合体と被係合体は、上記実施形態のように先端部に掛合爪23を備えた揺動片20A、20Bあるいは掛合爪35を備えた揺動片32A、32Bのような構成のものに限定されるものではなく、例えば係合体または被係合体を相互にチャックするチャック機構としたり、相互に噛合うギヤ機構としてもよい。そして係合体ロック手段あるいは被係合体ロック手段のそれぞれについては、該チャック機構あるいはギヤ機構において、一方が他方、他方が一方を係合した状態を保持するロック機構とするものとすればよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、カバン類としてのバッグ1において、開閉されるファスナー5の一側5Aと他側5Bを、一側5Aに配設される第1スライダ6(第1キー操作部)と他側5Bに配設される第2スライダ7(第2キー操作部)とを相互に接合または離隔させるようにしているが、例えばかばん類をスーツケースのように観音開きされる開閉構造のものとし、開閉される一側に上記実施形態に係る第1スライダ6を配設することとし、開閉される他側に上記実施形態に係る第2スライダ7を配設する構成からなる施錠装置2にすることも可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、バッグ1の施錠装置2の用途としてTSA対応のものとし、第1キー9あるいは第2キー11のいずれかをTSAに届出され、認可されるマスターキーとしているが、施錠装置2の用途はこのようなものに限定されるものではなく、いずれか一つのキー9、11を異なる人(例えば夫婦のうちの1人、友人同士のうちの1人等)が保持することとして、バッグ1を共有して使用することとしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、係合体としての一対の揺動片20A、20Bをロックする係合体ロック手段、被係合体としての一対の揺動片32A、32Bをロックする被係合体ロック手段を、ファスナー5の一側5Aと他側5B間とがバッグの閉状態で、かつ各揺動片20Aと32Aの掛合爪23、35同士、各揺動片20Bと32Bの掛合爪23、35同士がそれぞれ相互に衝合し、掛合される状態において、対応するカギ穴10、12に対応するキー9、11を挿入し、該キー9、11を閉ポジションに回動操作することで対応する揺動片(20A、20Bまたは32A、32B)の揺動を
規制し、固定するものとし、該キー9、10を開ポジションに回動操作することで対応する揺動片(20A、20Bまたは32A、32B)の固定を解除し、対応する揺動片(20A、20Bまたは32A、32B)の揺動を可能として、相互に接合され、閉状態にあるバッグ1の一側5Aの第1スライダ6と他側5Bの第2スライダ7とを相互に離隔可能とするロックシリンダ29、41としている。
【0070】
しかしながら、係合体ロック手段並びに被係合体ロック手段は、こうした揺動片(20A、20Bまたは32A、32B)の揺動を規制する構造のもとにおいては、上記ロックシリンダ29、41のような構成のものに限定されるものではなく、例えば閉ポジションと開ポジション間を回動操作することにより、対応する揺動片(20A、20Bまたは32A、32B)の揺動を規制できるものであればどのような構成のものとしてもよい。
【0071】
また上記実施形態においては、係合体としての揺動片20A、20Bを一対備えることと、また被係合体としての揺動片32A、32Bについても一対備えることとし、相互に衝合し、掛合される先端部の掛合爪23、35同士を掛合させて係合させることとしているが、係合体あるいは被係合体はこのような構成のものに限定されるものではなく、1つの揺動片同士を相互に衝合し、掛合させる構造のものとしてもよい。さらに3つ以上の揺動片同士を相互に衝合し、掛合させる構造のものとしてもよい。また係合体と被係合体との係合についても、掛合爪のようなものに限定されるものではなく、相互にチャックするチャック機構としたり、相互に噛合うギヤ機構としてもよい。この場合において係合体ロック手段あるいは被係合体ロック手段のそれぞれについて、該チャック機構あるいはギヤ機構において、一方が他方、他方が一方を係合した状態を保持するロック機構とするものとすればよい。
【実施例1】
【0072】
図11に示す施錠装置50は、上記実施形態に係る施錠装置2の変形例に係る。この変形例において第2スライダ7(第2キー操作部)を構成する第2スライド基台14の構造は前記実施形態と同様である。第1スライダ6(第1キー操作部)を構成する第1スライド基台13の内部においては、若干構成が異なるため、以下のとおり説明する。
【0073】
この変形例では空間21内において、先端部を第1スライダ6より第2スライダ7側に向け、突出させるように一対の揺動片51A、51Bを備えるようにしている。各揺動片51A、51Bは、長手方向における基端側を基台13に支持される1つの支軸22に枢支されてP3方向に揺動可能とされ(図11参照)、2つの揺動片51A、51Bは全体が西洋ばさみのようになるよう支軸を中心にX字状に配設される。各揺動片51A、51Bの先端部にはそれぞれ外側に向け、鉤状に突出する掛合爪55が備えられ、全体で鉤状部材を構成するようにしている。
【0074】
係合体としての一対の揺動片51A、51Bは、支軸22にその中心部を支持させてなり揺動片51A、51Bの各先端部に拡開クリップ部を止着させてなる拡開スプリング54を備えるようにしている。この結果、各揺動片51A、51Bの先端の掛合爪55が外方に拡開して向くよう各揺動片51A、51Bを付勢させるようにしている。
【0075】
空間21における各揺動片51A、51Bの配設部分の基端側には、ピン28と長孔30との係合により、矢印X方向にスライド可能とされるロックシリンダ52が配設される。ロックシリンダ52には、各揺動片51A、51Bの基端側に凸状の係合凸部53が備えられる。係合凸部53は、図11に示すロックシリンダ52の、第2スライダ7に対する近接側のスライド位置において、一対の揺動片51A、51Bの支軸22に対する基端側間に係入され、先端側が拡開状態にある揺動片51A、51Bの揺動を規制し、係合体としての一対の揺動片51A、51Bの揺動をロックさせるようにしている。またロックシリンダ52がピン28の回動により、第2スライダ7に対する退動方向にスライドされた状態で、揺動片51A、51Bの支軸22に対する基端側間に係入されていた係合凸部53が揺動片51A、51B間から退動され、これにより係合体としての一対の揺動片51A、51Bは支軸22を中心に矢印P3方向に揺動させることが可能となり、揺動片51A、51Bの揺動ロックが解除されることとなる。
【0076】
上記構成からなる施錠装置50は、上記実施形態に係る施錠装置2と同様に第1キー9とカギ穴10に挿入して回動操作し、揺動片51A、51Bをロックあるいはロック解除することが可能となり、前記実施形態と同様に例えばTSA対応の施錠装置として利用することが可能となる。その他の構成および作用については、前記実施形態
と同様につき、説明を省略する。
【実施例2】
【0077】
図12に示す施錠装置60は、上記実施形態に係る施錠装置2の第2の変形例に係る。上記実施形態においては第1スライダ6側において一対の揺動片20A、20B、第2スライダ7側において一対の揺動片32A、32Bを備えることとしているが、本変形例では第1スライダ6側において1つの揺動片61を、第2スライダ7側において1つの揺動片62を備えるようにしている。
【0078】
すなわち、この変形例では、第1スライダ6(第1キー操作部)を構成する第1スライド基台13内の空間21内において、先端部を第1スライダ6より第2スライド7側に向け、突出させるように揺動片61を備えるようにしている。揺動片61は長手方向における基端側を基台13に支持される1つの支軸22に枢支されてP4方向に揺動可能とされ(図12参照)、揺動片61の先端部には掛合爪63が備えられ、全体で鉤状部材を構成するようにしている。
【0079】
係合体としての揺動片61は、先端の掛合爪63が支軸22を中心に内側に向くよう回動方向を規制し、付勢させるための引張りスプリング64が先端側と基台13との間に懸架される。
【0080】
空間21における揺動片61の配設部分の基端側には、ピン28と長孔30との係合により、矢印X方向にスライド可能とされるロックシリンダ67が配設される。
ロックシリンダ67には揺動片61の基端側を係入可能とする係入切欠部68が備えられる。係入切欠部68は、図12の実線に示すロックシリンダ67の第2スライダ7に対する近接側のスライド位置にスライドさせた状態(第1キー9を閉ポジションに回動させた状態)において、支軸22に対する基端側を係入させ、該切欠部68と基台13との間で揺動片61の基端部を保持することが可能となる。これにより支軸22を中心に矢印P4方向に揺動可能とされる揺動片61の揺動を規制し、係合体としての揺動片61をロックさせることが可能となる。これに対しロックシリンダ67を図12の2点鎖線に示す第2スライダ7に対する退動側のスライド位置にスライドさせた状態(第1キー9を開ポジションに回動操作させた状態)においては、揺動片61の基端部から係入切欠部68が退動し、揺動片61が支軸22を中心に矢印P4方向に揺動可能な状態となる。すなわち、この状態において係合体としての揺動片61のロックは解除されることとなる。
【0081】
他方、第2スライダ7側に配設される揺動片62は、第2スライダ7(第2キー操作部)を構成する第2スライド基台14内の空間33内において、先端部を第1スライダ6側に向けて備えるようにしている。揺動片62は長手方向における基端側を基台14に支持される1つの支軸34に枢支されてP5方向に揺動可能とされ(図12参照)、揺動片62の先端部には掛合爪65が備えられ、全体で鉤状部材を構成するようにしている。
【0082】
被係合体としての揺動片62は、先端の掛合爪65が支軸34を中心に内側に向くように回動方向を規制し、付勢させるための引張りスプリング66が先端側と基台14との間に懸架される。
【0083】
空間33における揺動片62の配設部分の基端側には、ピン40と長孔42との係合により、矢印X方向にスライド可能とされるロックシリンダ69が配設される。
ロックシリンダ69には揺動片62の基端側を係入可能とする係入切欠部70が備えられる。係入切欠部70は、図12の実線に示すロックシリンダ69の第1スライダ6に対する退動側にスライドさせた状態(第2キー11を閉ポジションに回動操作させた状態)において、支軸34に対する基端側の係入を解除し、これにより揺動片62は支軸34を中心に矢印P5方向に揺動可能な状態となる。すなわち、この状態において被係合体としての揺動片62のロックは解除されることとなる。これに対し、ロックシリンダ69を図12の2点鎖線に示す第1スライダ6に対する近接側のスライド位置にスライドさせた状態(第2キー11を閉ポジションに回動操作させた状態)においては、係入切欠部70内に揺動片69の支軸34に対する基端側を係入する状態となり、該切欠部70と基台14との間で揺動片69の基端部が保持されることとなる。これにより支軸34を中心に矢印P5方向に揺動可能とされる揺動片62の揺動が規制され、被係合体としての揺動片62の揺動をロックさせることが可能となる。
【0084】
このようにして構成される施錠装置60によれば、上記実施形態に係る施錠装置2と同様に第1キー9をカギ穴10に挿入して回動操作し、揺動片67をロックあるいはロック解除することが可能となり、また第2キー11をカギ穴12に挿入して回動操作し、揺動片69をロックあるいはロック解除することが可能となる。この結果、相互に付勢される回動方向を逆方向として先端部同士の掛合爪63、65を衝合し、掛合あるいは掛合解除される係合体としての揺動片67、被係合体としての揺動片69の係合・係合解除を第1キー9あるいは第2キー11のいずれかの回動操作により行うことが可能となり、前記実施形態と同様に例えばTSA対応の施錠装置として利用することが可能となる。その他の構成および作用については、前記実施形態と同様につき、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施形態に係る施錠装置を実装したカバン類の全体を示す斜視図である。
【図2】施錠装置の拡大斜視図である。
【図3】第1キー操作部と第2キー操作部の離隔状態を示す斜視図である。
【図4】施錠装置の分解状態を示す斜視図である。
【図5】第1キー操作部並びに第2キー操作部内に配設されるロックシリンダを示す施錠装置の分解斜視図である。
【図6】第1キー操作部並びに第2キー操作部のロック状態を示す図2のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】第1キー操作部のロック解除状態を示す図6と同様の断面図である。
【図8】第1キー操作部の解錠状態を示し、カバン類の開状態を示す図6と同様の断面図である。
【図9】第2キー操作部のロック解除状態を示す図6と同様の断面図である。
【図10】第2キー操作部の解錠状態を示し、カバン類の開状態を示す図6と同様の断面図である。
【図11】図6の第1変形例を示す施錠装置の図9と同様の断面図である。
【図12】図6の第2変形例を示す施錠装置の図9と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 トラベルバッグ(かばん類)
2,50,60 施錠装置
3 ベルト
4 取手
5 ファスナー
5A 一側
5B 他側
6 第1スライダ(第1キー操作部)
7 第2スライダ(第2キー操作部)
8 引き手
9 第1キー
10,12 カギ穴
11 第2キー
13 第1スライド基台
14 第2スライド基台
15,17 上ケース
16,18 止めネジ
19 溝部
20A,20B,32A,
32B,51A,51B,61,62 揺動片(係合体,被係合体,鉤状部材)
21,33 空間
22,33 支軸
23,35,55,63,65 掛合爪
24 圧縮スプリング
36,64,66 引張りスプリング
25 係合体ロック機構(係合体ロック手段)
37 被係合体ロック機構(被係合体ロック手段)
26,38 外筒体
27,39 内筒体
28,40 ピン
29,41,52,67,69 ロックシリンダ
30,42 長孔
31 係入凹部
43,53 係合凸部
54 拡開スプリング
68,70 係入切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接・離可能に開閉されるカバン類の一側に配設され、カギ穴にキーを挿入し、該キーを開閉の各ポジション間で回動操作することで一側と他側が接合された閉状態にあるカバン類の一側と他側間の解錠・施錠を可能とする第1キー操作部と、接・離可能に開閉されるカバン類の他側に、前記第1キー操作部に対向する状態で配設され、前記第1キー操作部のカギ穴に挿入されるキーと異なるキーをカギ穴に挿入し、該キーを開閉の各ポジション間で回動操作することで一側と他側が接合された閉状態にあるカバン類の一側と他側間の解錠・施錠を可能とする第2キー操作部と、を備えるカバン類の施錠装置であって、前記第1キー操作部には係合体が備えられ、前記第2キー操作部には被係合体が備えられ、これら係合体と被係合体は、カバン類の一側と他側とが接合される閉状態において相互に係合し、カバン類の一側と他側とが離隔される開状態において係合解除されるものであり、前記第1キー操作部には、カギ穴に対応するキーを挿入し、該キーを閉ポジションに回動操作することで相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側間の、係合体の被係合体に対する係合状態をロックし、該キーを開ポジションに回動操作することで相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側間の、係合体の被係合体に対する係合状態のロックを解除し、接合されるカバン類の一側と他側とを離隔可能とする係合体ロック手段が備えられ、前記第2キー操作部には、カギ穴に対応するキーを挿入し、該キーを閉ポジションに回動操作することで相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側間の、被係合体の係合体に対する係合状態をロックし、該キーを開ポジションに回動操作することで相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側間の、被係合体の係合体に対する係合状態のロックを解除し、接合されるカバン類の一側と他側とを離隔可能とする被係合体ロック手段が備えられるものであるカバン類の施錠装置。
【請求項2】
係合体と被係合体のそれぞれを、カバン類の一側と他側とが相互に接合され、閉まる状態において掛合され、カバン類の一側と他側とが相互に離隔され、開く状態において掛合解除される鉤状部材とする請求項1に記載のカバン類の施錠装置。
【請求項3】
係合体あるいは被係合体としての鉤状部材を、それぞれ基端部を第1キー操作部あるいは第2キー操作部に枢支され、該枢支部を中心に先端側を揺動可能とし、カバン類の一側と他側とが相互に接合される閉状態となる位置において、先端部同士が相互に衝合し、掛合可能に回動方向を逆方向として相互に付勢可能とされる揺動片とし、各揺動片の先端部には第1キー操作部あるいは第2キー操作部の少なくともいずれかが解錠状態にあり、一側と他側間が離隔されるカバン類の閉状態で離隔・対抗し、第1キー操作部あるいは第2キー操作部の少なくともいずれかが解錠状態にあり、一側と他側間とが接合されるカバン類の開状態で、離隔・対向していた先端部同士が衝合し、相互に掛合される掛合爪が備えられ、上記係合体ロック手段並びに被係合体ロック手段のそれぞれは、一側と他側間とが接合されるカバン類の閉状態で、かつ各揺動片の先端の掛合爪が相互に衝合し、掛合される状態において、対応する揺動片の揺動を規制して、係合体の被係合体に対する係合状態をロックし、あるいは被係合体の係合体に対する係合状態をロックするものである請求項2に記載のカバン類の施錠装置。
【請求項4】
係合体あるいは被係合体としての鉤状部材を、第1キー操作部および第2キー操作部において2以上備えられるものである請求項3に記載のカバン類の施錠装置。
【請求項5】
係合体ロック手段並びに被係合体ロック手段のそれぞれを、一側と他側間とが接合されるカバン類の閉状態で、かつ各揺動片の先端の掛合爪が相互に衝合し、掛合される状態において、対応するカギ穴に対応するキーを挿入し、該キーを閉ポジションに回動操作することで対応する揺動片の揺動を規制し、固定するものとし、該キーを開ポジションに回動操作することで対応する揺動片の固定を解除し、対応する揺動片の揺動を可能として、相互に接合され、閉状態にあるカバン類の一側と他側とを相互に離隔可能とするロックシリンダとした請求項3または請求項4のいずれかに記載のカバン類の施錠装置。
【請求項6】
第1キー操作部のカギ穴に挿入されるキーと、第2キー操作部のカギ穴に挿入されるキーのうち、いずれか一方のキーを米国連邦航空省運輸保安局に届出され、認可されるマスターキーとし、他方のキーをユーザが使用するユーザキーとしたものである請求項1ないし5のいずれかに記載のカバン類の施錠装置。

【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−142548(P2009−142548A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324801(P2007−324801)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(390022482)株式会社エムアンドケイ・ヨコヤ (8)
【Fターム(参考)】