カフ圧制御装置及びカフ圧制御方法
【課題】カフのカフ圧の不足等に起因した人工呼吸器関連肺炎の予防及び未使用のカフの外周面にできているしわ等に起因したVAPの予防を図ること。
【解決手段】制御部111は、カフ圧検出部113による検出結果に基き、カフ10のカフ圧が所定の範囲になるようにカフ圧調整部120を制御し、カフ圧が所定時間内に所定の範囲にならないときには異常を報知する。また、カフの装着直後に、制御部111は、カフ圧検出部113によりカフの内圧を検出し、検出したカフの内圧が、適正圧力よりも小さい第1の圧力以下であるときには、カフの内圧の最大圧力が適正圧力を大きく超える第2の圧力になるようにカフ圧調整部120を設定する。
【解決手段】制御部111は、カフ圧検出部113による検出結果に基き、カフ10のカフ圧が所定の範囲になるようにカフ圧調整部120を制御し、カフ圧が所定時間内に所定の範囲にならないときには異常を報知する。また、カフの装着直後に、制御部111は、カフ圧検出部113によりカフの内圧を検出し、検出したカフの内圧が、適正圧力よりも小さい第1の圧力以下であるときには、カフの内圧の最大圧力が適正圧力を大きく超える第2の圧力になるようにカフ圧調整部120を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器に接続される挿管チューブに設けられたカフの内圧を制御するカフ圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器に関する医療分野においては、挿管チューブを口腔や鼻腔から患者の気管内に挿入して気道を確保し、挿管チューブを介して酸素を肺に送り込む気管挿管や、喉の皮膚及び気管を切開し、この切開された部分からカニューレを患者の気管内に挿入して気道を確保し、カニューレを介して酸素を肺に送り込む気管切開が知られている。
【0003】
挿管チューブやカニューレと気管の内壁との間に隙間が生じると、気管内に胃液や唾液等の分泌物が流入するおそれがある。このような分泌物の流入を防止するため、挿管チューブやカニューレの外壁にはカフが取り付けられる。
このカフは、バルーンカフとも呼ばれ、カフ内に気体が供給されて膨張する。カフが膨張することにより、カフの外周面が気管の内壁に接触して気管を閉塞する。
このようにして、挿管チューブやカニューレにより気道を確保しつつ、カフにより気管への分泌物の流入を防止することができる(例えば、特許文献1の段落[0002]参照。)。
【0004】
このカフの内圧(以下「カフ圧」と記述する。)が所定範囲外の値となった場合、次のような問題が生じることが知られている。
例えば、カフ圧が気管の粘膜組織の静脈圧である約3.33kPa(25mmHg)より大きくなると、膨張したカフが気管の粘膜組織の血管を圧迫することとなる。血管が圧迫されると虚血状態となり、その結果、潰瘍、壊死、出血、肉芽形成、さらには抜管後の気管狭窄、気管軟化症等が引き起こされるおそれがある。
一方、カフ圧が約2.67kPa(20mmHg)未満となるとカフの膨張が不十分となり、カフの外周面と気管の内壁との間に隙間が生じて、気管内に唾液や胃液等の分泌物が流入することがある。
そのため、従来から、カフ圧を所定範囲内にて維持するためのカフ圧の管理は、所定時間毎に看護士等がカフ圧計を用いてカフ圧を計測し、計測結果を参照しながら手動でカフ圧を調整することにより行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−505715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人工呼吸器に関する医療分野において、人工呼吸器関連肺炎(VAP;Ventilator-associated pneumonia。以下「VAP」と記述する。)が知られている。VAPとは、呼吸器感染症以外の理由で人工呼吸器を装着後48時間以上経過して発症する肺炎をいう。現在、人工呼吸器患者の死亡者のうち約3〜4割の患者の直接の死因がVAPであるといわれている。従って、VAPは極めて深刻な問題であるとともに、VAPの予防策に関心が高まっている。
本発明者らの知見によれば、VAPが上記のカフ圧に起因することを見い出した。すなわち、看護士等が上記のようにカフ圧を管理していたのだが、本発明者らは、このようなカフ圧の手動による管理やカフ自体の経時変化などによって結果的にはカフ圧が不足し、VAPを発症させていることを見い出した。
本発明者らの更なる考察によれば、未使用のカフの外周面にはしわができていることが多く、例えばこのカフを患者の気管に装着した後にカフ圧を20〜25mmHgの範囲内に加圧しても、カフの外周面にはしわが残る場合がある。残ったしわによって、カフの外周面と気管の内壁との間に隙間が生じて、気管内に唾液や胃液等の分泌物が流入することがある。このような原因によってVAPを発症させている可能性もある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、カフ圧の不足等に起因したVAPの予防を図ることができるカフ圧制御装置及びカフ圧制御方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、未使用のカフの外周面にできているしわ等に起因したVAPの予防を図ることができるカフ圧制御装置及びカフ圧制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの考察は以下のとおりである。
これまでカフ圧を所定値にて維持するために、所定時間毎の巡回時等に看護士等がカフ圧計を用いてカフ圧を計測し、計測結果を参照しながら手動でカフ圧を調整していた。しかし、このような手動でのカフ圧調整では、精密な微調整が困難であり、カフ圧計の操作時に誤ってカフ圧が所定値未満まで低下してしまったとき等にカフが収縮して気管内に分泌物が流入し、VAPの原因となっていた。
【0009】
さらに、カフは、加圧による膨張と減圧による収縮が繰り返し行われることで次第に薄肉化するとともにたるみ、容積が増加する。このようにカフ自体が経時変化することにより、カフ圧が低下して気管内への分泌物の流入が起こり易くなり、VAPの原因となっていた。また、カフの薄肉化により、薄肉化した部分に穴が開いたり、カフが破裂してしまうことがある。このような場合、カフ圧が急速に低下して気管内への分泌物の流入が極めて起こり易くなり、VAPの原因となっていた。
【0010】
加えて、これまで看護士等が所定時間毎の巡回時等にカフ圧を調整していたため、巡回時に一度カフ圧が所定値に調整されれば、その後暫くはカフ圧の調整が行われない。このため、カフが経時変化した場合等には、その経時変化が微小なものであっても、次回のカフ圧調整時までの間にカフ圧が徐々に低下して結果的にカフ圧が不足し、VAPを発症させてしまう。また、カフが経時変化してカフの容積が大きくなったような場合、カフを所定値まで加圧するには通常より時間がかかることとなる。カフ圧を手動で調整する場合、看護士等はそのような加圧時間の変化を認識し難いことがある。そのためカフ圧の微小な経時変化に気付くのが遅れて結果的にVAPを発症させてしまう。
【0011】
本発明者らは、以上のような理由によりカフ圧の手動による管理には限界があり、カフ自体の経時変化などによって結果的にはカフ圧が不足してVAPを発症させていることを見い出した。
【0012】
本発明者らは、これらの原因を究明し、その結果、以下の構成のカフ圧制御装置をカフに採用することとした。
【0013】
すなわち、本発明の一形態に係るカフ圧制御装置は、カフ圧調整部と、カフ圧検出部と、制御部とを有する。
カフ圧調整部は、気管挿管に用いられるカフを加圧する。
カフ圧検出部は、上記カフの内圧を検出する。
制御部は、上記カフ圧検出部による検出結果に基き、上記カフの内圧が所定の範囲になるように上記カフ圧調整部を制御し、上記カフの内圧が第1の時間内に上記所定の範囲にならないときには異常を報知する。
また、前記カフの装着直後に、前記制御部は、前記カフ圧検出部によりカフの内圧を検出し、前記検出したカフの内圧が前記所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるように前記カフ圧調整部を制御する。
【0014】
本発明の一形態に係るカフ圧制御方法は、気管挿管に用いられるカフの内圧を制御するカフ圧制御方法である。
前記カフの装着直後に、前記カフの内圧が検出される。
検出したカフの内圧が所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるようにカフが加圧される。
その後、上記カフの内圧が検出される。
検出結果に基き、上記カフの内圧が所定の範囲になるようにカフが加圧される。
上記カフの内圧が第1の時間内に上記所定の範囲にならないときには異常が報知される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】気管挿管の様子を示す模式図であって、挿管チューブが鼻腔から気管内に挿入された様子を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係るカフ圧制御装置を示す概略図である。
【図3】カフ圧設定動作及びカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
【図4A】カフ圧設定動作を説明するためのグラフである(その1)。
【図4B】カフ圧設定動作を説明するためのグラフである(その2)。
【図5】経過時間と送気回数との関係を概略的に示すグラフである。
【図6】安静モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
【図7】通常モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
【図8】活動モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
【図9】カフ異常検出動作を示すフローチャートである。
【図10】カフ圧設定動作及びカフ異常検査動作を示すフローチャートである。
【図11】気管挿管の様子を示す模式図であって、挿管チューブが口腔から気管内に挿入された様子を示す。
【図12】気管切開の様子を示す模式図であって、カニューレが喉から気管内に挿入された様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一形態に係るカフ圧制御装置は、カフ圧調整部と、カフ圧検出部と、制御部とを有する。
カフ圧調整部は、気管挿管に用いられるカフを加圧する。
カフ圧検出部は、上記カフの内圧を検出する。
制御部は、上記カフ圧検出部による検出結果に基き、上記カフの内圧が所定の範囲になるように上記カフ圧調整部を制御し、上記カフの内圧が第1の時間内に上記所定の範囲にならないときには異常を報知する。
また、前記カフの装着直後に、前記制御部は、前記カフ圧検出部によりカフの内圧を検出し、前記検出したカフの内圧が前記所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるように前記カフ圧調整部を制御する。
【0017】
これにより、カフの内圧の変化に対応して所望のカフの内圧を維持することができるとともに、カフの内圧の調整について異常がある場合には異常を報知することができる。
また、カフの装着直後に、検出したカフの内圧が所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、まだそのカフはこれまでに加圧されたことのない未使用のカフとみなし、そのときにはカフの内圧が所定の範囲を超える第2の圧力としているので、未使用のカフの外周面にできているしわ等がこの圧力によって伸びてしわ等に起因したVAPの予防を図ることができる。既に使用済みで再使用のカフについてはカフにある程度の気体が残っていることから、検出されるカフの内圧は第1の圧力を超える。このようなカフについて第2の圧力まで加圧しないので、カフに対する圧力によるストレスの影響をより小さくすることができる。
【0018】
上記制御部は、装着直後の所定の操作により上記カフ圧調整部によって上記カフへの加圧を開始し、開始してから一定時間後に上記カフ圧検出部により検出される上記カフの内圧によって上記カフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、推定した容積に応じて少なくとも上記第1の時間を設定してもよい。
【0019】
これにより、個々のカフ及び上記カフに通じる気体供給チューブに応じたカフ圧の調整を行うことができる。
【0020】
上記カフ圧検出部により検出された上記カフの内圧の経時変化を記憶する記憶部をさらに有してもよい。
上記制御部は、上記記憶部により記憶された上記カフの内圧の経時変化に異常があるときには異常を報知してもよい。
【0021】
これにより、カフの経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0022】
上記記憶部は、上記カフの使用時間を記憶してもよい。
上記制御部は、上記記憶部により記憶された上記カフの使用時間に基き上記カフの交換時期を推定し、推定した交換時期を報知してもよい。
【0023】
これにより、カフの交換時期を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0024】
上記制御部は、上記カフの内圧を一定量変化させるのに必要な気体の容積によって上記カフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、推定した容積の経時変化に異常があるときには異常を報知してもよい。
【0025】
これにより、カフのカフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0026】
本発明の一形態に係るカフ圧制御方法は、気管挿管に用いられるカフの内圧を制御するカフ圧制御方法である。
前記カフの装着直後に、前記カフの内圧が検出される。
検出したカフの内圧が所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるようにカフが加圧される。
その後、上記カフの内圧が検出される。
検出結果に基き、上記カフの内圧が所定の範囲になるようにカフが加圧される。
上記カフの内圧が第1の時間内に上記所定の範囲にならないときには異常が報知される。
【0027】
これにより、カフの内圧の変化に対応して所望のカフの内圧を維持することができるとともに、カフの内圧の調整について異常がある場合には異常を報知することができる。
また、未使用のカフの外周面にできているしわ等に起因したVAPの予防を図ることができる。
【0028】
装着直後の所定の操作により上記カフへの加圧が開始されてもよい。
開始してから一定時間後に上記カフ圧検出部により検出される上記カフの内圧によって上記カフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積が推定されてもよい。
推定した容積に応じて少なくとも上記第1の時間が設定されてもよい。
【0029】
これにより、個々のカフ及び上記カフに通じる気体供給チューブに応じたカフ圧の調整を行うことができる。
【0030】
上記検出された上記カフの内圧の経時変化が記憶されてもよい。
上記記憶された上記カフの内圧の経時変化に異常があるときには異常が報知されてもよい。
【0031】
これにより、カフの経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0032】
上記カフの使用時間が記憶されてもよい。
上記記憶された上記カフの使用時間に基き上記カフの交換時期が推定されてもよい。
推定した交換時期が報知されてもよい。
【0033】
これにより、カフの交換時期を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0034】
上記カフの内圧を一定量変化させるのに必要な気体の容積によって上記カフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積が推定されてもよい。
推定した容積の経時変化に異常があるときには異常が報知されてもよい。
【0035】
これにより、カフのカフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0036】
[本発明の実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0037】
図1は、気管挿管の様子を示す模式図であって、挿管チューブが鼻腔から気管内に挿入された様子を示す。図11は、気管挿管の様子を示す模式図であって、挿管チューブが口腔から気管内に挿入された様子を示す。図12は、気管切開の様子を示す模式図であって、カニューレが喉から気管内に挿入された様子を示す。
人工呼吸器の使用時に気管挿管や気管切開で気道を確保する場合、鼻腔7又は口腔5から挿入された挿管チューブ1や喉8から挿入されたカニューレ9と気管2の内壁6との間に隙間が生じると、気管2内に食道3からの胃液や唾液等の分泌物が流入するおそれがある。とりわけ、気管挿管においては喉頭蓋4が開かれた状態となるため食道3からの胃液が気管2に流入し易い。このような分泌物の流入を防止するため、挿管チューブ1やカニューレ9の外周の所定の位置にはカフ10が取り付けられる。このカフ10は、気体供給チューブ125を介して体外より加圧されることにより膨張する。カフ10が膨張することにより、カフ10の外周面が気管2の内壁6に接触して気管2を閉塞する。このようにして、挿管チューブ1やカニューレ9により気道を確保しつつ、カフ10により気管2への分泌物の流入を防止することができる。
【0038】
[カフ圧制御装置の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係るカフ圧制御装置100を示す概略図である。
上記カフ10の内圧(以下「カフ圧」と記述する。)は、カフ圧制御装置100により制御される。カフ圧制御装置100は、制御系110と、カフ圧調整部120とを有する。
【0039】
制御系110は、制御部111と、記憶部112と、カフ圧検出部113と、入力操作部114と、表示部115と、報知部116と、時間計測部117とを有する。
【0040】
制御部111は、カフ圧制御装置100内の各部を制御し、またカフ圧検出部113より取得した検出結果や時間計測部117より取得した時間情報等に基いて、カフ圧調整部120の加圧ポンプ126及び排気バルブ122を制御する。
【0041】
時間計測部117は、時間を計測する。制御部111は、時間計測部117を参照して経過時間等の時間情報を取得する。
【0042】
カフ圧検出部113は、気体供給チューブ125に通じるカフ圧検出チューブ118を介して接続される。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得するとカフ10のカフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。
【0043】
記憶部112は、不揮発性メモリであり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、その他の固体メモリに設定される。制御部111は、カフ圧検出部113より取得したカフ圧に関する情報と時間計測部117より取得した時間情報とを互いに関連付けて、カフ圧の経時変化として記憶部112に記録する。記憶部112には、また、カフ10等の製品種類に応じた複数の加圧パラメータに関する情報や、複数の動作モードに関する情報等が記録される。
【0044】
入力操作部114は、操作ボタンを有し、利用者からの入力操作を受け付け、制御部111に出力する。
【0045】
表示部115は、例えば液晶表示器等を用いた表示デバイスである。表示部115は、制御部111から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、例えばカフ圧に関する情報や時間情報等を表示画面に表示する。
【0046】
報知部116は、例えばスピーカであり、制御部111より報知命令を取得すると、例えばカフ10の異常等を利用者に報知するアラーム音を出力する。なお、報知部116としてのスピーカは、カフ圧制御装置100に一体に設けられてもよいし、外部装置として例えば病院内の別の場所に設けられてもよい。あるいは、報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、病院内の別の場所に設けられたナースコール装置や看護士等が携帯するPHS(Personal Handy-phone System)等に対して出力を行う出力インタフェースであってもよい。なお、本実施形態では、以下、報知部116をアラーム音を出力するスピーカとして説明する。
【0047】
カフ圧調整部120は、加圧ポンプ126と、一方弁121と、排気バルブ122と、安全弁127と、流量調整バルブ123と、リザーバタンク124とを有する。これら加圧ポンプ126、一方弁121、安全弁127、排気バルブ122、流量調整バルブ123及びリザーバタンク124は、この順に直列的に連通されている。
【0048】
加圧ポンプ126は、制御部111により駆動されて気体供給チューブ125を介してカフ10を加圧する電動式ポンプである。加圧ポンプ126は、制御部111の制御のもとで、カフ10への加圧の大きさや速度が設定される。
【0049】
一方弁121は、加圧ポンプ126の下流に接続され、カフ10側から加圧ポンプ126への気体の逆流を防止する。
【0050】
安全弁127は、ばねの付勢力等を利用した機械式の弁であり、一方弁121の下流に接続される。安全弁127は、カフ10及び気体供給チューブ125の内圧が閾値以上になると、ばねの付勢力により図示しない蓋を押し上げるようにして開放し、気体を排出する。
ここで、「閾値」とは、未使用のカフの外周面にできているしわ等が伸びる程度の圧力であり、約13.33kPa(100mmHg)程度であることが好ましい。なお、未使用のカフの外周面にできているしわ等を伸ばす機能を持たないときには、その閾値は、例えば、適正圧力(約2.67kPa(20mmHg)〜約3.33kPa(25mmHg))より約1.33kPa(10mmHg)〜約2.00kPa(15mmHg)程度高い値である。より具体的には、閾値は、例えば約5.33kPa(40mmHg)程度とすればよい。
【0051】
排気バルブ122は、安全弁127の下流に接続される。排気バルブ122は、制御部111により制御されて開放及び閉塞する。排気バルブ122は、開放状態において、気体供給チューブ125を介してカフ10内の気体を大気に解放してカフ10を減圧する。排気バルブ122は、閉塞状態において、カフ10内の大気への解放を停止してカフ10の減圧を停止する。
なお、排気バルブ122の排気側に減圧制御弁(図示せず。)を設けても構わない。この減圧制御弁は、例えばカフの適正圧力の下限である約2.67kPa(20mmHg)よりも低い圧力に減圧しないように制御する弁である。減圧制御弁としては、例えばばね等の弾性力によって機械的に圧力を制御する機構となっていることが好ましい。このような減圧制御弁を設けることで、例えば制御系の故障によりカフ圧調整部が機能しなくなったときでも、カフの内圧をカフの機能を維持できる程度に最低限維持することができるようになる。
【0052】
流量調整バルブ123は、排気バルブ122の下流に接続され、気体供給チューブ125を介してカフ10に流れる気体の量を調整する。流量調整バルブ123は、利用者により操作される構成としてもよいし、制御部111により制御される構成としてもよい。
【0053】
リザーバタンク124は、流量調整バルブ123の下流に接続され、カフ10のカフ圧変動を吸収する。
【0054】
[カフ圧制御装置の動作]
次に、以上のように構成されたカフ圧制御装置100の動作を説明する。動作の説明は以下の順で行うものとする。
(1)カフ圧設定動作及びカフ圧維持動作
(2)安静モード時のカフ圧維持動作
(3)通常モード時のカフ圧維持動作
(4)活動モード時のカフ圧維持動作
(5)カフ異常検出動作
(6)カフ圧設定動作及びカフ異常検査動作
【0055】
(1)〜(5)の動作は、カフ圧制御装置100が患者の気管に装着されたカフ10に常時接続されて使用されるような場合を主として想定している。(1)〜(5)の動作は、例えば、特定の患者に装着されたカフ10のカフ圧を長期間に亘って制御するような場合に有用である。
【0056】
一方、(6)の動作は、利用者によりカフ圧制御装置100が患者の気管に装着されたカフ10に一時的に接続されて使用されるような場合を主として想定している。(6)の動作は、例えば、看護士等の利用者が1つのカフ圧制御装置100を所持し、この1つのカフ圧制御装置100を複数の患者の気管に装着された複数のカフ10に順次取り付けてそれぞれのカフ10のカフ圧を制御するような場合に有用である。
【0057】
[(1)カフ圧設定動作及びカフ圧維持動作]
図3は、カフ圧設定動作及びカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
本フローチャートには、カフ圧設定動作(ステップS101〜ステップS114)と、カフ圧維持動作(ステップS115〜ステップS125)とが含まれる。
【0058】
まず、カフ圧設定動作(ステップS101〜ステップS114)について説明する。
このカフ圧設定動作に先立ち、まず当該カフ10が未使用のカフか、既に使用したことがあるカフかの判別が行われる(ステップ100、100a、100b)。未使用のカフには、ほとんど気体が入っていないのに対して、既に使用したことがあるカフには気体が残っている。本発明では、この点に着目し、この判別をカフ10の内圧を検出することで行っている。
図4A及び図4Bは、カフ圧設定動作を説明するためのグラフである。
【0059】
まず、利用者によりカフ10が患者の気管に装着される。利用者は、カフ10を装着すると、入力操作部114を用いてカフ圧を設定する。入力操作部114は利用者により設定されたカフ圧の設定値を制御部へ出力する。
具体的には、カフの装着直後に、制御部111は、カフ圧検出部113によりカフの内圧を検出し(ステップ100)、検出したカフの内圧が、適正圧力(約2.67kPa(20mmHg)〜約3.33kPa(25mmHg))よりも小さい第1の圧力である約1.33kPa(10mmHg)以下であるときには、未使用のカフ、すなわちカフの表面にしわが生じている可能性があると判別し、カフの内圧の最大圧力が適正圧力(約2.67kPa(20mmHg)〜約3.33kPa(25mmHg))を大きく超える第2の圧力である約13.33kPa(100mmHg)になるように、すなわち最大圧力を初期加圧値とするようにカフ圧調整部120を設定する(ステップ100a)。一方、ステップ100で検出したカフの内圧が、第1の圧力である約1.33kPa(10mmHg)を超えるときには、既に使用したことがあるカフ、すなわちしわが生じる可能性がないと判別し、例えばカフの内圧の最大圧力が適正圧力の範囲内の最大値である約3.33kPa(25mmHg)とするようにカフ圧調整部120を設定する(ステップ100b)。
制御部111は、設定されたカフ圧に基き、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を急速に加圧する(ステップS101)。また、制御部111は、時間計測部117を参照して時間情報を取得し、取得した時間情報に基き加圧開始からの経過時間を計測する。ここで、図4Aはステップ100において既に使用済みカフと判別され、ステップ100bによって設定された場合の加圧パターンであり、図4Bはステップ100において未使用カフと判別され、ステップ100aによって設定された場合の加圧パターンである。
【0060】
制御部111は、計測した経過時間に基き、加圧開始より一定時間が経過したと判定すると、カフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得すると、カフ圧を検出し(ステップS102)、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。なお、「一定時間」とは、a時間、a´時間(図4A、図4B参照)未満の値である。
【0061】
制御部111は、カフ圧検出部113からカフ圧を取得すると、取得したカフ圧に基きカフ10及びこのカフ10に通じる気体供給チューブ125の容積を推定する。制御部111は、推定した容積に応じて製品A〜Cのうち何れの製品が用いられているかを判定する。制御部111は、判定結果に基き、記憶部112に記憶された複数の加圧パラメータから現在用いられている製品に適した加圧パラメータを選択し、選択した加圧パラメータを設定する。ここで、「製品」とは、例えば、カフ10及び気体供給チューブ125を指す。
【0062】
例えば、制御部111は、取得したカフ圧が圧力Aであるとき、製品Aが用いられていると判定し、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品A用加圧パラメータAを選択して設定する(ステップS103)。
【0063】
ここで、「加圧パラメータ」とは、製品種類に応じて個々に設定された、カフ圧設定動作に要する加圧時間(図4Aのa時間、図4Bのa´時間)及び減圧時間(図4Aのc時間、図4Bのc´時間)やカフ圧等に関するパラメータをいうものとする。カフ10及び気体供給チューブ125等は、製品によって例えば形状、長さ及び容積等が異なる。そのため制御部111は、ステップS103で製品Aのカフ10及び気体供給チューブ125等に適した加圧パラメータAを設定すると、以後、この加圧パラメータAに基きカフ圧設定動作を行う。これにより、個々のカフ10及び気体供給チューブ125等に応じたカフ圧の調整を行うことができる。なお、本実施形態では3種類の加圧パラメータA〜Cを設定可能としているがこれに限定されず、複数の製品に応じて複数のパラメータを設定し、記憶部112に予め記憶しておくことができる。
【0064】
一方、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が圧力Bであるとき、製品Bが用いられていると判定し、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品B用加圧パラメータBを選択して設定する(ステップS104)。また、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が圧力Cであるとき、製品Cが用いられていると判定し、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品C用加圧パラメータCを選択して設定する(ステップS105)。
【0065】
引き続き、制御部111は、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧している。制御部111はまた、所定時間毎にカフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得すると、カフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が最大圧力に到達したかどうかを判定する。
【0066】
ここで、「最大圧力」とは、一時的な加圧では人体に影響を与えず、カフ10の薄肉化や劣化が生じ難い程度における最大の圧力をいう。最大圧力は、例えば、約4.00kPa(30mmHg)〜約5.33kPa(40mmHg)の範囲内である。
【0067】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した加圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が最大圧力に到達する前にa時間、乃至a´時間(図4A、図4B参照)が経過したかどうかを判定する(ステップS106)。
【0068】
ここで、「a時間」、乃至「a´時間」とは、例えば、正常なカフ10が加圧開始から最大圧力到達までにかかると想定される時間であり、各加圧パラメータA〜Cによって異なる値が設定されてもよい。
【0069】
制御部111は、カフ圧が最大圧力に到達する前にa時間乃至a´時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS107)。
【0070】
ここで、「カフ圧が最大圧力に到達する前にa時間乃至a´時間が経過した」場合とは、カフ圧がある程度上昇するもののその上昇の速度が通常より遅い場合である。このような場合とは、例えばカフ10の薄肉化及び破損や気体供給チューブ125の破損によりカフ10から気体が漏れ易くなっている状態や、カフ10のたるみによりカフ10の容積が増加している状態や、挿管チューブ1やカニューレ9が破損して収縮することによりその分カフ10が膨張している状態等であると想定される。このような場合、分泌物が気管へと流入し易くなり、VAPの原因となる。そこで、報知部116を用いて利用者に異常を報知することにより、利用者はカフ10、気体供給チューブ125又は挿管チューブ1やカニューレ9等を交換する等対処することができる。なお、利用者へのカフ10等の異常の報知は、報知部116のみにより行うものとは限定されず、表示部115による表示とともに行ってもよい。この点については以下に説明する報知についても同様である。
【0071】
制御部111は、加圧ポンプ126を引き続き駆動してカフ10を加圧している。制御部111は、a時間乃至a´時間が経過する前にカフ圧が最大圧力に到達したと判定すると(ステップS108)、加圧が完了したと判定して加圧ポンプ126の駆動を停止し、加圧ポンプ126の駆動停止後b時間、乃至b´時間(図4A、図4B参照)待機する(ステップS109)。ここで、「b時間」とは、例えば約0.5〜30秒であり、「b´時間」とは、例えば約0.1〜2秒であり、各加圧パラメータA〜Cによって異なる値が設定されている。
【0072】
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放してカフ10を低速で減圧するとともに(ステップS110)、減圧開始からの経過時間を計測する。なお、制御部111は、排気バルブ122の開放時間、タイミング又は開口面積等を制御することにより、カフ10の減圧速度を調整することができる。
【0073】
このように減圧を低速で行う理由は、カフ10を急速に減圧すると、カフ10の外周面と気管の内壁との間に隙間が生じてカフ上部に貯留した分泌物が気管内に極めて流入し易く、VAPの原因となるので、これを防止するためである。一方、加圧を最高速度程度で行う理由は、一時的な加圧では人体に影響を与えない程度のカフ圧で早急に気管を閉塞することにより分泌物の気管への流入の早急な防止を図ることによりVAPの予防を図るためである。また、製品間や患者間等での加圧にかかる時間のばらつきを吸収するためである。
【0074】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した減圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が適正圧力に到達する前にc時間乃至c´時間(図4A、図4B参照)が経過したかどうかを判定する(ステップS111)。ここで、「適正圧力」とは、約2.67kPa(20mmHg)〜約3.33kPa(25mmHg)の範囲で各加圧パラメータA〜Cにより異なる値に設定されている。
【0075】
また、「c時間」乃至「c´時間」とは、正常なカフ10が減圧開始から適正圧力到達までにかかると想定される時間である。「c時間」とは、例えば約10〜30秒であり、「c´時間」とは、例えば約2〜22秒であり、各加圧パラメータA〜Cによって異なる値が設定されてもよい。
【0076】
制御部111は、カフ圧が適正圧力に減圧される前にc時間乃至c´時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ圧調整部120等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS112)。
【0077】
ここで、「カフ圧が適正圧力に減圧される前にc時間乃至c´時間が経過した」場合とは、カフ圧がある程度低下するもののその低下の速度が通常より遅い場合である。このような場合とは、カフ圧調整部120が故障している状態等であると想定される。そこで、報知部116を用いて利用者に異常を報知することにより、利用者は、気管における狭窄等の発症していない部位にカフ10を移動したり、カフ圧調整部120を交換する等対処することができる。なお、患者の姿勢によっては気管が圧迫されて気管の径等が通常より縮小することがある。このような場合にもアラーム音が出力されるおそれがあることから、利用者は、カフ圧制御装置100の使用前に患者の姿勢を通常の姿勢にしておくか、アラーム音出力後に患者の姿勢を確認するとよい。
【0078】
制御部111は、排気バルブ122を引き続き開放してカフ10を減圧している。制御部111は、c時間乃至c´時間が経過する前にカフ圧が適正圧力に到達したと判定すると(ステップS113)、減圧が完了したと判定して排気バルブ122を閉塞する。また、制御部111は、例えば、加圧時の流量や減圧時の流量を、使用製品の基本流量として記憶部112に記録する(ステップS114)。
なお、このように記憶部112に記録される情報(加圧時の流量や減圧時の流量)は患者ごとに異なるので、日付等とともに、この情報を各患者に対応付けて記録した方がより好ましい。その場合に、例えばバーコード読み取り装置をこのカフ圧制御装置に接続可能として、バーコード読み取り装置を使って患者のICタグより患者の情報を読み取り、加圧時の流量や減圧時の流量等の情報をその患者情報に対応付けて記憶部112に記録するようにすればよい。これにより、患者にカフ圧を適正に設定した記録など、看護処置履歴を適切に設定することが可能となる。患者がICカードに患者情報を有するような場合には、ICカードリーダ等を用いればよい。
【0079】
以上説明したカフ圧設定動作(ステップS101〜ステップS114)により、カフ圧が適正圧力に設定される。続いて、制御部111は、設定されたカフ圧を適正圧力にて維持するためのカフ圧維持動作(ステップS115〜ステップS125)に移行する。
【0080】
まず、制御部111は、時間計測部117から取得した時間情報に基き、所定時間毎にカフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得するとカフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。制御部111は、カフ圧検出部113から所定時間毎に取得するカフ圧に関する情報を、時間計測部117から取得した時間情報に関連付けたログとして、カフ圧の経時変化を記憶部112に記録し始める(ステップS115)。以後の説明において、この互いに関連付けられて記録されたカフ圧に関する情報及び時間情報を含むログを「カフ圧維持記録」と記述することがある。
【0081】
続いて、制御部111は、カフ圧制御装置100の動作モードを設定する(ステップS116)。動作モードは、予め設定されて記憶部112に記憶されていてもよいし、利用者により入力操作部114を用いて設定させてもよい。あるいは、予め患者に関する情報等が記憶部112に記録されている場合は、この情報を基に制御部111により設定されてもよい。ここで、「動作モード」とは、患者の種類や人工呼吸器の使用状態に応じて、カフ圧の加圧及び減圧を高速で行ったり低速で行ったりする設定等をいう。本実施形態では、安静モード、通常モード、活動モード及びカフ異常検出モードの4つのモードを設定可能としている。
【0082】
制御部111は、安静モードが設定されたと判定すると、安静モード時のカフ圧維持動作を行う(ステップS117)。制御部111は、通常モードが設定されたと判定すると、通常モード時のカフ圧維持動作を行う(ステップS118)。制御部111は、活動モードが設定されたと判定すると、活動モード時のカフ圧維持動作を行う(ステップS119)。制御部111は、カフ異常検出モードが設定されたと判定すると、カフ異常検出動作を行う(ステップS120)。なお、これら各モード設定時のカフ圧制御装置100の詳細な動作は後で説明する。
【0083】
続いて、制御部111は、記憶部112からカフ圧維持記録を取得する。制御部111は、取得したカフ圧維持記録に基き、カフ10の交換時期を推定する(ステップS121)。カフ10の交換時期は、製品A〜Cによって異なる値が設定されている。カフ10の交換時期は、例えば、カフ10の使用時間や、加圧ポンプ126の駆動回数(送気回数)等に基いて設定される。
【0084】
例として、制御部111は、カフ10の使用時間に基きカフ10の交換時期を判定するものとする。制御部111は、カフ圧維持記録に基き、カフ10の使用時間が所定時間を超過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、所定時間の超過を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS122)。
【0085】
このように、カフ10に実体的な異常が生じていないにも拘らず利用者に交換時期を報知するのは、次のような理由による。すなわち、カフ10は、加圧による膨張と減圧による収縮が繰り返し行われることで次第に薄肉化するとともにたるみ、容積が増加する。このようにカフ自体が経時変化することにより、カフ圧が低下して気管内への分泌物の流入が起こり易くなり、VAPの原因となる。本実施形態のカフ圧制御装置100によれば、利用者に交換時期を報知することで、利用者に経時変化しつつあるカフ10の予めの交換を促すことができる。これにより、利用者が経時変化しつつあるカフ10を破損前に交換することができるので、効果的にVAPの発症の防止を図ることができる。
【0086】
制御部111は、加圧ポンプ126の駆動回数(送気回数)に基きカフ10の交換時期を判定するものとしてもよい。或いは、交換時期の判定は、駆動回数(送気回数)ばかりでなく、排気回数や装置自体のリーク量も考慮に入れた計算をしてもよい。
図5は、経過時間と送気回数との関係を概略的に示すグラフである。
同図に示すように、予め加圧ポンプ126の駆動回数(送気回数)に上限値が設定される。制御部111は、加圧ポンプ126の駆動回数(送気回数)がこの上限値を超過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力して報知部116にアラーム音を出力させる。
【0087】
一方、制御部111は、ステップS121でカフ10の使用時間の所定時間の超過を判定しないときは、記憶部112からカフ圧維持記録を取得する。制御部111は、取得したカフ圧維持記録に記録されたカフ圧等に基き、カフ10の経時変化の有無を判定する(ステップS123)。
【0088】
具体的には、制御部111は、カフ圧維持記録に記録されたカフ圧の増加や減少の幅が通常より大きいと判定すると、カフ10の経時変化に異常があると判定し、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10の経時変化の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS124)。
【0089】
このステップによっても、カフ10に実体的な異常が生じていないにも拘らず利用者にカフ10の経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフ10の予めの交換を促すことができる。これにより、利用者が経時変化しつつあるカフ10を破損前に交換することができるので、効果的にVAPの発症の防止を図ることができる。
【0090】
一方、制御部111は、カフ10の経時変化の異常を判定しないときは、カフ圧維持記録に基き、カフ10の経時変化に関する表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部115へ出力する。表示部115は、制御部111から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、カフ10の経時変化を表示画面に表示する。例えば、表示部115は、カフ10の経時変化をグラフとして表示画面に表示する(ステップS125)。そして、制御部111は、ステップS116からの処理を繰り返す。
【0091】
次に、上記カフ圧維持動作のフローにおける、各モード時のカフ圧制御装置100の動作(ステップS117〜ステップS120)についてそれぞれ説明する。カフ圧制御のモードを可変とすることで、例えば患者の状態等に応じてカフ圧の調整感度を制御することができる。
【0092】
[(2)安静モード時のカフ圧維持動作]
まず、安静モード時のカフ圧維持動作(図3のステップS117)について説明する。ここで、「安静モード」とは、患者がベッド上で身体を殆ど動かすことがないとき等の安静時に、加圧ポンプ126を低速で駆動して低速で圧力調整を行うモードをいう。また、カフ圧制御装置100を安静モードで動作させることにより、カフ10の経時変化やカフ圧調整部120及び電池等の消耗の抑制を図ることができる。カフ10の経時変化やカフ圧調整部120の消耗の抑制は、例えば、各部品を容易に交換することのできない在宅介護時等に有用である。電池等の消耗の抑制は、例えば、外出時、停電時又は災害時等に有用である。
【0093】
図6は、安静モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
本フローチャートに示される安静モード時のカフ圧維持動作には、カフ圧増加時の減圧動作(ステップS201〜ステップS206)と、カフ圧低下時の加圧動作(ステップS207〜ステップS212)とが含まれる。
【0094】
まず、カフ圧増加時の減圧動作(ステップS201〜ステップS206)について説明する。
制御部111は、ステップS115から引き続き、カフ圧の経時変化を記憶部112に記録している。これとともに、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が設定上限値を超過したかどうかを判定する(ステップS201)。
【0095】
ここで、「設定上限値」とは、例えば約3.33kPa(25mmHg)である。また、カフ圧の設定上限値を超過は、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)に伴い気管の径が縮小し、その結果カフ圧が上昇した場合に発生しうる。
【0096】
制御部111は、カフ圧が設定上限値を例えば5秒程度の一定時間連続して超過していないと判定すると(ステップS201でNO)、カフ圧低下時の加圧動作(ステップS207〜ステップS212)の処理に移行する。このように一定時間連続して超過していないかを判定することで、体動などによる一時的な超過による誤判定を防止することができる。
【0097】
一方、制御部111は、カフ圧が設定上限値を超過したと判定すると(ステップS201でYES)、このカフ圧に関する情報を、カフ圧の経時変化として記憶部112に記録する(ステップS202)。
【0098】
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放し、カフ10に低速減圧処理を行うとともに(ステップS203)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、減圧開始からの経過時間を計測する。なお、低速処理時の送気量は、例えば、通常モード時の通常処理時の送気量の約2分の1とすればよい。
【0099】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した減圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が設定上限値に到達する前に所定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS204)。
【0100】
制御部111は、カフ圧が設定上限値に減圧される前に所定時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS205)。
【0101】
制御部111は、カフ圧が設定上限値に到達するまで排気バルブ122を引き続き開放してカフ10を減圧している。制御部111は、所定時間が経過する前にカフ圧が設定上限値に到達したと判定すると(ステップS206)、減圧が完了したと判定して排気バルブ122を閉塞する。
【0102】
以上説明したカフ圧増加時の減圧動作(ステップS201〜ステップS206)により、設定上限値を超過したカフ圧が設定上限値まで減圧される。このように、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)に伴い気管の径が縮小してカフ圧が上昇した場合等に速やかに追従し、所望のカフ圧を維持することができるとともに、異常がある場合には利用者に異常を報知することができる。
【0103】
続いて、制御部111は、カフ圧低下時の加圧動作(ステップS207〜ステップS212)に移行する。
制御部111は、引き続き、カフ圧の経時変化を記憶部112に記録している。これとともに、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が設定下限値未満となったかどうかを判定する(ステップS207)。
【0104】
ここで、「設定下限値」とは、例えば約2.67kPa(20mmHg)である。また、設定下限値未満のカフ圧は、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)に伴い気管の径が拡大し、その結果カフ圧が低下した場合に発生しうる。
【0105】
制御部111は、カフ圧が設定下限値未満となっていないと判定すると(ステップS207でNO)、ステップS121の処理に移行する。
【0106】
一方、制御部111は、カフ圧が設定下限値未満となったと判定すると(ステップS207でYES)、このカフ圧に関する情報を、カフ圧の経時変化として記憶部112に記録する(ステップS208)。
【0107】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を低速で駆動し、カフ10に低速加圧処理を行うとともに(ステップS209)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、加圧開始からの経過時間を計測する。
【0108】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した加圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が設定下限値に到達する前に所定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS210)。
【0109】
制御部111は、カフ圧が設定下限値に加圧される前に所定時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS211)。
【0110】
制御部111は、カフ圧が設定下限値に到達するまで加圧ポンプ126を引き続き駆動してカフ10を加圧している。制御部111は、所定時間が経過する前にカフ圧が設定下限値に到達したと判定すると(ステップS212)、加圧が完了したと判定して加圧ポンプ126の駆動を停止する。そして、制御部111は、ステップS121の処理に移行する。
【0111】
以上説明したカフ圧低下時の加圧動作(ステップS207〜ステップS212)により、設定下限値未満に低下したカフ圧が設定下限値まで加圧される。このように、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)に伴い気管の径が拡大してカフ圧が低下した場合等に速やかに追従し、所望のカフ圧を維持することができるとともに、異常がある場合には利用者に異常を報知することができる。
【0112】
[(3)通常モード時のカフ圧維持動作]
次に、通常モード時のカフ圧維持動作(図3のステップS118)について説明する。ここで、「通常モード」とは、例えば、患者がベッド上で身体を動かしたり、歩行や車椅子で移動をするような場合等の通常時に、加圧ポンプ126を通常速度で駆動して通常速度で圧力調整を行うモードをいう。なお、以下の説明において、上述の処理と同様の処理には同様の符号を付して説明を省略または簡略化するものとする。
【0113】
図7は、通常モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
制御部111は、ステップS201〜ステップS202の処理を行う。なお、通常モード時におけるステップS201においては、カフ圧が設定上限値を例えば3秒程度の一定時間連続して超過していないか判定すればよい。
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放し、カフ10に通常減圧処理を行うとともに(ステップS303)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、減圧開始からの経過時間を計測する。
引き続き、制御部111は、ステップS204〜ステップS208の処理を行う。
【0114】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を通常速度で駆動し、カフ10に通常加圧処理を行うとともに(ステップS309)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、加圧開始からの経過時間を計測する。
引き続き、制御部111は、ステップS210〜ステップS212の処理を行う。
【0115】
[(4)活動モード時のカフ圧維持動作]
次に、活動モード時のカフ圧維持動作(図3のステップS119)について説明する。ここで、「活動モード」とは、例えば、患者が人工呼吸器を装着したまま呼吸リハビリテーションやスクイージングを行う場合や入浴や運動を行うような場合等の活動時に、加圧ポンプ126を高速で駆動して高速で圧力調整を行うモードをいう。患者の活動時には患者の姿勢が急激に変化することがあり、これに伴い気管の径等が急激に変化することがある。また、呼吸リハビリテーションやスクイージングにおいても、気管の径等が急激に変化することがある。この気管の径等の急激な変化に伴い、カフ圧もまた急激に変化するおそれがある。このような患者の活動時に高速でカフ圧を調整することにより、気管への分泌物の流入の防止を図ってVAPの防止を図ることができる。
【0116】
図8は、活動モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
制御部111は、ステップS201〜ステップS202の処理を行う。なお、活動モード時におけるステップS201においては、カフ圧が設定上限値を例えば1秒程度の一定時間連続して超過していないか判定すればよい。このようにモード毎に適宜連続超過の時間を設定することで、より確実に誤判定を防止することができる。
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放し、カフ10に高速減圧処理を行うとともに(ステップS403)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、減圧開始からの経過時間を計測する。なお、高速処理時の送気量は、例えば、通常モード時の通常処理時の送気量の約2倍〜3倍程度とすればよい。引き続き、制御部111は、ステップS204〜ステップS208の処理を行う。
【0117】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を高速で駆動し、カフ10に高速加圧処理を行うとともに(ステップS409)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、加圧開始からの経過時間を計測する。引き続き、制御部111は、ステップS210〜ステップS212の処理を行う。
【0118】
以上説明した(2)〜(4)のカフ圧維持動作によれば、カフ圧制御装置100をカフ10に常時接続して所定時間毎にカフ圧検出部113がカフ圧を検出することにより、例えば、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)等に伴う気管の径等の変化に起因するカフ圧の変化に速やかに追従し、所望のカフ圧を維持することができるとともに、異常がある場合には利用者に異常を報知することができる。これにより、効果的にカフ圧の不足に起因するVAPの発症の抑制を図ることができる。
【0119】
[(5)カフ異常検出動作]
次に、カフ異常検出動作(図3のステップS120)について説明する。ここで、「カフ異常検出」とは、カフ圧維持記録に基き、カフ10の経時変化、気体供給チューブ125、挿管チューブ1やカニューレ9又はカフ圧調整部120等の消耗といった人工呼吸器の異常や、患者の気管の狭窄や変形等の異常等を検出するモードをいう。
図9は、カフ異常検出動作を示すフローチャートである。
【0120】
制御部111は、ステップS115から引き続き、カフ圧の経時変化を記憶部112に記録している(ステップS501)。
【0121】
続いて、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が所定値(例えば約2.80kPa(21mmHg))未満の場合には、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧し、カフ圧がこの所定値より大きい場合には、排気バルブ122を開放してカフ10を減圧する。
【0122】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が上記所定値に到達したかどうかを判定する。制御部111は、カフ圧が上記所定値に到達したと判定すると、加圧ポンプ126の駆動を停止又は排気バルブ122を閉塞する(ステップS502)。
【0123】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧する。制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が所定値(例えば約3.20kPa(24mmHg))に到達したかどうかを判定する。制御部111は、カフ圧がこの所定値に到達したと判定すると、記憶部112のカフ圧維持記録に基き、カフ圧が約2.80kPa(21mmHg)から約3.20kPa(24mmHg)になるまでにカフ10に供給した気体の流量値を測定し、この流量値を記憶部112に記録する(ステップS503)。
【0124】
続いて、制御部111は、記憶部112を参照し、「初回流量記録」に関する情報が関連付けられて記録された流量値の有無を判定することにより、今回の測定が初回の測定であるかどうかを判定する(ステップS504)。
【0125】
制御部111は、「初回流量記録」に関する情報が関連付けられて記録された流量値が無いと判定すると、今回の測定が初回の測定であると判定する(ステップS504でYES)。そして、制御部111は、記憶部112に記録した流量値に「初回流量記録」に関する情報を関連付けて追加記録する(ステップS505)。そして、制御部111は、ステップS121の処理に移行する。
【0126】
一方、制御部111は、「初回流量記録」に関する情報が関連付けられて記録された流量値が有ると判定すると、今回の測定が初回の測定でないと判定する(ステップS504でNO)。そして、制御部111は、測定した流量値と、記憶部112に「初回流量記録」に関する情報が関連付けられて記録された流量値との差を得る(ステップS506)。制御部111は、得られた値が所定範囲内であると判定すると、カフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化が許容範囲内であると推定し、ステップS121の処理に移行する。
【0127】
一方、制御部111は、得られた値が所定範囲外であると判定すると、カフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化が異常であると推定し、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS507)。
【0128】
これにより、カフ10に実体的な異常が生じていないにも拘らず利用者にカフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフ10の予めの交換を促すことができる。これにより、利用者が経時変化しつつあるカフ10を破損前に交換することができるので、効果的にVAPの発症の防止を図ることができる。
【0129】
[(6)カフ圧設定動作及びカフ異常検査動作]
図10は、カフ圧設定動作及びカフ異常検査動作を示すフローチャートである。
本フローチャートには、カフ圧設定動作(ステップS601〜ステップS612)と、カフ異常検査動作(ステップS613〜ステップS617)とが含まれる。
【0130】
まず、カフ圧設定動作(ステップS601〜ステップS612)について説明する。このカフ圧設定動作(ステップS601〜ステップS612)は、(1)のカフ圧設定動作におけるステップS102〜ステップS113にそれぞれ対応している。
【0131】
まず、利用者は、入力操作部114を用いて何れの製品A〜Cが使用されているかを選択し、入力操作部114は、利用者から受け付けた製品選択結果を制御部111へ出力する(ステップS601)。制御部111は、入力操作部114から取得した製品選択結果に基き、記憶部112に記憶された複数の加圧パラメータから現在用いられている製品に適した加圧パラメータを選択し、選択した加圧パラメータを設定する。
【0132】
制御部111は、入力操作部114から取得した製品選択結果が製品Aであると判定すると、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品A用加圧パラメータAを選択して設定する(ステップS602)。一方、制御部111は、入力操作部114から取得した製品選択結果が製品Bであると判定すると、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品B用加圧パラメータBを選択して設定する(ステップS603)。また、制御部111は、入力操作部114から取得した製品選択結果が製品Cであると判定すると、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品C用加圧パラメータCを選択して設定する(ステップS604)。
【0133】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を急速に加圧する。制御部111は、時間計測部117から取得した時間情報に基き、加圧開始からの経過時間を計測する。また、制御部111は、所定時間毎にカフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得すると、カフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が最大圧力に到達したかどうかを判定する。
【0134】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基いて計測した加圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が最大圧力に到達する前に所定時間(例えば、図4のa時間)が経過したかどうかを判定する(ステップS605)。
【0135】
制御部111は、カフ圧が最大圧力に到達する前に所定時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS606)。
【0136】
制御部111は、加圧ポンプ126を引き続き駆動してカフ10を加圧している。制御部111は、所定時間が経過する前にカフ圧が最大圧力に到達したと判定すると(ステップS607)、加圧が完了したと判定して加圧ポンプ126の駆動を停止し、加圧ポンプ126の駆動停止後約30秒程度(図4のb時間に対応)待機する(ステップS608)。
【0137】
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放してカフ10を低速で減圧するとともに(ステップS609)、減圧開始からの経過時間を計測する。
【0138】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した減圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が適正圧力に到達する前に所定時間(例えば、図4のc時間)が経過したかどうかを判定する(ステップS610)。
【0139】
制御部111は、カフ圧が適正圧力に減圧される前に所定時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ圧調整部120の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS611)。
【0140】
制御部111は、排気バルブ122を引き続き開放してカフ10を減圧している。制御部111は、所定時間が経過する前にカフ圧が適正圧力に到達したと判定すると(ステップS612)、減圧が完了したと判定して排気バルブ122を閉塞する。
【0141】
以上説明したカフ圧設定動作(ステップS601〜ステップS612)により、カフ圧が適正圧力に設定される。続いて、制御部111は、カフ異常検査動作(ステップS613〜ステップS617)に移行する。このカフ異常検査動作中、ステップS614〜ステップS617は、(5)のカフ異常検出動作におけるステップS502、S503、S506、S507にそれぞれ対応している。
【0142】
まず、利用者は、入力操作部114を用いてカフ異常検査の有無を選択し(ステップS613)、入力操作部114は、利用者から受け付けたカフ異常検査選択結果を制御部111へ出力する。制御部111は、入力操作部114から取得したカフ異常検査選択結果が無であると判定すると、フローを終了する。
【0143】
一方、制御部111は、入力操作部114から取得したカフ異常検査選択結果が有であると判定すると、時間計測部117から取得した時間情報に基き、所定時間毎にカフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得するとカフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。
【0144】
続いて、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が所定値(例えば約2.80kPa(21mmHg))未満の場合には、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧し、カフ圧がこの所定値より大きい場合には、排気バルブ122を開放してカフ10を減圧する。
【0145】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が上記所定値に到達したかどうかを判定する。制御部111は、カフ圧が上記所定値に到達したと判定すると、加圧ポンプ126の駆動を停止又は排気バルブ122を閉塞する(ステップS614)。
【0146】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧する。制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が所定値(例えば約3.20kPa(24mmHg))に到達したと判定する。制御部111は、カフ圧がこの所定値に到達したと判定すると、カフ圧が約2.80kPa(21mmHg)から約3.20kPa(24mmHg)になるまでにカフ10に供給した気体の流量値を測定する(ステップS615)。
【0147】
続いて、制御部111は、測定した流量と、現在使用中の製品A、B又はCにおけるカフ10の容積との差を得る(ステップS616)。制御部111は、得られた値が所定範囲以内であると判定すると、カフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化が許容範囲内であると推定し、フローを終了する。なお、各製品A〜Cのカフ10の容積は予め記憶部112に記録しておけばよい。
【0148】
一方、制御部111は、得られた値が所定範囲外であると判定すると、カフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化が異常であると推定し、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS617)。
【0149】
これにより、カフ10に実体的な異常が生じていないにも拘らず利用者にカフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフ10の予めの交換を促すことができる。これにより、利用者が経時変化しつつあるカフ10を破損前に交換することができるので、効果的にVAPの発症の防止を図ることができる。
【0150】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が考えられる。
【0151】
例えば、カフ圧制御装置100に、カフ漏れによるリーク等を感知する低圧アラーム機能や、電池の交換時期が表示可能な電池残量警報機能等の機能を設けてもよい。これにより、カフ圧の不足等を早期に利用者に報知することができ、カフ圧の不足等に起因したVAPの発症の防止を図ることができる。
【0152】
本実施形態では、動作モードは、予め設定されて記憶部112に記憶されていてもよいし、利用者により入力操作部114を用いて設定させてもよく、予め患者に関する情報等が記憶部112に記録されている場合は、この情報を基に制御部111により設定されてもよいとしたが、これに限定されない。所定時間毎にカフ圧検出部113により検出されるカフ圧に基き、制御部111がモード変更をする構成としてもよい。例えば、制御部111は、安静モード又は通常モード設定時に一定期間急激なカフ圧変化が続いた場合、活動モードに設定を切り替えればよい。あるいは、制御部111は、活動モード設定時に一定期間カフ圧変化がなかった場合、通常モードに設定を切り替え、さらにカフ圧変化のない状態が続けば安静モードに設定を切り替えればよい。
【符号の説明】
【0153】
10…カフ
100…カフ圧制御装置
110…制御系
111…制御部
113…カフ圧検出部
120…カフ圧調整部
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器に接続される挿管チューブに設けられたカフの内圧を制御するカフ圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器に関する医療分野においては、挿管チューブを口腔や鼻腔から患者の気管内に挿入して気道を確保し、挿管チューブを介して酸素を肺に送り込む気管挿管や、喉の皮膚及び気管を切開し、この切開された部分からカニューレを患者の気管内に挿入して気道を確保し、カニューレを介して酸素を肺に送り込む気管切開が知られている。
【0003】
挿管チューブやカニューレと気管の内壁との間に隙間が生じると、気管内に胃液や唾液等の分泌物が流入するおそれがある。このような分泌物の流入を防止するため、挿管チューブやカニューレの外壁にはカフが取り付けられる。
このカフは、バルーンカフとも呼ばれ、カフ内に気体が供給されて膨張する。カフが膨張することにより、カフの外周面が気管の内壁に接触して気管を閉塞する。
このようにして、挿管チューブやカニューレにより気道を確保しつつ、カフにより気管への分泌物の流入を防止することができる(例えば、特許文献1の段落[0002]参照。)。
【0004】
このカフの内圧(以下「カフ圧」と記述する。)が所定範囲外の値となった場合、次のような問題が生じることが知られている。
例えば、カフ圧が気管の粘膜組織の静脈圧である約3.33kPa(25mmHg)より大きくなると、膨張したカフが気管の粘膜組織の血管を圧迫することとなる。血管が圧迫されると虚血状態となり、その結果、潰瘍、壊死、出血、肉芽形成、さらには抜管後の気管狭窄、気管軟化症等が引き起こされるおそれがある。
一方、カフ圧が約2.67kPa(20mmHg)未満となるとカフの膨張が不十分となり、カフの外周面と気管の内壁との間に隙間が生じて、気管内に唾液や胃液等の分泌物が流入することがある。
そのため、従来から、カフ圧を所定範囲内にて維持するためのカフ圧の管理は、所定時間毎に看護士等がカフ圧計を用いてカフ圧を計測し、計測結果を参照しながら手動でカフ圧を調整することにより行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−505715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人工呼吸器に関する医療分野において、人工呼吸器関連肺炎(VAP;Ventilator-associated pneumonia。以下「VAP」と記述する。)が知られている。VAPとは、呼吸器感染症以外の理由で人工呼吸器を装着後48時間以上経過して発症する肺炎をいう。現在、人工呼吸器患者の死亡者のうち約3〜4割の患者の直接の死因がVAPであるといわれている。従って、VAPは極めて深刻な問題であるとともに、VAPの予防策に関心が高まっている。
本発明者らの知見によれば、VAPが上記のカフ圧に起因することを見い出した。すなわち、看護士等が上記のようにカフ圧を管理していたのだが、本発明者らは、このようなカフ圧の手動による管理やカフ自体の経時変化などによって結果的にはカフ圧が不足し、VAPを発症させていることを見い出した。
本発明者らの更なる考察によれば、未使用のカフの外周面にはしわができていることが多く、例えばこのカフを患者の気管に装着した後にカフ圧を20〜25mmHgの範囲内に加圧しても、カフの外周面にはしわが残る場合がある。残ったしわによって、カフの外周面と気管の内壁との間に隙間が生じて、気管内に唾液や胃液等の分泌物が流入することがある。このような原因によってVAPを発症させている可能性もある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、カフ圧の不足等に起因したVAPの予防を図ることができるカフ圧制御装置及びカフ圧制御方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、未使用のカフの外周面にできているしわ等に起因したVAPの予防を図ることができるカフ圧制御装置及びカフ圧制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの考察は以下のとおりである。
これまでカフ圧を所定値にて維持するために、所定時間毎の巡回時等に看護士等がカフ圧計を用いてカフ圧を計測し、計測結果を参照しながら手動でカフ圧を調整していた。しかし、このような手動でのカフ圧調整では、精密な微調整が困難であり、カフ圧計の操作時に誤ってカフ圧が所定値未満まで低下してしまったとき等にカフが収縮して気管内に分泌物が流入し、VAPの原因となっていた。
【0009】
さらに、カフは、加圧による膨張と減圧による収縮が繰り返し行われることで次第に薄肉化するとともにたるみ、容積が増加する。このようにカフ自体が経時変化することにより、カフ圧が低下して気管内への分泌物の流入が起こり易くなり、VAPの原因となっていた。また、カフの薄肉化により、薄肉化した部分に穴が開いたり、カフが破裂してしまうことがある。このような場合、カフ圧が急速に低下して気管内への分泌物の流入が極めて起こり易くなり、VAPの原因となっていた。
【0010】
加えて、これまで看護士等が所定時間毎の巡回時等にカフ圧を調整していたため、巡回時に一度カフ圧が所定値に調整されれば、その後暫くはカフ圧の調整が行われない。このため、カフが経時変化した場合等には、その経時変化が微小なものであっても、次回のカフ圧調整時までの間にカフ圧が徐々に低下して結果的にカフ圧が不足し、VAPを発症させてしまう。また、カフが経時変化してカフの容積が大きくなったような場合、カフを所定値まで加圧するには通常より時間がかかることとなる。カフ圧を手動で調整する場合、看護士等はそのような加圧時間の変化を認識し難いことがある。そのためカフ圧の微小な経時変化に気付くのが遅れて結果的にVAPを発症させてしまう。
【0011】
本発明者らは、以上のような理由によりカフ圧の手動による管理には限界があり、カフ自体の経時変化などによって結果的にはカフ圧が不足してVAPを発症させていることを見い出した。
【0012】
本発明者らは、これらの原因を究明し、その結果、以下の構成のカフ圧制御装置をカフに採用することとした。
【0013】
すなわち、本発明の一形態に係るカフ圧制御装置は、カフ圧調整部と、カフ圧検出部と、制御部とを有する。
カフ圧調整部は、気管挿管に用いられるカフを加圧する。
カフ圧検出部は、上記カフの内圧を検出する。
制御部は、上記カフ圧検出部による検出結果に基き、上記カフの内圧が所定の範囲になるように上記カフ圧調整部を制御し、上記カフの内圧が第1の時間内に上記所定の範囲にならないときには異常を報知する。
また、前記カフの装着直後に、前記制御部は、前記カフ圧検出部によりカフの内圧を検出し、前記検出したカフの内圧が前記所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるように前記カフ圧調整部を制御する。
【0014】
本発明の一形態に係るカフ圧制御方法は、気管挿管に用いられるカフの内圧を制御するカフ圧制御方法である。
前記カフの装着直後に、前記カフの内圧が検出される。
検出したカフの内圧が所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるようにカフが加圧される。
その後、上記カフの内圧が検出される。
検出結果に基き、上記カフの内圧が所定の範囲になるようにカフが加圧される。
上記カフの内圧が第1の時間内に上記所定の範囲にならないときには異常が報知される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】気管挿管の様子を示す模式図であって、挿管チューブが鼻腔から気管内に挿入された様子を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係るカフ圧制御装置を示す概略図である。
【図3】カフ圧設定動作及びカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
【図4A】カフ圧設定動作を説明するためのグラフである(その1)。
【図4B】カフ圧設定動作を説明するためのグラフである(その2)。
【図5】経過時間と送気回数との関係を概略的に示すグラフである。
【図6】安静モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
【図7】通常モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
【図8】活動モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
【図9】カフ異常検出動作を示すフローチャートである。
【図10】カフ圧設定動作及びカフ異常検査動作を示すフローチャートである。
【図11】気管挿管の様子を示す模式図であって、挿管チューブが口腔から気管内に挿入された様子を示す。
【図12】気管切開の様子を示す模式図であって、カニューレが喉から気管内に挿入された様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一形態に係るカフ圧制御装置は、カフ圧調整部と、カフ圧検出部と、制御部とを有する。
カフ圧調整部は、気管挿管に用いられるカフを加圧する。
カフ圧検出部は、上記カフの内圧を検出する。
制御部は、上記カフ圧検出部による検出結果に基き、上記カフの内圧が所定の範囲になるように上記カフ圧調整部を制御し、上記カフの内圧が第1の時間内に上記所定の範囲にならないときには異常を報知する。
また、前記カフの装着直後に、前記制御部は、前記カフ圧検出部によりカフの内圧を検出し、前記検出したカフの内圧が前記所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるように前記カフ圧調整部を制御する。
【0017】
これにより、カフの内圧の変化に対応して所望のカフの内圧を維持することができるとともに、カフの内圧の調整について異常がある場合には異常を報知することができる。
また、カフの装着直後に、検出したカフの内圧が所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、まだそのカフはこれまでに加圧されたことのない未使用のカフとみなし、そのときにはカフの内圧が所定の範囲を超える第2の圧力としているので、未使用のカフの外周面にできているしわ等がこの圧力によって伸びてしわ等に起因したVAPの予防を図ることができる。既に使用済みで再使用のカフについてはカフにある程度の気体が残っていることから、検出されるカフの内圧は第1の圧力を超える。このようなカフについて第2の圧力まで加圧しないので、カフに対する圧力によるストレスの影響をより小さくすることができる。
【0018】
上記制御部は、装着直後の所定の操作により上記カフ圧調整部によって上記カフへの加圧を開始し、開始してから一定時間後に上記カフ圧検出部により検出される上記カフの内圧によって上記カフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、推定した容積に応じて少なくとも上記第1の時間を設定してもよい。
【0019】
これにより、個々のカフ及び上記カフに通じる気体供給チューブに応じたカフ圧の調整を行うことができる。
【0020】
上記カフ圧検出部により検出された上記カフの内圧の経時変化を記憶する記憶部をさらに有してもよい。
上記制御部は、上記記憶部により記憶された上記カフの内圧の経時変化に異常があるときには異常を報知してもよい。
【0021】
これにより、カフの経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0022】
上記記憶部は、上記カフの使用時間を記憶してもよい。
上記制御部は、上記記憶部により記憶された上記カフの使用時間に基き上記カフの交換時期を推定し、推定した交換時期を報知してもよい。
【0023】
これにより、カフの交換時期を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0024】
上記制御部は、上記カフの内圧を一定量変化させるのに必要な気体の容積によって上記カフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、推定した容積の経時変化に異常があるときには異常を報知してもよい。
【0025】
これにより、カフのカフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0026】
本発明の一形態に係るカフ圧制御方法は、気管挿管に用いられるカフの内圧を制御するカフ圧制御方法である。
前記カフの装着直後に、前記カフの内圧が検出される。
検出したカフの内圧が所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるようにカフが加圧される。
その後、上記カフの内圧が検出される。
検出結果に基き、上記カフの内圧が所定の範囲になるようにカフが加圧される。
上記カフの内圧が第1の時間内に上記所定の範囲にならないときには異常が報知される。
【0027】
これにより、カフの内圧の変化に対応して所望のカフの内圧を維持することができるとともに、カフの内圧の調整について異常がある場合には異常を報知することができる。
また、未使用のカフの外周面にできているしわ等に起因したVAPの予防を図ることができる。
【0028】
装着直後の所定の操作により上記カフへの加圧が開始されてもよい。
開始してから一定時間後に上記カフ圧検出部により検出される上記カフの内圧によって上記カフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積が推定されてもよい。
推定した容積に応じて少なくとも上記第1の時間が設定されてもよい。
【0029】
これにより、個々のカフ及び上記カフに通じる気体供給チューブに応じたカフ圧の調整を行うことができる。
【0030】
上記検出された上記カフの内圧の経時変化が記憶されてもよい。
上記記憶された上記カフの内圧の経時変化に異常があるときには異常が報知されてもよい。
【0031】
これにより、カフの経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0032】
上記カフの使用時間が記憶されてもよい。
上記記憶された上記カフの使用時間に基き上記カフの交換時期が推定されてもよい。
推定した交換時期が報知されてもよい。
【0033】
これにより、カフの交換時期を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0034】
上記カフの内圧を一定量変化させるのに必要な気体の容積によって上記カフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積が推定されてもよい。
推定した容積の経時変化に異常があるときには異常が報知されてもよい。
【0035】
これにより、カフのカフ及び上記カフに通じる気体供給チューブの容積の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフの予めの交換を促すことができる。
【0036】
[本発明の実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0037】
図1は、気管挿管の様子を示す模式図であって、挿管チューブが鼻腔から気管内に挿入された様子を示す。図11は、気管挿管の様子を示す模式図であって、挿管チューブが口腔から気管内に挿入された様子を示す。図12は、気管切開の様子を示す模式図であって、カニューレが喉から気管内に挿入された様子を示す。
人工呼吸器の使用時に気管挿管や気管切開で気道を確保する場合、鼻腔7又は口腔5から挿入された挿管チューブ1や喉8から挿入されたカニューレ9と気管2の内壁6との間に隙間が生じると、気管2内に食道3からの胃液や唾液等の分泌物が流入するおそれがある。とりわけ、気管挿管においては喉頭蓋4が開かれた状態となるため食道3からの胃液が気管2に流入し易い。このような分泌物の流入を防止するため、挿管チューブ1やカニューレ9の外周の所定の位置にはカフ10が取り付けられる。このカフ10は、気体供給チューブ125を介して体外より加圧されることにより膨張する。カフ10が膨張することにより、カフ10の外周面が気管2の内壁6に接触して気管2を閉塞する。このようにして、挿管チューブ1やカニューレ9により気道を確保しつつ、カフ10により気管2への分泌物の流入を防止することができる。
【0038】
[カフ圧制御装置の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係るカフ圧制御装置100を示す概略図である。
上記カフ10の内圧(以下「カフ圧」と記述する。)は、カフ圧制御装置100により制御される。カフ圧制御装置100は、制御系110と、カフ圧調整部120とを有する。
【0039】
制御系110は、制御部111と、記憶部112と、カフ圧検出部113と、入力操作部114と、表示部115と、報知部116と、時間計測部117とを有する。
【0040】
制御部111は、カフ圧制御装置100内の各部を制御し、またカフ圧検出部113より取得した検出結果や時間計測部117より取得した時間情報等に基いて、カフ圧調整部120の加圧ポンプ126及び排気バルブ122を制御する。
【0041】
時間計測部117は、時間を計測する。制御部111は、時間計測部117を参照して経過時間等の時間情報を取得する。
【0042】
カフ圧検出部113は、気体供給チューブ125に通じるカフ圧検出チューブ118を介して接続される。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得するとカフ10のカフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。
【0043】
記憶部112は、不揮発性メモリであり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、その他の固体メモリに設定される。制御部111は、カフ圧検出部113より取得したカフ圧に関する情報と時間計測部117より取得した時間情報とを互いに関連付けて、カフ圧の経時変化として記憶部112に記録する。記憶部112には、また、カフ10等の製品種類に応じた複数の加圧パラメータに関する情報や、複数の動作モードに関する情報等が記録される。
【0044】
入力操作部114は、操作ボタンを有し、利用者からの入力操作を受け付け、制御部111に出力する。
【0045】
表示部115は、例えば液晶表示器等を用いた表示デバイスである。表示部115は、制御部111から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、例えばカフ圧に関する情報や時間情報等を表示画面に表示する。
【0046】
報知部116は、例えばスピーカであり、制御部111より報知命令を取得すると、例えばカフ10の異常等を利用者に報知するアラーム音を出力する。なお、報知部116としてのスピーカは、カフ圧制御装置100に一体に設けられてもよいし、外部装置として例えば病院内の別の場所に設けられてもよい。あるいは、報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、病院内の別の場所に設けられたナースコール装置や看護士等が携帯するPHS(Personal Handy-phone System)等に対して出力を行う出力インタフェースであってもよい。なお、本実施形態では、以下、報知部116をアラーム音を出力するスピーカとして説明する。
【0047】
カフ圧調整部120は、加圧ポンプ126と、一方弁121と、排気バルブ122と、安全弁127と、流量調整バルブ123と、リザーバタンク124とを有する。これら加圧ポンプ126、一方弁121、安全弁127、排気バルブ122、流量調整バルブ123及びリザーバタンク124は、この順に直列的に連通されている。
【0048】
加圧ポンプ126は、制御部111により駆動されて気体供給チューブ125を介してカフ10を加圧する電動式ポンプである。加圧ポンプ126は、制御部111の制御のもとで、カフ10への加圧の大きさや速度が設定される。
【0049】
一方弁121は、加圧ポンプ126の下流に接続され、カフ10側から加圧ポンプ126への気体の逆流を防止する。
【0050】
安全弁127は、ばねの付勢力等を利用した機械式の弁であり、一方弁121の下流に接続される。安全弁127は、カフ10及び気体供給チューブ125の内圧が閾値以上になると、ばねの付勢力により図示しない蓋を押し上げるようにして開放し、気体を排出する。
ここで、「閾値」とは、未使用のカフの外周面にできているしわ等が伸びる程度の圧力であり、約13.33kPa(100mmHg)程度であることが好ましい。なお、未使用のカフの外周面にできているしわ等を伸ばす機能を持たないときには、その閾値は、例えば、適正圧力(約2.67kPa(20mmHg)〜約3.33kPa(25mmHg))より約1.33kPa(10mmHg)〜約2.00kPa(15mmHg)程度高い値である。より具体的には、閾値は、例えば約5.33kPa(40mmHg)程度とすればよい。
【0051】
排気バルブ122は、安全弁127の下流に接続される。排気バルブ122は、制御部111により制御されて開放及び閉塞する。排気バルブ122は、開放状態において、気体供給チューブ125を介してカフ10内の気体を大気に解放してカフ10を減圧する。排気バルブ122は、閉塞状態において、カフ10内の大気への解放を停止してカフ10の減圧を停止する。
なお、排気バルブ122の排気側に減圧制御弁(図示せず。)を設けても構わない。この減圧制御弁は、例えばカフの適正圧力の下限である約2.67kPa(20mmHg)よりも低い圧力に減圧しないように制御する弁である。減圧制御弁としては、例えばばね等の弾性力によって機械的に圧力を制御する機構となっていることが好ましい。このような減圧制御弁を設けることで、例えば制御系の故障によりカフ圧調整部が機能しなくなったときでも、カフの内圧をカフの機能を維持できる程度に最低限維持することができるようになる。
【0052】
流量調整バルブ123は、排気バルブ122の下流に接続され、気体供給チューブ125を介してカフ10に流れる気体の量を調整する。流量調整バルブ123は、利用者により操作される構成としてもよいし、制御部111により制御される構成としてもよい。
【0053】
リザーバタンク124は、流量調整バルブ123の下流に接続され、カフ10のカフ圧変動を吸収する。
【0054】
[カフ圧制御装置の動作]
次に、以上のように構成されたカフ圧制御装置100の動作を説明する。動作の説明は以下の順で行うものとする。
(1)カフ圧設定動作及びカフ圧維持動作
(2)安静モード時のカフ圧維持動作
(3)通常モード時のカフ圧維持動作
(4)活動モード時のカフ圧維持動作
(5)カフ異常検出動作
(6)カフ圧設定動作及びカフ異常検査動作
【0055】
(1)〜(5)の動作は、カフ圧制御装置100が患者の気管に装着されたカフ10に常時接続されて使用されるような場合を主として想定している。(1)〜(5)の動作は、例えば、特定の患者に装着されたカフ10のカフ圧を長期間に亘って制御するような場合に有用である。
【0056】
一方、(6)の動作は、利用者によりカフ圧制御装置100が患者の気管に装着されたカフ10に一時的に接続されて使用されるような場合を主として想定している。(6)の動作は、例えば、看護士等の利用者が1つのカフ圧制御装置100を所持し、この1つのカフ圧制御装置100を複数の患者の気管に装着された複数のカフ10に順次取り付けてそれぞれのカフ10のカフ圧を制御するような場合に有用である。
【0057】
[(1)カフ圧設定動作及びカフ圧維持動作]
図3は、カフ圧設定動作及びカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
本フローチャートには、カフ圧設定動作(ステップS101〜ステップS114)と、カフ圧維持動作(ステップS115〜ステップS125)とが含まれる。
【0058】
まず、カフ圧設定動作(ステップS101〜ステップS114)について説明する。
このカフ圧設定動作に先立ち、まず当該カフ10が未使用のカフか、既に使用したことがあるカフかの判別が行われる(ステップ100、100a、100b)。未使用のカフには、ほとんど気体が入っていないのに対して、既に使用したことがあるカフには気体が残っている。本発明では、この点に着目し、この判別をカフ10の内圧を検出することで行っている。
図4A及び図4Bは、カフ圧設定動作を説明するためのグラフである。
【0059】
まず、利用者によりカフ10が患者の気管に装着される。利用者は、カフ10を装着すると、入力操作部114を用いてカフ圧を設定する。入力操作部114は利用者により設定されたカフ圧の設定値を制御部へ出力する。
具体的には、カフの装着直後に、制御部111は、カフ圧検出部113によりカフの内圧を検出し(ステップ100)、検出したカフの内圧が、適正圧力(約2.67kPa(20mmHg)〜約3.33kPa(25mmHg))よりも小さい第1の圧力である約1.33kPa(10mmHg)以下であるときには、未使用のカフ、すなわちカフの表面にしわが生じている可能性があると判別し、カフの内圧の最大圧力が適正圧力(約2.67kPa(20mmHg)〜約3.33kPa(25mmHg))を大きく超える第2の圧力である約13.33kPa(100mmHg)になるように、すなわち最大圧力を初期加圧値とするようにカフ圧調整部120を設定する(ステップ100a)。一方、ステップ100で検出したカフの内圧が、第1の圧力である約1.33kPa(10mmHg)を超えるときには、既に使用したことがあるカフ、すなわちしわが生じる可能性がないと判別し、例えばカフの内圧の最大圧力が適正圧力の範囲内の最大値である約3.33kPa(25mmHg)とするようにカフ圧調整部120を設定する(ステップ100b)。
制御部111は、設定されたカフ圧に基き、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を急速に加圧する(ステップS101)。また、制御部111は、時間計測部117を参照して時間情報を取得し、取得した時間情報に基き加圧開始からの経過時間を計測する。ここで、図4Aはステップ100において既に使用済みカフと判別され、ステップ100bによって設定された場合の加圧パターンであり、図4Bはステップ100において未使用カフと判別され、ステップ100aによって設定された場合の加圧パターンである。
【0060】
制御部111は、計測した経過時間に基き、加圧開始より一定時間が経過したと判定すると、カフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得すると、カフ圧を検出し(ステップS102)、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。なお、「一定時間」とは、a時間、a´時間(図4A、図4B参照)未満の値である。
【0061】
制御部111は、カフ圧検出部113からカフ圧を取得すると、取得したカフ圧に基きカフ10及びこのカフ10に通じる気体供給チューブ125の容積を推定する。制御部111は、推定した容積に応じて製品A〜Cのうち何れの製品が用いられているかを判定する。制御部111は、判定結果に基き、記憶部112に記憶された複数の加圧パラメータから現在用いられている製品に適した加圧パラメータを選択し、選択した加圧パラメータを設定する。ここで、「製品」とは、例えば、カフ10及び気体供給チューブ125を指す。
【0062】
例えば、制御部111は、取得したカフ圧が圧力Aであるとき、製品Aが用いられていると判定し、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品A用加圧パラメータAを選択して設定する(ステップS103)。
【0063】
ここで、「加圧パラメータ」とは、製品種類に応じて個々に設定された、カフ圧設定動作に要する加圧時間(図4Aのa時間、図4Bのa´時間)及び減圧時間(図4Aのc時間、図4Bのc´時間)やカフ圧等に関するパラメータをいうものとする。カフ10及び気体供給チューブ125等は、製品によって例えば形状、長さ及び容積等が異なる。そのため制御部111は、ステップS103で製品Aのカフ10及び気体供給チューブ125等に適した加圧パラメータAを設定すると、以後、この加圧パラメータAに基きカフ圧設定動作を行う。これにより、個々のカフ10及び気体供給チューブ125等に応じたカフ圧の調整を行うことができる。なお、本実施形態では3種類の加圧パラメータA〜Cを設定可能としているがこれに限定されず、複数の製品に応じて複数のパラメータを設定し、記憶部112に予め記憶しておくことができる。
【0064】
一方、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が圧力Bであるとき、製品Bが用いられていると判定し、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品B用加圧パラメータBを選択して設定する(ステップS104)。また、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が圧力Cであるとき、製品Cが用いられていると判定し、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品C用加圧パラメータCを選択して設定する(ステップS105)。
【0065】
引き続き、制御部111は、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧している。制御部111はまた、所定時間毎にカフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得すると、カフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が最大圧力に到達したかどうかを判定する。
【0066】
ここで、「最大圧力」とは、一時的な加圧では人体に影響を与えず、カフ10の薄肉化や劣化が生じ難い程度における最大の圧力をいう。最大圧力は、例えば、約4.00kPa(30mmHg)〜約5.33kPa(40mmHg)の範囲内である。
【0067】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した加圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が最大圧力に到達する前にa時間、乃至a´時間(図4A、図4B参照)が経過したかどうかを判定する(ステップS106)。
【0068】
ここで、「a時間」、乃至「a´時間」とは、例えば、正常なカフ10が加圧開始から最大圧力到達までにかかると想定される時間であり、各加圧パラメータA〜Cによって異なる値が設定されてもよい。
【0069】
制御部111は、カフ圧が最大圧力に到達する前にa時間乃至a´時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS107)。
【0070】
ここで、「カフ圧が最大圧力に到達する前にa時間乃至a´時間が経過した」場合とは、カフ圧がある程度上昇するもののその上昇の速度が通常より遅い場合である。このような場合とは、例えばカフ10の薄肉化及び破損や気体供給チューブ125の破損によりカフ10から気体が漏れ易くなっている状態や、カフ10のたるみによりカフ10の容積が増加している状態や、挿管チューブ1やカニューレ9が破損して収縮することによりその分カフ10が膨張している状態等であると想定される。このような場合、分泌物が気管へと流入し易くなり、VAPの原因となる。そこで、報知部116を用いて利用者に異常を報知することにより、利用者はカフ10、気体供給チューブ125又は挿管チューブ1やカニューレ9等を交換する等対処することができる。なお、利用者へのカフ10等の異常の報知は、報知部116のみにより行うものとは限定されず、表示部115による表示とともに行ってもよい。この点については以下に説明する報知についても同様である。
【0071】
制御部111は、加圧ポンプ126を引き続き駆動してカフ10を加圧している。制御部111は、a時間乃至a´時間が経過する前にカフ圧が最大圧力に到達したと判定すると(ステップS108)、加圧が完了したと判定して加圧ポンプ126の駆動を停止し、加圧ポンプ126の駆動停止後b時間、乃至b´時間(図4A、図4B参照)待機する(ステップS109)。ここで、「b時間」とは、例えば約0.5〜30秒であり、「b´時間」とは、例えば約0.1〜2秒であり、各加圧パラメータA〜Cによって異なる値が設定されている。
【0072】
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放してカフ10を低速で減圧するとともに(ステップS110)、減圧開始からの経過時間を計測する。なお、制御部111は、排気バルブ122の開放時間、タイミング又は開口面積等を制御することにより、カフ10の減圧速度を調整することができる。
【0073】
このように減圧を低速で行う理由は、カフ10を急速に減圧すると、カフ10の外周面と気管の内壁との間に隙間が生じてカフ上部に貯留した分泌物が気管内に極めて流入し易く、VAPの原因となるので、これを防止するためである。一方、加圧を最高速度程度で行う理由は、一時的な加圧では人体に影響を与えない程度のカフ圧で早急に気管を閉塞することにより分泌物の気管への流入の早急な防止を図ることによりVAPの予防を図るためである。また、製品間や患者間等での加圧にかかる時間のばらつきを吸収するためである。
【0074】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した減圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が適正圧力に到達する前にc時間乃至c´時間(図4A、図4B参照)が経過したかどうかを判定する(ステップS111)。ここで、「適正圧力」とは、約2.67kPa(20mmHg)〜約3.33kPa(25mmHg)の範囲で各加圧パラメータA〜Cにより異なる値に設定されている。
【0075】
また、「c時間」乃至「c´時間」とは、正常なカフ10が減圧開始から適正圧力到達までにかかると想定される時間である。「c時間」とは、例えば約10〜30秒であり、「c´時間」とは、例えば約2〜22秒であり、各加圧パラメータA〜Cによって異なる値が設定されてもよい。
【0076】
制御部111は、カフ圧が適正圧力に減圧される前にc時間乃至c´時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ圧調整部120等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS112)。
【0077】
ここで、「カフ圧が適正圧力に減圧される前にc時間乃至c´時間が経過した」場合とは、カフ圧がある程度低下するもののその低下の速度が通常より遅い場合である。このような場合とは、カフ圧調整部120が故障している状態等であると想定される。そこで、報知部116を用いて利用者に異常を報知することにより、利用者は、気管における狭窄等の発症していない部位にカフ10を移動したり、カフ圧調整部120を交換する等対処することができる。なお、患者の姿勢によっては気管が圧迫されて気管の径等が通常より縮小することがある。このような場合にもアラーム音が出力されるおそれがあることから、利用者は、カフ圧制御装置100の使用前に患者の姿勢を通常の姿勢にしておくか、アラーム音出力後に患者の姿勢を確認するとよい。
【0078】
制御部111は、排気バルブ122を引き続き開放してカフ10を減圧している。制御部111は、c時間乃至c´時間が経過する前にカフ圧が適正圧力に到達したと判定すると(ステップS113)、減圧が完了したと判定して排気バルブ122を閉塞する。また、制御部111は、例えば、加圧時の流量や減圧時の流量を、使用製品の基本流量として記憶部112に記録する(ステップS114)。
なお、このように記憶部112に記録される情報(加圧時の流量や減圧時の流量)は患者ごとに異なるので、日付等とともに、この情報を各患者に対応付けて記録した方がより好ましい。その場合に、例えばバーコード読み取り装置をこのカフ圧制御装置に接続可能として、バーコード読み取り装置を使って患者のICタグより患者の情報を読み取り、加圧時の流量や減圧時の流量等の情報をその患者情報に対応付けて記憶部112に記録するようにすればよい。これにより、患者にカフ圧を適正に設定した記録など、看護処置履歴を適切に設定することが可能となる。患者がICカードに患者情報を有するような場合には、ICカードリーダ等を用いればよい。
【0079】
以上説明したカフ圧設定動作(ステップS101〜ステップS114)により、カフ圧が適正圧力に設定される。続いて、制御部111は、設定されたカフ圧を適正圧力にて維持するためのカフ圧維持動作(ステップS115〜ステップS125)に移行する。
【0080】
まず、制御部111は、時間計測部117から取得した時間情報に基き、所定時間毎にカフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得するとカフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。制御部111は、カフ圧検出部113から所定時間毎に取得するカフ圧に関する情報を、時間計測部117から取得した時間情報に関連付けたログとして、カフ圧の経時変化を記憶部112に記録し始める(ステップS115)。以後の説明において、この互いに関連付けられて記録されたカフ圧に関する情報及び時間情報を含むログを「カフ圧維持記録」と記述することがある。
【0081】
続いて、制御部111は、カフ圧制御装置100の動作モードを設定する(ステップS116)。動作モードは、予め設定されて記憶部112に記憶されていてもよいし、利用者により入力操作部114を用いて設定させてもよい。あるいは、予め患者に関する情報等が記憶部112に記録されている場合は、この情報を基に制御部111により設定されてもよい。ここで、「動作モード」とは、患者の種類や人工呼吸器の使用状態に応じて、カフ圧の加圧及び減圧を高速で行ったり低速で行ったりする設定等をいう。本実施形態では、安静モード、通常モード、活動モード及びカフ異常検出モードの4つのモードを設定可能としている。
【0082】
制御部111は、安静モードが設定されたと判定すると、安静モード時のカフ圧維持動作を行う(ステップS117)。制御部111は、通常モードが設定されたと判定すると、通常モード時のカフ圧維持動作を行う(ステップS118)。制御部111は、活動モードが設定されたと判定すると、活動モード時のカフ圧維持動作を行う(ステップS119)。制御部111は、カフ異常検出モードが設定されたと判定すると、カフ異常検出動作を行う(ステップS120)。なお、これら各モード設定時のカフ圧制御装置100の詳細な動作は後で説明する。
【0083】
続いて、制御部111は、記憶部112からカフ圧維持記録を取得する。制御部111は、取得したカフ圧維持記録に基き、カフ10の交換時期を推定する(ステップS121)。カフ10の交換時期は、製品A〜Cによって異なる値が設定されている。カフ10の交換時期は、例えば、カフ10の使用時間や、加圧ポンプ126の駆動回数(送気回数)等に基いて設定される。
【0084】
例として、制御部111は、カフ10の使用時間に基きカフ10の交換時期を判定するものとする。制御部111は、カフ圧維持記録に基き、カフ10の使用時間が所定時間を超過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、所定時間の超過を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS122)。
【0085】
このように、カフ10に実体的な異常が生じていないにも拘らず利用者に交換時期を報知するのは、次のような理由による。すなわち、カフ10は、加圧による膨張と減圧による収縮が繰り返し行われることで次第に薄肉化するとともにたるみ、容積が増加する。このようにカフ自体が経時変化することにより、カフ圧が低下して気管内への分泌物の流入が起こり易くなり、VAPの原因となる。本実施形態のカフ圧制御装置100によれば、利用者に交換時期を報知することで、利用者に経時変化しつつあるカフ10の予めの交換を促すことができる。これにより、利用者が経時変化しつつあるカフ10を破損前に交換することができるので、効果的にVAPの発症の防止を図ることができる。
【0086】
制御部111は、加圧ポンプ126の駆動回数(送気回数)に基きカフ10の交換時期を判定するものとしてもよい。或いは、交換時期の判定は、駆動回数(送気回数)ばかりでなく、排気回数や装置自体のリーク量も考慮に入れた計算をしてもよい。
図5は、経過時間と送気回数との関係を概略的に示すグラフである。
同図に示すように、予め加圧ポンプ126の駆動回数(送気回数)に上限値が設定される。制御部111は、加圧ポンプ126の駆動回数(送気回数)がこの上限値を超過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力して報知部116にアラーム音を出力させる。
【0087】
一方、制御部111は、ステップS121でカフ10の使用時間の所定時間の超過を判定しないときは、記憶部112からカフ圧維持記録を取得する。制御部111は、取得したカフ圧維持記録に記録されたカフ圧等に基き、カフ10の経時変化の有無を判定する(ステップS123)。
【0088】
具体的には、制御部111は、カフ圧維持記録に記録されたカフ圧の増加や減少の幅が通常より大きいと判定すると、カフ10の経時変化に異常があると判定し、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10の経時変化の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS124)。
【0089】
このステップによっても、カフ10に実体的な異常が生じていないにも拘らず利用者にカフ10の経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフ10の予めの交換を促すことができる。これにより、利用者が経時変化しつつあるカフ10を破損前に交換することができるので、効果的にVAPの発症の防止を図ることができる。
【0090】
一方、制御部111は、カフ10の経時変化の異常を判定しないときは、カフ圧維持記録に基き、カフ10の経時変化に関する表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部115へ出力する。表示部115は、制御部111から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、カフ10の経時変化を表示画面に表示する。例えば、表示部115は、カフ10の経時変化をグラフとして表示画面に表示する(ステップS125)。そして、制御部111は、ステップS116からの処理を繰り返す。
【0091】
次に、上記カフ圧維持動作のフローにおける、各モード時のカフ圧制御装置100の動作(ステップS117〜ステップS120)についてそれぞれ説明する。カフ圧制御のモードを可変とすることで、例えば患者の状態等に応じてカフ圧の調整感度を制御することができる。
【0092】
[(2)安静モード時のカフ圧維持動作]
まず、安静モード時のカフ圧維持動作(図3のステップS117)について説明する。ここで、「安静モード」とは、患者がベッド上で身体を殆ど動かすことがないとき等の安静時に、加圧ポンプ126を低速で駆動して低速で圧力調整を行うモードをいう。また、カフ圧制御装置100を安静モードで動作させることにより、カフ10の経時変化やカフ圧調整部120及び電池等の消耗の抑制を図ることができる。カフ10の経時変化やカフ圧調整部120の消耗の抑制は、例えば、各部品を容易に交換することのできない在宅介護時等に有用である。電池等の消耗の抑制は、例えば、外出時、停電時又は災害時等に有用である。
【0093】
図6は、安静モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
本フローチャートに示される安静モード時のカフ圧維持動作には、カフ圧増加時の減圧動作(ステップS201〜ステップS206)と、カフ圧低下時の加圧動作(ステップS207〜ステップS212)とが含まれる。
【0094】
まず、カフ圧増加時の減圧動作(ステップS201〜ステップS206)について説明する。
制御部111は、ステップS115から引き続き、カフ圧の経時変化を記憶部112に記録している。これとともに、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が設定上限値を超過したかどうかを判定する(ステップS201)。
【0095】
ここで、「設定上限値」とは、例えば約3.33kPa(25mmHg)である。また、カフ圧の設定上限値を超過は、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)に伴い気管の径が縮小し、その結果カフ圧が上昇した場合に発生しうる。
【0096】
制御部111は、カフ圧が設定上限値を例えば5秒程度の一定時間連続して超過していないと判定すると(ステップS201でNO)、カフ圧低下時の加圧動作(ステップS207〜ステップS212)の処理に移行する。このように一定時間連続して超過していないかを判定することで、体動などによる一時的な超過による誤判定を防止することができる。
【0097】
一方、制御部111は、カフ圧が設定上限値を超過したと判定すると(ステップS201でYES)、このカフ圧に関する情報を、カフ圧の経時変化として記憶部112に記録する(ステップS202)。
【0098】
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放し、カフ10に低速減圧処理を行うとともに(ステップS203)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、減圧開始からの経過時間を計測する。なお、低速処理時の送気量は、例えば、通常モード時の通常処理時の送気量の約2分の1とすればよい。
【0099】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した減圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が設定上限値に到達する前に所定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS204)。
【0100】
制御部111は、カフ圧が設定上限値に減圧される前に所定時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS205)。
【0101】
制御部111は、カフ圧が設定上限値に到達するまで排気バルブ122を引き続き開放してカフ10を減圧している。制御部111は、所定時間が経過する前にカフ圧が設定上限値に到達したと判定すると(ステップS206)、減圧が完了したと判定して排気バルブ122を閉塞する。
【0102】
以上説明したカフ圧増加時の減圧動作(ステップS201〜ステップS206)により、設定上限値を超過したカフ圧が設定上限値まで減圧される。このように、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)に伴い気管の径が縮小してカフ圧が上昇した場合等に速やかに追従し、所望のカフ圧を維持することができるとともに、異常がある場合には利用者に異常を報知することができる。
【0103】
続いて、制御部111は、カフ圧低下時の加圧動作(ステップS207〜ステップS212)に移行する。
制御部111は、引き続き、カフ圧の経時変化を記憶部112に記録している。これとともに、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が設定下限値未満となったかどうかを判定する(ステップS207)。
【0104】
ここで、「設定下限値」とは、例えば約2.67kPa(20mmHg)である。また、設定下限値未満のカフ圧は、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)に伴い気管の径が拡大し、その結果カフ圧が低下した場合に発生しうる。
【0105】
制御部111は、カフ圧が設定下限値未満となっていないと判定すると(ステップS207でNO)、ステップS121の処理に移行する。
【0106】
一方、制御部111は、カフ圧が設定下限値未満となったと判定すると(ステップS207でYES)、このカフ圧に関する情報を、カフ圧の経時変化として記憶部112に記録する(ステップS208)。
【0107】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を低速で駆動し、カフ10に低速加圧処理を行うとともに(ステップS209)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、加圧開始からの経過時間を計測する。
【0108】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した加圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が設定下限値に到達する前に所定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS210)。
【0109】
制御部111は、カフ圧が設定下限値に加圧される前に所定時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS211)。
【0110】
制御部111は、カフ圧が設定下限値に到達するまで加圧ポンプ126を引き続き駆動してカフ10を加圧している。制御部111は、所定時間が経過する前にカフ圧が設定下限値に到達したと判定すると(ステップS212)、加圧が完了したと判定して加圧ポンプ126の駆動を停止する。そして、制御部111は、ステップS121の処理に移行する。
【0111】
以上説明したカフ圧低下時の加圧動作(ステップS207〜ステップS212)により、設定下限値未満に低下したカフ圧が設定下限値まで加圧される。このように、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)に伴い気管の径が拡大してカフ圧が低下した場合等に速やかに追従し、所望のカフ圧を維持することができるとともに、異常がある場合には利用者に異常を報知することができる。
【0112】
[(3)通常モード時のカフ圧維持動作]
次に、通常モード時のカフ圧維持動作(図3のステップS118)について説明する。ここで、「通常モード」とは、例えば、患者がベッド上で身体を動かしたり、歩行や車椅子で移動をするような場合等の通常時に、加圧ポンプ126を通常速度で駆動して通常速度で圧力調整を行うモードをいう。なお、以下の説明において、上述の処理と同様の処理には同様の符号を付して説明を省略または簡略化するものとする。
【0113】
図7は、通常モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
制御部111は、ステップS201〜ステップS202の処理を行う。なお、通常モード時におけるステップS201においては、カフ圧が設定上限値を例えば3秒程度の一定時間連続して超過していないか判定すればよい。
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放し、カフ10に通常減圧処理を行うとともに(ステップS303)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、減圧開始からの経過時間を計測する。
引き続き、制御部111は、ステップS204〜ステップS208の処理を行う。
【0114】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を通常速度で駆動し、カフ10に通常加圧処理を行うとともに(ステップS309)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、加圧開始からの経過時間を計測する。
引き続き、制御部111は、ステップS210〜ステップS212の処理を行う。
【0115】
[(4)活動モード時のカフ圧維持動作]
次に、活動モード時のカフ圧維持動作(図3のステップS119)について説明する。ここで、「活動モード」とは、例えば、患者が人工呼吸器を装着したまま呼吸リハビリテーションやスクイージングを行う場合や入浴や運動を行うような場合等の活動時に、加圧ポンプ126を高速で駆動して高速で圧力調整を行うモードをいう。患者の活動時には患者の姿勢が急激に変化することがあり、これに伴い気管の径等が急激に変化することがある。また、呼吸リハビリテーションやスクイージングにおいても、気管の径等が急激に変化することがある。この気管の径等の急激な変化に伴い、カフ圧もまた急激に変化するおそれがある。このような患者の活動時に高速でカフ圧を調整することにより、気管への分泌物の流入の防止を図ってVAPの防止を図ることができる。
【0116】
図8は、活動モード時のカフ圧維持動作を示すフローチャートである。
制御部111は、ステップS201〜ステップS202の処理を行う。なお、活動モード時におけるステップS201においては、カフ圧が設定上限値を例えば1秒程度の一定時間連続して超過していないか判定すればよい。このようにモード毎に適宜連続超過の時間を設定することで、より確実に誤判定を防止することができる。
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放し、カフ10に高速減圧処理を行うとともに(ステップS403)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、減圧開始からの経過時間を計測する。なお、高速処理時の送気量は、例えば、通常モード時の通常処理時の送気量の約2倍〜3倍程度とすればよい。引き続き、制御部111は、ステップS204〜ステップS208の処理を行う。
【0117】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を高速で駆動し、カフ10に高速加圧処理を行うとともに(ステップS409)、時間計測部117から取得した時間情報に基き、加圧開始からの経過時間を計測する。引き続き、制御部111は、ステップS210〜ステップS212の処理を行う。
【0118】
以上説明した(2)〜(4)のカフ圧維持動作によれば、カフ圧制御装置100をカフ10に常時接続して所定時間毎にカフ圧検出部113がカフ圧を検出することにより、例えば、患者の姿勢の変化(例えば、寝返り等の体動)等に伴う気管の径等の変化に起因するカフ圧の変化に速やかに追従し、所望のカフ圧を維持することができるとともに、異常がある場合には利用者に異常を報知することができる。これにより、効果的にカフ圧の不足に起因するVAPの発症の抑制を図ることができる。
【0119】
[(5)カフ異常検出動作]
次に、カフ異常検出動作(図3のステップS120)について説明する。ここで、「カフ異常検出」とは、カフ圧維持記録に基き、カフ10の経時変化、気体供給チューブ125、挿管チューブ1やカニューレ9又はカフ圧調整部120等の消耗といった人工呼吸器の異常や、患者の気管の狭窄や変形等の異常等を検出するモードをいう。
図9は、カフ異常検出動作を示すフローチャートである。
【0120】
制御部111は、ステップS115から引き続き、カフ圧の経時変化を記憶部112に記録している(ステップS501)。
【0121】
続いて、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が所定値(例えば約2.80kPa(21mmHg))未満の場合には、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧し、カフ圧がこの所定値より大きい場合には、排気バルブ122を開放してカフ10を減圧する。
【0122】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が上記所定値に到達したかどうかを判定する。制御部111は、カフ圧が上記所定値に到達したと判定すると、加圧ポンプ126の駆動を停止又は排気バルブ122を閉塞する(ステップS502)。
【0123】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧する。制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が所定値(例えば約3.20kPa(24mmHg))に到達したかどうかを判定する。制御部111は、カフ圧がこの所定値に到達したと判定すると、記憶部112のカフ圧維持記録に基き、カフ圧が約2.80kPa(21mmHg)から約3.20kPa(24mmHg)になるまでにカフ10に供給した気体の流量値を測定し、この流量値を記憶部112に記録する(ステップS503)。
【0124】
続いて、制御部111は、記憶部112を参照し、「初回流量記録」に関する情報が関連付けられて記録された流量値の有無を判定することにより、今回の測定が初回の測定であるかどうかを判定する(ステップS504)。
【0125】
制御部111は、「初回流量記録」に関する情報が関連付けられて記録された流量値が無いと判定すると、今回の測定が初回の測定であると判定する(ステップS504でYES)。そして、制御部111は、記憶部112に記録した流量値に「初回流量記録」に関する情報を関連付けて追加記録する(ステップS505)。そして、制御部111は、ステップS121の処理に移行する。
【0126】
一方、制御部111は、「初回流量記録」に関する情報が関連付けられて記録された流量値が有ると判定すると、今回の測定が初回の測定でないと判定する(ステップS504でNO)。そして、制御部111は、測定した流量値と、記憶部112に「初回流量記録」に関する情報が関連付けられて記録された流量値との差を得る(ステップS506)。制御部111は、得られた値が所定範囲内であると判定すると、カフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化が許容範囲内であると推定し、ステップS121の処理に移行する。
【0127】
一方、制御部111は、得られた値が所定範囲外であると判定すると、カフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化が異常であると推定し、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS507)。
【0128】
これにより、カフ10に実体的な異常が生じていないにも拘らず利用者にカフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフ10の予めの交換を促すことができる。これにより、利用者が経時変化しつつあるカフ10を破損前に交換することができるので、効果的にVAPの発症の防止を図ることができる。
【0129】
[(6)カフ圧設定動作及びカフ異常検査動作]
図10は、カフ圧設定動作及びカフ異常検査動作を示すフローチャートである。
本フローチャートには、カフ圧設定動作(ステップS601〜ステップS612)と、カフ異常検査動作(ステップS613〜ステップS617)とが含まれる。
【0130】
まず、カフ圧設定動作(ステップS601〜ステップS612)について説明する。このカフ圧設定動作(ステップS601〜ステップS612)は、(1)のカフ圧設定動作におけるステップS102〜ステップS113にそれぞれ対応している。
【0131】
まず、利用者は、入力操作部114を用いて何れの製品A〜Cが使用されているかを選択し、入力操作部114は、利用者から受け付けた製品選択結果を制御部111へ出力する(ステップS601)。制御部111は、入力操作部114から取得した製品選択結果に基き、記憶部112に記憶された複数の加圧パラメータから現在用いられている製品に適した加圧パラメータを選択し、選択した加圧パラメータを設定する。
【0132】
制御部111は、入力操作部114から取得した製品選択結果が製品Aであると判定すると、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品A用加圧パラメータAを選択して設定する(ステップS602)。一方、制御部111は、入力操作部114から取得した製品選択結果が製品Bであると判定すると、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品B用加圧パラメータBを選択して設定する(ステップS603)。また、制御部111は、入力操作部114から取得した製品選択結果が製品Cであると判定すると、記憶部112に記憶された加圧パラメータの中から製品C用加圧パラメータCを選択して設定する(ステップS604)。
【0133】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を急速に加圧する。制御部111は、時間計測部117から取得した時間情報に基き、加圧開始からの経過時間を計測する。また、制御部111は、所定時間毎にカフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得すると、カフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が最大圧力に到達したかどうかを判定する。
【0134】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基いて計測した加圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が最大圧力に到達する前に所定時間(例えば、図4のa時間)が経過したかどうかを判定する(ステップS605)。
【0135】
制御部111は、カフ圧が最大圧力に到達する前に所定時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS606)。
【0136】
制御部111は、加圧ポンプ126を引き続き駆動してカフ10を加圧している。制御部111は、所定時間が経過する前にカフ圧が最大圧力に到達したと判定すると(ステップS607)、加圧が完了したと判定して加圧ポンプ126の駆動を停止し、加圧ポンプ126の駆動停止後約30秒程度(図4のb時間に対応)待機する(ステップS608)。
【0137】
続いて、制御部111は、排気バルブ122を開放してカフ10を低速で減圧するとともに(ステップS609)、減圧開始からの経過時間を計測する。
【0138】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧と、時間計測部117から取得した時間情報に基き計測した減圧開始からの経過時間とに基き、カフ圧が適正圧力に到達する前に所定時間(例えば、図4のc時間)が経過したかどうかを判定する(ステップS610)。
【0139】
制御部111は、カフ圧が適正圧力に減圧される前に所定時間が経過したと判定すると、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ圧調整部120の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS611)。
【0140】
制御部111は、排気バルブ122を引き続き開放してカフ10を減圧している。制御部111は、所定時間が経過する前にカフ圧が適正圧力に到達したと判定すると(ステップS612)、減圧が完了したと判定して排気バルブ122を閉塞する。
【0141】
以上説明したカフ圧設定動作(ステップS601〜ステップS612)により、カフ圧が適正圧力に設定される。続いて、制御部111は、カフ異常検査動作(ステップS613〜ステップS617)に移行する。このカフ異常検査動作中、ステップS614〜ステップS617は、(5)のカフ異常検出動作におけるステップS502、S503、S506、S507にそれぞれ対応している。
【0142】
まず、利用者は、入力操作部114を用いてカフ異常検査の有無を選択し(ステップS613)、入力操作部114は、利用者から受け付けたカフ異常検査選択結果を制御部111へ出力する。制御部111は、入力操作部114から取得したカフ異常検査選択結果が無であると判定すると、フローを終了する。
【0143】
一方、制御部111は、入力操作部114から取得したカフ異常検査選択結果が有であると判定すると、時間計測部117から取得した時間情報に基き、所定時間毎にカフ圧検出部113にカフ圧検出命令を出力する。カフ圧検出部113は、制御部111よりカフ圧検出命令を取得するとカフ圧を検出し、検出したカフ圧を制御部111へ出力する。
【0144】
続いて、制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が所定値(例えば約2.80kPa(21mmHg))未満の場合には、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧し、カフ圧がこの所定値より大きい場合には、排気バルブ122を開放してカフ10を減圧する。
【0145】
制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が上記所定値に到達したかどうかを判定する。制御部111は、カフ圧が上記所定値に到達したと判定すると、加圧ポンプ126の駆動を停止又は排気バルブ122を閉塞する(ステップS614)。
【0146】
続いて、制御部111は、加圧ポンプ126を駆動してカフ10を加圧する。制御部111は、カフ圧検出部113から取得したカフ圧が所定値(例えば約3.20kPa(24mmHg))に到達したと判定する。制御部111は、カフ圧がこの所定値に到達したと判定すると、カフ圧が約2.80kPa(21mmHg)から約3.20kPa(24mmHg)になるまでにカフ10に供給した気体の流量値を測定する(ステップS615)。
【0147】
続いて、制御部111は、測定した流量と、現在使用中の製品A、B又はCにおけるカフ10の容積との差を得る(ステップS616)。制御部111は、得られた値が所定範囲以内であると判定すると、カフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化が許容範囲内であると推定し、フローを終了する。なお、各製品A〜Cのカフ10の容積は予め記憶部112に記録しておけばよい。
【0148】
一方、制御部111は、得られた値が所定範囲外であると判定すると、カフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化が異常であると推定し、報知部116に報知命令を出力する。報知部116は、制御部111より報知命令を取得すると、カフ10等の異常を利用者に報知するアラーム音を出力する(ステップS617)。
【0149】
これにより、カフ10に実体的な異常が生じていないにも拘らず利用者にカフ10及び気体供給チューブ125の容積の経時変化の異常を報知するので、利用者に経時変化しつつあるカフ10の予めの交換を促すことができる。これにより、利用者が経時変化しつつあるカフ10を破損前に交換することができるので、効果的にVAPの発症の防止を図ることができる。
【0150】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が考えられる。
【0151】
例えば、カフ圧制御装置100に、カフ漏れによるリーク等を感知する低圧アラーム機能や、電池の交換時期が表示可能な電池残量警報機能等の機能を設けてもよい。これにより、カフ圧の不足等を早期に利用者に報知することができ、カフ圧の不足等に起因したVAPの発症の防止を図ることができる。
【0152】
本実施形態では、動作モードは、予め設定されて記憶部112に記憶されていてもよいし、利用者により入力操作部114を用いて設定させてもよく、予め患者に関する情報等が記憶部112に記録されている場合は、この情報を基に制御部111により設定されてもよいとしたが、これに限定されない。所定時間毎にカフ圧検出部113により検出されるカフ圧に基き、制御部111がモード変更をする構成としてもよい。例えば、制御部111は、安静モード又は通常モード設定時に一定期間急激なカフ圧変化が続いた場合、活動モードに設定を切り替えればよい。あるいは、制御部111は、活動モード設定時に一定期間カフ圧変化がなかった場合、通常モードに設定を切り替え、さらにカフ圧変化のない状態が続けば安静モードに設定を切り替えればよい。
【符号の説明】
【0153】
10…カフ
100…カフ圧制御装置
110…制御系
111…制御部
113…カフ圧検出部
120…カフ圧調整部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフを加圧するカフ圧調整部と、
前記カフの内圧を検出するカフ圧検出部と、
前記カフ圧検出部による検出結果に基き、前記カフの内圧が所定の範囲になるように前記カフ圧調整部を制御し、前記カフの内圧が第1の時間内に前記所定の範囲にならないときには異常を報知する制御部とを具備し、
前記カフの装着直後に、前記制御部は、前記カフ圧検出部によりカフの内圧を検出し、前記検出したカフの内圧が前記所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるように前記カフ圧調整部を制御する
カフ圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカフ圧制御装置であって、
前記制御部は、装着直後の所定の操作により前記カフ圧調整部によって前記カフへの加圧を開始し、開始してから一定時間後に前記カフ圧検出部により検出される前記カフの内圧によって前記カフ及び前記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、推定した容積に応じて少なくとも前記第1の時間を設定する
カフ圧制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のカフ圧制御装置であって、
前記カフ圧検出部により検出された前記カフの内圧の経時変化を記憶する記憶部をさらに具備し、
前記制御部は、前記記憶部により記憶された前記カフの内圧の経時変化に異常があるときには異常を報知する
カフ圧制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のカフ圧制御装置であって、
前記記憶部は、前記カフの使用時間を記憶し、
前記制御部は、前記記憶部により記憶された前記カフの使用時間に基き前記カフの交換時期を推定し、推定した交換時期を報知する
カフ圧制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載のカフ圧制御装置であって、
前記制御部は、前記カフの内圧を一定量変化させるのに必要な気体の容積によって前記カフ及び前記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、推定した容積の経時変化に異常があるときには異常を報知する
カフ圧制御装置。
【請求項6】
カフの内圧を制御するカフ圧制御方法であって、
前記カフの装着直後に、前記カフの内圧を検出し、
前記検出したカフの内圧が所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるようにカフを加圧し、
その後、前記カフの内圧を検出し、
検出結果に基き、前記カフの内圧が前記所定の範囲になるようにカフを加圧し、
前記カフの内圧が第1の時間内に前記所定の範囲にならないときには異常を報知する
カフ圧制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のカフ圧制御方法であって、
装着直後の所定の操作により前記カフへの加圧を開始し、
開始してから一定時間後に前記カフ圧検出部により検出される前記カフの内圧によって前記カフ及び前記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、
推定した容積に応じて少なくとも前記第1の時間を設定する
カフ圧制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載のカフ圧制御方法であって、
前記検出された前記カフの内圧の経時変化を記憶し、
前記記憶された前記カフの内圧の経時変化に異常があるときには異常を報知する
カフ圧制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載のカフ圧制御方法であって、
前記カフの使用時間を記憶し、
前記記憶された前記カフの使用時間に基き前記カフの交換時期を推定し、
推定した交換時期を報知する
カフ圧制御方法。
【請求項10】
請求項7に記載のカフ圧制御方法であって、
前記カフの内圧を一定量変化させるのに必要な気体の容積によって前記カフ及び前記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、
推定した容積の経時変化に異常があるときには異常を報知する
カフ圧制御方法。
【請求項1】
カフを加圧するカフ圧調整部と、
前記カフの内圧を検出するカフ圧検出部と、
前記カフ圧検出部による検出結果に基き、前記カフの内圧が所定の範囲になるように前記カフ圧調整部を制御し、前記カフの内圧が第1の時間内に前記所定の範囲にならないときには異常を報知する制御部とを具備し、
前記カフの装着直後に、前記制御部は、前記カフ圧検出部によりカフの内圧を検出し、前記検出したカフの内圧が前記所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるように前記カフ圧調整部を制御する
カフ圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカフ圧制御装置であって、
前記制御部は、装着直後の所定の操作により前記カフ圧調整部によって前記カフへの加圧を開始し、開始してから一定時間後に前記カフ圧検出部により検出される前記カフの内圧によって前記カフ及び前記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、推定した容積に応じて少なくとも前記第1の時間を設定する
カフ圧制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のカフ圧制御装置であって、
前記カフ圧検出部により検出された前記カフの内圧の経時変化を記憶する記憶部をさらに具備し、
前記制御部は、前記記憶部により記憶された前記カフの内圧の経時変化に異常があるときには異常を報知する
カフ圧制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のカフ圧制御装置であって、
前記記憶部は、前記カフの使用時間を記憶し、
前記制御部は、前記記憶部により記憶された前記カフの使用時間に基き前記カフの交換時期を推定し、推定した交換時期を報知する
カフ圧制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載のカフ圧制御装置であって、
前記制御部は、前記カフの内圧を一定量変化させるのに必要な気体の容積によって前記カフ及び前記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、推定した容積の経時変化に異常があるときには異常を報知する
カフ圧制御装置。
【請求項6】
カフの内圧を制御するカフ圧制御方法であって、
前記カフの装着直後に、前記カフの内圧を検出し、
前記検出したカフの内圧が所定の範囲よりも小さい第1の圧力以下のときには、前記カフの内圧が前記所定の範囲を超える第2の圧力になるようにカフを加圧し、
その後、前記カフの内圧を検出し、
検出結果に基き、前記カフの内圧が前記所定の範囲になるようにカフを加圧し、
前記カフの内圧が第1の時間内に前記所定の範囲にならないときには異常を報知する
カフ圧制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のカフ圧制御方法であって、
装着直後の所定の操作により前記カフへの加圧を開始し、
開始してから一定時間後に前記カフ圧検出部により検出される前記カフの内圧によって前記カフ及び前記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、
推定した容積に応じて少なくとも前記第1の時間を設定する
カフ圧制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載のカフ圧制御方法であって、
前記検出された前記カフの内圧の経時変化を記憶し、
前記記憶された前記カフの内圧の経時変化に異常があるときには異常を報知する
カフ圧制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載のカフ圧制御方法であって、
前記カフの使用時間を記憶し、
前記記憶された前記カフの使用時間に基き前記カフの交換時期を推定し、
推定した交換時期を報知する
カフ圧制御方法。
【請求項10】
請求項7に記載のカフ圧制御方法であって、
前記カフの内圧を一定量変化させるのに必要な気体の容積によって前記カフ及び前記カフに通じる気体供給チューブの容積を推定し、
推定した容積の経時変化に異常があるときには異常を報知する
カフ圧制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−194222(P2011−194222A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27590(P2011−27590)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(510051347)
【出願人】(503172758)株式会社テクノサイエンス (2)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(510051347)
【出願人】(503172758)株式会社テクノサイエンス (2)
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