説明

カプセル内視鏡

【課題】 部材を小型にすることなく被験者の苦痛を軽減して投与することができ、さらに、体内で円滑に移動できるカプセル内視鏡の提供
【解決手段】 変形可能な部位を外形に有するカプセルと、前記部位を変形する変形手段と、を有することを特徴とするカプセル内視鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル内視鏡、詳しくは、外形を変形することができるカプセル形状の内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の内視鏡装置は、先端に撮像素子等を備えた管状の挿入部と、可撓性管により挿入部と連設された操作部、画像処理装置並びに表示装置等を有し、挿入部を被検者の体内に挿入して撮影し、体内における所望の部位を表示装置に映し出すことにより、所望の部位の観察、検査し得るものである。しかし、このような内視鏡装置では、体内を観察している間、挿入部に連設された可撓性管が被験者の喉を通るため、被験者の苦痛が伴うという問題があった。また、挿入部の太さ、長さや複雑な形状等の理由から、熟練した医師や医療技師しか装置の操作、観察や検査等を行うことができなかった。
【0003】
このような事情を鑑み、近年、可撓性管が連設されていないカプセル形状の本体の内部に、撮影光学系を有する固体撮像素子等を収納した超小型の内視鏡、所謂カプセル内視鏡が開発された。このカプセル内視鏡は、体内で撮像した画像データを体内から発信し、体外で受信する無線通信手段を備え、体内の所望の部位を内視鏡から隔離された表示装置に映し出すことにより、臓器の観察や検査等を行うことができる(特許文献1参照)。特に、このカプセル内視鏡は、被験者の喉から挿入された内視鏡が肛門から排泄される間、被験者体内の画像を撮影し続けるため、従来の内視鏡装置では難しかった小腸等の部位の観察も容易に行うことができ、非常に期待されている。
【0004】
ところで、カプセル内視鏡の外形は、被験者の体内を移動する際は流線形が好ましい。複雑な形状であると、カプセル内視鏡が小腸の柔毛に絡まってしまい、カプセル内視鏡の通過時間が遅れたり、消化器官内滞留を起こしてしまう可能性があるからである。また、カプセル内視鏡は、体内の臓器から排泄された水分上を蠕動運動で移動するので、この水分による摩擦抵抗を減らす意味でも流線形が好ましい。
【0005】
一方、被験者が嚥下、排泄する際は極力小さい方が好ましい。カプセル内視鏡は、可撓性管がなくなった分だけ従来の内視鏡装置に比べて被験者の苦痛を軽減することができるが、カプセル内視鏡本体の形状が大きくなってしまうと、結局、嚥下する際被験者に苦痛が伴ってしまう。特に、高齢者や子供は嚥下、排泄力が弱いため、より小型のものが好ましい。
【0006】
カプセル内視鏡の小型化に伴って、それに搭載する部材も小型にしなければならないが、部材の小型化は、高精細な加工技術が必要で技術的に難易度が高まるとともに、歩留まりを低下させてコストアップを招くという問題を有していた。
【特許文献1】特開2001−091860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景から、搭載部材を小型化せずに、カプセル本体のみを小型化したものとして、カプセル中央部が凹んだ形状(ピーナッツ形状ともいう)のカプセル内視鏡が提案されたが、この形状は体内での移動に困難をきたすものであった。また、流線形形状のカプセルは、体内で移動しやすいメリットはあるものの、容積が大きい分だけ、嚥下、排泄しにくく、被験者にとっては苦痛を伴うものであった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、部材を小型にすることなく被験者の苦痛を軽減して投与することができ、さらに、体内では円滑に移動できるカプセル内視鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の手段により達成される。
【0010】
(1)変形可能な部位を外形に有するカプセルと、前記部位を変形する変形手段と、を有することを特徴とするカプセル内視鏡。
【0011】
(2)前記変形手段はカプセルの容積を減少させるように部位を変形することを特徴とする(1)に記載のカプセル内視鏡。
【0012】
(3)前記変形手段はカプセルの容積を膨張させるように部位を変形することを特徴とする(1)に記載のカプセル内視鏡。
【0013】
(4)前記カプセル内視鏡は外部からの信号を受信する受信手段を有し、前記変形手段は前記受信手段によって受信した信号に基づいて作動するものであることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のカプセル内視鏡。
【0014】
(5)前記カプセル内視鏡は、希ガス、窒素ガス、炭酸ガス、酸素ガスのうち少なくとも1つを収納する収納室を有し、前記変形手段は、前記収納室から気体を放出することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のカプセル内視鏡。
【0015】
(6)前記部位は樹脂あるいは金属のうち少なくとも一方により構成されるものであることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか1つに記載のカプセル内視鏡。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カプセル内視鏡の外形を変形することが可能となり、状況に適した形状に変形できる。したがって、カプセル内視鏡の利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、外形の一部を変形する外形変形手段を有するカプセル内視鏡により、嚥下性、体内での移動性、排泄性の向上を可能にし、被験者にとって使いやすいカプセル内視鏡を実現できることを見出したので、本発明に至った次第である。ここで、本発明においてカプセルとは、カプセル内視鏡の外形を構成するものをいい、一体的で連続したものに限られず、複数の部品を組み合わせて構成されたものでも良い。
【0018】
以下、本発明についての実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明を実施するための形態の説明において用いる用語や断定的な記載により、本発明の技術的範囲が限定されることはない。
【0019】
図1及び図2は本発明の1実施形態に係り、図1は本発明の1例であるカプセル内視鏡装置等の構成を示し、図2は図1に示すカプセル内視鏡の内部構成を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の内視鏡検査を行うカプセル内視鏡装置1は、被験者2の口部から飲み込まれることにより体腔内管路を通過する際に体腔内管路内壁面を光学的に撮像した画像信号を無線で送信するカプセル内視鏡3と、このカプセル内視鏡3で送信された信号を被験者2の体外に設けたアンテナユニット4により受け、画像を保存する機能を有する、(被験者2の体外に配置される)体外ユニット5とから構成される。
【0021】
この体外ユニット5には、画像データを保存するために、容量が例えば1GBのコンパクトフラッシュ(登録商標)サイズのハードディスクが内蔵されている。
【0022】
そして、体外ユニット5に蓄積された画像データは検査中或いは検査終了後に表示システム6に接続して、画像を表示することができる。
【0023】
つまり、この体外ユニット5は、表示システム6を構成するパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略記)7とUSBケーブル8等の通信を行う通信ケーブルで着脱自在に接続される。
【0024】
そして、パソコン7により体外ユニット5に保存した画像を取り込み、内部のハードディスクに保存したり、表示するため等の処理を行い表示部9により保存した画像を表示できるようにしている。このパソコン7にはデータ入力操作等を行う操作盤としての例えばキーボード10が接続されている。
【0025】
USBケーブル8としては、USB1.0、USB1.1、USB2のいずれの通信規格でも良い。また、この他にRS−232C、IEEE1394の規格のシリアルのデータ通信を行うものでも良いし、シリアルのデータ通信を行うものに限定されるものでなく、パラレルのデータ通信を行うものでも良い。
【0026】
図1に示すようにカプセル内視鏡3を飲み込んで内視鏡検査を行う場合には、被験者2が着るシールド機能を持つシールドシャツ11の内側には複数のアンテナ12が取り付けられたアンテナユニット4が装着され、カプセル内視鏡3により撮像され、それに内蔵された送受信アンテナから送信された信号を受け、このアンテナユニット4に接続された体外ユニット5に撮像した画像を保存するようにしている。この体外ユニット5は、例えば被験者2のベルトに着脱自在のフックにより取り付けられる。
【0027】
また、この体外ユニット5は例えば箱形状であり、前面には画像表示を行う表示装置としての例えば液晶モニタ13と、制御操作を行う操作ボタン14とが設けてある。また、体外ユニット5の内部には、送受信回路(通信回路)、制御回路、画像データ表示回路、電源を備えている。
【0028】
図2に示すように、カプセル内視鏡3の外形は、その中央部が凹んだピーナッツ形状である。カプセル内視鏡3は、その前端側をほぼ半球形状にした透明な前壁部21と、その後端側をほぼ半球形状にした後壁部23と、前壁部及び後壁部を嵌合させてその内部に水密的な密閉構造のカプセルを形成する嵌合部材22とによりその外形が形成されている。ここで、嵌合部材22は、変形可能な材料で作製されており、嵌合部材22を変形可能にすることにより、被験者に苦痛を与えずに嚥下、排泄できるようにするとともに、体内での円滑な移動を可能にしている。
【0029】
カプセル内視鏡3の内部には、対物レンズ31,観察光学系32,照明光学系33,格納室34、蓄電器35、受信機36,送信機37,無線の送受信用アンテナ38が収納されている。なお、これらの部品は、図示しない基盤により一体的に取り付けられている。
【0030】
観察光学系32を構成する撮像素子は、撮影した体内の画像を電気信号に変換する装置であり、1画素が0.1μ〜3μ間隔に並ぶ微細CCD又はCMOS等の個体撮像素子が用いられる。
【0031】
対物レンズ31は、観察光学系32の撮像素子に観察像を結像させるためのレンズであり、例えば、単又は複数の球面レンズ又は非球面レンズにより構成される。なお、この対物レンズ2は球面レンズよりも非球面レンズで構成するのが好ましい。非球面レンズで構成した場合、対物レンズのレンズ枚数を減らすことが可能となるため、カプセル内視鏡3の全長を短くして、嚥下性、排泄性を向上させることができる。
【0032】
照明光学系33を構成する照明素子は、白色、緑色、赤色のLED(以下LEDともいう)が常用される。
【0033】
照明素子から放出された照明光は、カプセル内視鏡の透明な前壁部21を透して撮影視野内に放出されて撮影視野内を照明する。撮像素子はこの照明された撮影視野内を対物レンズ31を介して撮影する。この撮像素子により撮影された信号は、図示しない信号処理回路で画像信号に変換された後、送信機37、送受信用アンテナ38により外部の体外ユニット5に送信される。体外ユニット5に蓄積された画像データは検査中或いは検査終了後に図1(B)の表示システム6に接続して、画像を表示される。これにより被験者の臓器の観察や検査等を行うことができる。
【0034】
蓄電器35は、各素子や回路の電源として機能するものであり、病院内電源又は家庭用電源、太陽電池、燃料電池等で駆動されるものでも良いし、外部から送信される超音波、磁界や電界を電源に変換する変電器でも良い。
【0035】
格納室34は、患部に送る薬液の格納室であり、また、採取した患部の生検体試料を格納する試料室である。
【0036】
なお、観察光学系32の撮像素子、照明光学系33の照明素子、送信機37等には、設定変更可能なプログラムを備えても良い。このようなプログラムを備えることにより、撮像素子による画像の撮影速度、照明素子による照明強度、送信機37による画像の送信速度を任意に設定し、変更することができる。この設定変更は、カプセル内視鏡の受信機36、送受信アンテナ38を介して、外部の操作装置を操作することにより行うことができる。
【0037】
また、図2に示すように、直径をカプセル内視鏡の短軸長b、円柱の長さをカプセル内視鏡の長軸長aとすると、a/b比をアスペクト比と定義する。このアスペクト比が1以上、2.3以下であることが好ましい。特に好ましい範囲は1以上、2以下である。また、カプセル内視鏡3の外表面に潤滑性材料である親水性媒体を塗工又は表面処理することが好ましい。これにより、カプセル内視鏡3を嚥下した際、消化器内の分泌物と親水性媒体とが親和して、カプセル内視鏡3の消化管腔との間の潤滑性が向上し、消化管を損傷させることなく、速やかに移動することができる。
【0038】
次に、図3を参照しながら、カプセル内視鏡の外形の変形動作について説明する。
【0039】
本実施の形態においては、図3に示すように、カプセル内視鏡3の外形の形状が、被験者2の口部から飲み込まれるときはカプセル中央部が凹んだ形状を有し(図3(1)参照)、体内を移動するときはカプセル中央部が膨らんだ形状となり(図3(2)参照)、さらに排泄されるときはカプセル中央部が凹んだ形状(図3(3)参照)というように変形する。このように変形することで、嚥下、排泄するときは、カプセル内視鏡3の容積を減少させて小型となり、嚥下、排泄時の被験者2の苦痛を軽減させることができる。また、体内を移動するときは、カプセル内視鏡3の容積を膨張させて流線形状になるため、小腸等の柔毛に捕獲されることによる消化器官内滞留を回避することができる。
【0040】
次に嵌合部材22の具体的な変形方法(本発明における変形手段)について、以下に説明する。
【0041】
・熱を利用した変形方法
熱膨張係数が異なる2種類の金属あるいは樹脂を重ねて嵌合部材22を構成し、この嵌合部材22が、熱を吸収することにより熱膨張係数の小さい金属あるいは樹脂のほうに曲がる(可撓する)性質を利用して、カプセル内視鏡3の外形形状を変形する方法である。熱膨張係数が大きい部材を外側に、熱膨張係数の小さい部材を内側にして重ねて嵌合部材22を構成することにより、カプセル内視鏡3の外形を変形することが可能となる。また、加えた熱量に応じて形状を伸張させる形状記憶材料も使用することが可能である。
【0042】
嵌合部材22に熱を与える方法としては、体内の温度(体温)を用いる方法と、体外の端末(例えばパソコン7)を操作して嵌合部材22に電流を流し、この電流による発熱を利用する方法がある。電流による発熱を利用する方法は、体内にて外形の形状を流線形状に変形した後、排泄する際に、体外の端末を操作することで、再度、中央部が凹んだ形状に変形できるので好ましい。この方法を用いる場合は、予め、カプセル内視鏡3内に電流を熱に変換する回路を組み込みこんでおく。
【0043】
この嵌合部材22を構成する金属あるいは樹脂としては、可撓性を有するとともに変形した時に破損することのない耐久性を有するものが用いられる。例えば、金属として、鉄−ニッケル系合金や、銅−マンガン系合金などの合金を用いることができ、樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン樹脂などのオレフィン樹脂、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルなどのアクリル樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ノルボルネン単位を含むシクロオレフィンポリマー、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
【0044】
・体内の水分を利用した変形方法
嵌合部材22を吸水膨張係数の異なる2種類の樹脂を重ねたもので構成し、この嵌合部材22が、水分を吸収することにより吸水膨張係数の小さい樹脂のほうに曲がる(可撓する)性質を利用して、カプセル内視鏡3の外形形状を変形する方法である。吸水膨張係数が大きい樹脂を外側に、吸水膨張係数の小さい樹脂を内側にして重ねて嵌合部材22を構成することにより、カプセル内視鏡3の外形の形状をピーナッツ形状から流線形の形状に変形させることが可能となる。
【0045】
この嵌合部材22を構成する樹脂としては、アクリル酸−ビニルアルコール共重合体、アクリル酸ソーダ重合体、ポリエチレンオキサイド変成物等からなる公知の吸水性高分子樹脂が用いられる。
【0046】
なお、カプセル内視鏡3の内部への浸水を防止するため、嵌合部材22の内側の樹脂は、撥水性と伸縮性に優れた樹脂、例えば、ラテックスゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム、酢酸ビニルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム類からなる樹脂やシリコン樹脂、フッ素樹脂により撥水加工された樹脂等、を用いることが好ましい。
【0047】
この方法によると、カプセル内視鏡3を排泄する際は、他の方法と組み合わせることが好ましい。
【0048】
その他、例えば、酸性液に反応する素材で嵌合部材22を構成することにより、カプセル内視鏡3が胃へ進入するにともない、嵌合部材22を大きく変形させることも可能である。
【0049】
・気体を利用した変形方法
高圧縮の気体を封入した加圧室をカプセル内視鏡3の内部に収納し、この加圧室の弁を開いてカプセル内視鏡3に気体を充満させ、この気体の圧力によりカプセル内視鏡3の外形を中央部が凹んだ形状(ピーナッツ形状)から流線形状に変形することができる。
【0050】
ここで用いられる気体としては、外に逃げにくい(透過係数が小さい)性質のものであるとともに、被験者の体内に負荷を与えないものが好ましく、炭酸ガス、窒素ガス、炭酸ガス、酸素ガスが好ましく、希ガスでは、クリプトンガス、ネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガスが好ましい。また、水素ガスやヘリウムガスを用いる場合は、嵌合部材22に対する透過性を考慮して、加圧室への加圧封入の時期などを制限して対応することが可能である。また、加圧室の弁の開放方法は、上記したように熱膨張係数の異なる2枚の樹脂あるいは金属を重ねて弁を形成し、体外の端末(例えばパソコン7)を操作して弁に電流を流して発熱させ、この熱により弁を変形させて開放させれば良い。形状記憶合金により弁を形成し、体内で一定の温度に暖まると、形状記憶合金の形状が変化して弁を開放させるようにしても良い。ソレノイドを用いた電磁弁により開放させる構成でも良い。
【0051】
これらの方法を利用するためには、嵌合部材22として伸縮性のある樹脂、例えば、ラテックスゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム、酢酸ビニルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム類からなる樹脂を用いる。スチレン−ブタジエンゴム系の樹脂は、水分の透過性も低いので、カプセル内視鏡3の損傷を防止できるので好ましい。また、嵌合部材22を構成する樹脂を適度の膜厚に設定しておくことが肝要であるが、通常は、30μmから3mmの範囲が好ましい。膜厚が薄いと気体がカプセル内視鏡3の外に放出されてしまうし、膜厚が大きいと形状変形が困難になる。
【0052】
また、他の方法として、カプセル内視鏡3内に胃液(例えば胃液に含まれる塩酸)と反応して気体を発生する炭酸水素ナトリウム等の化合物を収納しておき、胃液がカプセル内視鏡3内に混入することにより気体が発生し、外形を中央部が凹んだ形状から流線形状に変形する構成にしても良い。
【0053】
カプセル内視鏡3を体外に排泄する場合は、カプセル内視鏡3の外形に設けられた図示しない弁を開放し、気体をカプセル内視鏡3の外に放出することで、外形形状を流線形状からピーナッツ形状に変形することができる。これは、膨らませて口を閉じておいた風船が、その口を開くことで縮小する原理と同様である。
【0054】
この弁の開放方法は、上記と同様に、体外の端末を用いて開放する方法を用いることができる。また、例えば、カプセル内視鏡3内に圧力センサーを収納し、このカプセル内視鏡3に気体が充満して一定値以上の圧力が圧力センサーに加わると、これを検知して電気信号を発生させる。そして、電気信号に基づいて電流を流して発熱させ、熱膨張係数の差を利用して弁を変形させることにより弁を開放する。このように構成することで、カプセル内視鏡3を排泄する際、カプセル内視鏡3の弁を開放して、外形を流線形状からピーナッツ形状に変形することができる。
【0055】
この方法を用いる場合、まず、カプセル内視鏡3が体内を移動する際は、カプセル内視鏡3にある程度の気体を充満させて流線形状にしておく。カプセル内視鏡3が排泄される際に、加圧室の弁を開放してさらに気体を充満させることにより、圧力を一定値以上にする。これにより圧力センサーが作動して電気信号が発生し、カプセル内視鏡3の外形に設けられた弁が開放する。そして、気体がカプセル内視鏡3の外に放出され、外形をピーナッツ形状に変形することができる。
【0056】
ここで用いられる圧力センサーは、導体、半導体を利用したものであって、圧力により、電気抵抗が変化するものが好ましい。センサーとする樹脂部に導体の金属のナノ粒子を分散しておき、圧力が加わると変形して、電気抵抗が変化する原理を利用するのが簡便である。市販の半導体型微小圧力センサーを使用しても良い。この半導体型微小圧力センサーは、シリコン基盤上に配置された抵抗が歪むことによって起こる、抵抗値の変化「ピエゾ効果」を利用し、圧力を計測するものである。外界から圧力を受けたシリコン基盤は、基盤の動きに合わせて拡散抵抗が伸縮し、抵抗値の変化が起こる。この拡散抵抗は、一定の電流を流す回路に組み込まれており、抵抗の前後で電圧差が生じる。この電圧差を検知して電気信号を発生させる。
【0057】
以上に説明した外形形状の変形において、カプセル内視鏡3の容積の減少割合は、撮像部材の占有容積と飲み込み易さから、もとの容積の0.02から0.9であることが好ましい。0.9より大きいと減少容積が小さいので効果がないし、0.02より小さくするには、高い技術を必要とし、製造費用が高くなるので好ましくない。また、本実施の形態では、カプセル内視鏡3の外形の変形にともないその容積も変化することについて説明したが、本発明の技術的思想には、カプセル内視鏡3の容積を変えることなく外形だけを変形するものも含まれるのは当然である。
【実施例】
【0058】
具体例1 圧力検知手段として、平均直径34nmの銀のナノ粒子をカプセルの側面に200nmの厚さで、空隙率26%で分散しておき、100μA電流で検知するセンサーとした。外部からの通信手段により電流値を5倍にし、加圧弁を開き、1.5倍に膨らませていたカプセル内視鏡の容積を0.45倍に減少させることができた。
【0059】
具体例2 具体例1と同様に試料を作成したが、ここでは、平均直径25nm亜鉛粒子を使用し、カプセル内視鏡を窒素ガスで1.8倍に膨らませておいた。外部の通信手段で電流値を上げ、加熱により弁を開き体積を0.75倍に減少させることができた。
【0060】
具体例3 カプセルの側面の樹脂を200μm厚のスチレン−ブタジエンゴム材質にしたカプセル内視鏡を作成した。容積減少割合は全容積の50%を確保し、縮小させたカプセル内視鏡を作成し、炭酸水素ナトリウムを外形変形相当の気体を発生させる量を封入しておき、胃液が入りこむと炭酸ガスが発生し、減容体積分を膨張させることができるようにした。なお、発生気体の容積の計算式は、PV=nR(273+36)、Pは圧力、Vは容積、nはミリモル数、Rは気体定数である。撮影の終了時間6時間後には気体の発生が休止し、外圧によりカプセル内視鏡の膨張分の容積が縮小し、体外への排泄が容易になるように外形が変形した。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態のカプセル内視鏡装置等の構成図。
【図2】本発明の一実施形態のカプセル内視鏡の内部構成を示す断面図。
【図3】(a)嚥下する際のカプセル内視鏡の断面図。(b)体内を移動する際のカプセル内視鏡の断面図。(c)排泄する際のカプセル内視鏡の断面図。
【符号の説明】
【0062】
1 カプセル内視鏡装置
2 被験者
3 カプセル内視鏡
6 表示システム
7 パーソナルコンピュータ
21 前壁部
22 嵌合部材
23 後壁部
31 対物レンズ
32 観察光学系
33 照明光学系
34 格納室
35 蓄電器
36 受信機
37 送信機
38 送受信用アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形可能な部位を外形に有するカプセルと、前記部位を変形する変形手段と、を有することを特徴とするカプセル内視鏡。
【請求項2】
前記変形手段はカプセルの容積を減少させるように部位を変形することを特徴とする請求項1に記載のカプセル内視鏡。
【請求項3】
前記変形手段はカプセルの容積を膨張させるように部位を変形することを特徴とする請求項1に記載のカプセル内視鏡。
【請求項4】
前記カプセル内視鏡は外部からの信号を受信する受信手段を有し、
前記変形手段は前記受信手段によって受信した信号に基づいて作動するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカプセル内視鏡。
【請求項5】
前記カプセル内視鏡は、希ガス、窒素ガス、炭酸ガス、酸素ガスのうち少なくとも1つを収納する収納室を有し、
前記変形手段は、前記収納室から気体を放出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカプセル内視鏡。
【請求項6】
前記部位は樹脂あるいは金属のうち少なくとも一方により構成されるものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカプセル内視鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−75248(P2007−75248A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265015(P2005−265015)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】