説明

カプセル状食品の品質改良方法

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は芯部が液状又はペースト状で、それを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品で離水、形状萎縮、エキスの流出、芯部の粘度低下の無い品質の良好な食品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来芯部が液状又はペースト状でそれを包む膜がアルギン酸、ペクチン等の高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品は、経日で前記高分子多糖類と金属塩との反応が進行するにつれて離水が起こり、最終的にはカプセル状食品中に含有する膜の重量程度の量が離水する。例えば造粒直後のカプセル状食品が100gであり、このうちの高分子多糖類の金属塩ゲルの重量が30gとすると、高分子多糖類と金属塩との反応が平衡に達した時点で離水が30gで、カプセル状食品が70gとなり、しかもこの離水によりカプセル状食品の形状の萎縮が起こること、カプセル状食品の芯部のエキスが膜を透過して流出して風味が低下すること、カプセル状食品の芯部の粘度が低下する等の欠点を有し、増粘剤でもって粘度を上げた溶液を、カプセル状食品と共に密封しても、これらの欠点は解決出来ない。
【0003】 解決しようとする課題は芯部が液状又はペースト状で、それを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品で離水、形状萎縮、エキスの流出、芯部の粘度低下を防止することである。
【0004】 本発明はアルギン酸、ペクチン等の高分子多糖類の金属塩ゲルで包み込まれたカプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器で密封することにより、カプセル状食品の離水防止、形状萎縮防止、エキスの流出防止、芯部の粘度低下防止に成功し本発明を完成した。本発明の品質改良のメカニズムについては詳しく解明はされないが、カプセル状食品中の、高分子多糖類金属塩ゲルに、その外部よりゲル化性ゾルを作用させることにより、カプセル状食品の高分子多糖類金属塩ゲルとゲル化性ゾルとの反応が起こり、カプセル状食品の離水防止、形状萎縮防止、エキスの流出防止、芯部の粘度低下防止が発現するものと推定される。
【0005】本発明を更に詳細に説明すると、本発明で使用するゲル化性ゾルは、カラギーナン、ファーセレラン、ゼラチン、ジェランガム、サイリュームシードガム、キサンタンガムとローガストビーンガムとの併用、マンナンとキサンタンガム、タマリンド種子多糖類等の溶液であるが、これらに限ったものではないし、これらのゲル化性物質の2種類以上の併用でも良いし、これ等のゲル化性物質と他の多糖類、例えばペクチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、プルラン、ローガストビーンガム、グアーガム等との併用も可能である。
【0006】これ等のゲル化性物質はゲル形成時のテクスチャーがそれぞれ特有のテクスチャーを有するので求めるテクスチャーにより選択すれば良く、カプセル状食品の離水防止、形状の萎縮防止、カプセル状食品の芯部のエキスの流出防止効果等は同じである。
【0007】カプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器にて密封するゲル化性ゾルのゲル化性物質の濃度はゲル強度に与える影響のみで、極端に柔らかいゲルであってもカプセル状食品の離水防止、形状の萎縮防止、芯部のエキスの流出防止効果があるので、求めるテクスチャーにより、それぞれのゲル化剤のゲル形成能に応じて添加濃度を決定すれば良い。
【0008】カプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器にて密封するゲル化性ゾルの、カプセル状食品への混入量は、その混入量が少ない場合は、ゲル化性ゾルでカプセル状食品を十分コーチング出来ない為、コーチングされていない部分が生じ、その部分からの離水が生じるので、カプセル状食品とゲル化性ゾルの混合物の5重量パーセント以上必要である。
【0009】又カプセル状食品とゲル化性ゾルの混合物は、そのまま開放系に放置しておくと離水現象が促進されるので、混合後は速やかに密封保存した方が良い。以下実験例、実施例を示す。
【0010】実験1 次の配合にて芯液と膜液を調整し、直形6mmのノズルから芯液を膜液に滴下して2分間攪拌反応させてカプセル状食品を調整した。


【0011】別にゲル化性ゾルを調整し前記カプセル状食品90重量パーセントにゲル化性ゾル10重量パーセントの割合で、各品温65℃で混合して、65ccのプラスチック製容器に65g充填し、プラスチック製フィルムにてトップシールして冷蔵庫にて1週間保存した後、離水率、及び形状の萎縮率を試験した。この結果は表1に示す。表中のゲル化性物質の添加濃度は水とゲル化性物質の重量の和で、ゲル化性物質の重量を割った値に100を掛けた値(重量パーセント)であり、離水率は経日後の離水重量を全重量で割って100を掛けた値(重量パーセント)であり、萎縮率はカプセルの造粒直後と経日後の直形の差を造粒直後の直径で割ったものに100を掛けた値(パーセント)である。
【0012】
【表1】


【0013】実験2 実験1にて調製したカプセル状食品と表2に記載のゲル化性ゾルと混合比率を変えて混合し、離水率及び形状の萎縮率を試験した。この結果は表2に示すがゲル化性ゾルの混合割合はカプセルの重量とゲル化性ゾルの重量を加えた値でゲル化性ゾルの重量を割って100を掛けた値(重量パーセント)であり、離水率はゲル化性ゾルと混合する直前のカプセル状食品の重量の和で、混合経日後のカプセル状食品とゲル化性ゾルの混合物からの離水重量を測定した値を割って100を掛けた値(重量パーセント)である。但し無添加区のみは造粒直後の重量で、経日後の離水重量を割って、100を掛けた値(重量パーセント)である。萎縮率は実験1と同じである。
【0014】
【表2】


【0015】
【実施例】キサンタンガム5g、砂糖350g、1/5オレンジ果汁100g、乳酸カルシウム10g、オレンジフレーバー1g、水534gで芯液を調製する。アルギン酸ナトリウム5gを水995gに溶解して膜液を調製する。芯液を6mmのノズルより滴下して6mmのカプセル状食品1.3Kgを得た。別にタマリンド種子多糖類を0.3g、砂糖40g、クエン酸0.3g、水59.4gを加熱溶解し、ゲル化性ゾルを調製し、これを1300gのカプセル状食品と各品温65℃で混合した。
【0016】このカプセル状食品とゲル化性ゾルの混合物を65ccのプラスチック製の容器に65g充填し、プラスチックのフィルムでトップシールして8℃の冷蔵庫にて保存し1週間後に開封したが、離水は無く、かつ形状の萎縮も無く、これを食したら、カプセル状食品のカプセルの内部がソース状でとろりとした粘度のあるもので、かつ風味も殆ど作りたての時と同じであった。
【0017】 以上説明した様に芯部が液状又はペースト状で、それを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器で密封することにより、カプセル状食品の離水防止、形状萎縮防止、エキスの流出防止、芯部の粘度低下防止に成功した。これにより品質の良好なカプセル状食品をつくることが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 芯部が液状又はペースト状で、それを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品と、ゲル化性ゾルとを、ゲル化性ゾルが全体の5重量パーセント以上になる様に、包装用容器にて密封することにより、カプセル状食品の離水、形状萎縮、エキスの流出、芯部の粘度低下等を防止することを特徴とする、カプセル状食品の品質改良方法。

【特許番号】特許第3234957号(P3234957)
【登録日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【発行日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−354683
【出願日】平成4年12月15日(1992.12.15)
【公開番号】特開平6−181699
【公開日】平成6年7月5日(1994.7.5)
【審査請求日】平成11年12月11日(1999.12.11)
【出願人】(391008102)
【参考文献】
【文献】特開 平2−283250(JP,A)
【文献】特開 平4−30780(JP,A)
【文献】特開 平4−152850(JP,A)