説明

カプセル装置

【課題】
チェンバーの内部の流体圧力を短時間で適正に維持できるようにする。運搬,移動を容易にする。
【解決手段】
非可撓性,非通気性の材料で人体が仰臥姿勢で収容されるチェンバー1が形成され、チェンバー1は複数に分割可能で分割面が気密に接続可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体を特殊な流体圧雰囲気下におくためのカプセル装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、人体を高濃度,高気圧の空気又は酸素の雰囲気下におくと、怪我の快復の促進やリラクゼーション効果が得られることが研究発表されている。このため、人体をこのような流体圧雰囲気下におくための装置、設備の開発が要望されている。
【0003】
従来、人体を高濃度,高気圧の酸素の雰囲気下におく技術としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開2005−319077号公報 特許文献1には、可撓性,非通気性の材料で人体が仰臥姿勢で収容される筒形のチェンバーが形成されたカプセル装置が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るカプセル装置では、チェンバーが可撓性を有する材料で形成されて膨縮性があるため、チェンバーの内部の流体圧力を適正に維持することが困難であるという問題点がある。また、収縮したチェンバーを膨張させて所定の形状にセットアップするまでの準備時間がかかりすぎるという問題点がある。また、チェンバーが人体を仰臥姿勢で収容することのできる大きな容積を備えているため、運搬,移動が面倒であるという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、チェンバーの内部の流体圧力を短時間で適正に維持することができ、運搬,移動が容易なカプセル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明に係るカプセル装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0007】
即ち、請求項1では、非可撓性,非通気性の材料で人体が仰臥姿勢で収容されるチェンバーが形成され、チェンバーは複数に分割可能で分割面が気密に接続可能であることを特徴とする。
【0008】
この手段では、チェンバーが非可撓性を有する材料で形成されて膨縮性が排除される。また、チェンバーが分割可能とされ人体を仰臥姿勢で収容することのできる大きな容積を消失させることができる。
【0009】
また、請求項2では、請求項1のカプセル装置において、チェンバーはパネル材とパネル材の内側面に配設されたフレーム材とからなり、チェンバーの分割面にはフレーム材が気密に当接されるように配置されていることを特徴とする。
【0010】
この手段では、フレーム材を当接させることでチェンバーが組立てられる。
【0011】
また、請求項3では、請求項1または2のカプセル装置において、チェンバーの仰臥した人体の顔部に対面する位置に外部を透視可能な窓が設けられ、窓はチェンバーの内部からカッタで切断可能な材質で形成されていることを特徴とする。
【0012】
この手段では、外部を透視可能な窓によって閉塞感が解消される。また、チェンバーの内部からカッタで切断可能な材質で形成され、緊急時に窓から脱出可能となる。また、窓によって緊急時にチェンバーの内外部の通気が確保される。
【0013】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれかのカプセル装置において、チェンバーは採光のための小窓が多数設けられていることを特徴とする。
【0014】
この手段では、小窓からの採光によって閉塞感が解消される。
【0015】
また、請求項5では、請求項1〜4のいずれかのカプセル装置において、チェンバーはヒンジによって開閉可能に組立てられていることを特徴とする。
【0016】
この手段では、チェンバーが使用者(人体)の出入りのために開閉される。
【0017】
また、請求項6では、請求項5のカプセル装置において、チェンバーは内部,外部の双方から開閉をロック,ロック解除することのできるハンドルが設けられていることを特徴とする。
【0018】
この手段によると、チェンバーの開閉のロック,ロック解除が内部,外部の双方から操作される。
【0019】
また、請求項7では、請求項1〜4のいずれかのカプセル装置において、チェンバーは内部の仰臥した人体の手部の届く位置に内部環境を調整するための操作部が設置されていることを特徴とする。
【0020】
この手段では、操作部によって使用者が積極的に内部環境を調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るカプセル装置は、チェンバーが非可撓性を有する材料で形成されて膨縮性が排除されるため、チェンバーの内部の流体圧力を短時間で適正に維持することができる効果がある。また、チェンバーが分割可能とされ人体を仰臥姿勢で収容することのできる大きな容積を消失させることができるため、運搬,移動が容易になる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るカプセル装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1〜図6は、本発明に係るカプセル装置を実施するための最良の形態の第1例を示すものである。
【0024】
第1例は、図1に示すように、チェンバー1に電気系制御部2,流体系制御部3,中央制御操作部4が接続された設置構成となっている。
【0025】
チェンバー1は、アルミニウム等の耐腐食性を有する軽量の金属材で形成されたパネル材1a,フレーム材1b,1cからなる。パネル材1aは、図2に示すように、金属薄板によって例えば4半円筒形に分割されて形成され、分割の4部分が組立てられて人体Mを仰臥した状態で収容することのできる容積を有した繭形の円筒形になるようになっている。フレーム材1b,1cは、金属角板によってパネル材1aの内側面に配設され、パネル材1aの分割の4部分の分割面に配置されて組立ての際に気密に当接されるようになっている。このフレーム材1b,1cは、パネル材1aを保形,補強してチェンバー1の全体に剛性をもたせるものであるが、軽量化のために全体的に断面が中空のチャンネル形状に形成されるとともに多数の抜孔1d,1eが穿孔されている。後述するように固定的に連結されるフレーム材1bに設けられた抜孔1dについては、フレーム材1bを気密に当接して組立てる際にボルト,ナット等の締付部材(図示せず)の挿通孔としても利用することができる。
【0026】
さらに、チェンバー1には、パネル材1aの収容された人体Mの顔部に対面する位置に窓1fが設けられている。窓1fは、透明または半透明の材料で形成されてパネル材1aに開口された窓孔に気密に取付けられ、使用者(人体M)がチェンバー1の内部から外部を透視することができて閉塞感を感じないようにするものである。なお、この窓1fについては、内部からカッタで切断可能な材質として、緊急時にチェンバー1の内外部の通気が確保されるようにしている。また、窓1fのパネル材1aが硬い素材の場合には、内側からねじを緩めて脱出できるようにされている。
【0027】
さらに、チェンバー1には、パネル材1aの適当箇所に採光のための小窓1gが多数設けられている。小窓1gは、透明または半透明の材料で形成されてパネル材1aに開口された窓孔に気密に取付けられ、収容された人体Mに外部の光を当てて閉塞感を感じないようにするものである。
【0028】
チェンバー1は、パネル材1a,フレーム材1b,1cが組立てられて架台5の上に設置される。組立てられたチェンバー1は、使用者の出入りのためにヒンジ6で上下に分割の2部分ずつが締付部材で開閉可能に固定的に連結されるとともに、ロック部7で上下の分割の2部分ずつがロックされ不測の開放が避けられるようになっている。ヒンジ6は、図3に示すように、チェンバー1の軸方向の端部(収容された人体Mの足部側)に配置され、上側の分割の2部分を起伏回動させて開閉を可能にする。ロック部7は、図5,図6に詳細に示されるように、チェンバー1の上側の分割の2部分のフレーム材1cの内側に下方へ突出する状態で取付けられたL字形の係合溝7aと、係合溝7aに係合着脱可能な円柱形の係合突起7bと、チェンバー1の下側の分割の2部分のフレーム材1cの内側にスライドローラ7cを介してスライド可能に支持され係合突起7bが掛渡し取付けされたコ字形のスライダ7dとからなる。ロック部7のスライダ7dは、チェンバー1の軸方向の端部(収容された人体Mの頭部側)に取付けられたハンドル8で駆動操作される。ハンドル8は、チェンバー1の外側に配置された外ハンドル8aと、チェンバー1の内側に配置された内ハンドル8bと、外ハンドル8a,内ハンドル8bを同軸に連結する回動軸8cと、回動軸8cに螺旋状に刻設された操作溝8dとからなるもので、チェンバー1の開閉のロック,ロック解除が内部,外部の双方から操作される安全性が確保されている。ハンドル8の操作溝8dは、ロック部7のスライダ7dの一部が係合され、外ハンドル8a,内ハンドル8bの回転操作による回動軸8cの回動でロック部7のスライダ7dをスライド駆動する。
【0029】
さらに、組立てられたチェンバー1には、人体Mを仰臥状態で載せるベット9が収容される。ベット9は、複数に分割されて組立てられるもので、床面9aの周囲を壁面9bで囲んだ箱形に形成され、床面9a,壁面9bに通気孔9cが開口されている。なお、図示しないが、チェンバー内部には例えばLEDを設置し、リラクゼーション効果を向上させることも可能である。
【0030】
電気系制御部2は、チェンバー1の内部に設置されたセンサ類に接続され電気的な各種の制御を行うものである。
【0031】
流体系制御部3は、チェンバー1の内部を必要な流体圧雰囲気下におくための流体ボンベ,バルブ等からなる。必要な流体圧雰囲気として、高濃度,高気圧の酸素にマイナスイオン,芳香剤等を加えることができる。
【0032】
中央制御操作部4は、パーソナルコンピュータ等からなるもので、電気系制御部2,流体系制御部3に接続されて、チェンバー1の内部状況をモニタしながら自動的または手動的に制御する。
【0033】
さらに、中央制御操作部4を介してチェンバー1の内部に仰臥した人体Mの手部の届く位置に内部環境を調整するための操作部10が設置される。操作部10については、中央制御操作部4の全ての制御を実行可能にすることで、操作専門員を必要とせずに使用者自身が各種の制御を実行することができる。なお、操作部10には、外部から人体Mを観察するためのカメラやチェンバーの内外部のコンタクトを確保するマイク,スピーカ等を含めることもできる。
【0034】
第1例によると、チェンバー1のパネル材1a,フレーム材1bが非可撓性を有する材料で形成されて膨縮性が排除されるため、チェンバー1の内部の流体圧力を適正に維持することができる。従って、怪我の快復の促進やリラクゼーション効果を有効に得ることができる。
【0035】
また、チェンバー1が分割可能とされ人体Mを仰臥姿勢で収容することのできる大きな容積を消失させることができるため、チェンバー1の運搬,移動が容易になる。従って、自動車に載せて必要な箇所に運んで設置して使用する等のようにレンタル的,臨時的な使用が可能になる。なお、組立てられたチェンバー1では、フレーム材1bの当接で気密性が確保されるため、特殊な流体圧雰囲気下の形成に何等支障はない。
【0036】
図7は、本発明に係るカプセル装置を実施するための最良の形態の第2例を示すものである。
【0037】
第2例は、第1例のヒンジ7をチェンバー1の側面部に配置してある。
【0038】
第2例によると、チェンバー1の上側の分割の2部分の起伏回動域を小さくすることができる。
【0039】
図8は、本発明に係るカプセル装置を実施するための最良の形態の第3例を示すものである。
【0040】
第3例は、第2例のチェンバー1の上下の分割面を傾斜させている。
【0041】
第3例によると、チェンバー1への出入りの際に使用者が下側の分割の2部分を大きく跨ぐ必要がなくなるため、チェンバー1への出入りが容易になる。
【0042】
以上、図示した各例の外に、チェンバー1を4分割以外の分割構造とすることも可能である。
【0043】
さらに、チェンバー1を複数箇所で複数方向に開閉可能にすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るカプセル装置は、人体を特殊な流体圧雰囲気下におくこと以外に、チェンバーの気密性を水密性として利用する等して、適当な設備を付設することで、人体の洗浄,消毒,治療等の用途に供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るカプセル装置を実施するための最良の形態の第1例の設置状態の斜視図である。
【図2】図1の要部の分解図である。
【図3】図1の要部の側面図である。
【図4】図1の要部の側面図である。
【図5】図1の要部の開放状態の平面図である。
【図6】図5の一部拡大斜視図である。
【図7】本発明に係るカプセル装置を実施するための最良の形態の第2例の側面図である。
【図8】本発明に係るカプセル装置を実施するための最良の形態の第3例の側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 チェンバー
1a パネル材
1b,1c フレーム材
1f 窓
1g 小窓
6 ヒンジ
7 ロック部
8 ハンドル
10 操作部
M 人体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可撓性,非通気性の材料で人体が仰臥姿勢で収容されるチェンバーが形成され、チェンバーは複数に分割可能で分割面が気密に接続可能であることを特徴とするカプセル装置。
【請求項2】
請求項1のカプセル装置において、チェンバーはパネル材とパネル材の内側面に配設されたフレーム材とからなり、チェンバーの分割面にはフレーム材が気密に当接されるように配置されていることを特徴とするカプセル装置。
【請求項3】
請求項1または2のカプセル装置において、チェンバーの仰臥した人体の顔部に対面する位置に外部を透視可能な窓が設けられ、窓はチェンバーの内部からカッタで切断可能な材質で形成されていることを特徴とするカプセル装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのカプセル装置において、チェンバーは採光のための小窓が多数設けられていることを特徴とするカプセル装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかのカプセル装置において、チェンバーはヒンジによって開閉可能に組立てられていることを特徴とするカプセル装置。
【請求項6】
請求項5のカプセル装置において、チェンバーは内部,外部の双方から開閉をロック,ロック解除することのできるハンドルが設けられていることを特徴とするカプセル装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかのカプセル装置において、チェンバーは内部の仰臥した人体の手部の届く位置に内部環境を調整するための操作部が設置されていることを特徴とするカプセル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−297046(P2009−297046A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259811(P2006−259811)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(500222135)バイオネット株式会社 (4)
【Fターム(参考)】