説明

カメラを取り付けた喉頭鏡

【課題】 本発明は、喉頭鏡(1)のような内診を行う医療装置に関する。
【解決手段】 喉頭鏡には、ブレード(3)内部のチャンネル(6)内にあるカメラ素子(7)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内診を行うための医療装置に関し、特に、気管チューブの挿入を補助するカメラのような画像取込み手段を組み込んだ喉頭鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術の前に、麻酔医が気管チューブを挿入して気道を確保するのは重要な処置である。また、緊急時に無意識の患者の気道にパラメディクスまたは医師が気管チューブを挿入しなければならないことも多い。気管チューブを挿入するには、かなりの熟練を要し、一般に喉頭鏡を使用して、患者の舌を抑え、咽頭および気管の入口がよく見えるようにすることによって気管チューブの挿入を補助する。患者の歯や咽喉の軟組織を損傷しないようするために、この処置を行うにはかなりの熟練と注意を要する。
施術者が喉頭鏡を使用して患者に挿管しようとするとき、施術者自身が進行中の状況を見ることが困難なために、問題が発生することが多い。挿管中に損傷が発生する件数が、約12%程度であることが統計からわかっている(これは、毎年4000万件を超える挿管が行われていることを考慮すると、多くの人に影響を与えていることになる)。また、1980年代から1990年代にヨーロッパでは、挿管を行えなかったことが原因で、2500人が死亡している(または、一週間に3人が死亡している)。この数字は、最近でも実質的には変わっていない。気道の問題は依然として、麻酔関連の死亡または永久的な脳障害の原因の最たるものである。
【0003】
ブレードに取り付けたカメラ素子を組み込んだ装置が開発されてきたが、カメラ素子を取り付けたことで、喉頭鏡を再利用する前の洗浄に関する問題が起きてしまっている。喉頭鏡を患者に使用するには、その喉頭鏡が十分洗浄されていることと、患者間での相互汚染のリスクが全くないことが重要であることは言うまでもない。標準的な洗浄措置は、細菌などの汚染を喉頭鏡から除去するのに、常には効果的でないことを示す証拠がある(JR Hallによる「機器の血液汚染…(Blood contamination of equipment...)」『麻酔と無痛(Anaesthesia and Analgesia)』1994年、78号、1136−9ページ、およびMD Ester、LC Baines、DJ Wilkinson、RM Langfordによる「喉頭鏡の汚染除去:全国的実施調査(Decontamination of Laryngoscopes: a survey of national practice)」『麻酔(Anaesthesia)』1999年、54号)。
【0004】
喉頭鏡を洗浄するために、典型的にはブレードを浸浸し、オートクレーブする。ハンドルは、類似した処置を行うか、ブレードのように患者と接触することがないので、単に拭取るだけでもよい。洗浄に長い時間がかかることは、交代で使用する多くのハンドルおよびブレードを用意し、必要な場合に清潔な喉頭鏡が確実に常に利用できるようにすることが必要であることを意味する。この結果、時間とコストのかさむ処置の導入が必要になる。洗浄を要するカメラ素子もある場合、この洗浄処置が極めて困難になるのは明らかであり、そのため長い時間がかかり、コスト高につながりかねない。つまり、カメラを組み込んだ喉頭鏡を実際に使用することはほとんどない。
【0005】
喉頭鏡および類似の医療装置の使用に関連した課題に取り組み、その課題を克服するために、多くの代替的な製品が、提案または開発されてきた。例えば、使い捨てのブレードを使用することができるが、十分な強度がなく、設計が比較的単純であるために、ごく基本的な気道確保しかできない。可撓性の保護シースを標準的な喉頭鏡のブレードにかぶせてガードとして使用することもできる。有用ではあるが、シースを使用するか否かは、ユーザが任意に選択可能である。ユーザにとっては、既存のブレードは、光の出力を歪めるシースがないほうが機能的であるため、結果として既存のシースが使用されることは稀である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、先行技術に記述された製品を改良しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願全体を通し、用語「ブレード」は、喉頭鏡のブレードのみでなく、体腔内に挿入される検鏡または要素を含む広い意味で受けとめるべきである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、本体部およびブレード部を備えた内診を行う医療装置であって、ブレード部は、一部が透明で、部分的にチャンネルが走行している少なくとも一部が剛性であるプローブ手段を備え、チャンネル内に画像取り込み手段を設けたことを特徴とする医療装置が提供される。代替実施形態において、チャンネルに光源を設けることもできる。所望の場合、この光源は、カメラ素子を伴うこともできる。
【0009】
この場合剛性とは、通常の条件下にて自身の形態を保持するのに十分である構造的な完全性を備えることであると解釈されたい。例えば、プラスチックおよび金属と同様に、ゴム材料は自分の形状を保持することができるが、落下したり踏まれたりして圧縮されると抵抗が生じる。
【0010】
任意で、剛性プローブ手段の全体は、透明である。
好適には、剛性プローブ手段の透明部分の少なくとも一部が、画像取込み手段とともに使用するレンズを形成する。
【0011】
任意で、レンズを使用して、ブレードの湾曲した部分または角度のついた部分を通し、画像の転送および/または光の伝達を行うこともできる。
【0012】
任意で、反射手段を使用して、ブレードの湾曲した部分または角度のついた部分を通し、画像の転送および/または光の伝達を行うこともできる。
【0013】
好適には、剛性プローブ手段は、へら状の形状を有する。
好適には、画像取込み手段は、カメラである。
【0014】
任意で、画像取込み手段は、画像を転送することができる光ファイバケーブルである。
好適には、内診を行うための医療装置は、喉頭鏡である。
【0015】
好適には、チャンネル内に光源を設ける。
任意で、チャンネル内に補強素子を設ける。
【0016】
好適には、補強素子は、適宜どのような断面をも有することができるスチールロッドの形態である。
【0017】
好適には、本体に、画像取込み手段によって取り込まれた画像および他のいずれの情報をも示す画面を設ける。
【0018】
好適には、データおよび電力が、本体素子とブレード素子間を無線で転送される。
好適には、データとパワーが、本体素子とブレード素子の両方に存在する接点を介し、本体素子とブレード素子との間を転送される。
【0019】
任意で、光伝達手段によって、本体素子とブレード素子間でデータを転送する。
任意で、高周波数転送手段によって、本体素子とブレード素子間でデータを転送する。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも一部が透明で、部分的にチャンネルが走行していることを特徴とする内診用の医療装置とともに使用する剛性プローブ手段が提供される。
【0021】
好適には、チャンネルを長手方向に通す。
任意で、剛性であるプローブ手段の全体は、透明である。
【0022】
好適には、剛性プローブ手段の少なくとも一部が、レンズを形成する。
好適には、剛性プローブ手段は、へら状の形状を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明をよく理解するために、実施形態を説明するが、説明は例に過ぎず、以下の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態による喉頭鏡を示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による喉頭鏡を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による接片を示す図である。
【0025】
本発明の好適実施形態において、医療装置は、気管チューブの挿管に使用することができる喉頭鏡である。
【0026】
本体2と使い捨てのブレード3を有する喉頭鏡1が提供されている。図1に示すように、好適実施形態において、ブレード3は、へら状の形状を有する剛性プローブ手段3aで構成されている。剛性プローブ手段3aは、カメラ素子が挿入された内部チャンネル6を有し、カメラ素子7が患者と接触しないようになっている。カメラ素子7は、細長い形態であり、適宜どのような断面をも有する。チャンネル6に挿入されないカメラ素子7の端部は、本体部分2に取り付けられる。剛性プローブ手段3aは、カメラ素子7に、スリーブのように嵌っているので、診察中、患者と接触することはない。これは、外側の層を形成する剛性プローブ手段3aを廃棄することができる一方で、チャンネル6に挿入されたカメラ素子7を再利用することができるということである。
【0027】
代替実施形態において、剛性プローブ手段3aは、図2に示すように、カメラ素子より長く、喉頭鏡1の本体部分2に直接取り付けられている。
【0028】
好適実施形態において、剛性プローブ手段3aは、プラスチックやパースペックスのような透明な素材で作られる。さらに強度が必要な場合には、使用後に剛性プローブ手段3とともに廃棄することができる一体型素子として剛性プローブ手段3a内のチャンネル6に補強素子5を挿入するか、あるいは喉頭鏡1の本体2に任意で取り付けて次に使用する剛性プローブ手段3aに挿入することができる再利用可能な素子として剛性プローブ手段3a内のチャンネル6に補強素子5を挿入することができる。
【0029】
チャンネル6は、光源を収納するのにも使用することができる。気管が施術者にはっきりと見え、気管チューブの位置調整に役立つように剛性プローブ手段3aの中心にあるチャンネル6の中に光源を挿入することができる。カメラまたは光源を作動する電気部品は、喉頭鏡1の本体2に収納するか、喉頭鏡1に外付けすることができ、必要に応じて、チャンネル6およびブレード3に関連部品を嵌めたり外したりするだけでよい。つまり先と同様に、高価な照明素子またはカメラ素子は、患者と接触させずに再度使用するために保存しておき、ブレード3は廃棄することができるということである。
【0030】
ブレード3と本体2とが容易に分離できるようにするため、カメラ素子7と本体2との間を無線でデータを転送する。本体2は、カメラ素子7に関連する電気部品を収容している。無線での転送は、接片8の形態をした接点を介するのが好ましいが、光データ転送法または無線周波数データ転送法を介することもできる。このように無線でデータを転送することによって、喉頭鏡1の洗浄を困難にし、その結果喉頭鏡1を使用できなくしてしまう本体2とブレード3との間にあるリード線が不必要になる。
【0031】
接点は、導電性の接片8の形態であることが好ましい。好適実施形態において、接片8は、一部がカメラ素子7に、また一部は、カメラ素子7が剛性プローブ手段3aに挿入される際に接片8aと8bが接触して連続した接片8になるように剛性プローブ手段3aに形成される。典型例では、接片8は4つあり、そのうち2つはデータ転送用であり、他の2つは電力伝達用である(図3)。カメラ素子7を作動する電子部品を収容している本体2にも接点が設けられており、この接点は通常、引き込み式のベアリング9または引き込み式のピンの形態であるか、弾性的にバイアスをかけた他の接触手段の形態である。
【0032】
このベアリングまたはピンは、ブレードを定位置に保持しておくためのグリップ方法として作用することもできる。対応するラチェット型トラック(導電性のものが好ましい)によって、ブレードの長さを調整することができる。
【0033】
カメラ素子7を小型化するために、剛性プローブ手段3aの透明部分の少なくとも一部がレンズ4を形成することによって、カメラ素子7はレンズ4を必要とせず、ブレード3のチャンネル6に滑りこませるだけでよい。ブレード3のレンズ4は、カメラ素子7のレンズ4として作用する。レンズ4を使い捨ての剛性プローブ手段3aに含めることによって、カメラ素子7は、通常より小型化することができ、そのため喉頭鏡1のような医療装置に使用するのに特に適したものにすることができる。
【0034】
ブレード3の一部となる剛性プローブ手段3aが使い捨て可能であることの利点の一つは、患者間の相互汚染がなく、長時間の洗浄処置の必要がないことである。しかし、ブレード3の再使用を確実になくすために、ブレード3と喉頭鏡1の本体2の間にスポイル機構を組み込むことができる。スポイル機構は、ブレード3と本体2が分離されたときに、電気接続を切断する形態を取ることができ、同一のブレード3と本体2とが再接続された場合に、チャンネル6に何が接続されても電力が供給されないようにすることができる。代わりに、ブレード3は、喉頭鏡1の本体2の進入部に固定できる突起部を備え、本体2からブレード3を取り外すと突起部が折れ、以後ブレード3を再使用することができないようにする。
【0035】
本発明が、先行技術に対し、多くの利点と可能な多くの用途を有することが分かる。上の例は喉頭鏡に関するものであるが、その概念は、他の医療装置および獣医用の装置に及び、しかも本発明の範囲内であることが理解できる。ブレードが完全に使い捨てであることは、非常に重要である。それは、施術者がブレードを交換する必要があることと、この製品の使用が簡単なだけでなく製造が廉価でできることを意味するためである。
上述の実施形態は、単に例として説明したに過ぎず、何らの制限を加える意図のないこと、また、添付請求項に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、各種の変更および修正を加えることが可能であることは、当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部およびブレード部を備えて内診を行うための医療装置であって、前記ブレード部は、少なくとも一部が透明で、部分的にチャンネルが走行している少なくとも一部が剛性であるプローブ手段を備えたことを特徴とする医療装置。
【請求項2】
前記チャンネル内に画像取込み手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
剛性であるプローブ手段の全体が、透明である請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記剛性プローブ手段の透明な部分の少なくとも一部は、前記画像取込み手段とともに使用するレンズを形成することを特徴とする請求項1から3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記剛性プローブ手段は、へら状の形状を有することを特徴とする請求項1から4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記画像取込み手段は、カメラであることを特徴とする請求項1から5に記載の医療装置。
【請求項7】
前記画像取込み手段は、画像を転送することができる光ファイバケーブルであることを特徴とする請求項1から5に記載の医療装置。
【請求項8】
前記医療装置は、喉頭鏡であることを特徴とする請求項1から7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記チャンネル内に光源を設けたことを特徴とする先行請求項のいずれかに記載の医療装置。
【請求項10】
前記チャンネルに補強素子を設けたことを特徴とする先行請求項のいずれかに記載の医療装置。
【請求項11】
補強素子は、スチールロッドの形態であることを特徴とする請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
前記本体部分は、画像取込み手段によって取り込んだ画像および他のいずれの情報をも示す画面を備えたことを特徴とする先行請求項のいずれかに記載の医療装置。
【請求項13】
前記本体素子と前記ブレード素子との間でデータが無線で転送されることを特徴とする先行請求項のいずれかに記載の医療装置。
【請求項14】
前記本体素子と前記ブレード素子双方に存在する接点を介し、前記本体素子と前記ブレード素子との間でデータが転送されることを特徴とする請求項13に記載の医療装置。
【請求項15】
光伝達手段によって、データが本体素子とブレード素子間で転送されることを特徴とする請求項13に記載の医療装置。
【請求項16】
無線周波数転送手段によって、前記本体素子と前記ブレード素子との間でデータが転送されることを特徴とする請求項13に記載の医療装置。
【請求項17】
レンズを使用して、前記ブレードの湾曲した部分または角度のついた部分を通し、画像の転送および/または光の伝達を行うことを特徴とする先行請求項のいずれかに記載の医療装置。
【請求項18】
反射手段を使用して、前記ブレードの湾曲した部分または角度のついた部分を通し、画像の転送および/または光の伝達を行うことを特徴とする先行請求項のいずれかに記載の医療装置。
【請求項19】
少なくとも一部が透明で、部分的にチャンネルが走行していることを特徴とする内診用の医療装置とともに使用する剛性プローブ手段。
【請求項20】
前記チャンネルを長手方向に通したことを特徴とする請求項19に記載の剛性プローブ手段。
【請求項21】
剛性であるプローブ手段の全体が、透明であることを特徴とする請求項19から20に記載の剛性プローブ手段。
【請求項22】
前記剛性プローブ手段の少なくとも一部は、レンズを形成することを特徴とする請求項19から21に記載の剛性プローブ手段。
【請求項23】
前記剛性プローブ手段は、へら状の形状を有することを特徴とする請求項19から22のいずれかに記載の剛性プローブ手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−81319(P2012−81319A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−285892(P2011−285892)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2006−506206(P2006−506206)の分割
【原出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505403278)エアクラフト メディカル リミテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】AIRCRAFT MEDICAL LIMITED
【Fターム(参考)】