説明

カメラ

【構成】本発明のカメラは、カメラ本体に設置された各種操作手段と、吊り紐6が挿通される開口52が形成された吊り金具5と、吊り金具5に作用する荷重を検出する荷重検出手段7とを有する。吊り金具5は、2つの平行な長孔54を有し、両長孔内にビス55を挿入して、カメラ本体に対し平行移動し得るように構成されている。荷重検出手段7は、吊り金具5に荷重が作用する方向Aと逆方向Bへ吊り金具を付勢するバネ8と、バネ8の付勢力に抗して吊り金具5が矢印A方向に移動したことを検出するセンサー9とで構成されている。センサー9が吊り金具5に荷重が作用していることを検出したときは、各操作手段による操作の全部または一部が実行されない。
【効果】カメラを吊り下げて持ち運ぶ際に、誤動作を防止することができる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、例えば一眼レフカメラ、コンパクトカメラのようなカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】
一眼レフカメラ、コンパクトカメラのようなカメラでは、吊り紐で吊って、肩や首にかけた状態で持ち運ぶことが行われる。
【0003】
このような際に、カメラの電源(メインスイッチ)がオンであると、誤って操作ボタン、ダイヤルまたはレリーズボタン等に触れて、カメラの撮影条件等の設定が変わったり、シャッタが切られたりすることがあるという問題がある。
そして、このような誤動作が生じると、次に撮影を行う際に支障を来し、また、フィルムや印画紙の無駄ともなる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
本考案の目的は、カメラの持ち運び等の際に、誤動作を防止することができるカメラを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(3)の本考案により達成される。
【0006】
(1) カメラ本体と、前記カメラ本体に設置された操作手段と、吊り紐が挿通し得る開口が形成された吊り金具と、前記吊り金具に作用する荷重を検出する荷重検出手段とを有するカメラであって、 前記荷重検出手段により前記吊り金具に荷重が作用していることを検出したときは、前記操作手段による操作の全部または一部が実行されないように構成したことを特徴とするカメラ。
【0007】
(2) 前記吊り金具は、前記カメラ本体に対し変位可能に設置され、前記荷重検出手段は、前記吊り金具に荷重が作用する方向と逆方向の成分を持つ方向へ前記吊り金具を付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記吊り金具が変位したことを検出するセンサーとで構成されている上記(1)に記載のカメラ。
【0008】
(3) 前記操作手段は、カメラの諸機能を作動、設定または調整するものである上記(1)または(2)に記載のカメラ。
【0009】
【実施例】
以下、本考案のカメラを添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0010】
一般に、吊り紐でカメラを吊り下げているときは、撮影を行わない。従って、本考案のカメラは、カメラを吊り下げている状態か否かを検出し、カメラを吊り下げているときには、カメラを使用しない状態、すなわち撮影を行わない状態であるとして、例えメインスイッチがオンであっても、例えば、レリーズ動作、撮影モードの設定(選択)、ファンクションの設定、露出補正、シャッタ速度、絞り値等の設定、測距範囲の選択等のカメラの諸機能に係る作動、設定、調整を行わないようにしたものである。
【0011】
図1は、本考案のカメラの構成例を示す平面図、図2および図3は、それぞれ、本考案のカメラにおける吊り金具および荷重検出手段の構成例を示す斜視図である。図1に示すように、本考案のカメラ1は、カメラ本体2を有し、その一方の側部には、カメラを手で把持するためのグリップ部3が形成されている。
【0012】
カメラ本体2の上部の中央付近には、ストロボ格納部10と、液晶による表示部11とが形成され、グリップ部3の上部には、レリーズスイッチ12、調整ダイヤル13、14、調整ボタン15およびスライド式のメインスイッチ16が設置され、グリップ部3と反対側のカメラ本体2の上部には、設定ダイヤル17が設置されている。これらのレリーズスイッチ12、調整ダイヤル13、14、調整ボタン15、メインスイッチ16、設定ダイヤル17は、それぞれ、本考案における操作手段を構成する。
【0013】
また、カメラ本体2の正面側(図1中右側)には、図示しないレンズが装着され、カメラ本体2の背面側(図1中左側)には、ファインダー18が設置されている。そして、カメラ本体2の背面側のファインダー17より下方は、グリップ部3の側部に回動自在に軸支された裏蓋19により覆われている。この裏蓋19を開いてフィルムの装填および取り出しを行う。
【0014】
カメラ本体2の両側部には、それぞれ、吊り金具4および5が設置されている。このうち、吊り金具4は、カメラ本体2に対し固定的に設置され、吊り金具5は、カメラ本体2に対し移動可能に設置されている。
【0015】
図2および図3に示すように、吊り金具5は、好ましくは金属製の板材で構成され、その先端部51には、帯状の吊り紐(ストラップ)6が挿通されたほぼ長方形の開口52が形成されている。この先端部51は、カメラ本体2より外部に露出している。なお、吊り金具4にも、開口52と同様の開口42が形成されている。
【0016】
吊り金具5の基端部53には、2つの平行な長孔54が形成され、これらの長孔内にビス55を挿入することにより、カメラ本体2に対し吊り金具5を平行移動し得るように構成されている。なお、この移動方向は、吊り紐6の長手方向、すなわち吊り金具5に荷重が作用する方向(矢印A方向)とほぼ一致しているのが好ましい。また、吊り金具5の移動ストロークは、長孔54の長さにより調整される。
【0017】
また、吊り金具5の基端部53のには、後述するバネ8の一端が係止する小孔56が形成されている。この小孔56には、後述の付勢手段であるバネ8の一端が係止されており、バネ8の他端は、ピン81によりカメラ本体2に固定されている。
また、基端部53の側部には、後述のセンサー9を作動させるためのL字状の突出部57が形成されている。
【0018】
カメラ本体2内には、カメラ1を吊り紐6で吊り下げることにより吊り金具5に作用する荷重を検出する荷重検出手段7が設けれている。この荷重検出手段7は、吊り金具5に荷重が作用する方向(矢印A方向)と逆方向(矢印B方向)へ吊り金具を付勢する付勢手段であるバネ8と、このバネ8の付勢力に抗して前記吊り金具が矢印A方向に移動(変位の一態様)したことを検出するセンサー9とで構成されている。
【0019】
バネ8のバネ定数は、例えば、カメラ1の重量の1/4〜1/2程度の荷重が作用したとき、吊り金具5が矢印A方向へ移動し得るような値に設定されている。
なお、バネ8に代表される付勢手段の付勢方向は、吊り金具に荷重が作用する方向と逆方向に限らず、この逆方向の成分を持つ方向、すなわち、矢印B方向に対し、所定角度(90°未満)傾斜した方向であればよい。
【0020】
センサー9は、カメラ本体2に対しセンサー9を固定する固定部材91と、一対の導体92、93と、一方の導体92の先端に設置された検出ヘッド94と、他方の導体93の先端部に形成された接点部95とで構成されている。
【0021】
次に、このような荷重検出手段7の作用について説明する。
図2に示すように、カメラ1を吊り紐6で吊り下げていないときには、吊り金具5に矢印A方向の荷重が作用せず、よって、吊り金具5は、バネ8の付勢力(収縮)により図中下方の位置で静止している。この場合、突出部57の上端は、センサー9の検出ヘッド94より離間している。そのため、両導体92および93は、接点部95において接触しており、端子96、97間が導通する。
【0022】
図3に示すように、カメラ1を吊り紐6で吊り下げると、吊り金具5に矢印A方向の荷重が作用し、吊り金具5は、バネ8の付勢力に抗して、ビス55が長孔54の上端に係止するまで、矢印A方向へ移動する。これにより、突出部57の上端がセンサー9の検出ヘッド94に当接し、上方へ押圧する。そのため、導体92が変形して、接点部95から離れ、端子96、97間が導通しなくなり、吊り金具5に荷重が作用したことが検出される。
【0023】
図4は、カメラ1の回路構成を示すブロック図である。同図に示すように、カメラ1は、カメラ本体2内に制御手段100を有し、この制御手段100に対し、メインスイッチ16、設定ダイヤル17、レリーズスイッチ12、調整ダイヤル13、14、調整ボタン15、表示部11、シャッタ駆動手段20、絞り駆動手段21、測光手段22、測距手段23、フィルム給送手段24およびセンサー9がそれぞれ電気的に接続された構成となっている。
【0024】
メインスイッチ16は、カメラ1の電源のオン/オフを選択するスイッチである。メインスイッチ16がオンである旨の信号が制御手段100へ入力されると、制御手段100は、カメラ1の各部の機能が作動可能な状態となるよう制御する。この場合、センサー9は、メインスイッチ16のオン/オフにかかわらず、常に作動状態にある。
【0025】
設定ダイヤル17は、例えば、3つの設定事項「撮影モード(MODE)」、「ドライブ(DRIVE)」および「フィルム感度(ISO)」の中から所望の設定事項を選択、設定するための手段である。
【0026】
調整ダイヤル13は、前記設定ダイヤル17によって選択、設定された設定事項を1段階づつアップまたはダウンさせるためのアップ/ダウンスイッチとして機能するものである。具体的には、設定ダイヤル17の設定事項が撮影モードの場合、例えば、「絞り優先」→「シャッタ速度優先」→「マニュアル」の順に調整され、設定ダイヤル17の設定事項がドライブの場合、例えば、「1枚撮影」
→「連続撮影」→「セルフタイマー撮影」の順に調整され、設定ダイヤル17の設定事項がフィルム感度の場合、例えば、「ISO200」、「ISO400」
、「ISO800」の順に調整される。
【0027】
調整ダイヤル14は、例えば、露出補正値、シャッター速度、絞り値、測距範囲等の選択、設定に関するアップ/ダウンスイッチとして機能するものである。
【0028】
調整ボタン15は、例えば、パワーズーム機構を備えるカメラにおいて、ズームレンズを広角側および望遠側にそれぞれ駆動するためのスイッチである。
【0029】
測光手段22は、受光素子により被写体の輝度を測定するもので、得られた情報(測光情報)は、制御手段100に入力される。
【0030】
測距手段23は、例えば、アクティブ方式、パッシブ方式によりカメラ1から被写体までの距離情報あるいはカメラ1内の基準焦点位置(合焦位置)に対するディフォーカス量を測定するもので、得られた情報(測距情報)は、制御手段100へ入力される。
【0031】
フィルム給送手段24は、撮影後、フィルムを1コマ分巻き上げる手段である。
【0032】
レリーズスイッチ12は、2段スイッチで構成され、レリーズスイッチ12の1段目をオンすると、前記測光手段22および測距手段23がそれぞれ作動し、2段目をオンすると、絞り駆動手段21により絞りが作動するとともに、シャッタ駆動手段20によりシャッタが作動して撮影が行われる。この場合、適正な露光量を得るために、測光手段22からの測光情報に基づき、制御手段100の演算部において露出演算がなされ、これより絞り値およびシャッタ速度が決定される。
【0033】
表示部11は、通常、液晶表示パネル(LCD)等で構成されている。この表示部11においては、制御手段100からの出力信号に応じて、前記設定ダイヤル17、調整ダイヤル13、14、調整ボタン15等で設定、調整された内容や、その他の事項(例えば、日時)が表示される。また、センサー9による荷重の検出の有無等を表示するような構成とすることもできる。
【0034】
前記メインスイッチ16、設定ダイヤル17、レリーズスイッチ12、調整ダイヤル13、14および調整ボタン15から出力される信号は、それぞれ制御手段100に入力され、それらの機能に関する作動、設定、調整等を行う。
【0035】
制御手段100は、通常、マイクロコンピュータで構成され、前記設定、調整に従った作動信号を、シャッタ駆動手段20、絞り駆動手段21、測光手段22、測距手段23およびフィルム給送手段24へ出力し、これらの各手段は、それぞれ前記設定の通りに駆動する。また、制御手段100は、その他、例えば、シーケンス制御、オートフォーカスの実行、露出演算等のカメラ1の諸機能の制御を必要に応じて行う。
【0036】
ここで、センサー9から吊り金具5に荷重が作用したことの検出信号(以下、荷重検出信号という)が制御手段100へ入力されると、制御手段100は、メインスイッチ16、設定ダイヤル17、レリーズスイッチ12、調整ダイヤル13、14および調整ボタン15の各操作手段の内の全部または一部に関し、それより制御手段100へ入力される信号を無効とする。すなわち、各操作手段による操作の全部または一部が実行されないようにする。
【0037】
例えば、荷重検出信号の制御手段100への入力時には、メインスイッチ16のオン/オフにかかわらず、レリーズスイッチ12を押してもレリーズ動作が行われず、設定ダイヤル17、調整ダイヤル13、14および調整ボタン15を操作しても、その設定、調整は変わらない。
【0038】
また、荷重検出信号の入力時には、メインスイッチ16を操作しても電源がオンとならないようにすることもできる。電源がオンとならない結果、レリーズスイッチ12、設定ダイヤル17、調整ダイヤル13、14および調整ボタン15が操作されても、それらは作動しない。
【0039】
さらに、メインスイッチ16がオンの状態で荷重検出信号が入力されると、即座にまたは所定時間経過後、電源が自動的にオフとなるようにすることもできる。このような構成では、カメラ吊り下げ時の電源の切り忘れを防止することができる。
【0040】
以上、本考案の実施例について説明したが、本考案は、これに限定されるものではない。例えば、荷重検出手段7を構成するセンサー9の構成は、図示のものに限定されず、例えば、突出部57の端面が導電性を有し(例えば、導電性ゴムで構成する)、検出ヘッド94の突出部57との当接面に、一対の(+)端子および(−)端子を露出させ、突出部57の端面が検出ヘッド94に接触すると、前記両端子が突出部57の端面を介して導通するような構成としてもよい。さらに、センサー9としては、接触により電気的な特性が変化して信号を得るタッチセンサー、光センサー、磁気センサー、ひずみゲージ等、いかなるものでもよい。
【0041】
また、上記実施例では、吊り金具5が変位する一例として、吊り金具5が平行移動する場合について説明したが、本考案ではこれに限らず、吊り金具5が例えば支点を中心に回動する構成であってもよい。また、吊り金具5が実質的に変位せずに荷重の付加を検出し得る構成であってもよい。この場合には、荷重検出手段としては、例えば、ひずみゲージのようなひずみ検出手段が用いられる。
【0042】
また、吊り金具5の形状は、図示のようなものに限定されず、例えば、所望に湾曲または屈曲(例えば、L字状、クランク状に屈曲)した板材で構成されていてもよい。
さらに、吊り金具に作用する荷重を検出したときに実行されないようにする操作の種類、組み合わせも、前述したものに限定されず、例えば、他の操作として、表示部11の作動/不作動、ライトのオン/オフ等が挙げられる。
【0043】
また、上記実施例では、吊り金具5にのみ荷重検出手段7が設置されているが、吊り金具4にのみ荷重検出手段7が設置された構成または吊り金具4および5の双方に荷重検出手段が設置された構成であってもよい。後者の場合、少なくとも一方の荷重検出手段が荷重の付加を検出したとき、操作手段による操作の全部または一部が実行されないように構成することができる。
【0044】
【考案の効果】
以上述べたように、本考案のカメラによれば、吊り金具に荷重が作用していることを検出したときは、操作手段による操作が実行されないように構成したため、カメラの運搬時等のカメラを吊り下げている際に、誤って操作ボタン、ダイヤルまたはレリーズボタン等に触れて、不本意にカメラの撮影条件等の設定が変わったり、シャッタが切られたりするような誤動作が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のカメラの構成例を示す平面図である。
【図2】本考案のカメラにおける吊り金具および荷重検出手段の構成例を示す斜視図である。
【図3】本考案のカメラにおける吊り金具および荷重検出手段の構成例を示す斜視図である。
【図4】本考案のカメラの回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 カメラ
2 カメラ本体
3 グリップ部
4 吊り金具
42 開口
5 吊り金具
51 先端部
52 開口
53 基端部
54 長孔
55 ビス
56 小孔
57 突出部
6 吊り紐
7 荷重検出手段
8 バネ
81 ピン
9 センサー
91 固定部材
92、93 導体
94 検出ヘッド
95 接点部
96、97 端子
10 ストロボ格納部
11 表示部
12 レリーズスイッチ
13、14 調整ダイヤル
15 調整ボタン
16 メインスイッチ
17 設定ダイヤル
18 ファインダー
19 裏蓋
20 シャッタ駆動手段
21 絞り駆動手段
22 測光手段
23 測距手段
24 フィルム給送手段
100 制御手段

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 カメラ本体と、前記カメラ本体に設置された操作手段と、吊り紐が挿通し得る開口が形成された吊り金具と、前記吊り金具に作用する荷重を検出する荷重検出手段とを有するカメラであって、前記荷重検出手段により前記吊り金具に荷重が作用していることを検出したときは、前記操作手段による操作の全部または一部が実行されないように構成したことを特徴とするカメラ。
【請求項2】 前記吊り金具は、前記カメラ本体に対し変位可能に設置され、前記荷重検出手段は、前記吊り金具に荷重が作用する方向と逆方向の成分を持つ方向へ前記吊り金具を付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記吊り金具が変位したことを検出するセンサーとで構成されている請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】 前記操作手段は、カメラの諸機能を作動、設定または調整するものである請求項1または2に記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】実開平7−36147
【公開日】平成7年(1995)7月4日
【考案の名称】カメラ
【国際特許分類】
【出願番号】実願平5−72350
【出願日】平成5年(1993)12月15日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)