説明

カラムおよびそれを用いたカートリッジカラム

【課題】分離材としてガラス質多孔体を用いた信頼性が高いカラム、およびそれを用いたカートリッジカラムを提供する。
【解決手段】本発明のカラム10は、チューブとチューブ内に配置される少なくとも1つの円柱状の分離材12とを含む。分離材12はガラス質多孔体であり、チューブはエラストマーチューブ11である。本発明のカートリッジカラム30は、カラム10とカラム10を保持するためのハウジング40とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィーに用いられるカラム、およびそれを用いたカートリッジカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クロマトグラフィー用のカラムにおいて、粉末状の分離材の代わりに多孔質シリカなどからなる一体型の多孔体を用いたカラムが提案されている。そのようなカラムの1つとして、ゾル−ゲル法によって形成される無機多孔体(分離材)を用いたカラムが提案されている(たとえば特許文献1および2参照)。一体型の無機多孔体を用いたカラムは、分離性能が高い、分離特性のばらつきが小さい、安定性に優れるといった特長を有する。このような多孔体は、高精度の分析やDNAの高速分離に用いることが可能である。
【0003】
一体型の多孔体を用いたカラムの1つとして、熱収縮チューブと熱可塑性樹脂層とを含む円筒によって多孔体の周囲を保護したカラムが提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平6−265534号公報
【特許文献2】特開平7−41374号公報
【特許文献3】特開平10−197508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、熱収縮チューブを用いたカラムの場合、多孔体の表面に凹部が存在すると、熱収縮チューブではその凹部を埋めることができず、その凹部が空隙となる場合があった。また、使用時の圧力によって、多孔体と熱収縮チューブとの間に空隙が発生する場合があった。これらの空隙は一旦発生すると修復されず、さらに空隙が拡大したり、空隙同士が連続したりする場合があった。長い空隙が形成されると、分離対象物が多孔体を通らずに空隙を通過してしまい、精度よく分離をすることができなくなる場合があった。この問題は、特に、複数の円柱状の多孔体を直列に並べて用いる場合に顕著となる。また、ゾル−ゲル法で形成される無機多孔体の表面には微小な凹凸が存在する場合があり、その場合にも上記の問題が顕著となる。
【0005】
このような状況において、本発明は、分離材としてガラス質多孔体を用いた信頼性が高いカラム、およびそれを用いたカートリッジカラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のカラムは、クロマトグラフィーに用いられるカラムであって、チューブと前記チューブ内に配置される少なくとも1つの円柱状の分離材とを含み、前記分離材がガラス質多孔体であり、前記チューブがエラストマーのチューブである。
【0007】
また、本発明のカートリッジカラムは、クロマトグラフィーに用いられるカラムと前記カラムを保持するためのハウジングとを含むカートリッジカラムであって、前記カラムは、チューブと前記チューブ内に配置される少なくとも1つの円柱状の分離材とを含み、前記分離材がガラス質多孔体であり、前記チューブがエラストマーのチューブである。
【0008】
なお、この明細書において、「チューブ」には、中心軸方向の長さが短いもの、すなわち、リング状のものも含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカラムは、分離材が、ゴム状弾性を有するエラストマーチューブで保持される。そのため、分離材の表面に凹凸があったり分離材のサイズにばらつきがあったりしても、分離材とエラストマーチューブとの間に空隙が生じることを抑制できる。
【0010】
本発明のカートリッジカラムでは、分離材とハウジングとの間にエラストマーチューブが配置されるため、エラストマーチューブと分離材とが密着する。その結果、分離対象物が分離材以外の外部を通過することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、具体例を挙げて本発明を説明する場合があるが、本発明は以下で説明する具体例に限定されない。
【0012】
[カラム]
本発明のカラムは、クロマトグラフィーに用いられるカラムであって、チューブとそのチューブ内に配置される少なくとも1つの円柱状の分離材(分離用担体)とを含む。分離材はガラス質多孔体である。チューブはエラストマーのチューブである。エラストマーチューブは、通常、円筒状である。
【0013】
エラストマーチューブは、ゴム状弾性を有する材料で形成される。エラストマーの典型的な一例はゴムであり、エラストマーチューブはゴムチューブであってもよい。以下の説明において、エラストマーをゴムと読みかえることが可能である。
【0014】
分離対象物によっては、エラストマーチューブは耐薬品性が高い材料で形成されることが好ましい。
【0015】
エラストマーチューブは、たとえば、フッ素ゴムからなるものであってもよいし、シリコーンゴムや石油合成ゴムからなるものであってもよい。石油合成ゴムとしては、たとえば、ニトリルゴム(NBR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレンゴム(EP)、イソブチレン・イソプレン共重合ゴム(IIR)が挙げられる。フッ素系エラストマー(たとえばフッ素ゴム)は、耐薬品性や耐熱性が高い点で好ましい。フッ素ゴムとしては、たとえば、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム(FFKM)などが挙げられる。また、他のフッ素系エラストマーとしては、たとえば、パーフロロエラストマーが挙げられる。これらの中でも、パーフロロエラストマーおよびFFKMは、耐薬品性および耐熱性が高いため好ましい。
【0016】
エラストマーチューブの厚さが薄すぎると、エラストマーの特性が充分に発揮されない。そのため、分離材が収納される部分のエラストマーチューブの厚さtは一定以上の厚さであることが好ましい。一例では、エラストマーチューブの通常時(外力が加えられていない状態)の厚さtは、0.1mm以上(たとえば0.5mm以上で一例では2.5mm以上)であってもよい。厚さtは、たとえば20mm以下としてもよい。ただし、厚さtの上限について、特に限定はなく、たとえば、分離材の直径の0.01倍〜1倍の範囲としてもよい。
【0017】
エラストマーチューブの好ましい硬度は、エラストマーチューブの厚さtによっても異なるが、たとえば、デュロメータタイプの硬度計に従って測定された硬度(JIS−K−6253)が、A/20〜A/100の範囲(たとえばA/40〜A/90の範囲)、またはD/60以下の範囲であってもよい。
【0018】
一例のエラストマーチューブでは、エラストマーチューブの厚さtが2mm〜4mmの範囲であり、硬度(JIS−K−6253)が、A/50〜A/80の範囲である。
【0019】
エラストマーチューブは高い弾性を有することが必要である。そのため、テフロン(登録商標)や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)といった、ゴム状弾性を有さない樹脂で形成されたチューブを用いることはできない。
【0020】
本発明のカラムでは、分離材とエラストマーチューブとが着脱できないように一体となっていてもよい。この場合、分離材の長さとエラストマーチューブの長さとは、通常、ほぼ同じに設定される。このカラムは、たとえば、分離材の外周部に液状のエラストマーを塗布して硬化させることによって形成できる。代表的な液状エラストマーとしては、たとえば、フッ素系ゴムやシリコーンゴムなどが挙げられる。
【0021】
本発明のカラムでは、分離材が、着脱可能なようにエラストマーチューブ内に配置されてもよい。分離材が着脱可能である場合、エラストマーチューブ内に配置される分離材の種類や数を自由に変えることによって、カラムの分離能を自由に設定することが可能である。また、使用によって分離材の能力が低下したときに、分離材のみを交換することが可能である。分離材の数を減らす場合には、分離材の代わりに円筒状のスペーサをエラストマーチューブ内に配置してもよい。
【0022】
本発明のカラムでは、複数個の分離材が1つのエラストマーチューブ内に配置可能であってもよい。この場合、1つの分離材の長さ(円柱状の分離材の中心軸方向の長さ)は、通常、エラストマーチューブの長さ(チューブの中心軸方向の長さ)の2分の1以下である。1つのエラストマーチューブ内に配置可能な分離材の数は、たとえば、2個以上や、3個以上や、4個以上であってもよい。上限は特にないが、たとえば10個以下や5個以下であってもよい。なお、カラム内に複数個の分離材が配置される場合、すべての分離材がガラス質多孔体であってもよいし、ガラス質多孔体以外の分離材を含んでもよい。
【0023】
また、1つのエラストマーチューブ内に分離材が1個だけ配置可能であってもよい。この場合、分離材の長さは、通常、エラストマーチューブの長さの0.5倍よりも大きく1倍以下である。
【0024】
本発明のカラムの分離材は、粉末状の分離材とは異なり、円柱状(ディスク状を含む)の一体型(モノリス型)の分離材である。分離材の典型的な形状は、断面形状が真円である円柱である。ただし、分離材は、断面形状が真円でなくともよく、また、端面が平面でなくてもよい。たとえば、端面が曲面であってもよい。また、本発明の分離材の断面形状は、四角形の角を丸めることによって得られる円状の形状であってもよい。
【0025】
別の観点では、本発明のカラムは、柱状(円盤状を含む)の分離材と、分離材を収納するエラストマーチューブとを含むカラムである。このエラストマーチューブは、分離材を収納する貫通孔を備え、その貫通孔の断面形状は、分離材の断面形状と同じ形状または円状である。
【0026】
分離材は、ガラス質多孔体(実質的に無機多孔体であり、ガラスおよびガラスセラミクスなどを含む)であり、ゾル−ゲル法を用いて形成されたガラス質多孔体、具体的には、ゾル−ゲル法を用いて得られる多孔性ゲルや、そのゲルを熱処理して得られる多孔体を用いることができる。たとえば、金属アルコキシド(たとえばアルコキシシラン)やハロゲン化金属を出発材料として公知のゾル−ゲル法によって形成されるガラス質多孔体を用いることができる。なお、分離材は、有機基が結合した金属アルコキシドやハロゲン化金属を出発材料の1つとして形成される、有機成分を含むガラス質多孔体であってもよい。
【0027】
このガラス質多孔体は、分離能を高めるために、表面が修飾されていてもよい。たとえば、ガラス質多孔体の表面に、官能基または有機分子が結合していてもよい(官能基を備える有機分子が結合する場合を含む)。ガラス質多孔体の表面を修飾する官能基または有機分子は、求められる分離能に応じて選択される。それらには、分離材で用いられる公知のものを適用でき、たとえば、ヘキシル基やオクチル基やその他のアルキル基、オクタデシルシラン、オクタデシル基、フェニル基、トリメチルシリル基、シアノ基、アミノ基を適用できる。
【0028】
ガラス質多孔体の典型的な一例は、酸化ケイ素を主成分(50質量%以上)とする多孔体であり、たとえば多孔質シリカガラスである。ただし、酸化ケイ素以外の酸化物を含むガラス質多孔体(無機多孔体)や、酸化ケイ素以外の酸化物を主成分とするガラス質多孔体(無機多孔体)を用いてもよい。ゾル−ゲル法で形成されるモノリス型のゲル(ガラス質多孔体)は、多孔度や孔径の制御が比較的容易であり、分離能のばらつきが小さいという点で好ましい。
【0029】
分離材には、市販されているガラス質多孔体を用いてもよい。また、分離材は、公知のゾル−ゲル法を用いて形成してもよい。たとえば、特開平6−265534号公報や特開平7−41374号公報に記載されている方法で形成してもよい。これらの方法によれば、円柱状の多孔質シリカガラス(多孔質シリカゲル)を形成することが可能である。
【0030】
分離材には、孔径が比較的大きい貫通孔と、孔径が小さい細孔とが混在する分離材を用いてもよい。たとえば、特開平6−265534号公報に記載の製造方法で製造されるガラス質多孔体、具体的には、孔径が500nm〜数十μm(たとえば30μm)の多数の貫通孔と、孔径が5nm〜100nmの多数の細孔とが形成されたガラス質多孔体を用いてもよい。このガラス質多孔体の細孔の全容積は、たとえば0.001m3/kg〜0.01m3/kg(1m3/t〜10m3/t)の範囲である。
【0031】
ガラス質多孔体(分離材)の分離能は、多孔体の孔の径や、多孔度、比表面積などによって変化する。そのため、求められる分離能に応じて、それらの値が制御される。それらの値は、多孔体の製造条件、特に、ゾル−ゲル法の条件を変更することによって制御できる。
【0032】
[カラムの例]
以下、本発明のカラムの一例として、エラストマーチューブ内に複数の分離材が着脱可能に配置されるカラムについて説明する。
【0033】
本発明のカラムの一例の断面図を図1に示す。図1のカラム10は、エラストマーチューブ11と、エラストマーチューブ11内に配置された3つの円柱状の分離材12とを含む。分離材12は、エラストマーチューブ11の貫通孔に押し込むことによって、エラストマーチューブ11内に配置される。そのため、分離材12は、エラストマーチューブ11から容易に取り出せる。エラストマーチューブ11の断面図を図2(a)に示し、分離材12の断面図を図2(b)に示す。
【0034】
図1には、エラストマーチューブ11内に3個の分離材12が配置されている例について示したが、本発明はこれに限定されない。エラストマーチューブ11内に配置される分離材12は1個であってもよいし、2個以上であってもよい。エラストマーチューブ11内に配置される分離材12の数を変えることによって、カラムの分離能を変更することが可能である。エラストマーチューブ11は、用いられる分離材12の数に応じて長さを変えてもよい。また、分離材12の長さの合計に対してエラストマーチューブが長すぎる場合には、円筒状のスペーサをエラストマーチューブ11内に配置してもよい。
【0035】
エラストマーチューブ11内に複数の分離材12を配置する場合、同種の分離材12を配置してもよいし、分離能が異なる複数種の分離材12を配置してもよい。本発明のカラムでは、熱収縮チューブで分離材を保持する従来のカラムとは異なり、分離材12の数や種類を、利用者が目的に応じて簡単に選択することが可能である。ただし、本発明のカラムは、エラストマーチューブ11と分離材12とが予め固定されていてもよい。
【0036】
また、図1には、貫通孔の径が一様であるエラストマーチューブ11を示したが、貫通孔の径は一様でなくてもよい。たとえば、エラストマーチューブ11の貫通孔は、分離材12を収納するための貫通孔と、分離材12を収納するためではなく分離対象物を通過させるための細い貫通孔とが連結されたものであってもよい(図10参照)。
【0037】
分離材12の長さL2(図2参照)の合計は、通常、エラストマーチューブ11の通常時の長さL1よりも短い。たとえば、エラストマーチューブ11の中に3個の分離材12が配置される場合、L1はL2の3倍よりも長い。たとえば、分離材12の長さの合計に対して、エラストマーチューブ11の長さを0mm〜5mm(一例では0.2mm〜4mm)長くしてもよい。分離材12が収納される貫通孔の長さを分離材12の長さの合計よりも長くすることによって、分離材12の全体がエラストマーチューブ11の貫通孔の内部に配置される。すなわち、分離材12の端面がエラストマーチューブ11の端面よりも内部に配置される。
【0038】
エラストマーチューブ11のうち、分離材12が収納される部分の内径d1(mm)は、分離材12の径D2(mm)とほぼ同じである(図2参照)。通常、(d1−1.0)≦D2≦(d1+1.0)であり、たとえば(d1−0.3)≦D2≦(d1+0.3)であり、たとえば(d1−0.1)≦D2<d1である。
【0039】
D2>d1である場合には、エラストマーチューブ11の貫通孔を広げながら分離材12をエラストマーチューブ11内に配置すればよい。この場合には、エラストマーチューブ11内に分離材12を配置しただけで、分離材12の外周面とエラストマーチューブ11の内周面とが密着する。
【0040】
一方、D2<d1であると、分離材12をエラストマーチューブ11内に配置することが容易になる。本発明のカラムでは、ゴム状弾性を有するチューブを用いているため、後述するハウジング内でチューブを圧縮することによって、チューブの厚さtを大きくするとともに、エラストマーチューブ11の内径d1を小さくできる。そのため、通常時においてD2<d1であっても、ハウジング内において、分離材12の外周面とエラストマーチューブ11の内周面とを密着させることが可能である。
【0041】
[カートリッジカラム]
以下、本発明のカートリッジカラムについて説明する。本発明のカートリッジカラムは、クロマトグラフィーに用いられるカラムとそのカラムを保持するためのハウジングとを含む。カラムは、この明細書で述べる本発明のカラムである。上述したように、カラムは、チューブとチューブ内に配置される少なくとも1つの円柱状の分離材とを含む。その分離材はガラス質多孔体であり、チューブはエラストマーチューブである。
【0042】
本発明のカートリッジカラムでは、ゴム状弾性を有するチューブで分離材が保持されるため、分離材の表面に凹部が存在しても、その凹部が空隙となることが抑制される。また、クロマトグラフィーを行う際にカラムに高い圧力が加わってエラストマーチューブと分離材との間に空隙が生じても、ゴムの弾性によって空隙が縮小する。そのため、本発明のカートリッジカラムによれば、分離対象物が、分離材の周囲に存在する空隙を通ってリークすることを特に抑制できる。
【0043】
ハウジングの材質に特に限定はなく、適度な強度を有する材料で形成できる。ハウジングは、たとえば、ロックウェル硬度(ASTMD785)、Rスケールで15以上の材料で形成してもよい。ハウジングの材料としては、たとえば、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、アクリル、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂、シリコーン樹脂や、様々な充填剤を配合した樹脂が挙げられる。また、ハウジングの一部または全部は金属で形成されてもよい。
【0044】
本発明のカートリッジカラムにおいて、ハウジングは、エラストマーチューブの2つの端面を押圧しながらカラムを保持してもよい。これによって、エラストマーチューブと分離材との間に空隙ができることを抑制できる。また、ハウジングは、エラストマーチューブの2つの端面と外周面とを押圧しながら前記カラムを保持してもよい。
【0045】
本発明のカートリッジカラムでは、ハウジング内において、エラストマーチューブがその中心軸の方向に圧縮されてもよい。中心軸の方向に圧縮されたエラストマーチューブは、その内径が通常時よりも小さくなる。その結果、チューブと分離材との密着性が高まる。ハウジング内においてエラストマーチューブの圧縮可能な長さは、通常時のエラストマーチューブの長さの0.1%〜50%(たとえば1.5%〜25%)であってもよい。
【0046】
本発明のカートリッジカラムにおいて、エラストマーチューブ内に配置される分離材の長さ(分離材の中心軸方向における長さ)の合計が、エラストマーチューブの長さ(エラストマーチューブの中心軸方向における長さ)よりも短くてもよい。この構成では、エラストマーチューブをその中心軸の方向に圧縮してエラストマーチューブの内径を小さくすることが可能である。エラストマーチューブの長さから、エラストマーチューブ内の分離材の長さの合計を引いた長さは、通常時のエラストマーチューブの長さの0.1%〜50%(たとえば1.5%〜25%)であってもよい。
【0047】
なお、分離材の長さの合計が、エラストマーチューブの長さよりも長くても、O−リングを用いたりハウジングの形状を工夫したりしてエラストマーチューブの端面のみを押圧することができる場合には、エラストマーチューブを圧縮することが可能である。
【0048】
本発明のカートリッジカラムにおいて、ハウジングは、チューブが嵌合する円柱状の孔であって深さがチューブの長さよりも短い孔が形成された保持部材と、保持部材から突出しているチューブの端面を保持部材側に押圧する押圧面とを含んでもよい。
【0049】
本発明のカートリッジカラムにおいては、ハウジング内に、複数のカラムが配置されてもよい。
【0050】
本発明のカートリッジカラムにおいて、ハウジングは、カラムが内部に配置される円筒状のホルダを含み、ホルダが分割可能であってもよい。長手方向に分割可能なホルダを用いることによって、カラム(エラストマーチューブ)が長い場合でも、ホルダ内にカラムを容易に配置できる。
【0051】
本発明のカートリッジカラムにおいて、ハウジングは、エラストマーチューブの端面を押圧するように移動可能な押圧部材を含み、この押圧部材がエラストマーチューブの端面に対して回転することなく移動可能であってもよい。押圧部材がエラストマーチューブの端面に対して回転することなく移動可能に設けられているので、カラムをハウジング内に配置する際にエラストマーチューブが回転して捩れることがない。このため、エラストマーチューブの内部に配置された分離材の破損を抑制できる。このような構成の場合、例えば、ハウジングは、押圧部材の移動時に押圧部材がエラストマーチューブの端面に対して回転することを抑制するための回転抑制手段をさらに含んでいてもよい。例えば、ハウジングがカラムを内部に収納するホルダを含んでいる場合、回転抑制手段は、例えば、押圧部材側に設けられる嵌合部とホルダ側に設けられる嵌合部とによって実現可能である。押圧部材側の嵌合部とホルダ側の嵌合部とが嵌め合わされる構成とすれば、押圧部材のホルダに対する回転が抑制されるので、押圧部材がエラストマーチューブに対して回転することなく移動可能となる。
【0052】
[カートリッジカラムの一例]
本発明のカートリッジカラムの一例の断面図を図3に示す。図3のカートリッジカラム30は、カラム10と、ハウジング40とを含む。カラム10は、図1に示したカラムである。ハウジング40は、ホルダ41と、2つのキャップ42と、フィルタ43とを含む。図4に、キャップ42、分離材12、エラストマーチューブ11、およびホルダ41の斜視図を示す。フィルタ43は、浮遊物等の不純物を取り除くためのものである。なお、フィルタ43は状況に応じて省略してもよい。
【0053】
ホルダ41およびキャップ42は、通常、金属や樹脂(たとえばフッ素樹脂)などの硬い材料からなる。ホルダ41は、円筒状の形状を有し、その内周面にはネジ溝が形成されている。
【0054】
キャップ(保持部材)42は、ホルダ41のネジ溝に嵌合するネジ山が形成された円柱部42aを備える。円柱部42aには、円柱状の孔42hが形成されている。円柱状の孔42hの底面42bには、フィルタ43が配置される。なお、フィルタ43の周囲に、O−リングが配置されてもよい。O−リングには、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等の、耐薬品性が高い樹脂からなるものが使用されることが多い。
【0055】
孔42hには、カラム10のエラストマーチューブ11が嵌め込まれる。孔42hの底面42b(フィルタ43の表面を含む)は、エラストマーチューブ11の端面11eをエラストマーチューブ11の中央に向かって押圧する押圧面として機能する。すなわち、本例においては、2つのキャップ42のうち一方のキャップが保持部材として機能し、他方のキャップに設けられた孔42hの底面42bが押圧面として機能する。また、孔42hの側壁42sは、エラストマーチューブ11の外周面11pを押圧する面となる。
【0056】
また、キャップ42には、分離対象物が導入される導入口42eが形成されている。導入口42eには、ネジ溝が形成されている。分離対象物は、導入口42eからフィルタ43を通って分離材12に到達する。
【0057】
孔42hの内径Dh(mm)は、エラストマーチューブ11の通常時の外径D1(図2参照)と同程度である。通常、Dh−2.0≦D1≦Dh+2.0であり、たとえばDh−1.0≦D1<Dhである。通常時においてD1<Dhであっても、使用時にはエラストマーチューブ11の厚さtが大きくなるため、エラストマーチューブ11の外径D1が大きくなってエラストマーチューブ11の外周面と孔42hの側壁とが密着する。
【0058】
カートリッジカラム30では、エラストマーチューブ11の2つの端面を押圧する2つの押圧面(底面42b)間の距離を、エラストマーチューブ11の長さL1よりも短くすることによってエラストマーチューブ11を圧縮する。そのため、カートリッジカラム30は、2つの押圧面間の距離をL1よりも短くできるように構成される。
【0059】
図3のカートリッジカラム30では、孔42hの深さLh(mm)は、エラストマーチューブ11の長さL1(mm)の半分未満である。たとえば、2Lh−5.0≦L1<2Lhであってもよい。深さLhが長さL1の半分未満である場合、キャップ42をホルダ41に締め込んで2つのキャップ42の孔42hの底面間の距離がL1に等しくなったときに、2つのキャップ42間には隙間が存在する(図5参照)。この隙間が減少するようにさらにキャップ42を締め込むと、エラストマーチューブ11の長さL1が短くなるとともに厚さtが厚くなる。そのため、キャップ42を締め込むにつれて、孔42hの壁面とエラストマーチューブ11の外周面との間、および、エラストマーチューブ11の内周面と分離材12の外周面との間が強い力で密着する。また、孔42hの底面42bと、エラストマーチューブ11の端面11eとの間も強い力で密着する。このように、本発明のカートリッジカラムでは、キャップ42を締め込むことによって、エラストマーチューブ11と分離材12との間などを分離対象物が通過することを抑制できる。
【0060】
なお、ハウジング40は、エラストマーチューブ11の外周面の全体を保持する必要はなく、一部が保持されていなくてもよい。たとえば、図5に示すように、エラストマーチューブ11の中央部の外周面が保持されていなくてもよい。
【0061】
また、エラストマーチューブ11の2つの端面を押圧する2つの押圧面間の距離を短くする方法に特に限定はなく、本発明のカートリッジカラムで用いられるハウジングは、エラストマーチューブの2つの端面(好ましくはさらに外周面)を押圧しながらカラムを保持できる構造である限り、様々な形状・構成とすることが可能である。たとえば、ホルダ41の一端を、貫通孔が形成された押圧面とし、1つのキャップ42のみでエラストマーチューブ11を圧縮してもよい。
【0062】
[カラムおよびカートリッジカラムの他の例]
以下、本発明のカラムとして、1つのエラストマーチューブ内に分離材が1つのみ着脱可能に配置されるカラムの一例について説明する。そのようなカラムの一例の上面図を図6(a)に示し、図6(a)の線VIb−VIbにおける断面図を図6(b)に示す。
【0063】
図6のカラム10aは、エラストマーチューブ11と、エラストマーチューブ11内に配置される分離材12とを含む。エラストマーチューブ11および分離材12は、上述したものと同様である。ただし、この例では、エラストマーチューブ11の長さL1(図2参照)が、分離材12の長さL2(図2参照)とほぼ同じであるか、L2よりもわずかに長い。
【0064】
カラム10aを用いたカートリッジカラムの一例の分解断面図を図7に示す。図7のカートリッジカラム70は、カラム10aと、カラム10aを保持するハウジングとを含む。ハウジングは、円筒状のホルダ71と、ホルダ71の両端に締め込まれる2つのキャップ72と、2つのO−リング73とを備える。ホルダ71の内部には、1つ以上のカラム10aが配置される。ホルダ71の内部には、1つ以上のカラム10aと、1つ以上のスペーサとが配置されてもよい。この場合のスペーサの外径は、エラストマーチューブ11の外径とほぼ同じであり、スペーサの中央部には貫通孔が形成されている。
【0065】
ホルダ71の内周面には、ネジ溝が形成されている。ホルダ71の内径は、カラム10aの外径と同程度かやや大きい。
【0066】
キャップ72には、分離対象物が通過する貫通孔72hが形成されている。キャップ72は、ホルダ71のネジ溝に嵌合するネジ山が形成された円柱部72aを備える。円柱部72aの端面には、O−リング73が配置される環状の溝が形成されている。O−リング73とエラストマーチューブ11の端面11eとは、エラストマーチューブ11の内径d1以上で外径D1以下である径を有する円環状の部分で接触する。このため、キャップ72を締め込んでO−リング73でエラストマーチューブ11の2つの端面11eを押圧することによって、O−リング73の部分、およびエラストマーチューブ11と隣接するエラストマーチューブ11との間で、分離対象物がリークすることを防止できる。
【0067】
キャップ内において分離対象物がそのまま通過する領域(たとえば貫通孔72h)の体積は、できるだけ少ないことが好ましい。貫通孔72hの直径は、通常、0.1mm〜1.0mm(たとえば0.2mm〜0.5mm)である。
【0068】
また、分離材全体に分離対象物が浸透するように、分離材に面する貫通孔(キャップの貫通孔)の終端がラッパ状に広がっていてもよい。ラッパ状に広がっている部分の長さは、通常、0.1mm〜1.0mm(たとえば0.2mm〜0.5mm)である。キャップおよびホルダに形成される溝のピッチは、通常2mm以下(たとえば1.5mm以下)である。
【0069】
なお、エラストマーチューブ11の外径とホルダ71の内径との間に差がある場合には、その差を埋めるためのスペーサを用いてもよい。そのようなスペーサを備えるカラム10aの平面図を図6(c)に示し、図6(c)の線VId−VIdにおける断面図を図6(d)に示す。スペーサ61は、カラム10aの外周部に配置される。スペーサ61の内径は、エラストマーチューブ11の外径とほぼ同じである。
【0070】
[カートリッジカラムのその他の例]
以下、本発明のカートリッジカラムとして、分離可能なホルダによってエラストマーチューブ11の外周面が保持されるカートリッジカラムの一例を説明する。このカートリッジカラム80のホルダの一例の分解斜視図を図8(a)に示す。また、ホルダの他の例の分解斜視図を図8(b)に示し、図8(b)のホルダを組み立てたときの斜視図を図8(c)に示す。
【0071】
図8(a)のホルダ81および図8(b)のホルダ85は、円筒状のホルダの中心軸に沿った断面でホルダが分割されるようになっており、また、分割される2つのホルダは、固定手段によって互いに固定されるようになっている。
【0072】
図8(a)のホルダ81は、ホルダ82とホルダ83とからなる。ホルダ82は、鉤状の部分を備える突起82aを固定手段として含む。ホルダ83には、固定手段として孔83aが形成されており、孔83aは突起82aを係止する。突起82aが孔83aによって係止されることによって、ホルダ82とホルダ83とが互いに固定され、円筒状のホルダ81となる。ホルダ81の外周面には、ネジ山が形成されている。
【0073】
図8(b)のホルダ85は、ホルダ86とホルダ87とからなる。ホルダ86は突起86aを固定手段として含む。ホルダ87には、固定手段として、突起86aに対応する孔87aが形成されている。突起86aが孔87aに挿入されてホルダ86とホルダ87とが固定される。図8(b)のホルダ86では、複数の突起86aが、中心軸に対して非対称に形成されている。このような構成によれば、誤った方向に組み立てることを防止できる。図8(c)に示されるように、ホルダ87の一部には、平坦な切り欠き部87bが形成されている。図示はされていないが、ホルダ86にも、同様の切り欠き部が形成されている。キャップを締めたり緩めたりする際に、この切り欠き部をスパナで保持することによってホルダを固定できる。
【0074】
ホルダ81を用いたカートリッジカラム80の分解断面図を図9に示す。カートリッジカラム80は、ホルダ81(ホルダ82および83)と、ホルダ81内に配置されるカラム10と、2つのキャップ84とを含む。カラムは、上述した本発明のカラムであり、エラストマーチューブ11および分離材12を含む。
【0075】
キャップ84には、円筒状の凹部84hが形成されており、その凹部84hの内周面には、ホルダ81のネジ山と嵌合するネジ溝が形成されている。ホルダ81の内部にカラム10を配置し、ホルダ81の両端をキャップ84で締めると、凹部84hの底面84bによってエラストマーチューブ11の両端が押圧され、エラストマーチューブ11と底面84bとが密着する。このようにして、カートリッジカラム30と同様に、分離対象物がリークすることを抑制できる。
【0076】
カートリッジカラム80では、ホルダ81が分離可能であるため、エラストマーチューブ11が長い場合や複数のカラムを用いる場合でも、カラムをホルダ81内にセットすることが容易である。このカートリッジカラムは、ホルダ内に配置されるカラムの長さ(複数のカラムが配置される場合にはそれらの合計の長さ)が40mm以上(たとえば90mm以上)である場合に、特に有効である。
【0077】
[カートリッジカラムのその他の例]
以下、本発明のカートリッジカラムとして、エラストマーチューブの端面を押圧するように移動可能な押圧部材を備え、この押圧部材がエラストマーチューブの端面に対して回転することなく移動可能であるカートリッジカラムの一例を説明する。このカートリッジカラム120の分解斜視図を図12に示す。
【0078】
このカートリッジカラム120は、カラム10と、ハウジングとを含む。カラム10は、上述した本発明のカラムであり、エラストマーチューブ11および分離材12を含む(図1参照。)。ハウジングは、内部にカラム10が配置される円筒状のホルダ121と、ホルダ121の両端にはめこまれる第1のキャップ122と、第1のキャップ122の外側からホルダ121の両端にネジ止めされる第2のキャップ123と、を含む。ハウジングは、さらに、ホルダ121とカラム10との間に配置されるスペーサ124と、第1のキャップ122とカラム10との間に配置されるO−リング125とを含む。なお、ホルダ121の内径がカラム10の外径と同程度かやや大きい程度である場合は、スペーサ124を設ける必要はない。
【0079】
ホルダ121の外周面には、ネジ山が形成されている。ホルダ121の内径は、スペーサ124の外形と同程度かやや大きい。ホルダ121は、その両端部に回転抑制手段としての突起121aを含む。
【0080】
第1のキャップ122は、ホルダ121の内部に挿入される円柱状の挿入部122bを備えている。挿入部122bの端面にはO−リング125が配置される環状の溝が形成されており、この溝にO−リング125が配置される。第1のキャップ122およびO−リング125は、エラストマーチューブの端面を押圧するように移動可能である。第1のキャップ122および第2のキャップ123がホルダ121に装着される際、第1のキャップ122およびO−リング125はエラストマーチューブの端面を押圧するように移動して、この端面を押圧する。すなわち、第1のキャップ122およびO−リング125が押圧部材として機能する。第1のキャップ122には、さらに、回転抑制手段としての切り欠き122aが設けられている。この切り欠き122aは、第1のキャップ122がホルダ121にはめこまれた際に、ホルダ121の突起121aに嵌合するように形成されている。突起121aと切り欠き122aとが嵌合することによってホルダ121に対する第1のキャップ122の回転が抑制されるため、ホルダ121の内部に配置されたエラストマーチューブの端面に対して第1のキャップが回転することを抑制できる。これにより、第2のキャップ123をホルダ121にネジ止めする際、エラストマーチューブがホルダ121の内部で回転して長手方向に沿って捩れることがないため、エラストマーチューブの内部に配置された分離材の破損を抑制できる。第1のキャップ122には、さらに、分離対象物が導入される導入口122cが形成されている。
【0081】
第2のキャップ123には円柱状の凹部123aが形成されており、その底面には、分離対象物を第1のキャップ122の導入口122cに導入するための貫通孔123bが形成されている。凹部123aの内周面には、ホルダ121のネジ山と嵌合するネジ溝が形成されている。第2のキャップ123がホルダ121に装着された状態において、第1のキャップ122のヘッド部分が凹部123aに収納される。
【0082】
ホルダ121の両端に第1のキャップ122をはめこみ、その外側から第2のキャップ123をホルダ121にネジ止めすることによって、第1のキャップ122およびO−リング125とエラストマーチューブの端面とが密着するので、図7に示すカートリッジカラム70と同様に、分離対象物がリークすることを抑制できる。
【0083】
なお、本発明のカートリッジカラムのハウジングに設けられる押圧部材は、上記の例に限定されず、エラストマーチューブの端面を押圧するように移動可能であって、かつ、エラストマーチューブの端面に対して回転することなく移動可能に設けられている部材であれば、どのような構成であっても構わない。また、回転抑制手段も、上記の例に限定されず、押圧部材の移動時に、エラストマーチューブの端面に対して押圧部材が回転することを抑制できる手段であれば、どのような構成であっても構わない。例えば、図12に示す例とは逆に、第1のキャップ122側に突起を設け、ホルダ121側に切り欠きを設けてもよい。また、例えば、第1のキャップ122の挿入部122bに突起または溝等の嵌合部を回転抑制手段として設け、この嵌合部がホルダ121内に挿入された際にホルダ121の内部に形成された回転抑制手段としての嵌合部と嵌合するようにしてもよい。
【0084】
[カラムおよびカートリッジカラムのその他の例]
なお、上記のカラムの例において、エラストマーチューブ11と分離材12とは着脱できないように一体となっていてもよい。このようなカラムは、分離材12の外周面に液状のエラストマーを塗布して乾燥(必要な場合にはさらに硬化)させることによって形成できる。分離材12に塗布されたエラストマーが、エラストマーチューブとなる。このようなカラムは、図7に示したカートリッジカラムに特に適している。このカラムにおいて、エラストマーチューブ11内に配置される分離材12の数は、1つであってもよいし複数であってもよい。
【0085】
また、上記の例においてはハウジングの外形が円柱状である場合を示したが、ハウジングの外形は他の形状、たとえば角柱状などであってもよい。
【0086】
また、本発明のカラムでは、本発明の効果が得られる限り、分離材の周囲が、ゴム状弾性を有さない他の部材、たとえば硬化性樹脂(UV硬化性樹脂、接着剤、フッ素系樹脂、シリコーン系コーティング剤)等で補強されていてもよい。なお、ゴム状弾性を有さない材料によって分離材の周囲が被覆されている場合でも、その周囲をゴムチューブで覆うことによって、熱収縮チューブ等と分離材との間でリークが起こることを抑制できる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0088】
まず、エラストマーチューブと、図3に示したハウジングとを用意した。エラストマーチューブは、タイガースポリマー株式会社製のフッ素ゴム(商品名:フッソゴムイタ:硬度A/78(Hs80)を加工して作製した。形成したエラストマーチューブの断面図を図10に示す。図10のエラストマーチューブ101には、分離材が収納される貫通孔101hと、分離材が収納されない貫通孔101tとが連結された貫通孔が形成されている。エラストマーチューブ101の全体の長さは19mmであり、外径D1=8.9mmであり、分離材が収納される部分の長さL1=18.2mm、分離材が収納される部分の内径d1=3.25mm、貫通孔101tの内径d’=1mmとした。また、分離材が収納される部分の厚さt1=2.83mmとした。
【0089】
本発明のカラムの分離材として、ジーエルサイエンス株式会社から発売されているモノリスタイプのシリカ多孔体(MonoFas)を用いることができる。たとえば、ジーエルサイエンス株式会社のDNA精製キットI(MonoFas)に用いられているモノリスタイプのシリカ多孔体には、平均径が約15μmの多数の貫通孔と、平均径が約10nmの多数の細孔とが形成されている。この実施例では、このシリカ多孔体と同等のシリカ多孔体を用いた。1つの分離材の長さL2=2.8〜3.0mmとし、径D2=3.2〜3.4mmとした。この分離材を6個、エラストマーチューブ内に配置した。6個の分離材の長さの合計は、18mmであった。
【0090】
また、キャップの孔(図3の孔42h)の深さLh=7.5mmとし、孔の径Dh=9mmとした。
【0091】
このカートリッジカラムを組み立て、液体クロマトグラフィーを行った。移動相にはヘキサン(98体積%)とイソプロピルアルコール(2体積%)との混合液を用い、流量は0.5mL/分または0.2mL/分とした。分離対象物は、トルエンと、2,6−ジニトロトルエンと、1,2−ジニトロベンゼンとの混合物とした。対象物は、波長210nmの紫外線を用いて検出した。流量が0.5mL/分のときの検出結果を図11(a)に示し、流量が0.2mL/分であるときの検出結果を図11(b)に示す。図11に示すように、本発明のカートリッジカラムを用いることによって、トルエン/2,6−ジニトロトルエンと1,2−ジニトロベンゼンとを分離して検出できた。
【0092】
一方、比較のために、分離材をFEPからなる熱収縮チューブ(ペンニットー株式会社製、製品名:ペンチューブ))に入れて熱収縮チューブを熱で収縮させ、これをさらに樹脂製の筒に挿入してカラムを作製した。この比較例のカラムを用いて上記と同様の方法で液体クロマトグラフィーを行ったところ、測定開始初期の段階で大きな単一のピークが観察され、それ以外のピークが観察されなかった。この単一のピークは、移動相および測定対象物が分離材を通らずにカラム内でリークしたために観察されたものと考えられる。このように、熱収縮チューブを用いた場合には、リークが発生して正常に測定できない場合があった。
【0093】
以上、本発明の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて他の実施形態に適用できる。
【0094】
別の観点では、本発明は、円柱状(円盤状を含む)の分離材(分離能を有すればよく、ガラス質多孔体に限定されない)と、分離材を収納するエラストマーチューブとを含むカラムに適用可能である。このエラストマーチューブは、分離材を収納する貫通孔を備え、その貫通孔の断面形状は、分離材の断面形状と同じ形状または円状である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、クロマトグラフィーに適用できる。本発明のカラムおよびカートリッジカラムは、たとえば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーおよび分離分析、ならびにそれらの装置に用いることができる。本発明のカラムおよびカートリッジカラムによれば、様々な物質、たとえばタンパク質やペプチドといった有機化合物を分離することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のカラムの一例を示す断面図である。
【図2】(a)エラストマーチューブの一例および(b)分離材の一例を示す断面図である。
【図3】本発明のカートリッジカラムの一例を示す断面図である。
【図4】図3に示したカートリッジカラムの一部を示す分解斜視図である。
【図5】図3に示したカートリッジカラムの使用時の状態を示す断面図である。
【図6】本発明のカラムの他の例を示す上面図および断面図である。
【図7】本発明のカートリッジカラムの他の例を示す断面図である。
【図8】本発明のカートリッジカラムに用いられるホルダの例を示す分解斜視図および斜視図である。
【図9】本発明のカートリッジカラムのその他の例を示す断面図である。
【図10】実施例で用いたエラストマーチューブの形状を示す断面図である。
【図11】(a)および(b)はともに本発明のカートリッジカラムを用いて得られたクロマトグラムである。
【図12】本発明のカートリッジカラムの一例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0097】
10、10a カラム
11、101 エラストマーチューブ
11e 端面
11p 外周面
12 分離材
30 カートリッジカラム
40 ハウジング
41 ホルダ
42、72、84 キャップ(保持部材)
42h 孔
42a 円柱部
42b 底面
42s 側壁
43 フィルタ
61、124 スペーサ
71、81、82、83、85、86、87、121 ホルダ
73 O−リング
121a 突起(回転抑制手段)
122 第1のキャップ(押圧部材)
122a 切り欠き(回転抑制手段)
123 第2のキャップ
125 O−リング(押圧部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーに用いられるカラムであって、
チューブと前記チューブ内に配置される少なくとも1つの円柱状の分離材とを含み、
前記分離材がガラス質多孔体であり、
前記チューブがエラストマーのチューブであるカラム。
【請求項2】
前記チューブがゴムチューブである請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記チューブがフッ素ゴムからなる請求項2に記載のカラム。
【請求項4】
前記分離材と前記チューブとが着脱できないように一体となっている請求項1〜3のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項5】
前記分離材が、着脱可能なように前記チューブ内に配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項6】
複数個の前記分離材が前記チューブ内に配置可能である請求項5に記載のカラム。
【請求項7】
前記分離材がゾル−ゲル法によって形成されたガラス質多孔体である請求項1〜6のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項8】
前記ガラス質多孔体の表面が修飾されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項9】
JIS−K−6253の硬さ試験に基づいて測定された前記チューブの硬度がA/20〜A/100の範囲である請求項1〜8のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項10】
前記チューブの硬度がA/40〜A/90の範囲である請求項9に記載のカラム。
【請求項11】
前記チューブの硬度がA/50〜A/80の範囲である請求項10に記載のカラム。
【請求項12】
前記分離材が円柱状である請求項1〜11のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項13】
前記チューブにおいて前記分離材が収納される部分の内径をd1(mm)とし、前記分離材の径をD2(mm)と表記する場合、d1およびD2が、
(d1−1.0)≦D2≦(d1+1.0)
の関係を満たす、請求項12に記載のカラム。
【請求項14】
クロマトグラフィーに用いられるカラムと前記カラムを保持するためのハウジングとを含むカートリッジカラムであって、
前記カラムが、請求項1〜13のいずれか1項に記載のカラムであるカートリッジカラム。
【請求項15】
前記ハウジングは、前記チューブの2つの端面を押圧しながら前記カラムを保持する請求項14に記載のカートリッジカラム。
【請求項16】
前記ハウジング内において、前記チューブがその中心軸の方向に圧縮される請求項14または15に記載のカートリッジカラム。
【請求項17】
前記ハウジングは、前記チューブが嵌合する円柱状の孔であって深さが前記チューブの長さよりも短い孔が形成された保持部材と、前記保持部材から突出している前記チューブの端面を前記保持部材側に押圧する押圧面とを含む請求項14〜16のいずれか1項に記載のカートリッジカラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−199074(P2007−199074A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30675(P2007−30675)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【分割の表示】特願2006−37883(P2006−37883)の分割
【原出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)