説明

カラー画像形成装置

【目的】 カラー画像の再現性を向上させたカラー画像形成装置を提供する。
【構成】 容器11内にトナー担持ローラ12等を備えたプロセスユニット2Y,2M,2Cの下面に個別電極アレイ15を配置し、その各開口部17から、カラー画像データに応じた量の荷電性トナー20を、用紙Pの裏面が当接する対向電極6の上方に設けた混合室4に一旦放出し、混合室4の下面の統合電極アレイ3における吐出開口部24から吐出電極印加回路25の制御にて用紙P上に混合済の荷電性トナー20を吐出させて所定の色のカラー画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等に利用し得るカラー画像形成装置の構造に関し、さらに詳しくは、イエロー、マゼンタ、シアン等の原色の荷電性トナーを電界により飛翔させてカラー画像を形成するカラー画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、画像形成装置の1つの形式として、本出願人は、先に、特開平3−215874号公報において、電気絶縁性のシートに複数の開口部を列状に穿設した電極アレイに、前記各開口部毎に制御電極を設け、この電極アレイを、そのシート面がローラ状のトナー供給手段に摺接させ、該トナー供給手段にてトナーを開口部に供給する一方、トナー供給手段に対して前記電極アレイを挟んで反対側に位置する背面電極体に裏面が接するように画像記録媒体を移動させながら、各制御電極に毎に制御電圧を印加して、画像記録媒体の表面にトナーを飛翔させて付着した後、この画像記録媒体を定着装置に搬送させてトナー画像を形成する装置を提案した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この種の画像形成装置にてカラー画像を形成するときには、イエロー、マゼンタ、シアン等の原色の荷電性トナーを電界により画像記録媒体の表面に飛翔させて1画素毎に色重ねするものであるから、1画素での色重ねがずれる等して色の再現性が充分でないという問題があった。
【0004】本発明は、この問題を解決すべくなされたものであって、カラー画像データに応じて各原色のトナーを画像記録媒体に付着される以前に混合して、高画質のカラー画像を得ることができるカラー画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明のカラー画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン等の原色の荷電性トナー毎のプロセスユニットを、複数の開口部が形成され、各開口部がそれぞれ制御電極を有する個別電極アレイと、前記荷電性トナーを前記各開口部に供給するトナー供給手段と、前記個別電極アレイの各制御電極を独立して制御することにより、前記荷電性トナーをトナー供給手段から開口部を介して選択的に飛翔させる電界制御手段とにより構成し、前記複数のプロセスユニットにおける個別電極アレイと対向して画像記録媒体を挟んで対向電極を配置し、前記各プロセスユニットの電界制御手段を、前記荷電性トナーが画像記録媒体に到達する前に互いに混合するように制御させるものである。
【0006】また、請求項2に記載の発明は、請求項1における前記複数のプロセスユニットにおける個別電極アレイと画像記録媒体との間に、荷電性トナーを混合するための混合室を設け、該混合室の荷電性トナー放出部には、複数の開口部がそれぞれ制御電極を有する統合電極アレイを設け、該統合電極アレイにおける制御電極を、統合電界制御手段にて制御してカラー画像データに応じて前記混合した荷電性トナーを画像記録媒体に向かって選択的に飛翔させるように構成したものである。
【0007】
【実施例】次に、本発明を具体化した実施例について説明する。図1は本発明のカラー画像形成装置の概要を示し、該カラー画像形成装置は本体ケース1内のイエロー、マゼンタ、シアンの荷電性トナー20毎に対応する3つのプロセスユニット2Y,2M,2Cと、この3つのプロセスユニットのトナー吐出口としての開口部17を囲むように設けた混合室4の下面に張設した統合電極アレイ3と、定着装置7と、画像記録媒体としての用紙Pの用紙搬送ユニット5と、対向電極6と制御部8と電源部9とにより構成されている。
【0008】本カラー画像形成装置では、カラー画像データに基づいて各プロセスユニット2Y,2M,2Cから所定量の荷電性トナーを一旦混合室4に吐出し、統合電極アレイ3にて制御して、対向電極6にて裏面が帯電された用紙Pに前記混合した荷電性トナー20を飛翔・付着させて、カラートナー像として可視化させた後、定着装置7で加熱・押圧してカラートナー像を定着し、本体ケース1の排紙トレイ10に出力するものである。
【0009】次に、前記各プロセスユニット2Y,2M,2Cの構成について説明する。なお、これらは内部に収納する荷電性トナーの色の種類が異なるのみであるので、イエローの荷電性トナーの部分について代表的に説明し、他は省略する。プロセスユニット2Yは、イエローの荷電性トナー20を収納する容器11と該容器11内のトナー担持ローラ12と、トナー供給ローラ13と、トナー層厚さを規制するための規制ブレード14と、個別電極アレイ15等から構成されている。
【0010】次に、前記各構成要素の詳細を説明すると、個別電極アレイ15は、図3に示すように、略25μm程度の厚さのフィルム状のポリイミド製の電気絶縁性のシート16に、直径略100μmの複数の開口部17が用紙Pの搬送方向(図1及び図2の矢印A方向)と直交する方向に1列状に形成されており、前記用紙Pと対峙する側(混合室4側)には、シート16を貫通して形成された丸孔状や矩形状等の各開口部17毎に、各開口部17の円周縁に沿った環状の電極部18aと、該各電極部18aを図1の個別電界制御手段としての制御電圧印加回路21に接続するためのリード部18bとからなる制御電極18が1μm厚さの銅、金等の金属にて形成されている。
【0011】そして、前記シート16の裏面は、開口部17列の近傍においてトナー担持ローラ12の外周面に摺接させるように配置する。容器11内の銅、アルミニウム製等の金属筒製等の導電性のトナー担持ローラ12及び供給ローラ13は、用紙Pの搬送方向と直交する幅寸法とほぼ同じ長さを有し、図示しない回転駆動装置により、それぞれ、図2の矢印方向に回転させられる。容器11内にて、トナー担持ローラ12の回転方向上流側の円周面に接触する規制ブレード14は、トナー担持ローラ12の長さとほぼ等しく形成され、トナー担持ローラ12の外周面に帯電担持された荷電性トナー20を圧接して、その層厚さが一定に保持されるようになっている。
【0012】荷電性トナー20は電気絶縁性を有する粒径約7μm程度の小粒径トナーが画像的に好ましく、粉砕トナー、重合トナー等が使用できるものであり、供給ローラ13によってトナー担持ローラ14の表面に供給される。トナー担持ローラ14は導電性材料からなるので、トナー担持ローラ14とその表面に担持された荷電性トナー20も含んで全体として同電位になる。
【0013】前記3つのプロセスユニット2Y,2M,2Cにおける3つの個別電極アレイ15の下方を囲み、且つ1列状の開口部17の箇所に対応するように同じく1列状に混合室4を形成する。即ち、混合室4は、用紙Pの幅方向に沿って開口部17の箇所毎に区切るように1列状に配置される。そして、各混合室4の下面毎に開口部を有する統合電極アレイ3を配置する。該統合電極アレイ3の構成は、図2で示した前記個別電極アレイ15とほぼ同じ構成であるので、その詳細の説明は省略するが、図2示すごとく、電気絶縁性のシート16の上面は混合室4内に向き、シート16の下面であって各吐出開口部24の外周に形成した吐出制御電極23は、用紙Pの表面(上面)であって対向電極6と約1mm程度の隙間を介して対峙するように配置される。
【0014】なお、対向電極6は、図1及び図2に示すように、電気絶縁性の支持板61の上面に配置した板状のものである。そして、対向電極6とトナー担持ローラ12との間には直流電源22が接続され、対向電極6に+1kV程度の高電圧が印加されるようになっており、トナー担持ローラ12と個別電極アレイ15における制御電極18との間に個別電界制御手段としての制御電圧印加回路(IC、集積回路)20が接続され、画像形成データに基づいて制御電極18に0Vもしくは+40Vに電圧印加されるようになっている。
【0015】さらに、統合電極アレイ3における吐出制御電極23とトナー担持ローラ12との間には、統合電界制御手段としての吐出電圧印加回路25を接続し、吐出制御電極23側に+200Vの電圧が印加されるようになっている。なお、トナー担持ローラ12側は0Vであり、これらの電力は電源部9から供給される。本体ケース1の下部には、給紙カセット62の受け板63に積層された用紙Pがばねにて側面視D字状の給紙ローラ64の周面に押圧されるように配置され、図示しない駆動装置にて間欠回転する給紙ローラ64の1回転にて最上位置の用紙Pが反転ローラ65と搬送ガイド板66と送り出しローラ対67を介して、前記統合電極アレイ3と対向電極6の間にて図1の矢印A方向に搬送される。なお、用紙Pの搬送方向下流側には、画像を定着させるための加熱ローラ71と押圧ローラ72とからなる定着装置7が配置されている。
【0016】次に、このように構成されたカラー画像形成装置の記録動作(印字動作)について説明する。まず始めに、各プロセスユニット2Y,2M,2Cにおけるトナー担持ローラ12と、これとほぼ同じ長さのトナー供給ローラ13とが、図2に示す矢印方向に回転することにより、容器11内にてトナー供給ローラ13から送られて来る荷電性トナー20は、トナー担持ローラ12の表面に擦り付けられる。トナー担持ローラ12の表面に担持された荷電性トナー20はトナー担持ローラ12の回転によって個別電極アレイ15に向かって搬送される。その途次、規制ブレード14にて荷電性トナー20が薄層化されると共にマイナスに帯電される。
【0017】トナー担持ローラ12の表面上の荷電性トナー20は個別電極アレイ15における絶縁性のシート16に擦りつけられつつ開口部17の下方に供給される。ここで、カラー画像データに基づいて画像形成制御に必要な制御処理を行う制御部8から制御電圧印加回路21に伝達され、画像信号に応じて、その画像部分に対応する制御電極18には、トレイ量に応じたパルス幅の0Vまたは+40Vの制御電圧が選択的に印加される。
【0018】その結果、画像部分に対応する制御電極18に+40Vの電圧が印加されると、画像部分に対応する開口部17近傍には、制御電極18と導電性のトナー担持ローラ12と間の電位差により、制御電極部18aよりトナー担持ローラ12に向かう電気力線が形成される。このときの電気力線の強度は、前記電位差に比例し、且つ制御電極18とトナー担持ローラ12表面との距離に反比例するものである。
【0019】このように、前記制御電極部18aよりトナー担持ローラ12に向かう電気力線により、前記マイナスに帯電された荷電性トナー20は高い電位の方向に静電力を受け、開口部17を通過するように混合室4内に引き出される。各プロセスユニット2Y,2M,2Cにて前述と同様にして各色の荷電性トナー20が混合室4内に飛翔し、当該混合室4内でこれらのトナーがクラウド状態(雲状態)で混合し、所定の色に発色する。この場合、図2に示すように、混合室4に向かう各個別電極アレイ15の開口部17の向きをそれから飛翔するトナー流がほぼ1点で集中されるように構成しておくと、3つのトナー流の運動量が集中点で規制され、色の混合を迅速各均一に行うことができる。
【0020】このようにして引き出され混合した荷電性トナー20は、さらに、統合電極アレイ3における画像形成部分に対応する吐出開口部24の吐出制御電極23に印加された吐出制御電圧(+200V)と、対向電極6に印加されている電圧(+1kV)とによって、用紙Pと統合電極アレイ1との間に形成される電界により、用紙Pに向かって前記前もって色混合された荷電性トナー20が飛翔し、用紙P表面には所定の色の荷電性トナー20が堆積されて可視的な画素を形成する。
【0021】他方、非画像部分に対する制御電極18には、制御電圧印加回路21から0Vの電圧が印加される。その結果、トナー担持ローラ12と制御電極18と同電位となり、トナー担持ローラ12上の荷電性トナー20は、開口部17を通過することはない。従って、非画像部分に対しては、混合室4内にトナーが存在せず、統合電極アレイ3の吐出開口部24からトナー20が噴射することもない。
【0022】このようにして、用紙Pの表面に統合電極アレイ3の吐出開口部24列により混合された荷電性トナー20の1列分の画素が形成される間に、当該用紙Pを吐出開口部24の列と直角方向(図1の矢印A方向)に1画素分搬送される。このような動作を繰り返すことにより、用紙Pの表面には、所定の色のトナー20による所定のカラー画像が形成される。その後、定着装置7の箇所にて用紙P上にカラーのトナー像が加熱定着された後、排紙トレイ10に出力されるのである。
【0023】前記実施例では、複数の色のプロセスユニットにおける個別電極アレイ15の開口部17から飛翔させた荷電性トナー20を一旦混合室4内で混合した後、統合電極アレイ3の吐出電圧にて用紙P表面に吐出させたが、別の実施例として、統合電極アレイ3を省略し、混合室4の用紙P表面への吐出開口部(図示せず)の形状及び複数の個別電極アレイ15における開口部17の向き、ひいては各開口部17から飛翔する荷電性トナー20の混合集中点を用紙P表面近傍となるように設定すれば、一層簡単な構成で且つカラー画像形成の制御も簡単にして所定の混合した色の荷電性トナーを用紙Pの表面付着させることができる。
【0024】なお、カラー画像に対応して2種類以上の荷電性トナーを制御するための対応する数のプロセスユニットを備えれば良いことはいうまでもない。
【0025】
【発明の作用・効果】以上に説明したように、請求項1に記載の発明のカラー画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン等の原色の荷電性トナー毎のプロセスユニットを、複数の開口部が形成され、各開口部がそれぞれ制御電極を有する個別電極アレイと、前記荷電性トナーを前記各開口部に供給するトナー供給手段と、前記個別電極アレイの各制御電極を独立して制御することにより、前記荷電性トナーをトナー供給手段から開口部を介して選択的に飛翔させる電界制御手段とにより構成し、前記複数のプロセスユニットにおける個別電極アレイと対向して画像記録媒体を挟んで対向電極を配置し、前記各プロセスユニットの電界制御手段を、前記荷電性トナーが画像記録媒体に到達する前に互いに混合するように制御させるものである。
【0026】従って、イエロー、マゼンタ、シアン等の各原色の荷電性トナー毎に対応する複数のプロセスユニットでは、カラー画像データに基づいて個別電極アレイの開口部から所定量の荷電性トナーをそれぞれ飛翔させて一旦混合したものを画像記録媒体に飛翔・付着させるのであるから、従来のように、1つの画素ごとに、別別の色のトナーを重ね付着させて、結果として所定の色の画素を得るのに比べて画像記録媒体表面での色の再現性が優れ、高画質のカラー画像を得ることができるという効果を奏するのである。
【0027】また、請求項2に記載の発明は、請求項1における前記複数のプロセスユニットにおける個別電極アレイと画像記録媒体との間に、荷電性トナーを混合するための混合室を設け、該混合室の荷電性トナー放出部には、複数の吐出開口部がそれぞれ吐出制御電極を有する統合電極アレイを設け、該統合電極アレイにおける吐出制御電極を、統合電界制御手段にて制御してカラー画像データに応じて前記混合した荷電性トナーを画像記録媒体に向かって選択的に飛翔させるように構成したものである。
【0028】従って、前記複数のプロセスユニットのトナー吐出口としての開口部を囲むようにした混合室4で一旦荷電性トナーが充分に混合された後に、統合電極アレイの統合電界制御手段にて画像記録媒体の表面に前記混合済みのトナーを付着させるから、画素ごとの色の再現性が格段に向上し、高画質のカラー画像を得ることができるという効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】カラー画像形成装置の概略側断面図である。
【図2】プロセスユニットの要部断面図である。
【図3】個別電極アレイ及び統合電極アレイの斜視図である。
【符号の説明】
2Y,2M,2C プロセスユニット
3 統合電極アレイ
4 混合室
6 対向電極
11 容器
12 トナー担持ローラ
15 個別電極アレイ
16 シート
17 開口部
18 制御電極
20 トナー
21 制御電圧印加回路
23 吐出制御電極
24 吐出開口部
25 吐出電極印加回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 イエロー、マゼンタ、シアン等の原色の荷電性トナー毎のプロセスユニットを、複数の開口部が形成され、各開口部がそれぞれ制御電極を有する個別電極アレイと、前記荷電性トナーを前記各開口部に供給するトナー供給手段と、前記個別電極アレイの各制御電極を独立して制御することにより、前記荷電性トナーをトナー供給手段から開口部を介して選択的に飛翔させる電界制御手段とにより構成し、前記複数のプロセスユニットにおける個別電極アレイと対向して画像記録媒体を挟んで対向電極を配置し、前記各プロセスユニットの電界制御手段を、前記荷電性トナーが画像記録媒体に到達する前に互いに混合するように制御させることを特長とするカラー画像形成装置。
【請求項2】 前記複数のプロセスユニットにおける個別電極アレイと画像記録媒体との間に、荷電性トナーを混合するための混合室を設け、該混合室の荷電性トナー放出部には、複数の吐出開口部がそれぞれ吐出制御電極を有する統合電極アレイを設け、該統合電極アレイにおける吐出制御電極を、統合電界制御手段にて制御してカラー画像データに応じて前記混合した荷電性トナーを画像記録媒体に向かって選択的に飛翔させるように構成したことを特長とする請求項1記載のカラー画像形成装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate