説明

カルシウム強化米及びその製造方法

【課題】製造については、煮炊きしない原料米のままの米粒にカルシウム成分を付着させ、煮炊き工程を省くので作業性が良く省エネに適し、使用においては、炊飯の中途までは米粒に安定してカルシウム成分が保持されているが、中途以降ではカルシウム成分が米粒から解き放たれて炊飯の対流にのって全体的に行き渡り、そのため原料米には塊状には残留しないカルシウム強化米を提供する。
【解決手段】回転するボックスの中で、原料米とカルシウム微粉末とを混合することにより、原料米の表面にカルシウム微粉末をまぶすとともに、ボックス内にゼラチンの水溶液を噴霧することにより、原料米の表面にカルシウム微粉末の上からゼラチンの水溶液を噴霧してカルシウム微粉末を層状に定着させ、それを乾燥することにより、原料米の表面にカルシウム成分とゼラチン成分とが固化した混合皮膜を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ご飯をカルシウム栄養素で改善するために炊飯時にその米に添加して使用するカルシウム強化米及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の食生活ではカルシウムが不足しがちであるため、それを補うために主食としてのご飯にカルシウムが添加される。それには、カルシウム成分の微粉末又は粒を炊飯器に入れて米を炊く方法があるが、これであると、カルシウム成分が沈殿して一か所に集まりやすく、それが風味の障害になる等の不都合があるので、米粒にカルシウムを付着させたカルシウム強化米が添加して用いられる。
【0003】
しかし、カルシウム強化米は、米の表面にカルシウム成分を如何に付着させるかが問題であった。その手段として従来は、原料米としての精米を炊いて表面に粘性を付与し、その粘性で表面にカルシウム微粉末を付着させ、それからご飯を乾燥して固化させたものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のカルシウム強化米によれば、これを製造するには、一旦炊飯し、粘性で扱いにくいご飯の表面にカルシウム成分を塗布・付着させるため、作業が非常に面倒であり、炊く工程のため省エネにも適しなく、コスト高となるという問題があった。
【0005】
また、従来のカルシウム強化米であると、炊飯する時点で米に例えば50〜100分の1程度を添加するが、カルシウム成分の米粒との結合が強いので、炊飯中においても米粒から分散することなく結合を保持しているカルシウム量が多く、釜の中で煮るという作用により、カルシウムの固まりが米粒の表面に塊として斑点状に抽出するため、それが異様に見えるばかりか、舌触りにも良くないという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のよう実情に鑑みて、製造については、煮炊きしない原料米のままの米粒にカルシウム成分を付着させ、煮炊き工程を省くので作業性が良く省エネに適し、また、使用においては、炊飯の中途までは米粒に安定してカルシウム成分が保持されているが、中途以降ではカルシウム成分が米粒から解き放たれて炊飯の対流にのって全体的に行き渡り、そのため原料米には塊状には残留しないカルシウム強化米を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明は、原料米の周り表面に、ゼラチンを粘着材としてカルシウム微粉末を塗布し、ゼラチンの固化により原料米の表面にゼラチンとカルシウム成分との混合皮膜が形成されていることを特徴とするカルシウム強化米を提供する。
【0008】
また、この発明は、回転するボックスの中で、原料米とカルシウム微粉末とを混合することにより、原料米の表面にカルシウム微粉末をまぶすとともに、ボックス内にゼラチンの水溶液を噴霧することにより、原料米の表面にカルシウム微粉末の上からゼラチンの水溶液を噴霧してカルシウム微粉末を層状に定着させ、それを乾燥することにより、原料米の表面にカルシウム成分とゼラチン成分とが固化した混合皮膜を形成することを特徴とするカルシウム強化米の製造方法を提供する。
【0009】
上記の構成によれば、原料米には、カルシウム微粉末を付着させる手段として煮炊き等の処理を施さない。その手段としては、原料米にカルシウム微粉末をまぶし、その上からゼラチン水溶液を塗布ないしコーティングすること等で、カルシウム微粉末を押さえ込む。そうしてから、乾燥によりゼラチンを固化して、原料米の表面にカルシウム成分とゼラチン成分との混合皮膜を形成するものである。
【0010】
なお、上記構成で使用される原料米としては、無洗米(研ぎ洗いすることなく水を加えて炊くだけで食べられるように加工された米)、精米(玄米または籾からヌカを取り除いてなる白米)、アルファ化米(米飯を炊いた時に乾燥させてなる加工米)のいずれであっても良いものとする。
【0011】
炊飯時の使用においては、このカルシウム強化米を炊飯器に米の例えば50〜100分の1を添加する。米とともにこうして水に予め浸してから炊飯スイッチを入れるが、ゼラチンは50°Cが融点であるので、その温度を超えるまでカルシウム成分は原料米の表面に固定されたままであり、釜底に不都合に沈殿するようなことはない。また、炊飯が進行しても50°Cを超えて対流が生じてくる70°Cころになると徐々に溶け出してくるが、対流に乗って炊飯器内に満遍なくゆきわたり、溶けだしても沈殿することなく全てのご飯粒に均等に行きわたる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、この発明によれば、煮炊きしない原料米のままの米粒にカルシウム成分を付着させるので、煮炊きがないだけでなくカルシウム成分の付着を容易になし得るため、作業性が従来から見て格段に良く省エネにも適し、使用については、炊飯の中途までは米粒に安定してカルシウム成分が保持されているが、中途以降ではカルシウム成分が米粒から解き放たれて炊飯の対流にのって全体的に行き渡るため、カルシウム成分が底に沈下するような不都合はなく、炊飯される全部のご飯に均等に含浸し、原料米には塊状ないし粒状に残留するようなことがないから、食するときにはカルシウムやゼラチンの味が全く感じられなく、炊いたご飯を美味しく食してカルシウムを補給できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施に使用する混合機を一部切欠して示す正面説明図である。
【図2】この発明により製造が完成したカルシウム強化米を一粒で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明において、原料米1には、カルシウム強化米の製造に用いる米であって、糠を除いたものが使用される。カルシウム成分やゼラチンを付着させる必要から一旦研いだ精米もしくは無洗米が最も望ましい。無洗米を使用することにより洗米工程が省かれ、全工程の中で水を少量しか使わないため、省資源・環境保護の面で有効である。単なる精米であると一旦研ぐことで無洗米にして使用する。しかし、コストはかかるがアルファ化米であっても使用できる。いずれにしても、米を煮た状態、つまり粘性を有しない状態で、これにカルシウム成分を付着させるので、粘りに妨げられるということなく、容易に作業をなすことができる。
【0015】
カルシウム微粉末をまぶすに当たっては、原料米1の表面が完全に乾燥しているとカルシウム微粉末の乗りが良くないので、ある程度湿らせてから「まぶす」作業をするのが良い。また、その作業には、後記する混合機3を都合良く使用できる。しかし、本発明はこれを使用することに限定されるものではない。
【0016】
ゼラチン7は、健康に有効なコラーゲンであるが、これを噴霧するために例えば3倍液ないし6倍液程度の水溶液とする。また、均等に溶けやすく60〜90°C程度の熱水を使用するのが良い。そうすると原料米1の表面にゼラチン7が乗りやすくなる。
【実施例1】
【0017】
原料米1には研ぐ必要のない無洗米を使用した。カルシウム成分には、卵殻カルシウムの微粉末を使用する。そして、混合機3により原料米1にそのカルシウム成分を塗布・沈着させた。
【0018】
混合機3は、一対の支持脚4,4にボックス6が回転するように軸承され、軸部にゼラチンの水溶液の噴入口8が設けられている。ボックス6は、六角形の密閉ケースであって、回転により内容物の落差が多くとられるように一方向に長い六角形としてある。原料米1に対する塗布・沈着方法は次の通りである。
【0019】
(1)ボックス6に原料米1とカルシウム微粉末5を入れ回転させながら混合する。こうすれば、原料米1にカルシウム微粉末5がまぶされる。
(2)ボックス6の回転をそのまま続けながら、湯で溶かした粉ゼラチン7を混合機3の中に噴霧して原料米1にからめるようにコーティングする。
(3)(1)と(2)を10回程度繰り返してから、乾燥機に混合されたものを入れ乾燥させる。そうすると、原料米1の周りにカルシウム成分5とゼラチン7の薄い混合皮膜11が造られる。
【0020】
ゼラチン7には、豚由来のコラーゲンを使用した。これは使用においてご飯に均等に溶けることになるが、無味・無臭に近いので、ご飯の味に影響を与えることがなく、風味や色合いに敏感な年寄りでも気づかずに、普通のご飯と変わらずに食することができる。
【0021】
カルシウムについては次の通りである。
(1)カルシウム成分には、キューピー(株)の「カルホープを使用した。
これは卵の殻を精製したカルシウム微粉末5で400メッシュの微粒子である。
(2)原料米1にカルホープを20〜30%付着させると、Caの純量としては100gのカルシウム強化米に約7〜10gのカルシウムが含まれることになる。そこで、ご飯を炊くときに本カルシウム強化米を入れる目安として、炊く米50〜100gに対して1gの本カルシウム強化米を混入すると、1食に換算して、70〜100mgのカルシウムを補うことができることになる。つまり、100対1で本カルシウム強化米を添加した場合、成人が一日1合(150g)の米を食べたとすると、最低でも105mgのカルシウムが純量として補える計算になる。
【実施例2】
【0022】
実施例1と同じであるが、特別な乾燥機を使用することなく、混合機3の噴入口8から乾燥空気を噴入し(ボックス6には噴入口8の対応する反対側に噴出口が設けられる)、ボックス6の中で原料米1の表面を乾燥させる。
【実施例3】
【0023】
ボックス6の中に原料米1を入れ、噴入口8からカルシウム微粉末5とゼラチン7の混合水溶液を噴入し、ボックス6の回転により原料米1の表面にその混合液を付着させ、次いで、乾燥させる。
【0024】
前記「カルホープ」は、微粒粉なため少量の水を加えるとクリーム状のコロ
イド液を作る。その水分にゼラチンを少量溶かして加えると乾燥の過程で固形物に変化する。そのため、この実施例3では同じく、原料米1の周りにカルシウム混合層11を形成できる。
【0025】
以上のようにカルシウム強化米を製造した場合、カルシウム混合層11は、融点が50°Cなので、使用において炊飯温度50°C以上にならないと溶けない。したがって、水加減のときはもちろん、それら炊飯器を稼働させてもその稼働中途まではカルシウムは溶けださない。
【0026】
炊飯の仕方として一般的に、予め米を浸水させて置くが、この時点でもカルシウム強化米のカルシウムが溶けることなく、水より重いカルシウムが炊飯前に沈殿するというようなことは全くない。
【0027】
ゼラチンの融点は50°Cであるが、それから短時間で湯に充分溶けるには釜内でもっと高い温度と攪拌が必要となる。したがって、対流時点(70°C以上)で溶けることになる。攪拌が必要なことは、菓子作りに使われる粉ゼラチンを溶かす作業でも観察される。湯の温度が高くなると、釜内に対流が起こり湯に運ばれてカルシウムはまんべんなくご飯に添加され炊きあがる。
【0028】
一般的に、粉末カルシウム製品、例えば乳カル酵素にはデキストリンが多く使われていたり、ハウスウエルネスの新玄サプリ米には澱粉と同じくデキストリンが使われていたりする。特に錠剤になっているカルシウム粉を固めるためと、味覚調整のため砂糖・乳糖などが多く使われている。しかし、本発明では、ご飯に入れる強化米にはできるだけご飯の風味が損なわれないよう、余計な材料を使わないこととした。この点でゼラチンが最も適していた。
【0029】
つまり、本発明のカルシウム強化米は、食したときに添加したことを感知しない。また、炊飯後の時間経過でも常温状態(冷えた飯)ではもちろんのこと、おにぎり・お粥・混ぜご飯、炒め飯、雑炊などに再利用する場合の温度変化などにも、風合いや味覚・栄養価などに変化はなかった。
【符号の説明】
【0030】
1 原料米
5 カルシウム微粉末
6 ボックス
7 ゼラチン(コラーゲン)
8 噴入口
11 混合皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料米の周り表面に、ゼラチンを粘着材としてカルシウム微粉末を塗布し、ゼラチンの固化により原料米の表面にゼラチンとカルシウム成分との混合皮膜が形成されていることを特徴とするカルシウム強化米。
【請求項2】
カルシウム微粉末が卵殻を粉末化したものであることを特徴とする請求項1記載のカルシウム強化米。
【請求項3】
請求項1及び2記載のカルシウム強化米の製造において、回転するボックスの中で、原料米とカルシウム微粉末とを混合することにより、原料米の表面にカルシウム微粉末をまぶすとともに、ボックス内にゼラチンの水溶液を噴霧することにより、原料米の表面にカルシウム微粉末の上からゼラチンの水溶液を噴霧してカルシウム微粉末を層状に定着させ、それを乾燥することにより、原料米の表面にカルシウム成分とゼラチン成分とが固化した混合皮膜を形成することを特徴とするカルシウム強化米の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−44934(P2012−44934A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190920(P2010−190920)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(510232647)
【出願人】(510232658)
【Fターム(参考)】